October 09, 2017

実店舗とオンライン、5年後のファッション消費の未来から考えよう

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 10月5日の繊研新聞にJDAソフトウエアがプレスリリースしたインターネットショッピングに関する消費者意識調査に関する記事が掲載されていました。

 同調査資料のオリジナルをご覧になりたい方はこちらから
 
 2017年インターネットショッピングに関する消費者意識調査


 この調査は

 18歳以上の男女を対象にしたインターネット調査ですが(有効回答数2093人)

 私が注目したのは2点

 今後ファッション消費において、

 1.どれくらいの割合がオンライン経由でなされ、

 そのうち

 2.どれくらいがクリック&コレクト(オンライン注文の自宅以外受け取り)を利用するのか?

 に関する数値です。

 まず前者については

 インターネットでも実店舗でも、どちらでも購入できる商品の場合、インターネットと実店舗のどちらで購入することが多いですか?という質問に対して、

 小売全体では約70%が実店舗で購入するに対し、洋服/靴/ファッションは75.5%が実店舗で購入するとのこと。

 この結果は、昨今、業界識者の方々が語り始めている「ファッション専門店のEC売上比率の限界点は30%にあり?」という議論に近いものがあるかも知れません。

 また、

 過去1年間にクリック&コレクト(オンライン注文商品の店舗など自宅外受け取り)を利用しましたか?という質問に対しては

 今回(2017)は18%が利用経験ありと答え、前年(2016)の14%に比べて増えています。

 ちなみに同社は同じ調査を英国でも行ったため、比較数値が出て来ますが、

 英国ではクリック&コレクト利用経験者比率は54%と過半数です。

 日本の場合、なぜクリック&コレクトを利用するか?という理由としては

 配送手数料がかからない    44%
 自宅より確実に受け取れる   42%
 自宅への配送より便利      34%

 一方、クリック&コレクトにおいてのトラブル体験は

 日本では74%の利用者が持っており、これは英国の54%よりも高い数値となっていますが、日本の上位の理由は・・・

 店員が商品をなかなか見つけられない、時間がかかった 39%
 受け取りの専用スペースがない  29%
 対応する店員がおらず待たされた 18%

 とのことです。 
 
 ストレス軽減のためには、同サービスが社内でしっかり通達され、

 アルバイトさん含めて店舗スタッフもそういったお客様が来店された時の対応が周知徹底されているかどうかにかかっていそうです。

 これまで、日本のクリック&コレクトがどれくらい進んでいるかを数字で掴めませんでしたが、今回、初めて数字に触れて、日本でもまだ低い数値ながら、徐々に増えていることがわかりました。

 また、クリック&コレクトが普及しているイギリス(体験者比率54%)との比較を見て・・・以前、私がイギリスの老舗SPAであるNEXTのアニュアルレポートを読んだ時にこんな数字が出ていたのを思い出しました。

 これは2016年1月期のものですが、

 オンライン注文を店舗で受け取る比率が過去5年間に急増

 2010年     2015年
  13%  ⇒   55%

 これは同社が2010年からオンラインビジネスに力を入れ、サービスの認知とサービス精度向上に努めたからに他なりません。

 この数字を思い出して、JDA社の英国のクリック&コレクトに関する調査結果とNEXTの実態が近いこと、

 そして、英NEXTのオンライン注文のクリック&コレクト比率が2010年に 日本の2016年と同じ水準であり(それぞれ13%と14%)、その5年後にNEXTではオンライン注文をする過半数(55%)の顧客が自宅外で受け取るようになったことからすると・・・

 日本でもひょっとすると、2021年ごろにはオンライン注文者の過半数がクリック&コレクトを利用するようになるのかも知れない?という仮説が描けるのではないかと思いました。

 もっとも、企業がそれに耐えうるフルフィルメントなどインフラ投資を着実に進め、店頭と一体となって、店頭でのトラブル比率を下げることがキモになることは言うまでもありません。

 JDA社の資料によれば、日本の小売企業はまだECのシステム周りに投資をしているのに対して、

 欧米ではその先を行って、フルフィルメントへの投資が旺盛とのことです。

 これから5年後、ファッション消費の未来はどうなっているでしょうね。そんなことを想像しながら・・・

 未来から逆算して、オムニチャネル時代にインフラ投資を進めながら、トップがリーダーシップをとって店頭を巻き込んで社内でお客様のメリットを周知徹底する、

 そんな取り組みをそろそろ進めなければ・・・業界で取り残されるというか、顧客から「遅れている店」というレッテルを貼られてしまいそうな局面に入って行きそうです。

 関連エントリー-ロンドン視察から 日本でのクリック&コレクトの普及を考える


 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 オムニチャネル対応も顧客中心主義の信念の延長線上にある ユニクロ、ZARAのSPAビジネスモデルを比較しながらわかりやすく解説しました。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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October 05, 2017

ZARAのインディテックスグループ、サステイナブル経営からインフラ投資への好循環

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 先週、東京ビッグサイトで開催されたIFF MAGIC (インターナショナルファッションフェア)2017秋展において 2009年以降 世界のアパレル専門店の中で売上、利益とも世界一をキープし続けているZARA(ザラ)を展開するインディテックスグループの直近の取り組みについて講演をさせていただきました。

 拙著「ユニクロ対ZARA」(2014年11月日本経済新聞出版社) 出版直後の IFF 2015春展でも講演をさせていただきましたが、

 その時の講演の様子は YOUTUBEでご覧になれます。 

 あれから2年半が経ち、ZARAがその強さを確固とするために取り組んで来た

 サプライチェーンマネジメント、オムニチャネルリテイリング、サステイナブル経営の3つのキーワードについてお話しさせていただいたものです。 

 ひとつ目のサプライチェーンマネジメントに関しては、

 品揃えの65%にあたるトレンド商品はスペイン近隣国で生産し、残りの35%のベーシックをアジアにアウトソーシングする「ハイブリッド型生産ポートフォリオ」の強みについて。 

 そして、前者の近隣国で実践している「スケーラビリティ」が追求できるサプライチェーン工程の内製化と設備投資についてのお話しをしました。

 アパレルの原料・素材が製品となって店頭で販売されるまでのサプライチェーンの工程のうち、多くの競合他社がその多くをアウトソーシングしているのに対し・・・

 ZARAでは多くの工程を内製化し、自らコントロールしていることで知られています。

 しかし、何でもかんでも内製化しているのではなく、確固としたポリシーがあり・・・

・どこでもつくることができるベーシック商品や

・トレンド商品に関しても縫製(アッセンブル)工程
 
 はアウトソーシング(外注)しながら・・・ 

 その一方で、「スケーラビリティ」が追求できる、すなわち、機械化、自動化、IT化によって効率化が図れる工程やインフラ設備については積極的に投資を行い、自前で抱え、磨きをかけて来たのです。

 「スケーラビリティ」とは規模を拡大するほど単位あたりのコストが安くなることを意味します。

 ZARAは目先のコスト削減を問題にするのではなく・・・

 その出自である製造業的発想を持ち、むしろ自前で抱えた方がメリットがあると判断したものは、投資をすることによって、中長期的に生産性を上げて行く、単位あたりのコストを下げて行くことを重視する企業であることに・・・

 今回の講演資料をまとめていて、あらためて気づき、感心したものでした。

 関連エントリー- ユニクロが挑むハイブリッド型マーチャンダイジング


 ふたつ目は、ZARAが2年前から経営方針として取り組む いわゆるオムニチャネルリテイリング、

 Seamlessly integrated online-offline store model   実現に向けてのお話です。

 日本ではEC強化が叫ばれることはあっても、ほとんどの企業が、まだまだオムニチャネル化どころか、マルチチャネルつまり、同じ商品を売っていても、直営店とECが関連性の薄い別々の販路である状態から抜け出せていないのが現実です。

 一方、ZARAが提唱する このSeamlessly integrated online-offline store model というフレーズは 

 「オムニチャネル」という言葉より・・・ オンラインを活用して、どういうお店を目指しているのかがわかりやすくていいですよね、

 そしてそのポリシーの下、同社は着実にその方向に向かっているのがわかります。

 ZARAはこの経営方針に近づくため、

 ・クリック&コレクト(オンライン注文商品の店舗での受け取り)を推奨し、
 (オンライン商品の店舗受け取り比率66%)

 ・顧客の利便性を追求したオムニチャネル対応スマホアプリ”InWallet”を自社開発して普及を始め、

 これらの取り組みを促進するために

 ・RFIDの世界のZARA全店舗への導入を完了し、店舗作業を軽減させながら、在庫データの精度を高めています。

 関連エントリー- ZARA(ザラ)のテクノロジー活用はあくまでも店舗への集客第一・店舗作業軽減が目的


 そして、最後にサステイナブル経営です。

 同社は持続可能な成長を行うために、グローバル企業の中でもいち早く、2002年からサステイナビリティレポートを発行しています(アニュアルレポートに組み込んで本格的に取り組んだのは2005年度から)。

 そして、2015年からは 国連加盟国が2030年までに理想の世界をつくるために合意した、国家や企業が目指すべき17の開発目標=サステイナブル・ディベロップメント・ゴール(SGD’s)に沿って自社の経営の優先事項を決め、その進捗状況を毎年アニュアルレポート(年次報告書)で発表し始めました。

 サステイナブル・ディベロップメント・ゴール(SGD’s)とは


 このSDG’sとは旧来型のコーポレートガバナンスやCSR(企業の社会的責任)への取り組みをより進化させて・・・多くのグローバル企業が取り組み始めたサステイナビリティ経営のガイドラインのようなもので、

 ユニクロのファーストリテイリングも2016年から4つの目標に取り組み始めましたが、ZARAのインディテックス社では17の目標すべてを自身の企業活動に関連づけてレポートしています。

 特に、同社の取り組みがわかりやすいなと思ったのは・・・

 多くの企業が従来のCSRの延長で行っている・・・店頭から遠く離れたところで行われているような・・・環境保護や取引先の人権・労働環境監視や慈善活動などに取り組むだけでなく、

 店頭からお客さまにも見える、事業そのものと結びつけて、とてもわかりやすい取り組みでSDG’sの目標に向かっていることです。

 例えば、 

 ・ RFIDやアプリなどのIT投資をしていることも、お客様と持続可能な、長いお付き合いをするために、お客様のお買い物環境をより便利に快適にするための投資であるという説明であったり、 

・ 環境にできるだけインパクトを与えない素材を使った商品開発=ZARA JOIN LIFE コレクションに力を入れていることだったり (現在 全売上の5%に相当するまでになったそうです)

・ 商品の配送販売に使用される資材(ダンボール、ハンガー、セキュリティタグなど)のリサイクル・再利用を徹底することであったり

 店舗や商品やお客様の買い物環境の改善も2030年までに実現すべき理想的な状態に組み入れて、取り組んでいます。

 目先の業績だけに追われるのではなく、10年以上も先である2030年の理想の姿から逆算して今やるべきことを考えるなんて・・・さすが、トップを走る企業の余裕ですよね。

 そして、ZARAはその安定的な成長率や高い利益率だけではなく・・・

 長年、サステイナブル経営に取り組んでいる、その企業姿勢が世界の機関投資家から大いに評価され、サステイナブル経営を行う企業に積極的に投資するというコンセプトの世界のESG投資からたくさんの資金を集めています。
 
 その資金が、同社の株式時価総額を12兆円超にまで押上げることにつながり・・・
 
 時価総額3兆円台のH&Mやファーストリテイリングとは4倍もの差をつける結果となっています。

 これらの株主から集めた資金は当然、ZARA始めインディテックス社のブランドのサプライチェーン、物流、IT強化のための更なる投資の原資となり・・・

 ますます競合他社を引き離す収益性を生み出すための強いインフラ基盤が着々と整って行くという話につながります。

 この サステイナブル経営⇒ 株式時価総額アップ ⇒ インフラ投資 ⇒ 収益性の向上 

 の循環を作り上げた同社の経営スタイルは しばらくは敵なしというところではないでしょうかね。

 関連エントリー ZARAインディテックスグループのサステイナビリティ経営

 関連エントリー-ZARA(ザラ)のデマンド型ファッションバリューチェーン


 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 本書を通じて お客様のためにIT、物流インフラ投資を続けて来たZARAのポリシーに触れていただければ幸いです。 
 
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September 25, 2017

しまむらが2018年からネット通販を開始 独自の物流網をどう活かせるか?

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 9月23日の日経新聞に しまむらが展開する「ファッションセンターしまむら」が2018年からネット通販を始めることに関する記事が掲載されていました。

 記事によれば、

 同社は専用倉庫に用意した一部商品をオンラインで販売し、顧客からスマホなどから注文された商品は全国2000店舗の店頭で受け渡す(=クリック&コレクト)ことからスタートし、

 次にメーカー在庫を販売対象とした店舗での受け取り、更に宅配を検討する模様です。
 
 当初は注文された商品は1-2週で店舗に届き、連絡を受けた消費者は店舗に出向いて受け取るという流れで、

 これまでファッション衣料の多くの商品が各店各色各サイズ1点投入で売り切れ御免が特徴だったしまむらが、

・オンラインで注文した商品が確実に受け取れることを、

・ 1点あたりの平均単価 910円という安価な商品に対して、しまむらの独自の物流を活かす
ことで顧客にとってもしまむらにとっても、追加コストがかからない店舗受け取り配送

 で実現しようという取り組みです。

 正直 注文から受け取りまで1-2週間というのは・・・

 トレンド商品を投入してから4-5週で売り切るしまむらのスピーディな在庫コントロールからすると少々遅いと思いますが、

 オペレーションに磨きをかけ、注文から受け取りの日数が徐々に短縮されれば、既存の物流網と店舗網は大きなアドバンテージになることでしょう。

 当初は世の中の既存の翌日配送系の通販サービスと比べられ、不満も少なくないでしょうが・・・

 同社が辛抱強くオペレーションを磨き上げることで、アパレル専門チェーンのクリック&コレクトのベストプラクティスを実現できる会社であると思っています。

 前々回のエントリーでご紹介した、ロンドンで急速に普及が進むクリック&コレクト(オンライン注文商品の店舗での受け取り)で感じたことは、

 関連エントリー-ロンドン視察から 日本でのクリック&コレクトの普及を考える

 このサービスのキーになるのは、運送会社に荷物を渡したら、終わりではなく、委託先任せにしない物流網の構築とコントロールだろうということでした。

 今後、EC販路での消費が拡大して行く流通業界で、覇者となるのは、

 配送は宅配便に任せておけば何とかしてくれる、と考える会社ではなく、顧客に確実に商品を届けるために、独自に強い物流網を構築した会社になると思っています。

 中長期的な しまむらの取り組みに注目しておきましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 ファッション消費の顧客購買心理を考えるビジネス読本

 顧客心理への配慮と在庫コントロールロジックが明確な しまむら の事例もいくつか取り上げています。

 『人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識』

   

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September 18, 2017

在庫データの精度を高めて「ラスいち」を売り切れ

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 先日、東京ビッグサイトで開催されたRFIDなどの最先端自動認識技術で製造・流通・物流などをソリューションする企業事例を紹介する「自動認識総合展」に行って来ました。

 目的は「自動認識のベストプラクティス」というセミナーで

・アダストリア社が行っているRFIDを使った海外工場~店頭までの国際物流実証実験の経過報告や

・国内物流~店頭でのRFID活用の先進事例であるビームス社の取り組み

の話を聴講するためでした。

 システム会社が売り込むほどは万能ではないRFIDの活用を・・・

 現場主義の両社がどのように運用しているかについての具体的な話を伺うことができ、同技術との付き合い方についてとても腹落ちして勉強になりました。

 最も印象に残っている話のひとつが

 ビームス社のシステム担当役員さんからの話の中で・・・

 RFIDによる棚卸作業の効率化、そのご利益としての在庫データ精度の向上によって・・・

 これまで閾値(しきいち)の設定上の関係でECの販売対象にできなかったラスト1点(ラスいち)が販売可能になり、今年の夏のセール初日の売上が過去最高になったという話です。

 話しによれば、なんと、販売品番の約3割が「ラスいち」品番だったとのことで、これらが過去最高売上の要因のひとつであったことは間違いないでしょう。

 閾値(しきいち)とは、実際の在庫データに対し、どれだけを販売対象にするかという数値の設定です。 

 例えば、在庫データの精度が低ければ、未知の棚卸ロスのために、在庫にないものを販売してしまうことを回避するため、

 各社は在庫が最低2-3点以上の商品をEC販売の対象にし、ラスト1点というものはその対象から除外する(販売対象にしない)ものでした。

 同社では年間10回棚卸をするという、もともと棚卸業務に試行錯誤の上、磨きをかけていた会社さんですが、

 RFIDのおかげで棚卸時間作業が10分の1となり、時間短縮された分、在庫データの精度を上げることに注力できたというもので・・・

 ご苦労の結果、データ精度に自信が持てたため、ECのラスいちの販売に踏み切ったようです。

 これ、すごくいい話だなと思ったのは、

 RFIDもECもなかったころの私自身の専門店勤務時代の話になりますが、バイヤーや在庫コントローラーとして店舗と一緒に「ラスいち」在庫の売り切りに取り組んでいた時に同じようなご利益を感じていたからです。

 在庫過多に苦しんだ服飾雑貨と靴のバイヤー時代、在庫回転を悪化させる要因のひとつが・・・

 「ラスいち」品番を含む一桁在庫数の品番群であることに気付いたからです。

 在庫を整理しようと思って、意識的に在庫帳票を見たことがある方はおわかりだと思いますが、

 帳票のページ(データであれば行数)の大方が過去何年間か放置されたこれらの売れ残り在庫ではなかったでしょうか?

 売れ筋商品で消化率がよい商品でも、各店では数量が少なくなるとお客様の目に届かないところに置いてしまうものです。店舗によってはバックヤードの中のダンボールの中ということもあるでしょう。

 店舗も本部商品管理チーム(バイヤー、在庫コントローラー)もそれらが眼中になくなっているのが実情で、放置しておくといつの間にか塊状態で「死に筋」になっているものです。

 これらをお客様の目に触れるように、各店にラスいちコーナー(またはラック)を設けたり、定期的に集約店舗に集めたり、回収してアウトレットで販売したり、福袋に入れたり・・・そんなルーティンができている会社さんだったらいいのですが、

 私の前職時代含め、独立後、関与したクライアント企業さんの在庫データを見させていただいても、多くの企業で同じことが起こっていることに気が付きます。

 それを放置したままで、「うちは在庫回転が悪い、在庫回転を上げるにはどうしたらいいか?」と悩んでいることも少なくないものです。

 おそらく、そんなものに時間を掛けるのであれば、新商品を、直近の売れ筋を売れ、というのが多くの企業さんの考えでしょう。 

 しかし、放置しておけばおくほど、在庫回転が悪化(在庫日数が膨らむ)してゆくのが実態です。

 これらの売り切りにしっかり取り組めば

○ 売上のプラスになる
○ 在庫回転がよくなる
○ 商品管理が楽になる データも軽くなる

そして、

○ 商品管理に携わるすべてのスタッフが より前向きにお客様が望む売れ筋商品に集中できる

 というご利益がありますね。 

 ラスいち商品はかつての売れ筋商品の残りですから、サイズさえ合えば、商品自体はお客様にとって魅力的なはずですから・・・手遅れにならなければ値下をしなくても売り切れる可能性は高いですね。

 今では、ビームス社のようにEC店に集めて、ECで上手に売り切るという有力な選択肢も加わりましたね。

 そのためには、日ごろから商品管理をしっかり行い、在庫データの精度を意識する習慣をつけておくことが大切なのは言うまでもありません。

 オムニチャネル時代に・・・

 欲しいと思った商品を手に入れたい!と望むお客様のためにも、それをお手伝いしながら、商品をしっかり売り切る商売人にとっても・・・

 業務を円滑に行い、お客様に向き合うことに集中する上でもRFIDの上手な運用は大切である、

 とあらためて感じたものでした。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 07, 2017

ロンドン視察から 日本でのクリック&コレクトの普及を考える

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 8月末のロンドン視察のもうひとつの目的はイギリスで普及しているクリック&コレクトの現場を視察し、実際に体験してみることでした。

 「クリック&コレクト(CLICK&COLLECT)」とは・・・オンライン(自社ECサイト)で購入を決めた商品を宅配ではなく、顧客の都合のよい店舗で受け取ることです。

 このクリック&コレクトがEC売上急増中の日本のファッション消費の未来図のひとつになるかどうかにとても関心があったためです。

 実際、ロンドンのオックスフォードストリートやリージェントストリートを歩くと・・・

 2年前の視察と比べて、明らかに、百貨店から専門店、TOPSHOP、NEXT、H&M、ZARA、UNIQLOのようなチェーンストアまで、店頭のウィンドウに「CLICK&COLLECT」のロゴや店内でも受け取り場所を案内するサインがたくさん見受けられ、かなり普及して来たのだなと感じられました。

 それらの店舗の受け取り場所で観察すると・・・

 私が訪問したチェーンストアでは日中の時間帯だったからでしょうか・・・商品を受け取りに来ている顧客をほとんど見かけませんでしたが、

Dsc_08431

 セルフリッジやジョンルイスといった百貨店の専用カウンターの夕方近くでは常時3-4人の受け取り顧客がカウンターに滞留し、セルフリッジではその場でプレゼントラッピングを依頼する顧客や鏡の前で婦人靴を試着し、スーツ姿の販売員に接客を受けるという姿も見受けられました。

 店舗に在庫がない商品のオンライン購入を勧めている英老舗アパレルチェーンNEXTではレジ前のカタログとパソコンが置いてあるカウンターで店舗スタッフと一緒に商品を検索する女性の姿も見かけました。

 IR(広報)によれば、NEXTではオンラインで注文して、都合のよい店舗で受け取るクリック&コレクト比率は注文件数の55%にあたるそうです(イギリス国内)。 一方、ZARAでは66%(グローバル平均)とのことです。

 日本でいろいろな方々とこの「クリック&コレクト」の話をすると・・・

 ヤマト運輸を筆頭にきめ細かい宅配便のサービスをかつ安価で当たり前のように享受している日本において、クリック&コレクトの顧客にとってのメリットに疑問をもつ方が大多数なのが実情です。

 英NEXTでクリック&コレクト比率が高い理由はDsc_05221

 - 夜12時までに注文すれば翌日12:00以降に商品が指定の店頭で受け取れること

 - 宅配の場合3.99ポンド(600-700円)かかる運賃が無料になること

 - 国内540店舗という店舗網により生活圏、通勤圏に受け取り易い店舗があること

 - 一方、英国にはヤマト運輸のような2時間単位の時間帯で配達指定ができる宅配便がそうそう存在しない

 などが挙げられます。 ちなみに店舗受け取りは1-2点の購入者が多く、多数注文の場合は運賃を払って宅配にするケースが多いそうです。

 実際、数日の滞在期間中に外国人旅行者でもクリック&コレクトが可能だった百貨店のジョンルイス(John Lewis)と国内に多数の受け取り専用店舗を持つ通販会社アルゴス(Argos)で購入体験をしましたが・・・

 オーダーから受け取りまで実に事務的で、スムーズに済む印象を受けました。

 購入心理からすると、早朝でも夜でも自分が時間に余裕のある時間帯で商品を選び、クレジットカードで決済まで済ませておく。

 自宅でいつ届くか?と待つことなく、外出ついで、仕事帰りなど、自分の都合で近くに寄った時に店舗でピックアップすればよい。待ち時間はほとんどない。

 という感覚です。

 EC発達の理由は、ECの方が安いから、という商品もあると思いますが、

 第一は利便性と時短だと思います。

 忙しい中、買い物時間を短縮できる、レジ待ちや代金支払い処理が短縮できる、短縮というか、自分の都合がよい時にお買いものの面倒な工程を自分のペースで済ませる、という感覚でしょうかね。

 日本でこの「クリック&コレクト」の普及を考える時のネックはいくつかあります。

 ひとつは

 日本では、百貨店にしても、駅ビルやSCにしても、ECモールにしても、何かと場所を貸している商業施設側(館)と借りているテナント(ブランド店舗)という構図が多く、

 なおかつ、固定家賃ではなく、売上歩合家賃制が多いので、ブランド側の自由が利かないことが多いところでしょう。

 したがって、オンラインで決済を済ませておくのではなく、商品はあくまで仮予約で店舗に取り寄せておいて、店舗で決済するという形になるでしょうね。(日本では「無印良品」がそのパターン) 

 それには他社任せのECモールではなく、自社EC(オンラインサイト)の活用が前提になりますが・・・

 もうひとつは

 これまできめ細かいサービスで届けてくれていた宅配便の未来です。

 果たしてECの普及が今の倍になったとしても、今までのように同じ良質なサービスをかつ安価で提供できるのでしょうか?それが難しくなってきているのは昨今の宅配便クライシスの報道の通りです。

 また、コンビニ受け取りや駅の宅配ロッカーが普及すれば倍の量に耐えきれるのでしょうか?という疑問もあります。

 いずれにしても、ブランド側が自社ECに力を入れ、物流も整え、店舗での受け取りのメリットを明確に打ち出すことによって、サービスの認知度が高まれば・・・

 受け取りのひとつの選択肢として、これまでよりも件数が増えて行くであろうし、そこに実店舗を持つ企業のオムニチャネル時代のビジネスチャンスがある、というのが私の見方です。

 最後に、クリック&コレクトを世界的に推奨しているZARAのインディテックスグループが昨年から経営方針に掲げているフレーズをご紹介しましょう。

 Seamlessly integrated on-line and off-line store model

 (継ぎ目なく統合されたオンラインと実店舗のストアモデル)

 彼らが目指しているのは、オンラインでもオフラインでも、

 顧客がいつどこにいても情報を得ることができて、

 欲しい商品をスムーズに見つけることができ、

 どこでも購入でき、都合のよいところで受け取ることができる。

 返品交換する時も同様である。

 顧客をビジネスの中心において・・・それをいかにサポートして行くか?

 そんな世界を目指して同社はインフラを着々と整えています。

 日本の小売ビジネスは「顧客満足」と言いながら・・・

 百貨店、ショッピングセンター、ECモールなど「販路(チャネル)」に頼った発想が強く・・・

 何かとそれらの都合が先に立ち、顧客が不便を被ることも少なからずありますよね。

 SPAが製販垂直統合によってサプライチェーンの分業の常識を崩したように・・・

 Vertically integrated manufacturing and distribution store model

 これからのオムニチャネル時代は「販路」の常識を崩す必要がある、

 Seamlessly integrated on-line and off-line store model
 
 と同社が宣言しているフレーズのように思えてなりません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 2008年のH&Mの日本上陸以降、グローバル競合の波に飲み込まれた日本のファッション流通市場。グローバルな視点で考える上でも参考にしていただければ幸いです。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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«ファッション流通 世界の最激戦区 ロンドン オックスフォードストリートを歩いて感じたこと