January 19, 2018

アマゾンと小売りの未来~あらためて考えるアマゾン・エフェクト

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 1月16日の日経新聞に「アマゾンと小売りの未来」というタイトルで日本、東南アジア、アメリカの流通業に携わる3人の識者のインタービューによる特集記事が掲載されていました。

 アマゾン・ドットコムの急成長が、既存の流通を脅かし、業績不振に陥る企業が増えて行く、いわゆる「アマゾン・エフェクト」をあらためて考える良い機会になりました。 

 ネットにも同記事が掲載されています。

 日経新聞 アマゾンと小売りの未来

 アマゾンは消費者とっては極めて便利なECモール、コンビニに次いで生活に欠かせないショッピングインフラのひとつとなりましたね。

 しかし、良品計画の金井会長が言われるように

 「アマゾンで働く人たちは『自分たちが小売業者だ』という意識は薄いだろう。(中略)アマゾンは膨大なデータを分析して新たな事業やサービスの開発にいかしている。たまたまビッグデータが集まる小売業をやっていて、小売りで儲(もう)ける優先順位が低い。だから低価格販売も可能となる。」(「  」内引用)

 米アマゾン・ドットコム社の2016年度の決算書(FORM10K)に目を通すと
 (単位10億円 $=120円換算)

◆売上高       2014   2015  2016
北米          6,100  7,645  9,574
インターナショナル 4,021  4,250  5,278
通販事業計     10,121 11,895 14,852
AWS           557   946  1,466
合計         10,679  12,841 16,318

◆営業利益      2014   2015  2016
北米           43    171   283
インターナショナル  -77   -84   -154
通販事業計      -34    87   129
AWS           55    181   373
合計           21    268   502

◆営業利益率    2014   2015   2016
北米           0.7%   2.2%   3.0%
インターナショナル -1.9%   -2.0%  -2.9%
通販事業計      -0.3%   0.7%   0.9%
AWS          9.9%   19.1%  25.4%
合計           0.2%   2.1%   3.1%

 世界で年商10兆円に迫るアマゾンの儲け=営業利益は 

 北米の通販事業ではわずか3%

 日本が主力のひとつであるインターナショナル通販事業では長年赤字(売上対比2~3%分くらいの赤字)が続き

 世界の通販事業合計では1%の営業利益も出していない状況 (2016年度営業利益率0.9%)

 一方、急拡大で売上を伸ばし、売上シェア9%のAWS(クラウドレンタルサーバー)事業は25%の営業利益率で会社全体の75%の利益を上げているという構図です。

 つまり、売上の90%を占める通販事業は薄利、あるいは地域によっては赤字でも手を尽くしてシェアを拡大し、別事業で儲けてその薄利をカバーしているというわけなんですよね。

 そんな構造の会社が

 アリックス・パートナーズ マネージング・ディレクター デビッド・バサック氏が言われるように

 「アマゾンは価格や配達サービスなどで高いハードルを設定してしまった。他社が同じサービスを提供し、その上で利益を出すのはとても難しく、多くの小売業者が苦しんでいる。」
(「  」内引用)

 要は、アマゾンは通販の利益度返しで、

 消費者を品揃えの豊富さ、価格の安さ、サプライズなサービスを次々に繰り出し、期待をどんどん高め・・・

 既存流通企業の品揃えやサービスの旧態依然さ、陳腐さを浮き彫りにし、後手を打たせ、

 競合を業績不振に陥らせ、次々に駆逐してしまうという戦略を持った企業なんですよね。

 その点からすると、これまで流通革新を起こして勝ち組と呼ばれて来た企業、

 低価格衣料の品質の常識を変えたユニクロにしても、

 トレンドファッションの価格の常識を変えたZARAやH&Mなどの外資ファストファッション企業にしても、

 彼らは本業で儲ける、営業利益をしっかり10%以上稼ぐことを前提にした革新であったのと比べると

 利益度返しのアマゾンはある意味、掟破りであり・・・それゆえに、より強敵で、同じ土俵に上ろうものなら、ほとんどの企業は利益は出せない、ということなのです。

 20年前のユニクロフリースブームから始まったSPAブーム、

 10年前のH&M日本上陸から始まるファストファッションブーム、

 これからの10年はその時よりも、競争は熾烈で、ゆえに、自社の立ち位置をより一層はっきりさせ、商品やサービスを磨かなければいかない

 商品そのものの価値を高めながら・・・スマホを操り、より利便性を求める消費者のために、コミュニケーション力やサービスを磨かなければならない厳しい時代です。

 寒波の気候に助けられ、アウターや防寒アイテムが売れたこの秋冬シーズンの業績の一時的な回復に浮かれることなく・・・

 流通業界は、今、危機感をもって革新を進めなければならない時代の真っただ中にいます。

 あらためて身を引き締めて臨むことに致しましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
 
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January 09, 2018

その付加価値を顧客にしっかり伝えていますか?

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  昨年、半年間 塾生として参加した和仁達也先生のキャッシュフローコーチ養成塾

 粗利率は別名 「付加価値率」と呼びますね、という話を聴いてハッと気づかされたことがありました。

 企業経営は「ビジョン」と「キャッシュフロー」の両輪が健全に回ってこそ繁栄するコンセプトを軸にする和仁先生のその日の講義は

 業界によって粗利率は違う、その違いはどれだけ付加価値をもたらしているかの違いだ、として、

 一般的に生産者がつくった完成品を流通させる問屋さんやスーパーのような小売業は粗利率が低く・・・

 顧客が注文してから材料から手間暇かける飲食店は粗利率が高いという話から始まりました。

 私たちのファッション専門店の業界の粗利率は45%~60%の間が多いでしょうかね。

 先生の話では、企業の利益の源泉である、粗利(高あるいは率)を高めるには2つの手段があり・・・

 ひとつは 「価値を高めること」 

 もうひとつは 「価値を伝えること」 

であると。

 「商品力の強化」の号令のもと、多くの企業のバイヤーさんやマーチャンダイザー(MD)さんが日々、価値を高める努力はしていると思いますが・・・

 後者の「価値を伝えること」に関しては業界を見渡しても、意外と徹底できている企業は少ないかも知れないと思ったものでした。

 顧客(エンドユーザー)に仕入れた商品や開発した商品の付加価値を伝えるには

 リアル店舗にしても、オンラインにしても

○ 各種広告宣伝

○ 店頭VMDやPOP 

○ 接客トーク 

 (オンラインでは「ささげ」がこれらにあたりますでしょうか)

などが考えられますが、

 仕入担当のバイヤーやMDが忙しさにかまけて? 

 顧客に価値を伝えるための十分な商品知識や商品の付加価値情報をお客様最前線にいる店頭やEC担当者や販促担当者に事前に、十分に伝え切れていない現実ではないでしょうか?

 筆者の何社かのクライアント先でも それが組織的にルーティンとして出来ている会社と出来ていない会社で成果の表れ方が明らかに違うなぁ、と痛感したものです。

 商品の付加価値を顧客にどう伝えるか?

 そもそも、そういう意識をもって商品仕入や商品開発をしているかということが前提ですが・・・

 筆者も原稿を寄稿させて頂いた、ファッション販売2月号(年末から発売中)に 具体的かつ、シンプルにまとまっていて参考になる記事がありました。 

 筆者が寄稿したのは「ファッション業界2018年大予測」の方ですが、

 もうひとつの特集に「ショップスタッフの未来」という企画があり、その中の「他業種から学ぼう」というコーナーにあった化粧品業界の接客事例の話です。

 (化粧品以外にもホテル業界の事例も接客の未来を考える上で必読です)

 ちなみに化粧品業界、ファッション業界よりも粗利率高いですよね。 

 実際、現場の方が価値を伝えることに努めていらっしゃるからだとうなづけます。

 詳しくは本誌をお読みいただければと思いますが、簡単にまとめると

 ①勉強して商品知識を高める
  (商品そのものだけでなく、お客様のソリューションにつながる基礎知識全般)
 
 ②シーズンの売り込み商品を明確に決める
 
 ③その商品と一緒に使うと顧客メリットのある商品をあらかじめ決めておき、お勧めする

 ④チームで販売方法の共有をする(成功事例の横展開)

 これ、基本、王道、あたりまえのことに聞こえるかも知れませんが、ファッション専門店では徹底出来てないところが多いかも知れませんね。

 その現実に対して、勉強不足だと現場である店舗スタッフを責めるのではなく、

 そもそも、バイヤーやMDが体系づけて、あるいはルーティンとして、わかるように「伝えていない」ことが圧倒的に多いのが現実でしょう。

 オムニチャネル時代はウエブで調べてある程度の知識を持った顧客が来店する時代。

 それを前提にして仕事をしたいですよね。

 情報をもって来店されたお客様に

 「そんなことも知らないのか?」

 「そんなことわかってるよ!」

 「だったら自分で検索して自分で買うから接客はいらない!!」

 と思われて店舗スタッフさんが愛想を尽かされないように・・・

 仕入担当者は商品を仕入れて在庫を送り込むだけでなく、販売スタッフが商品知識をつけたり、付加価値をつけた情報をお客様に的確に伝えるために

 ・商品の付加価値をわかりやすく言語化する

 ・ブランドがオンラインで発信している情報をシンプルに的確にタイムリーに現場に共有する

 ・会議体やルーティン業務に落とす

 ・デイリー対応にはツール・デバイスも必要

 そんなコミュニケーション力や継続的な努力やデジタルツールが必須な時代だなと思います。

 日頃、クライアント企業さんの店頭の在庫最適化や生産性の向上に関与している傍ら・・・

 今年は、かかわったクライアント先ではそれらが着実に実現できるように尽力したい

 と年頭に心に誓ったものでした。

 今年もブログでオムニチャネル時代の業界マクロトレンドおよび現場寄りのミクロトレンドを綴って参ります。

 どうぞよろしくお願いいたします。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
 
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December 31, 2017

あなたが考える理想のファッション専門店の姿は何ですか?

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12月25日の日経新聞 未来面に掲載されていた

 「あなたが考える理想の小売業の姿は何ですか?」の企画記事はとても興味深く読ませていただきました。

 これは日経新聞が読者や企業と日本の課題について議論する「未来面」をスタートするにあって、

 さまざまな業界の経営トップが問いかけた質問に対して読者から投稿されたアイデアの中から優れたものを選びコメントを加えるというもので、

 その7回目にあたる今回はセブン&アイ・ホールディングス 井阪隆一社長が問いかけた

 「あなたが考える理想の小売業の姿は何ですか?」という質問への回答の紹介でした。

 詳しくは

 日経新聞 世界を変えよう あなたが考える理想の小売業の姿は何ですか
 
 をお読みいただければと思いますが、

 この中の 2番目 「隙間時間にアプリで買い物」 の

 空き時間にアプリを使ってオンラインで買い物を済ませ、仕事帰りに商品をピックアップして決済するアイデア は 

 まさに、世界のファッション流通業界でも進みつつあるオムニチャネルリテイリングの具体的な施策であるクリック&コレクトの進化版に他なりません。

 欧米では、

 顧客がオンラインで選び、決済も済ませた商品を会社帰りに店舗でピックアップしたり、

 マイページのウィッシュリストに載せた商品を販売スタッフと共有して店頭接客が始まるような

 事例が現れています。

 これらは2018年以降、間違いなく日本のファッション専門店の店頭にも浸透して行くことでしょう。

 それにしても、この「あなたが考える理想の小売業の姿は何ですか?」という質問はとてもいい質問ですね。

 迷走している流通業が、過去の延長線上で考える目先の業績に追われるだけでなく、

 今後どうあるべきかを考える上で、最も自問自答すべきことのひとつかも知れません。

 同企画のように、顧客(消費者)に問うのも悪くないですが・・・

 まずは、一度、自社にとっての「理想の状態」「最良の顧客体験シーン」を社員全員で顧客の立場に立って、自問自答のフリーディスカッションをしてみたらどうでしょうか?

 その際、前例から「できる、できない」、「誰の仕事が増える」、「誰の責任」など、「出来ない理由」を探して 貴重な芽を摘むのではなく・・・

 現在の課題とその理想のギャップを埋めるために まずは必要なことを具体的に挙げてみて、できることから取り組んでみたいですね

 今までのように、前年比ばかりに取らわれていたら、ジリ貧になるばかり・・・

 多少、大風呂敷になろうとも・・・

 理想の顧客体験シーンを描いて、そこから逆算するくらいの発想を持っていないと・・・目の前の壁は打開できない、未来も開けない時代ですよね。

 「あなたが考える理想のファッション専門店の姿は何ですか?」

 2018年 本格的なオムニチャネル時代の幕開けの年にあたり、

 リアル店舗とオンライン(EC)をどのように有機的に結び付け、相乗効果を図るのか?

 まずは「理想の状態=ビジョン」 を考えて共有してみたいものですね。


 今年もブログをお読み頂きありがとうございました。

 2018年も オムニチャネル時代そしてその先にあることにフォーカスをしてファッション流通の未来について綴って行きたいと思います。 よろしくお願いいたします。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
 
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December 20, 2017

ZARA(ザラ)創業者のアマンシオ・オルテガ氏がアパレル事業から引退?

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12月16日のハーバービジネスオンラインや12月18日のWWDジャパンによれば

 ZARAの創業者であるアマンシオ・オルテガ氏がインディテックスグループ社関連53社の役員から外れ、アパレル事業から引退をされたという記事が掲載されていました。

 これはインディテックス社の広報による報道ではなく、スペインの法務局の商業登記簿の告示によるものだそうです(WWDジャパン)

 ファストファッションの巨人、ZARA創業者のアマンシオ・オルテガがアパレル事業からの引退を決意

 「ザラ」創業者のオルテガ氏が引退 ファッションビジネスで最も成功した1人


 拙著「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)の執筆の取材を通じて、同社の歴史や社風や経営体制について、文献に触れ、関係者インタビューを重ね、深く考えれば考えるほど・・・

 例え、同氏がいなくなってもZARAやインディテックスグループの他のブランドも順調に回り続けるだろうと思っておりましたので・・・

 今回、同氏が役員から外れるからと言って、業績に対する影響は全くないと確信しています。

 同社は、後継者に引き継ぐのが大変なカリスマワンマン経営者によるトップダウン型の経営ではなく、
ボトムアップ型の経営理念とオペレーションが企業文化にあります。 

 関連エントリー‐カリスマ経営者の後継者選び

 というか、ボトムアップ型というよりも、

 「店頭での顧客の需要」情報を起点とした高速サプライチェーンを実現することが「ミッション(使命感をもってやること)」であり、

 そのスピード感と柔軟性を維持するために、社員全員が真摯な「聴き上手」であることを「カンパニースピリッツ(行動規範)」とし、

 長年 オルテガ氏自らが行動をもってそれらを社内に示してきた会社です。

 ハーバービジネスオンラインの記事の後半にあるインディテックス社 現CEOパブロ・イスラ氏が語るオルテガ氏の秀でた長所という = 「謙虚さと聞く能力」

 これはまさに筆者が取材から一貫して感じたオルテガ氏像であり、同社内ではそれを見習った企業文化が熟成されていると言えます。

 ですから、社員はみな、いつもイライラしていたりすぐに決定をひっくり返したりする経営トップを見ているのではなく・・・

 また、保身のために情報にバイアスをかける中間管理職に悩まされることもなく・・・

 常に顧客の方を向いて仕事をしている。

 そして、その「顧客の需要ファースト」のスピリッツは 形骸化した標語でなく・・・
 
 誰がやっても同じ結果が出せるように、長年、最適化されたしくみとオペレーションに支えられ、アップデートしてきたと言えます。

 もともと、対外的な会社の「顔」として表にも出ずに、経営の意思決定にもほとんど口を出さなかったというオルテガ氏。

 ですから 今回の退任はあくまでもペーパー上の話だけであって、同社にとっては、実質何も変わらないのです。

 記事によれば、「オルテガ氏は、今後は不動産事業(おそらくインディテックス社の大株主であり、ファミリーの資産管理会社のことだと思います)と財団の経営に専念する」としているとありますが・・・

 これまで経営の意思決定にはほとんど口は出さなくても・・・

 長年 ZARA WOMANの商品企画が大好きで、「聴き役」として携わることを生きがいとしてこられた同氏のことですから・・・ 

 今後、役員から外れても、これまで通り、時間さえあれば、そのチームのそばに居続けて、商品企画を一緒に楽しまれるのではないかと思われますよ(笑)

 後継者問題に苦労しない会社のありかたとしても、オルテガ氏が率いたインディテックス社の企業文化から学ぶことは少なくありません。 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
 
  
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December 12, 2017

ZOZOSUITでは顧客の正確なサイズをどう活かすのか

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 11月の後半から12月の初旬は11月22日に無料配布を発表したZOZOSUITの話題で持ちきりでしたね。

 最新テクノロジーのボディスーツ=ZOZOSUITを使って多くの消費者のリアルな体型サイズを採寸してデータベース化する試みはこれまで考えた人はたくさんいたかも知れませんが、それを実現する試みはとても革新的なことだと思いました。

 そもそもアパレル業界では「これがうちのサイズ」という明確なサイズ基準を持っているブランドや専門店は長年続けて来た大手以外では少ないです。

 持っていたとしても、流行が変わり、担当者が変わるとその方の判断で変えてしまったり・・・

 例え基準(サイズスペック)は持っていたとしても生産委託先(メーカーや商社や工場)任せにしているところも少なくないので、結果的につくる先の商品によってばらつきが出ることが普通かも知れません。

 そして、生産前に試作品サンプルを確認する時も、実際には時間がなかったり、人手が足りず、近くにいる人やデザイナー本人が着て確認し、その時の気分で良しあしが変わるケースも少なくないのが現実でしょう。

 また、中心サイズであるMサイズはしっかりチェックしていたとしても、量産するSやLやXLサイズなど他のサイズが理想のサイズやフィットに出来上がっているのか?すべてを確認しているわけではないのが多くのブランドやチェーン店の実情だと思います。

 ユニクロ含め、大手チェーンが基準にしているJIS規格をとってみても、だいたい古いデータでしばらく更新されていなかったり・・・JISを基準にした上で体型の維持を心がけているモデル事務所所属のフィッティングモデルを活用していたとしても、

 最終的にはジャストサイズではなく、多くの消費者をカバーするために、あえて大き目につくられるケースが多いようです。

 そんな現実なので、Mサイズと言ってもブランドによって、商品によって基準サイズもフィットもまちまちなわけで、店頭で実際に試着をしてもらって納得した上でご購入頂くというのが現実だったのではないでしょうか。

 日本最大のファッションECモールであるZOZOTOWNでは数ある出店ブランドを独自で商品の採寸をして対応して来たものの、そんな現実から起こるサイズ交換や返品に長年苦労し、業を煮やして来たのでしょうね。

 ZOZOSUITの試みは そんなミスマッチによる返品や手間を減らすことが第一でしょう。

 更には顧客データに基づき顧客のサイズに合ったブランドや商品をレコメンドすること、

 顧客のぴったりのサイズの在庫のある商品しか画面に表示されなかったらお買いものもストレスフリーで便利かも知れません。

 そして、出店ブランド側にも、顧客が望んでいるのはこのサイズ、とサイズ規格の管理を徹底させるコンサルティングをすることも視野に入れているのでしょうね。

 これらが改善するだけで、PB商品などを作らなくても業績は上がるのではないかと思っています。

 もっとも、ZOZOSUITを無料で世界中に配るほどの投資をするくらいですから、そのリターンとしては、やはりPB商品の販売による増益を狙うべきだと思いますが・・・

 究極のフィットのベーシックと言っても、低価格、量産を想定しているので、ネットで騒がれているような、パターンオーダーやイージーオーダーのようなカスタマイズはあり得ないでしょうね。

 リアルな生活者のサイズをアップデイトし、新たなスタンダードをつくり、多くの人をカバーする、最適なサイズのボディに対して、

 せいぜい シャツの袖丈や、裾上げをしなくていいようにパンツの股下のバリエーションをつけるくらいから始めるのではないでしょうか?

 「パーソナライゼイション」は確かにこれからのキーワードだと思いますが・・・

 何万円もする商品であれば別ですが、低価格のマスマーケットを相手にしている企業が既製品の丈詰め以外のサイズの「カスタムメイド」に取り組むことは極めて効率が悪いので取り組むべきではないと思っています。

 その観点からユニクロのセミオーダーの取り組みにも少々懐疑的です。

 それよりも業界は先にやることがあるでしょう。

 まずは、既存に流通している溢れんばかりの商品、情報の中からその人にあった商品在庫をマッチングして差し上げることです。

 それから、これまで業界が軽視していた小さいサイズや大きいサイズの方々への対応は固定客、まとめ買いにつながるので、客単価の高いリピーターづくりという観点からいいでしょうね。


 ところで、ZOZOSUITによって、顧客の正確なサイズデータが得られたとしても、

 それに基づいて最適な着心地や履き心地の商品をつくることの方がはるかに難しいでしょう。

 正しいサイズに基づいてつくられた服と着心地がよい服は必ずしもイコールではないでしょうし

 (人の体にはいろいろな動きがありますので)、

 更に、ピッタリの服と、着た人が美しくあるいはカッコよく見える(似合う)服ってのも

 必ずしもイコールではないので、このあたりも相当研究が必要でしょうね。

 期待したいのは、ユニクロ始め日本の多くのアパレルが歴史的にそうして来たアメリカや日本式の量産を前提とした平面製図的な発想から始まった型紙やものづくりではなく、

 フランスやイタリアやスペインで実践されて来たヨーロッパの着る人を起点とした立体裁断的な発想をベースとする手法。

 着る人を美しく見せながら、かつ着心地のよい工夫のされた服づくりが実現したら・・・

 本当に革新的なことになるでしょうね。

 以前 弊社でベテランパタンナーさんたちと行った勉強会では

 ZARAは量産ながらそれを実現しているようですので不可能ではないはずです。(以下のリンクをご参照下さい)

 これまでの量産志向の業界が解決できなかったサイズやシルエットのジレンマを取り上げた過去のエントリーがいくつかあるので、あわせてご紹介しておきますね。

 今回のZOZOの取り組みがきっかけとなり、そのあたりのソリューションにつながれば、

 ファッションの民主化(大衆化)が進み・・・

 これまでファッション消費にそれほど関心を持たなかった人や楽しめなかった人たちもファッションを楽しむ、その裾野が広がり・・・

 マーケットの活性化につながることを期待をしております。

 関連エントリー-ZARA(ザラ)も実践する 顧客起点のヨーロッパの服づくりの基本

 関連エントリー‐グローバルSPA(H&MとZARA)と日本のアパレル企業の商品を比較して思ったこと

 関連エントリー‐ヨーロッパの服は「細く見えるだけで本当は細くない」

 関連エントリー‐モダナイズドとサイズ展開

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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