November 15, 2017

ECとリアル店舗、ファッション消費の未来とパーソナライゼイション

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 11月6日発売のWWD ジャパン 創刊2000号記念号 は1979年の創刊時からこれまでのファッション流通の出来事が年代別にレビューされていて大変読み応えがありました。

 もちろん、歴史を振り返るだけでなく、キーパーソンたちが未来を語るコメントも多数あり、

 特に後半162-163ページにある 

 米パーソナルスタイルパッケージ提案ECサイト 「Stitch Fix(ステッチフィックス)」 の創業者でありCEOのカトリーナ・レイク氏と 

 ECの世界から英老舗セレクトショップ 「BROWNS(ブラウンズ)」のCEOに就いたホリー・ロジャース氏のインタビュー記事

 「独自のパーソナライゼイションを追求 2人のCEOが語る小売りの未来とは?」

 は正しく ファッション消費の未来、これからの10年 ファッション流通業界が取り組まなければならないことを示唆する内容で大変興味深く読ませていただきました。

 特に共感した部分を引用、紹介させていただきますね。

 まず、Stitch Fixはご存じでしょうか?

 STITCH FIX

 2011年アメリカで創業されたパーソナルスタイル提案ECサイト。

 登録時、85の質問に答えた顧客の好みから、AIが700ブランドの中から商品を選定、その後、スタイリスト(人間)が補正したコーディネートアイテム5点(アウター、トップス、ボトムス、服飾雑貨)がパッケージで顧客の自宅に届くECファッションサービス。

 顧客は気に入ったものだけを購入し、そうでないものはコメントをつけて返品するというものです。これを定期的に繰り返す中で顧客の選別行動に基づき、AIがその後の商品選定の精度を高めて行きます。

 アメリカで 現在220万人の会員がおり、75人のデータサイエンティストがAIをメンテし、3400人のスタイリストが対応しており、年商1100億円 (粗利率44%)にまで成長し、この度、上場申請をしたそうです。

 同社のCEO が語る ミッションは (以下 「  」内 引用)

 「消費者から求められているのは自分にぴったりのジーンズがみつかること。 モールを一日中探し回りたいわけではなくて、快適かつきれいに見えるジーンズを見つけたいだけ」

 「モールのいろんな店をさまよって、店員に買い物を助けてもらう今の形が将来まで続くわけがないし、30個ものブラウザを開いて何を買えばいいのか悩む行為もあり得ない。私には、どちらの行動も将来まで存続しているとはどうしても思えない。」

 「(ファッション購買の未来は) 商品の大半はオススメ機能に基づいて購入されると思います。

 (我々は)その人に完全にフィットするものは提供できないけど、その人に最適な1着を提供します。
将来的にはカスタムフィットを行うこともあり得ますが、すでに大量の服が流通していますからね。」

 「データを理解し、顧客のニーズと在庫をうまくマッチさせることで在庫を効率的に回し、リスクを最小限に抑えている」

 そして

 「パーソナライゼイションという切り口から集めた情報を新たな顧客に当てはめることで成長を続けている。」

 以上 「  」内 引用

 「パーソナライゼイション」というと カスタムメイドに取り組む(作りたがる)会社が多いですが、その労力は結構大変なものですし、限界を感じてしまいます。 

 それよりは、すでに流通している商品の中から顧客の需要と在庫をマッチングする、大量の情報から、絞り込んで差し上げることによってショッピングのストレスを解消したり、時短によりライフタイムを有効に使っていただくことがソリューションにつながる

 という点は筆者の専門分野である、在庫最適化や在庫コントロールのコンセプトに通じるものがあり、とても共感したものでした。 

 かつてはアナログでやっていたパーソナルスタイリストを AI(ロボット)とスタイリスト(人間)が協働で行うところにも未来を感じますね。

 続いて オムニチャネルリテイリングを推進する英老舗セレクトショップ「BROWNS」。

 BROWNS

 「BROWNS」はイギリスをマーケットリサーチされる方にとっては定番の定点観測場所、

 そこへ 百貨店、ラグジュアリーブランドを経て、ラグジュアリーブランドのECサイト「ネッタポルテ」の創業メンバーだった女性がCEOに着任して目下オムニチャネル対応で改革中。 そんな彼女のコメントです。

 「(我々のゴールは)リアル店舗とオンラインストアの機能を統合して良い循環をつくること

 例えば、顧客が自宅で欲しいものをウィッシュリストへ追加していく。

 そのアイテムを店で試着するときに、顧客の専任スタッフはウィッシュリストを見てアイテムを事前に準備しておく。

 さらには、顧客が選んだアイテムの他に、オススメのものも一緒に準備しておける。

 そうやって、全部のテクノロジーやサービスを顧客満足度のために結集し、循環させることがゴールです。」

 以上 「 」内 引用

 これはまさしくリアル店舗をもつ企業がこれから5-10年内に実現しなければいけない最も重要なショッピングのシーンのひとつでしょうね。

 生活者はファッションを買わなくなったのではない、お金がないわけでもない。

 また、これまでさまざまなショッピングのストレスがたくさんのファッション消費を楽しめない方々を生んでしまったかも知れません。

 ストレスなく、気の利いたファッションが的確に、時短とともに手に入るようになれば

 まだまだファッション消費は活性化し、より多くの人に楽しんでもらえるものになるのではないか?

 お2人のインタビュー記事を読んでいて、これからますます変わるショッピング環境にあわせて

 まだまだビジネスチャンスはたくさんありそうだと感じたものでした。 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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November 06, 2017

いよいよ年内発売開始、ZOZOTOWNのプライベートブランド(PB)の概要が徐々に明らかに

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 11月1日の繊研新聞や11月3日の日経MJに先ごろ発表されたスタートトゥデイ第2四半期決算を受けてZOZOTOWNの今後の施策に関する記事が掲載されていました。

 引き続き増収増益の絶好調が続く中で、各紙の記事は前澤社長が自ら説明した今後の

 「送料」と「プライベートブランド(PB)」に関する内容が中心でした。

 送料に関しては、「送料自由化」のテストを経て11月1日から一律200円に決定しましたね。

 この新送料決定までのプロセスが非常に見事だったので、ちょっと整理してみましょう。

 まず、購入者が任意に選べる「送料自由化」(=購入代金に関わらず顧客が希望する送料で発送する;0円=無料も含む)の中間報告では平均が96円、無料を選んだ顧客が43%あったとのことでしたので、
 
 有料を選んだ残り57%の顧客が選んだ送料の平均はおそらく170円弱だったと推計されます。

 そして、これまで5000円以上の購入者が送料無料、それ未満は有料で一律399円だったので、

 前者と後者の構成が半々だったら今回の新送料設定での両者のプラスマイナスはほぼトントン

 5000円以上     0円+200円=200円
 5000円未満   399円-200円=199円

 おそらく、平均出荷単価が8186円ということなので、5000円以上の方が多数と推測できます。これにより、ZOZOはこれまで送料を頂けなかった顧客からも送料を頂く「有料化」=「送料無料撤廃」を果し、

 運送会社の運賃立て替え収入総額が増えることによって・・・運賃値上げによる経費増にある程度充当することが出来るようになりますね。

 一方、運送会社の値上げを

 単純に顧客に転嫁したモールや
 
 頑張って値上げしませんと宣言して経費増になっているモール・・・

 いろいろあると思いますが・・・

 同社は 顧客、ZOZO自身(そして株主対策)、運送会社 すべてに納得感のある、

 「送料値下に見える実質値上げ」は見事だったと言わざるを得ません。 

 さすが商売人です。

 次に業界が注目する、今後のZOZOの更なる成長を左右すると言っても過言ではない、プライベートブランド(PB)について。

 今回、「全貌の半分~2/3を語る」と前置きして始まった前澤社長自らのプレゼンテーションで出たキーワードを列挙すると 以下の通りです。

・年内ZOZOTOWNで販売スタート (海外でもアメリカ・ドイツで来春から販売スタート)

・誰もが1枚や2枚、1本や2本持っている超ベーシックアイテムを、最高品質、バリュープライスで提供する 

・成功すれば世界中のアパレル企業を超える規模感のブランドになりうる

・ファッションに関心のない層への洋服で根源的な課題を解決するもの

・これまでファッションブランドが使ったことのない設備を使って製造

・科学やテクノロジーの力でサイズ・シルエットなど究極のフィット感を実現 

・究極のフィット感を実現するために設備投資 9億円 研究開発 5億円を 使った

また、

・デザインや価格面で既存出店ブランドと競合しない

・コーディネートが得意な販売員を100人募集する。着こなしの分析や解析もしてゆく

・あまり在庫リスクを抱える商売にはならない

とも発言されています。

以前のエントリー
 ZOZOのスタートトゥデイが大幅増収増益で株式時価総額1兆円を突破 現状の課題と次の手は?

 の後半部分で 筆者は ユニクロと競合するベーシックを最有力に挙げましたが、

 この方向はどうやら正しいようで・・・ 

 ただ、これまでファッションブランドが使ったことがない、特殊な設備を利用するとしているところが意味深で楽しみです。

もうひとつ、

・ファッションに関心のない層への洋服で根源的な課題を解決するもの

・コーディネートが得意な販売員を募集とのこと

というところがとても気になりました。

 もしかしたら、PB商品の単品開発&販売にとどまらず、ZOZOTOWN既存出店ブランドの在庫も活用して

 アメリカで急成長中のパーソナルスタイリングパッケージ提案型ファッションECサイトである

 Stich Fix(スティッチフィックス) 

 の日本版もスタートするのではないか?

 とも思えてきました。

 年内発売とのこと、リリース間もなくですね。 

 どんな商品、アイデアが飛び出すのか、楽しみにしていましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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October 23, 2017

カリスマ経営者の後継者選び

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 10月21日の日経新聞にファーストリテイリング柳井会長の後継者に関するインタビュー記事が掲載されていました。

 記事によれば同氏は70歳になる2年後に後継者に社長を譲り、会長職に専念するとのこと。後継者は外部からではなく、現在、内部に40人強いる執行役員の中から選出されるとのことです。

 柳井氏は「創業者に引退はない」とし、社長を譲った後は「会長職で今の仕事は将来こういうふうにした方がよい」とアドバイスする立場を想定されているようです。

 経営のスピード判断のために、体力があり、ITの知見を持つ方が有力候補とのことですが・・・

 誰がなったとしても、すべてをご自身で考え、アグレッシブに決断して来られたオールマイティのオーナーの後継者のプレッシャーは並大抵のものではないことは想像に難くありません。

 経営スタイルの形に「正解」はひとつではないと思いますが、業界を見渡すと・・・

 創業家によるワンマン経営もありますし、

 得意なことをそれぞれが役割分担して創業者とNo2が二人三脚で成長するスタイルもあるようです。
 
 「ユニクロ対ZARA」の執筆を通じて、ファストリの柳井会長は前者、同社がその背中を追っているZARA(インディテックス社)のアマンシオ・オルテガ氏は後者と理解をしました。

 ZARAの創業者であるオルテガ氏は商品やものづくりが好きな現場主義の方で、現場の人の話に耳を傾けながら、自分でフットワークよく動く職人肌。 

 1975年のZARA創業後、1980年代に事業拡大にあたり、ITに興味があったものの、自分には手におえないと判断したため、コンピューターに詳しい大学教授であったホセ・マリア・カステリャーノ氏をスカウトして、後に副社長(COO)に抜擢します。

 その後、オルテガ氏はものづくりに専念、インフラ周りをカステリャ―ノ氏が分担し、オルテガ氏が国内で実現していた人海戦術的なSPA(製造小売業)オペレーションをより効率よく、さらにグローバル展開する上で、インフラ整備含めてIT化し・・・

 更にそれを加速するための調達資金のために株式公開に踏み切ったのがカステリャーノ氏です。

 2005年に退職されますが、1984年の入社から約20年間のカステリャーノ氏の功績が今のZARAのサプライチェーンやインフラの基盤づくりと急成長に大きな貢献をもたらしたことは間違いありません。

 カステリャーノ氏の後任として、2005年以降、NO2のCEOとして経営を主導するのは弁護士出身のパブロ・イスラ氏です。 

 同氏は急成長(年率20%成長)の後の持続可能な成長(同10%成長)の担い手です。

 イスラ氏はサステイナブル経営に注力し、

 経営やサプライチェーンの環境を法務に明るい立場から整え、世界の株式市場から資金を調達し、既存のインフラに更に磨きをかけるべく投資をして今日に至ります。

 この オルテガ x イスラ体制は10年が経過しましたが・・・

 2030年のゴールから逆算した経営を行っているので、もう10年くらいは続きそうな感じですね。

 関連エントリー-ZARAのインディテックスグループ、サステイナブル経営からインフラ投資への好循環

 ZARA(インディテックス社)の2人のNO2との2つの時代を通じて共通しているのは

 オルテガ氏は全く表に出ずに、常に商品開発現場にいて、表の顔はNO2に任せて来たところでしょうか。

 表の顔としても印象の強い、強烈なカリスマを持った経営者の後任はやはり比較をされることも多いので、そういう意味でのやりづらさもあるでしょうね。

 果たして、ファストリではどんな方が柳井氏の後継者として選ばれるのか?

 業界の関心は尽きませんね。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 事業を経営する創業者の理念や時代とともにそれを支えて来た体制を理解するのも面白い。
 ユニクロとZARAはそういった観点からも真逆のアプローチと言えます。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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October 09, 2017

実店舗とオンライン、5年後のファッション消費の未来から考えよう

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 10月5日の繊研新聞にJDAソフトウエアがプレスリリースしたインターネットショッピングに関する消費者意識調査に関する記事が掲載されていました。

 同調査資料のオリジナルをご覧になりたい方はこちらから
 
 2017年インターネットショッピングに関する消費者意識調査


 この調査は

 18歳以上の男女を対象にしたインターネット調査ですが(有効回答数2093人)

 私が注目したのは2点

 今後ファッション消費において、

 1.どれくらいの割合がオンライン経由でなされ、

 そのうち

 2.どれくらいがクリック&コレクト(オンライン注文の自宅以外受け取り)を利用するのか?

 に関する数値です。

 まず前者については

 インターネットでも実店舗でも、どちらでも購入できる商品の場合、インターネットと実店舗のどちらで購入することが多いですか?という質問に対して、

 小売全体では約70%が実店舗で購入するに対し、洋服/靴/ファッションは75.5%が実店舗で購入するとのこと。

 この結果は、昨今、業界識者の方々が語り始めている「ファッション専門店のEC売上比率の限界点は30%にあり?」という議論に近いものがあるかも知れません。

 また、

 過去1年間にクリック&コレクト(オンライン注文商品の店舗など自宅外受け取り)を利用しましたか?という質問に対しては

 今回(2017)は18%が利用経験ありと答え、前年(2016)の14%に比べて増えています。

 ちなみに同社は同じ調査を英国でも行ったため、比較数値が出て来ますが、

 英国ではクリック&コレクト利用経験者比率は54%と過半数です。

 日本の場合、なぜクリック&コレクトを利用するか?という理由としては

 配送手数料がかからない    44%
 自宅より確実に受け取れる   42%
 自宅への配送より便利      34%

 一方、クリック&コレクトにおいてのトラブル体験は

 日本では74%の利用者が持っており、これは英国の54%よりも高い数値となっていますが、日本の上位の理由は・・・

 店員が商品をなかなか見つけられない、時間がかかった 39%
 受け取りの専用スペースがない  29%
 対応する店員がおらず待たされた 18%

 とのことです。 
 
 ストレス軽減のためには、同サービスが社内でしっかり通達され、

 アルバイトさん含めて店舗スタッフもそういったお客様が来店された時の対応が周知徹底されているかどうかにかかっていそうです。

 これまで、日本のクリック&コレクトがどれくらい進んでいるかを数字で掴めませんでしたが、今回、初めて数字に触れて、日本でもまだ低い数値ながら、徐々に増えていることがわかりました。

 また、クリック&コレクトが普及しているイギリス(体験者比率54%)との比較を見て・・・以前、私がイギリスの老舗SPAであるNEXTのアニュアルレポートを読んだ時にこんな数字が出ていたのを思い出しました。

 これは2016年1月期のものですが、

 オンライン注文を店舗で受け取る比率が過去5年間に急増

 2010年     2015年
  13%  ⇒   55%

 これは同社が2010年からオンラインビジネスに力を入れ、サービスの認知とサービス精度向上に努めたからに他なりません。

 この数字を思い出して、JDA社の英国のクリック&コレクトに関する調査結果とNEXTの実態が近いこと、

 そして、英NEXTのオンライン注文のクリック&コレクト比率が2010年に 日本の2016年と同じ水準であり(それぞれ13%と14%)、その5年後にNEXTではオンライン注文をする過半数(55%)の顧客が自宅外で受け取るようになったことからすると・・・

 日本でもひょっとすると、2021年ごろにはオンライン注文者の過半数がクリック&コレクトを利用するようになるのかも知れない?という仮説が描けるのではないかと思いました。

 もっとも、企業がそれに耐えうるフルフィルメントなどインフラ投資を着実に進め、店頭と一体となって、店頭でのトラブル比率を下げることがキモになることは言うまでもありません。

 JDA社の資料によれば、日本の小売企業はまだECのシステム周りに投資をしているのに対して、

 欧米ではその先を行って、フルフィルメントへの投資が旺盛とのことです。

 これから5年後、ファッション消費の未来はどうなっているでしょうね。そんなことを想像しながら・・・

 未来から逆算して、オムニチャネル時代にインフラ投資を進めながら、トップがリーダーシップをとって店頭を巻き込んで社内でお客様のメリットを周知徹底する、

 そんな取り組みをそろそろ進めなければ・・・業界で取り残されるというか、顧客から「遅れている店」というレッテルを貼られてしまいそうな局面に入って行きそうです。

 関連エントリー-ロンドン視察から 日本でのクリック&コレクトの普及を考える


 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 オムニチャネル対応も顧客中心主義の信念の延長線上にある ユニクロ、ZARAのSPAビジネスモデルを比較しながらわかりやすく解説しました。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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October 05, 2017

ZARAのインディテックスグループ、サステイナブル経営からインフラ投資への好循環

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 先週、東京ビッグサイトで開催されたIFF MAGIC (インターナショナルファッションフェア)2017秋展において 2009年以降 世界のアパレル専門店の中で売上、利益とも世界一をキープし続けているZARA(ザラ)を展開するインディテックスグループの直近の取り組みについて講演をさせていただきました。

 拙著「ユニクロ対ZARA」(2014年11月日本経済新聞出版社) 出版直後の IFF 2015春展でも講演をさせていただきましたが、

 その時の講演の様子は YOUTUBEでご覧になれます。 

 あれから2年半が経ち、ZARAがその強さを確固とするために取り組んで来た

 サプライチェーンマネジメント、オムニチャネルリテイリング、サステイナブル経営の3つのキーワードについてお話しさせていただいたものです。 

 ひとつ目のサプライチェーンマネジメントに関しては、

 品揃えの65%にあたるトレンド商品はスペイン近隣国で生産し、残りの35%のベーシックをアジアにアウトソーシングする「ハイブリッド型生産ポートフォリオ」の強みについて。 

 そして、前者の近隣国で実践している「スケーラビリティ」が追求できるサプライチェーン工程の内製化と設備投資についてのお話しをしました。

 アパレルの原料・素材が製品となって店頭で販売されるまでのサプライチェーンの工程のうち、多くの競合他社がその多くをアウトソーシングしているのに対し・・・

 ZARAでは多くの工程を内製化し、自らコントロールしていることで知られています。

 しかし、何でもかんでも内製化しているのではなく、確固としたポリシーがあり・・・

・どこでもつくることができるベーシック商品や

・トレンド商品に関しても縫製(アッセンブル)工程
 
 はアウトソーシング(外注)しながら・・・ 

 その一方で、「スケーラビリティ」が追求できる、すなわち、機械化、自動化、IT化によって効率化が図れる工程やインフラ設備については積極的に投資を行い、自前で抱え、磨きをかけて来たのです。

 「スケーラビリティ」とは規模を拡大するほど単位あたりのコストが安くなることを意味します。

 ZARAは目先のコスト削減を問題にするのではなく・・・

 その出自である製造業的発想を持ち、むしろ自前で抱えた方がメリットがあると判断したものは、投資をすることによって、中長期的に生産性を上げて行く、単位あたりのコストを下げて行くことを重視する企業であることに・・・

 今回の講演資料をまとめていて、あらためて気づき、感心したものでした。

 関連エントリー- ユニクロが挑むハイブリッド型マーチャンダイジング


 ふたつ目は、ZARAが2年前から経営方針として取り組む いわゆるオムニチャネルリテイリング、

 Seamlessly integrated online-offline store model   実現に向けてのお話です。

 日本ではEC強化が叫ばれることはあっても、ほとんどの企業が、まだまだオムニチャネル化どころか、マルチチャネルつまり、同じ商品を売っていても、直営店とECが関連性の薄い別々の販路である状態から抜け出せていないのが現実です。

 一方、ZARAが提唱する このSeamlessly integrated online-offline store model というフレーズは 

 「オムニチャネル」という言葉より・・・ オンラインを活用して、どういうお店を目指しているのかがわかりやすくていいですよね、

 そしてそのポリシーの下、同社は着実にその方向に向かっているのがわかります。

 ZARAはこの経営方針に近づくため、

 ・クリック&コレクト(オンライン注文商品の店舗での受け取り)を推奨し、
 (オンライン商品の店舗受け取り比率66%)

 ・顧客の利便性を追求したオムニチャネル対応スマホアプリ”InWallet”を自社開発して普及を始め、

 これらの取り組みを促進するために

 ・RFIDの世界のZARA全店舗への導入を完了し、店舗作業を軽減させながら、在庫データの精度を高めています。

 関連エントリー- ZARA(ザラ)のテクノロジー活用はあくまでも店舗への集客第一・店舗作業軽減が目的


 そして、最後にサステイナブル経営です。

 同社は持続可能な成長を行うために、グローバル企業の中でもいち早く、2002年からサステイナビリティレポートを発行しています(アニュアルレポートに組み込んで本格的に取り組んだのは2005年度から)。

 そして、2015年からは 国連加盟国が2030年までに理想の世界をつくるために合意した、国家や企業が目指すべき17の開発目標=サステイナブル・ディベロップメント・ゴール(SGD’s)に沿って自社の経営の優先事項を決め、その進捗状況を毎年アニュアルレポート(年次報告書)で発表し始めました。

 サステイナブル・ディベロップメント・ゴール(SGD’s)とは


 このSDG’sとは旧来型のコーポレートガバナンスやCSR(企業の社会的責任)への取り組みをより進化させて・・・多くのグローバル企業が取り組み始めたサステイナビリティ経営のガイドラインのようなもので、

 ユニクロのファーストリテイリングも2016年から4つの目標に取り組み始めましたが、ZARAのインディテックス社では17の目標すべてを自身の企業活動に関連づけてレポートしています。

 特に、同社の取り組みがわかりやすいなと思ったのは・・・

 多くの企業が従来のCSRの延長で行っている・・・店頭から遠く離れたところで行われているような・・・環境保護や取引先の人権・労働環境監視や慈善活動などに取り組むだけでなく、

 店頭からお客さまにも見える、事業そのものと結びつけて、とてもわかりやすい取り組みでSDG’sの目標に向かっていることです。

 例えば、 

 ・ RFIDやアプリなどのIT投資をしていることも、お客様と持続可能な、長いお付き合いをするために、お客様のお買い物環境をより便利に快適にするための投資であるという説明であったり、 

・ 環境にできるだけインパクトを与えない素材を使った商品開発=ZARA JOIN LIFE コレクションに力を入れていることだったり (現在 全売上の5%に相当するまでになったそうです)

・ 商品の配送販売に使用される資材(ダンボール、ハンガー、セキュリティタグなど)のリサイクル・再利用を徹底することであったり

 店舗や商品やお客様の買い物環境の改善も2030年までに実現すべき理想的な状態に組み入れて、取り組んでいます。

 目先の業績だけに追われるのではなく、10年以上も先である2030年の理想の姿から逆算して今やるべきことを考えるなんて・・・さすが、トップを走る企業の余裕ですよね。

 そして、ZARAはその安定的な成長率や高い利益率だけではなく・・・

 長年、サステイナブル経営に取り組んでいる、その企業姿勢が世界の機関投資家から大いに評価され、サステイナブル経営を行う企業に積極的に投資するというコンセプトの世界のESG投資からたくさんの資金を集めています。
 
 その資金が、同社の株式時価総額を12兆円超にまで押上げることにつながり・・・
 
 時価総額3兆円台のH&Mやファーストリテイリングとは4倍もの差をつける結果となっています。

 これらの株主から集めた資金は当然、ZARA始めインディテックス社のブランドのサプライチェーン、物流、IT強化のための更なる投資の原資となり・・・

 ますます競合他社を引き離す収益性を生み出すための強いインフラ基盤が着々と整って行くという話につながります。

 この サステイナブル経営⇒ 株式時価総額アップ ⇒ インフラ投資 ⇒ 収益性の向上 

 の循環を作り上げた同社の経営スタイルは しばらくは敵なしというところではないでしょうかね。

 関連エントリー ZARAインディテックスグループのサステイナビリティ経営

 関連エントリー-ZARA(ザラ)のデマンド型ファッションバリューチェーン


 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 本書を通じて お客様のためにIT、物流インフラ投資を続けて来たZARAのポリシーに触れていただければ幸いです。 
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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