May 25, 2020

世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

4cimg0441 世界の大手アパレル専門店各社の2019年度の売上高や利益などをまとめる機会ができましたので、   毎年恒例になりました売上高のランキングTOP10を共有させていただきます。
 円建て比較にあたり、為替レートは2020年1月末の €=120.3円、スウェーデンクローナ=11.32円、US$=109.06円、英国£=142.87円で換算しています。 

 尚、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライスストア、また、昨年まで1年遅れの売上高で掲載していた欧州の非公開大手アパレルチェーンC&Aの売上高はいよいよ掴めなくなりましたので、今回から除外しております。

 

順位 社名 本社;決算期 売上高 前年増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2020.1期) 3兆4028億円 +8% 5740億円 16.9% 7,469 ZARA
2位 H&M (瑞;2019.11期) 2兆6347億円 +11% 1963億円 7.5% 5,076 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2019.8期) 2兆2905億円 +8% 2576億円 11.2% 3,589 UNIQLO
4位 GAP (米;2020.1期) 1兆7867億円 -1% 626億円 3.5% 3,919 OLD NAVY
5位 Lブランズ (米;2020.1期) 1兆4084億円 -2% 2813億円 2.0% 2,920 Victoria's Secret
6位 プライマーク (愛;2019.9期) 1兆1132億円 +4% 1304億円 11.7% 373 Primark
7位 ネクスト (英;2020.1期) 6230億円 +3% 1102億円 17.7% 498 NEXT
8位 アセナリテール (米;2019.7期) 5990億円 -16% -742億円 赤字 3,445 Ann Taylor,Justice
9位 しまむら (日;2020.2期) 5219億円 -4% 229億円 4.4% 2,214 しまむら
10位 アメリカンイーグル (米;2020.1期) 4698億円 +7% 254億円 5.4% 1,095 AEO

                                  

以下、ランキングは昨年と大きく変わりはありませんが、1位~5位と気になるところにコメントさせて頂きますね。

1位のインディテックスは

安定の増収、二けた増益を達成しました。
65%の売上シェアを占めるZARAの店舗のスクラップ&ビルドと世界202か国に販売できるオムニチャネルのプラットフォームは整い、
2019年度はこれから数年間の飛躍が見込まれるであろう初年度の年でしたが、あいにく期末に発生した新型コロナショックの拡大と見込まれる店舗休業、売上減、過剰在庫増に対応して、2019年度の利益から在庫評価損を338億円計上しました。これも同社の余裕に他なりません。

2位のH&Mは

屈辱的な3年連続の減益後、二けた増収増益で歯止めをかけましたが、その営業利益高も、売上高が半分だった10年前の水準にも及ばず、という状態です。
新社長(女性)に変わって、これから、ようやく店舗のスクラップ&ビルドとEC強化が進むことになりそうですが、
欧州と中国の苦戦にどう対処するのか、課題は山積みのようです。

3位のファストリは

3年連続の増収増益を好調の中国とGU復活で成し遂げました。
成熟市場のユニクロ国内事業の既存店は微減、国内の成長はEC次第となります。

4位のGAPは

減収減益、GAPとバナリパのリストラは続きます。
オールドネイビーの分社化を中止し、オールドネイビー出身の女性新社長に今後を委ねます。
リストラ中に店舗が増えたのは、オールドネイビーと買収したJanie & Jack(キッズ)の店舗が増えたためです。

5位のLブランズは

ヴィクトリアズシークレット(VS)のリストラ、事業売却失敗もあり、減収大幅減益です。
売上の6割を占めるVSは既存店-7%で事業赤字。
一方、ヘルス&ビューティのバス&ボディワークス(BBW)は既存店+10%増、営業利益率23%と絶好調。
今後、BBWの分社化を計画しているようです。

以下、めぼしいところを付け加えますと、

6位のプライマークは

増収増益維持も既存店売上は2年連続の減少中と、事業は拡大中も、陰りが見られます。
ドイツが不調、南欧はまずまずの模様。
店舗の増床、減床を行い、やライフスタイル部門に力を入れています。

7位のネクストは

店舗を減らし、既存店(店舗)売上は‐5.7%もECは12%増で増収増益。
EC売上比率はほぼ50%となり、同、営業利益貢献は52%に。
店舗をスクラップ&ビルドをしながら、ECの利便性強化とともに、オンライン注文の店舗受け取りであるクリック&コレクト比率50%を誇ります。
ECと店舗を活かし、他社の商品も運ぶ、自社インフラを生かした物流プラットフォーム化への取り組みが進みます。

今回も、ランキングを作成するにあたって目を通させて頂いた各社の決算書から学ぶべきことは、
インディテックスとNEXTのように、

顧客購買行動の大転換の時代に・・・

出店に頼る成長ではなく、

いかに、既存店をスクラップ&ビルドして、
儲かる店舗、役目を果たせる店舗として残すか、
そして、ECと店舗を融合させ、いかに、
店舗を持っている強味を発揮できるか、

更に、構築したオンラインとオフライン(店舗)と物流網を・・・
いかに、更なる顧客購買行動の変化を先回りして、プラットフォームとして磨き上げるか?
ということでしょう。

ユニクロも、しまむらも店舗網を持ち、物流をコントロールできる「プラットフォーマー」としてのビジョンを描ければ、
まだまだ国内での伸びしろはありそうです。

さて、来年の2020年度のランキングですが・・・アメリカの大手はアメリカンイーグルを除いて、業態の成熟期~衰退期という局面とアマゾンエフェクトもあり、不振業態のバイアウト、既存店スクラップの嵐。
そこに世界的なコロナショックがのしかかります。
来年は、ランキングが大きく変わることが予想されます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

いつもお読み頂きありがとうございます。


 

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May 19, 2020

ワークマンのビジネスモデルと財務体質の強さ(2020年3月期決算から)

先日、現代ビジネスonlineに寄稿させて頂いた、作業服、作業関連用品チェーン、ワークマンの最新決算(2020年3月期)を反映した記事をご紹介させていただきます。

コロナ禍「アパレル壊滅」の中、ワークマンが一人勝ち「真の理由」~強みは商品開発力だけではなかった

とかく注目される機能性商品やコスパと言った商品軸ではなく、それらのコスパを支えるビジネスモデルや財務体質にフォーカスしました。

持続可能なフランチャイズ(FC)ビジネス、20200515_210147

FCによる人件費の変動費化と物件取得による家賃負担はほぼなしというローコストオペレーションによる低粗利率ながらも高い営業利益率、

生み出された利益を未来への投資に向けるキャッシュフロー経営、

そして、

販売管理費の22カ月分もあるフリーキャッシュフロー(手元資金)を持つ財務体質の強さなどを取り上げました。

 

今、流通企業経営で最も関心が高いのが事業継続のための手元資金でしょう。

記事の最後から2ページ目では、大手上場企業のフリーキャッシュフローの比較をしてみました。

直近決算(通期、四半期)の
キャッシュフロー計算書のフリーキャッシュフロー÷損益計算書の1か月あたり平均販売管理費
を計算したもの。

その中でもワークマンは断トツに「有事耐久性」抜群ですね。

休業が続く、コロナ後の企業活動の中で、フリーキャッシュフローの確保と販売管理費の見直しは業界最大関心事のひとつになることでしょう。

同社のビジネスモデルの早わかり版です。よろしければご一読を。

  執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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May 18, 2020

百貨店アパレル大手、レナウンが民事再生法を申請

東証一部上場の老舗アパレル企業、レナウンが15日に民事再生法を申請し、
そのニュースは、週末から、業界のみならず、経済界を駆け巡りました。

厳密に言うと、同社自身ではなく、債権を持つ、子会社が申請したことや、
中国の親会社の役員による不服申し立ての可能性もあり、
民事再生法適用、スポンサー探しにあたっても、複雑な事情があることが日経新聞に詳しく書かれています。

レナウン経営破綻 社長「不在」、四半世紀の悲劇

かつて、ベストセラーになったビジネス本「誰がアパレルを殺すのか」の主旨は、

20200519_152349

①百貨店アパレルのライセンスビジネス依存と

②商慣習である委託販売(その後、消化仕入)によって、在庫所有権者自身(アパレル)が在庫および損益をコントロールしづらい構造が

90年代以降、百貨店および百貨店アパレルを時代遅れにし、ダメにした、とブログ筆者は読み取りましたが・・・

そのビジネスモデルによって日本一のアパレル企業であった、という過去の成功体験が強すぎて、
最もそこから抜け出せなかったメーカーの一つがレナウン社だったのではないか?と思います。

拙著「アパレル・サバイバル」(2019年2月)でも述べましたが、

90年以降、ファッションビジネスのカギとなる現場は

バイヤーと営業の商談の場(百貨店、量販店時代)から

2000年代には直営店の店頭(SPA、ファストファッション時代)へと移り、

今や、顧客のスマホの中(デジタルシフトの時代)にある

というように、10年単位で顧客行動とビジネスモデルを見直さなければならなかった、
ファッション流通市場が変貌した今となっては、再生はそう簡単ではないでしょう。

ファッション流通のジャーナリストである松下久美さんが今回の報道を受けて書かれている記事

民事再生法を申請したレナウン、30年間のリストラの歴史と、4つのタラレバを考える

の中でブログ筆者が一番、痛かったと思うのは、

最終的には400億円を投じたという、そもそも高額過ぎたアクアスキュータムの買収判断と、それを活かせなかったことですが

当ブログの過去(2013年)にアクセスをたくさん頂いた投稿

世界市場を勝ち抜くには布帛(ふはく)が重要

の中で、

多くのアパレルメーカーさんと80年代から90年代にかけてものづくりのお手伝いをさせて頂いた経験から述べさせて頂いたように、

同じアパレルメーカーと言っても、どんな品種、製造方法、採算の採り方が企業体質の根底にあるのか? 

そんな出自の違い、しみついたDNAもビジネススタイル、財務体質、企業の耐久性に表れるものだと思っています。

コロナショックは、あくまでも弾きがねのひとつに過ぎず・・・

これから、いままで溜まっていたもの、そして、いずれは下さなければならなかったさまざまな結論に覚悟して向かい合うことを各社に迫る時代の幕開けに過ぎないように思います。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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May 11, 2020

ファッション流通企業の決算書から学ぶ(前編)

2019年4月からWWDジャパンの紙面で月イチ連載している
ファッション流通企業の決算書からビジネスのヒントを読み解く

「ファッション業界のミカタ」

今年に入ってからオンラインでも公開になりました。
ちょうど、12か月、一周りしましたので、まとめページをつくってみました。

筆者はこれまで、長年にわたり、各社のプレスリリース、決算報告、各種メディア記事、店頭定点観測、関係者インタビューなど様々な角度から企業分析を行い、クライアント企業さんはじめ、業界の多く方々が、お客様のために、明日のビジネスを切り開くための、実務のヒントを整理して言語化することを続けて来ました。20200511_133950

本連載は特に、経営者様や経営企画系や新規事業開発系のスタッフの方々のヒントになれば、という思いで続けているものです。
ご興味のあるところをお読みいただければ幸いです。

尚、WWDジャパンを定期購読していらっしゃる方は、ログインすれば、無料でお読みいただけますが、そうでない方は1記事100円の有料記事になっていますので、その点はご理解のほどよろしくお願いいたします。

第1回 
決算書に見る最強SPA「ザラ」

テーマ:営業利益、時系列分析
ファーストリテイリング(ユニクロ)を含む、世界トップ5ファッション専門店企業の過去5年間の営業利益率比較をしながら、ZARAのインディテックスグループの営業利益率が競合の4社と比べて落ちない理由を分析してみました。

ファッション業界のミカタVol.1

第2回
アパレルチェーンの代表的な3つの収益モデル

テーマ:ビジネスモデルと損益計算書(PL)
世界ファッション専門店売上トップ10の10社を3つのタイプに大別して、それぞれの特徴と強みであるはずのビジネスモデルを崩すことのリスクについて述べています。ユニクロはZARAになってはいけませんし、しまむらはユニクロになってはいけないのです。

ファッション業界のミカタVol.2

第3回
事業のライフサイクルと営業利益の関係

テーマ:ブランドのライフサイクルを知って成熟期移行に備える
ユニクロとしまむらの長年の売上、店舗、営業利益データを使って
ライフサイクル、特に成長期から成熟期への移行期の見極め方について解説しました。筆者が過去に関与したコンサルプロジェクトでも何度も行った分析で、この考え方は大方当てはまっており、ひとつの仮説としての確信を得ています。

ファッション業界のミカタVol.3

第4回
中国で考えた2階建て店舗PLのススメ

テーマ:オムニチャネル時代の情報発信地としての店舗の損益の考え方
中国に研修講師に行った際に訪問したアリババの「フーマーフレッシュ」というスーパーで、今、日本で進むオムニチャネル時代の店舗の損益および評価の見直し方法のヒントを得ましたので紹介しています。ECは店舗がなければ売上は伸びないことは世界で実証されています。であれば、独立採算であったはずの、事業損益や店舗とECの関係、評価のしかたを見直さなければいけない時代です。少しでもヒントになれば。

ファッション業界のミカタVol.4

第5回
欧州企業の年次報告書から学ぶこと

テーマ:アニュアルレポートに見る企業姿勢
長年、欧米日の大手アパレル専門店のアニュアルレポートを読んでいて、感じたことをまとめたものです。欧州はサステイナブルを早くから全面に出し、アメリカは株主利益優先。日本は業績やビジネスの取り組みアピールが精いっぱい。という時代が続きましたが、日本もサステイナブル経営待ったなし、という感じです。それらの変化を時系列でとらえてみました。

ファッション業界のミカタVol.5

今回はこの辺で、
第6回目以降は次回に続きます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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April 27, 2020

コロナショックによる購買行動の変化に対応しよう

時折ブログの転載をしていただいている、ファッションスナップドットコムさんにコロナ後の世界がどうなるのかの寄稿をご依頼頂き、
専門である顧客購買行動に基づく在庫の最適化の視点からコラムを書かせて頂きました。

特別寄稿連載 コロナ後:ファッション流通編 コロナショックによる購買行動の変化に対応する

詳しい内容はリンク先をご覧いただければと思いますが、

多くの人が1か月以上の外出自粛、在宅中心の生活をすることによって、
この間に体験、感じたことが、コロナ後の行動に少なからず影響を及ぼすであろう、
であれば、どんな購買行動の変化が起こるかを予測しよう、
そして、それに対応する準備をスピードをもって進めよう

という提言です。

この間、行動に大きく影響を与えたのは

ひとつはオンラインの強制体験による、
「オンライン」で解決するという行動選択肢の急浮上でしょう。

仕事では、リモートワーク、つまり、オンラインミーティングの活用が進み、
やってみたら、手軽で、わざわざ顔を突き合わせて会わなくても、
意外と事足りてしまうことがどれだけ多いか?実感された方も少なくないでしょう。

これから、あらゆる仕事が、

・会って話すべきことか、
・オンラインミーティングで済ませられることか

を考えることになるでしょう。

すると、無駄な出張がなくなる、
逆になかなか時間が取れなくで会えなかった方々、遠く離れた方々とのオンラインを介したコミュニケーションの時間が増える
ことが期待されます。

このビジネスチャンスは企業にとっても、個人にとっても
活かすか、どうかで、大きな差になるはずです。

お買い物も同様です。

普段、リピート購入している消耗品は、アマゾンなどオンラインで手軽にできます。
今までオンライン通販のヘビーユーザーでなかった方も
こういう時は、オンラインで済ますことができるんだ、意外と手軽。
わざわざ買いに行かなくてよい、
オンラインを活用すると、時間と手間がこんなに節約できると実感されたはずです。

そんな体験から、外出自粛、店舗休業が解除された後も

・お買い物もオンラインで済ませるものと、
・わざわざ買いに行く必要があるものの線引きが

コロナショック前よりも、はっきりして来たのではないでしょうか?

このように、仕事においても、お買い物にしても、
オンラインの強制体験によって、「時間」の価値と使い方が見直され、

オンラインで済ませてしまうもの、あえてオフラインに時間をかけるもの
という選択肢の中で行動するようになると見ています。

すると、行動の入口に「普通の道具」としてのオンラインをフル活用するようになるわけで、

オンラインで情報が取れないとか、
わざわざお店に行かないと在庫があるかどうかわからないとか・・・

顧客の大事な「時間」を無駄遣いさせるブランドや店舗は、
よっぽど希少価値がない限りは
その時点で顧客の選択肢から脱落するということを覚悟しないといけない、

という時代になるわけです。

これ、今までも言われていたことなのですが・・・

コロナショックに後押しされ、もう、待ったなしになったという感じです。

また、ファッション商品の購入については
オンラインを活用した情報提供、商品提供の環境整備の加速だけでなく、
別の課題もあります。

それは、ファッションのほとんどは外出先で会う人に合わせて選び、着こなすものですから・・・

この間、在宅中心で、外出しないのであれば、ほとんどの人にとって、
クローゼットの中の手持ち服で十分だったはず。

在宅期間中は、一部のファッション愛好家を除けば、
新しい服を買うのではなく、

むしろ、手持ち服の見直し(今後も活かしたいorもう着ない、処分したい)
の時間になったのではないかと見ています。

ここ10年のファストファッションの功罪もあり、世の中には安価なコスパ服が増え、
今や顧客のクローゼットには溢れんばかりの服があるでしょう。

それにあらためて気づいた方も多いはず。

拙著「アパレル・サバイバル」の後半でも提言したり
WWDジャパンへの寄稿でも述べさせていただきましたが、

「ファッション市場『大転換』に挑む 2020年代の流通革新と勝ち残る企業の条件とは」

これからは、

ただ業界が提案するファッショントレンドに基づく新しい服を売ることを考えるのではなく、

1)ユーザーがこれからも大事に着回したい服 を起点に
2)そこに、どんなアイテムを取り入れたら今シーズンのトレンドを楽しめるか

というユーザーのお気に入りの服を起点にする、という視点を持って毎シーズンの新商品を提案すべきですし、

一方で

3)着なくなった服をどう手放すか
の手助けをすべきではないか、

と考えます。

あくまでも、これらは筆者の仮説ですが、

コロナショックは収束すれば、顧客行動は元に戻るのではなく、

ユーザーは試練や体験の中から価値観を変え、
行動を変えるはず。

それを予測して、それへの対応を考えることこそ、
「顧客中心」の発想だと思います。

みなさんのお客様は今、何を考え、今後、どんな行動に移すでしょうか?

そして、それに対して、どんな対応をすればよいのでしょうか?

アフターコロナ、あるいはコロナとの共存の時代に、

ブランドや企業や店舗の「在り方」を考える時です。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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April 20, 2020

経済小説「アパレル興亡」の書評を書かせて頂きました。

週刊現代 4月11日・18日号の「日本一の書評」に

黒木亮さんの経済小説『アパレル興亡』の書評を書かせて頂きました。

メディアさんからのご依頼で本の書評を書かせていただくのは、実は初めてで、書評評者デビューとなります(笑)

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同作は百貨店向けアパレル大手の旧東京スタイルをモデルに、戦後復興期以降からZOZO全盛までの日本のアパレル産業の歴史についてわかりやすく書かれた小説。

モデルがあるものの、架空の人物たちについて書かれたフィクションながら、実際の世界経済、金融市場の転換期となる事件を背景に、実際のアパレル産業の栄枯盛衰と重ねてあわせてストーリーが展開され、実在の人物も実名で結構登場するので、すべてが実際にあったかのように錯覚してしまうリアリティーを感じる内容です。

今となっては、高度経済成長期~バブル期を中心としたブラック甚だしい内容ですが(笑)、

前半、中盤、後半と入れ替わる主人公のそれぞれの世代に応じた、屈辱や不合理に感じた原体験がその後に自分自身を突き動かす原動力になる展開が最も印象に残るところです。

業界に携わった方にとっては、それぞれの体験と重なるところが少なからずあり、懐かしく思われることでしょう。

ブログ筆者にとっては、

服飾専門学校講師だった亡き母による、戦後、既製服普及前は服は家庭で縫われていたもの、という話や、

商社アパレル部門新入社員のころ(88年)に大先輩方に聞かされた、日本製ブラウスのアメリカ売り込み武勇伝が思い出され、

また、

バブル期から2010年代までの間は、90年代のOEM営業、00年代の小売チェーン勤務時代に実際に体験したこと、
周りで起こっていたことが想起されました。

ある意味「誰がアパレルを殺すのか」の小説版。

そして、これからの未来を考えるには、是非「アパレル・サバイバル」をお読みいただければと思います。

以下、週刊現代に掲載された書評の抜粋をご紹介します。

・本書は、日本のM&A時代の幕開けである2000年代初めに起きた、大手アパレルメーカー旧・東京スタイルと「物言う株主」村上ファンドの攻防をモデルとした小説。筆者はその攻防を徹底取材した経済小説家。

・物語は戦後復興期から始まり、バブル経済崩壊後までの百貨店全盛期を経て、カテゴリーキラーと呼ばれる専門量販店やユニクロのようなSPA(アパレル製造小売業)が躍進し、ファッションECモール大手・ZOZOTOWNの成長が続く2015年頃までをカバー。

・90~00年代の百貨店の凋落を、関係者たちへ丹念に取材、分析した17年のベストセラービジネス書『誰がアパレルを殺すのか』の小説版。

・前半は地方出身の叩き上げの創業者、メインの中盤はコンプレックスが強く、金の亡者である中興の祖である2代目社長、後半は打たれ強い腕利き商品企画マンと、3人が主役として入れ替わる展開。

・メインの登場人物や企業は架空の名になっているものの、現実の国内外における経済情勢を背景にしながら、実在する企業名や著名人を登場させることによって、本書で語られていることのすべてが事実だったのではないか、と錯覚するほどのリアリティを感じさせるフィクション。

・高度経済成長期から90年代のバブル崩壊前後までに社会人になった読者のなかには、モーレツ社員による営業成績争いや体育会系の社風に、ノスタルジーを感じる人も少なくないだろう。一方で、バブル期を知らない世代には、今ではブラック企業と切って捨てられる、あり得ない残酷物語のオンパレードに感じられるかも知れない。

・社会人としての原体験、不合理に感じた悔しさこそが、厳しいビジネスシーンの中でも周年を持って自分自身を突き動かす原動力になる――それが筆者の伝えたかったメインテーマのひとつであろう。

・また、日本の産業発展の裏舞台で、総合商社や銀行が果たして来た役割もわかりやすく描かれているところも筆者ならではだ。

・日本のアパレル市場は金額規模の縮小とともに斜陽産業と呼ばれるが、今でも食品、飲食に続く消費者の購買頻度の高い巨大マーケットのひとつだ。そんな日本のアパレル産業の歴史を短時間で概観でき、ますます激しさを増す生き残り競争の中で次にはどんな切り口の革新者が登場して市場を変えて行くのか? 未来を考える上でも読み応えのある一冊。

【アパレル興亡のAmazonサイトはこちら】

 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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March 30, 2020

オムニチャネル化を進める前に必要な、店舗側のステップとは何か?

クラウド在庫管理システムを提供するロジザードさんのコーディネートで、専門店が「オムニチャネル化」を進める前に必要なことをテーマにトークセッションをさせて頂きました。

お相手はオムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎さん。

お互い、実務で苦労した経験も多く、独立後も現場に入り込んでお仕事をさせて頂いている機会も多いことから、かなり泥臭い(笑)、少なくともキレイごとだけではない、あるある話がたくさん飛び出しました。

オムニチャネル化を進める前に必要な、店舗側のステップとは何か?

オムニチャネル化を進める前に必要な、店舗側のステップとは何か?

オムニチャネル化も同じことなのですが、いつも店頭在庫最適化の業務再構築を支援させて頂くにあたり、心がけていることがあります。


それは、現場にこれまでの業務に加えて、新しい仕事を要求するだけでは、まず、うまく行きません。(というかキャパオーバーで対応出来ない)ので…
まずは、現場の方々が負担に感じてる作業をヒアリングして、その軽減案をご一緒に考えて取り組む、むしろ、やめるべき業務があれば洗い出して、不要と判断されれば、やめて頂く。
そして、みなさんが無理なく、お客様のために、前向きに成果を出せるような環境を整えてから進めることです。

正直、社内の微妙なしがらみや人間関係の中では口にだせなかったことでも、第三者だからこそ、客観的にご指摘できることも少なくありません。

今回のトークの中では、そもそも、客注(お取り寄せ)をするにも難があるような環境(しくみ、評価制度、人間関係)の中では・・・
まず、オムニチャネル化(実店舗とオンラインの両方でお客様のお買い物をご支援すること)は難しいだろう、
システム的に形は整ったとしても、お客様を満足させるレベルではならないだろう、ということを強調しています。

よろしければご一読ください。

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January 28, 2020

WWDジャパン1月27日号に寄稿記事「ファッション市場『大転換』に挑む 2020年代の流通革新と勝ち残る企業の条件とは」が掲載されました

おかげ様で、この記事で投稿数が2000本目になりました。これまで応援下さったみなさまのおかげです。

ありがとうございます。

「WWDジャパン」1月27日号の毎年恒例「国内CEO特集」の2020年版に

寄稿記事「ファッション市場『大転換』に挑む 2020年代の流通革新と勝ち残る企業の条件とは」が掲載されました。

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過去50年間のファッション流通革新を「ファッション流通10年周期説」で振り返りながら、これからの10年を展望する内容となっています。

スマホというモバイルデバイスを駆使しながら、企業並み、あるいはそれを上回る勢いで情報を受発信する消費者。

そんなエンドユーザ―の「未来の理想の体験像」をイメージし、「現在の顧客の課題(ストレス)」とのギャップを埋めるようなサービスを次々にリリースし、新常識を上書きし続けるプラットフォーマー。

そんな時代に、顧客を中心に置き、「顧客の未来の理想像とは何か」から逆算して商品やサービスを提供する必要性について、

1)顧客の既存のワードローブを活かす買い足し提案

2)長く着続けたいアイテムのメンテナンスのお手伝い

3)着なくなった服を手放す際のお手伝い

の3つの視点で身近な事例を用いて中心に解説しています。

ファストファッション定着後、溢れるクローゼットをいかにスマートに解消するかがファッション企業の役目。

かつては、つくって売るだけでしたが、顧客のクローゼットの持続可能な循環をお手伝いする時代になりました。

ある意味、拙著『アパレル・サバイバル』からの提言の、深掘り版とも言える内容となっています。

WWDジャパン1月27日号紙面紹介 

よろしかったらご一読ください。

追記 記事を読んでくれた20代の方のコメントです。ファッションビジネスはクローゼット起点への転換で更にパーソナルに ファッションフリークOL「WWDジャパン」につぶやく

こちらもあわせてどうぞ。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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January 06, 2020

2020年ファッション流通トピックス予測

2020年の幕開けに、今年、日本のファッション流通に影響を及ぼしそうなトピックを3つご紹介します。
キーワードは「スーパーアプリ」、「Amazon」、「デカトロン」です。
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1)スーパーアプリの覇権争い
これまでファッションのEC普及を牽引してきたZOZOTOWNを運営するZOZO社が昨年、Yahooジャパンの傘下に入りました。
これはオンラインショッピングがファッション購入という生活の一面だけではなく、
ライフスタイルあるいは、消費者行動という大きな視点でとらえなければならなくなったことを示唆するものとみています。
その背景にあるのは「スーパーアプリ」の覇権争いです。
移動、コミュニケーション、ショッピング、宅配、決済まで生活の多くの局面を1つのアプリで済ませ
顧客を囲い込もうとする「スーパーアプリ」の普及が中国、東南アジアでは始まっています。
日本では楽天、Yahoo!、Amazonの3陣営が有力で、今後、この3陣営を中心にスーパーアプリ「コングロマリット」化に向けて各陣営で業務提携が進みそうです。
これまでファッション流通企業の歴史では
どこの百貨店に入居するか、
その後はどこのSCに入るかを考えて来たものですが・・・
これからは、
どのECモールに出店するかを飛び越えて、
オンライン上のそれぞれのスーパーアプリ陣営とどう付き合いながら・・・
それぞれのお客様層とどう接して行くかの戦略を考えることを迫られそうです。
2)Amazonのファッション流通浸透
スーパーアプリの覇権争いの1陣営でもあるAmazonのファッション市場への浸透・拡大も注目されます。
その動向の中で注目すべきことはプライベートブランドのベーシックアパレル=アマゾンエッセンシャルズの本格発売です。
アメリカではベーシックPBが牽引してアマゾンが国内アパレル市場の大きなシェアを占めているという調査結果も目にします。
年末に日本でも一部の商品がリリースされ始めていることに気が付きました。
いわゆる「ユニクロ価格」いやそれ以下ですね。
アイテムの幅が広がれば、アンダーウエア、インナーウエアを中心にAmazon愛用者の「ついで買い」を誘うことでしょう。
アメリカでは顧客のレビューを参考にしながら、商品の改善を続けているそうです。
日本でも同じことをしてきたら、ユニクロとて、国内で安住はしていられないはずです。
3)スポーツの民主化を進めるデカトロン
3つめは東京オリンピックが開催される2020年に注目されるスポーツアイテムについてです。
昨年西宮ガーデンズに1号店をオープンして日本上陸を果たした、フランスの低価格スポーツ用品チェーン、デカトロンが
日本で2号店、3号店を出店するにあたりその商品バリエーションと価格の安さが話題になり、人気が急上昇することが予想されます。
スポーツと言えば、
ナイキやアディダスやアシックスなど、グローバルブランド、ナショナルブランドが話題の中心で、ブランドでないと
売れないというのが業界の通説でした。
この過去の常識を覆すのが、低価格PBを中心にスポーツ用品を展開するデカトロンの役割です。
80以上のスポーツジャンルについて、これからそのスポーツを始める初心者から
中級者にフォーカスしそれぞれのジャンルのアスリート社員が自ら関り
メジャーカテゴリーについては自社で研究所まで設けて、
ユーザー目線、プロ目線で自社開発を行っています。
ブームというより、いろいろなスポーツを始める人のすそ野を広げることが彼らの大きな役割でしょうね。
すでに多店舗展開している中国や日本の西宮の店頭で初めて触れる乗馬具やアーチェリーの弓や水球の玉を手にした時は、ちょっとワクワクしたものでした。
さて、今年はどうなるでしょうね。
※当記事はディマンドワークスが月1配信している「ファッション流通ニュースレター2020年1月号」からの転載です。
【追記】今年の東京オリンピックは新型コロナウイルスの世界的な蔓延のため、1年延期になりました。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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December 20, 2019

オフプライスストアは日本で拡大するのか?

12月19日にファッションスタディーズさんとワールドさんの共同で開催されたトークセッション

「ファッション産業のロスをどう削減するのか?『オフプライスストア』の可能性」

に登壇させていただきました。

※「オフプライスストア(OPS)」:ブランド品の過剰在庫を買い取って常時ディスカウントプライスで販売するチェーンのこと。

お相手は株式会社ワールドとオフプライスストア「&ブリッジ」を立ち上げられた、株式会社ゴードン・ブラザーズ・ジャパンの原田宜和さんでした。
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筆者からは、

在庫最適化の専門家の立場と

90年代のアメリカ在住経験、そして、それ以降もアメリカ出張時には頻繁に利用していた
ヘビーユーザー、オフプライスストアの大ファンの立場から

オフプライスストアの概要を18年の現地取材時の画像を交えてご紹介し、

ゴードン原田さんからは「&ブリッジ」事業の概要と目的、仮説検証中の事柄についてお話をいただきました。

 

オフプライスマーケットはアメリカでは大手5社の売上だけでも、アパレル市場規模の推定15%、6兆5000億円を超える巨大マーケット。

最大手のTJXは年商3兆円を超え、2番手のROSSも1兆円を超える、
ファッションコモディティマーケットの一翼を担う、消費インフラと言ってもよいでしょう。

ブランドの過剰在庫のはけ口であるとともに・・・

安定供給されているのではないか?と思えるような専売品的な商品も並びます。
特にビジネスシャツ、アンダーウエア、アクセサリーなどです。

また、値下げ価格表示は

百貨店が運営するNORDSTORM RACKやOFF 5THでは
ハイブランドの定価から40%-70%OFFなどOFF率値下げが目立ちますが、

オフプライス専業であるTJ MaxxやROSSでは
$19.99や$12.99など
消費者がいくらで買えるのかの価格で表示するプライスポイント戦略を取っています。

つまり、

1)宝物探しの楽しみと
2)プライスポイントが明確なこと(大体いくらくらいで買える店なのか)
3)日頃のコモディティアイテムの購入のあてになる品揃え
4)安価な気の利いたアクセサリーもある

ことが、完成形なんだろうな、と思います。

今年、日本で始まった実験は、まだ

リユースショップが新品商品の取り扱いに発展した形であったり、

アウトレットの延長線上にしか見えません。

アメリカのように、

「非日常」であるアウトレットモールを

いかに「日常」の生活圏の中で、ファッション消費の選択肢の1つにできるかどうか?

そのあたりがブレイクスルーのカギになるのだろうなと思っています。

来春は本命となりそうな大手流通企業も参入するということなので、どのような切り口で攻めてくるのか

楽しみにしておきましょう。

【オススメ本】アメリカ・欧州で進む更なる低価格化の波の中で、オフプライスストアについても解説しています。



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