October 22, 2018

ファストリ2018年8月期決算は年商2兆円突破で増収大幅増益。事業別に四半期業績を考察してみると。

 先ごろユニクロを展開するファーストリテイリングの2018年8月期決算が発表され、年商は2兆1300億円と
いよいよ2兆円を超えましたね。
 
 営業利益率も11.1%と10%台を回復した好決算。

 ユニクロ事業では海外ユニクロ事業が国内ユニクロ事業の売上高を上回り、営業利益についても国内海外とも大幅増益。

 特に海外事業の利益改善が顕著で・・・
 前年比は国内の124%に対し、海外は156%で

 営業利益額は国内外でほぼ同水準となりました。

 日本一のアパレルチェーンであるユニクロは海外売上構成比が50%を超えるまさにグローバル小売業ですね。

 ちなみに、世界のブランド価値ランキングを毎年評価しているインターブランドの定義では海外売上比率が30%を超えるブランドをグローバルブランドと定義づけています。

 このユニクロ事業の大幅増益の要因を四半期ごとに見てみることで、

 ユニクロの利益体質を筆者なりに深掘り、考察してみました。

 過去のエントリー ファーストリテイリングの2018年8月期中間決算は増収増益。 世界一への課題は秋冬依存体質と春夏シーズンの収益性?

でも指摘しましたが・・・

 ユニクロは上半期(秋冬)で利益の7~8割を稼ぎ、下半期(春夏)の特に夏が在庫処分が多いようで儲からず、通年利益を薄めてしまう体質。

 この秋冬依存体質が改善されることが、春夏に利益を稼ぐグローバルツートップ、ZARAやH&Mに並ぶ収益性がつくためのカギになると筆者は見ています。

 以下、ユニクロ(ファストリ)の決算が始まる9月から1Q~4Qのそれぞれの四半期を秋・冬・春・夏と見立てて季節別の稼ぎ方を考察してみます。

 過去3年 2015年~2017年のユニクロの国内海外事業の四半期業績を見ていると

 1Q秋の売上が最も高く、秋→冬→春→夏と売上構成比が下がって行く傾向があります。

 以下 2015年~2017年 四半期ごとの売上構成比

           1Q  2Q  3Q  4Q   
ユニクロ(国内) 29% 28% 24% 19%
ユニクロ(海外) 29% 29% 23% 19%

 同期間の3年累計営業利益率に関しては、
 
 秋で利益を稼いで、冬は処分もあって利益率が下がり、

 春は利益率を一旦持ち直しますが・・・夏は薄利多売で在庫処分という体質が見て取れます。

           1Q  2Q  3Q  4Q 通期
ユニクロ(国内) 20.1% 12.1% 13.8% 3.5% 13.2%
ユニクロ(海外) 13.5% 8.6%  8.4% -2.1% 7.8%

 これに対して前期の2018年8月期は売上の傾向は同じながら

           1Q  2Q  3Q  4Q   
ユニクロ(国内) 30% 27% 24% 19%
ユニクロ(海外) 29% 28% 23% 20%

 同期の営業利益率は
 
           1Q  2Q  3Q  4Q  通年
ユニクロ(国内) 21.1% 14.6% 14.9% -0.7% 13.8%
ユニクロ(海外) 18.0% 13.7% 15.2% 3.5% 13.3%

と2Q冬と3Q春の利益率が良くなっているのがわかります。

 おそらく、

○昨年の寒波のおかげで冬の2Qの利益が値下げを抑制出来、粗利を高水準に保てたこと。

○4月に夏日が多かったことで春の3Qに夏が例年より早く立ち上がり、利益貢献したことが要因ではないかと思われます。

 一方、1Q~3Qでしっかり稼げたので 4Q夏は思い切って在庫を一掃をしたのでしょうね。

 4Q夏は国内は赤字、海外も前年比減益ながら、通期では増収大幅増益の着地というわけです。

 このように見ると冬の寒波と夏の前倒しによって幸運だった決算?とも言えないではないですが・・・

 同社によれば、

 各国の幹部が東京有明に集まって国際在庫コントロール(過不足調整)を始めた成果が出始めた年でもあるようです。

 果たしてユニクロの収益性回復は本物なのか?

 暖冬で寒波が来ず、夏の始まりが遅くなるのであればまた元の収益率になってしまうのか?

 気候についてですが・・・

 筆者は、ここ何年かの気温の変化をクライアント企業さんたちとの在庫最適化の取り組みの視点からご一緒に見ていると、これは地球温暖化の傾向のためでしょうか?

 夏が長くなり、冬も長くなる、一方、春と秋が年々短期化する傾向を強く感じています。

 この傾向は ファッショントレンドよりも、寒くなった、暑くなったの実需に大きく左右されるユニクロにとっては有利に働くという気もしないではありません。

 いずれにしても、ユニクロの前期の稼ぐ力は本物なのか?今後の動向に注目ですね。


 ところで、参考までに微増収も減益だったジーユー事業の四半期(シーズン)別体質も考察してみました。

 四半期売上構成比
           1Q 2Q 3Q 4Q   
2017年8月期  29% 20% 30% 21% 
2018年8月期  29% 21% 29% 21%

とトレンド発信型というだけのことはあり、ユニクロに比べると

春夏、秋冬ともシーズン立ち上がりの秋と春にしかけて売るべく、1Qと3Qに売上の比重をかけるものの・・・

 冬が弱いのがわかります。

 次に四半期ごとの営業利益率推移です。

          1Q  2Q  3Q  4Q  通年
2017年8月期  11.8% 1.5% 12.6% -3.1%  6.8%
2018年8月期  14.8% 0.2% 9.7%  -7.3%  5.5%

なるほど、 ジーユーは秋で稼いで冬は処分でトントン、

春は秋なみに稼いで夏は処分で赤字という体質なんですね。 

 前期2018年8月期の 秋はまずまずだったようですが、

 春がヒット商品不在?だったのでしょうか?

 大きくコケて、夏の処分も過激に行う必要があった、と見てもよいかと思います。

 追記ですが、10月29日の日経MJのジーユー関連の記事によれば、

 ジーユーは業績改善のために、今後ベーシック構成比を大幅に増やすとの方針を持っているようです。

 これは兄貴であるユニクロのように2Q冬を強化し、春でトレンドリスクを追いすぎないようにするための施策なのでしょうか?

 ジーユーのここ数年の伸び悩みは、そのひとつがユニクロの価格の見直し(プライスラインの下方修正)だと
思っていますが、

 ジーユーが自らベーシック化してゆけば・・・

 ユニクロと競合する路線に入って行き、差別化が難しくなるのではないかとの懸念も否めません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 ※業界の発展と流通イノベーションのために・・・ファッション流通企業の経営者の方や事業スタートアップ準備中の方の応援をしています。
 時代の節目にあたり、「経営お困りごとのヒアリングとビジョナリーコーチング」のキャンペーンを実施中です。 ブログ筆者の質問に答えて行くだけで・・・頭の中がスッキリ整理されるコーチング手法で事業のお困りごとを整理して今後の方向性を見出すためのお手伝いをさせていただきます。 詳しくは>>>こちらから
 
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July 13, 2018

H&Mの日本1号店=銀座店が閉店

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 日経新聞やWWDジャパンによれば H&M(へネスアンドマウリッツ)は2008年に開業した日本1号店である銀座店を契約満了に伴い、来週7月16日(祝)をもって閉店するとのこと。

 WWDジャパン 「H&M」が銀座店を閉店 5000人が行列した日本1号店、ファストファッション・ブームの震源地

 同店は10年前に日本のファストファッションブームが始まった場所。

 オープン当日は5000人が入店待ちの行列をし、9月の残暑の中、

 H&Mからの配慮で黒い折り畳み傘が配られ

 銀座中央通りから晴海通りにかけて長蛇の黒薔薇の花壇のような列が出来たのを覚えています。

 関連エントリー-H&M銀座店オープン、その時ZARA、ユニクロは・・・

 関連エントリー-H&M銀座店オープンの最も素敵な広告宣伝

 
 今日は銀座に行く機会があったので久しぶりにH&M銀座店を覗いて来ましたが・・・

 近隣のZARAが混雑だったのに対し、

 H&Mは閉店をする告知もなく、商品ヴォリュームも少なく、客数もまばらだったのが対象的でした。

 同社は、間口が狭く、手狭、家賃負担も大きかった銀座1号店は役割を終え、

 今後も良い大型物件があれば銀座に再出店する可能性を残しながら、

 むしろ日本100店舗体制に向けて未出店エリアに力を入れるとのことです。

 報道が指摘しているように同社の銀座店閉店はひとつの通過点に過ぎず、

 筆者はまだ同社の日本でのポジションと役割は十分残されていると思っています。

 しかし 最近の業績は・・・

 快進撃が続く世界一のZARAを擁すインディテックスや

 中国で絶好調の3位のユニクロファーストリテイリングに比べ、

 かつてインディテックスとツートップだったH&Mの近年の収益力低下は顕著です。

 筆者はここ数年ZARAが世界的に低価格戦略を採り、H&Mの価格に近づき

 欧州ではプライマークやローカルのウルトラファストファッション系のオンラインサイトに押され、

 アメリカや中国では過剰出店感が否めず・・・

 日本でもZARAとユニクロ、ジーユーに挟まれ、オンライン戦略が後手に回り、優位性が薄れていたところに

 ファストファッションながら、得意なはずだったアジアでの低価格、中長期的生産が結果的に在庫過多を生んでしまったと見ています。

 ZARAとH&Mの明暗には多くの低価格系のファッションチェーンが学ぶべき教訓がたくさんあると思います。

 世界アパレル専門店売上ランキング2017 トップ10

 そのあたりもお話する筆者も講師を務める来週のセミナーがありますので、もしお時間あれば まだ若干席はあるようなので聴きに来て頂ければ幸いです。

 シンクエージェント主催 経営革新セミナー デジタル化する小売業~ファッション企業はどう生き残るべきか?

 また2018年バージョンになった 拙著「ユニクロ対ZARA」文庫版をお読みいただければ、

 昨今のグローバルファッションチェーンの動向をご理解いただけるのではないかと思っております。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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July 03, 2018

「ユニクロ対ZARA」の文庫本が日経ビジネス人文庫から発売

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 ブログ筆者である 齊藤孝浩(タカ サイトウ)が執筆し、2014年11月に発売された「ユニクロ対ZARA」がこの度 文庫本として発売されることになりました。

 「ユニクロ対ZARA」(日経ビジネス人文庫)
 
 本日Amazonで発売開始、明日には全国の書店の文庫本コーナーに並ぶと思います。

 おかげさまで旧版は2014年から2015年にかけてビジネス書のベストセラーとなり、

 訳本が台湾、香港、中国本土でも発売され、多くの出会いの機会を頂きました。


 文庫化にあたり、数値は両社の最新決算のものに置き換え
 
 4年間の動向を踏まえ、最終章の未来予測のところを書き換えました。

 書き換えを通じて、筆者も両社がこの4年間で着実にパワーアップしていることを思い知らされたものでした。

 ユニクロはベーシック商品の商品管理のベストプラクティス、

 ZARAはトレンドファッションの商品管理のベストプラクティス

 だと思っていますので、両社のオペレーションはシーズン性のあるアイテムを扱っていらっしゃる小売業の方々には業界問わず、参考になると思います。

 また、両社とも、明確な経営ビジョンを持ち、企業経営をする企業のグローバルレベルのお手本でもありますので、

 アマンシオ・オルテガさん、柳井正さんの経営信念からも刺激を受けて頂けると思います。

 文庫本になって、更に読みやすく、 携帯しやすくなっておりますので、

 書店で見かけたら是非お手に取って下されば幸いです。


 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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May 14, 2018

世界アパレル専門店売上ランキング2017 トップ10

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 世界の大手アパレル専門店各社の2017年度の売上高や利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高のランキングTOP10を共有させていただきます。

 円建て比較にあたり、為替レートは2018年1月末の €=135円、スウェーデンクローナ=13.8円、US$=108.8円、英国£=153.9円で換算しています。
 
 尚、7位のC&Aのみ2017年決算が入手できませんでしたので Deloitte Global Powers of Retailing2018と2017を参考にした2016年度の売上高を表示しています。

順位 社名 本社;決算期 売上高 前年増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2018.1期) 3兆4203億円 8.7% 5823億円 17.0% 7475 ZARA
2位 H&M (瑞;2017.11期) 2兆7600億円 4.0% 2838億円 10.3% 4739 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2017.8期) 1兆8619億円 4.2% 1764億円 9.5% 3294 UNIQLO
4位 GAP (米;2018.1期) 1兆7248億円 2.2% 1609億円 9.3% 3594 OLD NAVY
5位 Lブランズ (米;2018.1期) 1兆3742億円 0.5% 1879億円 13.7% 3075 Victoria's Secret
6位 プライマーク (愛;2017.9期) 1兆0854億円 18.6% 1131億円 10.4% 345 Primark
7位 C&A ヨーロッパ (独;2017.2期) 8390億円 -3.1% 非公開 非公開 1575 C&A
8位 アセナリテール (米;2017.7期) 7234億円 -4.9% -142億円 赤字 4807 Ann Taylor Justice
9位 ネクスト (英;2018.1期) 6241億円 -1.0% 1169億円 18.7% 528 NEXT
10位 しまむら (日;2018.2期) 5651億円 -0.1% 428億円 7.6% 2145 しまむら
                                        備考-米TJMaxx、Ross のオフプライスストア2社は、売上規模でトップ10に入る規模ですが、メーカーや専門店が放出した過剰在庫を販売する二次流通マーケットのため除外しました。また、中国で拡大を続け、売上規模では9位あたりに位置すると目されるE.LandWorld(韓国)は売上規模以外の実態が掴めないため除外しました。

以下 ランキングに対する解説です。

 1位のインディテックスグループは9%増収、7%営業増益、と着実な増収増益。ローカル通貨ベースでの伸び率は10%の増収12%の増益だったようです。(以下利益は営業利益を指します)。

 進出国を1か国増やし94か国とし、グローバル展開を続けながら、この1年は特に香港、トルコ、メキシコに数多く出店したようです。

 一方、スペイン、中国はスクラップ&ビルドを進めているようです。

 また、ここ数年、ZARAが過去において手薄だったアメリカへの出店を強めているのも気になります。(ここ4年で87店舗へ倍増しました)

 初めて明かしたオンライン売上構成比は10%(展開国では12%)、前年比は41%増、既存店売上高もトップ10企業の中でダントツの5%増でした。

 2位のH&Mは4%の増収、14%の減益に終わりました。

 H&Mの減益は2年連続、営業利益率も10%の水準にまで落ちています。

 同社は同期も中国、アメリカへ集中して388店舗も出店をしましたが、

 店舗数を増やしたほど売上は伸びず、

 トップ10企業の他社は既存店のスクラップ&ビルドを行って店舗の純増数は鈍化しているにも変わらず、積極出店が裏目に出たようです。

 後述するプライマークの躍進やイギリスのウルトラファストファッション系ECサイト達にシェアを奪われているようです。デジタル戦略への遅れが業績に表われていることはH&MのCEO自身も認めています。

 3位はファーストリテイリング。4%増収も38%増益、営業利益率9.5%と復調しました。

 国内ユニクロ事業の回復、海外ユニクロ事業の好調が要因で、営業利益率も国内11.8%に対して海外10.3%と海外も相当稼ぐ力がついて来ましたね。

 その後の2018年上半期では、ユニクロの海外の売上は国内を上回り・・・

 営業利益の構成比が逆転するのも時間の問題。

 いよいよユニクロは国内事業一本打法から、海外で稼ぐブランドへの脱皮を果たしたと言えるのではないでしょうか?

 4位のGAPは米国内のGAPおよびバナリパの不採算店舗の大量整理にメドがついたようで、2%の増収、24%の増益とこちらも復調。 

 ただ、日本から撤退したOLD NAVYが北米において1ブランドで気を吐いている感が否めません。

 また、久々に同社の米国内売上比率を見ましたが・・・

 80%と年々ドメスティック比率が高まっています。かつて世界一だったGAPとて、アメリカのチェーン店は海外で通用しづらい?というジンクスを覆すことはできなかったのでしょうか。
 
 5位のLブランズは0.5%の微増収も13%の大幅減益。

 ビューティ部門=バス&ボディワークスは引き続き好調だったようですが、

 基幹ブランド ヴィクトリアシークレットが政策的に水着とアパレルの販売を中止したのが減益要因で、

 同社はランジェリーのMD改革も含めてこの結果は織り込み済みとしています。

 6位以下に関しては・・・

 6位に浮上したプライマークはいよいよ年商1兆超え。

 19%の増収、7%の増益、10%の営業利益率と、インディテックスに次ぐ好業績企業と言えそうです。世界ランクトップ5入りも時間の問題でしょう。

 昨年夏にロンドンでプライマークの新しい旗艦店(オックスフォードストリートの東側の店)を視察しましたが・・・

 同ストリート 西側の旧旗艦店と比べるとわかりますが、一皮むけておしゃれで、選びやすい店舗が印象的で、進化のほどを感じました。 特に、ロンドンハイストリートでH&Mを苦しめている様子が感じられます。

 同社は2015年にアメリカ進出を果たしていますが、こちらの方はまだ試行錯誤状態のようです。

 9位のネクストは既存店のスクラップ&ビルトと高いEC売上比率(40%超)で、これまで堅調な売上高と高い営業利益率を保って来ましたが・・・

 いよいよ踊り場を迎えているようです。

 同社の戦略は欧米日など成熟マーケットにおけるチェーン店の生き残り策のお手本になるかと期待をしていたのですが・・・ 10%近い既存店の減収は痛いです。

 世界のファッション流通の最激戦地、イギリス、ロンドンでは日本以上の熾烈な勝ち残り競争が繰り広げられているようです。

 さて、

 今回のTOP10を見渡すと大きな増収、増益を達成したのはインディテックス、プライマークの2社です。

 また、ファーストリテイリングとGAPの利益の復調も見て取れます。

 一方、これまで 高い利益率を上げながらポストファストファッション時代に勝ち残る施策のいくつかの選択肢として注目して来た、

 ビューティ部門を強化する米Lブランズ、

 クリック&コレクトを中心にオムニチャネルとそのプラットホームづくりに力を入れて来た英NEXT

の2社が今踊り場を迎えています。


 ここ数年着実に伸ばしているZARAとプライマークから見習うべきことは2点あると思います。

 まずひとつは、

 目の届く近隣国と人件費の安価な国をバランスよく使い分けるハイブリッド型生産 です。

 3年連続で申し上げる話になりますが・・・

 長いリードタイムをかけて低賃金の国においてローコストで商品をつくり、

 つくったものを売り切るビジネスモデルはリスクが大きく(売上は上がるが利益をコントロールしづらい)、

 そういったグローバル資本主義的なビジネスモデルが「限界」に近づきつつあります。

 ここ数年のH&Mの様子は、まさにその反面教師的な姿かも知れません。

 一方、見習うべきはZARAのインディテックス社の近隣国とアジア生産を組み合わせるハイブリッド生産です。

 超低価格のプライマークも、かつての反省を活かし、トルコや東欧などの近隣国 短サイクル生産とベトナム中国バングラデシュの中長期生産を併用して成果を上げているようです。


 そして、そんなサプライチェーン改革と同時に進めなければならないもうひとつのチャレンジは

 ストアとオンラインの完全統合への道 です。


○ アプリによる来店前の顧客とのコミュニケーション

○ クリック&コレクト(オンライン注文の店舗受け取り)、

○ スキャン&バイ(店舗からのオンライン注文)

など、

 いわゆるオムニチャネル戦略に関してもZARAのインディテックスが半歩先を行っています。

 2018年はファストファッションからスマートショッピングの時代への大転換点。
 
 急成長しているからと言っても、プライマークのような更なる低価格路線を追及しても大資本には到底敵いませんので・・・

 ZARAの一連の取り組みを見習い、顧客の購買行動の変化に柔軟に対応できるサプライチェーンとオンラインの体制を早期に整えたいところです。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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March 23, 2018

ZARA(ザラ)のインディテックスグループの2017年決算は増収増益~実店舗とオンラインの完全統合モデルを着実に進め安定的な成長が続く

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 3月14日に発表されたZARAのインディテックスグループの2018年1月期決算レポートに目を通しました。

 売上高は 3兆4203億円 前年比9%増 
 営業利益は 5824億円 同  7%増
 営業利益率 17%    同0.2%減
 期末店舗数 7475店    同 +183店
 為替レートは1月31日の€=135円で換算

 でした。

 一方、2017年11月に締めたH&Mの決算は

 売上高 2兆7600億円 前年比4%増 
 営業利益は 2838億円 同 14%減
 営業利益率 10.3% 同 2.1%減
 店舗数 4739店   同 +388
 為替レートは1月31日のSEK=13.8円で換算

でした。

 安定的な増収増益を続けるファッション専門店世界売上ランク1位のインディテックスは、
 一方で売上が伸び悩み、連続減益となり、CEOがデジタル戦略に乗り遅れたと猛省する2位のH&Mを大きく引き離しましたね。

 両社の営業利益額が2倍も差がついたのが印象的です。

 株式時価総額に関しては10.5兆 vs 2.9兆と3倍以上もの差です。 

 今回の決算数値、インディテックス自身も若干伸びが鈍化したように見えますが・・・

 同社はこの説明として、ここ半年間の急激なユーロ高の影響を挙げており、(ユーロの商品原価に対して、売上高の回収が為替で目減りしたことによる利益率の低下)

 各国の現地通貨ベースでは10%の増収、12%の増益だと説明しています。

 既存店売上も世界のすべての地域で伸びており、グローバル平均で5%の増収(オンライン含む)とのことで、万事健全であるとのことです。

 今回の決算のトピックを3つ挙げると、

 まず、初めてオンラインの売上比率を開示しましたね。

 オンライン売上比率は 全体の売上に対して 10%
 オンライン販売を実施している地域の売上に対しては  12%
 前年比41%の増収とのことです。

 ざっと計算すると、実店舗だけでは約7%の増収 

 期末店舗数の伸びは2.4%増ですが、売場面積を7%増やしています。
 
 そうすると、既存店リアル店舗単体レベルでも微増収は続けている模様です。

 ふたつめは 積極的な店舗のスクラップアンドビルドと好立地への大型化しての移転の加速です。

 H&Mの引き続き旺盛な出店と比べると、店舗数の純増数(新店-閉店)は鈍化(2.4%増)したかに見えますが・・・

 これは成長を緩めているのではなく、むやみに店舗を増やすよりも、スクラップ&ビルドで店舗の量よりも質への転換に力を入れています。

 今年度524店出店していますが、341もの店舗を閉め、一方で、144店を改装し、122店を大型化しています。その結果、既述のように売場面積は7%増。

 これはすべてのファッションチェーンに言えることですが、

 世界中でオンライン経由の売上が増える中、既存店の質の見直しは同時に行わなければならない経営戦略のひとつであることは言うまでもありません。

 オンライン売上のアップだけに力を入れて、うつつを抜かしていると、不採算店舗や低利益率の店舗がいずれは遅かれ早かれお荷物になり、経営を深刻に圧迫することは間違いありません。

 同社は過去6年間の間に全体の80%の売場スペースがリニューアル済みとのことで、

 このあたりの対応もこれから本格化するオムニチャネル時代に臨戦体制の準備に怠りありませんね。

 3つめは 同社が「ビジョン」に掲げる 「実店舗とオンラインの完全統合モデル」へのアクセルです。

 この度 チェアマンであり、CEOであるパブロ・イスラ氏の下にCOO(最高執行責任者)としてに選任されたカルロス・クレスポ氏は

 IT、ロジスティック、運送、労務、商品調達およびサステイナビリティの各部署をコーディネートする役割の担当役員です。

 これからの同社の明確なビジョン実現にあたって最高執行責任者にこのポストを担わせるということは、
同社のビジョン実現へのスピードアップの覚悟を感じます。

 また、オンラインの新サービスとしては、マドリッド、ロンドン、パリ、上海など世界の一部の都市でオンライン注文の同日受け取りサービスを始め、

 スペイン、イギリス、フランス、中国など複数の国で翌日配送が始まっています。 

 それから、スペインやイギリスの一部の大型店で、オンライン注文の店舗での自動ピックアップ装置を導入・稼働させ始めるとのことです。

 筆者が最近講師を務めたある講演で、

 「ZARAにとって、Amazonは脅威か?」という質問がありましたが・・・

 今回の決算を見ても、施策を聴いても、AmazonPrimeに負けないくらいの配送の利便性を自前主義でしっかり準備されているようですね。

 インディテックス社はしばらく死角なし、

 そして、世界のすべてのファッションリテイラーが進むべき道の半歩先を行くお手本のひとつ

 と言っても言い過ぎではなさそうです。

 関連エントリー‐世界アパレル専門店売上ランキング2016 トップ10

 関連エントリー‐ZARAのインディテックスグループ、サステイナブル経営からインフラ投資への好循環

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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February 15, 2018

アマゾン・ドットコムの2017年度決算は大幅増収増益も通販事業は営業赤字

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 今年2018年は2008年から始まるファストファッションブームから10年目にあたるファッション流通の節目の年。

 もう数年前から変革は起こり始めていますが、これからもマーケットや購買行動の激変をリードするのはAmazonやZOZOなどのオンライン起点の企業であることは間違いなさそうです。

 1月19日のエントリー アマゾンと小売りの未来~あらためて考えるアマゾン・エフェクト 

 でもアマゾンドットコムの損益構造に触れましたが・・・

 2月1日にリリースされた 同社の2017年度の決算発表書類に目を通す機会がありましたので、

 過去4年間の時系列収益数値を共有させていただきたいと思います。
 
 米アマゾン・ドットコム社の4年間時系列 事業別売上高&営業利益(本業の儲け)
 (単位10億円 $=120円換算)

◆売上高 2014 2015 2016 2017 前年比
北米 6,100 7,645 9,574 12,733 133%
インターナショナル 4,021 4,250 5,278 6,516 123%
通販事業計 10,121 11,895 14,852 19,249 130%
AWS 557 946 1,466 2,095 143%
合計 10,679 12,841 16,318 21,344 131%
◆営業利益 2014 2015 2016 2017 前年比
北米 43 171 283 340 120%
インターナショナル -77 -84 -154 -367 239%
通販事業計 -34 87 129 -27 -21%
AWS 55 181 373 520 139%
合計 21 268 502 493 98%
◆営業利益率 2014 2015 2016 2017 前年差
北米 0.7% 2.2% 3.0% 2.7% -0.3%
インターナショナル -1.9% -2.0% -2.9% -5.6% -2.7%
通販事業計 -0.3% 0.7% 0.9% -0.1% -1.0%
AWS 9.9% 19.1% 25.4% 24.8% -0.6%
合計 0.2% 2.1% 3.1% 2.3% -0.8%

 いよいよ世界で年商20兆円を超えたアマゾンの儲け=営業利益は 

 北米の通販事業でも営業利益率がわずか2.7%

 それを日本も主力のひとつであるインターナショナル通販事業の年々拡大する赤字(2017年は-5.6%相当)で打ち消して

 世界の通販事業合計では営業赤字。

 一方、急拡大で売上を伸ばし、売上シェア10%のAWS(クラウドレンタルサーバー)事業は25%の営業利益率で、同事業のみで会社の全体の利益を上げているという状態で・・・

 売上の90%を占める通販事業は米国では薄利、海外では赤字でも手を尽くしてシェアを拡大し、別事業(AWSクラウド事業)で儲けてその薄利をカバーしているという構図はここ数年変わりません。

 新聞紙上では売上高も税引き後利益もそれぞれ約30%の増収増益であるところを強調しますが・・・

 税引前では減益ですし、通販事業が赤字であることはあまり強調して報道されませんよね。

 既出のエントリーでも述べたことを繰り返しますが、

 アマゾンは通販の利益は度返しで、

 消費者を品揃えの豊富さ、価格の安さ、サプライズなサービスを次々に繰り出し、期待をどんどん高め・・・

 既存流通企業の品揃えやサービスの旧態依然さ、陳腐さを浮き彫りにし、後手を打たせ、

 競合を業績不振に追い込み、次々に駆逐し、そのサービスの優位性で消費者を益々自社の通販サイトに引き込み・・・

 利益よりも多くの顧客購買データを収集することを優先するという戦略を持った企業なんですよね。

 もちろん 把握した消費者購買行動データから次の手を繰り出すための投資を繰り返し、事業規模を拡大するが目的にあるわけです。

 その点からすると、これまで流通革新を起こして勝ち組と呼ばれて来た企業、

 低価格衣料の品質の常識を変えたユニクロにしても、

 トレンドファッションの価格の常識を変えたZARAやH&Mなどの外資ファストファッション企業にしても、

 彼らは本業で儲ける、営業利益をしっかり10%以上稼ぐことを前提にした

 同じ流通業者による「革新(イノベーション)」であったのと比べると

 流通業者ではなく、グローバルプラットフォーマーという異次元の立場から、利益度返しのアマゾンはある意味、掟破りであり・・・

 それゆえに、より強敵で、対応しようと思って同じ土俵に上ろうものなら・・・

 ほとんどの企業は利益は出せない、ということになるのです。

 そんな違った発想を持った企業のサービスと比較される既存の流通企業はどんな立ち位置で商売をするのか?

 これからは、正しくそれが問われる5年、10年になりそうですね。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
 
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October 05, 2017

ZARAのインディテックスグループ、サステイナブル経営からインフラ投資への好循環

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 先週、東京ビッグサイトで開催されたIFF MAGIC (インターナショナルファッションフェア)2017秋展において 2009年以降 世界のアパレル専門店の中で売上、利益とも世界一をキープし続けているZARA(ザラ)を展開するインディテックスグループの直近の取り組みについて講演をさせていただきました。

 拙著「ユニクロ対ZARA」(2014年11月日本経済新聞出版社) 出版直後の IFF 2015春展でも講演をさせていただきましたが、

 その時の講演の様子は YOUTUBEでご覧になれます。 

 あれから2年半が経ち、ZARAがその強さを確固とするために取り組んで来た

 サプライチェーンマネジメント、オムニチャネルリテイリング、サステイナブル経営の3つのキーワードについてお話しさせていただいたものです。 

 ひとつ目のサプライチェーンマネジメントに関しては、

 品揃えの65%にあたるトレンド商品はスペイン近隣国で生産し、残りの35%のベーシックをアジアにアウトソーシングする「ハイブリッド型生産ポートフォリオ」の強みについて。 

 そして、前者の近隣国で実践している「スケーラビリティ」が追求できるサプライチェーン工程の内製化と設備投資についてのお話しをしました。

 アパレルの原料・素材が製品となって店頭で販売されるまでのサプライチェーンの工程のうち、多くの競合他社がその多くをアウトソーシングしているのに対し・・・

 ZARAでは多くの工程を内製化し、自らコントロールしていることで知られています。

 しかし、何でもかんでも内製化しているのではなく、確固としたポリシーがあり・・・

・どこでもつくることができるベーシック商品や

・トレンド商品に関しても縫製(アッセンブル)工程
 
 はアウトソーシング(外注)しながら・・・ 

 その一方で、「スケーラビリティ」が追求できる、すなわち、機械化、自動化、IT化によって効率化が図れる工程やインフラ設備については積極的に投資を行い、自前で抱え、磨きをかけて来たのです。

 「スケーラビリティ」とは規模を拡大するほど単位あたりのコストが安くなることを意味します。

 ZARAは目先のコスト削減を問題にするのではなく・・・

 その出自である製造業的発想を持ち、むしろ自前で抱えた方がメリットがあると判断したものは、投資をすることによって、中長期的に生産性を上げて行く、単位あたりのコストを下げて行くことを重視する企業であることに・・・

 今回の講演資料をまとめていて、あらためて気づき、感心したものでした。

 関連エントリー- ユニクロが挑むハイブリッド型マーチャンダイジング


 ふたつ目は、ZARAが2年前から経営方針として取り組む いわゆるオムニチャネルリテイリング、

 Seamlessly integrated online-offline store model   実現に向けてのお話です。

 日本ではEC強化が叫ばれることはあっても、ほとんどの企業が、まだまだオムニチャネル化どころか、マルチチャネルつまり、同じ商品を売っていても、直営店とECが関連性の薄い別々の販路である状態から抜け出せていないのが現実です。

 一方、ZARAが提唱する このSeamlessly integrated online-offline store model というフレーズは 

 「オムニチャネル」という言葉より・・・ オンラインを活用して、どういうお店を目指しているのかがわかりやすくていいですよね、

 そしてそのポリシーの下、同社は着実にその方向に向かっているのがわかります。

 ZARAはこの経営方針に近づくため、

 ・クリック&コレクト(オンライン注文商品の店舗での受け取り)を推奨し、
 (オンライン商品の店舗受け取り比率66%)

 ・顧客の利便性を追求したオムニチャネル対応スマホアプリ”InWallet”を自社開発して普及を始め、

 これらの取り組みを促進するために

 ・RFIDの世界のZARA全店舗への導入を完了し、店舗作業を軽減させながら、在庫データの精度を高めています。

 関連エントリー- ZARA(ザラ)のテクノロジー活用はあくまでも店舗への集客第一・店舗作業軽減が目的


 そして、最後にサステイナブル経営です。

 同社は持続可能な成長を行うために、グローバル企業の中でもいち早く、2002年からサステイナビリティレポートを発行しています(アニュアルレポートに組み込んで本格的に取り組んだのは2005年度から)。

 そして、2015年からは 国連加盟国が2030年までに理想の世界をつくるために合意した、国家や企業が目指すべき17の開発目標=サステイナブル・ディベロップメント・ゴール(SGD’s)に沿って自社の経営の優先事項を決め、その進捗状況を毎年アニュアルレポート(年次報告書)で発表し始めました。

 サステイナブル・ディベロップメント・ゴール(SGD’s)とは


 このSDG’sとは旧来型のコーポレートガバナンスやCSR(企業の社会的責任)への取り組みをより進化させて・・・多くのグローバル企業が取り組み始めたサステイナビリティ経営のガイドラインのようなもので、

 ユニクロのファーストリテイリングも2016年から4つの目標に取り組み始めましたが、ZARAのインディテックス社では17の目標すべてを自身の企業活動に関連づけてレポートしています。

 特に、同社の取り組みがわかりやすいなと思ったのは・・・

 多くの企業が従来のCSRの延長で行っている・・・店頭から遠く離れたところで行われているような・・・環境保護や取引先の人権・労働環境監視や慈善活動などに取り組むだけでなく、

 店頭からお客さまにも見える、事業そのものと結びつけて、とてもわかりやすい取り組みでSDG’sの目標に向かっていることです。

 例えば、 

 ・ RFIDやアプリなどのIT投資をしていることも、お客様と持続可能な、長いお付き合いをするために、お客様のお買い物環境をより便利に快適にするための投資であるという説明であったり、 

・ 環境にできるだけインパクトを与えない素材を使った商品開発=ZARA JOIN LIFE コレクションに力を入れていることだったり (現在 全売上の5%に相当するまでになったそうです)

・ 商品の配送販売に使用される資材(ダンボール、ハンガー、セキュリティタグなど)のリサイクル・再利用を徹底することであったり

 店舗や商品やお客様の買い物環境の改善も2030年までに実現すべき理想的な状態に組み入れて、取り組んでいます。

 目先の業績だけに追われるのではなく、10年以上も先である2030年の理想の姿から逆算して今やるべきことを考えるなんて・・・さすが、トップを走る企業の余裕ですよね。

 そして、ZARAはその安定的な成長率や高い利益率だけではなく・・・

 長年、サステイナブル経営に取り組んでいる、その企業姿勢が世界の機関投資家から大いに評価され、サステイナブル経営を行う企業に積極的に投資するというコンセプトの世界のESG投資からたくさんの資金を集めています。
 
 その資金が、同社の株式時価総額を12兆円超にまで押上げることにつながり・・・
 
 時価総額3兆円台のH&Mやファーストリテイリングとは4倍もの差をつける結果となっています。

 これらの株主から集めた資金は当然、ZARA始めインディテックス社のブランドのサプライチェーン、物流、IT強化のための更なる投資の原資となり・・・

 ますます競合他社を引き離す収益性を生み出すための強いインフラ基盤が着々と整って行くという話につながります。

 この サステイナブル経営⇒ 株式時価総額アップ ⇒ インフラ投資 ⇒ 収益性の向上 

 の循環を作り上げた同社の経営スタイルは しばらくは敵なしというところではないでしょうかね。

 関連エントリー ZARAインディテックスグループのサステイナビリティ経営

 関連エントリー-ZARA(ザラ)のデマンド型ファッションバリューチェーン


 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 本書を通じて お客様のためにIT、物流インフラ投資を続けて来たZARAのポリシーに触れていただければ幸いです。 
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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August 31, 2017

ファッション流通 世界の最激戦区 ロンドン オックスフォードストリートを歩いて感じたこと

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 8月の終わりにロンドンに行って来ました。

 目的のひとつは世界のファッション都市の中で最も激戦区と言われるロンドンが2年前と比べてどう変わっているか、その競合状況を見たかったこと、

 そして、日本のファッション消費の未来図のヒントになるであろうクリック&コレクト(オンラインで注文して店舗で商品を受け取る)の現場を体験することでした。

 後者はあらためてブログで取り上げますが、今回はグローバルチェーンの競合状況について感想をお話ししたいと思います。

 ロンドンの中心を東西に走るオックスフォードストリートは観光客を含めロンドン市内でも最も人通りの多い通りのひとつです。日本では銀座中央通りや表参道のような感じでしょうか。

 日本から撤退した英TOPSHOPの旗艦店が中心(オックスフォードサーカス)にあり、2017_ss_topshop

 百貨店から低価格のチェーンストアまで各社が大型店を出店しています。

 ZARA、H&M、ユニクロのようなグローバルSPAはこの通りだけで複数店舗を出店しているほど客数が多く各社がしのぎを削る商業地。

 この通りとリージェントストリートあたりを歩けば、直近の勢いのあるチェーンや競合関係が感じられる場所として、数年に1度は視察することにしています。

 通りを歩く人が持つショップバッグのトップ3は圧倒的に

 プライマーク、
 H&M、
 セルフリッジ(百貨店)

 でしょうか。 3社に続くのはTOPSHOP、ZARAといったあたりです。

 今回特に感じたのはプライマークの進化です。

 プライマークは日本ではあまり知られていませんが・・・

 毎年このブログで発表している世界アパレル専門店売上ランキングでは、英国で老舗のNEXTを数年前に抜いて1位、世界でも7位にランクする、アイルランド出身で英国で急拡大を続ける低価格のアパレルチェーンです。

 関連エントリー-世界アパレル専門店売上ランキング2016 トップ10

 トレンドファッションと実用衣料の両方を売場面積1000坪を超える超大型店でH&Mの2/3くらいの価格で販売しているのが特徴です。

 £10がプライスポイントですから、日本ではしまむらくらいの価格イメージでしょうか。

 客層は地元のティーンズからアラブ系や東欧系を中心とした移民系の方々が目出ちます。

 2016年はドル高による商品コストの上昇、欧州の天候不順、英国のEU離脱などで低迷した消費を受けて若干収益率は下がりましたが、引き続き二桁増の売上成長率を維持しています。

 プライマークはこのオックスフォードストリートの東端と西端に超大型店を2店舗構え、いわゆる商圏の入口と出口をおさえるチェーンストア―の王道的な陣取りを行っていますが、

 今回、オックスフォートストリート東店を見てその進化ぶりにびっくりしました。

2017_ss_primark

 まるで、TOPSHOPやH&Mの新タイプの店舗をベンチマークしたようなきれいな内装は、プライマークのオックスフォードストリートの西側の店舗を初めて見た5年前、前回視察した2年前と比べて一皮も二皮も剥けた感じがしました。

 内装だけでなく、商品調達も、低価格品はベトナム製、トレンド品はトルコ製が増えて生産ポートフォリオもかつて南西アジアが多かった時期と比べると安さ一辺倒ではなく、使い分けが上手くなり、クオリティ的にも上がった印象を受けます。
 
 今回のロンドン視察では、いくつかの定点観測地点でプライマークとH&Mの圧倒的な強さを感じたわけですが、

 一番印象的だったのは、そういった強者はその強さに甘んじず、改装投資を行って店舗を更に魅力的にして、進化し、ますます競合を引き離して行くのだなと感じたことです。

 当地ではプライマークやH&MやZARAがそれにあたりますが、

 それに比べると、ユニクロのオックスフォード東、同中心、リージェントストリートの3店舗にも寄ってみましたが、・・・アダルトで小柄な客層を中心に以前よりは客数が増えた感じはしますが、店舗が何か10年前とあまり変わらない?印象は否めませんでした。

 日本においても、流通マーケットは市況が厳しく、既存店の売上の落ち込みをカバーしようとECに力を入れる風潮がありますが・・・

 既存店に関しても、しっかりと投資計画を立てて定期的に改装などによりリフレッシュをして行かないと・・・

 ますますジリ貧になってしまうのではないかと、あらためて改装計画の必要性を思い知らされた次第です。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 2008年のH&Mの日本上陸以降、グローバル競合の波に飲み込まれた日本のファッション流通市場。グローバルな視点で考える上でも参考にしていただければ幸いです。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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June 23, 2017

英国発 地産地消のウルトラ・ファストファッションの波は日本にもやって来るのか?

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 6月19日付のWWDジャパン、ファッションライター奥恵美子さんが海外のニュースメディアから興味深いネタを拾って解説する「ちょっと学べるFJA(Foreign Fashion Journals Analytic Points)」というコーナーで

 「英国からウルトラ・ファストファッションの波」

 というタイトルに目が止まり興味深く読ませていただきました。

 元ネタは 

 RetailDive のReport: 'Ultra-fast' fashion players gain on Zara, H&M
 
 ですが、同じ FUNG GLOBAL RETAIL&TECHNOLOGYによる”Fast Fashion Speeding Toward Ultrafast Fashion” というレポートを元にした日本語の翻訳記事も見つけましたので、ご興味ある方はこちらをお読みいただければと思います。

 BUSINESS INSIDER JAPAN デザインから販売まで1週間 —— ZARA、H&Mを脅かす新興オンラインブランド

 内容は イギリスで拡大中のファストファッションECサイト

 ASOS(英) エイソス 

 Boohoo.com(英) ブーフー 

 Missguided(英)ミスガイデッド 

 らが ZARAやH&Mのファストファッションチェーン大手を上回る数週間のスピードでストリートファッションを企画、生産、EC販売を行い急成長している様を

 「ウルトラ・ファストファッション」 

 と呼び、今後両社を脅かすのではないかと解説しているものです。

 私なりにこの3サイトを整理しておきます。

ASOS(英)
 
 2000年創業 2016.8期年商1403百万ポンド(日本円換算 1997億円) 前比+26% 
 営業利益率 4%。 60%のオリジナルと40%の他社ブランドを販売。
 オリジナルは企画から販売まで最速2週間、平均6週間のリードタイム。
 週4500型の新商品をリリース。
 価格帯はイギリスではZARAやTOPSHOPと競合の模様。

Boohoo.com(英) 

 2006年創業 2017.2期年商 294百万ポンド(日本円換算 418億円)前比+49%
 営業利益率 10.2% 100% オリジナル販売。
 最速2週間 50%英国産 
 週 100型の新商品をリリース。
 サイトを見るとよりティーンズ向けで
 価格帯はH&MのDIVIDEDや英チェーンNEWLOOKと競合の模様。

Missguided(英) 

 2009年創業 2017.2期年商 206百万ポンド(292億円) 前比+75%  
 非公開企業。100% オリジナル販売。
 最速1週間!? 英国産を多様。 
 毎月1000型の新商品をリリース
 価格帯はティーンズ向けで上記2社の中間くらい。

 いずれもその商品をつくるスピードと急成長の理由のひとつが「英国内生産」活用にあるようです。

 今回の話の本質は・・・ただトレンドファッション商品を短サイクルでつくる「ファストさ(速さ)」ではなく、

 市場の顧客の反応に対して、必要な商品を必要な分だけすぐにつくり足すことによって・・・

 的中率を高め、値下げと売れ残りリスクを回避することで利益歩留りを確保するということにあることは言うまでもありません。

 そのため、トレンドファッションを、時間をかけて人件費の安い国でつくるのではなく、

 多少コストは高くなっても商品企画をしている本部や消費地との距離が近いところでコントロールするという「地産地消」的な発想が

 ファッションビジネスにおいてもグローバルトレンドになりつつあるというところがポイントだと思います。

 ご存じのようにZARAは全体の6割のトレンド商品を、スペイン本社の近くスペイン、ポルトガル、モロッコ、そして定期空輸便でつなぐことでトルコさえも「近隣国」と位置づけ・・・

 それら目の行き届く、自らコントロール可能な地域で企画~生産を行うことで、シーズン中の企画~店頭までのサイクルを平均3週間と高速で回すことで知られています。

 その結果は政治経済的に、天候的に不安定なグローバルマーケットの中で、柔軟な需要変化対応によって大手ファッションチェーンの中での「ひとり勝ち」につながっているわけです。

 世界アパレル専門店売上ランキング2016 トップ10

 上記3つの英ECサイトが行っていることは、このZARAのオペレーションを参考にしての、英国企業である彼らなりのひとつの答えなのでしょう。

 そして、従来のチェーンストア型の企業ではなく・・・

 ECビジネスならではの在庫の一元化やローコストオペレーションという優位性の中で行っているところが新世代型なのだと思います。

 世界で最も激戦ファッション市場である英国において広がるビジネストレンドは・・・当然、海外、もちろん日本にも波及することでしょう。

 規模は小さく、まだ人海戦術かも知れませんが、「楽天」の中にはそんなことをしている企業も出てきているかも知れませんし・・・

 まだ発表されていない業界注目のZOZOTOWNのプライベートブランドのコンセプトの中にも、

 この「地産地消」的なオンデマンドの発想も入っているのではないかと想像しております。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 ファッションマーケットにおける変化対応はZARAに学べ!ひとり勝ちの状況に多くのグローバルチェーンがZARAをベンチマークしています。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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June 05, 2017

ZARA(ザラ)のデマンド型ファッションバリューチェーン

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 5月中旬から月末にかけて日経新聞、日経MJ、繊研新聞、WWDジャパン各紙に

 先ごろスペインのZARA(インディテックス)本社および物流施設で開催された日本の記者向けメディアツアーのレポートが掲載されていました。

 私が2014年に「ユニクロ対ZARA」(日本経済新聞出版社)の執筆の際に同社を現地取材させて頂いた3年前からどんなことが変わったのか?に関心をもって各紙の記事を大変興味深く読ませて頂きました。

 記事の内容の中で当時(3年前)と変わったこと、そして、私にとって琴線に触れた部分をまとめてご紹介したいと思います。

 一番大きな変化は

 全世界のZARAの店舗にRFID(ICタグ)の導入が完了し、物流の精度が上がり、店舗の作業軽減が図られたことでしょう。

 同社では3年前(2014年)の取材時もRFIDの導入を着々と進めておりました。

 RFIDと言えば、世界の多くの小売チェーンが値札にチップを埋め込み、使い捨てで運用しているのに対し、

 同社は導入当初から「コスト」と「サステイナブル」の両方の観点から、回収再利用ができるように、値札ではなく、セキュリティタグ(防犯管理タグ)の中にチップを埋め込んで運用している説明を受けて、大変感心したものでしたが・・・

 今回の報道では、彼らが使っているRFIDタグは100回再利用(書き換え)が可能なものであり、その後もタグそのものがリサイクルできるという話(WWD)に驚かされました。

 RFIDの導入により、店舗では

 -毎月2日間かけて行っていた棚卸が1時間で終わる、

 -売れた商品をすぐに店頭に補充できる、

 -その際、在庫のロケーションを確認するのに短時間で済む

 などの作業軽減が図られたようです。

 作業の効率アップとタイムリー性によって、売り逃しを削減できたことにより、

 同社2016年度決算での既存店売上高10%増収にも寄与したことでしょう。

 2つめは 

 同社ではトレンド商品の的中率を上げ、在庫リスク軽減を図るために全生産の6割を近隣国(PROXIMITY)で行っていますが、その近隣国の4カ国目にトルコが加わったことです。

 3年前はスペイン、ポルトガル、モロッコの3か国を近隣国として挙げていましたが、

 私が「今後、グローバル展開を進めた時にスペイン、ポルトガル、モロッコの3つの近隣国の生産キャパシティで対応しきれるのか?」と質問したのに対し

 ヘスス・エチェバリア広報本部長は「その時はトルコを『近隣国』に入れることを想定している」とおっしゃっていましたのでそれが現実のものになったようです。

 実際、トルコは既存の近隣国と比べてスペインからだいぶ離れています(ZARAの物流拠点のあるスペインガリシア州からトルコまでは4000km強)。 

 しかし、トルコのイスタンブールは、同社が毎週2回世界の店舗に商品を空輸する際のルート便の定期ルート上にあるため、多少距離はあっても同社にとって近隣国と変わらないとの返事でした。

 スペイン-トルコと言えば、東京-ベトナムと同じくらいの距離でしょうか。

 そんな距離も空輸でつないで近隣国として手の内に入れてしまうのも真のグローバル企業ならではです。

 そして、3つめは

 シーズン前に素材展で買い付けた素材の「6割を備蓄する」という話(繊研新聞)。

 同社が素材(生地)を早めに手当てして、いつでもすぐに商品生産にかかれるように準備しておくことは周知のことでしたし、3年前にも本社併設の素材備蓄倉庫を拝見したものでしたが・・・

 買い付けた素材の6割もの量を自社で備蓄しているとは驚きでした。

 ここに、ZARAがシーズン中に店頭で顧客の声に真剣に耳を傾ける理由のひとつがあります。

 つまり、買い付けた素材はシーズントレンドから予測して決めたもの、そして、それらの素材を使ってどんな商品をつくるかの構想はもともとあったはずです。

 しかし、それが製品になった時、予想通りの量が売れるとは限らない、

 ここが多くの企業が頭を痛めるファッションビジネスの難しいところです。

 そのため、同社では、シーズンの始めに、まずは店頭に商品を並べる分だけ製品化しても(約3週分)・・・

 残りの素材をどんなデザイン、サイズバランスの製品にして店頭に送り込むかは決めていない、

 むしろ、シーズン中にどんなデザインが欲しいかは顧客に聴け、と考えているわけです。

 ファッションビジネスにおいては・・・

 デザイン、色、サイズ別の製品になったとたんに在庫リスクが発生します。

 一方、素材の状態であれば、他のデザイン、サイズへ転用ができますし・・・

 染色前の生地であれば色ごとの売れ行きに合わせて染める色の構成を考え直せばいい話です。

 そして汎用性のある素材なら翌年でも使えます。(実際ZARAには毎年コートに使っているウール生地があります)
 
 同社では、結構リスクを取って買い付けた素材を、

 売れるかどうかわからない商品にしてしまうではなく、

 できるだけ売れ筋商品になるように活かすために、

 毎週 仮説としての店頭商品に対する顧客の反応をヒントとして世界の店舗から本部へフィードバックして、

 改良版としてつくり足し続ける訳なんですね。

 そういう意味ではZARAが毎シーズン行っている行為は・・・

 シーズン中の「マス・テーラーメイド」なのかも知れません。

 日頃から交流もあるWWDジャパンの記者である松下さんはZARAのオペレーションを

 「顧客のニーズや店頭情報を基点としたデマンドチェーン」

 と表現されました。

 まさしくこのフレーズが日経MJの記事に取り上げられた私のコメントにある

 「マーケットイン」の意味するところです。

 マーケットインとはすでに店頭にある自社や他社の売れ筋を後追いすることではありません。

 顧客の反応をヒントに未来の需要を予測して手を打つことです。

 プロダクトアウト型のサプライチェーンからマーケットイン型のデマンドチェーンへ

 グローバル競合の勝ち残りのために企業の発想の転換が迫られています。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 各紙の記事の内容や記事では触れられていないZARAのオペレーションを詳しく解説しています。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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