June 23, 2017

英国発 地産地消のウルトラ・ファストファッションの波は日本にもやって来るのか?

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 6月19日付のWWDジャパン、ファッションライター奥恵美子さんが海外のニュースメディアから興味深いネタを拾って解説する「ちょっと学べるFJA(Foreign Fashion Journals Analytic Points)」というコーナーで

 「英国からウルトラ・ファストファッションの波」

 というタイトルに目が止まり興味深く読ませていただきました。

 元ネタは 

 RtaileDIVE のReport: 'Ultra-fast' fashion players gain on Zara, H&M
 
 ですが、同じ FUNG GLOBAL RETAIL&TECHNOLOGYによる”Fast Fashion Speeding Toward Ultrafast Fashion” というレポートを元にした日本語の翻訳記事も見つけましたので、ご興味ある方はこちらをお読みいただければと思います。

 BUSINESS INSIDER JAPAN デザインから販売まで1週間 —— ZARA、H&Mを脅かす新興オンラインブランド

 内容は イギリスで拡大中のファストファッションECサイト

 ASOS(英) エイソス 

 Boohoo.com(英) ブーフー 

 Missguided(英)ミスガイデッド 

 らが ZARAやH&Mのファストファッションチェーン大手を上回る数週間のスピードでストリートファッションを企画、生産、EC販売を行い急成長している様を

 「ウルトラ・ファストファッション」 

 と呼び、今後両社を脅かすのではないかと解説しているものです。

 私なりにこの3サイトを整理しておきます。

ASOS(英)
 
 2000年創業 2016.8期年商1403百万ポンド(日本円換算 1997億円) 前比+26% 
 営業利益率 4%。 60%のオリジナルと40%の他社ブランドを販売。
 オリジナルは企画から販売まで最速2週間、平均6週間のリードタイム。
 週4500型の新商品をリリース。
 価格帯はイギリスではZARAやTOPSHOPと競合の模様。

Boohoo.com(英) 

 2006年創業 2017.2期年商 294百万ポンド(日本円換算 418億円)前比+49%
 営業利益率 10.2% 100% オリジナル販売。
 最速2週間 50%英国産 
 週 100型の新商品をリリース。
 サイトを見るとよりティーンズ向けで
 価格帯はH&MのDIVIDEDや英チェーンNEWLOOKと競合の模様。

Missguided(英) 

 2009年創業 2017.2期年商 206百万ポンド(292億円) 前比+75%  
 非公開企業。100% オリジナル販売。
 最速1週間!? 英国産を多様。 
 毎月1000型の新商品をリリース
 価格帯はティーンズ向けで上記2社の中間くらい。

 いずれもその商品をつくるスピードと急成長の理由のひとつが「英国内生産」活用にあるようです。

 今回の話の本質は・・・ただトレンドファッション商品を短サイクルでつくる「ファストさ(速さ)」ではなく、

 市場の顧客の反応に対して、必要な商品を必要な分だけすぐにつくり足すことによって・・・

 的中率を高め、値下げと売れ残りリスクを回避することで利益歩留りを確保するということにあることは言うまでもありません。

 そのため、トレンドファッションを、時間をかけて人件費の安い国でつくるのではなく、

 多少コストは高くなっても商品企画をしている本部や消費地との距離が近いところでコントロールするという「地産地消」的な発想が

 ファッションビジネスにおいてもグローバルトレンドになりつつあるというところがポイントだと思います。

 ご存じのようにZARAは全体の6割のトレンド商品を、スペイン本社の近くスペイン、ポルトガル、モロッコ、そして定期空輸便でつなぐことでトルコさえも「近隣国」と位置づけ・・・

 それら目の行き届く、自らコントロール可能な地域で企画~生産を行うことで、シーズン中の企画~店頭までのサイクルを平均3週間と高速で回すことで知られています。

 その結果は政治経済的に、天候的に不安定なグローバルマーケットの中で、柔軟な需要変化対応によって大手ファッションチェーンの中での「ひとり勝ち」につながっているわけです。

 世界アパレル専門店売上ランキング2016 トップ10

 上記3つの英ECサイトが行っていることは、このZARAのオペレーションを参考にしての、英国企業である彼らなりのひとつの答えなのでしょう。

 そして、従来のチェーンストア型の企業ではなく・・・

 ECビジネスならではの在庫の一元化やローコストオペレーションという優位性の中で行っているところが新世代型なのだと思います。

 世界で最も激戦ファッション市場である英国において広がるビジネストレンドは・・・当然、海外、もちろん日本にも波及することでしょう。

 規模は小さく、まだ人海戦術かも知れませんが、「楽天」の中にはそんなことをしている企業も出てきているかも知れませんし・・・

 まだ発表されていない業界注目のZOZOTOWNのプライベートブランドのコンセプトの中にも、

 この「地産地消」的なオンデマンドの発想も入っているのではないかと想像しております。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 ファッションマーケットにおける変化対応はZARAに学べ!ひとり勝ちの状況に多くのグローバルチェーンがZARAをベンチマークしています。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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June 17, 2017

アパレル企業の商業施設向け共同配送

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 6月17日の日経新聞に百貨店アパレルメーカーを中心に構成する日本アパレルファッション産業協会(アパ産協)が推進する、同一商業施設に対して他社との相乗り便で商品を届ける共同配送に関する記事が掲載されていました。

 百貨店アパレルメーカーは以前から百貨店向けには共同配送を行っていましたが、駅ビルやショッピングモール向けは各自に運送業者に依頼しておりました。

 これをアパレル各社が駅ビル、SC向けの商品を一旦運送会社の物流センターに商品を納品し、そこから運送会社が商業施設ごとに複数社分の荷物を同じトラックに混載して届けようというものです。

 記事によれば、導入した店舗向けに年間物流コストが3割削減したケースもあり、

 また同じアパ産協が進めているダンボ―ルサイズの規格統一(8サイズに集約)によって、共同購入されたダンボールのコストが2割削減された

 という話も紹介されています。

 昨今の物流問題はコストアップの話だけでなく、人手不足も深刻で、更にトラックを頻繁に走らせれば環境問題(CO2排出)も引き起こすことになります。

 コンビニや食品業界など、異業種では既に進んでいるこの共同配送の取り組み

 ファッション業界の商業施設向けでもどんどん進めてもらいたいところですね。

 関連して、日ごろから店舗周りの物流問題で是非改善したい、して欲しいと思っていることがあります。

 人手不足は店舗側でも深刻で、その対策として各社で生産性向上(人時生産性や人時売上高)が関心事となり、真剣に取り組むところが増えて来ました。

 その一環で、私も店舗作業軽減プロジェクトに取り組んでいると・・・

 一番ネックになることのひとつに、各店の商品入荷時間のバラつきが挙がります(昔からの課題ですが)。

 これまではしょうがないで済ませていた問題もこれからは待ったなし。

 大手チェーンでは独自の物流網を敷いて朝イチ着荷に取り組んでいますが、

 中堅以下では独自で行うのはなかなか難しく、個別に運送便会社にお願いせざるを得ませんが・・・

 個々の交渉ではなかなか着荷時間をコントロールすることができません。

 このあたりは是非、各商業施設さん側に音頭を取っていただき、

 商業施設の早朝入荷の受け入れと同時に
 
 各店の開店前に商品を店頭まで届けてもらえるサービス

 が実現するとどれだけ有り難いことか・・・

 記事にある

〇 商業施設までの共同配送

と併せて

〇 商業施設内の各店舗への朝イチ配送

 この両方が進むことによって、物流コスト問題と共に生産性が改善し・・・

 店頭スタッフが気持ちよく仕事をし、笑顔でお客様に接する時間が増えることを願っております。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 物流問題も一枚上手 積載効率と帰り便の活用まで考えるZARAの物流オペレーションについても解説しています。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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June 05, 2017

ZARA(ザラ)のデマンド型ファッションバリューチェーン

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 5月中旬から月末にかけて日経新聞、日経MJ、繊研新聞、WWDジャパン各紙に

 先ごろスペインのZARA(インディテックス)本社および物流施設で開催された日本の記者向けメディアツアーのレポートが掲載されていました。

 私が2014年に「ユニクロ対ZARA」(日本経済新聞出版社)の執筆の際に同社を現地取材させて頂いた3年前からどんなことが変わったのか?に関心をもって各紙の記事を大変興味深く読ませて頂きました。

 記事の内容の中で当時(3年前)と変わったこと、そして、私にとって琴線に触れた部分をまとめてご紹介したいと思います。

 一番大きな変化は

 全世界のZARAの店舗にRFID(ICタグ)の導入が完了し、物流の精度が上がり、店舗の作業軽減が図られたことでしょう。

 同社では3年前(2014年)の取材時もRFIDの導入を着々と進めておりました。

 RFIDと言えば、世界の多くの小売チェーンが値札にチップを埋め込み、使い捨てで運用しているのに対し、

 同社は導入当初から「コスト」と「サステイナブル」の両方の観点から、回収再利用ができるように、値札ではなく、セキュリティタグ(防犯管理タグ)の中にチップを埋め込んで運用している説明を受けて、大変感心したものでしたが・・・

 今回の報道では、彼らが使っているRFIDタグは100回再利用(書き換え)が可能なものであり、その後もタグそのものがリサイクルできるという話(WWD)に驚かされました。

 RFIDの導入により、店舗では

 -毎月2日間かけて行っていた棚卸が1時間で終わる、

 -売れた商品をすぐに店頭に補充できる、

 -その際、在庫のロケーションを確認するのに短時間で済む

 などの作業軽減が図られたようです。

 作業の効率アップとタイムリー性によって、売り逃しを削減できたことにより、

 同社2016年度決算での既存店売上高10%増収にも寄与したことでしょう。

 2つめは 

 同社ではトレンド商品の的中率を上げ、在庫リスク軽減を図るために全生産の6割を近隣国(PROXIMITY)で行っていますが、その近隣国の4カ国目にトルコが加わったことです。

 3年前はスペイン、ポルトガル、モロッコの3か国を近隣国として挙げていましたが、

 私が「今後、グローバル展開を進めた時にスペイン、ポルトガル、モロッコの3つの近隣国の生産キャパシティで対応しきれるのか?」と質問したのに対し

 ヘスス・エチェバリア広報本部長は「その時はトルコを『近隣国』に入れることを想定している」とおっしゃっていましたのでそれが現実のものになったようです。

 実際、トルコは既存の近隣国と比べてスペインからだいぶ離れています(ZARAの物流拠点のあるスペインガリシア州からトルコまでは4000km強)。 

 しかし、トルコのアンカラは、同社が毎週2回世界の店舗に商品を空輸する際のルート便の定期ルート上にあるため、多少距離はあっても同社にとって近隣国と変わらないとの返事でした。

 スペイン-トルコと言えば、東京-ベトナムと同じくらいの距離でしょうか。

 そんな距離も空輸でつないで近隣国として手の内に入れてしまうのも真のグローバル企業ならではです。

 そして、3つめは

 シーズン前に素材展で買い付けた素材の「6割を備蓄する」という話(繊研新聞)。

 同社が素材(生地)を早めに手当てして、いつでもすぐに商品生産にかかれるように準備しておくことは周知のことでしたし、3年前にも本社併設の素材備蓄倉庫を拝見したものでしたが・・・

 買い付けた素材の6割もの量を自社で備蓄しているとは驚きでした。

 ここに、ZARAがシーズン中に店頭で顧客の声に真剣に耳を傾ける理由のひとつがあります。

 つまり、買い付けた素材はシーズントレンドから予測して決めたもの、そして、それらの素材を使ってどんな商品をつくるかの構想はもともとあったはずです。

 しかし、それが製品になった時、予想通りの量が売れるとは限らない、

 ここが多くの企業が頭を痛めるファッションビジネスの難しいところです。

 そのため、同社では、シーズンの始めに、まずは店頭に商品を並べる分だけ製品化しても(約3週分)・・・

 残りの素材をどんなデザイン、サイズバランスの製品にして店頭に送り込むかは決めていない、

 むしろ、シーズン中にどんなデザインが欲しいかは顧客に聴け、と考えているわけです。

 ファッションビジネスにおいては・・・

 デザイン、色、サイズ別の製品になったとたんに在庫リスクが発生します。

 一方、素材の状態であれば、他のデザイン、サイズへ転用ができますし・・・

 染色前の生地であれば色ごとの売れ行きに合わせて染める色の構成を考え直せばいい話です。

 そして汎用性のある素材なら翌年でも使えます。(実際ZARAには毎年コートに使っているウール生地があります)
 
 同社では、結構リスクを取って買い付けた素材を、

 売れるかどうかわからない商品にしてしまうではなく、

 できるだけ売れ筋商品になるように活かすために、

 毎週 仮説としての店頭商品に対する顧客の反応をヒントとして世界の店舗から本部へフィードバックして、

 改良版としてつくり足し続ける訳なんですね。

 そういう意味ではZARAが毎シーズン行っている行為は・・・

 シーズン中の「マス・テーラーメイド」なのかも知れません。

 日頃から交流もあるWWDジャパンの記者である松下さんはZARAのオペレーションを

 「顧客のニーズや店頭情報を基点としたデマンドチェーン」

 と表現されました。

 まさしくこのフレーズが日経MJの記事に取り上げられた私のコメントにある

 「マーケットイン」の意味するところです。

 マーケットインとはすでに店頭にある自社や他社の売れ筋を後追いすることではありません。

 顧客の反応をヒントに未来の需要を予測して手を打つことです。

 プロダクトアウト型のサプライチェーンからマーケットイン型のデマンドチェーンへ

 グローバル競合の勝ち残りのために企業の発想の転換が迫られています。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 各紙の記事の内容や記事では触れられていないZARAのオペレーションを詳しく解説しています。
 
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May 01, 2017

レナウンが取り組むファストファッション志向の新業態~アパレル出身企業がSPAに取り組む時のハードル

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 4月21日の日経新聞、24日の繊研新聞、日経MJなどに大手老舗アパレル レナウンが2018年春から立ち上げるショッピングセンター(SC)向け低価格新業態に関する記事が掲載されていました。

 レナウンの2017年2月期連結決算は年商676億円(前年比5%減)、営業利益6億円の赤字。

 百貨店販路が63%を占める同社が一通りのブランドの統廃合を終え、今後の伸び代として、

 売上シェアがまだ10.3%のSC販路と同2.1%のEC販路向けに、

 20、30代の若い世代を対象とするユニクロやZARA並みの低価格業態を開発し、

 早期に50億円規模の売上を目指すとのことです。

 記事を読んだ感想としては・・・

 同社がこれまで手掛けていなかった新しいことにチャレンジしようとする意図はよくわかりますが(親会社の中国山東如意の意向もあるのでしょう)・・・

 今回の新業態は なかなかハードルが高いことは業界の多くの方々も感じるところではないでしょうか。


 私的には

 三陽商会のバーバーリーが抜けた穴を アクアスキュータム=卸ベース66億円(前年比101%)およびそのディフュージョンブランドを開発して狙いに行くとか・・・

 約70店舗まで拡大した SC立地のファミリー向け直営業態、アーノルドパーマタイムレス 直営店53億円(前年比99.3%)に磨きをかけて販売効率を高める方が

 経営資源の活用につながる気がしますが・・・

 でも、せっかくリテイルビジネスに本腰を入れて取り組もうというのであれば

 過去に近い試みをして上手くいかなかった企業さんたちの失敗の轍を踏まないように頑張って頂きたいと願うばかりです。

 今回のニュースを読んで・・・

 これまで業務上いろいろなタイプのアパレルや靴の専門店チェーンさんやSPA企業さんのご支援をして来て、

 特にメーカー出身企業の直営店やSPAが陥りがちな小売ビジネスに対する認識違いに関して

 思うところがあるので、以下にまとめてみたいと思います。


 まず、

 いいものを作れば(高くても)売れる!と思わないことでしょうか  

 お客様が求める 「価格の制約」の中で価値ある(コスパの高い)ものづくりをしなければ売れないこと、

 また、逆に価格が安いんだからこんなもんと投げやりに安っぽいものを作らないこと。

 こだわり過ぎず、手を抜かず・・・ 

 顧客にとって必要な部分を残してその他はそぎ落とす「トレードオフ」の発想が必要なのが小売ビジネスです。

 次に

 シーズン(半期)計画に基づく売り減らし販売では店頭の鮮度を保てないこと。
 
 シーズン立ち上がりまでに計画通りつくったら終わりではなく、小売業はシーズンインしてからが勝負。

 商品企画も店頭と一丸となって週次仮説検証サイクルを回すべし(安易なQRではありません)

 商品企画している方々がなかなかその頭(サイクル)にならないんですよね。

 小売をやるなら昔ながらの「展示会」を中心とした発想を追い出した方がいいかも。

 また

 出店への投資を甘く見ないことです。

 アパレル卸は在庫過多で潰れますが、小売業は出店ミスで潰れるものです。 

 単店赤字かどうかだけでなく家賃は安くでも低効率店舗の量産も本部オペレーション、店頭在庫コントロールの足を引っ張るものです。

 そして最後に・・・ここがキモかも知れません

 MD(マーチャンダイザー)を頂点とした組織ではなく、お客様最前線にいる店長および店舗スタッフが活躍できる組織づくりを。

  店舗はつくったもの(与えられたもの)を売るだけが仕事ではなく、

 店頭は情報の宝の山と考え、リスペクトしつつ、いかに店頭の声を次の商品企画に活かそうと聴き上手になれるかどうか?

 事業部全体が本部の方を見て仕事をするのではなく、お客様の方を見て仕事をすることができて初めて小売ビジネスのスタートラインに立てると思っています。

 少々辛口なコメントばかりしましたが・・・

 百貨店出身アパレルメーカーさんのいいところもあります。

 それは、いいものを触って来た経験もあり、質感、特に素材感に対する感覚はチェーンストアマーケットしか知らない方々よりも優れたものを持っていると思っています。

 ですので、低価格チェーンストアマーケット出身の方々とは妥協線の異なったトレードオフが実践できれば・・・

 同じ低価格でも面(ツラ)のよいコスパの高い商品やブランドづくりが出来る可能性があると思います。

 その昔、商社時代にお世話になったこともあり、ご健闘をお祈りしております。

 関連エントリー-アパレル型SPA(製造小売業)と小売り型SPA

 【グローバルSPAを理解するおススメ本】

 世界一のインディテックス(ZARA)の背中を追う、ユニクロのファーストリテイリング。

 それぞれトレンドファッションとベーシックカジュアルのチェーンストアモデルの最高のお手本です。それぞれの信念、強み、将来性を多角的に解説しました。
 
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April 26, 2017

YKKのファストファッション向け取り組みとアパレル生産のボトルネック

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 4月17日のWWD JAPANにファスナーの世界シェアNO1、金額ベースで4割超を誇るYKKの今後の戦略に関する記事が掲載されていました。 

 3月初旬に発表された同社の中期経営計画関連の日経新聞や繊研新聞の記事(ともに3月3日付)の内容と織り交ぜてご紹介させていただきたいと思います。

 同社はこれまで高品質を武器にラグジュアリーブランドや著名インターナショナルブランドやナショナルブランドを中心に中高価格帯向けのファスナー供給をメインにして来ましたが、

 これから世界のマーケットはますますラグジュアリーとファストファッションへの二極化が進むであろうことを見据え、

 最大の成長の伸び代は中国・アジアで普及するファストファッションSPAと欧米NBにあると考え、これらの領域での商売拡大のために集中設備投資をすることを宣言しています。

 同社の新戦略のポイントは

 「低価格対応」 と 「納期の短縮」 の2点です。

 「低価格対応」に関しては、製法や材料を見直して中国製の競合と同じ価格水準でもしっかり利益を出せるものづくりを目指し、

 一方、

 メッキ・染色などの表面加工技術の内製化によって

 対応できる商品バリエーションを増やすとともに短納期ラインの構築を行い、

 製造ラインの省力化にも取り組むことで 「納期の短縮」を実現し、

 これまで最も取りこぼして来たファストファッション市場を攻略しようというものです。

 この新戦略のグローバル展開にあたり、

 上海YKKで世界に先駆けてこれらの対応を手がけて来た大谷新社長が中心となり、

 中国、バングラ、ベトナムに次々に導入した新しい生産管理手法を日本の黒部本社工場を含む世界の主要マーケット向け近隣生産地に展開する模様です。

 この取り組みによって

 これまで客先から一括受注した注文を、生産計画を立てた上で順次取り掛かるという従来型のやりかたを見直し

 受注したものを必要な分だけを小ロット(スモールバッチ)でつくり供給するというスピード供給体制へと変革する模様です。

 これは

 「ファストファッション企業だけでなく、今後は多くのアパレル企業が、アイテムによって短期・中期・長期という3つの時間軸で生産するようになり、アパレル生産はますますグローバルに拡散する」(大谷社長)

 ことに対応するための戦略です。

 この動きはまさしく、多くのグローバルSPA、ZARAのインディテックスグループを筆頭にH&MやNEXTやプライマークなどがすでに取り組んでいるものであり、

 日本のユニクロの「有明プロジェクト」にしても、このような対応をすることが目的のひとつにあると思っています。

 今回のYKKのファスナーの納期短縮への取り組みの記事を読んで私が思い出すのは・・・

 かつて商社でアパレル生産の仕事をしていた時のことです。

 当時、アパレル生産、特にスポーツウエアやブルゾンなどの生産を行う上で早期に意思決定をしなければならなかったボトルネックは・・・

 生地の生機(きばた;染色前の生地)と(YKKの)ファスナーだったと記憶をしています。

 つまり他の資材の中でも特に調達に時間がかかるために、最終的に商品ごとの生産数を決める前に、先駆けて注文しなければならないものがこの2つだったのです。

 シーズン性があり、トレンドの変化が激しいファッションビジネス、アパレルビジネスにおける最大のリスクはズバリ、商品ごと、カラー・サイズごとに出来上がってしまった時の在庫にあります。

 上記の2つのボトルネックのうち染色前の生地であれば・・・まだ別の色に染めるとか、他の商品に使うとか、「転用」が利きますが・・・

 カラー・サイズ(長さ)ごとに早期進行しなければならなかったファスナーは「転用」が難しく(結構、見込で無駄な注文をしたこともありましたっけね)、

 そのため、アパレル商品をつくるのが目的なのに、YKKのファスナーのリードタイムに合わせて製品の計画を立てなければならないという局面もありました。

 そういう意味では今振り返ると、ファスナーはアパレル生産の最大のボトルネックのひとつだったのかも知れません。

 これはファストファッションだけの話ではないでしょう。

 あれから20年は経っているので、多少はリードタイム(納期)は改善されたかとは思いますが・・・

 そんなボトルネックのひとつであるファスナーの納期が劇的に短縮されるのであれば、業界の在庫リスク回避に大いに貢献することと期待します。
 
 ファスナーの世界のトップシェアを誇る日本のYKKが時代の要請にあわせて業務改善を行い(まるで小説「ザ・ゴール」の世界?)、ますますグローバルで発展されることを楽しみにしています。

 関連エントリー-必要十分な品質

 【グローバルSPAの動きを理解するおススメ本】

 世界一のZARAのインディテックスの背中を追う、ユニクロのファーストリテイリング。それぞれの強み、将来性を多角的に考察しました。
 
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April 21, 2017

ロコンドのRAOS(リアル・アズ・オンラインストア)計画のチャレンジ~業界のオムニチャネル化の課題

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 ネット通販(EC)での靴の購入のハードルを下げるために「自由に試着できる通販サイト」をコンセプトにしたECモール「ロコンド」で2010年に創業し、その後、

 同通販モールの運営を通じて構築したITと物流のしくみを活用して、ファッション企業のECがらみのバックオフィス業務も支援するロコンド社が、2017年3月に創業以来続いた赤字から黒字化のメドを立てて東証マザーズに上場しました。

 上場後、メディア露出が増えたため、同社の記事を読む機会が多くなりましたが、
 (3月20日付WWDJAPAN、4月13日付繊研新聞、4月21日付日経MJなど)

 同社のビジネスモデルの中でも私が注目しているのは ECモール「ロコンド」の拡大よりも、

 むしろその背景で同社がオムニチャネル化をめざす業界の急所(ウィークポイント)に気づき、力を注いでいる「プラットフォーム事業」の方です。

 同社は「ロコンド」を立ち上げた後に、自社ECをアウトソーシングするブランドや企業のEC運営業務を請け負い、更にEC向け物流をブランドの直営店向け在庫補充へと請負領域を拡大(ロコチョク)して来ました。

 その後、

 地方百貨店などで限られた店頭在庫でもECの豊富な倉庫在庫を活用して販売につなげることができる「ロコチョクD」というサービスに取り組んだり、
 
 ECや直営店向けの物流倉庫の運営を受託したり、

 今後はECのオンラインシステムを実店舗にも活用するサービスに力を入れようとするなど、

 オムニチャネル化を目指す業界において、

 オンライン側からオフラインの実店舗のオペレーションの課題を効率化しようという、

 一見ニッチ(隙間的)ながら、業界の極めて大きな課題を解決するサービスに取り組んでいるように見受けられます。

 おそらく、同社は数々のクライアント先との取り組みの過程で直営店を取り巻く安定稼働を重視した保守的なPOSや基幹システムの環境と、

 一方で、エンドユーザーの購買行動に対応すべくリアルタイム更新が前提で、更なる進化を続けるEC向けウェブシステムの環境の違いに触れ、壁を感じたのでしょう。

 私も日ごろ成長ファッション企業さんの直営店の店頭在庫最適化のための業務を生業にしているため、当然システムや物流などのインフラ整備にも対応していますが、

 最近ECの販売拡大にともなって、実店舗とEC双方の販売機会ロスをなくすための在庫の一元管理化を検討する上で、最もネックになることのひとつが、
 
 日次更新で動いている本部システムとリアルタイム更新で動いているECをどう同期化させるかの問題です。

 従来の本部基幹業務システムに関しては売上はともかく、在庫までをリアルタイムにするのは・・・

 理論的には可能なのですが、システムの安全稼働を考えると負荷も投資もかなり大きくなる。

 一方、ECのウェブシステムは売れたらその都度在庫を引き落とすリアルタイム更新が常識。

 これある意味、

 従来からの企業の業務上の都合 と スマホ経由で取った情報に基づいて行動する進化しつづける消費者が求めていることの壁

 とも言ってもいいかも知れません。

 業務を時代の要請にあわせるならば、いっそのこと、リアルタイム更新が常識のEC(オンライン)の考え方を中心にシステム全体をリニューアルしてしまった方がいいのではないかと思うことがしばしばあります。

 タイトルにあるロコンド社が構想する「RAOS(リアルアズオンラインストア)計画」とはその名の通りECの発想で実店舗も運営しようという発想だと解釈されます。
 
 私は業界の多くの人たちがそうであるように実店舗サイドからECをどう取り込もうかと見ているもののひとりですが、
 
 同社のようにECから事業をスタートした方々にとっては、逆側から見えていて、「そこがヘン(非効率)だよ・・・」と感じていることが少なからずあるはずです。

 そして、冷静にお客様目線で考えると、その逆側からの発想の方が、今、そしてこれからの時代にとっては正解=新常識 だと思えてなりません。

 これから事業を始める方々にとっては、そんな「新常識」を前提にしたしくみから始めた方がよいでしょう。

 一方で、既存のシステムのしがらみがある多くの企業は、どういち早く消費者の購買行動に合わせた「新常識」に乗り換えるかが今後の事業成長の鍵(カギ)になることでしょう。

 そんな問題提起をしているロコンドのチャレンジにとても共感しながら関心を持ちました。

 大きな取り組みはこれからだと思いますが、今後の動向に注目したいと思います。

 関連エントリー-流通段階と仕事の発想、サイクルの違い

 ※これ古いエントリーですが、業務サイクルと仕事の発想に関するお話です。直営店運営は週次、日次ですが、ECはリアルタイム更新が前提。どんどんスピードアップする市場にどうあわせて行くかが課題になりますね。

 【ファッションビジネスを考えるおススメ本】

 有名ファッション専門店の事例を用いて、顧客心理と在庫コントロールの大切さをわかりやすく解説したビジネス読本です。

 『人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識』

   

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March 21, 2017

ユニクロが挑むハイブリッド型マーチャンダイジング

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 3月17日の日経新聞に前日行われたファーストリテイリングの「有明プロジェクト」説明会に関する記事が掲載されていました。その後も多くのメディアが関連記事を取り上げていましたね。

 ファストリはユニクロの商品部組織を東京ミッドタウンから倉庫のある有明に移し、複数階層あった商品部やマーケティングに携わるスタッフを約5000坪のワンフロアーにまとめ

 マーチャンダイザー、デザイナー、パタンナー、生産、マーケティング担当が

 これまで1年がかりでリレー式で行って来た商品開発業務を定例会議だけに限らない、意見を求めたいことがあれば、すぐに打ち合わせを始められるインフォーマルなコミュニケーションを促進することによって

 業務のスピードアップを計り、シーズン中の需要の変化にも対応できる体制をつくることを目論んでいるようです。

 メディアでは

「つくったモノを売るという所から消費者が求めているモノだけをつくる」

「消費者個人の好みに合わせたサイズやデザインの服を10日でつくり届ける」

 ことが誇張され、ユニクロがこれまでのビジネスモデルを180℃変えるかのように報道されていますが、

 実際には、

 これまでのほとんどの商品が企画から店頭まで1年がかりだった計画生産、売り減らし型の商品開発体制に加え

 ・シーズン中にも新商品を開発して店頭に並べることができるようにすること

 ・サイズのパーソナル対応を拡大すること

 の2つを意図しているものと思われます。

 今回のプロジェクトの背景にあるのは言うまでもなく世界一を目指すファストリの新たなチャレンジです。

 昨年までは世界売上規模第三位の米GAPの背中を追いかけて来たファストリでしたが・・・

 今年2月23日に発表されたGAP社の2016年度(2017年1月末)決算速報によれば 
 
 前年比 2%の減収、22%の大幅営業減益、

 1月末の為替レート 1ドル=113.8円で換算すると

 ファストリ(2016年8月期)  1兆7864億円
 GAP INC(2017年1月期)  1兆7657億円

 となり、ファストリはいよいよ売上規模ではGAP社を抜き、世界3位となりました。

 但し、営業利益ベースでは

 ファストリ (同)        1272億円
 GAP INC (同)        1355億円

 とまだGAPには劣っていますが・・・

 この結果を予測して、ファストリの今期からの目標は売上利益とも世界一で快走を続けるZARAを運営するインディテックスグループ一本に絞り切ったと見ていいでしょう。

 関連エントリー- 世界アパレル専門店売上ランキング2015 トップ10

 昨年あたりから話題になっているファストリの一連の「有明プロジェクト」の報道を聞いていると・・・
 
 私が2014年に「ユニクロ対ZARA」の執筆のためにスペイン インディテックスグループ本社を訪問して取材した時に見たインディテックス本社の業務スタイルをそっくり目指しているように思えてなりません。

 当時、インディテックスの本社では

 ZARAの同じセクション(ウィメンズ、メンズ、キッズなど)の商品開発職務の方々がすべてワンフロア―のほぼ壁のない大部屋で、「実際の売場」を想定して仕事をし(デザイン、サンプリング、商品発注、グレーディング、裁断指示まで)、

 同じ敷地内で生地の裁断、縫製現場から戻って来た縫い上り商品の検品とプレス、店舗振り分けの上、空港近くのハブ物流に届けるまでの出荷物流までを行っていましたから・・・

 今回の有明プロジェクトでは、できる限り、それに近いことを実現しようとしているのでしょう。

 ただし、それはユニクロがZARAのマネをしてトレンドファッションに取り組むという話ではなく、

 ZARAの強みである

 業務のスピードアップと
 Flexibility(柔軟性)と
 Accuracy(正確性)

 に取り組むという話でしょうね。

 そして、気をつけなくてはいけないのは、

 ユニクロの世界最強といっても過言ではない、これまで築き上げてきたベーシックの商品開発から店頭売り切りまでのオペレーションの強みを捨てるのではなく、それに磨きをかけながら、

 それと並行する形で、今回の柔軟性のあるオペレーションを走らせるべきでしょうね。

 ZARAは、とかくトレンド商品の高速生産ばかりが注目されがちですが、実際には

 ・トレンド性のある商品は在庫リスクが大きいのでできるだけサプライチェーンを内製化してスピード重視で管理する

 逆に

 ・流行にさほど左右されないベーシックなものは品質と価格のバランスが大切なので、アジアの工場にアウトソーシングして時間をかけてつくる

というサプライチェーンのハイブリッドな使い分けを行っていることに強みがあります。

 つまり、人間ってものは、そう器用なものではないので、

 同じチームに違う勘所、違うサイクルの業務を同時にもとめても生産性が上がらず、上手く行きません。

 それゆえ内製化とアウトソーシングの使い分け、あるいは内部でもチームを分けての運用が現実的となるのです。

 そして、それぞれのサプライチェーンのサイクルは違っても、それらを店頭で上手にミックス=ハイブリッドさせているのが、

 ZARAの店頭の魅力であり、魅せるところと売るところのバランスであり、本当の強みであると思います。

 このあたり、ZARAのオーナーであるオルテガさんが製造業出身だからこそ 

 現場に無理をさせず、同じリズムで安定的な操業を求め、結果利益が残るということがわかっていらっしゃるからこそなのかも知れませんが・・・

 もうひとつ、ユニクロはカスタムサイズを10日間でつくり届けるといいますが、

 それも別オペレーションで取り組む大事なことのひとつかも知れませんが・・・

 その前に店頭のSサイズやXLサイズの欠品を防止して欲しいという声にも耳を傾けるべきかも知れません。

 いずれにしても、柳井会長のある意味「振り切った」理想の高いハードルから・・・

 結果、現実的なところに落ち着いて、進化を続けるユニクロからは目が離せませんね。

 【おススメ本】

 ユニクロが目指すZARAとの違い、見習えるポイントは?両社の経営信念、ビジネスモデルの強みなどわかりやすくまとめました。 今年1月には中国語簡体字翻訳版も中国本土で出版されました。 
  
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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January 24, 2017

しまむらの値下げ品自動選別システム

 1月20日の日経新聞にしまむらの値下げ品自動選別システムに関する記事が掲載されていました。

 同システムは、初期の入荷量や販売実績データなどの情報から

 売れ行きの悪い商品を選別し、値下げの時期や幅を自動的に提示するもので、

 最終的な判断や店舗への指示は担当者(ヒト)が行っているようです。

 既に、2016年秋にファッションセンターしまむらで展開する1割の商品が自動選別されたようで、

 同社は更なる店舗拡大にあたり、担当者の業務負担を軽減する目的で、

 ファッションセンターしまむらでの対象商品を広げ、

 2018年2月までに 同社の別業態、バースデイ(子供服)やアベイル(ヤングカジュアル)でも稼働させるようです。

 量販系の小売りチェーンやSPAでは、計画通り売れない商品があった場合、期末セールを待たずに、顧客が欲しいと思う時期を逃さずに、シーズン中に値下げするのが一般的です。

 (レギュラー店またはアウトレットまたはWEBストアか値下後の場所はそれぞれですが)

 ただし、その値下げのタイミングや幅は属人的なケースがほとんどです。

 そのため、手遅れになって期末近くに大幅値下げが必要になったという場合が多いように思います。

 その理由は、

・商品ごとの販売計画がない=無計画な発注量

・販売期間が決まっていない、あるいは守ろうとしていない(理由をつけて先送り)

・値下げ対象とする基準があいまい

・値下げ予算の運用が担当者に任されている

といったところでしょうか?

 しまむらの場合は、全体の約4割と言われるトレンド商品(非定番品)に関して

 一部を除き、全店各SKU(カラーサイズ)1枚のみの投入=発注量一定

 原則投入してから5週間以内に売り切る ところてん式で投入消化管理

 値下げ枠(額)管理が徹底 (値入額‐粗利額目標)

 しているからこそ

 期限(5週以内)通りに売り切れないであろう商品を選別して設定されている「値下げ枠」を按分して振り分けることが可能なのでしょう。

 もっとも、しまむらのような商品投入&売り切り方法でなくても

 基本的には、上記のような項目にルールづけと会社基準を設定すれば商品選別とその値下げにいくら使ってよいかくらいは算出できます。最終判断は担当者や上長(ヒト)がすべきでしょうが。

 日頃のコンサル現場では、ウイークリーの品種、品番別の期末消化シミュレーションと値下げ推奨品番の選別、および値下げ枠管理はすでに行っていますが、

 今回の記事を読んで、更に、それぞれの単品にどれだけ値下げ枠を充てるかの気づきをいただきましたので、近々 提案してまずはExcelベースで取り組んでみようと思いました。

 今、ファッション流通現場の最大の課題は人手不足ですね。

 経営者は自動化、自動化を叫び、システム屋さんは(理論上は)できます、できますと言いますが・・・

 お客様やスタッフが「自動システム」に振り回されないことに注意しながら、また、使いこなせなくて投資額を無駄にしないように、省力化を考えていきたいですね。

 昨年 YOMIURI ONLINE に掲載された寄稿 

 しまむらが若い女性にパトロールされるワケ

 をご紹介します。

 ご興味あればリンク先を覗きに行ってみて下さい。

 【おススメ本】

 ファッション消費の顧客購買心理を考えるビジネス読本

 顧客心理への配慮と在庫コントロールロジックが明確な しまむら の事例もいくつか取り上げています。

 『人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識』

   
 
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January 13, 2017

アメリカのSPA(アパレル製造小売業)の元祖「ザ・リミテッド」の全店閉店と創業者レスリー・ウェクスナー氏から学ぶこと

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 1月10日のWWD JAPAN.COMにアメリカの婦人アパレルSPAチェーン「ザ・リミテッド」が全米250店舗全店を閉店して、以後WEBストアのみで販売を続けることに関する記事が掲載されていました。

 ニュースの詳細はリンク先をお読みいただければと思いますが、

 ザ・リミテッドが全店舗閉店 4000人を解雇
 
 私も含め、90年代から世界のSPA(アパレル製造小売業)をウォッチしてきた業界の方々からすると今回の全店閉店ニュースには感慨深いものがあると思います。

 業界のトップコンサルである小島健輔先生も自身の思いをブログで取り上げていらっしゃいますね。

 小島健輔の言いたい放題 ウェクスナー氏の「先見の明」?

 SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)という言葉の語源はGAPの創業者である故ドナルドフィッシャー氏が1986年の同社決算発表会で使った同氏の造語ですが・・・

 GAPより早くからアメリカでお手本となる本格的なSPAをしていたのは「ザ・リミテッド」であるのは業界でも広く知られています。

 もう中古本としてしか購入できませんが・・・SPA原論とも呼べる

 「リミテッド社はなぜ世界最大になれたか(桜井多恵子著商業界1996年)」 を

 アパレル専門店のブランドポートフォリオやプライベートブランド(PB)開発のバイブルとして何度も線を引きながら読まれたアパレルチェーンの方もいらっしゃるでしょう。 私もそのひとりです。

 1963年「ザ・リミテッド」からスタートした旧リミテッド社の強みは 

 商品企画をして直営店で売るものの、つくることはベンダーに任せるという表層的なSPAではなく・・・

 店頭での試験販売と生産地にバイイングオフィスを持つ社内商社を活用したアジアでのQR生産、空輸インフラなど店頭起点のサプライチェーンマネジメントにあり、

 その結果として、ウィメンズ向けファッションベーシックカテゴリーの商品企画的中率が高かったところにあったと思います。

 その点、ユニセックス向けのベーシックカジュアルが中心で、比較的農耕的な?ものづくりのGAPとはまた違ったものづくりのお手本でした。

 90年代に「ザ・リミテッド」や「エクスプレス」などのSPAブランドを中心に世界一のアパレル専門チェーン企業に上り詰めた旧リミテッド社の転機は・・・

 2000年のH&Mのアメリカ上陸後に訪れます。

 H&Mのアメリカ上陸後、それまでさほど目立たなかったフォーエバー21(F21)も大量出店を始め、全米アパレル市場を舞台としたH&MとF21のファストファッションの競演が始まります。

 ここからアメリカのアパレル市場は正しくレッドオーシャンに突入したわけです。

 2007年、リミテッド社の創業者レスリー・ウェクスナー会長は

 創業業態である「ザ・リミテッド」ともうひとつのアパレルチェーン「エクスプレス」の2つの事業の権利の75%を投資ファンドに売却、2010年には残り25%の権利もファンドに売り渡し、外衣アパレル専門の業態からは撤退。

 一方、1982年に買収して磨きをかけて来たランジェリー中心の「ヴィクトリアズシークレット」と1990年に自ら開発した「バス&ボディワークス」というヘルス&ビューティ事業に特化します。

 その間、社名を「リミテッドブランズ」から「Lブランズ」と社名変更し、創業業態であるLIMITEDのLの頭文字は残しながらも、売却した「ザ・リミテッド」と違う、アパレル専業とは違うファッションチェーンの道を歩みます。

 2007年に「ザ・リミテッド」「エクスプレス」のアパレル業態を売却することを発表した際のウェクスナー氏のコメントが今でも忘れられません。

 「アパレルビジネスは我々にとって、もはやエキサイティングなビジネスではない」

 もしかしたらその言葉は、ご自身の本音だけでなく・・・ファッショントレンドをマーケットイン発想で素早くつくるより・・・むしろ安くつくってしまうH&Mやフォーエバー21らのファスト性に辟易としていたファッション好きな大人の女性の言葉を代弁していたのかも知れません。

 今回、全店閉鎖となったのは、創業者が10年前に見切りをつけた、もう同氏の信念の宿っていないファンド傘下の「ザ・リミテッド」。

 一方、創業者は現在、Lブランズとして、女性の内面の美をテーマにランジェリー、ホームウエア、スキンケア、ヘルス&ビューティ部門を核にアメリカで最も好業績のファッション企業の経営者として大成功を収めています。

 世界アパレル専門店売上ランキング2015 トップ10

 の5位に位置する、その「Lブランズ」については、少なくとも年に一回はアニュアルレポートに目を通させていただいていますが・・・

 同社が成功した理由は、ランジェリーやスキンケア事業を選んだからではなく、もともとその業界にいる同業プレイヤー(企業)とは違い・・・

 創業の「ザ・リミテッド」で培ったアパレルビジネスアプローチとサプライチェーンマネジメントを取り入れ、磨きをかけているからにほかなりません。

 毎年、期中生産比率を高め、究極の短納期生産を行い、商品的中率を上げることによって、在庫回転率を飛躍的に高めて・・・

 店舗の大型化を図りながらも売場面積(スクエアフィート)あたりの売上高をぐんぐん高め、既存店増収を続けながら、

 2016年1月期では、営業利益率18%という売上トップ企業の中でも指折りの高い営業利益率を上げています。

 これはランジェリーやスキンケアというカテゴリーがアパレルよりブルーオーシャンで儲かるビジネスだからではなく、

 レス・ウェクスナー氏が成熟市場の中でも伸び代のあるインナーウエアやスキンケアというカテゴリーにアパレルSPAならではの手法を持ち込んだからこそと思っています。

 創業業態「ザ・リミテッド」が全店閉鎖されても・・・

 同氏のビジネスセンスとファッション流通革新のグルとしての存在は健在です。

 世界がSPA化に向かった時にも大いに啓発され、大いに勉強させてもらったものでしたが・・・

 ファストファッションの拡大によって翻弄されている成熟マーケットにおいても、消費者のライフスタイルの変化に対して、我々が進むべき方向を示唆してくれているように思います。

 【おススメ本】

 ファッション流通業界において、Lブランズのレスリー・ウェクスナー氏とともに尊敬する経営者のおひとりであるインディテックスグループのアマンシオ・オルテガ氏の信念とは? 
  
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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January 11, 2017

ZARA(ザラ)のテクノロジー活用はあくまでも店舗への集客第一・店舗作業軽減が目的

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 1月8日のWWD JAPAN.COM に昨年11月23日に約半年ぶりに改装オープンしたZARA新宿東口店とZARAが世界的に導入を完了したテクノロジーに関する記事が掲載されていました。

  「ザラ」のココがすごい!新宿店に見る最新技術 × おもてなしのベストプラクティス

 この記事の内容はすでにWWD JAPAN12月5日号の紙面で読ませていただいたものでしたが・・・

 あらためてZARAの強みを噛みしめながら取り上げさせていただきます。

 詳細は上記リンク先の全文をお読みいただければわかりますが、

 記事で気になるところをピックアップすると

 RFID(商品へのICチップの取り付け)や関連ITの店舗導入によって

・全商品の位置の特定が容易になり、販売動向や在庫の把握が高速化され、従来の作業が軽減し・・・
 接客や店舗と本部のコミュニケーションに時間が費やせるようになったこと
 (同社のルーティンである店頭サイズ欠品対応作業や試着済み商品戻しはこれにより格段にスムーズになったことでしょう)

・顧客は試着室からサイズ変更依頼のタッチパネルでスタッフにサイズ違いを持って来てらうリクエストができるようになったこと 
 (RFIDによって、サイズを探すスタッフの効率も上がっていることでしょう)

・店舗間オンラインの在庫ステイタスが把握できるようになり、在庫効率が上がるとともに、顧客がいつでもどこでも(店舗でもECでも)購入でき、都合のよいところ(最寄店舗でも自宅でも)で商品を受け取れるようになったこと

 それにより、日本だけの数字ではないかも知れませんが、(宅配無料にも関わらず)EC注文商品の店舗受け取り比率が66%にまで高まって来たということです。
 
 また、

・スペインでは(レジ待ち時間削減のための)アプリによるモバイル決済サービス(登録クレジットカード決済)が始まっており、いずれは日本でも実現されるだろうこと

 あたりでしょうか。

 いずれにしても、店舗に来店する顧客が中心に置かれ、

 それを手助けするスタッフの作業が軽減されているところに従来からの信念が貫かれていて

 あらためて共感というか敬服します。

 ZARAのビジネスモデルと収益性のキモは 

・週二回新商品を必要な分だけ店頭に並べること

・その商品に対する顧客の反応をよりどころに本部は毎週店舗から情報を吸い上げ、追加生産や新商品の開発に活用していること

・商品開発のヒントを得た本部は商品を3-4週でつくり、世界の顧客(店頭)にフィードバックすること

・結果、シーズンが進むほど顧客が欲しがる商品で店頭は満たされ、値下げや売れ残りが極めて少なく抑えられること

 にあります。 (詳しくは拙著「ユニクロ対ZARA」でわかりやすく解説しています。店舗オペレーションは「人気店はバーゲンセールに頼らない」をあわせてお読みください。)

 今回の同社のテクノロジー改革も 

〇ECを展開しても・・・それはあくまでもブランディング(アクセスの良さ、利便性含む)と店舗へお客様を誘導・集客することが第一目的であること

〇それにより、より多くの来店されたお客様が新商品に対してたくさんの反応を残していってくれること

 そして、

〇RFIDによって店舗作業が軽減されることによって、

 店舗スタッフがスムーズそして頻繁に、量的にも質的にもより充実した情報(顧客の反応)をスペイン本部にフィードバックできるように行われており、

 上記の同社の強みに磨きをかける上で大いに貢献しているというわけです。


 私も12月のセールが始まる前に改装されたZARA新宿東口店を覗きに行って来ました。

 3層 2300坪 約700坪は改装前に比べて1.5倍と圧巻。

 売場面積・売上ともに日本一、そして、同店の売上高は世界でもTOP10の常連だとのことです。

 改装前よりも壁面フェイスアウト(服が正面を向いている)が多くなり、什器あたりの品番数が絞られ、

 一方でSKUあたりの店頭在庫数が増えていますので、

 以前のスリーブアウト(袖が外を向いている)陳列中心の打ち出しよりも

 スタイリングがわかりやすく、売り逃しが少ない店頭在庫展開になっていますので、売上好調も頷けます。

 現在はセール中の売場展開なので、全く違う商品陳列方法ですが、

 ご興味ある方は3週後くらいに新しくなった旗艦店を是非覗きに行ってみてください。いろいろな気づきがありますよ。

 WWDの記事の最後に、ZARA他3ブランドに続く今後のインディテックスグル―プの別ブランドの日本展開の可能性についての質問に対して、広報本部長のヘスス・エチェバリアさん(執筆の際はお世話になりました)は

 出店要請(空き物件)があるとかないとかではなく、ブランドとしてベストなタイミングで出たいというコメントで締めくくられていましたが、マッシモデュッティには是非、早く来て欲しいですね。

 Mossimo Dutti ウェブサイト

 関連エントリー-アダストリアのICタグの物流実証実験とRFID活用の課題

 【おススメ本】

 オムニチャネルリテイリングも一枚上手のZARA。そこに通ずるファッションビジネスの信念を書籍を通じて感じとっていただければと思います。 
  
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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