September 21, 2020

ZOZOの決算書から学ぶECビジネスの損益

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WWDジャパンさん向けの連載記事のためにZOZOTOWNを運営するZOZO社の決算書20年3月期および21年第1四半期に目を通しました。

Paypayモール出店によって40代、50代の新しい客層が順調に獲得され、
ZOZOTOWNもコロナ禍で商品取扱高が増え、同社のECの売上は好調、社としては増収増益のまずまずの決算だったようです。

気になったことを3つほど挙げると

ひとつは単価の下落です。
 
20年3月期通期の
平均単価は 3,946円 (前年度は4,201円)
出荷単価は 8,292円 セット率 2.10 (前年度は8,774円;同 2.09)
と下落しています。

コロナ禍の出店ブランドの在庫処分もあり、21年3月期第1四半期に至っては
3,443円まで下落(前年同期は3,903円)しています。

ファッション性が売りのZOZOTOWNですら、
平均単価がファッション市場マスマーケットの価格帯である3900円にまで低下していることに驚きました。

次に、出荷1件あたりの収益性です。

ZOZOの損益計算書や開示データを時系列で見ていると、
ECビジネスの販売管理費の構造やマクロトレンドがよくわかります。

ECビジネスの販売管理費の上位を占める荷造運賃、物流関連費、広告宣伝費について、

グロス金額(費用総額)ではなく、出荷1件あたりで割り出してみると

・荷造運賃は高止まり、
・物流関連費は人件費の見直しで増加傾向
・以前より広告宣伝費やポイントの出費を抑えて・・・

「利益率」こそ底を打って、回復中ではありますが、

そもそも、出荷単価が下落しているため、
出荷1件あたりの利益額(単価)は下落傾向というのが実態です。

要は、単価は下がるので、1件あたりの粗利額(同社にとっては販売受託手数料)は下がる、

一方、1件あたりにかかる荷造運賃やその他物流関連費(人件費がメイン)は高止まり、

歩留まり利益は店舗運営型小売業よりも多額にかかる広告宣伝費を調整弁として、どれだけ使うか次第という構造に見えます。

「ECは家賃がかからないので、店舗販売の小売業より儲かる」と豪語される方は少なくありませんが
ECは店舗販売と根本的に経費構造が違う、と言うのが正しい言い方ですよね。

むしろ、販売単価、粗利率によって、物流経費や広告宣伝費の使い方では薄利になってしまう可能性もはらんでいると見るべきでしょう。

みっつめは、今後の収益バランスのとり方です。

通販受託事業のこの傾向に対して、
ZOZO社はトップラインである売上高に関しては全体の商品取扱高を増やしながら、受託手数料収入額を増やす。
その一方で、通販事業の利益率の低下傾向を、モノを動かさない広告事業や新しいサービス事業を増やして利益貢献するように、目下、強化中というわけです。

アマゾンの通販事業は薄利で、AWSで利益を稼ぐという構造に近づいていきますね。
これはプラットフォーマーの必然なのかも知れません。

ZOZO社自体はそれでいいかも知れませんが・・・出店ブランド(事業者)はその傾向を理解してECビジネスに取り組まなければなりません。

ファッションECマーケットは、
単価は下落傾向、競争が激しくなると、以前よりも広告宣伝費が余計にかかる、
販売管理費の主要費目である送料や物流関連費用は下がらない。

この構造やビジネストレンドを理解した上で、
販売単価、粗利の確保、送料無料のハードルをどこに設けるか、値下げやクーポンやポイント付与などの販促施策の加減も考えるべきでしょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 14, 2020

お客様目線の商品名を使って商売する

筆者も講師のひとりを務めさせていただきましたDsc_6436 繊研新聞社主催のオンライン連続講座「通販サイトのはじめ方」 の全3回が先週で終了しました。

講師陣は3年前から一緒に(ファッション業界の)「オムニチャネル時代のバックヤード勉強会」を運営して来た5人の専門家メンバーで、筆者は2回目のECの損益構造を担当しました。

先週の3回目、ファナティックの野田大介さんフレイヴァ・プロジェクツの髙木勝さんが担当されたECの集客方法とお買い上げアップの内容を聞いていて一番納得した内容のひとつが・・・野田さんがお話しされた 「商品名をお客様目線で変更する」という話でした。

要は、業界で仕事をしていると、どうしても、業界内で通用する業界用語を多用してしまいがち。そんな業界用語が販売管理システムに登録されているから、と言って、そのままECサイトの商品名にしても、一般のお客様にはモール内やサイト内でも見つけてもらえない、という話です。

例えば、売り手はデニムパンツという商品名をつけがちですが、多くのお客様はジーンズというキーワードで探す(検索する)可能性が高いです。

野田さんは、デニムパンツの商品をお客様目線の「ジーンズ」で検索できるようにすれば、確実に売上は上がる。それを妨げているのは、業界特有の「かっこいいか?かっこ悪いか?」の感覚だと言います。

ちょっと前に、筆者もあるブランドのEC公式サイトを見ていて、具体的に何かを探してみようとして、検索ウィンドウに「シャツ」と入れてみました。

すると、「お探しのものは見つかりません」と出ます。トップページにかっこいいシャツが出ていたので、他にどんなシャツがあるのかを探すために行った行為でした。「ジャケット」や「セーター」も同様。

どうやら、このブランドのサイトでは、(日本のブランドですが)すべての商品名およびカテゴリー表示すらも英語表記、そのため、SHIRTでは検索結果が出ますが、シャツでは出なかったという話のようでした。
確かに、シャツよりSHIRTの方がかっこいいかも知れませんが、お客さんは、日本のサイトでわざわざ英語では検索しない、と思います。

せっかく、ひとつひとつのモデル着用の画像はかっこいいですし、デザインの詳細紹介も丁寧なんですがね。

顧客がとるであろう、購買行動(検索行動)に引っかからなければ、その努力も十分に生かせないというわけです。

雑誌や店舗では見たままですが、EC時代になると、より顧客目線で商売することの大切さを思い知らされます。

一般のお客さんがどんなキーワードで検索するか、顧客目線の商品名は大いに意識して商売すべきですね。それを知るところから商売は始まるかも知れません。

あたりまえを、あたりまえに。

そんなマインドセットができるかできないか、だけでも、結構な差が出そうな気がしています。

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執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 31, 2020

「アフターデジタル2 UXと自由」を読んで

藤井保文さんが書かれた「アフターデジタル2 UXと自由」を読みました。20200831_145410

昨年出版され、大ベストセラーとなった前著の「アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る」に刺激を受け・・・

当時、頻繁に企業研修講師の仕事で訪れていた中国の杭州、広州では、同著に登場するアリババのスーパーマーケットHema FreshやLuckin Coffeeを中国人パートナーの手を借りて実体験して・・・

その背景にあることも含めて理解し、目から鱗が落ち、これから世界で進んで行くであろう小売業のDX(デジタルトランスフォーメーション)による明るい未来に思いをはせたものでした。

今回の続編は、前著に感銘を受けて、著者が相談を受けたり、ツアーをお手伝いされた多くの日本企業とのやり取りも踏まえて、日本企業の組織や仕事の進め方の実情にも触れながら、アフターデジタル時代の企業戦略としてのOMO(Online merges with Offline)の考え方について、誤解を解くように、新たな事例紹介とともに、再定義しているところに意味があります。

一番のポイントは、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉だけが独り歩きしている昨今ですが、顧客目線で顧客行動にポジティブな影響を与えるものでなければ、
たとえ、オンラインやAIを使ったところで、それは、企業都合の(あるいは、システムベンダー都合の)単なる業務効率のためのシステム化であって、同著が主張するところのOMOの本質でもなければ、アフターデジタル時代に勝ち残れる顧客体験価値(UX)創造型の取り組みでもない、という点でしょう。

最新のデジタル投資ばかりに目を向けている方々は、是非お読み頂きたいと思います。

スタートラインに立つためには、

まずは顧客行動(カスタマージャーニー)が理解、言語化出来て、

顧客にとっての「成功」は何か?

その実現のために、その過程に立ちはだかる顧客の「お困りごと(ペインポイント)」が特定できること。

そして、それに対して、情熱と執念をもって、オンライン技術を駆使しながら、とことん解決のお手伝いをし、その結果、ご利益として、顧客との長いお付き合いができる、という発想が大事なわけです。

実は、同著の主張と同じことを、拙著「アパレル・サバイバル」執筆の際の取材時の2018年に、アメリカ西海岸で体験したamazon go(コンビニ)、amazon books(本屋)、Nike(シューズショップ)、日本で体験したZARA六本木ポップアップストア(アパレル専門店)でも感じたものでした。

彼らがそれぞれの店舗において、DXで解決したのは、まさしくそれぞれの専門店ならではの購買行動(UX)の中のお困りごとに他ならなかったからです。

それらの体験をした時、顧客としては、何か呪縛から解き放たれて、スッとしたような感じ、そして、そのDXを実現した経営者、技術者に対するリスペクトを覚えたものでした。

また、DX担当者にとっては単にUXを研究するだけでなく、実際に体験してみて、その感覚(原体験)を体に覚えさせることも、執念を持って取り組む上では大事なことだと思います。

話を戻しますが・・・

今回の続編の中で、最も参考になったのは、P61から始まる「売らないメーカーの脅威」のところで、メーカー、サプライヤーではなく、「サービサー」として紹介されていた、中国企業群の事例です。

電気自動車メーカーのNIOは、車を売ることが目的ではなく、車を売ったところからが、顧客との付き合いの始まり。

年間23万円もするクルマのオーナーに対する、「会員サービス」がキモです。

維持費やメンテナンスサービスどころか、顧客のカスタマージャーニー上にある、クルマにまつわる痒い所に手が届くサービスの数々が憎いです。そのため、NIOのオーナーではない、別のメーカーのクルマのユーザーもそのサービスを受けるために会員になるとか。

それに続く、不動産仲介業のズールーの事例も、住まいの賃貸仲介したら終わりのスポットビジネスではなく、家探しを手伝いにとどまらず、そのコミュニティに住む、生活する、時には、旅先のシーンにまで関与し、顧客と一生つきあう覚悟すら感じます。

ファッション業界の方々は、是非、そんな事例を知って、日本のファッション販売に置き換えたら、顧客の成功のために何ができるか?を考えてみて頂きたいものです。

つくって、売ることに徹していたファッション業界も、顧客がコーディネートして着回す、メンテナンスする、保管する、手放す・・・・

などなど、幅広くカスタマージャーニー中の「お困りごと」に着目すれば、まだまだ顧客とつながってゆけるチャンスはあるし、広がると思っています。

このあたりは、ちょうど「アパレル・サバイバル」の中でも P205 CHAPTER5「テクノロジーの進化を享受するのは誰か?」という章以降で詳しく述べていますので、参考までに併せてお読みいただければと思います。

コロナショックを受けて、一気に「アフターデジタル」の時代に放り込まれた私たち。
この著書の顧客目線のDXの心構えを理解せずに生き残ることはできないでしょう。

 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 24, 2020

オンライン接客の可能性

コロナショックの外出自粛、休業の間にMinistry-of-supply 多くのストアやブランドがEC売上を伸ばし、
いわゆる「オンライン接客」が話題となり、
力を入れるところが増えました。

筆者の解釈では、「オンライン接客」の定義は広く、

ライブ動画で商品紹介を配信してチャット質問に答えたり、
ZOOMなどで1対1(複数もあり)のビデオ接客をしたりする
双方向性のある接客だけでなく、

そもそも、ブランドや商品に興味を持った顧客が
ネット検索してホームページやオンラインショップを閲覧するところからオンライン接客というものは始まっていますし、

ブログ更新やSNS発信
メルマガやプッシュ通知
メール、チャットでの問い合わせ

などの従来のマーケティングツールはもちろん、

店舗に来店した後、サイトで購入した後のフォローアップまで

スマホを駆使して情報を取得する「顧客の新しい購買行動」に、オンラインを活用して対応することはすべて「オンライン接客」の一部である
と捉えています。

この数か月の間で、オンライン接客について非常に可能性を感じたことが2つありました。

ひとつは、ZOOMなどのツールを使ったビデオ接客時、
顧客は自宅、ショップ側は店舗またはショールームにいるわけですが、

接客スタッフが顧客との対話の中で要望を引き出しながら、商品紹介をするだけでなく、
顧客側は自分の手持ち服を見せながら、これに合う服はありますか?というような聞き方ができる環境にいるという利点です。

つまり、顧客はわざわざ店舗にも行かなくてもよい、
ショップ側は店舗に来店できない顧客をお相手にできるという
時空的というか、物理的なメリットだけでなく、

どこまで開示するかは顧客次第ですが、顧客側も自宅にいるメリットとして、
クローゼットの中の服との相性について相談ができるわけです。

これは明らかに、店舗における接客にはない、
特に、顧客側のアドバンテージでしょう。

拙著「アパレルサバイバル」でも力説しましたが、

店舗やオンラインで品定めをする顧客の最大関心事は、
今、手に取っている、見ている服が、自分の手持ち服とコーディネートできるか?その上で着回しがどれだけ利くか?
ということでしょう。

店舗では、今シーズンのブランド側の重点販売商品や今シーズンの売れ筋商品を力説してショップ側が売りたい単品を提案して来ますが、
そんな接客の中で、顧客の本当の不安は、手持ち服と合わず、コーディネートがしづらい、着る機会が少ないなどで、結局は着なくなって、無駄になることによる「失敗」です。

顧客は手持ち服を具体的に見せることができれば、伝えられない歯がゆさや、「失敗」の不安から解放されますし、

店舗スタッフも決して、押し売りしているわけではないと思うのですが、
顧客のクローゼットの中身が具体的にわからないが故にできなかった、顧客のワードローブを思いやる接客が実現するわけです。

そんなビデオ接客での気づきが、今後、顧客との信頼関係を深め、顧客の手持ち服と相性のよい服を提案することが当たりまえの世界が実現
することを期待しています。

ふたつめは、リモート接客への人財活用の利点です。

つまり、ショップ側の接客スタッフは、ツールによっては、
どこにいても、都合にあわせて、短時間でも接客対応可能になる、という可能性です。

例えば、顧客からの問い合わせやちょっとした接客に対し、
これまでは、本社や店舗にいるスタッフが対応するのが常識でしたが、
事情によって、家庭に入られた、あるいは引っ越しにより遠方にいる経験者の方が、可能な曜日、時間帯だけ、在宅のまま対応することも可能になるということです。

メール対応やチャット対応、はそうでしょう。

この業務は、誰でも出来る業務ではなく、そのショップ、ブランドを熟知した接客対応のプロだった方だからこそ、の話です。

そんな人財=宝のような方々が、いろいろな制約で働けなくなってしまうのを
長年、いろいろ目にして来て、本当に残念だと思っていました。

しかし、オンライン接客アリ、リモート接客アリの時代に、これまで活用しきれなかった人財を、あらためて活かせる環境が整って来た予感がします。

もちろん、コールセンターのように、どこかに集めなければ、というセキュリティの問題が課題になるようですが、
これからはそういった問題を技術的に解決し、新しい働き方、新しい顧客対応の未来が広がることを期待しています。

当然のことながら、これから、すべてがオンラインになるとは思っていません。

しかし、多くの選択肢が生まれ、明るい可能性が広がっているのは事実ではないでしょうか?

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 17, 2020

トレンドファッションに合わせるベーシック、ベーシックに取り入れるトレンドファッション

コロナウィルスによる外出自粛で顧客の購買行動が変わることに対応しなければならないと思っています。20817-helsinki-closet

近隣以外への外出を控え、在宅時間が増え、自分のクローゼットのワードローブの見直しや、断捨離も行われたことでしょう。

業界は一旦、そこを起点に考える必要があると思っています。

オンラインセミナーへの登壇の準備をしていて、
ユニクロとZARAの強みをあらためて整理する機会がありました。

一般に、ユニクロはベーシック、ZARAはトレンドファッションに強みがある、と語られますが、

両者を長年ウォッチしてきた筆者なりの解釈で書き換えると

ユニクロはトレンドファッションに合わやすいベーシックを、

ZARAは多くの顧客が持っていそうなベーシック服に今シーズン取り入れるべきトレンドファッションを、

それぞれわかりやすく提案している。その取り入れやすさ提案が多くの顧客に支持をされる理由なんじゃないかな、と思います。

つまり、両者とも切り口は真逆ですが、自分の持ちものに取り入れやすい、ということが共通点です。

書いていて、気がついたのですが、と同時に、ユニクロとZARAの両者の服も相性がいい、ということになりますね(笑)

これまで、業界企業の多くは

・業界のシーズントレンドと言われるものを自社なりに解釈して売り込む
・前年売れた実績のあるものを焼き直してつくる

を繰り返して来ました。

しかし、しばらくは、「業界トレンド押し」よりも、顧客の「新しい生活様式」のシーンを想定して、

・リモートワーク対応
・マスク着用を想定したファッション
・カジュアル、リラックス

などが売れ筋のキーワードになるかも知れません。

業界では、正直、これまで、「顧客のクローゼットの中にあるワードローブ」という視点は不在の商品企画が圧倒的に多かったのではなかったかと。

今後も、もちろん、持っていないものを買う、新しいものを買う、という需要はなくなりませんが、

これを機会に顧客が今、持っていそうなものとの相性のよい(=着回しが利く)(=長く付き合える)
取り入れたら今シーズンらしく着こなせる服の提案をしたいところです。

「タンス在庫に無いもの」が売れる、とは、長年の業界の経験則

そう言うのであれば・・・まずは顧客のタンス在庫に何があるかをラックにかけて可視化して、
そこから新しい提案を考えるという発想が、今、大切なのではないかと思えてなりません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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【オススメ本】ファストファッションは多くの消費者にファッションを楽しむ選択肢を増やしたが、その一方で
顧客のクローゼットは溢れ始めている。そんな時代の顧客とのかかわり方をテーマにしています。


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August 10, 2020

過剰在庫を持ち越さないために

昨年の暖冬で秋冬在庫を残し、コロナウィルスによる外出自粛と数か月の休業によって春夏の過剰在庫を抱え、Dsc_6637 マスコミや投資家にも煽られ、業界ではようやく、本格的に在庫を減らそうというムードになって来たようです。

この在庫問題も、そもそも、もっと早く手をつけなければならなかったことに対して、
コロナショックによるキャッシュフローの悪化が企業改革のスピードアップを迫っているに過ぎないと思っています。

会社方針として、仕入を3割減らす、2割減らす、という話が聞こえてきますが、
アプロ―チや、オペレーションを根本的に見直さずに、
ただ、仕入担当者に金額ベースでの仕入や在庫を減らすことを命じるだけでは、

単に売上が下げるだけで 
最終消化率はあまり変わらない、また、一定量の在庫が残るという結果となりそうです。

そして、過去に、何度も号令をかけては、結局は売上を回復するために在庫を積み増すという、撚り戻しになる話が、また繰り返されるのではないか?と懸念しています。

筆者は、これまで、
シーズン在庫をどう利益を生むようにコントロールし、
シーズン末に向けては、組織全体でどう売り切るかをテーマにし、

商売を顧客目線に再定義して、しくみ化のお手伝いをし、
業務に定着するように、社内人財の育成も見守りながら、
多くのファッション専門店さんの在庫最適化に取り組んで来ました。

そんな在庫最適化の現場で常々感じている、
過剰な在庫を抱えない、そして、余計な在庫を翌年に持ち越さないためのカギがいくつかありますが、
今回はその中から3つほど在庫問題の視点転換につながるであろうアプローチをご紹介させていただきたいと思います。

1)売場スペースに合わせて、品番数を絞る

2)商品計画をわかりやすく売場に共有する

3)販売期限を明確にして全社で売り切る

1)ひとつめは、売場に目を向け、店頭に並ぶ、物理的に展開可能な品番数を知った上で、品番数設計をしましょう、という話です。

金額ベースで仕入を減らせと言うと、品番数を減らさずに、一律に発注量を減らしてしまったり、
また、正しかったかどうかわからない前年実績をもとにして品番数や発注量を何割か減らす、
というアプローチが採られることがあります。

そうすると、売れる商品はすぐに売り切れ、
売れ筋商品がなくなった途端、売場は魅力がなくなり次第、売りづらくなるという現象に陥るものです。

あるべき品番数の答えは、お客様が訪れる店頭の物理的陳列スペースにあるものです。

売場スペースを大幅に上回る品番数を投入しても、店頭に出し切れない商品はバックヤードに眠るだけ、
すべての商品に十分な販売機会が得られないと、その分、売れ残り在庫となるものです。

仕入担当者が、与えられた予算金額だけで仕事をし、
自分の担当売場スペースにどれだけの商品が並ぶのかを知らない、という恐るべき話は業界の中でも意外と少なくありません。

まずは、自分の担当売場に何品番並べるのか?
そして、それを何回転させることが自分たちのブランドらしさなのか?

という、問い、設計から始め、過剰品番数を削る、そして、その分、売れると見込む商品の仕入れ数を増やす(奥行をつける)というのが、あるべき仕入削減・在庫削減の第一歩でしょう。

これは無限大に商品が並べられると思われているECサイトについても同様と考えます。

お客様は、目的の最初のページからせいぜい2ページ、多くて3ページ目くらいまでしか見てくれませんので。

2)ふたつめは、仕入担当者は立てたシーズン商品計画を販促担当、店舗、EC担当が具体的な行動に移せるくらい、わかりやすく伝えましょうという話です。

仕入担当者がせっかく立てたシーズン商品・仕入計画の意図が、
実際に販売にあたる店舗スタッフやEC担当者に明確に伝わっていないため、
各店、各サイトでは、それぞれの思いで商品を並べて販売せざるを得ないと実態は少なくないようです。

そのため、商品計画者の思い通りに商品が売れず、結果として、想定以上の値下げや売れ残り在庫が発生するという話です。

仕入担当者が新商品の紹介や入荷情報の社内連絡を行うのは、当然のルーティン業務ですが、
商談など、仕入業務が忙しいあまり、社内に対しては、事務連絡に終始してしまうことが多いようです。

それぞれの商品を何点販売して、会社全体の売上・粗利の目標達成を目指しているのか?

という仕入担当者としての「意思」を、売場が行動に移せる、販売目標にできるくらいの具体的な数字や売場のイメージで伝えることができているケースは少ないようです。

実は、この仕入担当と販売担当のコミュニケーション(情報共有)ギャップこそが
商品計画の失敗、つまり、多くの売り逃しの一方で、過剰仕入、売れ残り在庫を生んでいる最大要因のひとつであると思っています。

シーズン単位でざっくり立てた商品計画は、例えば、月単位に細分化して、
毎月、見直して、微修正をかけた上で売場と事前情報共有しながら議論を繰り返したいものです。

さもなければ、店舗もEC担当も、販売行動の指針となる、「販売計画」を立てることができない、場当たり的な対応になってしまうことは言うまでもありません。

3)みっつめは、シーズン商品には、必ず、いつまでに売り切るという明確な目標(着地)設定をして販売にあたりましょうという話です。

シーズンで言えば、夏物と冬物の販売終了時期は、それぞれ8月末と2月末と比較的明確ですが・・・
それ以外のシーズンについては、いつまでに売り切るべきかが、具体的に定義されていないケースが少なくありません。

販売期限が決まっていない、あるいは、あいまいだと、必然的に消化管理は甘くなり、結果、在庫はたくさん残ります。

春物や秋物の消化率が夏物や冬物に比べて良くない要因のひとつは販売期間の短さだけではなく、販売期限定義のあいまいさ、とそれゆえの行動の希薄さゆえだと思っています。

〇 全ての商品の販売期限が決まっていること、その情報が販売現場まで伝わっていること、そして、

〇 販売期限までに最終消化率何%を目標に着地させるつもりなのかも伝わっていること、

それが、会社全体で売り切り体制がとれる最低条件です。

これは、いわゆる仕事の「目標管理」の話です。

つまり、いつまでに、どんな結果(数字)にするか、
期限とその時の状態を表す数字がなければ、仕事の目標管理とは言えません。

以上に加えて

・気温と需要にあわせて販売期間を再定義すること 
・セールを前提としない、価格設定(プライスポイント)の見直し

も必要なことは言うまでもありません。

このあたりは、2013年に上梓した
「人気店はバーゲンセールに頼らない」でも解説していますので、ご関心があればご一読頂ければと思います。

ファッション小売業に大きな転換期を迫るコロナショックの今回こそは、
より多くの企業さんが利益とキャッシュフローを重視する
在庫コントロール業務の再構築に取り組むことを切望しています。

関連エントリー一律値下げでは過剰在庫問題は解決しない
関連エントリー気温に合わせて品ぞろえ計画、在庫運用を考え直す

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August 03, 2020

ファッション小売業のEC化率はどこまで上がるのか?

ファッション流通の専門家としてメディアインタビューを受ける時に、最近よく聞かれる質問のひとつに、
ファッション商品のEC売上比率はどこまで上がるのか?というものがあります。

先日、ECエバンジェリストのZOEさんこと川添隆さんと一緒に登壇させて頂いた

日経サロンの日経特別講座でも話題になりました。

講座のハイライトをご紹介して頂いた noteはこちら

小売業の最先端で何か起きているのか

経済産業省の統計レポートによれば、
2018年度の衣料服飾雑貨などの国内小売市場全体が
13 兆 6790 億円
なのに対して、うち通販売上は
1 兆 7728 億円とのことで
EC化率は12.9 %になります。

このレポートによれば、衣料服飾雑貨はBtoCの通販、物販分野では食品や家電をおさえて、
最も売上規模が大きいカテゴリーに位置付けられています。

さて、この12.9%が今後、どこまで増えるのか?というのが今回のテーマです。

EC普及国、アメリカやイギリスや中国では20-24%くらいという数字を目にしたことはありますし、

ユニクロのファーストリテイリングは長期的にグローバルで30%(2019年8月期は11.6%)を目指し、
ZARAのインディテックスグループも中期的に25%(2020年1月期は14%)になることを予測しています。

先行国の事例や過去からの延長線上でどれだけ伸びるのか、と考えるアプローチもあるかと思いますが、

既述の日経サロンでも話題にしたのですが、

ひとつの視点として、EC化率がすでにかなり高い水準にある海外企業事例、
イギリスのNEXT(ネクスト)のケースから考察してみるのもありでしょう。

NEXTはファストリの柳井会長がユニクロを立ち上げる時に参考にした海外SPAのひとつ
現在、イギリスではプライマークに続き、2番目に大きなアパレル専門店の老舗で、
このブログでも毎年公表している世界アパレル売上高ランキングでは7位にランクインしている大手です。

関連エントリーーアパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

日本でもスポーツのゼビオ社がフランチャイズ展開していますので店舗を見たことがある方もいらっしゃるかと思います。

同社の世界のEC売上比率(主にイギリス国内)は
2020年1月で49.2%あり、営業利益のEC貢献比率は51.7% もあります。
ファイナンス売上を除いて物販売上だけを分母にすると
EC売上比率は 53.6%と過半を占めています。

そして、このEC売上のうち、クリック&コレクト 
つまり、オンラインで注文した商品を店舗で受け取る比率が
約50%と、半分が店舗で受け取られているのです(同社IRレポートより)。

これは、N1dsc02017 毎日、夜12時までにオンラインで注文した商品が、
イギリス国内に展開する約500店舗の中から

顧客が指定した店舗で
翌日の昼過ぎには、送料無料で受け取れるという

顧客にとって利便性が高く、顧客もNEXTも双方、宅配運賃負担がないサービス環境を整えたゆえに
実現した、高いEC売上比率と店舗受け取り比率の高さに他なりません。

NEXTの場合は、オンライン注文品はすべてがオンライン決済ですので約50%がEC売上比率ということになりますが、
仮にオンラインで受取予約をして、店舗で決済するとすると、
単純計算、EC売上比率は差し引き、25%になるかも知れません。

実は、国内ユニクロもオンライン注文の44%が店舗で受け取られ(2019年8月期)
少し前の数字ですが、ZARAもグローバルで66%が店舗で受け取られているという実績があります。

つまり、オンラインで商品を買うと決めても、オンラインで決済するか、店舗で決済するかで
EC売上比率のカウントのしかたも変わってくるわけです。

目先はEC売上を増やせ、という号令に忠実に
宅配を前提としたEC売上を増やすことに集中してもよいかと思いますが、
中長期的には顧客の利便性、経費負担、国内宅配物流環境などなど、大局的な視点で見直すべきかと思います。

関連エントリーーEC拡大時代に理解しておきたい、実店舗販売とEC販売の損益構造の違い

オンラインショッピングが普及して以来、

顧客は
・オンラインで商品を検討し、
・ショップで商品を確かめ
・ショップまたはオンラインで購入する
・同じものであればオンラインでリピート購入する

という行動が当たりまえになりました。コロナ禍でその購買行動は加速したことでしょう。

そうすると、宅配を前提としたEC化率、あるいはEC売上比率はあくまでも計算上の結果、企業側の論理であり、

宅配売上比率を高めるよりも、

いかにオンラインをフル活用して、顧客の新しい購買行動にストレスのない 
OMO(Online merges with Offline)環境を整えるか、 あるいは

ZARAのインディテックスが10年来ビジョンとして掲げ、あと数年で完成する予定のスローガンを借りれば

Fully integrated store and online platform(店舗オンライン完全統合プラットフォーム)

の環境を実現するか?という議論をすべきではないか、ということになります。

まずは、顧客購買行動を起点にビジョン(未来のショッピングシーン)を描き、
そのゴールに向けて環境を整えることに力を尽くしたいですね。

EC化率は、あくまでも、その結果に過ぎません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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July 27, 2020

セシルマクビー全店閉鎖で考える、ブランドのライフサイクルの見極めと対応

先週、1330257_m 1990年台から2000年台前半に業界のトップランナーのひとつだった
と言っても過言ではない、マルキューブランドの代表格である「セシルマクビー」が

1987年の創業から33年目となる今年(2020年)、
全店を閉鎖してストアブランドとしての歴史の幕を閉じることになった

というニュースが報道され、

SNS拡散、TVのバラエティ番組でも取り上げられるなど、大きな話題になりました。

同ブランドを展開するジャパンイマジネーション社は
今後、これから市場性が見込める4つのブランドに絞って、それらを運営する子会社を存続し、

自らは「セシルマクビー」ブランドのライセンス管理を行う形で事業を継続されるとのことです。

このニュースを聴いて、
業界の一時代を盛り上げた同ブランドと同社の功績に敬服すると共に
客層を絞った、個性のあるブランドには、
やはりライフサイクルというものがあるのだということを
あらためて感じさせられたものでした。

WWDジャパンさんの2つの関連記事

「セシルマクビーの時代の終わりはずっと前から感じていた」 社長が語る全店閉鎖の背景

ジャパンイマジネーションが「セシルマクビー」全店閉店

を読むとわかるのですが、

筆者がこれまでいろいろなストアブランドの分析をお手伝いして感じた
「ブランドや事業のライフサイクルの仮説」が
セシルマクビーにも当てはまることを感じたので、ここでご紹介したいと思います。

まず、
上記WWDジャパンの2つの記事の同社の社長さんのコメントと記者の方の解説をまとめて

セシルマクビーのライフサイクルの仮説を整理すると
以下のような感じになりました。【 】内は 筆者の視点で独自に定義したものです

1987~1994年の8年間 【導入期】ブランド立ち上げから店舗拡大とともに知名度が高まり始める時期
1995~2004年の10年間 【成長期】ブレイク~売上右肩上がり 
2005~2014年の10年間 【成熟期】店舗数拡大とともに全体売上拡大できても1店舗あたり販売効率が下がる
2015~2020年の6年間 【衰退期】事業赤字が続く

そして、2019年にテイストと客層若返りのリ・ブランディングを図ったものの、
2020年の今春、コロナショックに見舞われ、全店閉鎖の決断に至った

というものです。

これまで分析させていただいた多くのアパレルブランド事業に共通していたのは
神田昌典さんによるプロダクト系のマーケティング理論にもあるように、

ある事業が導入期から成長期に入ったところ、
つまり売上前年比が急激(25%以上複数年)に伸び始める時期がわかると

1)それまでにかかった年数のおおよそ4倍がブランドの寿命になる
そして
2)導入~衰退までの4つの期はほぼ同じ長さになる、
という仮説で

まさにセシルマクビーにも
この仮説が当てはまっているように思えます。

導入~ブレイク(成長期スタート)まで 
約8年 x 4= ブランド寿命 32年

そして、ここからは筆者の臆測になりますが、

おそらく、店舗拡大による売上高のピークは
成熟期2005年~2014年の間にあったと思いますが、

営業利益高のピークはちょうど成長期から成熟期に移行する
2004~5年あたりだったのではないかと思われます。

そう、これは 前年度比較ではなく・・・
業績を時系列に並べて振り返って見ないと
なかなかわからないかも知れませんが、

出店によって規模拡大はできても、販売効率が下がり始め
営業利益高がピークアウトしたな~
と感じた時が成熟期入り

気づいたにもかかわらず、再成長のための何らかのてこ入れをせず、
成功体験に執着して突っ走っていると
いずれは衰退期を待つばかり・・・

というのが多くの「儲からなくなった」事業の
時系列分析から気づく共通項です。

これに対して、

この仮説に立って考えれば、いつ頃、成熟期を迎えるかの予測はできるわけですから、

〇 海外市場を開拓したり、
〇 成長の見込める新カテゴリーの導入をしたり
〇 リ・ブランディングを図る

などが成熟期のまま衰退期(赤字続き)に陥らないための対処療法になるわけです。

業界を見渡すと、

海外市場に軸足を移して成長軌道を持続した数少ない成功例のひとつは
ユニクロでしょうか。

国内に絞って改革をするのであれば、

既存事業や既存の品揃えに固執せず、

◎より客層が広く、

◎販売効率がよい、あるいは

◎より利益率の取れる新カテゴリーを導入したり、

また、

◎より幅広い客層が見込める新事業に軸足を移す

ことによって、新たな成長ドライバーを育て、利益を高めたり、

◎ブランドのイメージや商品構成を一新して客層を増やす、あるいは

◎客層を変更するリ・ブランディングを行う

のが対処例になるでしょう。

この点で、これまで国内中心に比較的うまく対処されて来たと思われるのは
アダストリア社やユナイテッドアローズ社あたりでしょうか。

しかし、個性が強いブランドに至っては・・・
割り切って事業終了も視野に入れて、

早めに、別業態・別ブランドを育て、成長の軸足を移す
一方で旧ブランドは店舗リストラ、フェイドアウトを進める、

というのも企業存続の選択肢のひとつかと思います。

もっとも、既存ブランドの成功・貢献の会社へのインパクトが大きすぎると、
乗り換えは、かなり困難を極めるとは思いますが・・・

さて、話をジャパンイマジネーション社に戻しますが、

同社は幸い、借金がなく、
主力業態であったセシルの店舗閉鎖を決め
かなりのダウンサイジングをして
なおかつ、知名度を生かしたライセンスを収入源に、企業として営業継続する選択肢を選ばれました。

会社を成長させてブランドを終了するというのは
そのブランドのために社内外で働く方々がいらっしゃいますから、
本当に苦渋の決断だったと思います。

しかし、今回の決断がもっと遅ければ、
取り返しのつかないことになっていたかも知れません。

「セシルマクビー」ブランドの終焉は残念ではありますが・・・

記事の中で社長さんが最も気にかけられていらっしゃるように
お辞めになる方々の進路についてはしっかりフォローして頂きたいと思っています。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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July 20, 2020

EC拡大時代に理解しておきたい、実店舗販売とEC販売の損益構造の違い

コロナ禍の休業でECがほぼ唯一の接点となって以来、
ファッション業界では自社EC強化、再強化への取り組みが加速しています。

先日、
今後、EC、店舗、物流がどう変わるか?というテーマで1ukcc003

在庫管理のクラウドサービスを提供しているロジザードの金澤茂則社長と

小売業のオムニチャネル化の実務経験を持つ
オムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎さんと

公開オンライン対談をさせて頂いた時の要約記事が公開されましたのでご紹介させていただきます。

EC・店舗、物流はどう変わる? どう変える?

筆者は長年、成長専門店の在庫最適化のご支援を生業にして来ましたが、

ここ数年は、クライアント企業さんのECの売上が増えるに従って、
実店舗とEC間の在庫調整のしかたなどのご相談も増え、
この間、感じて来たことを、
これからECを強化する専門店さんの立場でお話しさせて頂いたものです。

EC販売は
店舗家賃という固定費がかからず、
比較的 事業部の一人あたりの生産性が高いため、
店舗販売よりも儲かる、という一般論がある一方で、

売上伸び率は高いが、
実際は店舗よりも利益が出しづらいという企業さんが少なくないのも現実です。

その理由を理解するために、
これからEC売上を拡大、あるいは再強化する前に、
実店舗とECの損益構造(P/L)の違いを十分理解しておく必要があると思っています。

着目したいのは、販売管理費の構成の違いです。

最もウエイトが違う物流費は

店舗販売(倉庫店舗間)に携わっているとあまり気にならないかも知れませんが、

EC(宅配)向けの物流においては店舗物流に対して、
売上対比で倍近くがかかり
単価が安い商品を扱っている企業の場合は
更に倍(店舗物流の4倍)もかかるので経営課題として浮上します。

その理由は
商品取り扱い料(入出庫、梱包費)と
宅配運賃(送料) 
にあります。

物流というものは
歴史的にBtoB(倉庫間店舗間)向けに効率化、最適化されて来たものですが、
BtoC(企業から顧客宅配)はまだまだ途上と言わざるを得ません。

「宅配クライシス」で話題になった

配達員のキャパシティや再配達問題はまだその一部に過ぎません。

店舗販売における販売管理費の中身は固定費が圧倒的に多く、
売上が上れば、固定費分を上回る粗利はそのまま利益にプラスになる、というわかりやすさですが、

EC販売では、固定費部分は少なく(主に社内人件費)、
一方、売上連動型(%)の変動費の他に出荷1件あたりの経費(単価)という変動費があって、
この後者の出荷1件あたりの変動費というか、件数あたりで、単価でかかるコストがネックになります。

要は、

1,000円分の商品を出荷しようが、10,000円分の商品を出荷しようが
同額かかってしまうコストです。

特に宅配運賃(配送料)が大きなウエイトを占めるものです。

それゆえ、安易な「送料無料」は、低価格品を販売する企業にとっては、
極めて気をつけなければならない、損益改善のボトルネックになるわけです。

これらを実感するためには、

総売上高に対する損益計算書(PL)を見ているだけではわかりません。

また、変動費だ、固定費だ、物流費だ、システム費だ・・・というと
混乱して来そうですが、

「出荷1件あたりの」採算(収益構造)モデルをつくると
かかる費用の構造とともに1件あたりコストがつかめ、利益の改善にあたり、課題がどこにあり、どこに切り込めばよいかがわかりやすくなるものです。

実は、そう難しく考えることはありません、
そもそも、小売業に従事するものであれば、
「出荷1件あたりの売上高」は
店舗における「客単価」と同じもの

顧客1件あたりの平均売上と損益の積み上げが小売業の商売の基本と考えれば
理解しやすいものです。

EC拡大局面において、新しい購買行動に対応したECという販売方法が
経費倒れにならないように、是非、商売人として採算感覚を持って進めていただきたいと思います。

以前、WWDジャパンさんに寄稿した関連記事がありますので、ご参考にしていただければと思います。

①下がり続ける出荷単価と上昇する物流費の狭間で格闘するZOZOについて

ファッションECの雄 ZOZOの決算書から学べること

②単価が低くてECが店舗ほど利益を上げられないユニクロについて

EC化率アップだけでは儲からない「ユニクロ」

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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July 13, 2020

一律値下げでは過剰在庫問題は解決しない

2か月以上の外出自粛と商業施設の休業によって過剰在庫を抱えてしまった今年は
在庫をいかに換金することが第一だと思いますが、

この間、結構派手なほぼ全品一律○○%オフやGap50off (2点買ったら○○%OFFも同様)
どの商品にも使えるクーポン割引を見かけたものでした。

顧客も店頭も説明が不要な
わかりやすい値下げ方法が売上を押し上げるのは間違いないのですが・・・

実際のところは、

人気商品ばかりがよく売れてしまって、品薄になり、
本当に消化を促進したい、在庫をたくさん抱える不人気商品があまり減らない、

というのがよくある話です。

そのため、期間中は「よく売れた」と思っても、
期間終了後は店頭やサイトは売れ筋が欠品し
不人気商品の構成が高まり・・・当然、売上不振に陥る。

それを「セール後の反動による買い控え」と指摘する方もいらっしゃいますが、
実際は、せっかく買いに来ても買うものなし、買えるものなし、というのが実態だと思っています。

ですから、手間がかかっても

単品の売れ行きにあわせて、「販売期限」までの販売予測と着地在庫予測を見ながら
個々に値下げ価格やオフ率を決めて動きを確かめる

ことが原則であるのは言うまでもありません。

関連して、緊急事態宣言解除後の店舗再開後の売れ行きに明暗を分けた2つの事例を耳にしました。

あるブランドAは、

4月の時点で、店舗が再開する6月の初旬に店頭に必要な商品とそうでない商品を
仕入担当、在庫運用担当、販売担当三者が議論して分類し、

休業中のEC販売では、
前者は価格設定を慎重に見極め、後者はかなり思い切った値下げを行った。

更に、このブランドは、各担当が打ち合わせをする機会が出来たので、

あたかも、新店(改装)オープン時にそうするように、
再開時に各店の売場の一等地に何を並べて、何を売るべきか
各店の店舗レイアウトを白紙から見直したそうです。

もうひとつのブランドBは、

とにかくトップからの号令で売上・換金ありきで、
休業中のECでは、単品の激しい%OFF値下げはもちろん、クーポン発行、他、考えられる売上アップ策を尽くし
在庫消化を図り、ECは前年比2倍以上の伸び。

店舗再開後は、その時点の手持ちの在庫を店舗規模に応じて各店に配分して
、キャリー在庫も動員しながら店頭を繕ったそうです。

前者Aは店頭もECも前年比100%超えが続き、
後者BはECは100%越えが続くものの、店頭は厳しい状況が続いているとのことでした。

後者のブランドBも総額の在庫消化はある程度果たせたかも知れませんが、
上澄みを取られて、残った在庫の中身はボロボロ、利益を生み出すには程遠いことは想像に難くありません。

さて、夏はまだ長く続きますが・・・
そろそろ9月以降の秋の立ち上がりも考えなければなりませんね。

今年の秋冬は先行き不透明感から、仕入を抑えているところが多いので、
新しい商品を多めに突っ込んでおけば、その中から店舗が何とかしてくれる、
という考え方は今回は通用しそうもありません。

まずは売場やサイトの見え方を関係者としっかり想定して、
品揃えの量、質ともに精度を高めて計画せねばなりませんね。

後者のブランドBのように、過去を引きずるのではなく、

前者のブランドAのように、
新店オープン、あるいはリニューアルオープンのつもりで
まずは、関係者で売場のビジョンを共有し、

必要なものと不要なものを切り分けて、この間リセットして
その時を迎えることができれば、

限られた在庫かも知れませんが、
気持ちの入った売場でお客様をお迎えできるのではないでしょうか?

製・配・販 が 知恵を絞り 
利益を残せるかどうかが問われる再スタートのシーズンになりそうです。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

次のステージに向けての在庫最適化と人財育成を切り口にした業務再構築支援~ZOOMを使ったオンラインアドバイザーサービスも実施中。詳しくはこちら

【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫最適化を考えるビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

電子書籍 Kindle版 紙の本の在庫が少なくなりました。ご希望の方は弊社までメールでお問合せください。

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