April 26, 2017

YKKのファストファッション向け取り組みとアパレル生産のボトルネック

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 4月17日のWWD JAPANにファスナーの世界シェアNO1、金額ベースで4割超を誇るYKKの今後の戦略に関する記事が掲載されていました。 

 3月初旬に発表された同社の中期経営計画関連の日経新聞や繊研新聞の記事(ともに3月3日付)の内容と織り交ぜてご紹介させていただきたいと思います。

 同社はこれまで高品質を武器にラグジュアリーブランドや著名インターナショナルブランドやナショナルブランドを中心に中高価格帯向けのファスナー供給をメインにして来ましたが、

 これから世界のマーケットはますますラグジュアリーとファストファッションへの二極化が進むであろうことを見据え、

 最大の成長の伸び代は中国・アジアで普及するファストファッションSPAと欧米NBにあると考え、これらの領域での商売拡大のために集中設備投資をすることを宣言しています。

 同社の新戦略のポイントは

 「低価格対応」 と 「納期の短縮」 の2点です。

 「低価格対応」に関しては、製法や材料を見直して中国製の競合と同じ価格水準でもしっかり利益を出せるものづくりを目指し、

 一方、

 メッキ・染色などの表面加工技術の内製化によって

 対応できる商品バリエーションを増やすとともに短納期ラインの構築を行い、

 製造ラインの省力化にも取り組むことで 「納期の短縮」を実現し、

 これまで最も取りこぼして来たファストファッション市場を攻略しようというものです。

 この新戦略のグローバル展開にあたり、

 上海YKKで世界に先駆けてこれらの対応を手がけて来た大谷新社長が中心となり、

 中国、バングラ、ベトナムに次々に導入した新しい生産管理手法を日本の黒部本社工場を含む世界の主要マーケット向け近隣生産地に展開する模様です。

 この取り組みによって

 これまで客先から一括受注した注文を、生産計画を立てた上で順次取り掛かるという従来型のやりかたを見直し

 受注したものを必要な分だけを小ロット(スモールバッチ)でつくり供給するというスピード供給体制へと変革する模様です。

 これは

 「ファストファッション企業だけでなく、今後は多くのアパレル企業が、アイテムによって短期・中期・長期という3つの時間軸で生産するようになり、アパレル生産はますますグローバルに拡散する」(大谷社長)

 ことに対応するための戦略です。

 この動きはまさしく、多くのグローバルSPA、ZARAのインディテックスグループを筆頭にH&MやNEXTやプライマークなどがすでに取り組んでいるものであり、

 日本のユニクロの「有明プロジェクト」にしても、このような対応をすることが目的のひとつにあると思っています。

 今回のYKKのファスナーの納期短縮への取り組みの記事を読んで私が思い出すのは・・・

 かつて商社でアパレル生産の仕事をしていた時のことです。

 当時、アパレル生産、特にスポーツウエアやブルゾンなどの生産を行う上で早期に意思決定をしなければならなかったボトルネックは・・・

 生地の生機(きばた;染色前の生地)と(YKKの)ファスナーだったと記憶をしています。

 つまり他の資材の中でも特に調達に時間がかかるために、最終的に商品ごとの生産数を決める前に、先駆けて注文しなければならないものがこの2つだったのです。

 シーズン性があり、トレンドの変化が激しいファッションビジネス、アパレルビジネスにおける最大のリスクはズバリ、商品ごと、カラー・サイズごとに出来上がってしまった時の在庫にあります。

 上記の2つのボトルネックのうち染色前の生地であれば・・・まだ別の色に染めるとか、他の商品に使うとか、「転用」が利きますが・・・

 カラー・サイズ(長さ)ごとに早期進行しなければならなかったファスナーは「転用」が難しく(結構、見込で無駄な注文をしたこともありましたっけね)、

 そのため、アパレル商品をつくるのが目的なのに、YKKのファスナーのリードタイムに合わせて製品の計画を立てなければならないという局面もありました。

 そういう意味では今振り返ると、ファスナーはアパレル生産の最大のボトルネックのひとつだったのかも知れません。

 これはファストファッションだけの話ではないでしょう。

 あれから20年は経っているので、多少はリードタイム(納期)は改善されたかとは思いますが・・・

 そんなボトルネックのひとつであるファスナーの納期が劇的に短縮されるのであれば、業界の在庫リスク回避に大いに貢献することと期待します。
 
 ファスナーの世界のトップシェアを誇る日本のYKKが時代の要請にあわせて業務改善を行い(まるで小説「ザ・ゴール」の世界?)、ますますグローバルで発展されることを楽しみにしています。

 関連エントリー-必要十分な品質

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 世界一のZARAのインディテックスの背中を追う、ユニクロのファーストリテイリング。それぞれの強み、将来性を多角的に考察しました。
 
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April 21, 2017

ロコンドのRAOS(リアル・アズ・オンラインストア)計画のチャレンジ~業界のオムニチャネル化の課題

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 ネット通販(EC)での靴の購入のハードルを下げるために「自由に試着できる通販サイト」をコンセプトにしたECモール「ロコンド」で2010年に創業し、その後、

 同通販モールの運営を通じて構築したITと物流のしくみを活用して、ファッション企業のECがらみのバックオフィス業務も支援するロコンド社が、2017年3月に創業以来続いた赤字から黒字化のメドを立てて東証マザーズに上場しました。

 上場後、メディア露出が増えたため、同社の記事を読む機会が多くなりましたが、
 (3月20日付WWDJAPAN、4月13日付繊研新聞、4月21日付日経MJなど)

 同社のビジネスモデルの中でも私が注目しているのは ECモール「ロコンド」の拡大よりも、

 むしろその背景で同社がオムニチャネル化をめざす業界の急所(ウィークポイント)に気づき、力を注いでいる「プラットフォーム事業」の方です。

 同社は「ロコンド」を立ち上げた後に、自社ECをアウトソーシングするブランドや企業のEC運営業務を請け負い、更にEC向け物流をブランドの直営店向け在庫補充へと請負領域を拡大(ロコチョク)して来ました。

 その後、

 地方百貨店などで限られた店頭在庫でもECの豊富な倉庫在庫を活用して販売につなげることができる「ロコチョクD」というサービスに取り組んだり、
 
 ECや直営店向けの物流倉庫の運営を受託したり、

 今後はECのオンラインシステムを実店舗にも活用するサービスに力を入れようとするなど、

 オムニチャネル化を目指す業界において、

 オンライン側からオフラインの実店舗のオペレーションの課題を効率化しようという、

 一見ニッチ(隙間的)ながら、業界の極めて大きな課題を解決するサービスに取り組んでいるように見受けられます。

 おそらく、同社は数々のクライアント先との取り組みの過程で直営店を取り巻く安定稼働を重視した保守的なPOSや基幹システムの環境と、

 一方で、エンドユーザーの購買行動に対応すべくリアルタイム更新が前提で、更なる進化を続けるEC向けウェブシステムの環境の違いに触れ、壁を感じたのでしょう。

 私も日ごろ成長ファッション企業さんの直営店の店頭在庫最適化のための業務を生業にしているため、当然システムや物流などのインフラ整備にも対応していますが、

 最近ECの販売拡大にともなって、実店舗とEC双方の販売機会ロスをなくすための在庫の一元管理化を検討する上で、最もネックになることのひとつが、
 
 日次更新で動いている本部システムとリアルタイム更新で動いているECをどう同期化させるかの問題です。

 従来の本部基幹業務システムに関しては売上はともかく、在庫までをリアルタイムにするのは・・・

 理論的には可能なのですが、システムの安全稼働を考えると負荷も投資もかなり大きくなる。

 一方、ECのウェブシステムは売れたらその都度在庫を引き落とすリアルタイム更新が常識。

 これある意味、

 従来からの企業の業務上の都合 と スマホ経由で取った情報に基づいて行動する進化しつづける消費者が求めていることの壁

 とも言ってもいいかも知れません。

 業務を時代の要請にあわせるならば、いっそのこと、リアルタイム更新が常識のEC(オンライン)の考え方を中心にシステム全体をリニューアルしてしまった方がいいのではないかと思うことがしばしばあります。

 タイトルにあるロコンド社が構想する「RAOS(リアルアズオンラインストア)計画」とはその名の通りECの発想で実店舗も運営しようという発想だと解釈されます。
 
 私は業界の多くの人たちがそうであるように実店舗サイドからECをどう取り込もうかと見ているもののひとりですが、
 
 同社のようにECから事業をスタートした方々にとっては、逆側から見えていて、「そこがヘン(非効率)だよ・・・」と感じていることが少なからずあるはずです。

 そして、冷静にお客様目線で考えると、その逆側からの発想の方が、今、そしてこれからの時代にとっては正解=新常識 だと思えてなりません。

 これから事業を始める方々にとっては、そんな「新常識」を前提にしたしくみから始めた方がよいでしょう。

 一方で、既存のシステムのしがらみがある多くの企業は、どういち早く消費者の購買行動に合わせた「新常識」に乗り換えるかが今後の事業成長の鍵(カギ)になることでしょう。

 そんな問題提起をしているロコンドのチャレンジにとても共感しながら関心を持ちました。

 大きな取り組みはこれからだと思いますが、今後の動向に注目したいと思います。

 関連エントリー-流通段階と仕事の発想、サイクルの違い

 ※これ古いエントリーですが、業務サイクルと仕事の発想に関するお話です。直営店運営は週次、日次ですが、ECはリアルタイム更新が前提。どんどんスピードアップする市場にどうあわせて行くかが課題になりますね。

 【ファッションビジネスを考えるおススメ本】

 有名ファッション専門店の事例を用いて、顧客心理と在庫コントロールの大切さをわかりやすく解説したビジネス読本です。

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March 21, 2017

ユニクロが挑むハイブリッド型マーチャンダイジング

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 3月17日の日経新聞に前日行われたファーストリテイリングの「有明プロジェクト」説明会に関する記事が掲載されていました。その後も多くのメディアが関連記事を取り上げていましたね。

 ファストリはユニクロの商品部組織を東京ミッドタウンから倉庫のある有明に移し、複数階層あった商品部やマーケティングに携わるスタッフを約5000坪のワンフロアーにまとめ

 マーチャンダイザー、デザイナー、パタンナー、生産、マーケティング担当が

 これまで1年がかりでリレー式で行って来た商品開発業務を定例会議だけに限らない、意見を求めたいことがあれば、すぐに打ち合わせを始められるインフォーマルなコミュニケーションを促進することによって

 業務のスピードアップを計り、シーズン中の需要の変化にも対応できる体制をつくることを目論んでいるようです。

 メディアでは

「つくったモノを売るという所から消費者が求めているモノだけをつくる」

「消費者個人の好みに合わせたサイズやデザインの服を10日でつくり届ける」

 ことが誇張され、ユニクロがこれまでのビジネスモデルを180℃変えるかのように報道されていますが、

 実際には、

 これまでのほとんどの商品が企画から店頭まで1年がかりだった計画生産、売り減らし型の商品開発体制に加え

 ・シーズン中にも新商品を開発して店頭に並べることができるようにすること

 ・サイズのパーソナル対応を拡大すること

 の2つを意図しているものと思われます。

 今回のプロジェクトの背景にあるのは言うまでもなく世界一を目指すファストリの新たなチャレンジです。

 昨年までは世界売上規模第三位の米GAPの背中を追いかけて来たファストリでしたが・・・

 今年2月23日に発表されたGAP社の2016年度(2017年1月末)決算速報によれば 
 
 前年比 2%の減収、22%の大幅営業減益、

 1月末の為替レート 1ドル=113.8円で換算すると

 ファストリ(2016年8月期)  1兆7864億円
 GAP INC(2017年1月期)  1兆7657億円

 となり、ファストリはいよいよ売上規模ではGAP社を抜き、世界3位となりました。

 但し、営業利益ベースでは

 ファストリ (同)        1272億円
 GAP INC (同)        1355億円

 とまだGAPには劣っていますが・・・

 この結果を予測して、ファストリの今期からの目標は売上利益とも世界一で快走を続けるZARAを運営するインディテックスグループ一本に絞り切ったと見ていいでしょう。

 関連エントリー- 世界アパレル専門店売上ランキング2015 トップ10

 昨年あたりから話題になっているファストリの一連の「有明プロジェクト」の報道を聞いていると・・・
 
 私が2014年に「ユニクロ対ZARA」の執筆のためにスペイン インディテックスグループ本社を訪問して取材した時に見たインディテックス本社の業務スタイルをそっくり目指しているように思えてなりません。

 当時、インディテックスの本社では

 ZARAの同じセクション(ウィメンズ、メンズ、キッズなど)の商品開発職務の方々がすべてワンフロア―のほぼ壁のない大部屋で、「実際の売場」を想定して仕事をし(デザイン、サンプリング、商品発注、グレーディング、裁断指示まで)、

 同じ敷地内で生地の裁断、縫製現場から戻って来た縫い上り商品の検品とプレス、店舗振り分けの上、空港近くのハブ物流に届けるまでの出荷物流までを行っていましたから・・・

 今回の有明プロジェクトでは、できる限り、それに近いことを実現しようとしているのでしょう。

 ただし、それはユニクロがZARAのマネをしてトレンドファッションに取り組むという話ではなく、

 ZARAの強みである

 業務のスピードアップと
 Flexibility(柔軟性)と
 Accuracy(正確性)

 に取り組むという話でしょうね。

 そして、気をつけなくてはいけないのは、

 ユニクロの世界最強といっても過言ではない、これまで築き上げてきたベーシックの商品開発から店頭売り切りまでのオペレーションの強みを捨てるのではなく、それに磨きをかけながら、

 それと並行する形で、今回の柔軟性のあるオペレーションを走らせるべきでしょうね。

 ZARAは、とかくトレンド商品の高速生産ばかりが注目されがちですが、実際には

 ・トレンド性のある商品は在庫リスクが大きいのでできるだけサプライチェーンを内製化してスピード重視で管理する

 逆に

 ・流行にさほど左右されないベーシックなものは品質と価格のバランスが大切なので、アジアの工場にアウトソーシングして時間をかけてつくる

というサプライチェーンのハイブリッドな使い分けを行っていることに強みがあります。

 つまり、人間ってものは、そう器用なものではないので、

 同じチームに違う勘所、違うサイクルの業務を同時にもとめても生産性が上がらず、上手く行きません。

 それゆえ内製化とアウトソーシングの使い分け、あるいは内部でもチームを分けての運用が現実的となるのです。

 そして、それぞれのサプライチェーンのサイクルは違っても、それらを店頭で上手にミックス=ハイブリッドさせているのが、

 ZARAの店頭の魅力であり、魅せるところと売るところのバランスであり、本当の強みであると思います。

 このあたり、ZARAのオーナーであるオルテガさんが製造業出身だからこそ 

 現場に無理をさせず、同じリズムで安定的な操業を求め、結果利益が残るということがわかっていらっしゃるからこそなのかも知れませんが・・・

 もうひとつ、ユニクロはカスタムサイズを10日間でつくり届けるといいますが、

 それも別オペレーションで取り組む大事なことのひとつかも知れませんが・・・

 その前に店頭のSサイズやXLサイズの欠品を防止して欲しいという声にも耳を傾けるべきかも知れません。

 いずれにしても、柳井会長のある意味「振り切った」理想の高いハードルから・・・

 結果、現実的なところに落ち着いて、進化を続けるユニクロからは目が離せませんね。

 【おススメ本】

 ユニクロが目指すZARAとの違い、見習えるポイントは?両社の経営信念、ビジネスモデルの強みなどわかりやすくまとめました。 今年1月には中国語簡体字翻訳版も中国本土で出版されました。 
  
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January 24, 2017

しまむらの値下げ品自動選別システム

 1月20日の日経新聞にしまむらの値下げ品自動選別システムに関する記事が掲載されていました。

 同システムは、初期の入荷量や販売実績データなどの情報から

 売れ行きの悪い商品を選別し、値下げの時期や幅を自動的に提示するもので、

 最終的な判断や店舗への指示は担当者(ヒト)が行っているようです。

 既に、2016年秋にファッションセンターしまむらで展開する1割の商品が自動選別されたようで、

 同社は更なる店舗拡大にあたり、担当者の業務負担を軽減する目的で、

 ファッションセンターしまむらでの対象商品を広げ、

 2018年2月までに 同社の別業態、バースデイ(子供服)やアベイル(ヤングカジュアル)でも稼働させるようです。

 量販系の小売りチェーンやSPAでは、計画通り売れない商品があった場合、期末セールを待たずに、顧客が欲しいと思う時期を逃さずに、シーズン中に値下げするのが一般的です。

 (レギュラー店またはアウトレットまたはWEBストアか値下後の場所はそれぞれですが)

 ただし、その値下げのタイミングや幅は属人的なケースがほとんどです。

 そのため、手遅れになって期末近くに大幅値下げが必要になったという場合が多いように思います。

 その理由は、

・商品ごとの販売計画がない=無計画な発注量

・販売期間が決まっていない、あるいは守ろうとしていない(理由をつけて先送り)

・値下げ対象とする基準があいまい

・値下げ予算の運用が担当者に任されている

といったところでしょうか?

 しまむらの場合は、全体の約4割と言われるトレンド商品(非定番品)に関して

 一部を除き、全店各SKU(カラーサイズ)1枚のみの投入=発注量一定

 原則投入してから5週間以内に売り切る ところてん式で投入消化管理

 値下げ枠(額)管理が徹底 (値入額‐粗利額目標)

 しているからこそ

 期限(5週以内)通りに売り切れないであろう商品を選別して設定されている「値下げ枠」を按分して振り分けることが可能なのでしょう。

 もっとも、しまむらのような商品投入&売り切り方法でなくても

 基本的には、上記のような項目にルールづけと会社基準を設定すれば商品選別とその値下げにいくら使ってよいかくらいは算出できます。最終判断は担当者や上長(ヒト)がすべきでしょうが。

 日頃のコンサル現場では、ウイークリーの品種、品番別の期末消化シミュレーションと値下げ推奨品番の選別、および値下げ枠管理はすでに行っていますが、

 今回の記事を読んで、更に、それぞれの単品にどれだけ値下げ枠を充てるかの気づきをいただきましたので、近々 提案してまずはExcelベースで取り組んでみようと思いました。

 今、ファッション流通現場の最大の課題は人手不足ですね。

 経営者は自動化、自動化を叫び、システム屋さんは(理論上は)できます、できますと言いますが・・・

 お客様やスタッフが「自動システム」に振り回されないことに注意しながら、また、使いこなせなくて投資額を無駄にしないように、省力化を考えていきたいですね。

 昨年 YOMIURI ONLINE に掲載された寄稿 

 しまむらが若い女性にパトロールされるワケ

 をご紹介します。

 ご興味あればリンク先を覗きに行ってみて下さい。

 【おススメ本】

 ファッション消費の顧客購買心理を考えるビジネス読本

 顧客心理への配慮と在庫コントロールロジックが明確な しまむら の事例もいくつか取り上げています。

 『人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識』

   
 
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January 13, 2017

アメリカのSPA(アパレル製造小売業)の元祖「ザ・リミテッド」の全店閉店と創業者レスリー・ウェクスナー氏から学ぶこと

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 1月10日のWWD JAPAN.COMにアメリカの婦人アパレルSPAチェーン「ザ・リミテッド」が全米250店舗全店を閉店して、以後WEBストアのみで販売を続けることに関する記事が掲載されていました。

 ニュースの詳細はリンク先をお読みいただければと思いますが、

 ザ・リミテッドが全店舗閉店 4000人を解雇
 
 私も含め、90年代から世界のSPA(アパレル製造小売業)をウォッチしてきた業界の方々からすると今回の全店閉店ニュースには感慨深いものがあると思います。

 業界のトップコンサルである小島健輔先生も自身の思いをブログで取り上げていらっしゃいますね。

 小島健輔の言いたい放題 ウェクスナー氏の「先見の明」?

 SPA(Specialty store retailer of Private label Apparel)という言葉の語源はGAPの創業者である故ドナルドフィッシャー氏が1986年の同社決算発表会で使った同氏の造語ですが・・・

 GAPより早くからアメリカでお手本となる本格的なSPAをしていたのは「ザ・リミテッド」であるのは業界でも広く知られています。

 もう中古本としてしか購入できませんが・・・SPA原論とも呼べる

 「リミテッド社はなぜ世界最大になれたか(桜井多恵子著商業界1996年)」 を

 アパレル専門店のブランドポートフォリオやプライベートブランド(PB)開発のバイブルとして何度も線を引きながら読まれたアパレルチェーンの方もいらっしゃるでしょう。 私もそのひとりです。

 1963年「ザ・リミテッド」からスタートした旧リミテッド社の強みは 

 商品企画をして直営店で売るものの、つくることはベンダーに任せるという表層的なSPAではなく・・・

 店頭での試験販売と生産地にバイイングオフィスを持つ社内商社を活用したアジアでのQR生産、空輸インフラなど店頭起点のサプライチェーンマネジメントにあり、

 その結果として、ウィメンズ向けファッションベーシックカテゴリーの商品企画的中率が高かったところにあったと思います。

 その点、ユニセックス向けのベーシックカジュアルが中心で、比較的農耕的な?ものづくりのGAPとはまた違ったものづくりのお手本でした。

 90年代に「ザ・リミテッド」や「エクスプレス」などのSPAブランドを中心に世界一のアパレル専門チェーン企業に上り詰めた旧リミテッド社の転機は・・・

 2000年のH&Mのアメリカ上陸後に訪れます。

 H&Mのアメリカ上陸後、それまでさほど目立たなかったフォーエバー21(F21)も大量出店を始め、全米アパレル市場を舞台としたH&MとF21のファストファッションの競演が始まります。

 ここからアメリカのアパレル市場は正しくレッドオーシャンに突入したわけです。

 2007年、リミテッド社の創業者レスリー・ウェクスナー会長は

 創業業態である「ザ・リミテッド」ともうひとつのアパレルチェーン「エクスプレス」の2つの事業の権利の75%を投資ファンドに売却、2010年には残り25%の権利もファンドに売り渡し、外衣アパレル専門の業態からは撤退。

 一方、1982年に買収して磨きをかけて来たランジェリー中心の「ヴィクトリアズシークレット」と1990年に自ら開発した「バス&ボディワークス」というヘルス&ビューティ事業に特化します。

 その間、社名を「リミテッドブランズ」から「Lブランズ」と社名変更し、創業業態であるLIMITEDのLの頭文字は残しながらも、売却した「ザ・リミテッド」と違う、アパレル専業とは違うファッションチェーンの道を歩みます。

 2007年に「ザ・リミテッド」「エクスプレス」のアパレル業態を売却することを発表した際のウェクスナー氏のコメントが今でも忘れられません。

 「アパレルビジネスは我々にとって、もはやエキサイティングなビジネスではない」

 もしかしたらその言葉は、ご自身の本音だけでなく・・・ファッショントレンドをマーケットイン発想で素早くつくるより・・・むしろ安くつくってしまうH&Mやフォーエバー21らのファスト性に辟易としていたファッション好きな大人の女性の言葉を代弁していたのかも知れません。

 今回、全店閉鎖となったのは、創業者が10年前に見切りをつけた、もう同氏の信念の宿っていないファンド傘下の「ザ・リミテッド」。

 一方、創業者は現在、Lブランズとして、女性の内面の美をテーマにランジェリー、ホームウエア、スキンケア、ヘルス&ビューティ部門を核にアメリカで最も好業績のファッション企業の経営者として大成功を収めています。

 世界アパレル専門店売上ランキング2015 トップ10

 の5位に位置する、その「Lブランズ」については、少なくとも年に一回はアニュアルレポートに目を通させていただいていますが・・・

 同社が成功した理由は、ランジェリーやスキンケア事業を選んだからではなく、もともとその業界にいる同業プレイヤー(企業)とは違い・・・

 創業の「ザ・リミテッド」で培ったアパレルビジネスアプローチとサプライチェーンマネジメントを取り入れ、磨きをかけているからにほかなりません。

 毎年、期中生産比率を高め、究極の短納期生産を行い、商品的中率を上げることによって、在庫回転率を飛躍的に高めて・・・

 店舗の大型化を図りながらも売場面積(スクエアフィート)あたりの売上高をぐんぐん高め、既存店増収を続けながら、

 2016年1月期では、営業利益率18%という売上トップ企業の中でも指折りの高い営業利益率を上げています。

 これはランジェリーやスキンケアというカテゴリーがアパレルよりブルーオーシャンで儲かるビジネスだからではなく、

 レス・ウェクスナー氏が成熟市場の中でも伸び代のあるインナーウエアやスキンケアというカテゴリーにアパレルSPAならではの手法を持ち込んだからこそと思っています。

 創業業態「ザ・リミテッド」が全店閉鎖されても・・・

 同氏のビジネスセンスとファッション流通革新のグルとしての存在は健在です。

 世界がSPA化に向かった時にも大いに啓発され、大いに勉強させてもらったものでしたが・・・

 ファストファッションの拡大によって翻弄されている成熟マーケットにおいても、消費者のライフスタイルの変化に対して、我々が進むべき方向を示唆してくれているように思います。

 【おススメ本】

 ファッション流通業界において、Lブランズのレスリー・ウェクスナー氏とともに尊敬する経営者のおひとりであるインディテックスグループのアマンシオ・オルテガ氏の信念とは? 
  
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January 11, 2017

ZARA(ザラ)のテクノロジー活用はあくまでも店舗への集客第一・店舗作業軽減が目的

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 1月8日のWWD JAPAN.COM に昨年11月23日に約半年ぶりに改装オープンしたZARA新宿東口店とZARAが世界的に導入を完了したテクノロジーに関する記事が掲載されていました。

  「ザラ」のココがすごい!新宿店に見る最新技術 × おもてなしのベストプラクティス

 この記事の内容はすでにWWD JAPAN12月5日号の紙面で読ませていただいたものでしたが・・・

 あらためてZARAの強みを噛みしめながら取り上げさせていただきます。

 詳細は上記リンク先の全文をお読みいただければわかりますが、

 記事で気になるところをピックアップすると

 RFID(商品へのICチップの取り付け)や関連ITの店舗導入によって

・全商品の位置の特定が容易になり、販売動向や在庫の把握が高速化され、従来の作業が軽減し・・・
 接客や店舗と本部のコミュニケーションに時間が費やせるようになったこと
 (同社のルーティンである店頭サイズ欠品対応作業や試着済み商品戻しはこれにより格段にスムーズになったことでしょう)

・顧客は試着室からサイズ変更依頼のタッチパネルでスタッフにサイズ違いを持って来てらうリクエストができるようになったこと 
 (RFIDによって、サイズを探すスタッフの効率も上がっていることでしょう)

・店舗間オンラインの在庫ステイタスが把握できるようになり、在庫効率が上がるとともに、顧客がいつでもどこでも(店舗でもECでも)購入でき、都合のよいところ(最寄店舗でも自宅でも)で商品を受け取れるようになったこと

 それにより、日本だけの数字ではないかも知れませんが、(宅配無料にも関わらず)EC注文商品の店舗受け取り比率が66%にまで高まって来たということです。
 
 また、

・スペインでは(レジ待ち時間削減のための)アプリによるモバイル決済サービス(登録クレジットカード決済)が始まっており、いずれは日本でも実現されるだろうこと

 あたりでしょうか。

 いずれにしても、店舗に来店する顧客が中心に置かれ、

 それを手助けするスタッフの作業が軽減されているところに従来からの信念が貫かれていて

 あらためて共感というか敬服します。

 ZARAのビジネスモデルと収益性のキモは 

・週二回新商品を必要な分だけ店頭に並べること

・その商品に対する顧客の反応をよりどころに本部は毎週店舗から情報を吸い上げ、追加生産や新商品の開発に活用していること

・商品開発のヒントを得た本部は商品を3-4週でつくり、世界の顧客(店頭)にフィードバックすること

・結果、シーズンが進むほど顧客が欲しがる商品で店頭は満たされ、値下げや売れ残りが極めて少なく抑えられること

 にあります。 (詳しくは拙著「ユニクロ対ZARA」でわかりやすく解説しています。店舗オペレーションは「人気店はバーゲンセールに頼らない」をあわせてお読みください。)

 今回の同社のテクノロジー改革も 

〇ECを展開しても・・・それはあくまでもブランディング(アクセスの良さ、利便性含む)と店舗へお客様を誘導・集客することが第一目的であること

〇それにより、より多くの来店されたお客様が新商品に対してたくさんの反応を残していってくれること

 そして、

〇RFIDによって店舗作業が軽減されることによって、

 店舗スタッフがスムーズそして頻繁に、量的にも質的にもより充実した情報(顧客の反応)をスペイン本部にフィードバックできるように行われており、

 上記の同社の強みに磨きをかける上で大いに貢献しているというわけです。


 私も12月のセールが始まる前に改装されたZARA新宿東口店を覗きに行って来ました。

 3層 2300坪 約700坪は改装前に比べて1.5倍と圧巻。

 売場面積・売上ともに日本一、そして、同店の売上高は世界でもTOP10の常連だとのことです。

 改装前よりも壁面フェイスアウト(服が正面を向いている)が多くなり、什器あたりの品番数が絞られ、

 一方でSKUあたりの店頭在庫数が増えていますので、

 以前のスリーブアウト(袖が外を向いている)陳列中心の打ち出しよりも

 スタイリングがわかりやすく、売り逃しが少ない店頭在庫展開になっていますので、売上好調も頷けます。

 現在はセール中の売場展開なので、全く違う商品陳列方法ですが、

 ご興味ある方は3週後くらいに新しくなった旗艦店を是非覗きに行ってみてください。いろいろな気づきがありますよ。

 WWDの記事の最後に、ZARA他3ブランドに続く今後のインディテックスグル―プの別ブランドの日本展開の可能性についての質問に対して、広報本部長のヘスス・エチェバリアさん(執筆の際はお世話になりました)は

 出店要請(空き物件)があるとかないとかではなく、ブランドとしてベストなタイミングで出たいというコメントで締めくくられていましたが、マッシモデュッティには是非、早く来て欲しいですね。

 Mossimo Dutti ウェブサイト

 関連エントリー-アダストリアのICタグの物流実証実験とRFID活用の課題

 【おススメ本】

 オムニチャネルリテイリングも一枚上手のZARA。そこに通ずるファッションビジネスの信念を書籍を通じて感じとっていただければと思います。 
  
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January 06, 2017

ユニクロのネット通販注文商品がセブンに続きファミマ・ローソンでも受け取り可能に~進むラストワンマイル対応

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 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

 1月6日の日経新聞によると、ユニクロの通販注文商品が今春からファミマ・ローソンでも受け取り可能になり、すでに受け取り可能にしているセブンイレブンに加え、コンビニ受け取り拠点は3社合計で全国4万3000店規模になるとのこと。

 同紙によれば、セブン・ファミマ・ローソンの3社で通販商品が受け取ることができる取り組みはユニクロが初めてとのことです。

 ユニクロがセブン&アイHDの鈴木前会長時代にセブン・イレブンと取り組んだニュースも話題になりましたが、今回はファストリの元社長、副社長を務めたOB(玉塚氏、澤田氏)がトップにいる2つのライバルコンビニとの同時提携とは・・・これまた話題性がありますね。

 この提携によって365日、24時間、顧客が都合のよい時間にいつでも受け取ることができるカバー率、利便性は日本一になることになるでしょう。

 同社のオムニチャネルリテイリングへの取り組みは着々と進んで来ますね。

 一方で、私が昨今のECのラストワンマイル戦略(EC注文顧客にどのようにして商品を届けるか)で関心を持っているのは、自社直営店での商品受け取りの拡大です。

 以前、海外のオムニチャネルリテイリングの成功事例としてイギリスのNEXTをご紹介しましたが、

 成熟市場イギリスで高収益を上げるNEXT(ネクスト)のオムニチャネルリテイリング戦略 
 
 NEXTのEC注文商品の直営店舗受け取り比率は55%
 また、ZARAの同数値も                66%

という報道があります。

 海外では日本ほどコンビニが発達していなかったり、ヤマト運輸のようなフットワークのよい宅配業者さんがいなかったりするからという理由もあるかも知れませんが・・・

 海外のチェーンは

 顧客が都合のよい時に受け取りに行ける
 店舗に来店いただければ、顧客・店舗双方にメリットがある

 ことから上記両社ではEC注文商品の直営店での受け取りに力を入れながら既存店の売上自体もキープしているのが実態です。

 ちなみに、ユニクロは各国の事情に合わせてイギリスや中国ではEC注文商品の直営店での店頭受け取りに取り組んでいるようですが、日本でも始めるのは時間の問題でしょう。

 なぜなら、ユニクロほど日本国内でアクセスのよい場所に店舗数を持っていて店頭での商品受け取りの顧客メリットが果たせるチェーン店はないと思うからです。 そして同社の最大の強みは正しく「店頭」にあるため、そこに経営資源を集中しない手はないでしょう。

 ECで注文した商品をコンビニで受け取る方が便利という人もいるでしょう。

 一方で、既存の物流に載せることによって、運賃無料のインセンティブや(確認のための)試着や買い足しなどのメリットがあるようであれば、直営店でのEC商品受け取りは実に理にかなっていると思います。

 これはコンビニvs直営店のどちらがよいかの図式ではなく、顧客の都合によって選択肢が増えることが大切なことだと思うのです。

 そして、直営店での受け取りの方が、無駄な宅配便のトラックを走らせずに済みますし、

 業務マニュアルをしっかり整備し、お客様へのお渡しにストレスがないようなルーティンを実現することによって、店舗へのEC購入顧客の来店は直営店にも大きなメリットになることでしょう。

 まだユニクロさんも物流サイドでは試行錯誤が続いているようですが・・・粗削りながら、オムニチャネルリテイリングの完成形に着実に近づいてゆくことを楽しみにしています。

 【おススメ本】

 オムニチャネルリテイリングも一枚上手のZARA。そこに通ずるファッションビジネスの信念を書籍を通じて感じとっていただければと思います。 
  
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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December 31, 2016

ファストファッションの次に来る流通革新

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 年末に発売されたファッション販売2月号の特集「ファッション業界2017年の焦点」の中で「ファストファッション」をテーマに寄稿させていただきました。

 月刊「ファッション販売」17年02月特大号 

 国内外の大手SPAやチェーンストアの価格動向と市場に対するインパクトについて述べた記事の本文とは別に「TOPIC」というコラムで「ファストファッションの次に来る流通革新」について触れさせていただきました。

 2008年にH&Mが日本に上陸した時から始まった日本のファストファッションブーム。

 その10年前の1998年にはユニクロのフリースブームから始まるSPA(アパレル製造小売業)による良質廉価の流通革新がありました。 

 このようにファッション流通市場では10年サイクルで新しい流通革新が起こり、生活者のファッション消費を変えて来たのです。

 そのファストファッションブームからまもなく10年が経ちます。

 日本より早くファストファッションの洗礼を受けた欧米で何が起こっているのか?

 日本のファッション流通市場の未来のインスピレーションを得るべく、私は毎年欧米のファッション都市をリサーチして日本のファストファッションブームの次に来る流通革新の芽を探して来ましたが・・・ここに来て確信を得ています。

 ひとつはイギリスでプライマークが、アメリカでTJMaxxのようなオフプライスストアが、そして、日本ではしまむらやGUが巻き起こしているディスカウンターによる都心部での「更なる低価格化」です。

 もうひとつは、すでにお馴染みのキーワードになった「オムニチャネルリテイリング」です。

 これまでの流通革新である

 「豊富な品揃え」⇒「低価格化」⇒「品質向上」⇒「トレンド(デザイン)の低価格化」

 と言った商品やマーチャンダイジングに関する革新よりも・・・

 むしろ顧客にどう商品を手渡すかという商品の提供方法に関する革新に他なりません。

 前者の更なる低価格化は、そもそもレッドオーシャンに飛び込むようなものなので、大資本には敵わないでしょう。

 それゆえに、ファッション流通業界各社は後者の「オムニチャネルリテイリング」にフォーカスすべきです。

 2011年にアメリカでオムニチャネルリテイリングというキーワードが話題になって、

 2013年の正月のこのブログでその年の流通業界のキーワードとして日本でもおこりつつあるこのムーブメントのご紹介をさせていただきました。

 「オムニチャネルリテイリング」は今年の流通業界注目の重要キーワード

 その後、スマホやアプリの進化とともに(WEAR、メルカリ含め)、消費者の購買行動の変化が起こり、

 直営既存店よりも、いかにEC売上を伸ばすかが業界関心事となり、多くの企業が主にZOZOやAMAZONを中心としたECモールの力を借りてEC売上の拡大に力を入れて来ました。

 以前のエントリー

 15年度のファッション商品のEC売上比率は7.8%に。10%目前に次なる課題は?

 でも触れましたが、

 昨今のECを取り巻く関心事の中心はEC売上拡大から「ラストワンマイル」、

 つまりお客様にECで買っていただいたら、宅配便で送りっぱなしで終わりではなく・・・

 お客様の手に確実にお届けするまでしっかり責任を持つこと、そして

 その手渡す接点をチャンスとしてしっかりと活かすための攻防に入りつつあります。

 これまでのように倉庫でダンボールをヤマト運輸や佐川急便に任せればそれでよいのでしょうか?

 コンビニで受け取ってもらえばそれでよいのでしょうか?

 ヤマト運輸が2020年までに宅配受け取り用のロッカーを全国に5000箇所作ると言っていますが、日本中にロッカーが完備すればそれでよいのでしょうか?・・・

 直営店を持つリテイラーそして商売人としては、何か他人任せのような気がしませんか?

 ファストファッションブームから10年が目前となった、これからの10年はオムニチャネルリテイリングの精度を高めることが流通革新のテーマになることは間違いないでしょう。

 直営店からECサイトへの送客がテーマだった過去から現在、

 これからの未来はECで購入したお客様をできるだけ直営店に立ち寄ってもらえるよう努めて行きたいです。

 これって、目に見えないところで起こっている競争なので、うかうかしていると気が付いたら乗り遅れていたということになりかねません。

 この取り組みに乗り遅れると・・・ファストファッションブームの時よりも痛手になることは間違いなさそうです。

 今年もブログをお読みいただきありがとうございました。

 業務多忙につきブログの更新の頻度が落ちた一年でしたが、

 来年も生活者を取り巻くファッション消費の変化とそれに応えるファッション流通企業の愚直な改善努力の好事例をできる限り読者のみなさんと共有して行きたいと思います。

 それでは皆さんよいお年を!

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 出版から2年経った今でも、おかげさまでアマゾン小売ジャンルランキング1位になることもしばしばあり、感謝しております。
 
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November 01, 2016

絶好調TOKYO BASEの決算発表資料を読んで

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 10月24日の繊研新聞にステュディオスやユナイテッドトウキョウを展開する東証マザーズ上場TOKYO BASEの2017年2月期 第2四半期決算関連および谷社長のインタビュー記事が掲載されていました。

同社については2年前にもこのブログでエントリーしましたが、

次世代セレクトショップ、STUDIOUS(ステュディオス)の勢いが止まらない

 毎年30%以上の成長を続け、昨年には東証マザーズに上場、

 ファッション消費が冷え込んでいると言われている中で、毎月繊研新聞に掲載されている月次の主要ファッションビルの好調テナント情報にも「ステュディオス」と「ユナイテッドトウキョウ」は常に名を連ねていましたから・・・目が離せない企業としてメディアの報道にはいつも目を止めておりました。

 特に、ここ数年、上場した後に業績が悪化するファッション流通企業が続出という印象がぬぐい切れない株式市場の中で、

 売上規模はまだ年商100億円に満たないものの、上場後も30%の高成長と10%の高営業利益をしっかり確保しているところには感心します。

 今回あらためて決算資料などを読んでみたところ、いろいろな気づきがありましたのでご紹介したいと思います。

 同社の強みはいくつかありますが、ひとつは品揃えの差別化でしょう。

 セレクトショップと言っても旧世代とは違って欧米インポートブランドへの憧れから始まったものではなく、新世代らしくドメスティックブランドに特化して販売しているところ(ステュディオス)、また、もうひとつのユナイテッドトウキョウはいわゆるSPA型ですが、MADE IN JAPANにこだわっています。

 なかなか一般の消費者からは身近ではない東京コレクションのデザイナーブランドのこだわりや国内の産地が得意とする単品(アウターなら岐阜、ニットなら新潟、山形など)の魅力を

 ルミネやZOZOTOWNと言ったメジャーな販路に乗せて、同社の店舗スタッフが情熱をもって紹介、接客販売しています。

 そして原価率が限りなく50%に近い40%台ということなので若い世代が手を出しやすく、またバリューを感じられる価格設定になります。

 次に少数精鋭による販売効率や生産性の高さです。

 販売効率は店舗数やおおよその売場面積からざっと計算してみましたが直営店の月坪売上が60万円くらいでしょうか?

 また、163人(正社員99人+PAさん64人の従業員換算)で年商60億円を売り上げるのでひとりあたり売上高は単純計算37百万円超となりますのでファッション小売業の中ではトップクラスの生産性です(UAやユニクロあたりと比べても2割高い)。

 また、店舗では売上や人件費だけでなく、店長が店舗の営業利益まで管理し、同時に在庫消化を意識するために在庫回転率をKPIにしているので、

 若くして(平均年齢約28歳)、経営感覚を身につける環境におかれています。 

 その結果がプロパー消化85%!在庫回転率11回転(前期)!!だとか・・・。

 ファッションが好きなだけでなく、同時に数値管理ができる社員を雇い、育成する、それに対して報いる(平均年齢28.9歳で平均年収459万円)という経営スタイルもいままで業界の中には少なかった発想です。

 ちょっと話はそれますが、今回決算書、特にPL(損益決算書)を見ていて思ったのは、同社のようにEC売上比率が高い企業が増えてくると、同じ小売業でも、従来とは違ったPLの見かたをしなければいけなくなるなと思ったことです。

 つまり、直営店とECではPL構造、特に販売管理費構造が違います。

 直営店は人件費、家賃、減価償却などを意識し、ECの場合は、特にECモールでの売上が主力となると、販売手数料という項目のインパクトが大きくなります。

 したがってEC売上比率に基づいて、PLを直営店とEC2つに分解して、販売管理費を配分して考え、それぞれの成長性と収益構造を見て行かなければいけないな、と。

 日本ではまだそんな決算発表資料を見たことありませんが、

 欧米のSPA(GAP、L BRANDS、NEXTなど)には直営店とオンラインの損益をわけて説明しているところが多いように思います。

 今後日本でもそんな決算発表が主流になるかも知れませんね。

 さて、順風満帆の同社ですが、今後の課題と感じたことを乗り越えて行く期待を込めていくつか・・・

 ひとつはルミネ、ZOZOを主力にしている現在の販売効率をベースにしてしまうと、今後、それらほど高い販売効率の出店余地は極めて限られているので、今後の成長にあたってのビジネスモデルというかKPIの標準値をどう設定して行くかというところでしょう。

 前期でメンズの売上構成比65%、ウィメンズが35%。

 多くのセレクトショップがメンズ出身でその後、ウィメンズを伸ばして成長していったように、ウィメンズの強化は高効率を維持するカギのひとつだと思いますが・・・

 将来的には坪効率主義より大型化を図って一店舗あたりの売上高を高める(ネガティブではない意味で坪効率を薄める)などの転換を視野に入れておく必要もあるのではないかと思われます。

 そういった意味も含めて、ECもひとつのカギでしょう。

 現在のEC売上比率31%に対して将来的には50%に引き上げたいという目標を掲げているようですが、やはりそこでも引き続きZOZO依存なのでしょうかね(現在90%がZOZO経由)? 

 計算上、販売手数料は比較的優遇されているようですが・・・ZOZOも自社ブランド(PB)を始めると言ってますし、将来競合しないとも限りませんし・・・、資本関係があるわけではないので重要セグメントは自らコントロールできる管理化においておきたいところです。

 また、私は、MADE IN JAPANのSPAである「ユナイテッドトウキョウ」のグローバルな可能性に期待をしていますが、

 今後は、それぞれの国内工場との単品の取り組みではなく、むしろ素材からサプライチェーンマネジメントに踏み込んで、日本の製品をコレクションとして世界に売り込むべく、

 日本を起点にして世界に送り込む、アトリエや品質管理やSCM&ロジスティックスの体制作りを整えていただきたいですね。

 価格帯は違いますが、ZARAがスペインでやっているオペレーションの日本産地ならではオペレーションが日本発信でできないだろうか?と密かに期待しております。

 以上、好き勝手なこと申し上げましたが・・・同社のような全く違う発想をもった新世代の企業ががんばって、ファッション消費の未来を切り開いていってもらいたいな、と期待の星である同社の成長をこれからも楽しみに見守って行きたいと思っています。

 【おススメ本】

 ファッション商品を目の行き届くところでつくり、世界中の女性をおしゃれにするためにいち早く届けることに情熱を燃やしたZARAの創業者、アマンシオ・オルテガさんの起業家精神に触れていただければ幸いです。
 
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October 30, 2016

アダストリアのICタグの物流実証実験とRFID活用の課題

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 10月27日の繊研新聞にローリーズファーム、グローバルワーク、ニコアンドなどを展開するアダストリア(旧ポイント社)のICタグを活用した物流の実証実験に関する記事が掲載されていました。

 今回、同社のブリスポイント事業で行われる実験は中国の縫製工場から出荷される商品にICタグを付け、検品場を通過したところから運送、船積み、通関、国内物流倉庫を経て店頭に到着するまでのステイタスを可視化することが目的のようで、

 いずれは関連して、工場の納品伝票作成や通関手続きの簡素化などにもつなげる考えがあるようです。

 業界では、セレクトショップなどを中心にICタグの実験・導入が進んでいますが、今でもタグのコストと読み取りの精度の課題があり、本格的な導入を検討する企業は限られている模様です。

 コストに関しては、値札にICチップを埋め込むことを想定しているために、使い切りの値札に現在10~20円すると言われているICチップのコストがかけられるかという問題があります。

 国内で流通するアパレル商品の平均売価は2000円台前半と言われていますから、販売価格からすると1%程度、仕入コストからすると2.5%のコストを負担できるかという課題です。

 比較的高額(平均の3~4倍の単価)な商品を扱うセレクトショップであればその比率は下がりますので、導入のハードルは低いと言えましょう。

 また、読み取り精度については、近くに読み取りを妨げる金属があったりする場合やICタグが物理的な刺激を受けると破損する可能性があることから・・・

 現在は多少改善されているかも知れませんが、1.7%くらいの確率で読み取り漏れの可能性があると聴きます。

 今回のアダストリアの実験のように物流関連であれば、箱詰めされた(保護された)状態ですから問題は少ないかも知れませんが・・・

 店頭に出て商品どうしや什器などにぶつかったり、バックヤードの管理状況が悪かったり、お客様が試着をする際に物理的な刺激を受ける頻度が高くなると・・・

 ICチップが破損する可能性があるというものです。

 また、通常のバーコードの値札だって、量を扱うセルフ販売店での店頭では頻繁にタグ落ち問題がありますので、そもそもタグが落ちてしまったら読み取れません。

 従って、店頭での入出荷や棚卸業務への活用に関しても、スキャナーを持って魔法をかけるようなポーズで済む話ではなく、

 箱の中に何点入っているか、什器の中に何点陳列されているかを数えた上で読み漏れがないかどうかを確認する、点数棚卸を併用する必要は出て来ます。

 これらの日本の事例に対して、外資の導入事例をご紹介しましょう。

 拙著「ユニクロ対ZARA」を執筆する際にスペインの本社で話を伺いましたが、インディテックスグループでもICタグ(RFID)を活用した物流、商品管理、店舗作業軽減の取り組みが進んでいます。

 同社では、値札ではなく、もともとスペインの物流倉庫出荷時に全商品につけて全世界に送り出していたセキュリティタグ(防犯タグ)の中にRFIDチップを埋め込むことでまずはチップのもろさを解消しています。

 また、コスト面でも、そもそもICチップのよいところは書き換え可能なところですから、値札に埋め込むような一回使い切りの活用ではなく、セキュリティタグを回収することで再利用が可能になります。

 つまり、もとのコストがどうであれ、何回も使うことができれば、1回あたりのコストは再利用すればするほど安くできますよね。

 同社の物流のコンセプトの中に「ラウンドトリップ」や「リサイクル」という考え方があります。

 つまり、「往路」のみで行ったっきり、使い切りにするのではなく、本来空気を運んでいるかもしれない「復路」を使って回収することで物流スペースをフル活用したり、廃棄されることを前提にしないで再利用したりすることで

 トータルコストを削減しようという努力をしている話です。

 この考え方に基づけば、ICチップのコストをいかに安くするか?ではなく、多少コストは高くても、何度も再利用できるものにするという発想に変わって来ますよね。
 
 明らかに一枚上手です。

 店舗作業についても、

 レジではお会計時にセキュリティタグを外すと同時にお買い上げ商品の情報がPOSレジに読み込まれますのでバーコードスキャンの必要はありません。

 また、同社では顧客が試着商品のうち買わなかった商品を店舗スタッフがチェックする作業がありますが、こちらもRFIDの読み取りを行えばすぐに終わるでしょう。

 そして、店頭のサイズ欠品や商品の店内ロケーション管理にもRFIDは活用されていることでしょう。

 一方、ZARAのオンラインショップを利用するとわかりますが、
 
 注文商品が出荷された時や店舗受け取り指定にした際に商品が店舗に到着した時、いずれもメールが来ますが、こちらもこのRFIDと連動して自動化されていると思われます。 

 というように当然のことながら、物流にも活用されていますね。

 ひとつの技術を取り入れる時も目先のコストではなく、店頭を起点にあらゆる業務の効率化を考えるインディテックスグループの発想からは多くのことを学ぶことができます。

 【おススメ本】

 すべてはお客様の期待を店頭で叶えるためにある。それが本書を書き終えた時に感じた、ユニクロとZARAからの最大の学びでした。
 
 出版から2年経った今でも、おかげさまでアマゾン小売ジャンルランキング1位になることもしばしばあり、感謝しております。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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