September 21, 2020

ZOZOの決算書から学ぶECビジネスの損益

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WWDジャパンさん向けの連載記事のためにZOZOTOWNを運営するZOZO社の決算書20年3月期および21年第1四半期に目を通しました。

Paypayモール出店によって40代、50代の新しい客層が順調に獲得され、
ZOZOTOWNもコロナ禍で商品取扱高が増え、同社のECの売上は好調、社としては増収増益のまずまずの決算だったようです。

気になったことを3つほど挙げると

ひとつは単価の下落です。
 
20年3月期通期の
平均単価は 3,946円 (前年度は4,201円)
出荷単価は 8,292円 セット率 2.10 (前年度は8,774円;同 2.09)
と下落しています。

コロナ禍の出店ブランドの在庫処分もあり、21年3月期第1四半期に至っては
3,443円まで下落(前年同期は3,903円)しています。

ファッション性が売りのZOZOTOWNですら、
平均単価がファッション市場マスマーケットの価格帯である3900円にまで低下していることに驚きました。

次に、出荷1件あたりの収益性です。

ZOZOの損益計算書や開示データを時系列で見ていると、
ECビジネスの販売管理費の構造やマクロトレンドがよくわかります。

ECビジネスの販売管理費の上位を占める荷造運賃、物流関連費、広告宣伝費について、

グロス金額(費用総額)ではなく、出荷1件あたりで割り出してみると

・荷造運賃は高止まり、
・物流関連費は人件費の見直しで増加傾向
・以前より広告宣伝費やポイントの出費を抑えて・・・

「利益率」こそ底を打って、回復中ではありますが、

そもそも、出荷単価が下落しているため、
出荷1件あたりの利益額(単価)は下落傾向というのが実態です。

要は、単価は下がるので、1件あたりの粗利額(同社にとっては販売受託手数料)は下がる、

一方、1件あたりにかかる荷造運賃やその他物流関連費(人件費がメイン)は高止まり、

歩留まり利益は店舗運営型小売業よりも多額にかかる広告宣伝費を調整弁として、どれだけ使うか次第という構造に見えます。

「ECは家賃がかからないので、店舗販売の小売業より儲かる」と豪語される方は少なくありませんが
ECは店舗販売と根本的に経費構造が違う、と言うのが正しい言い方ですよね。

むしろ、販売単価、粗利率によって、物流経費や広告宣伝費の使い方では薄利になってしまう可能性もはらんでいると見るべきでしょう。

みっつめは、今後の収益バランスのとり方です。

通販受託事業のこの傾向に対して、
ZOZO社はトップラインである売上高に関しては全体の商品取扱高を増やしながら、受託手数料収入額を増やす。
その一方で、通販事業の利益率の低下傾向を、モノを動かさない広告事業や新しいサービス事業を増やして利益貢献するように、目下、強化中というわけです。

アマゾンの通販事業は薄利で、AWSで利益を稼ぐという構造に近づいていきますね。
これはプラットフォーマーの必然なのかも知れません。

ZOZO社自体はそれでいいかも知れませんが・・・出店ブランド(事業者)はその傾向を理解してECビジネスに取り組まなければなりません。

ファッションECマーケットは、
単価は下落傾向、競争が激しくなると、以前よりも広告宣伝費が余計にかかる、
販売管理費の主要費目である送料や物流関連費用は下がらない。

この構造やビジネストレンドを理解した上で、
販売単価、粗利の確保、送料無料のハードルをどこに設けるか、値下げやクーポンやポイント付与などの販促施策の加減も考えるべきでしょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 31, 2020

「アフターデジタル2 UXと自由」を読んで

藤井保文さんが書かれた「アフターデジタル2 UXと自由」を読みました。20200831_145410

昨年出版され、大ベストセラーとなった前著の「アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る」に刺激を受け・・・

当時、頻繁に企業研修講師の仕事で訪れていた中国の杭州、広州では、同著に登場するアリババのスーパーマーケットHema FreshやLuckin Coffeeを中国人パートナーの手を借りて実体験して・・・

その背景にあることも含めて理解し、目から鱗が落ち、これから世界で進んで行くであろう小売業のDX(デジタルトランスフォーメーション)による明るい未来に思いをはせたものでした。

今回の続編は、前著に感銘を受けて、著者が相談を受けたり、ツアーをお手伝いされた多くの日本企業とのやり取りも踏まえて、日本企業の組織や仕事の進め方の実情にも触れながら、アフターデジタル時代の企業戦略としてのOMO(Online merges with Offline)の考え方について、誤解を解くように、新たな事例紹介とともに、再定義しているところに意味があります。

一番のポイントは、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉だけが独り歩きしている昨今ですが、顧客目線で顧客行動にポジティブな影響を与えるものでなければ、
たとえ、オンラインやAIを使ったところで、それは、企業都合の(あるいは、システムベンダー都合の)単なる業務効率のためのシステム化であって、同著が主張するところのOMOの本質でもなければ、アフターデジタル時代に勝ち残れる顧客体験価値(UX)創造型の取り組みでもない、という点でしょう。

最新のデジタル投資ばかりに目を向けている方々は、是非お読み頂きたいと思います。

スタートラインに立つためには、

まずは顧客行動(カスタマージャーニー)が理解、言語化出来て、

顧客にとっての「成功」は何か?

その実現のために、その過程に立ちはだかる顧客の「お困りごと(ペインポイント)」が特定できること。

そして、それに対して、情熱と執念をもって、オンライン技術を駆使しながら、とことん解決のお手伝いをし、その結果、ご利益として、顧客との長いお付き合いができる、という発想が大事なわけです。

実は、同著の主張と同じことを、拙著「アパレル・サバイバル」執筆の際の取材時の2018年に、アメリカ西海岸で体験したamazon go(コンビニ)、amazon books(本屋)、Nike(シューズショップ)、日本で体験したZARA六本木ポップアップストア(アパレル専門店)でも感じたものでした。

彼らがそれぞれの店舗において、DXで解決したのは、まさしくそれぞれの専門店ならではの購買行動(UX)の中のお困りごとに他ならなかったからです。

それらの体験をした時、顧客としては、何か呪縛から解き放たれて、スッとしたような感じ、そして、そのDXを実現した経営者、技術者に対するリスペクトを覚えたものでした。

また、DX担当者にとっては単にUXを研究するだけでなく、実際に体験してみて、その感覚(原体験)を体に覚えさせることも、執念を持って取り組む上では大事なことだと思います。

話を戻しますが・・・

今回の続編の中で、最も参考になったのは、P61から始まる「売らないメーカーの脅威」のところで、メーカー、サプライヤーではなく、「サービサー」として紹介されていた、中国企業群の事例です。

電気自動車メーカーのNIOは、車を売ることが目的ではなく、車を売ったところからが、顧客との付き合いの始まり。

年間23万円もするクルマのオーナーに対する、「会員サービス」がキモです。

維持費やメンテナンスサービスどころか、顧客のカスタマージャーニー上にある、クルマにまつわる痒い所に手が届くサービスの数々が憎いです。そのため、NIOのオーナーではない、別のメーカーのクルマのユーザーもそのサービスを受けるために会員になるとか。

それに続く、不動産仲介業のズールーの事例も、住まいの賃貸仲介したら終わりのスポットビジネスではなく、家探しを手伝いにとどまらず、そのコミュニティに住む、生活する、時には、旅先のシーンにまで関与し、顧客と一生つきあう覚悟すら感じます。

ファッション業界の方々は、是非、そんな事例を知って、日本のファッション販売に置き換えたら、顧客の成功のために何ができるか?を考えてみて頂きたいものです。

つくって、売ることに徹していたファッション業界も、顧客がコーディネートして着回す、メンテナンスする、保管する、手放す・・・・

などなど、幅広くカスタマージャーニー中の「お困りごと」に着目すれば、まだまだ顧客とつながってゆけるチャンスはあるし、広がると思っています。

このあたりは、ちょうど「アパレル・サバイバル」の中でも P205 CHAPTER5「テクノロジーの進化を享受するのは誰か?」という章以降で詳しく述べていますので、参考までに併せてお読みいただければと思います。

コロナショックを受けて、一気に「アフターデジタル」の時代に放り込まれた私たち。
この著書の顧客目線のDXの心構えを理解せずに生き残ることはできないでしょう。

 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 24, 2020

オンライン接客の可能性

コロナショックの外出自粛、休業の間にMinistry-of-supply 多くのストアやブランドがEC売上を伸ばし、
いわゆる「オンライン接客」が話題となり、
力を入れるところが増えました。

筆者の解釈では、「オンライン接客」の定義は広く、

ライブ動画で商品紹介を配信してチャット質問に答えたり、
ZOOMなどで1対1(複数もあり)のビデオ接客をしたりする
双方向性のある接客だけでなく、

そもそも、ブランドや商品に興味を持った顧客が
ネット検索してホームページやオンラインショップを閲覧するところからオンライン接客というものは始まっていますし、

ブログ更新やSNS発信
メルマガやプッシュ通知
メール、チャットでの問い合わせ

などの従来のマーケティングツールはもちろん、

店舗に来店した後、サイトで購入した後のフォローアップまで

スマホを駆使して情報を取得する「顧客の新しい購買行動」に、オンラインを活用して対応することはすべて「オンライン接客」の一部である
と捉えています。

この数か月の間で、オンライン接客について非常に可能性を感じたことが2つありました。

ひとつは、ZOOMなどのツールを使ったビデオ接客時、
顧客は自宅、ショップ側は店舗またはショールームにいるわけですが、

接客スタッフが顧客との対話の中で要望を引き出しながら、商品紹介をするだけでなく、
顧客側は自分の手持ち服を見せながら、これに合う服はありますか?というような聞き方ができる環境にいるという利点です。

つまり、顧客はわざわざ店舗にも行かなくてもよい、
ショップ側は店舗に来店できない顧客をお相手にできるという
時空的というか、物理的なメリットだけでなく、

どこまで開示するかは顧客次第ですが、顧客側も自宅にいるメリットとして、
クローゼットの中の服との相性について相談ができるわけです。

これは明らかに、店舗における接客にはない、
特に、顧客側のアドバンテージでしょう。

拙著「アパレルサバイバル」でも力説しましたが、

店舗やオンラインで品定めをする顧客の最大関心事は、
今、手に取っている、見ている服が、自分の手持ち服とコーディネートできるか?その上で着回しがどれだけ利くか?
ということでしょう。

店舗では、今シーズンのブランド側の重点販売商品や今シーズンの売れ筋商品を力説してショップ側が売りたい単品を提案して来ますが、
そんな接客の中で、顧客の本当の不安は、手持ち服と合わず、コーディネートがしづらい、着る機会が少ないなどで、結局は着なくなって、無駄になることによる「失敗」です。

顧客は手持ち服を具体的に見せることができれば、伝えられない歯がゆさや、「失敗」の不安から解放されますし、

店舗スタッフも決して、押し売りしているわけではないと思うのですが、
顧客のクローゼットの中身が具体的にわからないが故にできなかった、顧客のワードローブを思いやる接客が実現するわけです。

そんなビデオ接客での気づきが、今後、顧客との信頼関係を深め、顧客の手持ち服と相性のよい服を提案することが当たりまえの世界が実現
することを期待しています。

ふたつめは、リモート接客への人財活用の利点です。

つまり、ショップ側の接客スタッフは、ツールによっては、
どこにいても、都合にあわせて、短時間でも接客対応可能になる、という可能性です。

例えば、顧客からの問い合わせやちょっとした接客に対し、
これまでは、本社や店舗にいるスタッフが対応するのが常識でしたが、
事情によって、家庭に入られた、あるいは引っ越しにより遠方にいる経験者の方が、可能な曜日、時間帯だけ、在宅のまま対応することも可能になるということです。

メール対応やチャット対応、はそうでしょう。

この業務は、誰でも出来る業務ではなく、そのショップ、ブランドを熟知した接客対応のプロだった方だからこそ、の話です。

そんな人財=宝のような方々が、いろいろな制約で働けなくなってしまうのを
長年、いろいろ目にして来て、本当に残念だと思っていました。

しかし、オンライン接客アリ、リモート接客アリの時代に、これまで活用しきれなかった人財を、あらためて活かせる環境が整って来た予感がします。

もちろん、コールセンターのように、どこかに集めなければ、というセキュリティの問題が課題になるようですが、
これからはそういった問題を技術的に解決し、新しい働き方、新しい顧客対応の未来が広がることを期待しています。

当然のことながら、これから、すべてがオンラインになるとは思っていません。

しかし、多くの選択肢が生まれ、明るい可能性が広がっているのは事実ではないでしょうか?

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 17, 2020

トレンドファッションに合わせるベーシック、ベーシックに取り入れるトレンドファッション

コロナウィルスによる外出自粛で顧客の購買行動が変わることに対応しなければならないと思っています。20817-helsinki-closet

近隣以外への外出を控え、在宅時間が増え、自分のクローゼットのワードローブの見直しや、断捨離も行われたことでしょう。

業界は一旦、そこを起点に考える必要があると思っています。

オンラインセミナーへの登壇の準備をしていて、
ユニクロとZARAの強みをあらためて整理する機会がありました。

一般に、ユニクロはベーシック、ZARAはトレンドファッションに強みがある、と語られますが、

両者を長年ウォッチしてきた筆者なりの解釈で書き換えると

ユニクロはトレンドファッションに合わやすいベーシックを、

ZARAは多くの顧客が持っていそうなベーシック服に今シーズン取り入れるべきトレンドファッションを、

それぞれわかりやすく提案している。その取り入れやすさ提案が多くの顧客に支持をされる理由なんじゃないかな、と思います。

つまり、両者とも切り口は真逆ですが、自分の持ちものに取り入れやすい、ということが共通点です。

書いていて、気がついたのですが、と同時に、ユニクロとZARAの両者の服も相性がいい、ということになりますね(笑)

これまで、業界企業の多くは

・業界のシーズントレンドと言われるものを自社なりに解釈して売り込む
・前年売れた実績のあるものを焼き直してつくる

を繰り返して来ました。

しかし、しばらくは、「業界トレンド押し」よりも、顧客の「新しい生活様式」のシーンを想定して、

・リモートワーク対応
・マスク着用を想定したファッション
・カジュアル、リラックス

などが売れ筋のキーワードになるかも知れません。

業界では、正直、これまで、「顧客のクローゼットの中にあるワードローブ」という視点は不在の商品企画が圧倒的に多かったのではなかったかと。

今後も、もちろん、持っていないものを買う、新しいものを買う、という需要はなくなりませんが、

これを機会に顧客が今、持っていそうなものとの相性のよい(=着回しが利く)(=長く付き合える)
取り入れたら今シーズンらしく着こなせる服の提案をしたいところです。

「タンス在庫に無いもの」が売れる、とは、長年の業界の経験則

そう言うのであれば・・・まずは顧客のタンス在庫に何があるかをラックにかけて可視化して、
そこから新しい提案を考えるという発想が、今、大切なのではないかと思えてなりません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 10, 2020

過剰在庫を持ち越さないために

昨年の暖冬で秋冬在庫を残し、コロナウィルスによる外出自粛と数か月の休業によって春夏の過剰在庫を抱え、Dsc_6637 マスコミや投資家にも煽られ、業界ではようやく、本格的に在庫を減らそうというムードになって来たようです。

この在庫問題も、そもそも、もっと早く手をつけなければならなかったことに対して、
コロナショックによるキャッシュフローの悪化が企業改革のスピードアップを迫っているに過ぎないと思っています。

会社方針として、仕入を3割減らす、2割減らす、という話が聞こえてきますが、
アプロ―チや、オペレーションを根本的に見直さずに、
ただ、仕入担当者に金額ベースでの仕入や在庫を減らすことを命じるだけでは、

単に売上が下げるだけで 
最終消化率はあまり変わらない、また、一定量の在庫が残るという結果となりそうです。

そして、過去に、何度も号令をかけては、結局は売上を回復するために在庫を積み増すという、撚り戻しになる話が、また繰り返されるのではないか?と懸念しています。

筆者は、これまで、
シーズン在庫をどう利益を生むようにコントロールし、
シーズン末に向けては、組織全体でどう売り切るかをテーマにし、

商売を顧客目線に再定義して、しくみ化のお手伝いをし、
業務に定着するように、社内人財の育成も見守りながら、
多くのファッション専門店さんの在庫最適化に取り組んで来ました。

そんな在庫最適化の現場で常々感じている、
過剰な在庫を抱えない、そして、余計な在庫を翌年に持ち越さないためのカギがいくつかありますが、
今回はその中から3つほど在庫問題の視点転換につながるであろうアプローチをご紹介させていただきたいと思います。

1)売場スペースに合わせて、品番数を絞る

2)商品計画をわかりやすく売場に共有する

3)販売期限を明確にして全社で売り切る

1)ひとつめは、売場に目を向け、店頭に並ぶ、物理的に展開可能な品番数を知った上で、品番数設計をしましょう、という話です。

金額ベースで仕入を減らせと言うと、品番数を減らさずに、一律に発注量を減らしてしまったり、
また、正しかったかどうかわからない前年実績をもとにして品番数や発注量を何割か減らす、
というアプローチが採られることがあります。

そうすると、売れる商品はすぐに売り切れ、
売れ筋商品がなくなった途端、売場は魅力がなくなり次第、売りづらくなるという現象に陥るものです。

あるべき品番数の答えは、お客様が訪れる店頭の物理的陳列スペースにあるものです。

売場スペースを大幅に上回る品番数を投入しても、店頭に出し切れない商品はバックヤードに眠るだけ、
すべての商品に十分な販売機会が得られないと、その分、売れ残り在庫となるものです。

仕入担当者が、与えられた予算金額だけで仕事をし、
自分の担当売場スペースにどれだけの商品が並ぶのかを知らない、という恐るべき話は業界の中でも意外と少なくありません。

まずは、自分の担当売場に何品番並べるのか?
そして、それを何回転させることが自分たちのブランドらしさなのか?

という、問い、設計から始め、過剰品番数を削る、そして、その分、売れると見込む商品の仕入れ数を増やす(奥行をつける)というのが、あるべき仕入削減・在庫削減の第一歩でしょう。

これは無限大に商品が並べられると思われているECサイトについても同様と考えます。

お客様は、目的の最初のページからせいぜい2ページ、多くて3ページ目くらいまでしか見てくれませんので。

2)ふたつめは、仕入担当者は立てたシーズン商品計画を販促担当、店舗、EC担当が具体的な行動に移せるくらい、わかりやすく伝えましょうという話です。

仕入担当者がせっかく立てたシーズン商品・仕入計画の意図が、
実際に販売にあたる店舗スタッフやEC担当者に明確に伝わっていないため、
各店、各サイトでは、それぞれの思いで商品を並べて販売せざるを得ないと実態は少なくないようです。

そのため、商品計画者の思い通りに商品が売れず、結果として、想定以上の値下げや売れ残り在庫が発生するという話です。

仕入担当者が新商品の紹介や入荷情報の社内連絡を行うのは、当然のルーティン業務ですが、
商談など、仕入業務が忙しいあまり、社内に対しては、事務連絡に終始してしまうことが多いようです。

それぞれの商品を何点販売して、会社全体の売上・粗利の目標達成を目指しているのか?

という仕入担当者としての「意思」を、売場が行動に移せる、販売目標にできるくらいの具体的な数字や売場のイメージで伝えることができているケースは少ないようです。

実は、この仕入担当と販売担当のコミュニケーション(情報共有)ギャップこそが
商品計画の失敗、つまり、多くの売り逃しの一方で、過剰仕入、売れ残り在庫を生んでいる最大要因のひとつであると思っています。

シーズン単位でざっくり立てた商品計画は、例えば、月単位に細分化して、
毎月、見直して、微修正をかけた上で売場と事前情報共有しながら議論を繰り返したいものです。

さもなければ、店舗もEC担当も、販売行動の指針となる、「販売計画」を立てることができない、場当たり的な対応になってしまうことは言うまでもありません。

3)みっつめは、シーズン商品には、必ず、いつまでに売り切るという明確な目標(着地)設定をして販売にあたりましょうという話です。

シーズンで言えば、夏物と冬物の販売終了時期は、それぞれ8月末と2月末と比較的明確ですが・・・
それ以外のシーズンについては、いつまでに売り切るべきかが、具体的に定義されていないケースが少なくありません。

販売期限が決まっていない、あるいは、あいまいだと、必然的に消化管理は甘くなり、結果、在庫はたくさん残ります。

春物や秋物の消化率が夏物や冬物に比べて良くない要因のひとつは販売期間の短さだけではなく、販売期限定義のあいまいさ、とそれゆえの行動の希薄さゆえだと思っています。

〇 全ての商品の販売期限が決まっていること、その情報が販売現場まで伝わっていること、そして、

〇 販売期限までに最終消化率何%を目標に着地させるつもりなのかも伝わっていること、

それが、会社全体で売り切り体制がとれる最低条件です。

これは、いわゆる仕事の「目標管理」の話です。

つまり、いつまでに、どんな結果(数字)にするか、
期限とその時の状態を表す数字がなければ、仕事の目標管理とは言えません。

以上に加えて

・気温と需要にあわせて販売期間を再定義すること 
・セールを前提としない、価格設定(プライスポイント)の見直し

も必要なことは言うまでもありません。

このあたりは、2013年に上梓した
「人気店はバーゲンセールに頼らない」でも解説していますので、ご関心があればご一読頂ければと思います。

ファッション小売業に大きな転換期を迫るコロナショックの今回こそは、
より多くの企業さんが利益とキャッシュフローを重視する
在庫コントロール業務の再構築に取り組むことを切望しています。

関連エントリー一律値下げでは過剰在庫問題は解決しない
関連エントリー気温に合わせて品ぞろえ計画、在庫運用を考え直す

【お知らせ】
アフターコロナ時代を見据えて、粗利高最大化と在庫消化のために
ディストリビューションから販売計画実行を見直す
「ファッション専門店の在庫最適化の実践セミナー2020」
を11月中にオンライン開催する予定です。

これから事業部で本格的に在庫コントロールに取り組みたい、
再構築したい、組織と役割を見直したいという企業さん向けの内容です。

9月中旬に募集を始めますが、こちらに登録をしておいていただければ、
詳細が決まり次第、メールにてご案内申し上げます。
セミナー案内ご希望の方は こちら>>>

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

次のステージに向けての在庫最適化と人財育成を切り口にした業務再構築支援~ZOOMを使ったオンラインアドバイザーサービスも実施中。詳しくはこちら

【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫最適化を考えるビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

電子書籍 Kindle版 紙の本の在庫が少なくなりました。ご希望の方は弊社までメールでお問合せください。

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July 27, 2020

セシルマクビー全店閉鎖で考える、ブランドのライフサイクルの見極めと対応

先週、1330257_m 1990年台から2000年台前半に業界のトップランナーのひとつだった
と言っても過言ではない、マルキューブランドの代表格である「セシルマクビー」が

1987年の創業から33年目となる今年(2020年)、
全店を閉鎖してストアブランドとしての歴史の幕を閉じることになった

というニュースが報道され、

SNS拡散、TVのバラエティ番組でも取り上げられるなど、大きな話題になりました。

同ブランドを展開するジャパンイマジネーション社は
今後、これから市場性が見込める4つのブランドに絞って、それらを運営する子会社を存続し、

自らは「セシルマクビー」ブランドのライセンス管理を行う形で事業を継続されるとのことです。

このニュースを聴いて、
業界の一時代を盛り上げた同ブランドと同社の功績に敬服すると共に
客層を絞った、個性のあるブランドには、
やはりライフサイクルというものがあるのだということを
あらためて感じさせられたものでした。

WWDジャパンさんの2つの関連記事

「セシルマクビーの時代の終わりはずっと前から感じていた」 社長が語る全店閉鎖の背景

ジャパンイマジネーションが「セシルマクビー」全店閉店

を読むとわかるのですが、

筆者がこれまでいろいろなストアブランドの分析をお手伝いして感じた
「ブランドや事業のライフサイクルの仮説」が
セシルマクビーにも当てはまることを感じたので、ここでご紹介したいと思います。

まず、
上記WWDジャパンの2つの記事の同社の社長さんのコメントと記者の方の解説をまとめて

セシルマクビーのライフサイクルの仮説を整理すると
以下のような感じになりました。【 】内は 筆者の視点で独自に定義したものです

1987~1994年の8年間 【導入期】ブランド立ち上げから店舗拡大とともに知名度が高まり始める時期
1995~2004年の10年間 【成長期】ブレイク~売上右肩上がり 
2005~2014年の10年間 【成熟期】店舗数拡大とともに全体売上拡大できても1店舗あたり販売効率が下がる
2015~2020年の6年間 【衰退期】事業赤字が続く

そして、2019年にテイストと客層若返りのリ・ブランディングを図ったものの、
2020年の今春、コロナショックに見舞われ、全店閉鎖の決断に至った

というものです。

これまで分析させていただいた多くのアパレルブランド事業に共通していたのは
神田昌典さんによるプロダクト系のマーケティング理論にもあるように、

ある事業が導入期から成長期に入ったところ、
つまり売上前年比が急激(25%以上複数年)に伸び始める時期がわかると

1)それまでにかかった年数のおおよそ4倍がブランドの寿命になる
そして
2)導入~衰退までの4つの期はほぼ同じ長さになる、
という仮説で

まさにセシルマクビーにも
この仮説が当てはまっているように思えます。

導入~ブレイク(成長期スタート)まで 
約8年 x 4= ブランド寿命 32年

そして、ここからは筆者の臆測になりますが、

おそらく、店舗拡大による売上高のピークは
成熟期2005年~2014年の間にあったと思いますが、

営業利益高のピークはちょうど成長期から成熟期に移行する
2004~5年あたりだったのではないかと思われます。

そう、これは 前年度比較ではなく・・・
業績を時系列に並べて振り返って見ないと
なかなかわからないかも知れませんが、

出店によって規模拡大はできても、販売効率が下がり始め
営業利益高がピークアウトしたな~
と感じた時が成熟期入り

気づいたにもかかわらず、再成長のための何らかのてこ入れをせず、
成功体験に執着して突っ走っていると
いずれは衰退期を待つばかり・・・

というのが多くの「儲からなくなった」事業の
時系列分析から気づく共通項です。

これに対して、

この仮説に立って考えれば、いつ頃、成熟期を迎えるかの予測はできるわけですから、

〇 海外市場を開拓したり、
〇 成長の見込める新カテゴリーの導入をしたり
〇 リ・ブランディングを図る

などが成熟期のまま衰退期(赤字続き)に陥らないための対処療法になるわけです。

業界を見渡すと、

海外市場に軸足を移して成長軌道を持続した数少ない成功例のひとつは
ユニクロでしょうか。

国内に絞って改革をするのであれば、

既存事業や既存の品揃えに固執せず、

◎より客層が広く、

◎販売効率がよい、あるいは

◎より利益率の取れる新カテゴリーを導入したり、

また、

◎より幅広い客層が見込める新事業に軸足を移す

ことによって、新たな成長ドライバーを育て、利益を高めたり、

◎ブランドのイメージや商品構成を一新して客層を増やす、あるいは

◎客層を変更するリ・ブランディングを行う

のが対処例になるでしょう。

この点で、これまで国内中心に比較的うまく対処されて来たと思われるのは
アダストリア社やユナイテッドアローズ社あたりでしょうか。

しかし、個性が強いブランドに至っては・・・
割り切って事業終了も視野に入れて、

早めに、別業態・別ブランドを育て、成長の軸足を移す
一方で旧ブランドは店舗リストラ、フェイドアウトを進める、

というのも企業存続の選択肢のひとつかと思います。

もっとも、既存ブランドの成功・貢献の会社へのインパクトが大きすぎると、
乗り換えは、かなり困難を極めるとは思いますが・・・

さて、話をジャパンイマジネーション社に戻しますが、

同社は幸い、借金がなく、
主力業態であったセシルの店舗閉鎖を決め
かなりのダウンサイジングをして
なおかつ、知名度を生かしたライセンスを収入源に、企業として営業継続する選択肢を選ばれました。

会社を成長させてブランドを終了するというのは
そのブランドのために社内外で働く方々がいらっしゃいますから、
本当に苦渋の決断だったと思います。

しかし、今回の決断がもっと遅ければ、
取り返しのつかないことになっていたかも知れません。

「セシルマクビー」ブランドの終焉は残念ではありますが・・・

記事の中で社長さんが最も気にかけられていらっしゃるように
お辞めになる方々の進路についてはしっかりフォローして頂きたいと思っています。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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June 15, 2020

インディテックスグループ(ZARA)既存店の大量スクラップ&ビルドによりEC連動型店舗へのモデルチェンジを加速

6月10日に発表されたZARAのインディテックスグループの2020年度第1四半期決算に目を通しました。
4cimg0441_20200615133601 日経新聞や繊研新聞などの一部の報道では
コロナショックによる店舗休業によるダメージが甚大で売上高前年比45%の減収により、営業利益は大幅減益となり、四半期赤字に転落したと共に

グループ全体で現在世界に7412ある店舗を2022年までに1200店舗閉鎖することが強調され、

この3カ月間で5割伸ばしたECを強化する(現在の年間EC売上比率14%から25%へ)、さすがの世界一のアパレル企業も新型コロナによってデジタルシフトが迫られた、というような論調で書かれていますが・・・

 

それらに抜け落ちている大事な視点を補足をさせて頂くと、

実際は 
・これら1200店舗が役目を終えたZARA以外のブランドの小型店が中心であり、
・閉店の一方で並行して450店舗のEC連動型の大型店を新規出店することで、
結果、
・店舗は全体で600店舗くらい減るものの、売場面積は逆に毎年2.5%増え、既存店売上も4~6%伸ばす計画であること

が同社のオリジナルプレスリリースを読むとわかります。

ですから、同社の場合は、業績不振のアメリカのチェーン店とは違って、閉店数が多いことだけを取り上げて「ヤバいのか?」

悲観することではなく、より健全な状態に向かっていると見るべきでしょう。

これらの施策は、メディアが言うようなコロナショックがあったからの急展開ではなく、もともと同社が2012年あたりから始め、ここ3年で加速していたいわゆるオムニチャネル(OMO)施策の総仕上げに過ぎないんですよね。
同社ではこれを fully integrated store and online platform と呼びます。

実際、過去6年間に
1729店舗を閉店して、
1106店舗を増床し、
2556店舗を改装し、
3671店舗を新規出店しています。

その間は店舗数も売場面積も純増でしたが、
これからは、店舗数は純減も、売場面積の純増は維持し、
よりECを店舗と連動させ、

同社が以前から描いていた
「新しい顧客購買行動のビジョン」に投資を続ける
というだけの話なんです。

今回の赤字には閉店予定店舗の減価償却の積み増しも多く含まれています。
(前期は売上が落ちることを見越して、在庫引当金=評価損の原資を計上しました)

また、大量閉店と言うと、雇用はどうするんだ?という意見もあると思いますが、同社はEC対応する大型店のEC対応要因として受け皿を用意していると言い、雇用に対する配慮も欠かせません。

危機に背中を押されるのではなく、
まずは未来の顧客像やビジネスのビジョンを描き、
顧客は進化して行くにも関わらず、自分たちが変わらないことへの危機感に対し
行動を続けているのがインディテックスグループの姿です。

彼らが今、何を考えているのかを常にウォッチしていれば、
規模にかかわらず、我々も活用できる未来へのヒントが得られます。
なぜなら、彼らが長年観ているのは、競合ではなく、「顧客だけ」ですから。

まだまだその背中から学ぶことはたくさんありそうです。

関連エントリー‐世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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いつもお読み頂きありがとうございます。


 

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June 08, 2020

ファッション小売業の在庫は在庫日数(週数)で考えよう~H&Mの中長期時系列分析から

WWDジャパンさんの月イチ連載20200608_144754中 上場企業の決算書からビジネスの視点を学ぶ「ファッション業界のミカタ」が2年目に入りました。先月の5月11号と今週の6月8日号は
2回に分けてH&Mの①大量出店による成長の課題と②年々重くなる在庫問題について
レポートさせて頂きました。

企業の業績をよくありがちな前年比だけで見るのではなく、
中長期の数字を時系列に並べて・・・見つけた課題を深堀するのが
筆者が採るアプローチですが、

H&Mの日本上陸後、2009年以降の4半期の業績を並べてみて、気が付いたことをまとめてみました。

まず、同社の営業利益のピークは2015年11月期です。

その後、出店による売上増は続くものの・・・

残念ながら営業利益は一度もピークを超えることが出来ていません。

直近の2019年11月期は前年比、増収増益ながら、
ピークの2015年11月期対比 店舗数は129% 売上高は128% 営業利益は64%、
10年前対比でみると、    店舗数は255%、売上高は229%、営業利益は80%
という状況です。

要は、規模は肥大しているのに、販売効率が下がって儲からなくなっているという、チェーンストア拡大のジレンマです。

これは筆者の持論ですが、営業利益高のピークアウトはその企業や業態が成長期を終え、成熟期に入った時期と考えられ、
従って、あそこが営業利益のピークアウトだったのかも、と2年連続で減益を実感したら、

何か次の手を打たなければ、衰退期を待つだけ、ということになると思っています。

その頃(2016~2017年)、H&Mがどういう状況だったかというと、ZARAのインディテックスとの世界シェアトップ争いの真っただ中で、
H&Mは出店余地の大きい、世界の2大大国であるアメリカと中国で店舗数と売上高を積み上げていましたが、
中国では大量出店して店舗数を増やしても・・・販売効率(1店舗あたり売上高)は下がる一方、それでも、出店を続けていたのでした。

一方のインディテックスは・・・店舗のスクラップ&ビルト、店舗数拡大よりも店舗の大型化(売場面積拡大)に力を入れ、
ECへの集中投資を進めていたのですね。

両者の明暗は、過去3年間の業績の通りです。

次に、今月号では、H&Mの在庫状況に着目しました。

H&Mは11月決算で、冬物をたんまり持っている時期なので、冬が終わって在庫が軽くなる1月決算や2月決算の会社と期末の在庫回転率を比較するのはフェアではない、と長年思っています。

あと、小売業の実務に携わるものとして、会計期末だけで計算する在庫回転率にはいつも違和感を持っています。
正直、期末だけ在庫を絞れば回転率は高回転に演出できますからね。銀行や投資家には高効率の会社という印象を持ってもらえます。

従って、今回はH&Mの四半期ごとの期末の在庫日数の推移で評価をしてみました。

それから、在庫日数の計算式って、通常は 

在庫日数=期末在庫原価÷過去の期間中1日あたりの平均売上原価

で計算される方が多いと思いますが、

ファッションビジネス、特にアパレルビジネスにおいては、期末在庫ってものは、これから迎える月あるいは四半期に売るシーズン在庫をどれだけ持っているのかが大事なことなので、筆者は期末在庫を翌四半期(あるいは月)の1日あたりの売上原価で割るアプローチを取ります。

(筆者流)在庫日数=期末在庫原価÷翌四半期の1日あたりの売上原価

※実務レベルで試してみたい方は翌月または翌四半期の予算ベースの売上原価で割ってみて下さい。

以上の前提でH&Mの四半期ごとの在庫日数を時系列に眺めてみると、

やはり、健全なのは、2014年から2015年にかけてです。実際に、90日台で在庫が回っています。

日本企業のように商社を介さず、直貿のH&Mからすれば、Ex-Factorベースの在庫なら90日台なら上等でしょう。インディテックスもそんなもんです。

ところが、その後、じわりじわりと在庫は重くなり、2017年には130日台に膨らみ、
最悪だったのは2019年11月期1Q(冬の終わり)の142日、
2019年11月期末(冬真っただ中)には何とか、128日まで落とすことができたという状態です。

でも、まだ、業績がよかった時に比べても1.35倍くらい抱えているのです。

ユニクロや無印良品のようなベーシックならまだしも、
高速で在庫を回したいトレンドファッション系のH&Mが130日台=4か月以上分の在庫を常に抱えながら商売をしているのって結構リスク大きいと思いますね。

これは、H&Mのグローバル低価格競争上の問題にあると思っています。

好調だった2015年ころまでは、店頭で見ても結構、中国製やトルコ製でデザイン性の高い商品を作って高速回転させていた印象だったのですが、今は、各国での価格競争上、店頭商品は圧倒的にバングラディッシュやカンボジアあたりが増えましたよね。

これらの原産国は比較的ベーシックなものに強味があり、また発注から仕上がり、そして、東南アジア、西南アジアからは欧米への輸送に時間がかかりますから、
例えコスト的には競争力があっても、必然的にファストファッションにとっては在庫リスクが高くなる、
長いリードタイムと在庫日数の長期化という課題と向き合わなければならなくなるのです。

これは実は他人事ではなく、安い人件費を求めて産地を遠く、遠くに持って行っている日本のファッション流通企業も気をつけなければならない課題ではないでしょうか?

さて、社長が代わられて、

これから効率を落としての大量出店の見直し、ファッションストアとしての在庫の適正化の問題

の改革を進めるH&M社。

製品のサステイナブル性ももちろん大事ですが・・・サステイナブルな経営のためにどんな舵取りをするのか?
21世紀、世界の「ファッションの民主化」を旗手として、一時代をつくった同社のリ・ブランディングを見守ることと致しましょう。

  執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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June 02, 2020

コロナショック後のファッション流通企業の経営の視点(後編)

コロナショックとの共存とその後を見据えて、
ファッション流通業界の経営がどのような変革に迫られるのか?の後編です。Photo_20200602111801

1.企業の財務体質の見直し 手元資金と固定費
2.在庫の持ち方の基準変更 消化率から在庫週数へ
3.評価基準の変化 売上重視から粗利(生産性)重視へ
4.販売と働き方のデジタルシフト

 

3つめは 評価基準の見直し です。(1,2は前編へ

結論を先に言えば、
誰にもわかりやすかった売上高を基準にするよりも、より利益に直結する粗利や生産性を追求した企業が勝ち残る、という話です。

これまで、ファッション流通業界では
売上高を基準にして、さまざまな費用を売上構成比で評価することが主流でした。

右肩上がりの市場であれば・・・

売上を増やせば、利益も増えますから、それで問題なかったでしょう。

一方、小売業界全般を見渡すと、売上高ではなく、粗利高を分母にして、「分配率」という考え方もあります。

これは例えば、

労働分配率=人件費÷粗利高
販促分配率=広告宣伝費÷粗利高
不動産分配率=地代家賃÷粗利高  などで

稼ぐ粗利高に対してそれぞれの経費をどれだけ分配するかと考えるものです。

実は、分母を売上高から粗利高に変えるだけで、視点が変わり、行動に変化が起きるものです。

例えば、労働分配率に関して言えば、
「労働分配率を一定にする」と定義(予算化)すれば、

粗利高が増えれば、営業利益が増えるのは当然ですが・・・
同時に人件費を増やすことができます。

その分、手間が増えてしまったのなら人の頭数を増やさなければなりませんが、
同じ人員で粗利高を増やせたのなら、賞与を増やす原資になり、

つまり、経営側も働く人もウィンウィンになるわけです。

一方、売上高を分母にしてしまうと、

売上目標を達成するために、安売りを行って、粗利率を下げてでも、何とか売上目標を達成したとした場合
どんなことが起こるでしょうか?

粗利高は未達でも固定費は変わらず、従って営業利益は減ることになりますね。

にもかかわらず、売上目標を達成したために、売上貢献した社員には報奨金(賞与)を支給し、
人件費が増えて更に利益を削る羽目になることもあるわけです。

何が言いたいか、というと、

売上高を目標基準にするよりも、ストレートに粗利高を目標にする方が効率よく
経営も従業員もハッピーになれるか?という話です。

これは、販促費の費用対効果を測る際や

物流費を削るべきか、むしろ粗利高を高めるために使うべきかの判断をする時も有効だと思っています。

店間移動の配送費は、無駄な追加経費(悪)なのか?それによって定価販売のチャンスを広げ、粗利を高める必要経費(良)なのか?

粗利との見合いで考えると物流費の見方も変わって来ますよね。

関連して、「生産性」という言葉がありますが、これは、

期間(年、月、日、時間)あたり、一人当たりの粗利高を指します。

これは、ひとりがどれだけ効率よく粗利高を稼ぐのか?を表す指標です。

販売管理費、固定費の見直しが迫られる今、限られたリソースで、利益の唯一の原資である粗利高を確保する
「生産性」指標は避けては通れない指標になります。

これまで、一部の企業でしか採用されてこなかった

粗利重視、生産性向上の思想が、今後、より注目されるようになりそうです。

 

最後は販売と働き方のデジタルシフトです。

この2か月の間に、多くの方々が体験し、その使い勝手の良さを実感されたように、
Eコマースやオンラインミーティングは「ニューノーマル(新しい常識)」としてより定着することでしょう。

〇 Eコマースの体制を強化して、顧客との接点と選択肢を増やし、

〇 オンラインミーティングシステムを社内外の打ち合わせにフル活用して、出張費・交通費といった経費を節約して、
時間を効率よく使って、生産性を上げる

そして、創出された時間を余裕を持ってオフラインの大切なことに費やす

企業も、働く人もその点にフォーカスすれば・・・
豊かな企業活動、働き方、遊び方、生活が待っているはずです。

コロナショックが、企業の理想のビジョン、そして、より、ありたい自分に向かうように

いつかは取り組もうと思っていたことを、今すぐ進めることの後押ししてくれるきっかけになれば、

この2か月は貴重な2か月だっと結論づけられることと思います。

  執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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June 01, 2020

コロナショック後のファッション流通企業の経営の視点(前編)

約2か月続いた首都圏の緊急事態宣言が解除され、段階的に生活が再開することになりました。
感染第二波に気をつけながら、一日も早い正常化を祈るばかりです。

今回はコロナショックとの共存とその後を見据えて、
ファッション流通業界の経営がどのような変革に迫られるのか?について、いくつかのトピックを綴ってみたいと思います。

Photo_20200602111801

トピックは

1.企業の財務体質の見直し 手元資金と固定費
2.在庫の持ち方の基準変更 消化率から在庫週数へ
3.評価基準の変化 売上重視から粗利(生産性)重視へ
4.販売と働き方のデジタルシフト

の4つです。少し長くなるので、前編と後編の2回に分けてご紹介をさせて頂きますね。

まずは企業の財務体質の見直しから・・・

緊急事態宣言によって、休業店舗が増え、
ファッション流通企業は店頭で売上が計上できなくなり、当面の手元資金の確保が足元の最大経営課題となりました。

店頭販売している小売業は、日銭さえ稼げていれば、ある程度はキャッシュが回せるビジネスなので・・・
意外と、手元資金を潤沢に確保している企業が少ない傾向にあるものです。

一般的な、手元資金の潤沢さを表す財務指標に

手元流動性比率(日数)=手元資金÷1日あたりの売上高

というものもありますが、

日銭商売の小売業にとっては、今回のような場合、売上がゼロだった時に、手元資金で何か月分の販売管理費(固定費)の支払いをがまかなえるか、つまり何ヵ月間耐えられるかを考慮するのが現実的かと思います。

筆者の造語になりますが、

手元資金経費耐久月数=現預金(期末フリーキャッシュフロー)÷1か月あたりの販売管理費(固定費)

とでも言いましょうか?

今回のコロナ禍のように、今後もまた、2~3カ月、店頭売上がなくなることがあるとしたら・・・

果たして、固定費の何か月分の手元資金を持っていたら、

これまで育てて来た大切な人材を手放さず、未来に役立つ資産を守りながら・・・

落ち着いて、未来が考えられるだろうかと、経営陣の方々は痛感されたことと思います。

一時的には借入に頼りながらも
将来的には計画的に税引き後利益(繰り越し利益)を積み上げて手元資金を積み上げて行きたいところです。

ご参考までに、
5月に現代ビジネス(講談社)online向けにワークマンのビジネスモデルと財務体質について寄稿させて頂いた記事があります。

コロナ禍「アパレル壊滅」の中、ワークマンが一人勝ち「真の理由」
強みは商品開発力だけではなかった

記事の6ページ目には、日本の上場ファッション専門店の売上高上位トップ10企業の手元資金の経費耐久月数を計算した一覧表を掲載していますが、ワークマンはその中でもダントツの販売管理費の22カ月分の手元資金を持っている計算になります(2020年3月末時点)。

ちなみにトップ5は

ワークマン 22.3か月分
ファーストリテイリング 16.2か月分
西松屋チェーン 10.6か月分
パルグループ 9.7か月分
しまむら6.8か月分になります。

※いずれも記事を書いた時点で公開されていた直近四半期または期末決算の決算短信を元に計算。

高い収益性による手元資金だけでなくて、必要十分に絞り込まれた販売管理費によるローコストオペレーションも耐久性を強める要素であることは言うまでもありません。

コロナショックを機に、多くの企業さんが販売管理費(の固定費)の見直しも行われたと思いますが、
固定費はただ削りやすいものを減らすのではなく・・・
粗利高を効率的に生み出す固定費とそうでない固定費を見極めて判断する必要があるかと思います。

続いて、ふたつめは在庫の持ち方の基準変更についてです。

3月の後半から4月、5月の店頭売上のほとんどが吹き飛んでしまったアパレル業界では、

いわゆる春と初夏という2つのシーズンの在庫がオンラインや一部の店舗でしか販売できなかったため、
大きな値下げ販売と残在庫に苦しむことになりました。

それは、おおよそ売上2.5か月分に相当する在庫です。

これまでファッション業界では、
特にメーカー系企業を中心に春、夏、秋、冬という
4つのシーズン単位で一度に3カ月~6ヶ月分の商品をつくり込み

それをシーズン中に売り減らして行くという手法が
とられて来ました。

その際、主にメーカー系SPAやメーカー品を取り扱う百貨店やセレクトショップなどでは

仕入れた商品がどれだけ売れたかを表す、

消化率=売上数量(原価)÷仕入数量(原価)x100

が販売進捗、在庫管理手法のメインに用いられて来ましたが、

コロナショックを機に、主に小売業が活用している
在庫日数(週数)管理が、あらためて
仕入れ、在庫管理のスタンダードとして注目されそうです。

在庫日数(週数)=現在在庫数(原価)÷1日(週)あたりの売上数(原価)

つまり、生産リードタイムを考慮して、販売計画を立て
当面(何日分、何週分)必要な商品在庫を調達する。

売上と需要内容に応じて、販売計画を立て直し(※ここ重要)

また何日分、何週分の追加発注を行う、というアクションに活用できる計数で、

ドンと大量に仕入れて売り減らす、のではなく、売上の進捗に応じて買い増すという運用になります。

ファッションビジネス、特にアパレルビジネスはリスクマネジメントビジネスと言われます。

小売業の在庫管理のスタンダードが変われば、商品を供給する作り手側も春夏/秋冬シーズン単位の展示会受注方式から、ますます柔軟な期中対応が求められそうです。

前編はこのあたりで。

次回後編では 評価基準と販売方法、働きかたの変革の話に続きます。

  執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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