October 09, 2017

実店舗とオンライン、5年後のファッション消費の未来から考えよう

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 10月5日の繊研新聞にJDAソフトウエアがプレスリリースしたインターネットショッピングに関する消費者意識調査に関する記事が掲載されていました。

 同調査資料のオリジナルをご覧になりたい方はこちらから
 
 2017年インターネットショッピングに関する消費者意識調査


 この調査は

 18歳以上の男女を対象にしたインターネット調査ですが(有効回答数2093人)

 私が注目したのは2点

 今後ファッション消費において、

 1.どれくらいの割合がオンライン経由でなされ、

 そのうち

 2.どれくらいがクリック&コレクト(オンライン注文の自宅以外受け取り)を利用するのか?

 に関する数値です。

 まず前者については

 インターネットでも実店舗でも、どちらでも購入できる商品の場合、インターネットと実店舗のどちらで購入することが多いですか?という質問に対して、

 小売全体では約70%が実店舗で購入するに対し、洋服/靴/ファッションは75.5%が実店舗で購入するとのこと。

 この結果は、昨今、業界識者の方々が語り始めている「ファッション専門店のEC売上比率の限界点は30%にあり?」という議論に近いものがあるかも知れません。

 また、

 過去1年間にクリック&コレクト(オンライン注文商品の店舗など自宅外受け取り)を利用しましたか?という質問に対しては

 今回(2017)は18%が利用経験ありと答え、前年(2016)の14%に比べて増えています。

 ちなみに同社は同じ調査を英国でも行ったため、比較数値が出て来ますが、

 英国ではクリック&コレクト利用経験者比率は54%と過半数です。

 日本の場合、なぜクリック&コレクトを利用するか?という理由としては

 配送手数料がかからない    44%
 自宅より確実に受け取れる   42%
 自宅への配送より便利      34%

 一方、クリック&コレクトにおいてのトラブル体験は

 日本では74%の利用者が持っており、これは英国の54%よりも高い数値となっていますが、日本の上位の理由は・・・

 店員が商品をなかなか見つけられない、時間がかかった 39%
 受け取りの専用スペースがない  29%
 対応する店員がおらず待たされた 18%

 とのことです。 
 
 ストレス軽減のためには、同サービスが社内でしっかり通達され、

 アルバイトさん含めて店舗スタッフもそういったお客様が来店された時の対応が周知徹底されているかどうかにかかっていそうです。

 これまで、日本のクリック&コレクトがどれくらい進んでいるかを数字で掴めませんでしたが、今回、初めて数字に触れて、日本でもまだ低い数値ながら、徐々に増えていることがわかりました。

 また、クリック&コレクトが普及しているイギリス(体験者比率54%)との比較を見て・・・以前、私がイギリスの老舗SPAであるNEXTのアニュアルレポートを読んだ時にこんな数字が出ていたのを思い出しました。

 これは2016年1月期のものですが、

 オンライン注文を店舗で受け取る比率が過去5年間に急増

 2010年     2015年
  13%  ⇒   55%

 これは同社が2010年からオンラインビジネスに力を入れ、サービスの認知とサービス精度向上に努めたからに他なりません。

 この数字を思い出して、JDA社の英国のクリック&コレクトに関する調査結果とNEXTの実態が近いこと、

 そして、英NEXTのオンライン注文のクリック&コレクト比率が2010年に 日本の2016年と同じ水準であり(それぞれ13%と14%)、その5年後にNEXTではオンライン注文をする過半数(55%)の顧客が自宅外で受け取るようになったことからすると・・・

 日本でもひょっとすると、2021年ごろにはオンライン注文者の過半数がクリック&コレクトを利用するようになるのかも知れない?という仮説が描けるのではないかと思いました。

 もっとも、企業がそれに耐えうるフルフィルメントなどインフラ投資を着実に進め、店頭と一体となって、店頭でのトラブル比率を下げることがキモになることは言うまでもありません。

 JDA社の資料によれば、日本の小売企業はまだECのシステム周りに投資をしているのに対して、

 欧米ではその先を行って、フルフィルメントへの投資が旺盛とのことです。

 これから5年後、ファッション消費の未来はどうなっているでしょうね。そんなことを想像しながら・・・

 未来から逆算して、オムニチャネル時代にインフラ投資を進めながら、トップがリーダーシップをとって店頭を巻き込んで社内でお客様のメリットを周知徹底する、

 そんな取り組みをそろそろ進めなければ・・・業界で取り残されるというか、顧客から「遅れている店」というレッテルを貼られてしまいそうな局面に入って行きそうです。

 関連エントリー-ロンドン視察から 日本でのクリック&コレクトの普及を考える


 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 25, 2017

しまむらが2018年からネット通販を開始 独自の物流網をどう活かせるか?

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 9月23日の日経新聞に しまむらが展開する「ファッションセンターしまむら」が2018年からネット通販を始めることに関する記事が掲載されていました。

 記事によれば、

 同社は専用倉庫に用意した一部商品をオンラインで販売し、顧客からスマホなどから注文された商品は全国2000店舗の店頭で受け渡す(=クリック&コレクト)ことからスタートし、

 次にメーカー在庫を販売対象とした店舗での受け取り、更に宅配を検討する模様です。
 
 当初は注文された商品は1-2週で店舗に届き、連絡を受けた消費者は店舗に出向いて受け取るという流れで、

 これまでファッション衣料の多くの商品が各店各色各サイズ1点投入で売り切れ御免が特徴だったしまむらが、

・オンラインで注文した商品が確実に受け取れることを、

・ 1点あたりの平均単価 910円という安価な商品に対して、しまむらの独自の物流を活かす
ことで顧客にとってもしまむらにとっても、追加コストがかからない店舗受け取り配送

 で実現しようという取り組みです。

 正直 注文から受け取りまで1-2週間というのは・・・

 トレンド商品を投入してから4-5週で売り切るしまむらのスピーディな在庫コントロールからすると少々遅いと思いますが、

 オペレーションに磨きをかけ、注文から受け取りの日数が徐々に短縮されれば、既存の物流網と店舗網は大きなアドバンテージになることでしょう。

 当初は世の中の既存の翌日配送系の通販サービスと比べられ、不満も少なくないでしょうが・・・

 同社が辛抱強くオペレーションを磨き上げることで、アパレル専門チェーンのクリック&コレクトのベストプラクティスを実現できる会社であると思っています。

 前々回のエントリーでご紹介した、ロンドンで急速に普及が進むクリック&コレクト(オンライン注文商品の店舗での受け取り)で感じたことは、

 関連エントリー-ロンドン視察から 日本でのクリック&コレクトの普及を考える

 このサービスのキーになるのは、運送会社に荷物を渡したら、終わりではなく、委託先任せにしない物流網の構築とコントロールだろうということでした。

 今後、EC販路での消費が拡大して行く流通業界で、覇者となるのは、

 配送は宅配便に任せておけば何とかしてくれる、と考える会社ではなく、顧客に確実に商品を届けるために、独自に強い物流網を構築した会社になると思っています。

 中長期的な しまむらの取り組みに注目しておきましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 ファッション消費の顧客購買心理を考えるビジネス読本

 顧客心理への配慮と在庫コントロールロジックが明確な しまむら の事例もいくつか取り上げています。

 『人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識』

   

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September 18, 2017

在庫データの精度を高めて「ラスいち」を売り切れ

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 先日、東京ビッグサイトで開催されたRFIDなどの最先端自動認識技術で製造・流通・物流などをソリューションする企業事例を紹介する「自動認識総合展」に行って来ました。

 目的は「自動認識のベストプラクティス」というセミナーで

・アダストリア社が行っているRFIDを使った海外工場~店頭までの国際物流実証実験の経過報告や

・国内物流~店頭でのRFID活用の先進事例であるビームス社の取り組み

の話を聴講するためでした。

 システム会社が売り込むほどは万能ではないRFIDの活用を・・・

 現場主義の両社がどのように運用しているかについての具体的な話を伺うことができ、同技術との付き合い方についてとても腹落ちして勉強になりました。

 最も印象に残っている話のひとつが

 ビームス社のシステム担当役員さんからの話の中で・・・

 RFIDによる棚卸作業の効率化、そのご利益としての在庫データ精度の向上によって・・・

 これまで閾値(しきいち)の設定上の関係でECの販売対象にできなかったラスト1点(ラスいち)が販売可能になり、今年の夏のセール初日の売上が過去最高になったという話です。

 話しによれば、なんと、販売品番の約3割が「ラスいち」品番だったとのことで、これらが過去最高売上の要因のひとつであったことは間違いないでしょう。

 閾値(しきいち)とは、実際の在庫データに対し、どれだけを販売対象にするかという数値の設定です。 

 例えば、在庫データの精度が低ければ、未知の棚卸ロスのために、在庫にないものを販売してしまうことを回避するため、

 各社は在庫が最低2-3点以上の商品をEC販売の対象にし、ラスト1点というものはその対象から除外する(販売対象にしない)ものでした。

 同社では年間10回棚卸をするという、もともと棚卸業務に試行錯誤の上、磨きをかけていた会社さんですが、

 RFIDのおかげで棚卸時間作業が10分の1となり、時間短縮された分、在庫データの精度を上げることに注力できたというもので・・・

 ご苦労の結果、データ精度に自信が持てたため、ECのラスいちの販売に踏み切ったようです。

 これ、すごくいい話だなと思ったのは、

 RFIDもECもなかったころの私自身の専門店勤務時代の話になりますが、バイヤーや在庫コントローラーとして店舗と一緒に「ラスいち」在庫の売り切りに取り組んでいた時に同じようなご利益を感じていたからです。

 在庫過多に苦しんだ服飾雑貨と靴のバイヤー時代、在庫回転を悪化させる要因のひとつが・・・

 「ラスいち」品番を含む一桁在庫数の品番群であることに気付いたからです。

 在庫を整理しようと思って、意識的に在庫帳票を見たことがある方はおわかりだと思いますが、

 帳票のページ(データであれば行数)の大方が過去何年間か放置されたこれらの売れ残り在庫ではなかったでしょうか?

 売れ筋商品で消化率がよい商品でも、各店では数量が少なくなるとお客様の目に届かないところに置いてしまうものです。店舗によってはバックヤードの中のダンボールの中ということもあるでしょう。

 店舗も本部商品管理チーム(バイヤー、在庫コントローラー)もそれらが眼中になくなっているのが実情で、放置しておくといつの間にか塊状態で「死に筋」になっているものです。

 これらをお客様の目に触れるように、各店にラスいちコーナー(またはラック)を設けたり、定期的に集約店舗に集めたり、回収してアウトレットで販売したり、福袋に入れたり・・・そんなルーティンができている会社さんだったらいいのですが、

 私の前職時代含め、独立後、関与したクライアント企業さんの在庫データを見させていただいても、多くの企業で同じことが起こっていることに気が付きます。

 それを放置したままで、「うちは在庫回転が悪い、在庫回転を上げるにはどうしたらいいか?」と悩んでいることも少なくないものです。

 おそらく、そんなものに時間を掛けるのであれば、新商品を、直近の売れ筋を売れ、というのが多くの企業さんの考えでしょう。 

 しかし、放置しておけばおくほど、在庫回転が悪化(在庫日数が膨らむ)してゆくのが実態です。

 これらの売り切りにしっかり取り組めば

○ 売上のプラスになる
○ 在庫回転がよくなる
○ 商品管理が楽になる データも軽くなる

そして、

○ 商品管理に携わるすべてのスタッフが より前向きにお客様が望む売れ筋商品に集中できる

 というご利益がありますね。 

 ラスいち商品はかつての売れ筋商品の残りですから、サイズさえ合えば、商品自体はお客様にとって魅力的なはずですから・・・手遅れにならなければ値下をしなくても売り切れる可能性は高いですね。

 今では、ビームス社のようにEC店に集めて、ECで上手に売り切るという有力な選択肢も加わりましたね。

 そのためには、日ごろから商品管理をしっかり行い、在庫データの精度を意識する習慣をつけておくことが大切なのは言うまでもありません。

 オムニチャネル時代に・・・

 欲しいと思った商品を手に入れたい!と望むお客様のためにも、それをお手伝いしながら、商品をしっかり売り切る商売人にとっても・・・

 業務を円滑に行い、お客様に向き合うことに集中する上でもRFIDの上手な運用は大切である、

 とあらためて感じたものでした。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 07, 2017

ロンドン視察から 日本でのクリック&コレクトの普及を考える

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 8月末のロンドン視察のもうひとつの目的はイギリスで普及しているクリック&コレクトの現場を視察し、実際に体験してみることでした。

 「クリック&コレクト(CLICK&COLLECT)」とは・・・オンライン(自社ECサイト)で購入を決めた商品を宅配ではなく、顧客の都合のよい店舗で受け取ることです。

 このクリック&コレクトがEC売上急増中の日本のファッション消費の未来図のひとつになるかどうかにとても関心があったためです。

 実際、ロンドンのオックスフォードストリートやリージェントストリートを歩くと・・・

 2年前の視察と比べて、明らかに、百貨店から専門店、TOPSHOP、NEXT、H&M、ZARA、UNIQLOのようなチェーンストアまで、店頭のウィンドウに「CLICK&COLLECT」のロゴや店内でも受け取り場所を案内するサインがたくさん見受けられ、かなり普及して来たのだなと感じられました。

 それらの店舗の受け取り場所で観察すると・・・

 私が訪問したチェーンストアでは日中の時間帯だったからでしょうか・・・商品を受け取りに来ている顧客をほとんど見かけませんでしたが、

Dsc_08431

 セルフリッジやジョンルイスといった百貨店の専用カウンターの夕方近くでは常時3-4人の受け取り顧客がカウンターに滞留し、セルフリッジではその場でプレゼントラッピングを依頼する顧客や鏡の前で婦人靴を試着し、スーツ姿の販売員に接客を受けるという姿も見受けられました。

 店舗に在庫がない商品のオンライン購入を勧めている英老舗アパレルチェーンNEXTではレジ前のカタログとパソコンが置いてあるカウンターで店舗スタッフと一緒に商品を検索する女性の姿も見かけました。

 IR(広報)によれば、NEXTではオンラインで注文して、都合のよい店舗で受け取るクリック&コレクト比率は注文件数の55%にあたるそうです(イギリス国内)。 一方、ZARAでは66%(グローバル平均)とのことです。

 日本でいろいろな方々とこの「クリック&コレクト」の話をすると・・・

 ヤマト運輸を筆頭にきめ細かい宅配便のサービスをかつ安価で当たり前のように享受している日本において、クリック&コレクトの顧客にとってのメリットに疑問をもつ方が大多数なのが実情です。

 英NEXTでクリック&コレクト比率が高い理由はDsc_05221

 - 夜12時までに注文すれば翌日12:00以降に商品が指定の店頭で受け取れること

 - 宅配の場合3.99ポンド(600-700円)かかる運賃が無料になること

 - 国内540店舗という店舗網により生活圏、通勤圏に受け取り易い店舗があること

 - 一方、英国にはヤマト運輸のような2時間単位の時間帯で配達指定ができる宅配便がそうそう存在しない

 などが挙げられます。 ちなみに店舗受け取りは1-2点の購入者が多く、多数注文の場合は運賃を払って宅配にするケースが多いそうです。

 実際、数日の滞在期間中に外国人旅行者でもクリック&コレクトが可能だった百貨店のジョンルイス(John Lewis)と国内に多数の受け取り専用店舗を持つ通販会社アルゴス(Argos)で購入体験をしましたが・・・

 オーダーから受け取りまで実に事務的で、スムーズに済む印象を受けました。

 購入心理からすると、早朝でも夜でも自分が時間に余裕のある時間帯で商品を選び、クレジットカードで決済まで済ませておく。

 自宅でいつ届くか?と待つことなく、外出ついで、仕事帰りなど、自分の都合で近くに寄った時に店舗でピックアップすればよい。待ち時間はほとんどない。

 という感覚です。

 EC発達の理由は、ECの方が安いから、という商品もあると思いますが、

 第一は利便性と時短だと思います。

 忙しい中、買い物時間を短縮できる、レジ待ちや代金支払い処理が短縮できる、短縮というか、自分の都合がよい時にお買いものの面倒な工程を自分のペースで済ませる、という感覚でしょうかね。

 日本でこの「クリック&コレクト」の普及を考える時のネックはいくつかあります。

 ひとつは

 日本では、百貨店にしても、駅ビルやSCにしても、ECモールにしても、何かと場所を貸している商業施設側(館)と借りているテナント(ブランド店舗)という構図が多く、

 なおかつ、固定家賃ではなく、売上歩合家賃制が多いので、ブランド側の自由が利かないことが多いところでしょう。

 したがって、オンラインで決済を済ませておくのではなく、商品はあくまで仮予約で店舗に取り寄せておいて、店舗で決済するという形になるでしょうね。(日本では「無印良品」がそのパターン) 

 それには他社任せのECモールではなく、自社EC(オンラインサイト)の活用が前提になりますが・・・

 もうひとつは

 これまできめ細かいサービスで届けてくれていた宅配便の未来です。

 果たしてECの普及が今の倍になったとしても、今までのように同じ良質なサービスをかつ安価で提供できるのでしょうか?それが難しくなってきているのは昨今の宅配便クライシスの報道の通りです。

 また、コンビニ受け取りや駅の宅配ロッカーが普及すれば倍の量に耐えきれるのでしょうか?という疑問もあります。

 いずれにしても、ブランド側が自社ECに力を入れ、物流も整え、店舗での受け取りのメリットを明確に打ち出すことによって、サービスの認知度が高まれば・・・

 受け取りのひとつの選択肢として、これまでよりも件数が増えて行くであろうし、そこに実店舗を持つ企業のオムニチャネル時代のビジネスチャンスがある、というのが私の見方です。

 最後に、クリック&コレクトを世界的に推奨しているZARAのインディテックスグループが昨年から経営方針に掲げているフレーズをご紹介しましょう。

 Seamlessly integrated on-line and off-line store model

 (継ぎ目なく統合されたオンラインと実店舗のストアモデル)

 彼らが目指しているのは、オンラインでもオフラインでも、

 顧客がいつどこにいても情報を得ることができて、

 欲しい商品をスムーズに見つけることができ、

 どこでも購入でき、都合のよいところで受け取ることができる。

 返品交換する時も同様である。

 顧客をビジネスの中心において・・・それをいかにサポートして行くか?

 そんな世界を目指して同社はインフラを着々と整えています。

 日本の小売ビジネスは「顧客満足」と言いながら・・・

 百貨店、ショッピングセンター、ECモールなど「販路(チャネル)」に頼った発想が強く・・・

 何かとそれらの都合が先に立ち、顧客が不便を被ることも少なからずありますよね。

 SPAが製販垂直統合によってサプライチェーンの分業の常識を崩したように・・・

 Vertically integrated manufacturing and distribution store model

 これからのオムニチャネル時代は「販路」の常識を崩す必要がある、

 Seamlessly integrated on-line and off-line store model
 
 と同社が宣言しているフレーズのように思えてなりません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 2008年のH&Mの日本上陸以降、グローバル競合の波に飲み込まれた日本のファッション流通市場。グローバルな視点で考える上でも参考にしていただければ幸いです。
 
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August 07, 2017

ZOZOのスタートトゥデイが大幅増収増益で株式時価総額1兆円を突破 現状の課題と次の手は?

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 8月2日の日経新聞や繊研新聞にZOZOTOWNを運営するスタートトゥデイ社の2017年4-6月の今期第1四半期決算に関する記事が掲載されていました。

 同四半期は

 商品取扱高 595億円 40.9%増

 営業利益    79億円 59.3%増

 連結純利益  55億円 54.5%増

と絶好調の業績を受けて 8月1日付の同社株価時価総額が1兆円を突破したとのことです。

 日経の記事によれば、この時価総額は上場小売業ではセブン&アイ、ファストリ、楽天、ニトリ、イオンに次ぐ6位とのこと、

 同社の業績と勢いを株式市場が

 流通業界における時代のリーディングカンパニー

 と評価した結果であり、今後、流通の歴史に記されるであろうニュースになるでしょうね。

 好業績の要因は同社の発表にもありますが、

 - 低価格ブランドの導入とその伸び

 - クーポンによる販売促進

 - ツケ払い制度による低年齢層の会員獲得と買い上げ促進

 などがあるようです。

 あと、「買い替え割」という下取りも既存ユーザーの購買頻度を上げる上で、それなりに購入促進になっているのではないかとお察しします。

 最近のZOZOのサイトを見ると・・・

 ホントに楽天などで活躍して来た、販売管理費が比較的低く、
 
 単価1900円、2900円中心で単品大量販売をするような低価格ブランドが幅を利かせて来ましたよね。

 そして、クーポンの発行の頻度も ものすごい。

 業界では、かつてはルミネ10%オフキャンペーンが市場で最も爆発的な売上が上がる起爆剤でしたが、今ではそれも落ち着いて来て、

 それに代わって、消費者も業界関係者も、関心が「ZOZOのクーポン」に移っているようですね。 

 ブランドがクーポン対象になると、その期間中は売上が5倍以上に伸びると言いますから・・・

 同社の狙い通り

 低年齢層の客層増と
 クーポンによる単価の高い商品の買い上げアップの効果

 があったと思いますが・・・

 一方で、セレクト系など既存ブランドの伸びは落ちて・・・

 売上を伸ばすにはクーポンに依存する体質が生まれ、利益は薄くなる・・・

 モール内も低価格商品で荒れるなど、正直、売上起爆剤をだいぶやり尽くした感も否めません。

 お客様とZOZOにとってはよいかも知れませんが、出店ブランドとの3者のウィン・ウィン・ウィンが成立しているのか?どうか?

 ZOZO依存が進むとスポイルされるブランドも少なからず出てくるのではないか?とちょっと疑問や心配も感じ始めている次第です。


 話は変わりますが、今期中に立ち上げが予定されているZOZOの自社ブランドに業界が注目していますね。

 買収案件や募集人材から業界関係者がいろいろな憶測をしていますが・・・

 私は、前澤社長のことですから、もちろん革新的なものを狙うと思いますが、

 最新技術の話題先行で、すぐに儲かるかどうかわからない奇抜なものではなく、

 顧客ソリューションにつながり、ZOZO自身もすぐに売上利益につながる、

 斬新でも「遊びなし」のものが前提になると見ています。

 そういう意味では聞こえはベタかも知れませんが、

 低価格ベーシック商品をその最有力候補として挙げたいですね。

 簡単に言えば、ZOZOに出店していないユニクロの代替え商品

 同社が展開するファッションコーディネートアプリ「WEAR」を見ればわかるように、

 ユーザーが最もコーディネートに取り入れている=ZOZOで販売しているブランドと相性のよい商品群であり (そこを 指をくわえて見ている経営者はいないでしょう)

 まずブランド品1品を選んだユーザーが運賃無料にするのに手ごろな買い足し商品にもなる価格帯であり

 ベーシックであればまとめ買いも期待できますからね。

 それを物流の混乱が続いているユニクロよりも速く届ける。

 関連エントリー- ベーシック(定番)アイテムの役割

 以前、ファッションを強化するAmazonがアメアパを買収するなんで噂があった時に非常に納得したのを覚えていますが、ファッション最大モールとしてそんなソリューションはありかなと思います。

 もっとも、ユニクロと同じことをしても芸がないので・・・

 例えば、オンデマンドで、極力 製品在庫リスクなし、欠品なし、できるだけ機械化して国内生産で行う、また、アイテムによっては丈詰めなどでパーソナライズするなど

 これらはもちろん、全くの想像に過ぎませんが、そんな流通イノベーション、ソリューションであれば・・・

 これまでのZOZOの商品やサービスを補完できる、極めて合理的で王道のアプローチではないかと思います。

 また、イギリスでは地産地消をキーワードにしたこんな状況も起こっていますのでご参考まで。

 関連エントリー- 英国発 地産地消のウルトラ・ファストファッションの波は日本にもやって来るのか?

 いろいろ想像は尽きませんが、

 流通業界の革新児であるスタートトゥデイ社らしい商品が実際にリリースされるのを楽しみに待ちましょう。

 
 いずれにしても、同社の独走はしばらく続きそうで、目が離せませんね。

 一方で、出店している既存ブランドはZOZOと上手に付き合いながらも・・・

 ZOZO依存体質から抜け出し、自社ECでいかに実店舗との相乗効果を出すか?

 を本気で考えなければならない局面でもあるのではないでしょうか? 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 トレンドとベーシックの商品管理のそれぞれのお手本はZARAとユニクロ。両社の理念とビジネスモデルをわかりやすく解説しました。
 
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July 31, 2017

オリエンタルトラフィック 店頭起点の商品企画の強み

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 7月31日の繊研新聞一面に創業15年、2016年8月期に80店舗を超え、年商100億円を達成した婦人靴専門店「オリエンタルトラフィック」を展開するダブルエー社の記事が掲載されていました。

 私が生業にしている「ファッション専門店の在庫コントロール」支援の原点にあるのは・・・

 アパレルチェーン勤務時代の店頭でのジーンズや靴のようなサイズの多いアイテムの接客販売経験にあると思っていますので、

 日ごろから元気な靴専門店さんには注目しています。

 特に「オリエンタルトラフィック」は・・・婦人靴チェーンの中でも都心部の主要駅ビルで毎月好調店舗に名前が上がる常連ですからね。 駅ビルやSCでお店の前を通るとつい覗いてしまいます。 

 7年前に同社について書いたブログ記事には・・・今でも数多くのアクセスを頂いていますので

 「オリエンタルトラフィック」をご存じない方のために記事をご紹介をさせて頂きます。

 関連エントリー-絶好調、「オリエンタルトラフィック」の強み

 もうひとつ今年書いたオムニチャネル関連の記事でも同社の事例を取り上げているので併せてご紹介します。

 関連エントリー-ファッション専門店のオムニチャネルリテイリングの取り組み事例の記事を読んで~在庫運用編

 
 今回の繊研新聞の記事で感心したのは、

 同社では本部勤務のスタッフが週末のうち1日は店頭に立つのが日常業務で、

 企画スタッフも自らの店頭での接客の気づきに基づいて商品企画を行っているというところです。

 シーズンあたり80型と絞り込まれた品番数は

 「お客様の顔が見えると好きなものがわかる。どんな素材を使ったらいいか、店でどう販売したいか」(記事から引用)

 について、自身の店頭での接客体験をイメージしながら考え抜き、商品化すると言います。

 そんな地道で愚直な努力の積み重ねこそが・・・

 店頭を持った専門店やSPA型小売業の「強み」であることは間違いなく、当たり前の話だとは思うのですが・・・

 最近、残念ながら業界では商品企画や仕入れの担当者があまり売場に行かなくなったという話をよく耳にしますので、

 「元気のあるブランド」と「そうでないブランド」の境目は、まずは、そんな小売業としてのメリット、強みを活かしているかどうかの違いなのかなぁ、と感じてしまいます。


 ずいぶん前の話になりますが、私が講師をさせていただいた在庫コントロールをテーマにしたセミナーに同社の商品企画の女性の方に参加いただいたことがありました。

 私はいつもセミナーの始めに、参加者の方々とのブレストセッションとして

 「あなたにとって売れ筋商品と死に筋商品の違いは何ですか?」

 という質問を投げかけさせて頂き、何人かの方々からお答えを頂いた後に講演を始めることにしていたのですが・・・

 同社の女性の方からの答えが、これまでいろいろな方々から伺った答えの中で、最も印象的で素敵な答えだったと今でもよく思い出すことがあります。

 その答えとは・・・

 「売れ筋商品とは・・・お客様にとってのメリットが3つ以上ある商品、

 死に筋商品とは・・・お客様にとってのメリットが2つしかない商品」

 でした。

 販売計画に対しての消化率のような数値的な根拠を答えとして期待していた私は、その答えを聴いた時・・・

 とてもお客様目線で、純粋で、新鮮に感じ、目からウロコ、何か今まで長年探していたものに巡り合ったくらいの衝撃を受けたのを覚えています。
 

 お客様と日ごろから店頭で向かい合い、考え抜いているからこそ、つくり出せる価値。

 価格のわかりやすさだけでない・・・3つ以上の価値が商品に宿っているからこそ・・・

 同社の快進撃は続いているのでしょう。

 今、店頭を持っている専門店やSPA企業の方々は原点に立ち返って商品の価値を考え直すことが迫られているくらい厳しい局面と言えるでしょう。

 「わからなくなったら・・・迷ったら・・・現場に行って考える。そして、お客様の反応・行動を感じ、その声に耳を傾ける」

 私が小売チェーン勤務時代にもっとも大切にしていた行動指針のひとつです。

 小売業に奇策なし、売場で感じたリアルな気づきを業務のヒントとして活かしましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【ウェブセミナー】

 8月2日(水)20:00~21:30
 ファッション専門店向けの無料ウェブセミナー開催します!先着50名様限定

 タイトル 「ファッション専門店の在庫コントロールの実践」
 (講師:齊藤孝浩/ファッション流通ブログde業界関心事執筆者)

 【このセミナーは終了いたしました】

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July 24, 2017

TOKYO BASEが都心で働く女性に向けた服の新業態「シティ」をSPA方式で本格展開

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 7月19日の繊研新聞に「ステュディオス」「ユナイテッドトウキョウ」を展開し、絶好調が続く新興東証一部上場企業TOKYO BASE(トウキョウベース)が、この春に「ステュディオス」の派生業態として大人の女性のための服として立ち上げていたセレクトショップ「ステュディオス・シティ」を「シティ」というブランドでSPA業態に転換するという記事が掲載されており、大変興味深く読ませていただきました。

 記事によれば、「シティ」のコンセプトは

・(都心で)働く女性向けの上質な服を

・海外ラグジュアリーブランドと同水準の生地を用い

・旬のモードトレンドを盛り込んで

・原価率50%のものづくりを行う

・素材は小売価格の20%を基準にする

 というものです。

 私も常日頃から

 都心で働く女性のための上質でコストパフォーマンスのよい服は
 
 ほとんどのアパレル企業がまだまだ攻めきれていない。 日本のみならず、

 新興国において女性の社会進出が進むにつれて、グローバルレベルでも通用するカテゴリーのひとつだと思っていました。

 要はマーケット的に百貨店キャリアブランドとZARAの間に位置づくと思いますが、

 百貨店で販売されているキャリア服(原価率20-25%)は・・・モノは良くても高くて買いづらい。

 これに対する価格とクオリティのバランスのアンチテーゼであり、また

 国内100店舗になってすでに大人の女性のワードローブの選択肢のひとつとして認知度が確立されたZARAに関しても・・・

 価格はこなれているけれども、もう少しきちっとしたい、物足りない、

 と考える働く女性のための服は

 飽和状態になったアパレルマーケットにおいて残された・・・

 数少ない?あるいは最後の巨大マーケットのひとつではないかと。

 そこに若くて、今、業界で最も勢いのある同社が取り組むのは大変興味深いなと思いました。


 ところで、1975年にアマンシオ・オルテガさんがZARAを立ち上げた時のコンセプトは・・・

 当時女性の社会進出が急速に進むスペインにおいて・・・

 オフィスで働く女性をいかにこなれた価格でおしゃれになってもらうか?でした。

 そこで独自のSPA手法を用いて百貨店クオリティのリーズナブルプライスを追求したのがZARAの始まりです。

 ZARAの創業当時の思いはグローバル展開する今でも全く変わっていません。

 そして、そんな働く女性に対する愛があるからこそZARAは世界で支持をされ続けている訳です。

 お客様に対する想いを、自らの流通革新の信念で実現する。

 TOKYO BASEの谷社長もそんな信念をお持ちであることを想像しながら、

 これからのチャレンジにも注目して行きたいと思います。

 ちょっと前の記事ですが・・・

 関連エントリー-絶好調TOKYO BASEの決算発表資料を読んで

 関連エントリー-次世代セレクトショップ、STUDIOUS(ステュディオス)の勢いが止まらない

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 世界中の女性をおしゃれにしたい。そんな思いでスペインの西の端の街で創業したオルテガさんは信念を貫き、ZARA(インディテックス)を世界一にした。

 本書を通じて、ZARAのビジネスモデルだけでなく、オルテガさんのファッションビジネスに対する想いを感じ取って頂きたいです。

 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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June 17, 2017

アパレル企業の商業施設向け共同配送

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 6月17日の日経新聞に百貨店アパレルメーカーを中心に構成する日本アパレルファッション産業協会(アパ産協)が推進する、同一商業施設に対して他社との相乗り便で商品を届ける共同配送に関する記事が掲載されていました。

 百貨店アパレルメーカーは以前から百貨店向けには共同配送を行っていましたが、駅ビルやショッピングモール向けは各自に運送業者に依頼しておりました。

 これをアパレル各社が駅ビル、SC向けの商品を一旦運送会社の物流センターに商品を納品し、そこから運送会社が商業施設ごとに複数社分の荷物を同じトラックに混載して届けようというものです。

 記事によれば、導入した店舗向けに年間物流コストが3割削減したケースもあり、

 また同じアパ産協が進めているダンボ―ルサイズの規格統一(8サイズに集約)によって、共同購入されたダンボールのコストが2割削減された

 という話も紹介されています。

 昨今の物流問題はコストアップの話だけでなく、人手不足も深刻で、更にトラックを頻繁に走らせれば環境問題(CO2排出)も引き起こすことになります。

 コンビニや食品業界など、異業種では既に進んでいるこの共同配送の取り組み

 ファッション業界の商業施設向けでもどんどん進めてもらいたいところですね。

 関連して、日ごろから店舗周りの物流問題で是非改善したい、して欲しいと思っていることがあります。

 人手不足は店舗側でも深刻で、その対策として各社で生産性向上(人時生産性や人時売上高)が関心事となり、真剣に取り組むところが増えて来ました。

 その一環で、私も店舗作業軽減プロジェクトに取り組んでいると・・・

 一番ネックになることのひとつに、各店の商品入荷時間のバラつきが挙がります(昔からの課題ですが)。

 これまではしょうがないで済ませていた問題もこれからは待ったなし。

 大手チェーンでは独自の物流網を敷いて朝イチ着荷に取り組んでいますが、

 中堅以下では独自で行うのはなかなか難しく、個別に運送便会社にお願いせざるを得ませんが・・・

 個々の交渉ではなかなか着荷時間をコントロールすることができません。

 このあたりは是非、各商業施設さん側に音頭を取っていただき、

 商業施設の早朝入荷の受け入れと同時に
 
 各店の開店前に商品を店頭まで届けてもらえるサービス

 が実現するとどれだけ有り難いことか・・・

 記事にある

〇 商業施設までの共同配送

と併せて

〇 商業施設内の各店舗への朝イチ配送

 この両方が進むことによって、物流コスト問題と共に生産性が改善し・・・

 店頭スタッフが気持ちよく仕事をし、笑顔でお客様に接する時間が増えることを願っております。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 物流問題も一枚上手 積載効率と帰り便の活用まで考えるZARAの物流オペレーションについても解説しています。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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May 23, 2017

H&MグループのCOS(コス)3号店が銀座にオープン~H&Mとは真逆の出店戦略

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 5月19日の繊研新聞に銀座のマロニエ通りに日本3号店目をオープンしたH&Mグループの高価格帯ブランドCOS(コス)に関する記事が掲載されていました。

 ネットニュースも意外と少なく、オープンを報じたのはファッションプレスさんくらいしか見当たりませんでしたね。

 COS(コス)銀座店がマロニエ通りにオープン - 日本最大規模の国内3号店

 昨日ちょうど銀座に行く機会があったので ちょっとお店に立ち寄ってみました。

 店舗は、近隣に名だたるラグジュアリーブランド、グローバルブランドの旗艦店が立ち並ぶマロニエ通りにあるシルバーグレーの外壁の路面店。総売場面積は2層で170坪とのこと。

 あえてマスメディアを使った宣伝はしていないのでしょうか?

 オープン報道も少ないですし、月曜日の夕方でOLさんの仕事帰りの時間帯、決して敷居の高い印象ではない、入りやすいエントランスにも関わらず、

 COSを知っているらしき人くらいしか入って来ない・・・静かに開業したような印象を受けます。
 (週末はもっと混んでいたのかも知れませんが)

 COS(コス)のことをあまりご存じない方のために少しブランド解説をさせていただくと・・・

 ブランド名のCOSはCollection of styleの略。

 2007年にH&Mが既存業態では取り込めない、上質を好む都心生活者のために、

 手の届くラグジュアリー(ハイファッション)あるいはファストファッションの改良版として、

 ロンドンを拠点にして立ち上げた業態です。
 (H&Mはストックホルムにデザインオフィスがありますが、COSはロンドンにあります)

 商品コンセプトは、繊研新聞の記事には

 「素材の質感にこだわったミニマル、クリーン、モードデザイン」

 と紹介されていますが、

 HPには

 「シーズンを越えてコーディネートできる、タイムレスでシンプル、クラシックで新しいワードローブの必需品」

 とも表現されています。

 COS URL  

 ロンドンで初めてCOSの店舗を見た時の印象は・・・
 「ジルサンダーがZARAを手がけたらこんな店になるかも?」と思ったことを思い出します。

 日本での価格帯は・・・ シャツ・ブラウスのプライスポイント(最多価格帯)で8900円あたり、

 日本の著名ブランドと比較すると、セレクトショップの「ビームス」あたりの価格帯でしょうか。

 ネットで各国の価格帯を調べたところ・・・内外価格差はほとんどなく、むしろアメリカより日本が安いようです。

  国   当地価格 円換算
 
 イギリス £ 59    8496円
 フランス € 69    8625円
 日本   \ 8900   8900円
 アメリカ  $ 89   9879円

 欧米アジアに海外出張に行った時には、各地で必要になったアイテムを買い足すのに結構好んでCOSを利用する私ですが・・・

 正直、これまで、日本ではあまり購入する気が起こりませんでした。

 ハイファッションばりのスタイリッシュなデザインからすると、モードの世界ではこなれた値段なのかも知れませんが

 どうしても、このラグジュアリーな店舗のイメージと「店頭の商品ボリューム感(陳列量)」の中で・・・

 財布のひもを緩めるほどの価格の納得感というか、

 「価格のサプライズ」があまり感じられず、品定めに慎重になってしまうからかも知れません。

 ある意味、日本ではこの価格帯であれば他の選択肢が豊富、競合が多いからなのかも知れません。

 店内の他のお客さんの購買行動を観察していても、それを感じることがあります。

 COSのグローバルな出店戦略としては、

 創業10年目で世界35か国に210店舗と、H&Mとは真逆に多国分散型

 むしろZARAの出店戦略に近いかも知れません。

 出店国の上位は

 中国(23香港除く)、イギリス(20)、フランス(20)、ドイツ(18)、アメリカ(13)

 都市で言えば

 ロンドン(11)、パリ(9)、香港(5)、ソウル(5)、北京(4)、上海(4)、ドバイ(4)、

 の順に多いようです。

 日本では今回の銀座が3店舗目、

 東京では南青山(表参道)に続く2店舗目ですが(もう1店舗はマリン&ウォーク横浜にあります)

 東京よりもソウルに店舗が多いってのは、やはりヨーロピアンモード色が強いせいなのでしょうかね。

 今後、日本ではどのように認知度を上げ、拡大するのか興味深いです。

 3年前、2014年の日本上陸時にCOSをブログで取り上げた時のエントリーがあるのでご紹介しましょう。

 COS(コス)は「手の届くラグジュアリー」需要を喚起する引き金となるか?


 ところで、海外ではCOSと比較的同じ立地に出店しているブランドにZARA(インディテックス)グループのマッシモデュッティがありますが、

 Massimo Dutti(マッシモ デュッティ) HP

 こちらの方がトラディショナルテイストなので、日本に上陸したら受けるかも知れませんね。 

 あるいは、COSとマッシモデュッティの両者が日本市場に出揃い・・・

 「手の届くラグジュアリー(ハイファッション)」に対する認知度が高まれば・・・

 そこからがCOSのブレイクスルーが始まるのかも知れません。

 新しいマーケットが認知拡大するためには、何事も比較対象される「お友達」が必要ですからね。

 その時は、いずれも、

 ZARAはちょっとトレンディ過ぎる、H&Mはチープ過ぎると思っている大人に支持されるとともに・・・

 百貨店ブランドの存在価値や品質と価格のバランス(コスパ)があらためて問われることになると思います。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 ベーシックとトレンドファッションの顧客心理、サプライチェーンマネージメントをそれぞれ極めたユニクロとZARAは今後の商品管理のお手本です。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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April 21, 2017

ロコンドのRAOS(リアル・アズ・オンラインストア)計画のチャレンジ~業界のオムニチャネル化の課題

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 ネット通販(EC)での靴の購入のハードルを下げるために「自由に試着できる通販サイト」をコンセプトにしたECモール「ロコンド」で2010年に創業し、その後、

 同通販モールの運営を通じて構築したITと物流のしくみを活用して、ファッション企業のECがらみのバックオフィス業務も支援するロコンド社が、2017年3月に創業以来続いた赤字から黒字化のメドを立てて東証マザーズに上場しました。

 上場後、メディア露出が増えたため、同社の記事を読む機会が多くなりましたが、
 (3月20日付WWDJAPAN、4月13日付繊研新聞、4月21日付日経MJなど)

 同社のビジネスモデルの中でも私が注目しているのは ECモール「ロコンド」の拡大よりも、

 むしろその背景で同社がオムニチャネル化をめざす業界の急所(ウィークポイント)に気づき、力を注いでいる「プラットフォーム事業」の方です。

 同社は「ロコンド」を立ち上げた後に、自社ECをアウトソーシングするブランドや企業のEC運営業務を請け負い、更にEC向け物流をブランドの直営店向け在庫補充へと請負領域を拡大(ロコチョク)して来ました。

 その後、

 地方百貨店などで限られた店頭在庫でもECの豊富な倉庫在庫を活用して販売につなげることができる「ロコチョクD」というサービスに取り組んだり、
 
 ECや直営店向けの物流倉庫の運営を受託したり、

 今後はECのオンラインシステムを実店舗にも活用するサービスに力を入れようとするなど、

 オムニチャネル化を目指す業界において、

 オンライン側からオフラインの実店舗のオペレーションの課題を効率化しようという、

 一見ニッチ(隙間的)ながら、業界の極めて大きな課題を解決するサービスに取り組んでいるように見受けられます。

 おそらく、同社は数々のクライアント先との取り組みの過程で直営店を取り巻く安定稼働を重視した保守的なPOSや基幹システムの環境と、

 一方で、エンドユーザーの購買行動に対応すべくリアルタイム更新が前提で、更なる進化を続けるEC向けウェブシステムの環境の違いに触れ、壁を感じたのでしょう。

 私も日ごろ成長ファッション企業さんの直営店の店頭在庫最適化のための業務を生業にしているため、当然システムや物流などのインフラ整備にも対応していますが、

 最近ECの販売拡大にともなって、実店舗とEC双方の販売機会ロスをなくすための在庫の一元管理化を検討する上で、最もネックになることのひとつが、
 
 日次更新で動いている本部システムとリアルタイム更新で動いているECをどう同期化させるかの問題です。

 従来の本部基幹業務システムに関しては売上はともかく、在庫までをリアルタイムにするのは・・・

 理論的には可能なのですが、システムの安全稼働を考えると負荷も投資もかなり大きくなる。

 一方、ECのウェブシステムは売れたらその都度在庫を引き落とすリアルタイム更新が常識。

 これある意味、

 従来からの企業の業務上の都合 と スマホ経由で取った情報に基づいて行動する進化しつづける消費者が求めていることの壁

 とも言ってもいいかも知れません。

 業務を時代の要請にあわせるならば、いっそのこと、リアルタイム更新が常識のEC(オンライン)の考え方を中心にシステム全体をリニューアルしてしまった方がいいのではないかと思うことがしばしばあります。

 タイトルにあるロコンド社が構想する「RAOS(リアルアズオンラインストア)計画」とはその名の通りECの発想で実店舗も運営しようという発想だと解釈されます。
 
 私は業界の多くの人たちがそうであるように実店舗サイドからECをどう取り込もうかと見ているもののひとりですが、
 
 同社のようにECから事業をスタートした方々にとっては、逆側から見えていて、「そこがヘン(非効率)だよ・・・」と感じていることが少なからずあるはずです。

 そして、冷静にお客様目線で考えると、その逆側からの発想の方が、今、そしてこれからの時代にとっては正解=新常識 だと思えてなりません。

 これから事業を始める方々にとっては、そんな「新常識」を前提にしたしくみから始めた方がよいでしょう。

 一方で、既存のシステムのしがらみがある多くの企業は、どういち早く消費者の購買行動に合わせた「新常識」に乗り換えるかが今後の事業成長の鍵(カギ)になることでしょう。

 そんな問題提起をしているロコンドのチャレンジにとても共感しながら関心を持ちました。

 大きな取り組みはこれからだと思いますが、今後の動向に注目したいと思います。

 関連エントリー-流通段階と仕事の発想、サイクルの違い

 ※これ古いエントリーですが、業務サイクルと仕事の発想に関するお話です。直営店運営は週次、日次ですが、ECはリアルタイム更新が前提。どんどんスピードアップする市場にどうあわせて行くかが課題になりますね。

 【ファッションビジネスを考えるおススメ本】

 有名ファッション専門店の事例を用いて、顧客心理と在庫コントロールの大切さをわかりやすく解説したビジネス読本です。

 『人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識』

   

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