August 03, 2020

ファッション小売業のEC化率はどこまで上がるのか?

ファッション流通の専門家としてメディアインタビューを受ける時に、最近よく聞かれる質問のひとつに、
ファッション商品のEC売上比率はどこまで上がるのか?というものがあります。

先日、ECエバンジェリストのZOEさんこと川添隆さんと一緒に登壇させて頂いた

日経サロンの日経特別講座でも話題になりました。

講座のハイライトをご紹介して頂いた noteはこちら

小売業の最先端で何か起きているのか

経済産業省の統計レポートによれば、
2018年度の衣料服飾雑貨などの国内小売市場全体が
13 兆 6790 億円
なのに対して、うち通販売上は
1 兆 7728 億円とのことで
EC化率は12.9 %になります。

このレポートによれば、衣料服飾雑貨はBtoCの通販、物販分野では食品や家電をおさえて、
最も売上規模が大きいカテゴリーに位置付けられています。

さて、この12.9%が今後、どこまで増えるのか?というのが今回のテーマです。

EC普及国、アメリカやイギリスや中国では20-24%くらいという数字を目にしたことはありますし、

ユニクロのファーストリテイリングは長期的にグローバルで30%(2019年8月期は11.6%)を目指し、
ZARAのインディテックスグループも中期的に25%(2020年1月期は14%)になることを予測しています。

先行国の事例や過去からの延長線上でどれだけ伸びるのか、と考えるアプローチもあるかと思いますが、

既述の日経サロンでも話題にしたのですが、

ひとつの視点として、EC化率がすでにかなり高い水準にある海外企業事例、
イギリスのNEXT(ネクスト)のケースから考察してみるのもありでしょう。

NEXTはファストリの柳井会長がユニクロを立ち上げる時に参考にした海外SPAのひとつ
現在、イギリスではプライマークに続き、2番目に大きなアパレル専門店の老舗で、
このブログでも毎年公表している世界アパレル売上高ランキングでは7位にランクインしている大手です。

関連エントリーーアパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

日本でもスポーツのゼビオ社がフランチャイズ展開していますので店舗を見たことがある方もいらっしゃるかと思います。

同社の世界のEC売上比率(主にイギリス国内)は
2020年1月で49.2%あり、営業利益のEC貢献比率は51.7% もあります。
ファイナンス売上を除いて物販売上だけを分母にすると
EC売上比率は 53.6%と過半を占めています。

そして、このEC売上のうち、クリック&コレクト 
つまり、オンラインで注文した商品を店舗で受け取る比率が
約50%と、半分が店舗で受け取られているのです(同社IRレポートより)。

これは、N1dsc02017 毎日、夜12時までにオンラインで注文した商品が、
イギリス国内に展開する約500店舗の中から

顧客が指定した店舗で
翌日の昼過ぎには、送料無料で受け取れるという

顧客にとって利便性が高く、顧客もNEXTも双方、宅配運賃負担がないサービス環境を整えたゆえに
実現した、高いEC売上比率と店舗受け取り比率の高さに他なりません。

NEXTの場合は、オンライン注文品はすべてがオンライン決済ですので約50%がEC売上比率ということになりますが、
仮にオンラインで受取予約をして、店舗で決済するとすると、
単純計算、EC売上比率は差し引き、25%になるかも知れません。

実は、国内ユニクロもオンライン注文の44%が店舗で受け取られ(2019年8月期)
少し前の数字ですが、ZARAもグローバルで66%が店舗で受け取られているという実績があります。

つまり、オンラインで商品を買うと決めても、オンラインで決済するか、店舗で決済するかで
EC売上比率のカウントのしかたも変わってくるわけです。

目先はEC売上を増やせ、という号令に忠実に
宅配を前提としたEC売上を増やすことに集中してもよいかと思いますが、
中長期的には顧客の利便性、経費負担、国内宅配物流環境などなど、大局的な視点で見直すべきかと思います。

関連エントリーーEC拡大時代に理解しておきたい、実店舗販売とEC販売の損益構造の違い

オンラインショッピングが普及して以来、

顧客は
・オンラインで商品を検討し、
・ショップで商品を確かめ
・ショップまたはオンラインで購入する
・同じものであればオンラインでリピート購入する

という行動が当たりまえになりました。コロナ禍でその購買行動は加速したことでしょう。

そうすると、宅配を前提としたEC化率、あるいはEC売上比率はあくまでも計算上の結果、企業側の論理であり、

宅配売上比率を高めるよりも、

いかにオンラインをフル活用して、顧客の新しい購買行動にストレスのない 
OMO(Online merges with Offline)環境を整えるか、 あるいは

ZARAのインディテックスが10年来ビジョンとして掲げ、あと数年で完成する予定のスローガンを借りれば

Fully integrated store and online platform(店舗オンライン完全統合プラットフォーム)

の環境を実現するか?という議論をすべきではないか、ということになります。

まずは、顧客購買行動を起点にビジョン(未来のショッピングシーン)を描き、
そのゴールに向けて環境を整えることに力を尽くしたいですね。

EC化率は、あくまでも、その結果に過ぎません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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July 20, 2020

EC拡大時代に理解しておきたい、実店舗販売とEC販売の損益構造の違い

コロナ禍の休業でECがほぼ唯一の接点となって以来、
ファッション業界では自社EC強化、再強化への取り組みが加速しています。

先日、
今後、EC、店舗、物流がどう変わるか?というテーマで1ukcc003

在庫管理のクラウドサービスを提供しているロジザードの金澤茂則社長と

小売業のオムニチャネル化の実務経験を持つ
オムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎さんと

公開オンライン対談をさせて頂いた時の要約記事が公開されましたのでご紹介させていただきます。

EC・店舗、物流はどう変わる? どう変える?

筆者は長年、成長専門店の在庫最適化のご支援を生業にして来ましたが、

ここ数年は、クライアント企業さんのECの売上が増えるに従って、
実店舗とEC間の在庫調整のしかたなどのご相談も増え、
この間、感じて来たことを、
これからECを強化する専門店さんの立場でお話しさせて頂いたものです。

EC販売は
店舗家賃という固定費がかからず、
比較的 事業部の一人あたりの生産性が高いため、
店舗販売よりも儲かる、という一般論がある一方で、

売上伸び率は高いが、
実際は店舗よりも利益が出しづらいという企業さんが少なくないのも現実です。

その理由を理解するために、
これからEC売上を拡大、あるいは再強化する前に、
実店舗とECの損益構造(P/L)の違いを十分理解しておく必要があると思っています。

着目したいのは、販売管理費の構成の違いです。

最もウエイトが違う物流費は

店舗販売(倉庫店舗間)に携わっているとあまり気にならないかも知れませんが、

EC(宅配)向けの物流においては店舗物流に対して、
売上対比で倍近くがかかり
単価が安い商品を扱っている企業の場合は
更に倍(店舗物流の4倍)もかかるので経営課題として浮上します。

その理由は
商品取り扱い料(入出庫、梱包費)と
宅配運賃(送料) 
にあります。

物流というものは
歴史的にBtoB(倉庫間店舗間)向けに効率化、最適化されて来たものですが、
BtoC(企業から顧客宅配)はまだまだ途上と言わざるを得ません。

「宅配クライシス」で話題になった

配達員のキャパシティや再配達問題はまだその一部に過ぎません。

店舗販売における販売管理費の中身は固定費が圧倒的に多く、
売上が上れば、固定費分を上回る粗利はそのまま利益にプラスになる、というわかりやすさですが、

EC販売では、固定費部分は少なく(主に社内人件費)、
一方、売上連動型(%)の変動費の他に出荷1件あたりの経費(単価)という変動費があって、
この後者の出荷1件あたりの変動費というか、件数あたりで、単価でかかるコストがネックになります。

要は、

1,000円分の商品を出荷しようが、10,000円分の商品を出荷しようが
同額かかってしまうコストです。

特に宅配運賃(配送料)が大きなウエイトを占めるものです。

それゆえ、安易な「送料無料」は、低価格品を販売する企業にとっては、
極めて気をつけなければならない、損益改善のボトルネックになるわけです。

これらを実感するためには、

総売上高に対する損益計算書(PL)を見ているだけではわかりません。

また、変動費だ、固定費だ、物流費だ、システム費だ・・・というと
混乱して来そうですが、

「出荷1件あたりの」採算(収益構造)モデルをつくると
かかる費用の構造とともに1件あたりコストがつかめ、利益の改善にあたり、課題がどこにあり、どこに切り込めばよいかがわかりやすくなるものです。

実は、そう難しく考えることはありません、
そもそも、小売業に従事するものであれば、
「出荷1件あたりの売上高」は
店舗における「客単価」と同じもの

顧客1件あたりの平均売上と損益の積み上げが小売業の商売の基本と考えれば
理解しやすいものです。

EC拡大局面において、新しい購買行動に対応したECという販売方法が
経費倒れにならないように、是非、商売人として採算感覚を持って進めていただきたいと思います。

以前、WWDジャパンさんに寄稿した関連記事がありますので、ご参考にしていただければと思います。

①下がり続ける出荷単価と上昇する物流費の狭間で格闘するZOZOについて

ファッションECの雄 ZOZOの決算書から学べること

②単価が低くてECが店舗ほど利益を上げられないユニクロについて

EC化率アップだけでは儲からない「ユニクロ」

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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July 13, 2020

一律値下げでは過剰在庫問題は解決しない

2か月以上の外出自粛と商業施設の休業によって過剰在庫を抱えてしまった今年は
在庫をいかに換金することが第一だと思いますが、

この間、結構派手なほぼ全品一律○○%オフやGap50off (2点買ったら○○%OFFも同様)
どの商品にも使えるクーポン割引を見かけたものでした。

顧客も店頭も説明が不要な
わかりやすい値下げ方法が売上を押し上げるのは間違いないのですが・・・

実際のところは、

人気商品ばかりがよく売れてしまって、品薄になり、
本当に消化を促進したい、在庫をたくさん抱える不人気商品があまり減らない、

というのがよくある話です。

そのため、期間中は「よく売れた」と思っても、
期間終了後は店頭やサイトは売れ筋が欠品し
不人気商品の構成が高まり・・・当然、売上不振に陥る。

それを「セール後の反動による買い控え」と指摘する方もいらっしゃいますが、
実際は、せっかく買いに来ても買うものなし、買えるものなし、というのが実態だと思っています。

ですから、手間がかかっても

単品の売れ行きにあわせて、「販売期限」までの販売予測と着地在庫予測を見ながら
個々に値下げ価格やオフ率を決めて動きを確かめる

ことが原則であるのは言うまでもありません。

関連して、緊急事態宣言解除後の店舗再開後の売れ行きに明暗を分けた2つの事例を耳にしました。

あるブランドAは、

4月の時点で、店舗が再開する6月の初旬に店頭に必要な商品とそうでない商品を
仕入担当、在庫運用担当、販売担当三者が議論して分類し、

休業中のEC販売では、
前者は価格設定を慎重に見極め、後者はかなり思い切った値下げを行った。

更に、このブランドは、各担当が打ち合わせをする機会が出来たので、

あたかも、新店(改装)オープン時にそうするように、
再開時に各店の売場の一等地に何を並べて、何を売るべきか
各店の店舗レイアウトを白紙から見直したそうです。

もうひとつのブランドBは、

とにかくトップからの号令で売上・換金ありきで、
休業中のECでは、単品の激しい%OFF値下げはもちろん、クーポン発行、他、考えられる売上アップ策を尽くし
在庫消化を図り、ECは前年比2倍以上の伸び。

店舗再開後は、その時点の手持ちの在庫を店舗規模に応じて各店に配分して
、キャリー在庫も動員しながら店頭を繕ったそうです。

前者Aは店頭もECも前年比100%超えが続き、
後者BはECは100%越えが続くものの、店頭は厳しい状況が続いているとのことでした。

後者のブランドBも総額の在庫消化はある程度果たせたかも知れませんが、
上澄みを取られて、残った在庫の中身はボロボロ、利益を生み出すには程遠いことは想像に難くありません。

さて、夏はまだ長く続きますが・・・
そろそろ9月以降の秋の立ち上がりも考えなければなりませんね。

今年の秋冬は先行き不透明感から、仕入を抑えているところが多いので、
新しい商品を多めに突っ込んでおけば、その中から店舗が何とかしてくれる、
という考え方は今回は通用しそうもありません。

まずは売場やサイトの見え方を関係者としっかり想定して、
品揃えの量、質ともに精度を高めて計画せねばなりませんね。

後者のブランドBのように、過去を引きずるのではなく、

前者のブランドAのように、
新店オープン、あるいはリニューアルオープンのつもりで
まずは、関係者で売場のビジョンを共有し、

必要なものと不要なものを切り分けて、この間リセットして
その時を迎えることができれば、

限られた在庫かも知れませんが、
気持ちの入った売場でお客様をお迎えできるのではないでしょうか?

製・配・販 が 知恵を絞り 
利益を残せるかどうかが問われる再スタートのシーズンになりそうです。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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July 06, 2020

気温に合わせて品ぞろえ計画、在庫運用を考え直す

コロナ渦で
春ものはほぼ販売機会を失い、
夏ものは店舗再開まもなく、来店客数減への不安から早期値下げに入り、
秋・冬ものの仕入れを調整することを余儀なくされ・・・

今年は毎年、話題になる、バーゲンをいつから始めるかの議論や、
季節ごとの品ぞろえの在り方の話どころではなくなりましたが・・・

今後、ある程度在庫消化が進み、アフターコロナのニューノーマルへの再出発に向けて、
あらためて、シーズン(四季)がどうなっているのかを考えるために直近気温データを整理してみましたので
ポイントだけ共有をさせて頂きますね。

業界では古くから、年間12ヶ月を四季で割って、20180821_180506それぞれが3ヶ月ずつあることを前提として品ぞろえを考えて来たものでしたが、

参考:ほぼアパレル小売業の四半期に連動
 秋 9月-11月
 冬 12月-2月
 春 3月-5月
 夏 6月-8月

ここ10年くらいは気温の変化によって必要になったら買う、
体感温度が売上を左右する「実需購買」が主流になったことは
長年多くのクライアント企業さんとご一緒に週次の販売データを見てきて感じることです。

季節ごとの需要を動かす気温条件を経験値から

秋 最低気温が15度を下回る日が続く
冬 最低気温が8度を下回る日が続く
春 最高気温が15度を上回る日が続く
夏 最高気温が25度を上回る日が続く

と定義し、

気象庁のデータから、
過去、3年間の東京の最高気温、最低気温、天気などをダウンロードしてグラフにしてみると
以下のような感じになります。
(上記の季節と気温の定義に違和感のある方は、是非、独自の基準でやってみて下さいね)
 
2017年 秋以降のそれぞれの四季の始まりと顧客の着用期間の仮説

        秋       冬       春      夏
17~18年 10/13~1か月、11/16~3.5か月、2/28~2.5か月、5/14~5か月
18~19年 10/17~1か月、11/20~3カ月、 3/9~2.5か月、5/22~5.5か月
19~20年 10/21~1か月、11/21~3カ月弱、2/11~2.5か月、5/2~ ?(6か月?)           

ここからわかることは

秋は3年連続で10月中旬から約1か月しかない、少しずつ始まりが遅くなっている
冬は3年前の3.5か月から徐々に短くなり、昨冬はとうとう3カ月に満たなかった
春は3年連続で2.5か月はある、早く始まれば、早めに夏に移行するため、春が長引くことはない
そして
冬が圧縮された分、夏が3年前の5か月からまもなく6か月になろうとしている

上記は東京に限ったたった過去3年間のデータではありますが、
ここにも、地球温暖化による「暖冬」と「残暑」の証が見て取れます。

さて、それがわかったら・・・
天気を後ろ向きな、業績が悪かった「言い訳」に使うのではなく、
それを前提に対応するための前向きな仮説に使いたいところですね。

上記データからの「問いかけ」としては、

Q1 例年1か月しかない、秋。それでも、またがっつり計画を組みますか?
Q2 毎年少しづつ短くなる冬に、それでもまだまだ大きな期待を続けますか?
  ①売れたら儲かるかも知れない博打が後遺症にならないように、
  いかに上手に手じまいすることを考えますか?
  ②あるいは来年もまた売れるものなら在庫を持っても安全ですか?
Q3 春は毎年、売れ残りと売り逃しを繰り返している感がありますが、
  2か月は販売チャンスがありますね。但し、スタート時期が不安定。
  どう夏につなぎますか?
Q4 5か月を超える長い夏対策をあらためてどう考えますか?

などなど

Q1~Q3は割り切りの話、
一番の問題はQ4 でしょうか?

業界では季節をサブシーズンに細分化し、初夏、盛夏、晩夏、初秋などと運用しているところも少なくありませんが、
いくらわけても、ネックは「7月はバーゲン」の常識だとすると・・・

バーゲン前が2か月、バーゲン期が1か月、そしてバーゲン後に2か月も夏気温が続き日々があるということですね。
特にバーゲン後が考えどころです。

また、その間の天気も見過ごせません。

年間降雨日数は年間の1/3近い100日~110日あり、
そのうち毎年、その半分の55日が梅雨を含む夏にあるということも考慮しなければなりません。

変化はチャンスと言いますが・・・

過去の常識にとらわれず、顧客の新しい需要、購買行動にあわせて品揃え計画を一から考え直す

足元のEC強化も大切ですが、行く行くは品揃えと売り切りの在り方に返ってくる話です。

ある意味、「リセット」の機会である今を
よい機会ととらえるか、引き続き過去の成功体験にすがるかで
夜が明けた時の風景も変わって来そうです。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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June 29, 2020

この夏のバーゲン期にニューノーマルを考えよう

緊急事態宣言が解けてから1か月

6月の第2週くらいに西東京の駅ビルをいくつか覗く機会があった時、

赤いPOPを多用して思い切った春物の処分に売場を割いているショップもあれば、

これから着ることができる正価商品を前面に打ち出し、
後方で赤、黄色以外のスペシャルプライスPOPを使って春や初夏の値下げ販売をしているショップもあり、

各ブランドそれぞれの事情がある、それが店頭に表れているのが普通の姿
だよね、と思ったのを思い出しました。

毎年、夏のバーゲンの時期は館(商業施設)ごとのスタート時期が話題になりますが、Dsc02059

今年は

混雑を避けるために、商業施設としてセール期間を設けず
7月の1ヶ月は売り方をテナントに任せるという駅ビル

ブランド(テナント)の在庫消化協力のために、
バーゲンを大々的に告知するという百貨店

などなど                                              

考え方はいろいろですが、館(商業施設)の事情ではない、
お客様の安全と入居テナントの在庫事情を鑑みているという点では共通しているようです。

(画像はロンドンオックスフォードストリート2019夏)

筆者は

適品を
気温にあわせて(適時)、
値下げを前提にしない顧客が求めるプライス(適価)で店頭提案する

不人気商品は早期に消化を図って換金(ECでもよし)、売場から一掃し、
できるだけ早く人気商品、新しい商品に入れ換え店頭鮮度を高める
正価のままで売り切り可能な人気商品はバーゲンになっても値下げしない

のが正常で

イベントとしてのバーゲン期間はあってもよいですが、

そんな時にも前面はセール品でも、奥には今からしばらく着ることができるサイズの揃った新作がある

バーゲン以外のいわゆるプロパー期も
旬な新作が前面を飾り、(売場面積に寄りますが)奥には処分コーナーもある

という状態が普通でよいのではないかと思っています。

まあ、百貨店はプロパー期とバーゲン期で掛け率が違うので同じ時期に混在すると面倒なのかも知れませんが、
そんな事情がなければ、

いつ行っても、店頭にいろんなショッピングの楽しみ方があるのがお客様にとっても
ブランド側にとっても自然体かなと思えてなりません。

特に地球温暖化の影響もあって、年間5か月もある夏シーズン(最高気温25度以上の日々)の在り方は
しっかり考え直さなければますます利益が出なくなることに危機感を感じます。

この夏のバーゲンやセールの在り方がイレギュラーではなく
顧客側もブランド側もWINWINとなる
あるべき姿(ニューノーマル)を考える機会になればいいなと思う今日この頃です。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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【参考書籍】

2013年の本ですが、長年の顧客購買行動分析と在庫コントロールの経験とノウハウを有名企業事例を用いてわかりやすくまとめました書籍です。

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June 15, 2020

インディテックスグループ(ZARA)既存店の大量スクラップ&ビルドによりEC連動型店舗へのモデルチェンジを加速

6月10日に発表されたZARAのインディテックスグループの2020年度第1四半期決算に目を通しました。
4cimg0441_20200615133601 日経新聞や繊研新聞などの一部の報道では
コロナショックによる店舗休業によるダメージが甚大で売上高前年比45%の減収により、営業利益は大幅減益となり、四半期赤字に転落したと共に

グループ全体で現在世界に7412ある店舗を2022年までに1200店舗閉鎖することが強調され、

この3カ月間で5割伸ばしたECを強化する(現在の年間EC売上比率14%から25%へ)、さすがの世界一のアパレル企業も新型コロナによってデジタルシフトが迫られた、というような論調で書かれていますが・・・

 

それらに抜け落ちている大事な視点を補足をさせて頂くと、

実際は 
・これら1200店舗が役目を終えたZARA以外のブランドの小型店が中心であり、
・閉店の一方で並行して450店舗のEC連動型の大型店を新規出店することで、
結果、
・店舗は全体で600店舗くらい減るものの、売場面積は逆に毎年2.5%増え、既存店売上も4~6%伸ばす計画であること

が同社のオリジナルプレスリリースを読むとわかります。

ですから、同社の場合は、業績不振のアメリカのチェーン店とは違って、閉店数が多いことだけを取り上げて「ヤバいのか?」

悲観することではなく、より健全な状態に向かっていると見るべきでしょう。

これらの施策は、メディアが言うようなコロナショックがあったからの急展開ではなく、もともと同社が2012年あたりから始め、ここ3年で加速していたいわゆるオムニチャネル(OMO)施策の総仕上げに過ぎないんですよね。
同社ではこれを fully integrated store and online platform と呼びます。

実際、過去6年間に
1729店舗を閉店して、
1106店舗を増床し、
2556店舗を改装し、
3671店舗を新規出店しています。

その間は店舗数も売場面積も純増でしたが、
これからは、店舗数は純減も、売場面積の純増は維持し、
よりECを店舗と連動させ、

同社が以前から描いていた
「新しい顧客購買行動のビジョン」に投資を続ける
というだけの話なんです。

今回の赤字には閉店予定店舗の減価償却の積み増しも多く含まれています。
(前期は売上が落ちることを見越して、在庫引当金=評価損の原資を計上しました)

また、大量閉店と言うと、雇用はどうするんだ?という意見もあると思いますが、同社はEC対応する大型店のEC対応要因として受け皿を用意していると言い、雇用に対する配慮も欠かせません。

危機に背中を押されるのではなく、
まずは未来の顧客像やビジネスのビジョンを描き、
顧客は進化して行くにも関わらず、自分たちが変わらないことへの危機感に対し
行動を続けているのがインディテックスグループの姿です。

彼らが今、何を考えているのかを常にウォッチしていれば、
規模にかかわらず、我々も活用できる未来へのヒントが得られます。
なぜなら、彼らが長年観ているのは、競合ではなく、「顧客だけ」ですから。

まだまだその背中から学ぶことはたくさんありそうです。

関連エントリー‐世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

いつもお読み頂きありがとうございます。


 

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June 08, 2020

ファッション小売業の在庫は在庫日数(週数)で考えよう~H&Mの中長期時系列分析から

WWDジャパンさんの月イチ連載20200608_144754中 上場企業の決算書からビジネスの視点を学ぶ「ファッション業界のミカタ」が2年目に入りました。先月の5月11号と今週の6月8日号は
2回に分けてH&Mの①大量出店による成長の課題と②年々重くなる在庫問題について
レポートさせて頂きました。

企業の業績をよくありがちな前年比だけで見るのではなく、
中長期の数字を時系列に並べて・・・見つけた課題を深堀するのが
筆者が採るアプローチですが、

H&Mの日本上陸後、2009年以降の4半期の業績を並べてみて、気が付いたことをまとめてみました。

まず、同社の営業利益のピークは2015年11月期です。

その後、出店による売上増は続くものの・・・

残念ながら営業利益は一度もピークを超えることが出来ていません。

直近の2019年11月期は前年比、増収増益ながら、
ピークの2015年11月期対比 店舗数は129% 売上高は128% 営業利益は64%、
10年前対比でみると、    店舗数は255%、売上高は229%、営業利益は80%
という状況です。

要は、規模は肥大しているのに、販売効率が下がって儲からなくなっているという、チェーンストア拡大のジレンマです。

これは筆者の持論ですが、営業利益高のピークアウトはその企業や業態が成長期を終え、成熟期に入った時期と考えられ、
従って、あそこが営業利益のピークアウトだったのかも、と2年連続で減益を実感したら、

何か次の手を打たなければ、衰退期を待つだけ、ということになると思っています。

その頃(2016~2017年)、H&Mがどういう状況だったかというと、ZARAのインディテックスとの世界シェアトップ争いの真っただ中で、
H&Mは出店余地の大きい、世界の2大大国であるアメリカと中国で店舗数と売上高を積み上げていましたが、
中国では大量出店して店舗数を増やしても・・・販売効率(1店舗あたり売上高)は下がる一方、それでも、出店を続けていたのでした。

一方のインディテックスは・・・店舗のスクラップ&ビルト、店舗数拡大よりも店舗の大型化(売場面積拡大)に力を入れ、
ECへの集中投資を進めていたのですね。

両者の明暗は、過去3年間の業績の通りです。

次に、今月号では、H&Mの在庫状況に着目しました。

H&Mは11月決算で、冬物をたんまり持っている時期なので、冬が終わって在庫が軽くなる1月決算や2月決算の会社と期末の在庫回転率を比較するのはフェアではない、と長年思っています。

あと、小売業の実務に携わるものとして、会計期末だけで計算する在庫回転率にはいつも違和感を持っています。
正直、期末だけ在庫を絞れば回転率は高回転に演出できますからね。銀行や投資家には高効率の会社という印象を持ってもらえます。

従って、今回はH&Mの四半期ごとの期末の在庫日数の推移で評価をしてみました。

それから、在庫日数の計算式って、通常は 

在庫日数=期末在庫原価÷過去の期間中1日あたりの平均売上原価

で計算される方が多いと思いますが、

ファッションビジネス、特にアパレルビジネスにおいては、期末在庫ってものは、これから迎える月あるいは四半期に売るシーズン在庫をどれだけ持っているのかが大事なことなので、筆者は期末在庫を翌四半期(あるいは月)の1日あたりの売上原価で割るアプローチを取ります。

(筆者流)在庫日数=期末在庫原価÷翌四半期の1日あたりの売上原価

※実務レベルで試してみたい方は翌月または翌四半期の予算ベースの売上原価で割ってみて下さい。

以上の前提でH&Mの四半期ごとの在庫日数を時系列に眺めてみると、

やはり、健全なのは、2014年から2015年にかけてです。実際に、90日台で在庫が回っています。

日本企業のように商社を介さず、直貿のH&Mからすれば、Ex-Factorベースの在庫なら90日台なら上等でしょう。インディテックスもそんなもんです。

ところが、その後、じわりじわりと在庫は重くなり、2017年には130日台に膨らみ、
最悪だったのは2019年11月期1Q(冬の終わり)の142日、
2019年11月期末(冬真っただ中)には何とか、128日まで落とすことができたという状態です。

でも、まだ、業績がよかった時に比べても1.35倍くらい抱えているのです。

ユニクロや無印良品のようなベーシックならまだしも、
高速で在庫を回したいトレンドファッション系のH&Mが130日台=4か月以上分の在庫を常に抱えながら商売をしているのって結構リスク大きいと思いますね。

これは、H&Mのグローバル低価格競争上の問題にあると思っています。

好調だった2015年ころまでは、店頭で見ても結構、中国製やトルコ製でデザイン性の高い商品を作って高速回転させていた印象だったのですが、今は、各国での価格競争上、店頭商品は圧倒的にバングラディッシュやカンボジアあたりが増えましたよね。

これらの原産国は比較的ベーシックなものに強味があり、また発注から仕上がり、そして、東南アジア、西南アジアからは欧米への輸送に時間がかかりますから、
例えコスト的には競争力があっても、必然的にファストファッションにとっては在庫リスクが高くなる、
長いリードタイムと在庫日数の長期化という課題と向き合わなければならなくなるのです。

これは実は他人事ではなく、安い人件費を求めて産地を遠く、遠くに持って行っている日本のファッション流通企業も気をつけなければならない課題ではないでしょうか?

さて、社長が代わられて、

これから効率を落としての大量出店の見直し、ファッションストアとしての在庫の適正化の問題

の改革を進めるH&M社。

製品のサステイナブル性ももちろん大事ですが・・・サステイナブルな経営のためにどんな舵取りをするのか?
21世紀、世界の「ファッションの民主化」を旗手として、一時代をつくった同社のリ・ブランディングを見守ることと致しましょう。

  執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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May 25, 2020

世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

4cimg0441 世界の大手アパレル専門店各社の2019年度の売上高や利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高のランキングTOP10を共有させていただきます。
 円建て比較にあたり、為替レートは2020年1月末の €=120.3円、スウェーデンクローナ=11.32円、US$=109.06円、英国£=142.87円で換算しています。 

 尚、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライスストア、また、昨年まで1年遅れの売上高で掲載していた欧州の非公開大手アパレルチェーンC&Aの売上高が掴めませんでしたので、今回から除外しております。

(右の画像は2014年9月訪問時のインディテックスグループ本社正門)

順位 社名 本社;決算期 売上高 前年増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2020.1期) 3兆4028億円 +8% 5740億円 16.9% 7,469 ZARA
2位 H&M (瑞;2019.11期) 2兆6347億円 +11% 1963億円 7.5% 5,076 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2019.8期) 2兆2905億円 +8% 2576億円 11.2% 3,589 UNIQLO
4位 GAP (米;2020.1期) 1兆7867億円 -1% 626億円 3.5% 3,919 OLD NAVY
5位 Lブランズ (米;2020.1期) 1兆4084億円 -2% 281億円 2.0% 2,920 Victoria's Secret
6位 プライマーク (愛;2019.9期) 1兆1132億円 +4% 1304億円 11.7% 373 Primark
7位 ネクスト (英;2020.1期) 6230億円 +3% 1102億円 17.7% 498 NEXT
8位 アセナリテール (米;2019.7期) 5990億円 -16% -742億円 赤字 3,445 Ann Taylor,Justice
9位 しまむら (日;2020.2期) 5219億円 -4% 229億円 4.4% 2,214 しまむら
10位 アメリカンイーグル (米;2020.1期) 4698億円 +7% 254億円 5.4% 1,095 AEO

                                  

以下、ランキングは昨年と大きく変わりはありませんが、1位から5位及び気になるところにコメントさせて頂きますね。

1位のインディテックスは

安定の増収、二けた増益を達成しました。
約65%の売上シェアを占めるZARAの店舗の世界的なスクラップ&ビルドと世界202か国に販売できるオムニチャネルのプラットフォームは整い、2019年度はこれから数年間の飛躍が見込まれるであろう時期の初年度でしたが、あいにく期末に発生した新型コロナショックの拡大とそれによって見込まれる店舗休業、売上減、過剰在庫増に対応して、2019年度に稼いだ利益から在庫評価損を338億円計上しました。これだけの評価損を計上しても、10%を超える利益を上げるのは同社の収益力から来る余裕に他なりません。

2位のH&Mは

屈辱的な3年連続の減益後、二けた増収増益で歯止めをかけました。しかし、その前年増益の営業利益高も、売上高が半分だった10年前の水準にも及ばず、という状態です。2015年くらいを期に、グローバルでも成熟期に入ってしまったと思われるH&M。
新社長(女性)に変わって、これから、ようやく店舗のスクラップ&ビルドとEC強化が進むことになりそうですが、
欧州と中国の苦戦にどう対処するのか、課題は山積みのようです。

3位のファストリは

3年連続の増収増益を好調の中国事業とGUの復活で成し遂げました。
成熟市場のユニクロ国内事業の既存店は辛くも微増、国内の成長はEC次第となります。

4位のGAPは

減収減益、GAPとバナリパのリストラが続きます。
オールドネイビーの分社化を中止し、オールドネイビー出身の女性新社長に今後を委ねます。
リストラ中に関わらず店舗が増えたのは、オールドネイビーの出店と買収したJanie & Jack(キッズ)の店舗が増えたためです。

5位のLブランズは

ヴィクトリアズシークレット(VS)のリストラと事業売却失敗もあり、減収大幅減益です。
売上の6割を占めるVSは既存店-7%で事業赤字。
一方、ヘルス&ビューティのバス&ボディワークス(BBW)は既存店+10%増、営業利益率23%と絶好調。
今後、BBWの分社化を計画しているようです。

以下、めぼしいところを付け加えますと、

6位のプライマークは

増収増益維持も既存店売上は2年連続の減収中と、規模は拡大中も、陰りが見られます。
ドイツが不調、南欧はまずまずの模様。
店舗の増床、減床を行いながら個店の収益体制を整え、ライフスタイル部門の拡充に力を入れています。ちなみに同社はSNSは活用するが、ECはやらないと宣言しています。

7位のネクストは

採算のよい店舗は増床しながら、店舗を減らし、既存店(店舗)売上は‐5.7%も、ECの12%増が寄与して増収増益。
全体の売上に占めるEC比率はほぼ50%となり、営業利益に関してはECの構成比は52%に。
店舗をスクラップ&ビルドをしながら、ECの利便性を強化するとともに、オンライン注文の店舗受け取りであるクリック&コレクト比率は50%を誇ります。
ECと店舗を活かし、他社の商品も運ぶ、自社インフラを生かした物流プラットフォーム化への取り組みに力を入れている段階です。

今回も、ランキングを作成するにあたって目を通させて頂いた、各社の決算書から学ぶべきことは、
インディテックスとNEXTのように、

顧客購買行動の大転換の時代に・・・

出店だけに頼る成長ではなく、

いかに、既存店をスクラップ&ビルドで、
儲かる店舗、役目を果たせる店舗として残すか?
そして、ECと店舗を融合させ、いかに、
店舗を持っている強味を発揮できるか?

更に、構築したオンラインとオフライン(店舗)、そして物流網を・・・
いかに、更なる顧客購買行動の変化を先取りして、利便性の高いプラットフォームとして磨き上げるか?
ということでしょう。

ユニクロも、しまむらも店舗網を持ち、物流をコントロールできる「プラットフォーマー」としてのビジョンを描くごとができれば、
まだまだ国内での伸び代はありそうです。

さて、来年の2020年度のランキングですが・・・アメリカの大手アパレルチェーンはアメリカンイーグルを除いて、業態の成熟期~衰退期という局面とアマゾン・エフェクトもあり、不振業態の整理(バイアウト)、既存店スクラップの嵐です。
そこに2月以降の世界的なコロナショックがのしかかります。
来年は、ランキングが大きく変わることが予想されます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

いつもお読み頂きありがとうございます。


 

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May 19, 2020

ワークマンのビジネスモデルと財務体質の強さ(2020年3月期決算から)

先日、現代ビジネスonlineに寄稿させて頂いた、作業服、作業関連用品チェーン、ワークマンの最新決算(2020年3月期)を反映した記事をご紹介させていただきます。

コロナ禍「アパレル壊滅」の中、ワークマンが一人勝ち「真の理由」~強みは商品開発力だけではなかった

とかく注目される機能性商品やコスパと言った商品軸ではなく、それらのコスパを支えるビジネスモデルや財務体質にフォーカスしました。

持続可能なフランチャイズ(FC)ビジネス、20200515_210147

FCによる人件費の変動費化と物件取得による家賃負担はほぼなしというローコストオペレーションによる低粗利率ながらも高い営業利益率、

生み出された利益を未来への投資に向けるキャッシュフロー経営、

そして、

販売管理費の22カ月分もあるフリーキャッシュフロー(手元資金)を持つ財務体質の強さなどを取り上げました。

 

今、流通企業経営で最も関心が高いのが事業継続のための手元資金でしょう。

記事の最後から2ページ目では、大手上場企業のフリーキャッシュフローの比較をしてみました。

直近決算(通期、四半期)の
キャッシュフロー計算書のフリーキャッシュフロー÷損益計算書の1か月あたり平均販売管理費
を計算したもの。

その中でもワークマンは断トツに「有事耐久性」抜群ですね。

休業が続く、コロナ後の企業活動の中で、フリーキャッシュフローの確保と販売管理費の見直しは業界最大関心事のひとつになることでしょう。

同社のビジネスモデルの早わかり版です。よろしければご一読を。

  執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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May 18, 2020

百貨店アパレル大手、レナウンが民事再生法を申請

東証一部上場の老舗アパレル企業、レナウンが15日に民事再生法を申請し、
そのニュースは、週末から、業界のみならず、経済界を駆け巡りました。

厳密に言うと、同社自身ではなく、債権を持つ、子会社が申請したことや、
中国の親会社の役員による不服申し立ての可能性もあり、
民事再生法適用、スポンサー探しにあたっても、複雑な事情があることが日経新聞に詳しく書かれています。

レナウン経営破綻 社長「不在」、四半世紀の悲劇

かつて、ベストセラーになったビジネス本「誰がアパレルを殺すのか」の主旨は、

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①百貨店アパレルのライセンスビジネス依存と

②商慣習である委託販売(その後、消化仕入)によって、在庫所有権者自身(アパレル)が在庫および損益をコントロールしづらい構造が

90年代以降、百貨店および百貨店アパレルを時代遅れにし、ダメにした、とブログ筆者は読み取りましたが・・・

そのビジネスモデルによって日本一のアパレル企業であった、という過去の成功体験が強すぎて、
最もそこから抜け出せなかったメーカーの一つがレナウン社だったのではないか?と思います。

拙著「アパレル・サバイバル」(2019年2月)でも述べましたが、

90年以降、ファッションビジネスのカギとなる現場は

バイヤーと営業の商談の場(百貨店、量販店時代)から

2000年代には直営店の店頭(SPA、ファストファッション時代)へと移り、

今や、顧客のスマホの中(デジタルシフトの時代)にある

というように、10年単位で顧客行動とビジネスモデルを見直さなければならなかった、
ファッション流通市場が変貌した今となっては、再生はそう簡単ではないでしょう。

ファッション流通のジャーナリストである松下久美さんが今回の報道を受けて書かれている記事

民事再生法を申請したレナウン、30年間のリストラの歴史と、4つのタラレバを考える

の中でブログ筆者が一番、痛かったと思うのは、

最終的には400億円を投じたという、そもそも高額過ぎたアクアスキュータムの買収判断と、それを活かせなかったことですが

当ブログの過去(2013年)にアクセスをたくさん頂いた投稿

世界市場を勝ち抜くには布帛(ふはく)が重要

の中で、

多くのアパレルメーカーさんと80年代から90年代にかけてものづくりのお手伝いをさせて頂いた経験から述べさせて頂いたように、

同じアパレルメーカーと言っても、どんな品種、製造方法、採算の採り方が企業体質の根底にあるのか? 

そんな出自の違い、しみついたDNAもビジネススタイル、財務体質、企業の耐久性に表れるものだと思っています。

コロナショックは、あくまでも弾きがねのひとつに過ぎず・・・

これから、いままで溜まっていたもの、そして、いずれは下さなければならなかったさまざまな結論に覚悟して向かい合うことを各社に迫る時代の幕開けに過ぎないように思います。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

次のステージに向けての在庫最適化と人財育成を切り口にした業務再構築支援~ZOOMを使ったオンラインアドバイザーサービスも実施中。詳しくはこちら

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