November 23, 2020

島精機が進める商品企画のデジタルトランスフォーメーション、ヤーンバンク

Shima-seiki-211月23日の日経MJにニット編み機大手の島精機が9月に始めた「ヤーンバンク」に関する記事が掲載されていました。

記事によれば、このサイトに糸メーカーが販売するセーターおよびニットアイテム用の糸の情報を登録しておき、ユーザーであるアパレルメーカーのニットアイテムの企画者は、オンライン上で探している糸を検索、絞り込みの上、登録情報が閲覧出来、パソコン上でバーチャルでデザイン中の商品企画に置換えたり、サンプル作成シミュレーションをしたり、気に入った糸があれば、メーカーに糸見本の取り寄せの連絡ができるというマッチングサイトのしくみです。

糸メーカーは無駄になるかも知れないことをわかっていながら、営業用に現物サンプル台帳を大量につくらなくてもよいですし、ユーザー側はわざわざ複数メーカーの大量のサンプル台帳にひと通り目を通さなくても、探している糸に効率よくたどり着けるメリットがあるようです。

10月中旬段階で日本、中国など31社の糸メーカーが参加した、とのことです

(参考:国際展示会に出展する糸メーカーは150~200社あるとのこと)

この「ヤーンバンク」の取り組みは、商品企画の効率化、営業の効率化が図れ、時間や資材の無駄が減る、今後のサービスの広がりへの期待を込めて、ファッション商品生産のデジタル化の良い取り組みだな、と思いました。

その昔、筆者がアパレル生産にたずわわっていたころは、布帛(織物)からニットまで、たくさんの生地や糸のサンプル台帳に囲まれていたのを思い出します。素材メーカーの営業の方々がスーツケース2つくらい持って営業に回っていた姿も思い出されます。

シーズンが終わって、何年か経って、倉庫整理の時に、上司から処分しろ、と言われて・・・頂いた台帳も、とても綺麗な台帳もあるので、もったいないな、と思ったものでした。

話を元に戻して・・・

将来的には、アパレルメーカーのデザイナーさんやマーチャンダイザーさんたちが、バーチャルでサンプルを確認した上で、クラウドでプログラミングが行われ、産地でそのままサンプル作成までしていただけると、いろいろと話が早いことも多いのではないかと思いました。そこまでできれば、量産しなくても、オンライン注文のオーダー生産も出来てしまうかも知れませんね。(以上、勝手な妄想)

記事には、「糸の世界初のプラットフォームになる」、とあります。

布帛(織物)の生地の世界では、すでに台湾を拠点にした、世界の生地メーカーと世界の商品企画者をオンラインで結びつける、こんなクラウドサービスを提供している会社もあるようです。

https://frontier.cool/

商品企画開発の現場にも、3D CAD含め、IT企業のソリューションが入り込んで来ているのをよく耳にします。

ものづくりには、人が確認しなければいけない、アナログの部分も欠かせませんが・・・

確かにデジタルに置き換えれば省ける部分もたくさんあるので、効率がよく、無駄のない、そして、無駄な在庫をつくらない取り組みが業界の中で進むことを楽しみにしています。

いつもお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題ですね。実はZARAも以前からベーシックが稼ぎ頭。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

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November 16, 2020

着回しの利く、究極の定番を磨け

Hermes-margielaa

先週、11月11日の日経MJ の1面、「仕事着はもう買わない」という見出しに目が止まりました。

20ー30代の80人を対象にコロナショック前後で働く女性の服の消費がどう変わったかを調査した特集記事でした。

アパレル市場の中で、働く女性の服の市場は最も大きな市場のひとつ

購入単価と購買頻度がその他の客層よりも圧倒的に高めなマーケットであることは言うまでもありません。

記事の内容は、80人という限られた対象者の調査かも知れませんが、コロナビフォア・アフターの購買行動の変化の傾向はある程度浮き彫りになっているのではないかと思いました。

・商談がなければ上着はジャケットからカーディガンへ
・通勤が減れば、オフィス服の必要枚数は減る
・駅ビル中心にお買い物していた人がネットに移行して、その安さにびっくり
・巣籠もり間の断捨離でZARAのようなファストファッション系の着なくなった服を捨てて、ユニクロを買うようになった

・定番を買うようになった

一方で、

・1着あたりの価格はむしろ高くなった、という傾向もあるようです。

そして、興味深いのは、

オフィス着への支出を減らした人も、
頻度は減っても1着あたりの支出を増やした人も

1万円弱ぐらいの価格は避けるようになったのが共通点とのこと。

1万円と言えば、駅ビルのセレクトショップ系のプライスポイント。

オフィスでそつなく、小奇麗に着ることができる服の価格帯の商品群が弱くなっているのは、市況にも通じるところがあります。

そこから

ユニクロのような割安な定番や
長く着ることができる上質の逸品

といった2つの需要へ向かっている、と読み取れます。

さて、そんな傾向があぶり出されて
提供する側のファッション企業さんは、今後、どんな対応をされますか?

まず、過去に固執するより
顧客の今、それから今後の体験や生活シーンを想像する想像力が大切でしょう。

定番ベーシック志向となれば、
もちろん、ユニクロが益々強くなることが想像できますが・・・

ユニクロが全体の主役になることはない、でしょう。

ユニクロ自身もそうなろうとはしていないでしょう。
むしろ、以前から、存在感のある、「究極の脇役」になることを目指している、と思います。

(ひとりごと:今回11年ぶりに発売した+Jは、その中でも主役級かも知れませんが・・・)
 

そんな中で、これからのファッションブランド、ストアブランドの役割とは?

例えば、長く、愛着してもらえる、ブランドらしい、究極の着まわし服の開発に力を入れてみたらどうか?

おそらく、そのアイテム候補は、既にブランドの中で強みとしているアイテム群の中にあるのではないか?と思います。

そんな核となるアイテムにフォーカスして、毎年クオリティを磨きながら、・・・

それらを活かしながら、そのシーズンらしい、新しい買い足し、買い替えを提案を行う。

それが、今回の記事を読んでの筆者の感想です。

いつもお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題ですね。実はZARAも以前からベーシックが稼ぎ頭。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

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October 26, 2020

米投資ファンドのABG、ブランド再建・再生のエコシステム

Forever2110月24日の日経新聞にブルックスブラザーズ、バーニーズニューヨーク、フォーエバー21など、経営破綻をした著名アパレルを次々に買収して、再建することで成長しているオーセンティックブランズグループ(ABG)の創業者のインタビュー記事が掲載されており、興味深く読ませていただきました。

記事に掲載されていた、同社がこれまで買収したブランドを挙げると

プリンス(2012)、ジューシークチュール(2013)、ジョーンズニューヨーク(2015)エアロポステール(2016)ノーティカ、ナインウエスト(2018)バーニーズニューヨーク(2019)、フォーエバー21、ラッキーブランド、ブルックスブラザーズ(2020)など

サイトを見ると、同社が現在抱えるブランドは計50ブランドあるようで、上記以外に日本でもおなじみなのは、AIR WALK、VISON、VOLCOMあたりでしょうか。(右上の画像はシアトルダウンタウンのフォーエバー21)

傘下企業の年商は1兆円を超える、米国最大級の投資ファンド、ブラックロックらの資金に支えられたファッションビジネス専門の投資ファンドです。

https://www.authenticbrandsgroup.com/

創業者でCEOのジェイミー・ソルター氏はカナダ出身で、マーケティング畑に強く、スノーボードブランドのRIDEの創業者の一人、その後、スポーツ系ブランドのベンチャー向け投資会社に携わり、2010年ABG社の創業に至った人物(Wikipediaより)

同社は、国際的な知名度を持ったブランドながら、ブランド力のなさ、商品力の弱さでもない、負債などの財務上の問題で破綻したブランドを買収し、再建することを生業として、

主に、不採算店を閉め、リブランディング(若返りなど)を行い、更に、知名度を利用したライセンススキーム(ブランド使用権のライセンス収入)を行う、など、これまでそれぞれが構築して来た「ブランドの価値」を最大限に活かすことを得意としているようです。

アメリカはとかくチャンスとあれば、ビジネスを急拡大し、更に、経営者が代われば、気がつけば企業肥大、オーバーストア、なんて話がたくさんありますからね。

特に小売業は日本も含め、古今東西で、採算や人材育成のスピードを度返しした、ダボハゼ的な過剰出店が自滅的経営破綻にいたるのが破綻の最大の要因です。

昨今も、アマゾンエフェクトによるショッピングのオンラインシフトやコロナショックはあくまでも、きっかけであって、多くの米国小売チェーンの経営破綻の本当の理由は・・・販売効率の悪い店の過剰出店投資と積みあがった不採算店舗の山による資金ショートだと思っています。

そうなってしまったら、仕方ないので、まずは資金繰りに切りをつけて、リストラして、身軽にし、リブランディングできれば良し、できない場合はライセンスブランドとして生き残る。

もっとも、ライセンスしか選択肢がなくなったブランドは、最もお金になるであろう量販系にライセンスされることが多いと思いますが・・・

これから世界的に拡大の余地があるアパレル市場は、世界の人口動態からしても、低価格マーケットですから・・・破綻した、かの著名ブランドの知名度も、最終的には量販系マーケットでの需要に活かされることになる、というわけですね。

経済が右肩上がりの成長期はブランドの立ち上げラッシュ、

一方、マーケットも成熟期に入れば、ブランド破綻のままでは、もったいない、各ブランドのライフサイクルの最後にライセンスという出口を用意する必要が増えてくるでしょうね。

ブランドライフサイクルの中で、一旦役目を終えたブランドも知名度さえあれば、ライセンスブランドとして再利用というエコシステムがファッションマーケットにあってもよい。

ABG社の記事を読んでいて、これからの時代、そんなブランド再建、再生のありかたをビジネスにする企業の必要性を感じたものでした。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】

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ディストリビューションから販売計画実行を見直す
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を11月19日にオンライン開催します。

これから事業部で本格的に在庫コントロールに取り組みたい、
再構築したい、組織と役割を見直したいという企業さん向けの内容です。

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人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

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October 19, 2020

Circular Economy サーキュラーエコノミー(循環型経済):ZARAのインディテックス社のこれから10年の経営テーマ

Photo_20201019195601サステナビリティ(持続可能性)やサステイナブル経営という言葉が全産業のテーマになり、メディアでそのキーワードを見かけない日はないくらいですが・・・

何をもってサステナブルなのかが今一つしっくりこない方も少なくないと思います。環境のために、社会のために、企業統治をしっかり、と言っても、企業の本業と直接結びつかない、ピンとこない取り組みが多いように筆者も感じています。

そんな中、ZARAを展開するインディテックス社のアニュアルレポートを読んでいて、腹落ちしたことがあったので、ご紹介したいと思います。

同社は2005年、パブロ・イスラ現CEOがナンバー2になったくらいからSustainabilityという言葉を使っていますが・・・

近年、そのサステイナブル経営の中核に置いているテーマのひとつに、Circular Economy(サーキュラーエコノミー)という言葉があります。和訳すると「循環型経済」となりますでしょうか?

このサーキュラーエコノミーについて理解する上で、

従来のリニア・エコノミー、一部の企業で取り組みが始まったリユース・エコノミー、そして、その先にある理想の状態であるサーキュラー・エコノミーの順に説明しましょう。(右上の図参照;出典はオランダ政府の資料です。) 

リニア・エコノミーとは、従来型の経済。新しい原材料を使って、製品化し、使用後に、廃棄をするという流通経済です。

リユース・エコノミーとは、新しい原材料を使って、製品化し、使用後に、リサイクルできるものは、再び原材料に使って製品化を行い、出来ないものは廃棄するという流通経済です。

これに対して、

サーキュラー・エコノミーとは、
製品化にあたって、そもそもリサイクルできない原材料は使わない。使用後は、そのリサイクル可能な原材料、素材を原料にして新製品をつくる。出来るかぎり使用後のリサイクル素材を使うが、必要に応じて、足りない分だけ、やはりリサイクル可能な新しい原料を足してつくる。
ということで、使用後の廃棄を行わない流通経済のことを意味します。

図にすると、リニア・エコノミーが一方通行の直線なのに対し、サーキュラー・エコノミーでは出口が入り口に合流する、サークル状の形になるというわけです。

ZARAのインディテックス社という企業は、これまでおおよそ10年ごとに経営のビジョンを掲げて来ました。

2000年代はflexibility(柔軟性)のスローガンのもと、ファッション業界の中でも最もその言葉の意味するところに近い本格派SPA(アパレル製造小売業)モデルのグローバル展開に磨きを掛けました。

2010年代は2013年にfully integrated store and online platform(店舗とオンラインの完全統合)をテーマに、いわゆるオムニチャネルリテイリング、あるいはOMO(online merges offline)の実現に投資を行い、あと2年後の2022年には世界的、全ブランドで完成するとのことです。

そして、2015年以降、その次のビジョンとして、並行して取り組み始め、これから力を入れるのが、Sustainability(サステナビリティ)の中のCircular Economy(循環型経済)というわけです。

同社の最新のアニュアルレポートによれば、

〇同社の700人を超える全ブランドのデザイナーおよび、本社、主要国のヘッドクオーターの社員、計10,000人がサーキュラーエコノミー(循環型経済)のための教育プログラムを済ませた。

〇デザイナーたちは、サーキュラーエコノミーの発想に基づいて、素材選定を始めた。

〇リサイクルのために、同社が出資する企業と組んで、店頭はもちろん、スペイン国内の街角に数千もの不要ファッション商品回収ボックスを設置し、EC宅配の帰り便(届けた後に手ぶらで帰らず、顧客の不用品を回収する)も利用し、製品リユース、リサイクル素材開発のための不要品回収を強化している。

〇サーキュラーエコノミーの発想に基づく、リサイクル、環境に優しい素材を用いたJoin Lifeのタグのついた商品群は既に全商品の25%を占めている。

〇回収した素材をリサイクルする先端技術を研究するスペインの大学や研究機関に投資をするために、米MITと共同ファンドを立ち上げた。

などの取り組みが紹介されています。

そんな同社のレポートを読んでいて、10年以上先にあるファッション業界のモノづくりの未来を想像していました。

□ デザイン(コンテンツ)はもちろん、その時々の最新ファッショントレンド

□ 原材料として使う素材はすべてリサイクル素材(ボタン、裏地も含む)

□ リサイクル以外の新しい天然素材、合繊素材の新規素材調達には、国際的な年間利用枠が設定されていて、利用規制がかかっている。
企業はその範囲で素材調達をして、モノづくりをしなければならない。

もし、将来、そんな社会が到来するとしたら?・・・・

インディテックス社は業界の中で、いち早く、DX(デジタルトランスフォーメーション)のビジョンをまもなく完成させ・・・すでに10~20年後の未来の「ありかた」に向けて動き出しているのだな、と。

このサーキュラー・エコノミーの実現は、既出のオランダ政府の資料によれば、25年がかりになるだろうと言われています。

しかし、そんな先の未来も見越して、ビジョンを描いて、信念をもって早くから準備を進めた企業が、その時になれば、業界の中で優位に進めることになるでしょう。

そして、これからの時代のキーワードになるであろう「サーキュラー・エコノミー」についても、いち早く取り組み、業界の先進企業となっているインディテックス社の動向、ビジョンからはますます目が離せなくなりそうです。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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いつもお読み頂きありがとうございます。


 

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September 28, 2020

ZARAのインディテックスグループがコロナ禍で行った決算対応

先ごろ発表された、ZARAのインディテックスグループの2020年上半期決算(2-7月)に目を通しました。41cimg0394_20200928173001

コロナショックの影響により売上高前年比44.3%の減収、同社上場以来初の赤字となった第1四半期に続き、
第2四半期は売上高前年比は31.4%減ながら、営業黒字化(営業利益率6.6%)を果たしました。

まずは、売上が31%減でも損益分岐点を上回っている、営業黒字を出せるなんて、すごい会社だな、と素直に感心します。

結果、上半期の累計売上高は前年比37.3%の減収、半期では依然として営業赤字のままです。

一方、足元の8月以降は売上高前年比11%減まで回復して来ているようなので、このまま回復に向かえば、第3四半期累計で黒字化は果たせることでしょう。

この間の4連休に新宿店を覗きましたが・・・来店客でムチャ混みで、フィッティングルーム前は長蛇の列でビックリするくらいでした。

半期決算の結果だけ見ると、「世界一のインディテックスもコロナショックには勝てず、赤字に陥った」となりますが、
この間、同社は表面的な売上大幅減と営業赤字の裏で、いくつかの「先手」を打っていることが、決算書を見るとわかります。

ひとつは、以前もブログで紹介しましたが、前期末(20年1月末)にコロナショックの影響を見越して、春夏在庫を評価減したことです。

コロナショックの影響を受けなかった2019年度(2020年1月期末)は

売上高  3兆4,028億円(前年比8%増)、
営業利益高 5,749億円 (同9.5%増)

の過去最高益となる増収増益でしたが、

この期は

1)コロナ前から長年進めて来た店舗のスクラップ&ビルドを加速し、前年の2.5倍、売上高対比で言うと10%にも上る減価償却費を計上して今後の大量閉店に備え、なおかつ、

2)1月末から世界各国で表れ始めた新型コロナウィルス影響に備えて、1月末時点の春夏在庫に対して、約355億円の在庫評価減のための引当金を計上しています。

もし、この在庫評価減がなければ、同期の営業利益は前年比16%増の大幅増益となっていたところでした。

ふたつめは、21年第1四半期がコロナショックの直撃で赤字になると見るや、引き続き前年の1.4倍の減価償却費を経費計上し、あえて大赤字を出したことがわかります。

償却前の利益(EBITDA)はしっかり黒字だったところを見ると、上半期の業績を犠牲にしてでも、下半期以降の負担を軽くするために、ある意味「膿出し」をしたように思えます。

インディテックスという会社は、

消費者の購買行動の変化を見据え、2010年にオンラインビジネスを始め、2013年に「店舗とオンラインの完全統合プラットフォーム(=OMO)」宣言をして以来、店舗のスクラップ&ビルドを進め、オンラインで買って店舗で受け取る、店舗で見てオンラインで買うことができるデジタルトランスフォーメーションインフラを整え続けて来た会社。

現在、出店国は世界96店舗になり、オンライン販売実施国は66か国ながら、世界の202の国と地域にオンライン販売できる体制を整え、宣言から10年後となる2022年にグループ全体でその体制が整うとのことです。

これは、RFIDを含め、10年がかりのIT投資によって店舗、EC倉庫、本社倉庫の在庫情報がリアルタイムに一元化されたことで・・・

オンラインで注文した顧客に店舗在庫からも出荷ができるようになったことの「たまもの」です。

この体制が整えば・・・

今後、コロナショックのような外出自粛があっても、オンライン活用で全店の店舗在庫を近隣の顧客に届けたり、密を避けて店頭で手渡したりできるようになり、被害もこれまでとは違い、最小限に抑えられるようになるでしょうね。

そんな10年単位の長期的ビジョンを持ち、危機があるごとに、企業体質を見直し、単年度ではなく3年平均の売上と利益の成長率を考えて来た同社だからこそ成せる業であって・・・上記で述べたような、同社の決算期ごとの調整は、決して短期的な財務テクニックの話ではなく、中長期ビジョンに基づく余裕から来るものであることもわかります。

同社の直近のプレスリリースによれば、

2000年代は製造小売業と業務の内製化に磨きをかけ、ファッションビジネスのリスクに対する「柔軟性」(=flexibility)を構築した10年。

2010年代は店舗とオンラインの完全統合(=integrated store and online platform)に磨きをかけた10年。この体制はあと2年で完成するようです。

そして、ここからの10年、彼らの視線はこれからのサステナブル経営(=sustainability)、特に※サーキュラー・エコノミー(=circular economy; 循環型経済)に向かっているとのことです。

世界のトップランナーである同社からは、引き続き目が離せませんね。

※「サーキュラー・エコノミー」については、今年から来年以降の、サステナブル経営関連の重要キーワードになりそうなので、また、あたらためて、ブログでご紹介したいと思います。

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いつもお読み頂きありがとうございます。


 

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September 21, 2020

ZOZOの決算書から学ぶECビジネスの損益

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WWDジャパンさん向けの連載記事のためにZOZOTOWNを運営するZOZO社の決算書20年3月期および21年第1四半期に目を通しました。

Paypayモール出店によって40代、50代の新しい客層が順調に獲得され、
ZOZOTOWNもコロナ禍で商品取扱高が増え、同社のECの売上は好調、社としては増収増益のまずまずの決算だったようです。

気になったことを3つほど挙げると

ひとつは単価の下落です。
 
20年3月期通期の
平均単価は 3,946円 (前年度は4,201円)
出荷単価は 8,292円 セット率 2.10 (前年度は8,774円;同 2.09)
と下落しています。

コロナ禍の出店ブランドの在庫処分もあり、21年3月期第1四半期に至っては
3,443円まで下落(前年同期は3,903円)しています。

ファッション性が売りのZOZOTOWNですら、
平均単価がファッション市場マスマーケットの価格帯である3900円にまで低下していることに驚きました。

次に、出荷1件あたりの収益性です。

ZOZOの損益計算書や開示データを時系列で見ていると、
ECビジネスの販売管理費の構造やマクロトレンドがよくわかります。

ECビジネスの販売管理費の上位を占める荷造運賃、物流関連費、広告宣伝費について、

グロス金額(費用総額)ではなく、出荷1件あたりで割り出してみると

・荷造運賃は高止まり、
・物流関連費は人件費の見直しで増加傾向
・以前より広告宣伝費やポイントの出費を抑えて・・・

「利益率」こそ底を打って、回復中ではありますが、

そもそも、出荷単価が下落しているため、
出荷1件あたりの利益額(単価)は下落傾向というのが実態です。

要は、単価は下がるので、1件あたりの粗利額(同社にとっては販売受託手数料)は下がる、

一方、1件あたりにかかる荷造運賃やその他物流関連費(人件費がメイン)は高止まり、

歩留まり利益は店舗運営型小売業よりも多額にかかる広告宣伝費を調整弁として、どれだけ使うか次第という構造に見えます。

「ECは家賃がかからないので、店舗販売の小売業より儲かる」と豪語される方は少なくありませんが
ECは店舗販売と根本的に経費構造が違う、と言うのが正しい言い方ですよね。

むしろ、販売単価、粗利率によって、物流経費や広告宣伝費の使い方では薄利になってしまう可能性もはらんでいると見るべきでしょう。

みっつめは、今後の収益バランスのとり方です。

通販受託事業のこの傾向に対して、
ZOZO社はトップラインである売上高に関しては全体の商品取扱高を増やしながら、受託手数料収入額を増やす。
その一方で、通販事業の利益率の低下傾向を、モノを動かさない広告事業や新しいサービス事業を増やして利益貢献するように、目下、強化中というわけです。

アマゾンの通販事業は薄利で、AWSで利益を稼ぐという構造に近づいていきますね。
これはプラットフォーマーの必然なのかも知れません。

ZOZO社自体はそれでいいかも知れませんが・・・出店ブランド(事業者)はその傾向を理解してECビジネスに取り組まなければなりません。

ファッションECマーケットは、
単価は下落傾向、競争が激しくなると、以前よりも広告宣伝費が余計にかかる、
販売管理費の主要費目である送料や物流関連費用は下がらない。

この構造やビジネストレンドを理解した上で、
販売単価、粗利の確保、送料無料のハードルをどこに設けるか、値下げやクーポンやポイント付与などの販促施策の加減も考えるべきでしょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 31, 2020

「アフターデジタル2 UXと自由」を読んで

藤井保文さんが書かれた「アフターデジタル2 UXと自由」を読みました。20200831_145410

昨年出版され、大ベストセラーとなった前著の「アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る」に刺激を受け・・・

当時、頻繁に企業研修講師の仕事で訪れていた中国の杭州、広州では、同著に登場するアリババのスーパーマーケットHema FreshやLuckin Coffeeを中国人パートナーの手を借りて実体験して・・・

その背景にあることも含めて理解し、目から鱗が落ち、これから世界で進んで行くであろう小売業のDX(デジタルトランスフォーメーション)による明るい未来に思いをはせたものでした。

今回の続編は、前著に感銘を受けて、著者が相談を受けたり、ツアーをお手伝いされた多くの日本企業とのやり取りも踏まえて、日本企業の組織や仕事の進め方の実情にも触れながら、アフターデジタル時代の企業戦略としてのOMO(Online merges with Offline)の考え方について、誤解を解くように、新たな事例紹介とともに、再定義しているところに意味があります。

一番のポイントは、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉だけが独り歩きしている昨今ですが、顧客目線で顧客行動にポジティブな影響を与えるものでなければ、
たとえ、オンラインやAIを使ったところで、それは、企業都合の(あるいは、システムベンダー都合の)単なる業務効率のためのシステム化であって、同著が主張するところのOMOの本質でもなければ、アフターデジタル時代に勝ち残れる顧客体験価値(UX)創造型の取り組みでもない、という点でしょう。

最新のデジタル投資ばかりに目を向けている方々は、是非お読み頂きたいと思います。

スタートラインに立つためには、

まずは顧客行動(カスタマージャーニー)が理解、言語化出来て、

顧客にとっての「成功」は何か?

その実現のために、その過程に立ちはだかる顧客の「お困りごと(ペインポイント)」が特定できること。

そして、それに対して、情熱と執念をもって、オンライン技術を駆使しながら、とことん解決のお手伝いをし、その結果、ご利益として、顧客との長いお付き合いができる、という発想が大事なわけです。

実は、同著の主張と同じことを、拙著「アパレル・サバイバル」執筆の際の取材時の2018年に、アメリカ西海岸で体験したamazon go(コンビニ)、amazon books(本屋)、Nike(シューズショップ)、日本で体験したZARA六本木ポップアップストア(アパレル専門店)でも感じたものでした。

彼らがそれぞれの店舗において、DXで解決したのは、まさしくそれぞれの専門店ならではの購買行動(UX)の中のお困りごとに他ならなかったからです。

それらの体験をした時、顧客としては、何か呪縛から解き放たれて、スッとしたような感じ、そして、そのDXを実現した経営者、技術者に対するリスペクトを覚えたものでした。

また、DX担当者にとっては単にUXを研究するだけでなく、実際に体験してみて、その感覚(原体験)を体に覚えさせることも、執念を持って取り組む上では大事なことだと思います。

話を戻しますが・・・

今回の続編の中で、最も参考になったのは、P61から始まる「売らないメーカーの脅威」のところで、メーカー、サプライヤーではなく、「サービサー」として紹介されていた、中国企業群の事例です。

電気自動車メーカーのNIOは、車を売ることが目的ではなく、車を売ったところからが、顧客との付き合いの始まり。

年間23万円もするクルマのオーナーに対する、「会員サービス」がキモです。

維持費やメンテナンスサービスどころか、顧客のカスタマージャーニー上にある、クルマにまつわる痒い所に手が届くサービスの数々が憎いです。そのため、NIOのオーナーではない、別のメーカーのクルマのユーザーもそのサービスを受けるために会員になるとか。

それに続く、不動産仲介業のズールーの事例も、住まいの賃貸仲介したら終わりのスポットビジネスではなく、家探しを手伝いにとどまらず、そのコミュニティに住む、生活する、時には、旅先のシーンにまで関与し、顧客と一生つきあう覚悟すら感じます。

ファッション業界の方々は、是非、そんな事例を知って、日本のファッション販売に置き換えたら、顧客の成功のために何ができるか?を考えてみて頂きたいものです。

つくって、売ることに徹していたファッション業界も、顧客がコーディネートして着回す、メンテナンスする、保管する、手放す・・・・

などなど、幅広くカスタマージャーニー中の「お困りごと」に着目すれば、まだまだ顧客とつながってゆけるチャンスはあるし、広がると思っています。

このあたりは、ちょうど「アパレル・サバイバル」の中でも P205 CHAPTER5「テクノロジーの進化を享受するのは誰か?」という章以降で詳しく述べていますので、参考までに併せてお読みいただければと思います。

コロナショックを受けて、一気に「アフターデジタル」の時代に放り込まれた私たち。
この著書の顧客目線のDXの心構えを理解せずに生き残ることはできないでしょう。

 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

次のステージに向けての在庫最適化と人財育成を切り口にした業務再構築支援~ZOOMを使ったオンラインアドバイザーサービスも実施中。詳しくはこちら

【オススメ本】業界は溢れ始めた顧客のクローゼットのワードローブに寄り添う取り組みを、そんな姿勢から未来に向けて新しい信頼関係が生まれる時代であること提言しています。


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August 24, 2020

オンライン接客の可能性

コロナショックの外出自粛、休業の間にMinistry-of-supply 多くのストアやブランドがEC売上を伸ばし、
いわゆる「オンライン接客」が話題となり、
力を入れるところが増えました。

筆者の解釈では、「オンライン接客」の定義は広く、

ライブ動画で商品紹介を配信してチャット質問に答えたり、
ZOOMなどで1対1(複数もあり)のビデオ接客をしたりする
双方向性のある接客だけでなく、

そもそも、ブランドや商品に興味を持った顧客が
ネット検索してホームページやオンラインショップを閲覧するところからオンライン接客というものは始まっていますし、

ブログ更新やSNS発信
メルマガやプッシュ通知
メール、チャットでの問い合わせ

などの従来のマーケティングツールはもちろん、

店舗に来店した後、サイトで購入した後のフォローアップまで

スマホを駆使して情報を取得する「顧客の新しい購買行動」に、オンラインを活用して対応することはすべて「オンライン接客」の一部である
と捉えています。

この数か月の間で、オンライン接客について非常に可能性を感じたことが2つありました。

ひとつは、ZOOMなどのツールを使ったビデオ接客時、
顧客は自宅、ショップ側は店舗またはショールームにいるわけですが、

接客スタッフが顧客との対話の中で要望を引き出しながら、商品紹介をするだけでなく、
顧客側は自分の手持ち服を見せながら、これに合う服はありますか?というような聞き方ができる環境にいるという利点です。

つまり、顧客はわざわざ店舗にも行かなくてもよい、
ショップ側は店舗に来店できない顧客をお相手にできるという
時空的というか、物理的なメリットだけでなく、

どこまで開示するかは顧客次第ですが、顧客側も自宅にいるメリットとして、
クローゼットの中の服との相性について相談ができるわけです。

これは明らかに、店舗における接客にはない、
特に、顧客側のアドバンテージでしょう。

拙著「アパレルサバイバル」でも力説しましたが、

店舗やオンラインで品定めをする顧客の最大関心事は、
今、手に取っている、見ている服が、自分の手持ち服とコーディネートできるか?その上で着回しがどれだけ利くか?
ということでしょう。

店舗では、今シーズンのブランド側の重点販売商品や今シーズンの売れ筋商品を力説してショップ側が売りたい単品を提案して来ますが、
そんな接客の中で、顧客の本当の不安は、手持ち服と合わず、コーディネートがしづらい、着る機会が少ないなどで、結局は着なくなって、無駄になることによる「失敗」です。

顧客は手持ち服を具体的に見せることができれば、伝えられない歯がゆさや、「失敗」の不安から解放されますし、

店舗スタッフも決して、押し売りしているわけではないと思うのですが、
顧客のクローゼットの中身が具体的にわからないが故にできなかった、顧客のワードローブを思いやる接客が実現するわけです。

そんなビデオ接客での気づきが、今後、顧客との信頼関係を深め、顧客の手持ち服と相性のよい服を提案することが当たりまえの世界が実現
することを期待しています。

ふたつめは、リモート接客への人財活用の利点です。

つまり、ショップ側の接客スタッフは、ツールによっては、
どこにいても、都合にあわせて、短時間でも接客対応可能になる、という可能性です。

例えば、顧客からの問い合わせやちょっとした接客に対し、
これまでは、本社や店舗にいるスタッフが対応するのが常識でしたが、
事情によって、家庭に入られた、あるいは引っ越しにより遠方にいる経験者の方が、可能な曜日、時間帯だけ、在宅のまま対応することも可能になるということです。

メール対応やチャット対応、はそうでしょう。

この業務は、誰でも出来る業務ではなく、そのショップ、ブランドを熟知した接客対応のプロだった方だからこそ、の話です。

そんな人財=宝のような方々が、いろいろな制約で働けなくなってしまうのを
長年、いろいろ目にして来て、本当に残念だと思っていました。

しかし、オンライン接客アリ、リモート接客アリの時代に、これまで活用しきれなかった人財を、あらためて活かせる環境が整って来た予感がします。

もちろん、コールセンターのように、どこかに集めなければ、というセキュリティの問題が課題になるようですが、
これからはそういった問題を技術的に解決し、新しい働き方、新しい顧客対応の未来が広がることを期待しています。

当然のことながら、これから、すべてがオンラインになるとは思っていません。

しかし、多くの選択肢が生まれ、明るい可能性が広がっているのは事実ではないでしょうか?

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 17, 2020

トレンドファッションに合わせるベーシック、ベーシックに取り入れるトレンドファッション

コロナウィルスによる外出自粛で顧客の購買行動が変わることに対応しなければならないと思っています。20817-helsinki-closet

近隣以外への外出を控え、在宅時間が増え、自分のクローゼットのワードローブの見直しや、断捨離も行われたことでしょう。

業界は一旦、そこを起点に考える必要があると思っています。

オンラインセミナーへの登壇の準備をしていて、
ユニクロとZARAの強みをあらためて整理する機会がありました。

一般に、ユニクロはベーシック、ZARAはトレンドファッションに強みがある、と語られますが、

両者を長年ウォッチしてきた筆者なりの解釈で書き換えると

ユニクロはトレンドファッションに合わやすいベーシックを、

ZARAは多くの顧客が持っていそうなベーシック服に今シーズン取り入れるべきトレンドファッションを、

それぞれわかりやすく提案している。その取り入れやすさ提案が多くの顧客に支持をされる理由なんじゃないかな、と思います。

つまり、両者とも切り口は真逆ですが、自分の持ちものに取り入れやすい、ということが共通点です。

書いていて、気がついたのですが、と同時に、ユニクロとZARAの両者の服も相性がいい、ということになりますね(笑)

これまで、業界企業の多くは

・業界のシーズントレンドと言われるものを自社なりに解釈して売り込む
・前年売れた実績のあるものを焼き直してつくる

を繰り返して来ました。

しかし、しばらくは、「業界トレンド押し」よりも、顧客の「新しい生活様式」のシーンを想定して、

・リモートワーク対応
・マスク着用を想定したファッション
・カジュアル、リラックス

などが売れ筋のキーワードになるかも知れません。

業界では、正直、これまで、「顧客のクローゼットの中にあるワードローブ」という視点は不在の商品企画が圧倒的に多かったのではなかったかと。

今後も、もちろん、持っていないものを買う、新しいものを買う、という需要はなくなりませんが、

これを機会に顧客が今、持っていそうなものとの相性のよい(=着回しが利く)(=長く付き合える)
取り入れたら今シーズンらしく着こなせる服の提案をしたいところです。

「タンス在庫に無いもの」が売れる、とは、長年の業界の経験則

そう言うのであれば・・・まずは顧客のタンス在庫に何があるかをラックにかけて可視化して、
そこから新しい提案を考えるという発想が、今、大切なのではないかと思えてなりません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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【オススメ本】ファストファッションは多くの消費者にファッションを楽しむ選択肢を増やしたが、その一方で
顧客のクローゼットは溢れ始めている。そんな時代の顧客とのかかわり方をテーマにしています。


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July 27, 2020

セシルマクビー全店閉鎖で考える、ブランドのライフサイクルの見極めと対応

先週、1330257_m 1990年台から2000年台前半に業界のトップランナーのひとつだった
と言っても過言ではない、マルキューブランドの代表格である「セシルマクビー」が

1987年の創業から33年目となる今年(2020年)、
全店を閉鎖してストアブランドとしての歴史の幕を閉じることになった

というニュースが報道され、

SNS拡散、TVのバラエティ番組でも取り上げられるなど、大きな話題になりました。

同ブランドを展開するジャパンイマジネーション社は
今後、これから市場性が見込める4つのブランドに絞って、それらを運営する子会社を存続し、

自らは「セシルマクビー」ブランドのライセンス管理を行う形で事業を継続されるとのことです。

このニュースを聴いて、
業界の一時代を盛り上げた同ブランドと同社の功績に敬服すると共に
客層を絞った、個性のあるブランドには、
やはりライフサイクルというものがあるのだということを
あらためて感じさせられたものでした。

WWDジャパンさんの2つの関連記事

「セシルマクビーの時代の終わりはずっと前から感じていた」 社長が語る全店閉鎖の背景

ジャパンイマジネーションが「セシルマクビー」全店閉店

を読むとわかるのですが、

筆者がこれまでいろいろなストアブランドの分析をお手伝いして感じた
「ブランドや事業のライフサイクルの仮説」が
セシルマクビーにも当てはまることを感じたので、ここでご紹介したいと思います。

まず、
上記WWDジャパンの2つの記事の同社の社長さんのコメントと記者の方の解説をまとめて

セシルマクビーのライフサイクルの仮説を整理すると
以下のような感じになりました。【 】内は 筆者の視点で独自に定義したものです

1987~1994年の8年間 【導入期】ブランド立ち上げから店舗拡大とともに知名度が高まり始める時期
1995~2004年の10年間 【成長期】ブレイク~売上右肩上がり 
2005~2014年の10年間 【成熟期】店舗数拡大とともに全体売上拡大できても1店舗あたり販売効率が下がる
2015~2020年の6年間 【衰退期】事業赤字が続く

そして、2019年にテイストと客層若返りのリ・ブランディングを図ったものの、
2020年の今春、コロナショックに見舞われ、全店閉鎖の決断に至った

というものです。

これまで分析させていただいた多くのアパレルブランド事業に共通していたのは
神田昌典さんによるプロダクト系のマーケティング理論にもあるように、

ある事業が導入期から成長期に入ったところ、
つまり売上前年比が急激(25%以上複数年)に伸び始める時期がわかると

1)それまでにかかった年数のおおよそ4倍がブランドの寿命になる
そして
2)導入~衰退までの4つの期はほぼ同じ長さになる、
という仮説で

まさにセシルマクビーにも
この仮説が当てはまっているように思えます。

導入~ブレイク(成長期スタート)まで 
約8年 x 4= ブランド寿命 32年

そして、ここからは筆者の臆測になりますが、

おそらく、店舗拡大による売上高のピークは
成熟期2005年~2014年の間にあったと思いますが、

営業利益高のピークはちょうど成長期から成熟期に移行する
2004~5年あたりだったのではないかと思われます。

そう、これは 前年度比較ではなく・・・
業績を時系列に並べて振り返って見ないと
なかなかわからないかも知れませんが、

出店によって規模拡大はできても、販売効率が下がり始め
営業利益高がピークアウトしたな~
と感じた時が成熟期入り

気づいたにもかかわらず、再成長のための何らかのてこ入れをせず、
成功体験に執着して突っ走っていると
いずれは衰退期を待つばかり・・・

というのが多くの「儲からなくなった」事業の
時系列分析から気づく共通項です。

これに対して、

この仮説に立って考えれば、いつ頃、成熟期を迎えるかの予測はできるわけですから、

〇 海外市場を開拓したり、
〇 成長の見込める新カテゴリーの導入をしたり
〇 リ・ブランディングを図る

などが成熟期のまま衰退期(赤字続き)に陥らないための対処療法になるわけです。

業界を見渡すと、

海外市場に軸足を移して成長軌道を持続した数少ない成功例のひとつは
ユニクロでしょうか。

国内に絞って改革をするのであれば、

既存事業や既存の品揃えに固執せず、

◎より客層が広く、

◎販売効率がよい、あるいは

◎より利益率の取れる新カテゴリーを導入したり、

また、

◎より幅広い客層が見込める新事業に軸足を移す

ことによって、新たな成長ドライバーを育て、利益を高めたり、

◎ブランドのイメージや商品構成を一新して客層を増やす、あるいは

◎客層を変更するリ・ブランディングを行う

のが対処例になるでしょう。

この点で、これまで国内中心に比較的うまく対処されて来たと思われるのは
アダストリア社やユナイテッドアローズ社あたりでしょうか。

しかし、個性が強いブランドに至っては・・・
割り切って事業終了も視野に入れて、

早めに、別業態・別ブランドを育て、成長の軸足を移す
一方で旧ブランドは店舗リストラ、フェイドアウトを進める、

というのも企業存続の選択肢のひとつかと思います。

もっとも、既存ブランドの成功・貢献の会社へのインパクトが大きすぎると、
乗り換えは、かなり困難を極めるとは思いますが・・・

さて、話をジャパンイマジネーション社に戻しますが、

同社は幸い、借金がなく、
主力業態であったセシルの店舗閉鎖を決め
かなりのダウンサイジングをして
なおかつ、知名度を生かしたライセンスを収入源に、企業として営業継続する選択肢を選ばれました。

会社を成長させてブランドを終了するというのは
そのブランドのために社内外で働く方々がいらっしゃいますから、
本当に苦渋の決断だったと思います。

しかし、今回の決断がもっと遅ければ、
取り返しのつかないことになっていたかも知れません。

「セシルマクビー」ブランドの終焉は残念ではありますが・・・

記事の中で社長さんが最も気にかけられていらっしゃるように
お辞めになる方々の進路についてはしっかりフォローして頂きたいと思っています。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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