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May 02, 2007

ユニクロ原宿店、「UT」を見て、ユニクロの「ファッションへの道のり」を考えた

 ゴールデンウィークの谷間、汗ばみながらユニクロ原宿店改装後の「UT」を覗いて参りました。

 3層170坪のTシャツで埋めつくされた「ギャラリー」は、佐藤可士和氏らしく、すっきりしていながらも、なかなかの圧巻。原宿のヤング客層とともに、ひとときプリント柄選びを楽しませてもらいました。

 数年前までのユニクロのTシャツと言えば、量販店品質基準よろしく、洗濯機でガンガン洗ってもへたらない丈夫な「フライス」衿に、縮みにくい、よじれにくい「双糸」づかいといった主婦安心クオリティの商品がお決まりでしたが、最近は感覚重視のアメリカンチックな衿巾の狭いリブ衿あり、単糸づかいの薄手素材あり、いろいろチャレンジされているのだなぁ、とその風合いも確かめながら、過ごしておりました。

 ところで、プラスチック容器のパッケージは原宿UT限定と聞いていましたが、店舗のスタッフさんに、「これらの商品は地元のユニクロでも買えるのか?」とか、「原宿限定商品は無いのか?」という質問をすると、パントーンのカラー無地Tシャツと3階上がってすぐ右に2スパン(棚)くらいあるトーキョースーベニアーシリーズなどが原宿店とWEB限定で、それ以外の「ほとんどの商品が全国のユニクロ店舗でも販売している商品」とのことでした。

 するってーと、この夏、日本最大のプリントTシャツバリエーションを打ち出すユニクロさんは、果たして、ひとつのプリント柄をいったい何枚生産して、日本全国にばら撒くのだろうか?という考えが頭をよぎりました。

 フリースブームが去った後に、ユニクロに待ち受けていた生活者の残酷な評判のひとつに「ユニバレ」という言葉があったのをご存知かと思います。

 ユニクロを着ている主婦が公園などで、知人から、「ねぇそれユニクロで買ったんでしょ」と言われる、つまり、ユニクロで買った商品を着ていることがバレることを「ユニバレ」と呼び、そんな事件が全国で多発して、恥をかいた、気恥ずかしい、と思ったひとたちが、ユニクロ商品を買い控えたり、ユニクロ製だとわからない無地ベーシックなインナー商品だけを選んで買うようになった話です。

 ユニクロ側はこの事態を重んじ、従来の紺色のUNIQLO衿ラベルを廃止し、ベージュの小さなサイズラベルのみ製品につけることになって今に至ります。

 話はそれますが、昔、アパレル海外生産の仕事をしていた時に、根拠は定かではありませんが、業界内で語られていた話に、「ひと型100、000枚以上作られたアパレル商品を着て、街を歩くと、同じ商品を着ている人に出くわす確率が高い」というものがありました。
 当時、香港、上海界隈の工場にアパレルを生産しに行くと、まだ原宿ブレイク前のUNIQLOではありましたが大手量販系アパレルメーカー経由でひと型あたり、10万枚単位の「アジア最大のオーダーをしている」という話題が出、すごいなぁ、それに比べてウチがハンドリングしていた数千枚単位の生産量じゃ、値段交渉もままならないな、なんて思ったのを覚えています。

 話を元にもどして、タートルネックのセーターや、デニムジーンズなど無地のベーシック商品ならまだ見分けが付かないにしても、夏シーズンファッションで個性をアピールするアイテムであるプリントTシャツ。もし、街で同じプリントTシャツを着ている人と出会ったら、どう感じるでしょうかね?

 率直に、その瞬間、そのTシャツは、その人にとって、「ファッション」ではなくなってしまうような気がします。

 一点ものが売りの古着。人気古着ショップのハンジローですら、いまや半分以上は古着ライクな「オリジナル商品(新品)」を販売していると言いますが、その新品商品のタグに例えば、「これらの商品は日本全国でも200枚しか販売されていない商品です」と希少性をアピールし、ファッションを気にする生活者の心理を配慮する努力を欠かせないのが伺えます。

 日本全国に1000店舗以上を持つ「ファッションセンターしまむら」。小商圏対象だからこそ、生活者の地元で、同じ服を着た人に会う気まずさを配慮して、同一商品は各店に各色各サイズ1枚づつしか投入しないと言われています。

 5月1日の繊研新聞に4月26日、ニューヨークのジャパンソサエティ(聴衆の大半は米国人とのこと)で講演したユニクロUSAの堂前CEOの講演と質疑応答に関する記事が掲載されていました。

 「『品質の良い商品をどうして安くできるのか』との聴衆からの質問に、堂前CEOは、『H&Mやギャップに比べて型数が少なく、1型あたりの数量が多い。工場と長年付き合いがあり、リードタイムも長い』と説明した。」

 とありました。

 この説明は、品質のよいベーシック商品を武器とする過去のユニクロについては適切な回答だと思います。しかしながら、ユニクロがこれから、「ファッション性」で脱皮し、世界のGAPやH&Mと、競うためには、まだまだ「道のり」は長い、越えなければならない課題は山積だと感じざるを得ませんでした。
 
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 関連エントリー-ユニクロ原宿店がTシャツ専門店「UT」に

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Comments

すばらしい視点をありがとうございます。
リズクレイボーンの減益でちょうど似たようなことを考えていたので、とても参考になりました。

Posted by: 鈴木敏仁 | May 03, 2007 at 07:41 AM

鈴木様

コメント&トラックバックありがとうございました。

貴ブログも拝見させていただきました。

アメリカサイドからリテール専門家としてのリアルタイムなエントリー大変勉強になります。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。

Posted by: taka | May 04, 2007 at 06:25 PM

taka殿

鋭い視点でのご意見、とても参考になります。

この記事を拝読して、初めてこちらでコメントさせていただいたときの内容を思い出しました。

「ユニクロの現状と目指すファッション性との乖離」
やはりこれが今直面している問題・課題の中で最も解決が困難なのではないかと思います。

「欠品は悪」というのがほぼ常識だった私にとってしまむらさんの商品投入方法は驚きでしたが、顧客満足と売上、そしてブランドイメージ、これらの面から考えて果たしてそれはベストプラクティスなのか、私には判断できません。

「ファッション≒個性≒希少性」の場合と「ファッション≒トレンド」の場合の両方があることを考えると、ファッションと商売との両立が本当に難しいことなのだと思い知らされます。

ではまた機会がありましたらコメントさせていただきます。

Posted by: takmi | May 06, 2007 at 03:03 AM

takmiさん

いつもお読みいただき、また、コメントありがとうございます。

takmiさんの考え方、間違っていないと思います。

ユニクロさんは、定番品とチラシなどで打ち出すシーズン重点販売商品を中心に扱ってらっしゃるので、「欠品は悪」です。

これはファッションビジネスの基本中の基本だと思います。

しかしながら、ファッションビジネスには、それに加えて、時には、個々のお店の立地や客層特性に合わせて、いつ行っても新しいモノがある、今買わないと売り切れる、というワクワクさを演出する商品群があり、そういう部分をうまくMIXさせて、生活者に提案するか、いなかが、しまむら、ZARA、H&Mやその他のトレンドファッション系リテーラーとユニクロさんの違いなのではないかと考えます。

だから、同じアパレル商品でも、生活者に対して、意図された企画分類別に、顧客満足への役割が違う(欠品させてはいけない商品とむしろ欠品させてもよい商品の両方がある)、というのがひとつの答えだと思うんです。

具体的に言うと、既存顧客の半歩先ゆくデザインチームでデザインされた商品は、全店でなおかつ、チラシ掲載土日限定価格で欠品しないほど量を作るのはいかがなものかと、思ったりします。

勝手な意見をお許しくださいね。

またご遠慮なくコメントください。よろしくお願いいたします。

Posted by: taka | May 06, 2007 at 11:31 PM

こんばんは。
興味深く拝読させて頂いております。
私は単なる消費者の一人ですが。
百貨店やSCで常に見掛けるOL向け大手アパレル系の服も、ユニクロ同様に都心では結構な割合で被ってるのを見掛けます。(本人達が気付いてるかどうかは不明ですが。)
これらのデザインは個性は主張せず、シンプルではありますが、見掛ける割り合いが高いので、その点でユニと同じに感じます。
いえ、下手に値段が高い分、バレた時の不快度は高いのではないかと。
企業の意図がどうあれ、値段で買う部分が多い商品に関しては「被る」のは覚悟の上で、ファッションではなく、消費商品として消費者は買っているのだと思いますが・・・。

Posted by: せしるん | May 08, 2007 at 09:49 PM

せしるんさん

こんばんは
コメントありがとうございました。

ご指摘ごもっともですね。とてもわかりやすいご意見で感謝です。

流行り服(ブランド・デザイン)を着たり身に着けたりすれば、現実的に、ある程度は「被る」ことになります。または、ヴィトンなどラグジュアリーブランドなら、むしろそれを見せたいという場合もあるかもしれません。

おっしゃるように、お互いそれに「気がつかない」でいる、ということも大事な状況だと思ったりします。

「あっ、あれ私のと全く同じ」と思ったら、やはり気まずく思うと思うのです(苦笑)。

余談ですが、生産をやっていたころは、逆に、自分が生産に関与した商品を着ている人を街で見かけると、うれしかったりしましたが・・・

一般アパレル企業の生産量は知れていますが、ユニクロさんのそれは桁違いですから、それも、プリントTのような特徴のある商品だと、影響力も大きいと思った次第です。

一方で、ユニクロさんの商品を毛嫌いせず、ブランド品や古着もミックスしてうまく着こなす方の方が本当の着こなし上手だと思っています。

これからもコメントよろしくお願いいたします。

Posted by: taka | May 09, 2007 at 12:55 AM

taka殿

ご返答ありがとうございます。

先のコメントを書きながら考えていたこととほぼ同じ内容のご意見をいただき、深く共感いたしました。

「欠品させてはいけない商品とむしろ欠品させてよい商品がある」
という点は全く同意見です。
「今買わなければ」という心理は買い物を楽しむうえで重要な要素だと思います。
ユニクロには「期間限定価格」という要素以外、この心理をかきたてるものがないような気がします。(数量限定のデザイナーコラボ商品など一部を除いて)
そもそも、どの商品もいつでも十分量がある、というのは小売業としては良いのかもしれませんが、ブランドとしてはファッション性に欠けると思います。(ファッション性には要素として希少性も重要であるという考えから)
いつでも買える服はファッションではなく、生活必需品としての衣類だと思うのです。

必需品を担う商品とファッションを担う商品を完全に分けて考えること、定番商品と短サイクル商品のメリハリをもっとはっきりとつけ、生産量・販売計画数の段階から差別化していく必要があるのかもしれませんね。

またご意見ありましたらお願いいたします。


>せしるんさん

私はユニクロの社員ですが、プライベートは古着がメインで自社製品はたまに混ぜるくらいです。お客様に必ずしも全身ユニクロを着てほしいとは思いません(社員としてどうかと思いますが)。私も仕事でしか全身着ません。友人には「ユニクロっぽくない着かたするよね」と言われます。

ブランドどうこうより、着こなしを、服を着ることを楽しむことの方が大切だと思うのです。

私はブランドにとらわれない人が本当におしゃれな人だと思ってます。

Posted by: takmi | May 09, 2007 at 03:16 AM

takmiさん

こんばんは

またまた、コメントありがとうございます。

おっしゃる通り!そこに答えがあると思いますよ。

これからもよろしくお願いいたします。

Posted by: taka | May 09, 2007 at 10:50 PM

はじめまして。

アパレルではありませんがどっぷりファッションのオシゴトをしてます。
「被り」の話はなかなか面白かったです。
気まずいのかな....
でも例えばケイトモスと被ってたり、和田あきこと被ってたり、
そういう状況だったらそれは気まずいというより寧ろ誇らしかったりするんじゃないかな??と思います。
そうなると、この「被り論」の本質は
同一商品は各店に各色各サイズ1枚づつしか投入しない
とか
これらの商品は日本全国でも200枚しか販売されていない
とかぜんぶひっくるめた「外側(身に着ける衣)」レベルではなくて
着る人の心理のずっと深いとこにある気が.......。

takmiさんの
「いつでも買える服はファッションではなく、生活必需品としての衣類」

「ファッションと商売との両立が本当に難しいこと」というコトバ、ワタシもそう思います。

人によってファッション観は違うとおもうのですが、
ワタシにとってファッションは
「新しく洗練されていてエレガントであること」。
つまり、今市場に出回る、(少なくとも無理をしないで買える常識範囲内の価格の)お洋服自体にファッションはありません。

コレクションに出るパワーブランドの服はやっぱりネームだけでなく、
「ファッション」です。
ブランド品というとなぜかそれだけでイヤがる人もいますが、
やっぱりシャネルのニットは凄まじいし、ジルサンダーのシャツはものすごくかわいいし、エルメスのスカートはこのうえなく上品。
そして勿論それぞれに代用がありません。

「普通のシャツがLVのロゴが入っているだけで何倍の価格に...」
多分、リブの長さがちょっとちがったり、襟が、ちょっとだけ小さかったり、
ほんの些細なティ゙ティールだったり、たとえ目に見えなくても
ロゴがはいっているだけでは絶対にない何かがあります。

ブランド品が高いのはデザインや物理的なクオリティだけでなく、
デザイナーの発想やそれに携わった人が作り上げた、
「服やモノそのものの持つパワーを含めた全て」
への代価であるからだとワタシは思うのです。

ソレを理解せずに、
被るのがイヤだわ。ユニクロってバレルのがイヤだわ。
なんて言ってる方々を相手にラベルを変えるなんて...
本当に大変ですね。

ユニクロダイスキなんです。
GAPもAmerican Apprelもすき。
モノ自体安くて、ちゃんと機能的で、ファッションしてないところが!!!
それがファッショナブルな人が着るコトで
最高にファッションに見えるそのギャップが凄まじくおもしろいから。

オシャレな人、ファッショナブルな人って誰より自分好きで
しっかり哲学もってる人だと思います。
オトコでもオンナでも。

ちょっと脱線しましたがこれからもお邪魔させてください。

Posted by: chcci | June 07, 2007 at 01:18 AM

chcciさん

こんにちは、コメントありがとうございます。

とてもわかりやすいたとえ話も多く、共感しながら読ませていただきました。

誰にでも人それぞれ定義の違う「ファッション」を楽しむ自由があり、また、そんなお客さんに選んで頂いたことで、「恥」をかかせないのもファッション企業の使命であり、ファッションビジネスの面白さでもあります。

これからもどうぞよろしくお願いいたします。


Posted by: taka | June 07, 2007 at 07:37 PM

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