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March 02, 2014

ユニクロ(ファストリ)が米Jクルーに買収案持ちかけ?買収によってファストリが得るものは・・・

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 3月1日付けのウォールストリートジャーナル日本版によれば・・・

 ユニクロを展開するファーストリテイリングがアメリカ国内で好調が続くJクルー(J.Crew)社に買収案を持ちかけ、J.Crew側は最大50億ドル(約5100億円)を求め、身売りを検討していることを関係者が明らかにしたとのことです。

 ウォールストリートジャーナル日本版 ファストリ、米アパレル大手Jクルーの買収で協議中=関係者

 また、Bloomberg newsなどを読んでも、両社はコメントを控えているようで、その後交渉が進展しているのかどうかも不明のようですが、

 Bloomberg : J. Crew Said to Hold Sale Talks With Fast Retailing

 とても興味深い報道ですね。

 しかしながら・・・これらのニュースを読む限りでは、まだファストリによるJクルー買収の実現性は50%に満たないのでは?と思ってしまいます。

 理由はいくつかあります。

 Jクルーが約3年前の2010年、投資ファンドによる株式非公開をした後 元GAPのCEO、Appleの役員にも名前を連ねるミラード・ドレクスラー氏を中心にリ・ブランディングと収益性の回復に成功。

 投資ファンドが利益を確定するために「出口(株式公開か売却)」を模索しているのは間違いないでしょう。

 実際、その出口としてすでにゴールドマンサックスをアドバイザーとした年内IPO(株式公開)の検討が進んでいるようですし、

 また、上記Bloombergの記事の中にもJクルー買収に興味を示している有力な米投資ファンドの名前が挙がっていますね。

 ファストリはJクルーを喉から手が出るほど欲しいと思いますが(後ほど理由をまとめます)

 5100億円という金額もちょっと高すぎるように思います。(以後 $=101.8円で換算)

 おそらく、現在の状況で株式公開したら時価総額が5100億円相当になるから、それだけ出せるなら考えてもいいよ、というのがJクルー社の金額提示の根拠ではないかと思いますが、この金額は果たして妥当でしょうか・・・

 Jクルー社のHPにある2012年度(1年前)の財務諸表でこの5100億円という金額を評価をしてみると、

 2012年度の年間売上高の約2.2倍

 同期 純利益の約52倍

 同期 純資産の約4.6倍に相当します。

 また
 
 他のアメリカ上場大手ファッション流通企業の株価時価総額(最新のYahoo! Financeより)

 GAP              1兆9342億円
 リミテッドブランズ      1兆6644億円
 アバクロ              3084億円
 アメリカンイーグル        2850億円

 あたりと比べてどうでしょう。 

 投資ファンド2社と ミラード・ドレクスラー氏が共同でJクルーを株式非公開化した時に投資した

 2687億円の1.9倍!相当の額でもあります。

 まあ、今後の期待値も入れて評価額=株式時価総額ベースで考えて

 3500億円から4000億円あたりが妥当なところではないでしょうかね?

 私の独断と偏見に基づく 評価額はさておき・・・(笑)

 ファーストリテイリングにとって、Jクルー買収は世界のトップを狙う上で大きなメリットがあると思います。

 誰もが真っ先に考えられるのは、

 全米 約400店舗(アウトレット100店舗超を含む)、
 年商2600億円規模(通販比率約30%)のファッションチェーン

 を傘下に収めれば、規模の上でもアメリカでのビジネス拡大の大きな足掛かりになることだとは思います。

 そして、今のJクルーには「規模」だけではない・・・GAPにも、アバクロにも、アメリカンイーグルにもない大きな魅力がいくつかあります。

 ひとつは 柳井会長が常々言われている M&Aでは優秀な経営者がいる企業をその経営者ごと手に入れたい・・・Jクルーは世界の中でもその最たる企業のひとつであるということです。

 JクルーのCEO、ミラード・ドレクスラー氏は リミテッドブランズのレスリー・ウエクスナー会長と並んで 世界で最も優秀なファッション流通企業の経営者のひとりであることは業界の多くの方が認めるところでしょう。

 かつてGAPを世界一にした「中興の祖」・・・ドレクスラー氏はそれだけでは終わりません。

 GAPが世界一になった後の2000年 H&Mがアメリカに上陸して以来、アメリカのファッションマーケットは激変しました。
 
 危機感を感じた同氏は、今でも新たな答えを出せていない?GAPを離れ(革新案でオーナーと対立、解任されたと認識しています)、競合にもあたるJクルーの経営者に転身。 

 その後 「上質」「質感の良さ」をキーワードにしてJクルーを生まれ変わらせる 見事なリ・ブランディングに成功しました。

 この点に関して私がアメリカ視察で体感したブログエントリーがありますのでよろしかったらお読みください。

 J.Crewに学ぶ これからのリ・ブランディングの成功法則

 今は世界的なファストファッション全盛期です。

 私は ZARAやH&Mやフォーエバー21ら 世界の強豪ファストファッションチェーンが市場を席巻した後、その次に

 「ポストファストファッション時代」にどんなアパレル流通革新が起こるかを考えていますが・・・

 そのいくつかの答えとして、一昨年、昨年の欧米視察を通じて2つの大きな潮流を感じています。

 ひとつは 更なる低価格化、ディスカウンターの出現や台頭。

 例を挙げると プライマーク、しまむら、ジーユーあたりでしょうか?

 もうひとつは ファストファッションの改良版というか・・・ファッション性が高く、素材が良質ながら、手ごろな価格で購入できるファッションチェーンの成長です。

 「改良」と言っても低価格マーケット、下層から上層に向けての改良の話ではなく・・・

 既に上層マーケットで評価されているものを、「質」のわかる人が納得できるクオリティをキープしながら、手ごろな価格に引き下げる形で実現する流通革新です。

 ヨーロッパで見られる例は H&MのCOSやZARAのインディテックスグループのUTERQUE。

 そしてアメリカの代表格はミラード・ドレクスラー氏がリ・ブランディングしたJ.CREWでしょう。

 要は・・・価格はマスマーケットのファッションストアと比べると高めだけれども、百貨店で販売されているクラスのブランド商品の満足感をその6掛けや半額くらいで提供するビジネスモデルです。

 これは私が世界的なビジネストレンドだと感じていることで・・・

 日本の多くのアパレル企業さんにも乗り遅れずに取り組んで頂きたいと思っていることです。

 その中で、早く結果を出した企業あるいはブランドが明日の「勝ち組」になると確信しています。

 H&MもZARAグループもそれを見据えていながら、まだCOSやUTERQUEはそれぞれ年商数百億円規模の導入期にあるビジネス。

 一方、同じ方向性とも言えるJクルーはすでにアメリカで成長真っ只中の年商2500億円超の規模になっているというわけです。

 これはドレクスラー氏の先見の明と言って間違いないでしょう。

 そんな世界先端の経営者とビジネスモデルを手っ取り早く手中にできるなら・・・ファストリ柳井会長にとって数千億円の投資であれば決して高くはないはずです。

 今回の買収交渉、回収金額に興味があるのは出口を模索する投資ファンドだと思いますが・・・

 次のパートナーを別の投資ファンドにするのがいいのか?株式市場に求めるのか?同じ事業を展開する事業会社にするのか?

 その決着の主導権を持っているのは

 Jクルーの将来の着地のイメージを明確に持っておられるミラード・ドレクスラー氏ご本人でしょう。

 世界一を取った経験を持つそしてまだまだ事業意欲のありそうなミラード・ドレクスラー氏と世界一を目指すファストリの柳井会長。 

 これから両者が交渉のテーブルに着くのか着かないのかはわかりませんが・・・

 世界屈指の経営者ふたりの駆け引き、ディールが業界を熱くしないわけはありません。

 今後の動向を楽しみにしておりましょう。


 第7章では 世界のファッション流通のビジネストレンドが今、どこに向かっているのか?も解説しています。

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