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September 30, 2016

15年度のファッション商品のEC売上比率は7.8%に。10%目前に次なる課題は?

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 9月21日の繊研新聞によれば、同紙が独自調査&推計した15年度の国内におけるファッション商品のEC売上規模は7250億円、前年と比べ29.5%伸び、全売上高に占めるEC比率は7.8%になったとのこと。

 これは通販専業も含む数字で、それらを除いた専門店およびメーカーの平均EC売上比率は8.1%という数字も掲載されていました。

 ここ1年の伸びは、それより前の3年間が一桁増で推移していたのと比べると(12年-8.8%増、13年-8.7%増、14年-6.3%増)、一気に伸びた格好で、

 特にZOZO TOWN(スタートトゥデイ)やファストリ(ユニクロ)や、もともと分母の大きい大手企業が在庫の充実などEC売上拡大政策に力を入れたことが大幅な伸び率に寄与しているようです。

 同日の同紙特集記事は調査対象となった各社の統計数字、売上を拡大した企業のECへの取り組み事例、IT企業の最新技術などの事例が多数掲載されており、大変充実した内容でした。


 さて、業界のEC売上高比率がいよいよ10%に近づき・・・今後も同比率20%、30%を目指して、このまま引き続きECの売上拡大に力をを入れて行けばよいのでしょうか?

 直営店を持つ専門店にとってはただEC売上比率を上げることだけが目的ではないのは言うまでもありません。

 クライアント企業さんの直営店とEC事業の損益(P/L)の違いを見せていただくことがありますが、平均でいうと、EC事業の営業利益率が直営店に比べ10%ほど高くなっている数字をよく見かけます。

 それは粗利率はECが在庫消化目的で使われていることもあって少し低くなるものの、

 店舗の家賃がかからず、人件費が最小限に抑えられるため・・・

 ECモール対する販売手数料を払ってでも、販売管理費が低くなるため、

 そのような結果になるものです。

 このEC事業の営業利益率の高さは・・・

 単にEC事業が直営店事業よりも儲かるという話ではなく、

 各ブランドがこれまで直営店を中心にしっかり、知名度向上とブランディングに力を行ってきたからこそ、お客様から信用を勝ち得たご利益であることを忘れてはいけません。

 ここ一年、いくつかのストアブランドさんと店頭を起点とした事業の業務改善の取り組みに関与させていただきましたが・・・

 その一環で店舗のヒアリングをしていると、ECの拡大に伴って、各社で共通して、店頭現場でちょっと困ったことが起こっていることに気づきました。

 それは、EC売上比率が20%を超えていたり・・・ECの販売計画が明確でなかったり(そもそも店舗の在庫があてにされている)する場合、

 あるはECの売上が予想以上に上振れしてしまったりしたために・・・

 店舗作業のうち、これまであまり負担にならなかった、ECで引き当てになった商品在庫の店から倉庫(EC店)への店間移動作業がそこそこの負担になって来たことです。

 ECで売約がついた商品は、結構、数量が多く、頻度も高く、スピードを要求されるため、店舗の精神的、作業的負担も少なくありません。

 EC店(特にZOZO)はおそらく全店の中でも売上1番店またはそれに順ずる売上になっているブランドも少なくなく、そのインパクトたるや既存店の作業にも影響を及ぼすわけです。

 経営サイドからすれば・・・昨今、ECの方が売上伸び率が高く、ECで売った方が営業利益率が高いからよいと判断するかも知れません。

 また、ECでご購入されたお客様のためだ、と思えば、誰もが文句を言わずに、作業をするでしょう。

 しかし、EC売上高比率が高まり、ECの伸び率も20-30%超になれば、それに伴って店頭現場で起こる変化に本格的に対処しなければならない局面になっていることでしょう。

 そして、作業そのものだけでなく、朝店舗スタッフさんが出社すると待っているのが、倉庫(EC店)への商品移動指示。

 どんなお客様がご購入になったのか?と想像する間もなく、指示書だけで商品を送り出す作業は少々モチベーションも下がるのではないでしょうか?

 私は店頭の在庫コントロールのご支援を生業にしていますが、いつもクライアント企業さんとの打ち合わせの中では「店舗を倉庫代わりにしてはいけない」ことを口を酸っぱくしてご指導しています。

 もともとは、

 本部の事情で店舗にあふれるほど、むやみに無駄な在庫を送り込まない、

 店舗の商品管理の手間が煩雑になるほど店舗に在庫を持たせたままにしない、

 あとで店間移動すればよいという前提で商品を送り込まない、

 という意味で運用していた言葉ですが・・・

 「オムニチャネルリテイリング」の掛け声のもと、各社がECの売上の拡大に躍起になっている今、

 店舗作業の実態把握と対処が後回しになり、違う意味で「店舗を倉庫代わりにしてしまっている」現場も少なくないかも知れないことを危惧しています。

 もし、危機感を感じたら・・・まずは、EC拡大にあたっての店舗の関連と店舗作業の実態把握を、そして、

 EC売上拡大にあたっては「店舗の販売計画」と同時に「ECの販売計画」をしっかり立てることが大事でしょう。 
 (EC急拡大局面でのグロス(合計)管理は店舗にしわ寄せが行きすぎる可能性が大です)

 また、ECの売上拡大で既存店+ECの前年比増収は確保しているものの
 (本部商品調達担当はそれでよいかも知れませんが・・・)、

 直営店だけのの実態は大幅前年割れだとしたら、ECと店舗を取り巻く業務全体を見直す時期かも知れません。

 ここ数か月、そんな業界のEC売上拡大の数字を見ながら・・・

 ECモールを活用したEC売上拡大というオムニチャネルリテイリング「第一幕」の

 次に来るであろう「第二幕」のについて考えています。

 最近、EC売上比率が驚異の40%を誇るイギリスのNEXTや

 ECを徹底的に店舗への集客の武器に使って、既存店増収を続けるZARAの事例を研究していますが、

 両社に共通する取り組み事例の中に我々が次に取り組むべき本格的なオムニチャネルリテイリングのヒントが見えてきます。

 それは、スバリ「ECでの購入商品の店舗での受け取りの促進(クリックアンドコレクト)」です。

 EC拡大によるマルチチャネル戦略(第一幕)から、直営店があるご利益を活かした本格的なオムニチャネルリテイリング戦略(第二幕)へ

 これらの話題はブログでも順次ご紹介して行きたいと思います。

 【おススメ本】

 すべてはお客様の期待を店頭で叶えるためにある。それが本書を書き終えた時に感じたユニクロとZARAからもっとも学んだことでした。
 
 おかげさまで今でもアマゾン小売ジャンルランキング1位になることもあり、感謝しております。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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September 10, 2016

全米で好調を続けるオフプライスストア、TJマックス

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 9月9日の日経MJ「米国流通現場を追う」、いつも勉強させていただいている流通コンサルタント、鈴木敏仁さんのTJマックスに関する記事が掲載されており興味深く読ませていただきました。
 
 百貨店のメイシーズが100店舗の閉鎖計画を発表するなど、伝統的なファッション流通企業の業績が下降するアメリカ市場で、増収増益を続けるのがオフプライスストア業態のTJマックスです。

 TJマックスを展開するTJX社のURL

 繊研新聞に毎月アメリカの上場流通企業の既存店売上増減をまとめた記事が掲載されていますが、
その中で常に安定的な増収を続けているのが、

・TJマックスを運営するTJXやROSSといったオフプライスストア
・コストコのようなホールセールクラブ、また、
・ヴィクトリアズシークレットを展開し、ランジェリーやヘルス&ビューティアイテムにフォーカスをするLブランズ

 の3つです。

 オフプライスストアについてはこのブログでも何回か取り上げましたが、

 アメリカのコモディティ衣料需要を支えるオフプライスストア(2013.10.3)

 全米最大の百貨店グループ、メイシーズ (Macy's) がいよいよオフプライスストア業態に参入(2015.5.12)

 簡単に言えば、市場で過剰在庫となった著名ナショナルブランドやスポーツブランドの商品を専門店やメーカーから買い取り、常時ディスカウントで販売することを特徴とするファッションディスカウントチェーンです。

 顧客にとっては、ポロラルフローレン、カルバンクラインなどの著名ブランドのアンダーウエア、ホームウエア、Yシャツなどのデイリーウエアが20―70%OFFのディスカウントプライスで買うことが出来、

 なおかつ郊外ロードサイドのスーパーマーケットやドラッグストア立地にあるので、「(デイリー対応であれば)このアイテムなら、これで十分」という目的買いや掘り出し物目当ての幅広い客層に支持されているわけです。

 その最大手がTJマックスやマーシャルズを展開するTJX社で、世界売上は3兆円を超え、アメリカだけでも年商2兆円規模の巨大チェーンになります。

 記事の中で特に興味深かったのは、

 はっきりとは公表はされていないものの、ラルフローレンの最大の取引先がTJマックスであることが「業界では周知の事実」であると紹介されていたところ。

 いつ行ってもポロラルフローレンの2-3パックのアンダーウエアが$20弱という安価で販売され、なおかつ在庫を切らさずにビシッと揃っているので、やはりそういうことだったのか(専用商品の供給?)、と納得したものでした。

 まあ、これだけ企業規模が大きければ、業界の過剰在庫だけで品揃えを組むことは難しいですものね。

 他にも同業態向けに専売商品を供給している有名ブランドはたくさんあることでしょう。

 また、顧客に低価格で商品を提供することをモットーとするディスカウンターならではの約17%の販売管理費率の低さにはあっぱれですね。

 同社の2015年年次報告書によれば粗利率が28.8%、販売管理費が16.8% で12%の営業利益率をしっかり残しているようです。

 アメリカでは、そんなオフプライスストア各社の拡大や好調を羨み、百貨店のノードストローム(ノードストロームラック)やメイシーズすらも同業態を作って参入している始末⇒ 上記のリンク先で取り上げています。

 ところで、このオフプライスストア業態にまつわる最近の動向の中で、百貨店各社のオフプライス業態への参入とともに、気になっているのが、同業態の都心部への進出です。

 本来はローコストオペレーション故、家賃の安いロードサイドを主戦場としていたはずのディスカウンターやオフプライスストアが、たとえば、ニューヨークのマンハッタンのど真ん中に、TJマックスやマーシャルズやノードストロームラックが出店するなど、都心部への進出が見受けられるようになったことです。

 今後、アメリカで

・移民を含め都市部に人口が密集し、
・外国人観光客も増え、そして、
・都心部にある大型店業態(百貨店、GMS、書店、家電量販店などなど)が業績悪化やアマゾンとの競争で撤退した後に安い家賃で出店できるようになれば・・・

 この傾向は進むのではないかと見ています。

 イギリスでは近年のファッションディスカウンターのプライマーク(世界売上ランク7位)の都心部での拡大がその一例ですし、

 日本でもドンキホーテやしまむらの都心部での拡大傾向にも通じるところがあるのではないでしょうか?

 都心部では安いものは売れないと思う業界関係者はいまだに少なくありません。

 しかし、人口が多ければ多いほど安い商品を望む人、服にお金をかけたくない人の数は郊外よりも圧倒的に多いわけで・・・ディスカウンターは都市部でも歓迎され、家賃が見合う物件が現れれば、十分採算が取れると見ています。

 というわけで、世界的に都心部の競合はますます厳しくなりそうです。

 【おススメ本】

 グローバル時代のファッション流通を考える上で参考にしていただければ参考です。
 ファストファッションの次に来る流通革新(未来予測)についても触れています。

 おかげさまで今でもアマゾン小売ジャンルランキング1位になることもあり、感謝しております。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

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