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September 21, 2020

ZOZOの決算書から学ぶECビジネスの損益

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WWDジャパンさん向けの連載記事のためにZOZOTOWNを運営するZOZO社の決算書20年3月期および21年第1四半期に目を通しました。

Paypayモール出店によって40代、50代の新しい客層が順調に獲得され、
ZOZOTOWNもコロナ禍で商品取扱高が増え、同社のECの売上は好調、社としては増収増益のまずまずの決算だったようです。

気になったことを3つほど挙げると

ひとつは単価の下落です。
 
20年3月期通期の
平均単価は 3,946円 (前年度は4,201円)
出荷単価は 8,292円 セット率 2.10 (前年度は8,774円;同 2.09)
と下落しています。

コロナ禍の出店ブランドの在庫処分もあり、21年3月期第1四半期に至っては
3,443円まで下落(前年同期は3,903円)しています。

ファッション性が売りのZOZOTOWNですら、
平均単価がファッション市場マスマーケットの価格帯である3900円にまで低下していることに驚きました。

次に、出荷1件あたりの収益性です。

ZOZOの損益計算書や開示データを時系列で見ていると、
ECビジネスの販売管理費の構造やマクロトレンドがよくわかります。

ECビジネスの販売管理費の上位を占める荷造運賃、物流関連費、広告宣伝費について、

グロス金額(費用総額)ではなく、出荷1件あたりで割り出してみると

・荷造運賃は高止まり、
・物流関連費は人件費の見直しで増加傾向
・以前より広告宣伝費やポイントの出費を抑えて・・・

「利益率」こそ底を打って、回復中ではありますが、

そもそも、出荷単価が下落しているため、
出荷1件あたりの利益額(単価)は下落傾向というのが実態です。

要は、単価は下がるので、1件あたりの粗利額(同社にとっては販売受託手数料)は下がる、

一方、1件あたりにかかる荷造運賃やその他物流関連費(人件費がメイン)は高止まり、

歩留まり利益は店舗運営型小売業よりも多額にかかる広告宣伝費を調整弁として、どれだけ使うか次第という構造に見えます。

「ECは家賃がかからないので、店舗販売の小売業より儲かる」と豪語される方は少なくありませんが
ECは店舗販売と根本的に経費構造が違う、と言うのが正しい言い方ですよね。

むしろ、販売単価、粗利率によって、物流経費や広告宣伝費の使い方では薄利になってしまう可能性もはらんでいると見るべきでしょう。

みっつめは、今後の収益バランスのとり方です。

通販受託事業のこの傾向に対して、
ZOZO社はトップラインである売上高に関しては全体の商品取扱高を増やしながら、受託手数料収入額を増やす。
その一方で、通販事業の利益率の低下傾向を、モノを動かさない広告事業や新しいサービス事業を増やして利益貢献するように、目下、強化中というわけです。

アマゾンの通販事業は薄利で、AWSで利益を稼ぐという構造に近づいていきますね。
これはプラットフォーマーの必然なのかも知れません。

ZOZO社自体はそれでいいかも知れませんが・・・出店ブランド(事業者)はその傾向を理解してECビジネスに取り組まなければなりません。

ファッションECマーケットは、
単価は下落傾向、競争が激しくなると、以前よりも広告宣伝費が余計にかかる、
販売管理費の主要費目である送料や物流関連費用は下がらない。

この構造やビジネストレンドを理解した上で、
販売単価、粗利の確保、送料無料のハードルをどこに設けるか、値下げやクーポンやポイント付与などの販促施策の加減も考えるべきでしょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 14, 2020

お客様目線の商品名を使って商売する

筆者も講師のひとりを務めさせていただきましたDsc_6436 繊研新聞社主催のオンライン連続講座「通販サイトのはじめ方」 の全3回が先週で終了しました。

講師陣は3年前から一緒に(ファッション業界の)「オムニチャネル時代のバックヤード勉強会」を運営して来た5人の専門家メンバーで、筆者は2回目のECの損益構造を担当しました。

先週の3回目、ファナティックの野田大介さんフレイヴァ・プロジェクツの髙木勝さんが担当されたECの集客方法とお買い上げアップの内容を聞いていて一番納得した内容のひとつが・・・野田さんがお話しされた 「商品名をお客様目線で変更する」という話でした。

要は、業界で仕事をしていると、どうしても、業界内で通用する業界用語を多用してしまいがち。そんな業界用語が販売管理システムに登録されているから、と言って、そのままECサイトの商品名にしても、一般のお客様にはモール内やサイト内でも見つけてもらえない、という話です。

例えば、売り手はデニムパンツという商品名をつけがちですが、多くのお客様はジーンズというキーワードで探す(検索する)可能性が高いです。

野田さんは、デニムパンツの商品をお客様目線の「ジーンズ」で検索できるようにすれば、確実に売上は上がる。それを妨げているのは、業界特有の「かっこいいか?かっこ悪いか?」の感覚だと言います。

ちょっと前に、筆者もあるブランドのEC公式サイトを見ていて、具体的に何かを探してみようとして、検索ウィンドウに「シャツ」と入れてみました。

すると、「お探しのものは見つかりません」と出ます。トップページにかっこいいシャツが出ていたので、他にどんなシャツがあるのかを探すために行った行為でした。「ジャケット」や「セーター」も同様。

どうやら、このブランドのサイトでは、(日本のブランドですが)すべての商品名およびカテゴリー表示すらも英語表記、そのため、SHIRTでは検索結果が出ますが、シャツでは出なかったという話のようでした。
確かに、シャツよりSHIRTの方がかっこいいかも知れませんが、お客さんは、日本のサイトでわざわざ英語では検索しない、と思います。

せっかく、ひとつひとつのモデル着用の画像はかっこいいですし、デザインの詳細紹介も丁寧なんですがね。

顧客がとるであろう、購買行動(検索行動)に引っかからなければ、その努力も十分に生かせないというわけです。

雑誌や店舗では見たままですが、EC時代になると、より顧客目線で商売することの大切さを思い知らされます。

一般のお客さんがどんなキーワードで検索するか、顧客目線の商品名は大いに意識して商売すべきですね。それを知るところから商売は始まるかも知れません。

あたりまえを、あたりまえに。

そんなマインドセットができるかできないか、だけでも、結構な差が出そうな気がしています。

【お知らせ】
アフターコロナ時代を見据えて、粗利高最大化と在庫消化のために
ディストリビューションから販売計画実行を見直す
「ファッション専門店の在庫最適化の実践セミナー2020」
を11月中にオンライン開催する予定です。

これから事業部で本格的に在庫コントロールに取り組みたい、
再構築したい、組織と役割を見直したいという企業さん向けの内容です。

9月中に募集を始めますが、こちらに登録をしておいていただければ、
詳細が決まり次第、メールにてご案内申し上げます。
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執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 07, 2020

国内ユニクロ事業2020年8月度 既存店売上前年比129.8%の驚異

コロナショックの4月を底に回復途上のファッション流通業界ですが、

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6月以降の国内ユニクロ事業の売上には目を見張るものがあります。

6月は開業の反動と給付金の支給のおかげで多くのファッション専門店は一旦、前年を上回りましたが、7月、8月は8掛けくらいが平均でしょうか。

それに対し国内ユニクロ事業の既存店+Eコマースの前年比実績は


   売上高 客数  客単価
6月 126.2% 113.9% 110.8%
7月 104.4% 102.5% 101.9%
8月 129.8% 126.0% 103.0%

特に、各社が天候を理由に苦戦した8月の実績は、
前年同月が決して落ち込んでいたわけでもなく(前年比109.9%と二けた増)、
コロナがなかった夏、しかも二桁増だった前年よりも飛躍的に売れているわけで・・・

確かに、巣ごもり需要は実用衣料、ベーシック、リラックスが得意なユニクロにとって追い風ではありますが、
年商8000億円規模のチェーンストアがたたき出す数字としては脅威と言わざるを得ません。

ところで、ここ数年、国内ユニクロ事業の8月と2月という半期末の月の既存店売上前年比、特に8月は軒並み伸びている傾向があります。

          2月   8月
2018年8月期  105.1% 108.8%
2019年8月期  103.0% 109.9%
2020年8月期  100.8% 129.8% 

これは、

・2月や8月は「ニッパチは売れない」言われるように需要が低く(一般的に年間月平均売上の6-7掛け程度)、売上分母が小さいこと

・競合各社はシーズン末、期末ということで、在庫を売り減らして、絞り込んでいる状態であること

そんな条件、環境の中で、在庫を十分に持っていたら・・・顧客の需要はユニクロに集中し、
売上高は大きく跳ねる可能性が高くなることが考えられます。

つまり、シーズン末でも売り逃しをしないことを前提に冬ものや夏ものを仕込んでいて
なおかつ、大量生産のため、次シーズンの春ものや秋もの在庫の頭出しが早期に出来上がって、スタンバっていれば、
気温がどっちに転んでも、2月、8月は確実に売上が浮上することになるわけで・・・

トレンド商品はともかく、ユニクロのようなベーシックであれば、ある程度在庫を残したとしても、
翌年にも十分売れる、あるいは、南半球に持っていけばよい?と考えるのかも知れません。

そんな、在庫が膨らんででも、需要を最後までしっかり刈り取る方針にあるのか、FR社の期末在庫は年々、重くなる傾向にあるように感じます。

さて、コロナショックによる売上高のマイナスに対して、下半期(3-8月)を3カ月で力業で9掛けまで戻した国内ユニクロ事業。

例年ですと、夏に利益を出しづらい、同社の第4四半期(6-8月)について、売上高に対して、どのような利益で着地するのか?公式発表を待ちたいと思います。

そして、年間利益の多くを稼ぐ同社の第1四半期(9-11月)が始まりましたが・・・

引き続き、ユニクロには追い風となるであろう、「巣ごもり需要」や「新しい生活様式」が、今期の業績にどう影響を及ぼすのかを、ウォッチして行きたいと思います。

関連エントリー‐世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

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 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

次のステージに向けての在庫最適化と人財育成を切り口にした業務再構築支援~ZOOMを使ったオンラインアドバイザー・勉強会支援サービスも実施中。詳しくはこちら

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

いつもお読み頂きありがとうございます。


 

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