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October 12, 2020

ニトリのアパレル事業成功の可能性

20200922_194530先日発表された、ホームファッションチェーン最大手=ニトリの2021年2月期の上半期決算は売上高前年比113.7%、営業利益同139.7%の大幅増収増益、過去最高益を更新し、同社は2020年通期決算を上方修正しました。

コロナ禍の消費が家の中に向く、いわゆる「巣ごもり需要」をしっかり取り込んだ格好で、休業に追い込まれなかった郊外フリースタンディング立地の強みを活かして、上半期の既存店買い上げ客数が114%増、加えて、これまで磨き上げて来たEコマースをフルに活かし、前年比156.3%となったのが大きな要因です。

同決算発表時に同社が、今後アパレル事業にも力を入れる、と宣言していたので、今回はニトリのアパレルビジネスの可能性について考えてみました。

ニトリ社は、筆者もかつて、小売事業会社勤務時代に学ばせて頂いた、故 渥美俊一先生のペガサスクラブの最優等生企業の1社で・・・アメリカや海外のチェーンストアに刺激を受けてビジネスのロマンを抱き、チェーンストア理論の原理原則を正しく理解され、試行錯誤を繰り返しながら、仕様書発注が基本で、自前工場まで持つ製造小売業を貫いて来られ、

出自は家具店ながら、季節にあわせてコーディネート提案をするという発想もしっかり持ち合わせていらっしゃる企業ということで、筆者はその取り組みや姿勢をリスペクトしている異業種企業のひとつでした。

今回、初めて、決算財務諸表を見て驚いたのは、その収益性と在庫効率の高さでした。

ニトリ
       2020年2月期(通期)  2020年8月期(半期)     
粗利率      55.2%         56.7%
販売管理費率   38.5%         34.3%   
営業利益率    16.7%         22.4%

在庫日数     74日          60日

※ お断り: 在庫日数は 期末在庫原価を翌四半期の1日あたりの売上原価で割っています。

一般的に、家具やインテリアショップチェーンは、取り扱いアイテムの顧客購買頻度がアパレルなどに比べて低いので、年間の在庫回転が低い代わりに・・・高い粗利率で稼ぐビジネスモデルと認識していたのですが・・・

同社の場合は、自社商品開発による高粗利率や営業利益率の高さだけでなく、
何より、際立った在庫日数の短さ(在庫回転数にする時は365÷在庫日数で判断下さい)

に目が留まりました。

おそらく、取り扱いアイテムの中で、顧客の家具の購買頻度は高くはないと思いますが・・・

季節にあわせて、コーディネートして着替えることを提案するファブリック(各種カバー類)、
防寒、冷感アイテムなどのシーズナル商品や、
低単価の消耗品(電球・乾電池、オフィスサプライなど)などが商品回転の高さに寄与しているのでしょう。

また、直貿(直輸入)が圧倒的に多いのですが、本来であれば、在庫過多になりがちなところを、在庫日数が長くならないように、サプライチェーン管理を徹底されているのでしょうね。

ちなみにアパレル大手のファーストリテイリング社とZARAのインディテックス社の直近の開示数字と比べてみると、

ファーストリテイリング
        2019年8月期(通期)     
粗利率         48.9%
販売管理費率      37.3%
営業利益率       11.0%
在庫日数        119日

インディテックス は 2020年1月期末はコロナ対策決算をしているイレギュラーなので、2019年8月の半期決算の数字で、平時で見てみます。

       2019年1月期(通期) 2019年8月期(半期)     
粗利率        56.7%     56.8%
販売管理費率     40.0%      40.9%    
営業利益率        16.7%     15.9%
在庫日数       102日      87日

これらの数字を見る限り、ニトリは国内中心事業ではありますが、財務構造や収益性や販売効率の良さは、世界トップクラスのアパレル企業に似ている、いや、それら以上に良い、と言えるかも知れません。

なぜ、同社の収益性や在庫日数(在庫回転)に着目したかというと、

小売業は粗利率x回転率ミックスのビジネスであり、構造が全く違うカテゴリーに手を出すと、既存のビジネスと折り合いが上手く行かなくなり、バランスを崩し(売れない、儲からない、在庫過多に苦しむなど)、早々に失敗、撤退になる事例が少なからずあるからです。

一方、既存ビジネスと客層が近い、あるいはすそ野を広げる効果があり、既存ビジネスと比べ、適度に利益率が高めで、適度に回転率が良ければ、儲かる、良いビジネスと認識され、次のビジネスの柱や成長エンジンになることもあり得ます。

例えば、ユニクロがかつて取り組んだ野菜などは、企業力はあり、志は評価できたとは思いますが、全く違うビジネス構造、本当に畑違いのへの取り組みが上手く行かなかった要因だったと見ています。

そういう意味で、ニトリの既存の損益構造や在庫効率は、製造小売業であること、数字を見る限り、アパレルのそれに近いことと、古くから、ホームファッションというカテゴリーの商品開発において、コーディネート思考を持っているという点で・・・

少なくとも、季節性のある、継続販売も視野に入れたベーシックアパレル群であれば、決して、全くの畑違いとは言えず、全く別のビジネスに取り組むわけではなく、社内理解度も早く、やりよう次第で上手く行く、規模の大きくなる可能性があるのではないかと期待ができます。

先日、ららぽーと立飛のニトリのアパレル業態 N+(エヌ・プラス)を拝見して、ミセス向けの2490円-2990円あたりがプライスポイントのベーシックアパレル店という印象を受けました。

かつての米リミテッド・ストアやタルボットを見る思いでしたが・・・日本では、ドゥクラッセやベルーナの間くらいの位置づけになるのかも知れません。

N+のオンラインサイトでは、ZARAの店頭提案のようにカラー別のコーディネート提案をアピールしていたので、コーディネートにこだわるニトリがどんな売場をつくっているのか?と思って見てみましたが・・・

あいにく売場が狭い(40坪程度)こともあり、カラーコーディネート提案ではなく、品番でくくった、あまり特徴のない、価格訴求の普通の品種別売場にしか見えませんでした。

アパレル経験者を雇い、まだ規模が小さいので、自前ではなく、アウトソーシングを活用して商品開発をしているとのこと。

しかしながら、ホームファッションの隣にあるマーケットとしての、婦人ベーシックアパレル市場は、同社にとって、決して悪くはない、大きく、新しい開拓市場のひとつではないか、と思ったものでした。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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【参考書籍】

ニトリの強さ、人財育成がよくわかる本です。

「ニトリの働き方」(大和書房)

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