July 27, 2020

セシルマクビー全店閉鎖で考える、ブランドのライフサイクルの見極めと対応

先週、1330257_m 1990年台から2000年台前半に業界のトップランナーのひとつだった
と言っても過言ではない、マルキューブランドの代表格である「セシルマクビー」が

1987年の創業から33年目となる今年(2020年)、
全店を閉鎖してストアブランドとしての歴史の幕を閉じることになった

というニュースが報道され、

SNS拡散、TVのバラエティ番組でも取り上げられるなど、大きな話題になりました。

同ブランドを展開するジャパンイマジネーション社は
今後、これから市場性が見込める4つのブランドに絞って、それらを運営する子会社を存続し、

自らは「セシルマクビー」ブランドのライセンス管理を行う形で事業を継続されるとのことです。

このニュースを聴いて、
業界の一時代を盛り上げた同ブランドと同社の功績に敬服すると共に
客層を絞った、個性のあるブランドには、
やはりライフサイクルというものがあるのだということを
あらためて感じさせられたものでした。

WWDジャパンさんの2つの関連記事

「セシルマクビーの時代の終わりはずっと前から感じていた」 社長が語る全店閉鎖の背景

ジャパンイマジネーションが「セシルマクビー」全店閉店

を読むとわかるのですが、

筆者がこれまでいろいろなストアブランドの分析をお手伝いして感じた
「ブランドや事業のライフサイクルの仮説」が
セシルマクビーにも当てはまることを感じたので、ここでご紹介したいと思います。

まず、
上記WWDジャパンの2つの記事の同社の社長さんのコメントと記者の方の解説をまとめて

セシルマクビーのライフサイクルの仮説を整理すると
以下のような感じになりました。【 】内は 筆者の視点で独自に定義したものです

1987~1994年の8年間 【導入期】ブランド立ち上げから店舗拡大とともに知名度が高まり始める時期
1995~2004年の10年間 【成長期】ブレイク~売上右肩上がり 
2005~2014年の10年間 【成熟期】店舗数拡大とともに全体売上拡大できても1店舗あたり販売効率が下がる
2015~2020年の6年間 【衰退期】事業赤字が続く

そして、2019年にテイストと客層若返りのリ・ブランディングを図ったものの、
2020年の今春、コロナショックに見舞われ、全店閉鎖の決断に至った

というものです。

これまで分析させていただいた多くのアパレルブランド事業に共通していたのは
神田昌典さんによるプロダクト系のマーケティング理論にもあるように、

ある事業が導入期から成長期に入ったところ、
つまり売上前年比が急激(25%以上複数年)に伸び始める時期がわかると

1)それまでにかかった年数のおおよそ4倍がブランドの寿命になる
そして
2)導入~衰退までの4つの期はほぼ同じ長さになる、
という仮説で

まさにセシルマクビーにも
この仮説が当てはまっているように思えます。

導入~ブレイク(成長期スタート)まで 
約8年 x 4= ブランド寿命 32年

そして、ここからは筆者の臆測になりますが、

おそらく、店舗拡大による売上高のピークは
成熟期2005年~2014年の間にあったと思いますが、

営業利益高のピークはちょうど成長期から成熟期に移行する
2004~5年あたりだったのではないかと思われます。

そう、これは 前年度比較ではなく・・・
業績を時系列に並べて振り返って見ないと
なかなかわからないかも知れませんが、

出店によって規模拡大はできても、販売効率が下がり始め
営業利益高がピークアウトしたな~
と感じた時が成熟期入り

気づいたにもかかわらず、再成長のための何らかのてこ入れをせず、
成功体験に執着して突っ走っていると
いずれは衰退期を待つばかり・・・

というのが多くの「儲からなくなった」事業の
時系列分析から気づく共通項です。

これに対して、

この仮説に立って考えれば、いつ頃、成熟期を迎えるかの予測はできるわけですから、

〇 海外市場を開拓したり、
〇 成長の見込める新カテゴリーの導入をしたり
〇 リ・ブランディングを図る

などが成熟期のまま衰退期(赤字続き)に陥らないための対処療法になるわけです。

業界を見渡すと、

海外市場に軸足を移して成長軌道を持続した数少ない成功例のひとつは
ユニクロでしょうか。

国内に絞って改革をするのであれば、

既存事業や既存の品揃えに固執せず、

◎より客層が広く、

◎販売効率がよい、あるいは

◎より利益率の取れる新カテゴリーを導入したり、

また、

◎より幅広い客層が見込める新事業に軸足を移す

ことによって、新たな成長ドライバーを育て、利益を高めたり、

◎ブランドのイメージや商品構成を一新して客層を増やす、あるいは

◎客層を変更するリ・ブランディングを行う

のが対処例になるでしょう。

この点で、これまで国内中心に比較的うまく対処されて来たと思われるのは
アダストリア社やユナイテッドアローズ社あたりでしょうか。

しかし、個性が強いブランドに至っては・・・
割り切って事業終了も視野に入れて、

早めに、別業態・別ブランドを育て、成長の軸足を移す
一方で旧ブランドは店舗リストラ、フェイドアウトを進める、

というのも企業存続の選択肢のひとつかと思います。

もっとも、既存ブランドの成功・貢献の会社へのインパクトが大きすぎると、
乗り換えは、かなり困難を極めるとは思いますが・・・

さて、話をジャパンイマジネーション社に戻しますが、

同社は幸い、借金がなく、
主力業態であったセシルの店舗閉鎖を決め
かなりのダウンサイジングをして
なおかつ、知名度を生かしたライセンスを収入源に、企業として営業継続する選択肢を選ばれました。

会社を成長させてブランドを終了するというのは
そのブランドのために社内外で働く方々がいらっしゃいますから、
本当に苦渋の決断だったと思います。

しかし、今回の決断がもっと遅ければ、
取り返しのつかないことになっていたかも知れません。

「セシルマクビー」ブランドの終焉は残念ではありますが・・・

記事の中で社長さんが最も気にかけられていらっしゃるように
お辞めになる方々の進路についてはしっかりフォローして頂きたいと思っています。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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July 20, 2020

EC拡大時代に理解しておきたい、実店舗販売とEC販売の損益構造の違い

コロナ禍の休業でECがほぼ唯一の接点となって以来、
ファッション業界では自社EC強化、再強化への取り組みが加速しています。

先日、
今後、EC、店舗、物流がどう変わるか?というテーマで1ukcc003

在庫管理のクラウドサービスを提供しているロジザードの金澤茂則社長と

小売業のオムニチャネル化の実務経験を持つ
オムニチャネルコンサルタントの逸見光次郎さんと

公開オンライン対談をさせて頂いた時の要約記事が公開されましたのでご紹介させていただきます。

EC・店舗、物流はどう変わる? どう変える?

筆者は長年、成長専門店の在庫最適化のご支援を生業にして来ましたが、

ここ数年は、クライアント企業さんのECの売上が増えるに従って、
実店舗とEC間の在庫調整のしかたなどのご相談も増え、
この間、感じて来たことを、
これからECを強化する専門店さんの立場でお話しさせて頂いたものです。

EC販売は
店舗家賃という固定費がかからず、
比較的 事業部の一人あたりの生産性が高いため、
店舗販売よりも儲かる、という一般論がある一方で、

売上伸び率は高いが、
実際は店舗よりも利益が出しづらいという企業さんが少なくないのも現実です。

その理由を理解するために、
これからEC売上を拡大、あるいは再強化する前に、
実店舗とECの損益構造(P/L)の違いを十分理解しておく必要があると思っています。

着目したいのは、販売管理費の構成の違いです。

最もウエイトが違う物流費は

店舗販売(倉庫店舗間)に携わっているとあまり気にならないかも知れませんが、

EC(宅配)向けの物流においては店舗物流に対して、
売上対比で倍近くがかかり
単価が安い商品を扱っている企業の場合は
更に倍(店舗物流の4倍)もかかるので経営課題として浮上します。

その理由は
商品取り扱い料(入出庫、梱包費)と
宅配運賃(送料) 
にあります。

物流というものは
歴史的にBtoB(倉庫間店舗間)向けに効率化、最適化されて来たものですが、
BtoC(企業から顧客宅配)はまだまだ途上と言わざるを得ません。

「宅配クライシス」で話題になった

配達員のキャパシティや再配達問題はまだその一部に過ぎません。

店舗販売における販売管理費の中身は固定費が圧倒的に多く、
売上が上れば、固定費分を上回る粗利はそのまま利益にプラスになる、というわかりやすさですが、

EC販売では、固定費部分は少なく(主に社内人件費)、
一方、売上連動型(%)の変動費の他に出荷1件あたりの経費(単価)という変動費があって、
この後者の出荷1件あたりの変動費というか、件数あたりで、単価でかかるコストがネックになります。

要は、

1,000円分の商品を出荷しようが、10,000円分の商品を出荷しようが
同額かかってしまうコストです。

特に宅配運賃(配送料)が大きなウエイトを占めるものです。

それゆえ、安易な「送料無料」は、低価格品を販売する企業にとっては、
極めて気をつけなければならない、損益改善のボトルネックになるわけです。

これらを実感するためには、

総売上高に対する損益計算書(PL)を見ているだけではわかりません。

また、変動費だ、固定費だ、物流費だ、システム費だ・・・というと
混乱して来そうですが、

「出荷1件あたりの」採算(収益構造)モデルをつくると
かかる費用の構造とともに1件あたりコストがつかめ、利益の改善にあたり、課題がどこにあり、どこに切り込めばよいかがわかりやすくなるものです。

実は、そう難しく考えることはありません、
そもそも、小売業に従事するものであれば、
「出荷1件あたりの売上高」は
店舗における「客単価」と同じもの

顧客1件あたりの平均売上と損益の積み上げが小売業の商売の基本と考えれば
理解しやすいものです。

EC拡大局面において、新しい購買行動に対応したECという販売方法が
経費倒れにならないように、是非、商売人として採算感覚を持って進めていただきたいと思います。

以前、WWDジャパンさんに寄稿した関連記事がありますので、ご参考にしていただければと思います。

①下がり続ける出荷単価と上昇する物流費の狭間で格闘するZOZOについて

ファッションECの雄 ZOZOの決算書から学べること

②単価が低くてECが店舗ほど利益を上げられないユニクロについて

EC化率アップだけでは儲からない「ユニクロ」

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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