June 14, 2022

ユニクロが秋冬から値上げする商品、価格を据え置く商品とその意図は?

Uq-harajyuku_202206141302016月7日のユニクロのメディア向け秋冬展示会で一部の商品の値下げを発表しことを、メディア各社が大きく報道していました。

各社の報道によれば、値上げする秋冬商品の税込価格は、

フリースが従来の1990円から2990円へ、

ウルトラライトダウンが同5990円から6990円へ、

ヒートテック肌着(極暖)は1500円から1990円へ、

同(超極暖)は1990円から2990円へ、

カシミヤクールネックセーター(ウィメンズ)は8990円から9990円

という感じです。

一方、なぜか値上げする品目だけを取り上げ
ヒートテックの通常モデルの990円、ジーンズの3990円など定番品の価格の据え置きについては報道しないメディアもあったのが、値上げだけに注目しているようで、逆に不思議に感じました。

いわゆる「ユニクロプライス=1990円」の象徴であるフリースが1000円値上げになったことはキャッチーなニュースですが、

エントリー商品と言える、多くのお客さんが数をたくさん買ったり、目的購入をされる商品の価格を据え置いたのはとても賢明で、

むしろそういった入口にあたる商品との差別化が明確に図れたり、

上層マーケットではもっと高く売られているアイテムを値上げすることによって、
商品開発者がどんな付加価値をつけるか、にチャレンジをすることは

柳井会長が言われた通り、考え抜かれた結果なのだと合点が行きました。

フリースあたりはもうプロダクトライフサイクル的も衰退期に入っている可能性があるので、むしろ値段を上げて革新的に生まれ変わるリニューアル(脱皮)の良いチャンスかも知れませんし・・・

今回のユニクロの秋冬からの価格設定のニュースを聞いて
あのユニクロですら値上げをしたのだから、うちも全般的な値上げをしてもよい!などと手放しに考えるのか

ユニクロが据え置いたアイテムとそれらの価格の意図に注目して、
自社に照らし合わせた場合、どこで原価アップ分を吸収し、どこで付加価値を表現するかを考え抜いた上で価格設定をするのかで

秋冬の買い上げ客数と利益額は大きく変わって来るでしょう。

今回の決断はシーズン仕入れを担う商品部MD職任せのマターではなく、

事業を大きく左右する、まさに経営者マターの話です。

まずは小売業が方針を明らかにし、リーダーシップを持って、会社ぐるみでサプライチェーンのお取引先と相互協力体制をとり、この難局を乗り越えましょう。

なお、原油や食品など原材料相場が製品価格に直結する、原価構成比に占める割合が高い生活必需品の消費財と、同じ消費財でも、アパレルのような原材料に対して、つける付加価値の方が圧倒的に大きい、そして、代替え可能な選択肢が多い商品を同じ理屈で考え、食品は値上げしているのだから、衣料も値上げすべき、という理屈には無理があると思っています。

食品は食べなければ生きて行けませんが、衣料品の場合、明らかに高くなったと感じたら購入を見送ったり、本当に必要であれば、比較的安価な他社で購入することになるでしょう。

小売業にとっては購入頂ける客数が生命線のひとつです。

今回、思い切ってリブランディングするなら話は別ですが・・・

客数を左右する価格設定は古い原価率に基づく公式ではなく、考え抜いて再定義する、いい機会にしたいものです。

6月17日に開催されるWWD JAPAN主催の アパレル値上げ対策セミナー(オンライン)に登壇します。
原価高騰下の価格見直しや業務再構築の気づきを得ていただければ幸いです。(6月16日正午締切です)

https://wwdjapan-businessseminar20220617.peatix.com/

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考書籍】

顧客購買行動に対して品揃え計画(MD)およびシーズン中の在庫運用(DB)を考えるビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

こちらは電子書籍 Kindle版 です。経営者様、経営企画の方、MD、DB職の方に読んで頂きたいです。

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June 06, 2022

晴雨兼用アイテムの市場潜在性

Photo_20220613130001梅雨の季節になると

百貨店の傘売り場やレイングッズ販売の
ニュースを見かけるようになりますが、

6月2日の日経MJの「ヒットのクスリ」などに
富山県のレイングッズメーカー、カジメイク社が

おしゃれなレインウエアやグッズを販売する直営店
「アメトハレ」を新宿の丸井に開いたという記事が掲載されていました。

以前もブログでご紹介させて頂きましたが

関連エントリーー気温に合わせて品ぞろえ計画、在庫運用を考え直す

気温や天候に大きく左右されるビジネスであるファッション販売に携わっていると
最高気温、最低気温、天気を気にしながら
クライアントさんたちと在庫コントロールを考えるわけですが、

上記エントリーで過去の天気をご紹介した以降も

気象庁の例えば東京都心部のデータでは

春は約2カ月
夏は約5カ月
秋は約1カ月
冬は約4カ月

※注:春は最高気温15度越え、夏は同25度越え、秋は最低気温が15度以下、冬は同10度未満の日にちが継続的に続き始めるところでカウントしています。

であるのと共に、

年間降水日(日中の天気に雨が含まれる日)は毎年100日を超えているのが現実です。

ちなみにカジメイクさんのアメトハレのサイトを見ると、
富山県は1年の半分の日に雨が降る全国でも雨が多い地域のようですね。

アメトハレサイト 

北陸が合繊生地の産地というのもあるかと思いますが、
そんな環境が同社のビジネスの原点にあることが頷けます。

ここまで気温や天気の傾向が、従来の業界の常識と変わって来ていることが
データではっきり認識できるのなら・・・

もう、天候を「売れなかった言い訳」にするのはやめて(笑)

むしろここまで長くなった夏、そして雨の日が多いことをいかにビジネスチャンスに換えるか?

を考えたい、という話は既述のエントリーでもお伝えしたことです。

生活者のお困りごとのひとつに

雨の日に着用して出かけてもストレスを感じない服や靴があり、

一方、昔ながらの雨具専業メーカーさんが提供する
機能第一の雨の日専用グッズでは満たされない需要があるとします。

私も雨の日対応グッズをいくつかもっていますが、購入の際、選択肢が限られ、使用頻度が低い上に
昔ながらのデザインのものが多く、結局、妥協しているのが現実です。

そんなレイングッズを使用シーンが限られる「特殊な商品」ではなく
年間の3分の1以上の日に使える大きな潜在市場ととらえると

どんなことが考えられるでしょうか?

雨の日はもちろん、晴れの日でも普通に着る、履く、使うことができる

デザイン性や使い勝手を持つことがマーケット拡大のひとつのきっかけになるかも知れません。

ここ数年、家でも洗濯できる服が多くの生活者に支持され、「選ばれる基準」になったように

雨の日にも着ることができる晴雨兼用という概念はこれから「選ばれる理由」になるかも知れませんし、

また、サステナブルの観点から購入した服のメンテナンス情報を発信するアパレル企業が増えているように

雨で濡れた服や靴の手軽なメンテナンスの提案は

生活者に潜在的なお困りごとを認識してもらうことで開拓余地のある大きいマーケットの開発につながるかも知れませんね。

作業服として開発した商品をアウトドアウエアやタウンウエアとして、提案し一気に購買客層を増やしてブレイクしたのは
ワークマンですが

同社がワークマンプラスやワークマン女子などアウトドア用品店に続いて、最近スタートしたシューズ専門業態の次は
レイン対応グッズの専用業態を出店することを考えているようです。

多くのメディアが注目すると、これからレイン対応グッズにあらためて目が向けられることになるかも知れません。

憂鬱な雨の日の選択肢を楽しく広げてくれる
着用シーンが限られると思われた雨の日の生活者のお困りごとに着目し、

晴れの日にも兼用出来るアイテム これからそんな潜在市場が顕在化して行くような気がして楽しみです。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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May 31, 2022

アパレル販売の需要予測とは?

2_20220607170601先日、所属する日本オムニチャネル協会のサプライチェーン部会のセミナーで
需要予測をテーマに食品とアパレルの違いをディスカッションする機会がありました。

筆者はアパレルの「需要予測」が語られる時、多くの誤解があると思っています。

多くの場合、例えば、

シーズン毎にヒット商品を当てること、
そして、それがどれだけ売れるかを事前に予測して、
ドーンと計画生産することが需要予測であると思わている方が少なくないようです。

半期やシーズン単位で考えるメーカーの場合はそうかも知れません。

しかし、少なくとも、アパレル小売業の場合は・・・

シーズン中の需要の高まる実売期(ピーク週と呼びます)が何時で、
その時に何をどれだけ販売して目標を達成するか?という

品揃え計画と商品販売計画の仮説を立てることが
「需要予測」に当たるのです。

この計画を立てる上で第一に前提にすべきは、

顧客購買行動です。

気温と共に装いを変える生活者は

わかりやすいくらい、季節の最高気温や最低気温に反応しますし、

そして、連休やイベントに連動した行動をとることがわかっています。

過去20年間、たくさんのブランドの「売上週波動」というものを見て来ましたが

同じ立地で商売をするブランドであれば、
コロナの影響を受けた20年と21年を除いては

毎年ほぼ変わらない波を描くもので、それは、まさしく「顧客購買行動」そのものの現れと見ても差支えありません。

では、その需要の波が高まる
実売期=ピーク週周辺にどんな商品を販売するか?

こちらもビジネスでよく用いられるパレートの法則のように、

面白いように、売上上位商品に大多数の割合が集中するのが常です。
(これには理由がありますが、またの機会に)

そこまで販売機会と枠組みがわかっていれば、あとは、

「生活者はコーディネートして着用する」

その真理を前提にして、その枠組みにどんな商品を当て込むのか?

という仮説と議論になります。

当て込めさえすれば販売目標に対する計画数はある程度、ほぼ自動的に計算することができるものです。

これがアパレル小売業の「需要予測」にあたるものです。

しかしながら、中長期的な需要予測が当たらないことは
多くのビジネスパーソンなら知っている通りです。

一方、そんな市場の中で

当初の仮説が需要とズレていることにすぐ気づくことができるのは
生活者最前線で日々販売に当たっている小売業最大のメリットです。

ですから、一旦は仮説(計画)を立ててシーズンを迎えるものの、

シーズン中の実需要にあわせてできる限り軌道修正すればいいのです。

それが出来たか、出来なかったかで利益が決まるのが、
小売ビジネスというものです。

ユニクロにしても、ZARAにしても規模が大きいからではなく、

軌道修正力があるからこそ日本一、世界一になっていること

を忘れてはいけません。

とても興味深いのは、その反対に

「規模が小さかったころの方が軌道修正力があった」

と振り返る経営者さんが結構いらっしゃるのも現実です。

規模が大きくなって、スケールメリットを出せるようになったはずなのに・・・

むしろ軌道修正力が落ちているとしたら

それは、いったい、なぜでしょうか?

思い当たるようであれば、是非、オペレーションを見直してみてください。

「販売計画は外れることを前提にシーズン販売に臨む」

規模に関わらず、それが小売業にとって基本的な考え方であると、
キモに銘じたいものです。

関連して、話は少し変わりますが、

リアルでも、オンラインでも、直営店だけで商売をしていれば、

ある程度は需要波動に基づく、リズムを持った読めるビジネスができるものですが、

悩ましいのは、そのリズムを乱すイベントの数々です。

商業施設の期間限定プロモーションはまだしも・・・

昨今、ECモールなどでの

突発的なセールによってつくり出される需要波動=異常値

は実に頭が痛いです。

確かに、スタートアップ期に急速に一定の規模に拡大するためには
それが必要な時もありますし、その一定規模までは対応可能でしょう。

しかし、この異常値を当たりまえに自転車操業的なビジネスを続けていると
操業リズムが崩れ、

売上が上がっても経費ばかりが掛かり過ぎて、利益が残らない

そんなことが社内の身の回りで起こって全体が混乱してはいないでしょうか?

まずは、生活者の需要がつくり出す、自然な需要波動に忠実に。

それを踏まえた上で、意図的に作り出した二階建ての二階部分の異常値なら
まだ許容範囲と言えるでしょう。

 

食品業界の需要予測の話を聞いて、アパレル業界の需要予測の話をした上で、

その後パネラーの皆さんと行ったディスカッションがとても面白かったです。

そこで気づいたことは・・・

食品のような日販品を扱う小売業では
商品を仕入れる人と販売する人の業務サイクルが近いこと。

なぜならば、

毎年、品揃えが大きく変わらない商品を
共に短期間で調達して、短期間で売り切ろうとしているからです。

ですから、仕入担当も販売担当も息を合わせやすいのです。

一方、

アパレルのような専門店では

商品を仕入れる人は
主に次のシーズンの仕入れのこと、つまり、数か月先のことを考え

販売する人は
今日、今週、今月のことを考えているため、

両者の業務のリズムと重きを置いているスコープは大きく異なります。

専門店の場合、

季節ごとに変化するたくさんの商品をたくさんの仕入れ先から仕入れますので

「調達」と「販売」が役割分担できるというメリットはありますが・・・

業務サイクル、リズムの違いから、両者の思いが噛み合わず、

売り逃しをしたり、逆に過剰在庫を抱えてしまうデメリットもはらんでいます。

長年、ファッション業界を見ていると

かつては販売をしていた人が調達側にまわった途端
作り手の都合に変わってしまうことを痛感します。

小売業はあくまでも顧客を中心にした変化対応業

需要が見え始めたものに対していかに変化対応できるかがキモになります。

生活者そして、それをお手伝いする販売スタッフ目線で
どう柔軟にサプライチェーンをコントロールするか

いつになっても、それを忘れてはいけないことを
同じ生活者を相手にしている異業種の方々の話を伺いながら、
ますますその思いを強くしたものでした。

【お知らせ】 このブログの筆者であり、ファッション流通の全体最適を目指す在庫コントロールの実践指導の業界第一人者である齊藤孝浩から直接学べるオンラインセミナー

 「3つの視点を共有するだけで過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!~在庫コントロールのための組織づくりの秘訣」

次回は7月21日(木)開催です。

・なぜ過剰在庫を抱えてしまうのか?
・どうして思うような利益が稼げないのか?
・毎シーズン、売れ残り在庫が増えるのはなぜか?

たった3時間で現状の自社の在庫コントロールの問題点が総点検でき、これから進めるべき優先順位が整理できるお得なセミナーです。

詳しくはこちらから→ https://dwks.jp/seminar2022/

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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May 24, 2022

ECモールとブランド実店舗との協業 ZOZOTOWNのゾゾモが提供する店舗への来店促進機能

Zozo5月24日の繊研新聞にZOZOTOWNの新サービス、ゾゾモが順調に拡大しているという記事が掲載されていました。

このサービスは顧客がZOZOTOWNで見た商品を店舗で見たいと思った時、在庫のある店舗の場所を確認した上で取り置きができる機能で、同社はこのサービス機能経由で、顧客をテナントの実店舗に誘導し、その商品が実際購入につながった時は12%の手数料を受け取るというサービスです。

記事によれば、対象店舗700店舗からスタートした取り組みは現在、1400店舗まで広がっているようで、実際にブランド側からも評価を得ているとのこと。

以前から、

日本最大級のトラフィックを誇るZOZOTOWNで見た商品をスクショして店舗に持ってくるお客さんが多いことは、多くのブランドの方々から聞いていましたが(その購買行動は非常によくわかります)、

顧客を取り合うのではなく、お互いのチャンスを顧客購買行動に逆らわずにサポートするために、
ZOZOTOWNがその機能を実装し、ブランド実店舗と協業することは面白いと思っていました。

今や、自社ECは実店舗のユーザーの利便性のために活用し、ECモールは新規顧客との出会いの場と使い分けるブランドが多い中、

手数料はかかりますが、新規顧客を店舗に誘導できる理にかなったサービスだと思います。

ZOZOTOWNの集客力を利用しながら、モールの中では埋もれないように自社商品が上手く検索してもらえるように工夫をし、ゾゾモ経由でいかにリアル店舗で新規顧客を獲得するか、この機能を利用したブランドの知恵の絞りどころいろいろありそうですね。

関連エントリーーZOZOの商品取扱高手数料収入以外の収入に注目

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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May 16, 2022

世界アパレル専門店売上高ランキング2021トップ10 

Zara-london_20220516125801世界がパンデミックからの回復が進む2021年度。世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃いましたので、毎年恒例になりました売上高ランキングTOP10を共有させていただきますね。

今回、売上高の増減はコロナ前からの回復度合いを見るために、19年度比とさせていただいております。

 円建て比較にあたり、為替レートは2022年1月末の €=128.66円、スウェーデンクローナ=12.24円、US$=115.14円、英国£=154.72円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 19年比増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2022.1期) 2兆5,659億円 -2.0% 5,509億円 15.4% 6,477 ZARA
2位 H&M (瑞;2021.11期) 2兆4,341億円 -14.6% 1,867億円 7.7% 4,801 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2021.8期) 2兆1,329億円 -6.9% 2,490億円 11.7% 3,527 UNIQLO
4位 GAP (米;2022.1期) 1兆9,278億円 +1.9% 935億円 4.9% 3,399 OLD NAVY
5位 プライマーク (愛;2021.9期) 8,653億円 -28.2% 642億円 7.4% 398 Primark
6位 ビクトリアズシークレット (米;2022.1期) 7,831億円 -9.7% 1,003億円 12.8% 899 Victoria’s Secret
7位 NEXT (英;2022.1期) 7,522億円 11.5% 1,393億円 18.5% 477 NEXT
8位 ルルレモン (加;2022.1期) 7,221億円 57.2% 1,538億円 21.3% 574 Lulu Lemon
9位 しまむら (日;2022.2期) 5,836億円 11.8% 494億円 8.5% 2,204 しまむら
10位 アメリカンイーグル (米;2022.1期) 5,783億円 16.3% 682億円 11.8% 1,133 AEO

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアはブランド企業の余剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンのC&Aおよび、中国産地からの越境ECのみでアメリカ、中東など世界中に売り込み、急速に拡大を続けるファストファッション企業、SHEIN(シーイン)あたりもTOP10の5位前後にランクインする規模と思われますが、それぞれ、正確な売上高がつかめなかったため、除外しております。 

【解説】

まず、回復が最も著しいのはアメリカ勢ですね。政府から消費者に手厚い給付金が何回も支給されたアメリカの小売業は総じて活況とのこと。

ギャップ、バナリパはリストラ中もオールドネイビーが絶好調のGAP、
前年にLブランズ社から分社化されたヴィクトリアズ・シークレットのカムバック、
エアリの評価が高いアメリカンイーグルの業績回復、黒字化が顕著です。

欧州市場がメインマーケットのため、まだ回復途上ではありますが、ZARAを展開するインディテックスも、中国で不買運動が起きて大きく売上を落としたH&Mも、アメリカ市場の業績がそれ以上に好調で、その好景気の波に乗ったと言っても過言ではありません。

関連エントリーー分社化が完了し、ヘルス&ビューティー企業となったLブランズ(エル・ブランズ)

次に、外出自粛、営業制限で加速したEコマース対応について。
店舗の売上回復と共に、EC売上比率が下がった企業が多いですが、引き続き各社のEC売上そのものは伸び続けています。

特に各国のEC倉庫在庫と店舗のバックヤード在庫の一元化が完了したインディテックス(EC化率は前期32.4%→当期25.5%)、

EC注文の翌日店舗無料受取りを可能にしているネクスト(EC化率は65.3%→63.8%)の伸びは大きいです。

コロナ禍が加速させた、オンラインとオフラインを行き来してお買い物をする消費者購買行動へのシフトに対応することは小売業にとって待ったなしであることは間違いありません。

関連エントリーーZARA(ザラ)のインディテックスの2022年1月期(FY2021)決算。最高益間近の回復力の源泉はオムニチャネル施策と・・・

関連エントリーーロンドンで進化するクリック&コレクトと通販受け取り拠点の多様化

その一方で、トップ10企業の中でも最低価格帯のプライマーク(第5位)は、引き続き、一切、Eコマースを行っていません。

但し、オンラインサイトの掲載商品比率を全体の70%まで上げ、サイトで見た商品の近隣店舗の在庫を表示することで、店舗でのお買い物前にオンラインでスタイリングや商品の下調べを楽しめる環境は整えています。

しまむらも引き続き売上は全社売上比1%にも満たない状況です。しかも、EC売上の9割は店舗で、送料無料で受け取られているという現実。

2社の動向から読み取れるのは、低価格品を扱う企業にとっては、送料のかかる宅配ECは適しづらいということでしょう。

このように、EC購買が進む時代においては、在庫と物流がカギを握ることになりますね。

この点に早くから投資をし続けているのは、ネクスト。

同社は自社商品以外のブランドも自社ECで販売したり、自社物流網に乗せて配送したりしています。更に、自社が構築したインフラを活用し、顧客向け宅配物流(フルフィルメント)や他社のECサイト運営代行まで手掛け、いわゆるプラットフォーマーとしての収入も高まって来ています。

また、物流の重要性に目をつけた、アメリカンイーグルは3PL(サードパーティロジスティックス)の物流企業を買収し、他社のEC販売商品も運び始めました。

各社の取り組みから、これからの流通はいかに物流に投資するかの時代であることも読み取れます。

最後になりましたが、

今回、ヨガやランニング用のアスレチックアパレルを販売する、いわゆるライフスタイル提案型のルルレモン社(カナダ)が世界トップ10規模になり、営業利益率21.3%!という10社中、最も高い営業利益率で成長を続けていることを指摘しておきたいです。(EC化率は前期52.0%→当期44.0%)

これまでバリューやコスパの競争であった世界の大手アパレルチェーンの一角に・・・

いよいよライフスタイル、高付加価値商品、コミュニティストアをテーマとしたチェーンが食い込んで来たのは

新しい時代の幕開けではないでしょうか?

ルルレモンのランクインを歓迎し、今後もそんな付加価値提供型の企業が成長企業として台頭してくることを期待したいと思います。
                               
最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

昨年のランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上ランキング2020 トップ10

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【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、在庫管理、拡大戦略の参考にしていただける内容に仕上げました。SHEINやルルレモンなど新しい勢力を理解するにも、常勝企業の原理原則を知ることで見方が変わってくるはずです。

 「ユニクロ対ZARA」(2014年発売) を2018年のデータでアップデートした文庫本です。

 

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