December 18, 2023

アマゾンも臨戦態勢、中国発産直越境EC対策で衣料品の手数料下げ

Dsc0907112月12日の日経新聞によれば、アマゾンは、中国系EC、特にSHEINに対抗するために米国で衣料品の手数料を大幅に下げる戦略を打ち出したとのこと。

アマゾン、米で衣料手数料下げ 中国系ECに対抗

2024年1月から、15ドル未満の衣料品の手数料を17%から5%へ、15ドル~20ドルの商品は10%へと削減するようです。

これは、中国の中小縫製工場を利用し、低価格で大量の新製品を出すSHEINのような企業への対策として注目です。

SHEINは、安価で多様な商品を提供し、11月に米国でのIPOを申請した模様。これに対し、アマゾンは衣料品で米EC市場の約4割を占めているものの、SHEINの成長に脅威を感じていることがわかります。また、今後、EC機能の強化を図るTikTokとの国内競争も激化することでしょう。

コロナ禍を機に世界で急成長を果たしたShein(シーイン)、それを追うTemu(ティーム―)、景気が回復しない国内市場から越境での海外向けに商品を販売したい中国製造業は、今後、ますます増えることでしょう。

これはアメリカだけに起こっている話ではありませんね。

日本の小売市場においても、このような海外で起こり始めている動向の中には

今後の大きな変化の予兆として、重要な示唆があるため見逃してはいけません。

特にオンラインの場合は、オフラインと違って、気づかないうちにそうなっていた、

ということにもなりかねませんからね。

対岸の火事と思わずに、自分ごととして、動向に注目したいものです。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【アパレル企業のビジネスモデルが丸わかり】

「図解 アパレルゲームチェンジャー

 ~流通業界の常識を変革する10のビジネスモデル」(日経BP社)

第2章ではSHEIN(シーイン)のビジネスモデルを

従来のグローバルアパレルチェーンの成長の方程式と比べることで

浮き彫りにしてみました。

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図解 アパレルゲームチェンジャー

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December 04, 2023

SHEIN(シーイン)が米国で上場申請 米国アパレルブランド売上ランキングから見る、アメリカアパレルの興亡と新興勢力の台頭

20180816_11542211月27日にSHEIN(シーイン)が米国で上場申請をしたという報道がありました(ロイターなど)。

同社の上場に関しては米国議会の議員から様々な圧力をかけられていましたが、踏みきる条件が整ったということでしょうか?

早くて来年、10兆円を越える時価総額の大型上場になる見込みです。

この報道があった日のZARAのインディテックスの株価時価総額は約19兆円、ファストリは約12兆円でした。

シーインの売上高は、2022年度 3兆円くらいというメディア報道があるので
売上が公開された時は世界第2位の売上規模、あるいは、ZARAインディテックスとトップ争いということになっているかも知れません。

同社にはいろいろな指摘や憶測が飛び交っていますが、同社が上場してベールを脱いだ時、どんなビジネスモデルなのか?

これまでのチェーンストア型の大手の手法とは全く異なる姿が明らかになるのが楽しみです。

同社のビジネスの最大マーケットは世界最大のマーケット、アメリカです。

アメリカのアパレルチェーンが米国内または北米でいくらくらい売上げているのか
最新決算期の情報から目ぼしいところをブランド単位で拾ってみましたので紹介したいと思います。

オールドネイビー     1兆792億円

ビクトリアズシークレット  7,504億円

ルルレモン         7,376億円

H&M            4,583億円

アメリカンイーグル     4,255億円

GAP            3,402億円

バナナリパブリック    2,221億円

ホリスター       約2,000億円

アバクロ        約1,700億円

ユニクロ         1,639億円

海外メディアによればSHEINのアメリカでの年商は5000億円超ということなので

現段階では、ルルレモンとH&Mの間くらいでしょうか?

ZARAの国別売上は非公開ですが、
IR資料から推測するに、世界シェア16%のスペイン本国の次に大きいマーケットということなので
おそらく、上記のGAPの次くらいになるのではないかと思われます。

この米国あるいは北米のアパレルチェーンの売上ランキングの数字を眺めて
みなさんはどんなことを感じましたでしょうか?

筆者は

さすが世界最大のアパレルマーケット、
メジャープレヤーの売上規模の大きさと

かつて世界一だったGAPブランドが
そこまで売上を落としていたのか、ということと

そしてユニクロの米国市場の伸び代でしょうか。

日本はもちろん、中国ももはや

「伸びしろ」は越境ビジネスです。

世界最大であり、成長を続けるアメリカマーケットでの各社動向は
グローバルビジネスに影響をもたらすことを意識して
注目しておきましょう。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【アパレル企業のビジネスモデルが丸わかり】

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November 13, 2023

中国発越境EC企業に学ぶ、新しいビジネス(商売)の作り方

20231113_16522411月13日の日経新聞に

中国発EC、米で急伸 という見出しで

中国を拠点にする越境EC 企業である
SHEIN(シーイン)と TEMU(ティーム―)のアメリカでのシェア拡大に関する記事が掲載されていました。

記事によれば、
アメリカでの今年10月の両社のアプリ月間利用者数は1億1000万人と前年比4倍
(これはあくまでもアプリ利用の数です)

その数はアメリカにおいて、Eコマース最大手アマゾンの利用者の9割に迫り、日本でのデータにおいてもアマゾンの6割に迫るとのこと。

SHEIN はアメリカでのビジネススタートから約10年が経過していますが、
直近の1年間でも倍になるという伸び、

TEMUは昨年22年9月のサービス開始から急増し、アメリカでの
アプリのダウンロード数はSHEINを上回り、トップを争っているようです。

SHEINのインフルエンサーを活用したオンラインマーケティングと国内の小ロット短サイクル生産を組み合わせたビジネスモデルは

中国国内においては、あたりまえで、新規性はなく、

そのため、同社はレッドオーシャンな中国国内市場を捨て、海外にその活路を求めて、見事に成功しました。

それゆえ、SHEINの中国国内での知名度はなかったため、競合企業がその急成長に気づくのが遅く、

SHEINの独走を許してしまったという背景があります。

それを、中国大手企業傘下のTEMUらが猛追するという構造です。
 
そもそも、SHEINとTEMUは同じように語られますが、ビジネスモデルは違います。

アパレル、雑貨中心で、自ら商品企画を行っているSHEINに対し(ODMや国内外のブランド仕入もありますが・・・)

TEMUはアパレルもありますが、雑貨全般でメーカー在庫を消費者とダイレクトにつないで販売するプラットフォーマー的(アマゾンのような)な調達の違いがあります。

価格が激安な理由は

ローカルの中間業者やバイヤーを介さない
「産地直送」だから。

そして、免税措置という

各国の「政府が決めたルール」を上手く利用しています。

いわゆる「中抜き」、であって
既存の、流通経路を崩しているのは確かですが

果たして、これをダンピング(不当廉売)と言ってよいのだろうか?

と報道記事を読んで違和感を覚えることがよくあります。

実際、日本から広州に買い付けに行っている方が

「彼らは我々の市場での買い付け価格で日本の消費者に売っているから、

価格では到底敵わない」

と嘆いていらっしゃったのが印象的でした。

業界の中には

最近報道されないから、ブームも去って下火だろ

とか

原宿のショールーム店もガラガラだし、

と言う方もいるようですが

とんでもない、

報道されないのは、メディアにとってメリットがないからであって、

周りに利用者や話題は着実に増えているし

シーインは女性中心
ティームーは男女共に(男性も少なくありません)

低価格やティーンズ・ヤング向けのアパレルチェーンに行って耳をすませば

「これ(同じような商品)、シーインだったらいくらだった」

という会話が聞こえて来ます。

オンラインという目に見えない拡大だからこそ
危機感を持たないのがおかしい

そんな話を先週も

カジュアルアパレルチェーンの経営者さんや
eコマースのプラットフォームを提供する企業の社長さんとも

世間話をさせて頂いたところでした。

彼らが「個人輸入」を販路にしていることについて、

中間業者の方は
政府が輸入規制するのを期待するのではなく、

むしろ、なぜ彼らが成長しているかを
是非考えたいところです。

ある意味

産地からの逆襲であり

リードタイムを短くして
在庫リスクを回避する
サプライチェーンのショートカット

という 

しがらみに囚われない

イノベーターというか、パイオニアというか
ゲームチェンジャー的な
商売人のアプローチを採っているのであって

「ずるい」と言うのではなく

「もし、あなたが今から新規ビジネスを始めるとしたら?」

どうするかを自問してみたいところです。

マーケティングは世界中のどこにいても
オンラインでリアルタイムにできる時代なら・・・

サプライチェーンは
材料がすべてが揃う、需要にあわせて
すぐにつくって配送できる

そんなところに拠点を置くことを
考えるべき時代であって

SHEINは

それに気づいて
地の利のある
広州を拠点にしたわけで

すでに広州だけでなく、
更なるグローバル化を標ぼうして

ブラジルやトルコにおいて
グローバルサプライチェーンの構築を着々と進めているのです。

同じことを考えて

韓国の調達ルートを見直したり

問屋街を背景にしたり

生地問屋街に拠点を置くことを考えている方々もいらっしゃいます。

アパレルに限定しなければ
もっと幅広い発想ができるのではないでしょうか?

流通は目に見えないところで
大きく変わっています。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【アパレル企業のビジネスモデルが丸わかり】

「図解 アパレルゲームチェンジャー

 ~流通業界の常識を変革する10のビジネスモデル」(日経BP社)

第2章では従来のグローバルSPAとSHEIN(シーイン)のビジネスモデルを比較して分析しています。

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October 02, 2023

越境ECの拡大、国内産業保護と消費者利益

20230520_100956日経新聞に経産省が発表した越境EC急拡大のデータと今後の問題点に関する記事が掲載されていました。

EC輸入急増、3年で小口宅配2.4倍 免税で競争ゆがみも

記事によれば、越境ECによる小口宅配(個人輸入)が3年で2.4倍

米国と中国からだけでも22年度 3954億円相当で前年比6%増

内訳は衣料品34%、美容品21% 娯楽・教育16%

日本では 輸入額1万6666円以下であれば消費税も関税も無税
アメリカでは 800ドルまで無税と聞いています。

ですから、トランプ氏が大統領だった時に中国からの輸入品にかけた
アパレルであれば25%の制裁的な関税が、

オバマ氏の時に採択された個人が輸入してしまえば800ドル
(今の為替なら10万円以上、一人でそんな買う人は稀では?)
まで無税で輸入できてしまうというわけで・・・。

SHEIN(シーイン)やTemu(ティーム―)の越境ECの売上がアメリカで急増している背景には、

そんな政府間の駆け引きや複数の業者が介在することで膨らむコストに対し、消費者視点で、生産者と消費者を直接つなぐチャレンジもあるわけです。

そこに気づいてビジネスを急拡大させるところは、ある意味、商売人として、商魂たくましいですよね。

記事によれば、欧州のいくつかの国では、国内市場の競争をゆがめるとして、
21年に免税枠を廃止されたとのこと。

アメリカや日本でも議論が始まっているようですが、どうなんでしょうか。

国内産業保護か、消費者保護か、という議論になるのでしょうか?

もともとの主旨はなんだったんでしょうかね。

まあ、各国で摩擦が起こるということは越境ECが一定規模を超えて社会問題というか国際問題のひとつになったことは間違い無さそうです。

しかし、こういった、政府が作ったルールに対して、それを不正ではなく、上手く活用したからと言って、

「アンフェア」だと言う論調は、ちょいと違和感を感じます。

筆者も時折、アメリカやイギリスから個人輸入してますんで、まずは「消費者のミカタ」です。

いずれにせよ、実態をつかんで、どれだけ影響があるのか、消費者にも納得のできる結論を出して欲しいところですが・・・

特に日本においては、ルールを変えるのには、しばらく時間はかかるでしょうね。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【アパレル企業のビジネスモデルが丸わかり】「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)
 第2章では、産直越境ECによるサプライチェーンとリードタイムの究極ショートカットを行ったSHEINのチャレンジについて解説しています。

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September 19, 2023

【このセミナーは終了しました】「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナーby WWDJAPAN

Wwd929コロナ禍を経て
世界のファッション流通マーケットの強豪たちは
いったいどんな風に変わり、どこへ向かっているのか?

毎年このブログでもリリースしている
世界アパレル専門店企業売上高ランキングをベースに

各社の動向やこれから10年の勝ち残りのカギを探ります。

2022年版ランキング公開から半年が経過してますので、その後の動向も付け加えてご説明させて頂きます。

グローバル時代、世界の動向は少なからずローカルマーケットに影響を及ぼします。

世界の流れを読み、国内ビジネスにどう取り入れるか、そんな視点を得て頂ければ幸いです。

9月29日(金) 13:30~15:00 オンライン

WWDJAPAN主催 有料セミナー

「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー

講師:「ユニクロ対ZARA」著者 ディマンドワークス 齊藤孝浩

お申込みはこちらから 
https://wwdjapan-businessseminar20230929.peatix.com/

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)

 高収益企業の決算書を図解すると見えて来る、従来の業界の常識とは真逆のアプローチとは?

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June 12, 2023

SHEIN(シーイン)を支える生産背景、中国広州アパレル産地レポートがWWDJAPANに掲載されました。

Shein-hqWWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

6月12日発売の連載 第50話目に、ウルトラファストファッションSHEIN(シーイン)の本拠地である中国広東省広州のアパレルサプライチェーンの現地視察レポートをまとめさせて頂きました。(筆者が5月下旬に実際に視察したもの)

世界の工場である中国の、アパレル一大産地である広州は生地、付属品の現物在庫を抱える巨大な市場があり、製品を5日でつくる背景を支えています。

そんな産地で取材をした中で、最も印象的だったのは、

SHEIN(シーイン)のようなIT業界から来たゲームチェンジャーたちが中心になって、
速く納めてくれるサプライヤーには、すぐに払う、

一方、バイヤー側は速く払うために、速く売ってキャッシュに換える、
既存の業界とは対極にあるキャッシュフロー経営が進んでいました。

安く作るために、大量受注、大量生産をしてしまっては、リードタイムも長くなり
サプライチェーン上の各所に溜まる在庫にキャッシュを寝かすことになりますが、

小ロットなら、多少コストが高くでも、
むしろ、速く換金でき、

サプライチェーン全体のキャッシュフローが豊かになるというメリットを
あらためて産地で考えさせられた次第でした。

世界のメディアでは、SHEIN(シーイン)のネガティブな面が大きく報道されますが、

実際、産地に行ってみると、メディアでは報道されない、

日銭商売である小売業として、我々も見習うべき

目から鱗の「商売の原点」をたくさん耳にすることも出来ます。

SHEIN(シーイン)は、

他にも業界のどんな常識を覆すことで、急成長したのか?

今後もアンテナを立てて、リサーチを続けたいと思います。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトでもお読み頂けます。

シーインのウルトラファストサプライチェーンの秘密を中国・広州で探る

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

【おススメ本】「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)
 第2章では、産地から、店舗を持たずに、世界の消費者に直接売り込む

 SHEIN(シーイン)のビジネスモデルの優位性について取り上げました。

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May 22, 2023

世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

Lulu-santa-monica

世界的なパンデミックを経て、躍進し、最高益を更新する企業と苦戦が続く企業の明暗が分かれた2022年度。世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃いましたので、毎年恒例の売上高ランキングTOP10を共有させていただきますね。

今回、売上高の増減はコロナ前からの回復度合いを見るために、19年度比とさせていただいております。

 円建て比較にあたり、為替レートは2023年1月末の €=141.3円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=130.5円、英国£=161.3円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 19年比増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2023.1期) 4兆6,019億円 +15.1% 7,799億円 16.9% 5,815 ZARA
2位 H&M (瑞;2022.11期) 2兆8,033億円 -4.0% 898億円 3.2% 4,465 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2022.8期) 2兆3,011億円 -0.5% 2,973億円 12.9% 3,562 UNIQLO
4位 GAP (米;2023.1期) 2兆0,374億円 -4.7% -90億円 -0.4% 3,352 OLD NAVY
5位 プライマーク (愛;2022.9期) 1兆2,412億円 -1.2% 1,219億円 9.8% 408 Primark
6位 ルルレモン (加;2023.1期) 1兆0,581億円 +103.8% 1,732億円 16.4% 655 Lulu Lemon
7位 NEXT (英;2023.1期) 8,731億円 +24.2% 1,519億円 17.4% 466 NEXT
8位 ヴィクトリアズシークレット (米;2023.1期) 8,277億円 -15.5% 738億円 8.9% 837 Victoria’s Secret
9位 アメリカンイーグル (米;2023.1期) 6,510億円 +15.5% 322億円 4.9% 1,175 AEO、Aerie
10位 しまむら (米;2023.2期) 6,161億円 +18.0% 533億円 8.7% 2,213 しまむら

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアはブランド企業の余剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンのC&Aおよび、中国産地からの越境ECのみでアメリカ、中東など世界中に売り込み、急速に拡大を続けるファストファッション企業、SHEIN(シーイン)あたりもTOP10の2-3位前後にランクインする規模と思われますが、それぞれ、正確な売上高がつかめなかったため、除外しております。 

【解説】

13年連続 トップを走る、ZARAのインディテックスは売上、利益とも過去最高益を更新。ロシア500店舗以上を閉店、中国苦戦するも、欧州とアメリカの躍進での達成。店舗とオンラインの融合は完成し、スクラップアンドビルドは完了に近づき、過去最大の設備投資をして、次のステージに進みます。

第2位のH&Mはパンデミックからの回復で増収も減益。原価高騰を価格に転嫁しなかったこと、ロシア休業の処理、また、構造改革に費用をかけたことが要因です。アメリカの伸びは大きく、ドイツを抜いて、売上シェア最大国になりました。

第3位のファーストリテイリングは日本が回復、中国がロックダウンで苦戦するも、欧米が黒字化、増収増益で中国のマイナス分をカバー。これで中国が復活すれば、更なる躍進は楽しみです。

第4位のGAPは減収減益、営業赤字。同期中にCEOが交代するほどの混乱ぶり。店舗のスクラップアンドビルド、欧州、メキシコ、中国事業をパートナー企業に移管など、リストラが進んでいます。原価高騰による粗利率低下、Yeezyコレクションの53百万ドルの処分も営業赤字を拡大した要因です。

第5位のプライマークは各国でコロナから回復中、オンラインでは、店舗在庫確認に加え、クリックアンドコレクトの対応の実験を始めました。コロナ禍にインナーウエアや子供服が伸び、今後も期待ができそうです。ドイツの再構築、アメリカの拡大が今後の成長のカギ。

6位以下の一番のトピックは なんと言っても、第6位のルルレモンです。

店舗、EC合計で、昨年比3割増収で1兆円規模に到達。一方、微減益。これは原価高騰で粗利率が2%低下したのと、ミラーののれんの減損が大きく響いています。但し、ミラーを活用した、ルルレモンスタジオで有料サブスクを開始するのに注目です。26年までに売上を1兆6000億円規模と2021年の倍にするプランPower of Three x2 growth planをを進行中。

そして、第7位のNEXTは二桁増収、一桁増益。店舗好調で、ECは落ち着きましたが、ランキング内でトップクラスのEC化率と収益率。原価高騰を価格転嫁とプロパー消化向上でカバーするも、テクノロジーと物流に投資をすることで、利益率は若干低下した模様です。プラットフォームビジネス(内製化インフラを外販)の開示が始まりました。現状、全売上高の2.6%になりました。

そして、第10位の日本のしまむら。ファッションセンターしまむらの高収益にバースデイ、アベイルが利益貢献して、過去最高益を2年連続で更新。バースデイ業態としまむらでは、婦人服以外の伸びが今後は成長のカギとなります。

業績の明暗は、オンラインと店舗を行き来するニューノーマルへの完成度と需要にあわせたサプライチェーンマネジメント力の差です。

原価を安くするために、人件費の安い国に生産地を移転し、ファッションビジネスにとって致命的とも言える、リードタイムを販売期間よりも長くしてしまったところは今後も苦戦が強いられることでしょう。

昨年のランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上ランキング2021 トップ10

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】2023年9月29日(金)13:30~15:00

WWDJAPAN主催 「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー 今回の記事の内容をライブで深堀り解説します。

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April 10, 2023

過去最高益、独走ZARAのインディテックスはコロナ前後でどう変わったのか?

Wwd-vol48-inditexWWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

4月10 日発売の連載第48話目は、23年1月期大幅増収増益で年商4兆6000億円規模になり、過去最高売上&利益を更新したZARAのインディテックスグループの最新決算を取り上げました。テーマはコロナ前後で同社はどう変わったのか?です。

500店舗以上の店舗を閉め、ロシアから撤退した同社は、それにもかかわらず、その他の地域、特にアメリカの伸びしろに支えられ、17%の増収、29%の営業増益。

スクラップアンドビルドによる店舗の大型化と面積あたりの売上高を増やし、過去からの脱皮は完了しつつあります。

今回の決算発表でよく使われていた言葉は 

"to the next level" 。

過去最高の設備投資も敢行しています。次のステージにはどんな手を打って来るのか?引き続き、先行く世界トップの動向からは目が離せませんね。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトでもお読み頂けます。

ファッション業界のミカタ Vol48~過去最高益、独走ZARAのインディテックスはコロナ前後でどう変わったのか?

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考】ショッピングのデジタルシフトの真っただ中、その先にあるのはどんな未来なのか?10年後のファッション流通の未来を考察しました。

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June 08, 2020

ファッション小売業の在庫は在庫日数(週数)で考えよう~H&Mの中長期時系列分析から

WWDジャパンさんの月イチ連載20200608_144754中 上場企業の決算書からビジネスの視点を学ぶ「ファッション業界のミカタ」が2年目に入りました。先月の5月11号と今週の6月8日号は
2回に分けてH&Mの①大量出店による成長の課題と②年々重くなる在庫問題について
レポートさせて頂きました。

企業の業績をよくありがちな前年比だけで見るのではなく、
中長期の数字を時系列に並べて・・・見つけた課題を深堀するのが
筆者が採るアプローチですが、

H&Mの日本上陸後、2009年以降の4半期の業績を並べてみて、気が付いたことをまとめてみました。

まず、同社の営業利益のピークは2015年11月期です。

その後、出店による売上増は続くものの・・・

残念ながら営業利益は一度もピークを超えることが出来ていません。

直近の2019年11月期は前年比、増収増益ながら、
ピークの2015年11月期対比 店舗数は129% 売上高は128% 営業利益は64%、
10年前対比でみると、    店舗数は255%、売上高は229%、営業利益は80%
という状況です。

要は、規模は肥大しているのに、販売効率が下がって儲からなくなっているという、チェーンストア拡大のジレンマです。

これは筆者の持論ですが、営業利益高のピークアウトはその企業や業態が成長期を終え、成熟期に入った時期と考えられ、
従って、あそこが営業利益のピークアウトだったのかも、と2年連続で減益を実感したら、

何か次の手を打たなければ、衰退期を待つだけ、ということになると思っています。

その頃(2016~2017年)、H&Mがどういう状況だったかというと、ZARAのインディテックスとの世界シェアトップ争いの真っただ中で、
H&Mは出店余地の大きい、世界の2大大国であるアメリカと中国で店舗数と売上高を積み上げていましたが、
中国では大量出店して店舗数を増やしても・・・販売効率(1店舗あたり売上高)は下がる一方、それでも、出店を続けていたのでした。

一方のインディテックスは・・・店舗のスクラップ&ビルト、店舗数拡大よりも店舗の大型化(売場面積拡大)に力を入れ、
ECへの集中投資を進めていたのですね。

両者の明暗は、過去3年間の業績の通りです。

次に、今月号では、H&Mの在庫状況に着目しました。

H&Mは11月決算で、冬物をたんまり持っている時期なので、冬が終わって在庫が軽くなる1月決算や2月決算の会社と期末の在庫回転率を比較するのはフェアではない、と長年思っています。

あと、小売業の実務に携わるものとして、会計期末だけで計算する在庫回転率にはいつも違和感を持っています。
正直、期末だけ在庫を絞れば回転率は高回転に演出できますからね。銀行や投資家には高効率の会社という印象を持ってもらえます。

従って、今回はH&Mの四半期ごとの期末の在庫日数の推移で評価をしてみました。

それから、在庫日数の計算式って、通常は 

在庫日数=期末在庫原価÷過去の期間中1日あたりの平均売上原価

で計算される方が多いと思いますが、

ファッションビジネス、特にアパレルビジネスにおいては、期末在庫ってものは、これから迎える月あるいは四半期に売るシーズン在庫をどれだけ持っているのかが大事なことなので、筆者は期末在庫を翌四半期(あるいは月)の1日あたりの売上原価で割るアプローチを取ります。

(筆者流)在庫日数=期末在庫原価÷翌四半期の1日あたりの売上原価

※実務レベルで試してみたい方は翌月または翌四半期の予算ベースの売上原価で割ってみて下さい。

以上の前提でH&Mの四半期ごとの在庫日数を時系列に眺めてみると、

やはり、健全なのは、2014年から2015年にかけてです。実際に、90日台で在庫が回っています。

日本企業のように商社を介さず、直貿のH&Mからすれば、Ex-Factorベースの在庫なら90日台なら上等でしょう。インディテックスもそんなもんです。

ところが、その後、じわりじわりと在庫は重くなり、2017年には130日台に膨らみ、
最悪だったのは2019年11月期1Q(冬の終わり)の142日、
2019年11月期末(冬真っただ中)には何とか、128日まで落とすことができたという状態です。

でも、まだ、業績がよかった時に比べても1.35倍くらい抱えているのです。

ユニクロや無印良品のようなベーシックならまだしも、
高速で在庫を回したいトレンドファッション系のH&Mが130日台=4か月以上分の在庫を常に抱えながら商売をしているのって結構リスク大きいと思いますね。

これは、H&Mのグローバル低価格競争上の問題にあると思っています。

好調だった2015年ころまでは、店頭で見ても結構、中国製やトルコ製でデザイン性の高い商品を作って高速回転させていた印象だったのですが、今は、各国での価格競争上、店頭商品は圧倒的にバングラディッシュやカンボジアあたりが増えましたよね。

これらの原産国は比較的ベーシックなものに強味があり、また発注から仕上がり、そして、東南アジア、西南アジアからは欧米への輸送に時間がかかりますから、
例えコスト的には競争力があっても、必然的にファストファッションにとっては在庫リスクが高くなる、
長いリードタイムと在庫日数の長期化という課題と向き合わなければならなくなるのです。

これは実は他人事ではなく、安い人件費を求めて産地を遠く、遠くに持って行っている日本のファッション流通企業も気をつけなければならない課題ではないでしょうか?

さて、社長が代わられて、

これから効率を落としての大量出店の見直し、ファッションストアとしての在庫の適正化の問題

の改革を進めるH&M社。

製品のサステイナブル性ももちろん大事ですが・・・サステイナブルな経営のためにどんな舵取りをするのか?
21世紀、世界の「ファッションの民主化」を旗手として、一時代をつくった同社のリ・ブランディングを見守ることと致しましょう。

  執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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【オススメ本】H&Mにもプライマーク、そしてオンライン上のウルトラファストファッションが襲い掛かる。未来のファッション消費行動を想像しながら、そのビジョンに向けてこれから取り組むべきことを考えるビジネス書です

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May 04, 2020

フィッティングはビジネスのカギ

実店舗のほとんどが休業状態となった今、
多くの専門店が店舗からEC倉庫に春、初夏在庫を回収し、EC販売に力を入れています。

新作入荷や、全品20%OFF、2点買ったらさらに10%を打ち出しているところが多いようですが、
果たして、そういった割引施策は顧客にどれだけ響くでしょうか?

今、顧客はどんな環境に置かれているのか?
そして、何を考えて行動するかを考えなければなりません。

ファッションは基本的には、外で会う人に合わせて装うもの

外出しなければ、新しい装いは不要だろうし、
家で過ごすのであれば、すでに家の中にあるもので十分でしょう。

おしゃれなホームウエアブランド、ジェラートピケはオンライン女子会需要を捉え、
4月単月のオンライン売上が前年比6倍になったとか

各社のオンライン売上が30%~40%増という中で、あきらかに「需要を捉えた」と言ってよいでしょう。
(店頭の在庫をEC倉庫に回収していなければ玉不足で6倍はあり得なかったと察します)

そんな中、いろいろな企業が取る施策の中で、
やはり、世界一のアパレル専門チェーン、インディテックスのZARAの施策はさすがだと思いましたので少しご紹介したいと思います。
(画像は2014年インディテックスグループ本社取材時のもの)

1)送料無料・返品無料 36zaracom_ii※ 安売りより、ECをあまり利用していないユーザーのために購入ハードルを下げる

ZARAはもともと店舗の集客力を高めるために、都心の好立地に出店し、多くの来店客がたくさんの服の試着をくり返す行為の中から

これからシーズン中に売れそうな商品の開発ヒントを仮説立て、商品企画の的中率の生命線にして来た企業です。

ところが、主要マーケットを中心に世界の半分超の店舗が休業となり、主要国の店舗での顧客の試着情報を入手することができません。

そこで、ZARAは何をしたかというと、

もともと強化していたオンライン通販(EC売上比率14%)での送料無料、返品無料の施策を打ったのです。

つまり、
オンライン通販の顧客の購入ハードルを思い切り下げ
顧客の自宅を試着室みなし・・・

顧客の購入情報、返品情報から次に売れそうな商品の開発ヒントを得てデザイナーに伝えようと試みているわけです。

ZARA好きのファッション愛好家たちには自宅での試着し放題は魅力でしょう。

ちなみに、近い施策は すでにアマゾンが Prime Wardrobeというサービスを行っています。

通販にとって、宅配運賃と返品運賃は経費負担がかかり、儲けを出しづらい、ビジネスに於けるネックのひとつ。

しかし、商品開発情報を得る場所を店頭だけでなく、更に一歩踏み込んで顧客の自宅にしてしまうという覚悟は

同社が新商品を顧客に売り込むだけではなく、いかに試着という行為が顧客、ZARA双方にとって、
ファッションビジネスのカギを握っているかをよくわきまえているからでしょう。

今回の事態で、在宅時間が増えることによって・・・
エンドユーザーは、クローゼットの手持ち服をあらためて見直したはずです。

この行動や体験はコロナ休業収束後のファッション購買に少なからず影響を与えることでしょう。

これからファッション企業は、業界発信の新しい提案商品を一方的に顧客のクローゼットに押し込むことだけを考えるのではなく、

顧客が、自分自身に本当に似合うのか?
手持ち服との相性はどうなのか?

そんなことを考える大切な時間である「試着」の意味をあらためて考え直す必要があるのではないでしょうか。

2)「ラウンジウエアー」の押し出し
※シーズンコレクションを顧客心理に合わせて再編集する、オンラインだからこそ柔軟にできる取り組み。

同社のメンズが中心の取り組みですが・・・もともとそんなコレクションはなかったはずだと思いますが、

既存商品の中から、スエット、イージーパンツ、サンダルなどを
「ラウンジウエアー」という名のものとにくくり直して(再編集して)、SNSやサイトで打ち出しています。

これ、今だからこそ、また、ECだからこそできることだと思いますね。

そんな顧客の状況にあわせた柔軟性って、大事だと思いました。

3)キッズ押し
※SNSで普段よりキッズ商品の露出が多い。

家族で一緒にいる時間が長くなれば、小さな子供を持ったファミリーが最優先するのは子供のことです。
贈答用は別にして、子供服は、この間、そこそこ売れているカテゴリーと聞きます。
このあたりもファミリー層には刺さっているのではないでしょうか?

 

EC売上がどれだけ実店舗の売上をカバーできるかは限定的でしょう。
しかし、自分たちが置かれてる環境への配慮と共感が得られるかどうか?

これはそもそも、日頃のブランドの「姿勢」かも知れませんが、
外出自粛の環境下でECサイトおよびその打ち出しの中にもそんな姿勢は表れ・・・お客様に伝わるのかも知れません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

いつもお読み頂きありがとうございます。


 

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