September 13, 2021

EC拡大時代のダンボールゴミを減らす配送サービスの取り組み

32cimg0465_202109141309019月8日の繊研新聞に、アメリカで複数のブランド、ストアにオーダーしたEC注文に対し、顧客ごとにまとめて、1つの梱包することによって、家庭で出るダンボールゴミを削減する配送サービスについて書かれた記事が掲載されており、興味深く読ませていただきました。

日本でも多くの方がこの1年半、ECショッピングを増したことと思いますので、宅配業者さんが荷物を届けてくれた後のダンボールゴミの処理が面倒だったり、

リサイクルできるとは言え、毎回出るダンボールゴミの山を見て、これっていずれは問題にならないのだろうか?と感じていた方も少なくないでしょう。

筆者も正しくその一人です。

記事によれば、そのサービス「オリーブ」を立ち上げたのは、かつてWalmartに買収されて、今や同社の中で、全米小売業において最も積極的なEC関連の投資、取り組みを先導している、ジェットドットコム社の創業メンバーのおひとり。この方は、買収された後もしばらくウォルマートでも勤務されていたようです。

要はアメリカの物販ECビジネスを最も熟知した方のお一人と言ってもよい方が立ち上げたソリューション型のサービスというところも興味深いです。

このサービスの流れは以下の通りです。

顧客から「オリーブ」のサイトまたはアプリ経由で同サイトの登録ブランドに注文された商品は、

 ↓

各ブランドまたはストアの倉庫から「オリーブ」の
配送センター(コンソリデーション+リサイクリングハブ)に届けられ、
(現在ニュージャージー1か所、カリフォルニア州1か所)

 ↓

そこで顧客ごとに「オリーブ」専用折り畳み式再利用ボックスに詰められ、

 ↓

エリアにより、週1回または2回の決まった曜日に着くルート配送便で自宅に届けられる。

そして、要を終えたボックスは同じ翌配送曜日に家の前に出しておけば、「オリーブ」が回収して行くというものです。

ブランドから「オリーブ」のハブに届く時に使われたダンボールはオリーブ側からリサイクル業者にまとめて引き渡されて処理され

この一連のサービスに対して、オリーブ側は売り手から売上の10%を手数料として徴収するそうです。

 

「オリーブ」の創業はコロナ禍の20年4月、

半年で、百貨店のサクス・フィフスアベニュー、専門店のアーバンアウトフィッターズ、アディダスやアシックスのようなスポーツブランド、ヒューゴボス マイケルコース アグ などなど 100以上の百貨店、専門店、ブランドが参加するようになったとのこと。

EC拡大時代の顧客のお困りごと、環境保護意識に対するサービスですが、どこまで広がるか、興味深いですね。

利用者、利用企業が増えれば、企業負担、手数料も下がって行くかも知れません。

日本では、宅配便業者さんが進んでいるので、そんなサービスを考えてくれるかも知れません。

家庭で出るダンボールの量は遅かれ早かれ問題視されると思いますので気にとめておきましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 16, 2021

経済産業省2020年度 EC市場調査報告書とこれからのファッション専門店の構造改革

Bbw_20210817170301経済産業省が7月31日にリリースした電子商取引に関する市場調査報告書に目を通しました。

毎年の業界の市場規模やEC化率を知る上で参考にしています。

これによると、物販系分野BtoC-EC市場全体は

12兆2333億円 前年比 121.7% で市場のEC化率は8.08%(前年が6.76%)になったようです。

気になる衣類・服飾雑貨カテゴリーは

2兆2203億円 前年比 116.2% で市場のEC化率は19.44%(前年が13.87%)

伸び率は全物販市場に比べて下回りますが、

物販EC市場の中の金額規模では家電に次ぐ2番目に大きな規模になります。

EC化率も

書籍・ソフト(42.97%)
家電(37.45%)
生活雑貨インテリア(26.03%)に次ぐ

4番目(19.44%)にEC化率が高いマーケットです。

資料の金額、EC化率、前年比から実店舗、ECを合算した業界市場規模や
実店舗だけの前年比が計算できるので、実際に算出してみると・・・

物販BtoC市場全体は

151兆4022億円 前年比101.8%と伸びており、
実店舗物販だけとっても100.4%とコロナ禍でも物販消費は横ばいだったことがわかります。

カテゴリー別に見ると

食品、家電、化粧品・医薬品、生活雑貨・インテリア、自動車関連
は実店舗、EC共に市場規模(消費)が増えており、

衣類・服飾雑貨、書籍・ソフトのふたつのカテゴリーが
実店舗の落ち込みをECでカバーできなかったカテゴリーになります。

前年比(2020vs2019)
            実店舗  EC   合計     
衣類・服飾雑貨    77.6% 116.2%  82.9%

書籍・ソフト     86.0% 124.8%  99.2% 

ということで、衣類、服飾雑貨が最もコロナ禍の影響を受けた物販カテゴリーのひとつであることが、
表されています。

さて、こんな数字を見て業界各社はどう考えるのか?

〇 売上が2019年度の8掛けでも儲かるしくみをつくるのか?

それとも

〇 こんな環境でも伸びている上記カテゴリーの品揃えを行ってカバーするのか?

実際、コロナ禍で堅調だったと言われるユニクロやしまむらですら
アパレルの落ち込みをグッズ・その他やインテリアなどでカバーしているのが実態です。

ちなみに衣類・服飾雑貨の市場規模の年間のマイナス分は

食品、飲料、酒類以外の

・生活家電、AV 機器、PC・周辺機器等
・書籍、映像・音楽ソフト
・化粧品、医薬品
・生活雑貨、家具、インテリア
・自動車、自動二輪車、パーツ等

すべての年間増額分を合算してもカバーできません。

唯一、衣料・服飾雑貨の減額分をカバーできるのは・・・

食品、飲料、酒類の年額増額分だけです。

緊急事態宣言が延長される日本において、
ファッション専門店の抜本的な損益構造改革が求められています。

ちなみに右上の画像は、事業ドメインシフトを果たしたLブランズのバス&ボディワークスです。

アパレル祖業でSPAの元祖と呼ばれる彼らは・・・

2000年代にはアパレル事業を売却し、ランジェリー・インナーウエアのヴィクトリアズ・シークレットに軸足を移し、

2020年の今はもう、ヘルス&ビューティ専門店で企業の大半の利益を稼ぐ企業となりました。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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May 17, 2021

デザイナーズコラボの取り組み精度が高まった、ユニクロ+J(プラスジェー)成功の舞台裏

20210524_1558115月17日の日経MJ紙面にファーストリテイリングのユニクロの外部デザイナーとのコラボの立役者 勝田R&D統括責任者インタビュー記事が掲載されており、大変興味深く読ませていただきました。

ジル・サンダーさんとの+J(プラスジェー)を筆頭に、クリストファー・ルメールとのUNIQLO U(ユー)など、ここ数年は、こういったプロジェクトが、実にうまくユニクロのイメージアップ、ステージアップに貢献しているなと思っています。

記事の中から、気になった箇所を少し、引用、紹介させていただきますね。

まず、勝田氏は、今回の+Jの取り組みを

09年から11年の1回目の取り組みと比べ

「より良いものを分かりやすく」
「チョイスが増えるとお客様が迷ってしまうので」
「(ジルさんの抵抗と闘いながら?かなり)商品を絞り込んだ」

とのこと。

「今回は絞ってメッセージ性を明確にしたことが
ビジネス的に成功した結構大きな要因だと思います。」

と全体を振り返っておられます。

これは、筆者の印象ですが、

09年~11年のころは・・・
+J(プラスジェー)に限らず、他の東京コレクションのデザイナーさんたちとの取り組みもそうでしたが、

それまでデザイナーコラボの連発で世界的に成果を上げていたH&Mに負けじ、と
後追いみたいに焦ってやっている感じがして・・・

デザイナーとの付き合い方が、
定まっていなかった、活かせていなかった、もったいない、
と思うことも少なくありませんでした。

当時の+Jは、
当然、オリジナルのジルサンダーのラインよりは価格は安かったのですが、

(セレクトショップのセカンドライン並み)

ユニクロよりも高い価格帯であり、
「わかる人には、わかる」域を超えておらず、

なおかつ、その割に、作り過ぎていたため、
計画通りに売れずに、過剰在庫を抱えてしまい、
販売間もなく、値下げとなり・・・

実にもったいないな、と値下げされた店頭在庫の山を眺めていたものでした。

今回は、その時のその反省も活かし、

商品を絞って、
オンライン販売と一部店舗限定販売にして、
無理に作り過ぎなかったのが

よかったのでしょうね。

また、10年前とも環境が全く違います。

ユニクロのブランドステージは高まり、

SNS時代にもなったことで、

発売までのストーリーづくりも伝え方も上手く、功を奏し、
また、期待するファンがSNSで盛り上げてくれたのも大きいでしょう。

発売と同時に、ほとんどの商品が値下げをせずに即完売だったようです。

やはり、ファッションビジネスは、何ごとも、適量、腹八分目以下の方が
お後がよろしいようで、ということですね (笑)

記事では、マーケティングや販売の側面だけでなく、

「一流のデザイナーたちとの協業の中で当社の人材も彼らと直接ガチで仕事をしてきました。これは財産です。知識としても能力としても、個人としても組織としても力が蓄えられました。」

と、ものづくりをする現場でも、デザイナーたちから、多くを得たとおっしゃっています。

確かに、プロジェクトにかかわった方々の、それぞれのデザイナーからの学び体験は、

今後のユニクロのレギュラーラインのプロダクトの質の向上にもつながって行く、貴重な未来への投資の役割も果たしていたに違いありません。

最後に、
勝田氏が一流デザイナーと交渉する時の口説き文句が紹介されていたので
引用させていただきます。

「あなたがやっているものの安物バージョンは死んでもやらんよ」

「あなたの才能をユニクロというインフラで発揮して欲しい」

と創造意欲に訴えかけるようにしている。

とのこと。

それだけ、ユニクロという「インフラ」が、グローバルでも説得力をもつようになった、自信あふれる言葉ですね。

今回の+Jの成功もきっと、これから取り組みを行おうとするデザイナーたちに対して、説得力を高めることにつながるでしょう。

今後も、ユニクロには、双方のステージアップにつながるデザイナーコラボを楽しみにしています。

 

ちょっと蛇足的な話ですが・・・

ファッションビジネスの「適量」在庫の話をすると、

筆者の在庫コントロールセミナーに参加された方に

「売れ筋商品と死に筋商品の違いは何ですか?」

という質問をさせて頂くことがあるのですが・・・

答えは、多くの方々がお答になる、

たくさん売れている商品が売れ筋で、あまり売れない商品が死に筋

ではありません。

期末に残った在庫を見て、反省すればよくわかりますが、

答えは、

どんなに数がよく売れる商品、売上ランキング上位の商品でも・・・

販売力を超えて、つくり過ぎて、大量値下げをせざるを得なくなり、損をもたらす過剰在庫分は

死に筋商品です、とお答えすることにしています。

さまざまな制約のあるアパレルビジネスでは、適量管理を肝に銘じたいところです。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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April 19, 2021

前年比だけにとらわれない経営を

2昨年(2020年)3月から業界がコロナショックの影響を受け始め、
多くの企業で前年同月の実績と今年の同月の業績の対比(前年比)が困難になりました。

そのため今年は前々年(2019年)の実績を参考に計画を立てたり、
今年の実績を前々年対比でどうなのかを評価する機会が増えました。

販売検証をする実務の現場では、以前から前年に異常値があると、2年前対比や3年前対比はよくやる切り口なのですが、

ここのところ、各メディアのニュースでも「前々年対比」に触れる記事が多くなったように感じます。

これは2011年の東日本大震災時が比較にならなかった2012年の時以来でしょうか。

もちろん、災害については、心から、二度と起こらないことを祈りますが、
世の中が前年比だけにとらわれず、今後も、もう少し長い視野(スパン)で業績評価をするようになる傾向については歓迎したいと思います。

そもそも、「前年対比」は、平時においては、

上場企業であれば、既存店売上高の前年比が目先の株価に影響したり、

営業現場では、売上が予算に届かない時に、
予算には届かなかったが、前年よりは売れている、など、前年比を言い訳に引っ張り出すなど・・・

ある意味、最も身近な尺度のひとつかも知れません。

一方、「前年比」は比較しやすい(出しやすい)ものの、前年の状況次第では参考にならない尺度であることも少なくありません。

前年が天候やトラブルで売れなかった、逆に特需があったなど
前年のハードルが低ければ前年比が大きく伸びるのは当たり前、その逆もそうです。

特に、小売業はどうしても「前年比」という短期視点に一喜一憂しがちですが・・・

もう少し中期から長期視点で事業の推移を見るべき(3年平均成長率など)である、ということは、

筆者が「ユニクロ対ZARA」の取材時にスペイン、インディテックス社のインタビューに伺った際に、同社広報部の方とのディスカッションの中で気づかされた視点でもありました。

そんな経験もあり、同著執筆以降は、面倒でありますが3年から5年分を時系列に並べて業績を観察することを習慣というか、肝に銘じています。

特に、特定の事業のこれまでの軌跡や健康状態やライフサイクルを知る上で、取っ掛かりとしての長期(5年から10年)時系列推移分析は有効です。

グラフにして、売上や営業利益のアップダウンに着目して・・・

売上や営業利益のピークを発見し、そこで何が起こったのかを深堀りし、その時と比べて、今、何が良くて何が悪化しているのかを見て・・・

今後の伸び代や、改善余地や次の目標を考える。

これ、ここ5ー6年、筆者がコンサル現場でも、よく行っているアプローチです。

最近の例で言えば、前回のしまむらのエントリーであれば、

まず、同社の2000年以降の業績を時系列で並べてみると(以前WWDジャパンの連載で行いました)、

2017年2月期がここ20年間の売上高、営業利益のピークがあることがわかるので、

その時と比べて、足元は何が良くて、何がいまいちなのかを要素ごとに分析したりするわけです。

ところで、WWDジャパンに月イチで連載させて頂いている、
上場企業の決算書の見方を解説しながら、業務改善の切り口を浮き彫りにする連載記事

「ファッション業界のミカタ」

はおかげさまで連載スタートから2年が経過し、3年目に入りましたが、

ここでも、決算書を前年比だけではなく、3年以上時系列で見ることを心がけています。

ご存じのように、通常、決算書は前年比で構成されているので、
3年以上を比較するには、最低2期分以上の決算書を見て並べないといけないことを意味しています。

ひとつの企業にフォーカスして分析する時は

●10年以上の時系列で見て、気になるところを深掘りする

●売上高ではなく、営業利益で考える

●利益を生み出すビジネスモデル(経費構造、BS構造)から考える

また、

●公表されている数値どうしを割り算をして、
単価や単位あたりと言った、購買行動や経営の最小単位にして、その効率の推移を見て考える

●年間ではなく、四半期に分解して、複数年度比較して、アパレル特有の季節ごとのその企業の特徴やクセを掴む

などが、筆者がよく行うアプローチです。

企業の業績は、当然「顧客購買行動」なしには語れませんし、

企業の戦略、戦術には必ず経営者さんや企業のイズムやポリシーが表れますから、

決算書の数字を通して、頭の中で勝手に経営者さんや経営幹部さんと対話をすることを楽しむことにしています。

話を元に戻すと、

大変な時も、平時も、業界企業が健全な中長期ビジョンに基づいて経営するために、

前年比にとらわれず、中長期で業績を考えることを推奨したいと思っています。

【WWDジャパン主催 オンラインセミナーのお知らせ】

5月後半からスタートする、WWDジャパン主催のオンライン連続セミナーに登壇いたします。
昨年は「ユニクロ対ZARA 2020」に登壇させて頂き、好評を頂きましたが、
今年は、世界アパレル専門店企業トップテン、ZARA、ユニクロ、ZOZOの決算書から読み取るべきことが各回のテーマです。
まずは、peatixで申し込みが始まりました。
今回は、ウェビナーではなく、対話型で進めますので、人数限定です。
お早目にお申込み下さい。
WWDジャパン主催オンライン連続セミナー「ファッション業界のミカタ」

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARA。これから進む道も、経営者の経営信念、ビジネスモデルとその変遷を理解すれば、見えて来ます。両社の比較分析が、未来のアパレルビジネスを考える上で、とても参考になると確信しています。

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April 06, 2021

世界アパレル専門店売上ランキング2020 トップ10

4cimg0441 世界中がパンデミックの影響を受けた2020年度。 世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃い、売上高や営業利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高ランキングTOP10を共有させていただきます。

 円建て比較にあたり、為替レートは2021年1月末の €=127.04円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=104.21円、英国£=142.95円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 前年増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2021.1期) 2兆5,918億円 -28% 1,914億円 7.4% 6,829 ZARA
2位 H&M (瑞;2020.11期) 2兆3,453億円 -20%  388億円 1.7% 5,018 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2020.8期) 2兆0088億円 -12% 1,493億円 7.4% 3,630 UNIQLO
4位 GAP (米;2021.1期) 1兆4,380億円 -16% -898億円 赤字 3,715 OLD NAVY
5位 Lブランズ (米;2021.1期) 1兆2,344億円 -8% 1,645億円 13.3% 2,669 Bath&Body Works
6位 プライマーク (愛;2020.9期) 8,436億円 -24%  517億円 6.1% 384 Primark
7位 しまむら (日;2021.2期) 5,426億円 +4%  380億円 7.0% 2,199 しまむら
8位 NEXT (英;2021.1期) 5,183億円 -17%  548億円 10.6% 491 NEXT
9位 アメリカンイーグル (米;2021.1期) 3,917億円 -13% -282億円 赤字 1,078 AEO
10位 アーバンアウトフィッターズ (米;2021.1期) 3,594億円 -13%      4億円 0.1% 645 Anthropologie

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアは過剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンC&Aおよび中国で急成長中の越境ECファストファッションSHEIN(シーイン)あたりもTOP10にランクインする規模と思われますが、それぞれ、売上高がつかめなかったため、除外しております。                              

【解説】

全体を見渡すと、経営破綻した米アセナリテール(前年7位)が消え、10位以下に控えていたアメリカ企業がランクインした格好ですが、上位6位までのランキングは2019年と変わりはありません。

以下、1位から5位について、そして、気になるところにコメントさせて頂きますね。

1位のインディテックスは

通期コロナの影響を受けて大幅減収、減益も、7.4%の営業利益率を上げたのはお見事でした。

全世界の店舗でRFIDの導入と各国EC在庫と店舗ストックルーム在庫の一元管理が完了し、世界のどのアパレル専門店よりも、いち早くオムニチャネル化が完成した、と言ってもよいでしょう。

EC売上比率は店舗の売上減もあって33%に。これからは同社のDXは顧客のスマホを使った店舗での拡張体験へ、そして、次のテーマである、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に力が入ります。

関連エントリーーZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。

2位のH&Mは

第1四半期に売上、利益の改善が見れたものの、その後、3つの四半期がコロナの影響を受けて、大幅減収、減益も、何とか黒字着地させた経費コントロールと仕入コントロール力はさすがです。

店舗閉鎖の影響もあり、EC売上比率は28%に。

これからは、遅れていたデジタル化へのアクセルが回復のカギとなるか?それとも、やはり、低価格品はECでは損益が取りづらく、苦戦するのか?注目の1年になります。

関連エントリーーH&Mとインディテックス(ZARA)の決算進捗に見る パンデミックの欧州グローバルチェーンの業績への影響

3位のファーストリテイリングは

年間のうち、半期分、コロナの影響を受けながら、市場は日本、中国が中心。欧米に比べ、市況回復が進んでいるため、欧州勢よりは、有利な環境と言えるでしょう。

特に国内ユニクロ事業の第4四半期の体質改善と踏ん張りは、柳井会長の執念を感じ、目を見張るものがありました。

今期は、3月から消費税分値下げした分を、同社がどう利益を確保するのかに注目です。

関連エントリーーファーストリテイリング20年8月期決算に見る、国内ユニクロ事業の凄さ

4位のGAPは

大幅減収赤字、GAP、バナリパで228店舗閉店とリストラが続きます(GAP事業売上前比73.0%、バナリパ事業は同57.5%)。

店舗売上減で、オンライン売上は54%伸びて、EC売上比率は45%に(前年は25%)。

5位のLブランズは

ヴィクトリアズシークレット(VS)のリストラ後の見事なV字(利益)回復と言ってよいでしょう。営業利益額だけを見ると、インディテックスに次ぐ、世界第2位の位置づけです。

ヘルス&ビューティのバス&ボディワークス(B&BW)は、パンデミックに関わらず、店舗が前年並みをキープし、既存店+ECが45%増と大躍進。ECは倍増で、いよいよVSとB&BWの売上が逆転しました。

ヴィクトリアズシークレットの店舗の整理はついたようなので、今期は大幅増収増益が期待できそうです。

関連エントリーーファッション&ビューティー市場の変化を見極め、事業ドメイン転換で勝ち残る、米 L Brands(エル・ブランズ)

以下、6位以下で、めぼしいところを付け加えますと、

しまむらがトップ10企業の中で唯一の増収増益。なんと、7位に浮上です。

これは、品揃え改革(同社らしい多品種小ロット高速回転の原点回帰)によって、かつての販売効率を回復しつつあるのが大きな要因です。

一旦、かつての販売効率まで戻った後、出店余地の限られる日本国内で、どのように、収益を伸ばすのかが、焦点になります。

8位のネクストは、得意の店舗網、物流網を活かし、クリック&コレクト(オンライン注文の店舗受取り)を上手く併用しながら、オンライン売上比率が昨年の50%から65%まで高まりました。

今後、力を入れるのは、そのインフラをフル活用した、他社ブランドのEC事業(オンライン受注から配送まで)を、まるっと代行するという、NEXT TOTAL Platform戦略への取り組みとのこと。これは、興味深いです。

この取り組みは、確立されたチェーンストアとして、違った意味で、世界一のインディテックスよりも先を行っている発想かも知れません。

今後、デジタルシフト後のチェーンストアのありかたの一例として、今後、深堀りしたいと思います。

さて、まだまだ、パンデミックの影響が残る、2021年度のランキングはどうなるでしょうか。

筆者としては、ZARAのインディテックス、ヘルス&ビューティへのドメインチェンジが進むLブランズ、チェーンストアの強みを活かしつつ、プラットフォーマーとしての付加価値を追求するNEXTの3社に注目したいです。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になることでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」(2014年発売) を2018年のデータでアップデートした文庫本です。

いつもお読み頂きありがとうございます。

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March 15, 2021

ファッション&ビューティー市場の変化を見極め、事業ドメイン転換で勝ち残る、米 L Brands(エル・ブランズ)

Bbwアメリカでヴィクトリアズ・シークレットを展開する米Lブランズ社の2021年1月期決算速報が発表されたので、目を通しました。

売上高  1兆2403億円  (前年比92%)
営業利益 1,653億円  (前年比611%)
営業利益率 13.3%
($=104円換算)

コロナ禍のアメリカ市場中心の同社が減収ながら、増益という恐るべき数字をたたき出しました。

実は、前年の2020年1月期、パンデミック前にヴィクトリアズ・シークレットのダイナミックなリストラを敢行して、大幅減益としていたので、リストラを経てのV字回復なわけですが、それにしても、この規模でのこの利益は素晴らしいです。

その理由を探ってみましょう。

まず、主力業態のヴィクトリアズ・シークレットは全体の2割にあたる248店舗の大量閉店および店舗のFC移管で同事業自体の売上高は前年比72%と大幅減。

店舗とオンラインの内訳は、店舗売上高が前年比55%、残った既存店は前年比増収、そして、オンライン売上高は131%と伸びました。

一方、もう一つの主力業態である、ヘルス&ビューティー部門のバス&ボディワークスの店舗売上高は前年並み(100%)、オンライン売上が209%増と倍増し、事業全体としては前比120%の大躍進です。

この結果、ヴィクトリアズシークレットとバス&ボディワークスの2つの事業売上規模が入れ替わり、同時に、見事な復活を果たしたというわけです。
              2019年度 → 2020年度
バス&ボディーワークス      42%  → 54%
ヴィクトリアズ・シークレット   58%  → 46 %

また、この1年で、会社全体のオンライン売上比率は21%から35%となりました。

 

同社は、THE LIMITED STORE(リミテッド)やEXPRESS(エクスプレス)といったレディースウエア業態で、GAP社よりも先にSPA(アパレル製造小売業)ビジネスモデルで全米一位に登りつめたアパレル企業です。

店頭でのテスト販売や生産地からの空輸を駆使した、独自の高速サプライチェーンやQR対応も十八番です。

ヘンリ・ベンデル(今回のリストラで廃業)やアバクロンビー&フィッチ(分社化、別会社)も同社が買収後に規模を拡大したことで知られています。

同社は、2000年にH&Mがアメリカに上陸し、フォーエバー21と競合しながら、全米がファストファッションの渦に飲み込まれると、

2007年に、レッドオーシャン市場になったアパレル事業に見切りをつけて売却し、

一方、ランジェリー&ホームファッションのヴィクトリアズシークレットやピンクに事業の軸足を移し、ファストファッションと競合をせずに営業利益率の高い高収益企業として、

売上規模もGAPに続く全米2位、グローバルでも4ー5位クラスのファッションチェーンとしての企業規模もキープします。

2016年頃から、メイン業態であるヴィクトリアズ・シークレットが時代に合わなくなって業績失速するや、

その事業に執着することなく、ヘルス&ビューティー部門のバス&ボディワークスに軸足を移し、この度、何と、コロナ禍の最中にも関わらず、事業転換を完了させてしまうという、実に見事な変身を成し遂げました。

アパレルからランジェリー&ホームウエアへ、そしてヘルス&ビューティーへ

女性を取り巻く、ファッション&ビューティーマーケットで既存ビジネスに執着せず、顧客にとって、付加価値のあるところに機を見て乗り換え・・・得意のサプライチェーンマネジメントを活かしながら、応用して行く、創業者のレスリー・ウェクスナー氏のビジネスマンとしての商才には脱帽せざるを得ません。

市場の変化に対して、ここまで先を見て事業転換をできる経営者さんは、世界を見渡しても、そうはいらっしゃらないでしょう。

日本を見渡すと、マッシュホールディングスの近藤社長の着眼点がそれに近いかも知れません。

同グループは、常に、顧客のライフスタイルを中心に考え、上手にアパレル→ホームウエア→ヘルス&ビューティと多角的な事業拡大を果たしていらっしゃいますね。

Lブランズ社は日本ではあまり知られていないファッション&ビューティ系チェーンですが、その変遷をたどると、世界のファッション系チェーン企業が見習うべきことはたくさんありそうです。

是非、過去から今後の動向をお見逃しなく。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 ファストファッションブーム後の顧客のファッションライフスタイルを考える。10年後のアパレル業界でのサバイバルのカギ、これからの顧客との関係構築がテーマのビジネス読本です。

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February 01, 2021

英ファッションEC企業による、破綻した百貨店や専門チェーンの買収目的

Topshop2017先週、イギリスのファストファッションECサイト、Boohooブーフーが、昨年12月に破綻した老舗百貨店、デベナムズを買収するニュースが流れました。

Fashionsnap.com 英ファストファッションEC「ブーフー」が経営破綻の大手百貨店デベナムズを買収

Boohooはデベナムズのブランドとウェブサイトを5500万ポンド(約78億円)で買収し、その他の資産である124の実店舗と12,000人の従業員は買収対象から外しています。

また、同様に昨年11月に経営破綻したアルカディアグループのTOPSHOPなどのブランドを、やはり英ファッションECモール大手のASOSエイソスが買収を検討しているというニュースも入っています。

WWDジャパン 英ECエイソスが「トップショップ」買収に意欲 ブーフーは百貨店デベナムズを獲得

こちらもASOSがアルカディアから買いたいのは、ブランドとウェブサイトが持つ顧客だけで、店舗は要らないとしています。

ちなみに、世界最大級のファッションストアと言われる、かのTOPSHOPのオックスフォードサーカスの旗艦店(右上画像)は現在、別途、売りに出されているとのこと。

更に、速報ベースですが、こちらのイギリスのyahoo!financeのニュースに寄れば、ASOSが狙っているのはアルカディアグループのTOPSHOPとMissSelfridgeの2ブランドで、その他のブランド、Dorothy Perkins, Burton および Wallisについてはデベナムズを買収したBoohooが現在交渉中とのことです。

Asos edges closer to sealing Topshop and Miss Selfridge acquisition

これらのニュースを聞いて、恐ろしく感じたのは、アメリカのアマゾンやアリババは、オンラインのみのビジネスに限界を感じて、リアル店舗が欲しくてスーパーや百貨店を買収していますが(店舗と従業員付で)、

BoohooやASOSは、欲しいのはブランドと顧客だけとし、固定費である店舗や従業員はいらない、と割り切っていることです。

イギリスでは、アマゾンが世界で牽引するオンラインショッピングや顧客のショッピングのデジタルシフトに対して・・・

ここ10年間で、多くの百貨店や専門店が、自社ECサイトを立ち上げ、EC販売を強化しながら、オンライン注文を店舗で受け取ることができる、クリック&コレクトに力を入れて、顧客をオンラインに寄せ、新しい小売業として生まれ変わる努力をして来ました。

ところが、そんな新しいプラットフォームが完成するかどうか、という矢先にコロナショックによって数回に渡るロックダウン、店舗閉鎖に追い込まれたイギリスで、力尽きたデベナムズやTOPSHOP(アルカディア)やこれからも出てくるであろう破綻企業は、

これまで構築の努力をして来たブランドとオムニチャネルプラットフォーム上の顧客たちを、そっくり、そのままEC企業たちに掻っ攫われる、という話です。

これらのニュースを聞いた時、これは決して、対岸の火事ではない、と思いました。

今、日本においても、一生懸命、EC化率を高めて、顧客の購買行動の変化に合わせて生まれ変わろうとしているアパレル企業や専門店がたくさんあると思いますが・・・

利益体質を取り戻せないまま、なまじっか、EC化率だけを高めても、・・・それこそ、勢いのあるEC企業にブランドとECプラットフォームと登録会員だけを持っていかれてしまう標的になりかねない、ということです。

本来であれば、オムニチャネル(あるいはOMO)型の新しいビジネスモデルとして生まれ変わるつもりでも、その脱皮に時間がかかれば、キャッシュが持たず、力尽き、その結果、せっかく構築したECプラットフォームだけをみすみすEC企業に持って行かれ、店舗および店舗で働く従業員を守り切れない、という話にもなりかねません。

イギリスで起こっているEC企業が破綻小売業にしかける買収劇は、実店舗や従業員の雇用が守られない、という厳しい話ではありますが・・・

日本においても、それらを教訓に、あらためて、しっかり儲かる利益体質をつくり、必要十分なキャッシュフロー経営を行いながら、新しい購買行動に合った企業にモデルチェンジをして行きたいものです。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 10年後のアパレル業界でのサバイバルのカギ、顧客とのこれからの関係構築がテーマです。本書中でウルトラファストファッションとして、ASOSやBoohooも紹介しています。

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January 11, 2021

越境ECに特化して急成長を続ける中国新興アパレル企業、SHEIN(シーイン)の勢いと中国アパレルEC市場の事情

20210111_1533201月8日の日経新聞に中国から越境ECで世界に販売する新興ファストファッション企業SHEIN(シーイン)に関する記事が掲載されていました。

中国発の新興アパレル 最大手「ZARA」に挑む

同社はトップスで日本円で1000円前後から2000円くらいまでの低価格ファストファッションに特化し、中国企業ながら、中国市場ではなく、むしろ世界に越境ECで拡販する急拡大中の企業。

記事によれば、19年の年商は日本円換算で約2500億円、中国メディアによれば、20年には1兆円を超したのでは?とのことです。

この前年比4倍の1兆円!?はちょっと眉唾ですが・・・

昨年、世界でSHEINのショッピングアプリが1億1200万ダウンロードされたと聞くと相当の急成長は見込まれます。(右の画像はSHEINサイトから)

彼らの勢いは、すでに数年前から中国で耳にしていましたので、今回、日経の記者の方からこの記事のためにインタビューの依頼を頂いた時に、いよいよグローバルプレゼンスが高まって来たのだな、と思いました。

拙著「ユニクロ対ZARA」が2017年に中国語翻訳され、2017年~2019年に中国に研修講師として頻繁に招かれていた時に、多くのナショナルチェーンの幹部の方々に参加頂きました。

当時(2018年頃)、「中国で元気のよいローカルのアパレルチェーンはどこですか?」と聞くと、多くの方が口を揃えて、SHEIN(ヤングレディース中心)やPATPAT(子供服)などの越境ECをやっている新興企業の名が返って来たものでした。
実際、当事者であるそれらの企業の幹部の方々も熱心に研修をお聴きになっていらっしゃいました。

その背景には、中国のアパレル業界では、すでに大手チェーン間の競合も激しく、かと言って、ECに手をつけても、すでに広告宣伝費や販促費が高くなり過ぎて儲からない。

そんな、中国アパレルEC市場に見切りをつけて、産地としての中国のアドバンテージを活かし、海外で、しかも、出店ではなく、越境ECで売上を伸ばそうと考えた新興ブランドに最も勢いがある、という話です。

彼らは、素材と縫製の基地がある広州などに生産拠点を置き、すでにレッドオーシャンとなった中国アパレル市場ではなく、アメリカ向けや中東向けなど、ターゲットとするマーケット専用のサイトをつくり、中国で次々に小ロット、短サイクルで商品をつくり、低価格で販売して売り切ることで成長して来ました。

日経の記事が世界最大手のZARAと比較をしていますが・・・、比較には及ばない、と思われるかも知れませんが

実は、共通点があって、それは、目の行き届く本国、本社の近くで作って、世界に売り込むというビジネススタイルなのです。

とかく、トレンドファッションはトレンドの変化によって在庫リスクを抱え込むもの。
遠くで、時間をかけて安く作って商売をすることは大きなリスクになります。

ZARAが他のファストファッションチェーンにアドバンテージがある理由は、
母国スペインや近隣のポルトガル、モロッコなど、目の行き届くところでトレンド変化と過剰在庫リスクに注意しながら、小ロット短サイクルでつくり足して行くところです。

これに対して、イギリスでASOS、BooHoo、ミス・ガイデッドなどのオンライン系のファストファッション企業(ウルトラファストファッション)が台頭したのも、その多くがイギリス国内での移民労働力を活用したモノづくり(MADE IN UKの地産地消)とオンラインによるローコスト及びスピードオペレーションが背景にあります。(詳しくは「アパレル・サバイバル」をご参照下さい)

そして、今、世界の工場である中国から、同じ発想で世界に売り込む越境EC企業が台頭しているという話です。

ZARAにどれだけ迫るか?というのは面白い議論だと思います。

もちろん、ZARAが長年き築き上げて来た店頭起点のディマンドチェーンのPDCAの回し方と国際高速物流のインフラの安定性にはそう簡単にはかなわないでしょう。

しかし、

目の行き届くところで作って、世界に売るという発想を、
より人件費の安い産地から行う

しかも

オンラインで多店舗出店よりローコストと柔軟性を持って、高速で行う

というプレーヤーが出て来たことは、新しい時代の幕開けと言えるかも知れません。

目の行き届く産地でつくってリスク回避 x オンラインで世界にリーチする 
+オンラインで顧客の反応を解析しながら、つくり足す

市場低価格政策ゆえ、競合に価格で下をくぐられるリスクを抱えていることを指摘しながら、彼らが今後どんな発展をするのかに注目しておきましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 ファストファッションの次の流通革新に挙げられるイギリス発ウルトラファストファッションとは?これまでの流通革新を振り返り、これから10年の流通革新を模索しています。

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December 28, 2020

アパレル生産で取り組みが進む3D技術によるサンプル作成工程の効率化

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12月21日と12月24日の繊研新聞のそれぞれ一面に、OEM型やODM型でアパレルの受託生産を担う繊維専門商社の3D CADなどデジタル技術を活用したアパレル設計、製造の効率化への取り組みに関する記事が掲載されていました。

ひとつは繊維専門商社のヤギと東京ファッションテクノロジーラボ(TFL)が共同出資で設立した、
ファッションに特化した3D、CG製作の新会社、メタデータバンク社の記事。

この新会社には3Dモデリスト、CGデザイナーがそれぞれ20~30人在籍し、
バーチャルで、サンプル製作プロセスを簡素化し、本生産前の仕様確認を促進したり、サンプルを作成せずに、バーチャルサンプルでEC先行受注を行ったりすることで・・・
テクノロジーによる業務改革を推進し、合意形成の迅速化、生産リードタイムの短縮などを通じ、過剰在庫の解消が期待できる、「バーチャルファクトリー」を目指すようです。

もうひとつは専門商社の豊島が進める、「バーチャルクロージング」の記事。

目指すところは前者に近いと思いますが、同社では最近、業界で普及が始まったアパレル3D設計のクラウドソフトウエア、設計の実務寄りのブラウズウエア(イスラエル)やモデルに着せて動かすプレゼンテーションに優れたCLO(クロ;韓国)やニット製品に特化してカラー、製品シミュレーションが出来るエイペックス(日本の島精機)などのツールを社内企画室に次々に導入し、専属トレーナーを採用して、各部署に所属するデザイナー、パタンナーが本格活用に向けて社内研修を受けているそうです。

 

しばらく、生産業務に携わっていなかった筆者も、ここのところ、過剰生産防止や在庫リスク回避の観点から、アパレル設計段階から工場での生産を経て、商品が倉庫あるいは店頭に届くまでのサプライチェーンにおいて、タイムロスやトラブルが起こりやすい、いわゆるボトルネックがどこにあるかをサプライチェーンに携わる方々と洗い出したり、ディスカッションする機会が増えました。

サンプル作成から本生産発注に至る、仕様確認作業もそのボトルネックのひとつ。

本生産発注に至るまでに、デザイン画ベース、ファーストサンプル、セカンドサンプル、各色サンプル、本番前修正サンプルなどサンプルが複数回作成されるわけですが・・・

アトリエや工場のサンプル室のサンプル作成だけでも、相当な時間と労力がかかるものですが、
間に入って、それに携わる方々が、サンプル作成にあたって、デザイナーやパタンナーやMDなど、指図を出した担当者が意図するデザイン仕様や修正指示の確認に時間が取られ・・・

仕様書が不完全、伝言が上手く伝わらないと、仕事が進まない、やり直しが増える、などなど、タイムロスによって、発注が遅れるのも実態です。

最近の話を聞いていても、このあたりは筆者が生産に携わっていた90年代とさほど変わらないようです。

むしろ海外生産が多くなる、産地が遠くなる、介在する言語が増える、出張経費削減で商社任せとなると、ご苦労もいろいろ多いようですし、現場に入って鍛えられながら育つ商品企画や生産担当の人材育成も進まない傾向にあるようです。

サンプル作成も回数が増えれば、当然、作成コストや無駄になる資材もばかになりませんし、その経費は当然、本生産の原価に上乗せされるわけですし、発注が遅れて、販売期間が短くなれば、想定以上の値下げや売れ残り在庫を抱える結果になるわけで、誰にとっても良いことはありません。

そういったプロセスの中で、3Dのシュミレーションや CADによるテクノロジーは・・・

サンプルを作らずに選択バリエーションを増やすことができる、一方、簡単な確認で済むことは、わざわざサンプルを作らず、バーチャルでの確認で代替えすることで、必要最小限の実物サンプル作成に絞ることができそうです。

すると、単純なコストだけでなく、資材のムダや、働き方改革が叫ばれるなか、残業の削減にもつながることが期待されると共に、プロセスが短縮されれば・・・

意思決定のタイミングを販売時期に引き付けることができたり、シーズン中の追加生産、新企画など柔軟性にもつながることも期待できるとというわけですね。

3D CADを実際に使っている方によれば、現段階では、2Dと3Dのソフト間の互換性に問題があったり(双方への変換のたびに調整が必要で時間がかかる)、まだまだ、手間がかかるようです。

新しいものは、どうしても、産みの苦しみがありますし、保守的な方々からの拒絶反応は少なくないでしょう。

しかし、何ごとも、黎明期は辛抱のしどころで、徐々に過去データが蓄積されて行き・・・

ある臨界点(データベース内のデータ量や精度、オペレーターの熟練など)を超えたところで、業界で加速度的に実用に乗って行くのではないか、と思われます。 

データを蓄積して、反復作業、柔軟対応に活かせること、それはあらゆる業務のデジタル化の大きなメリットでしょう。

某グローバルSPAも、結構前からデザインのデジタル化とアーカイブの蓄積によるデータベース化が本生産前の商品企画生産のスピードと柔軟性に繋がっていると聞きます。

そして、3D のオペレーションが広がるにあたり・・・

例えば、デジタルネイティブ、ゲーム世代の活躍、また、エンタメ業界など3Dに慣れた異業種からの人材の流入を促し、いい意味で業界内でイノベーションが起こって活性化することも期待しています。

アパレル生産とサプライチェーンのボトルネックのひとつの解消策として、企画生産現場における3Dテクノロジーへの取り組みに注目しています。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

今回の投稿が2020年最後の投稿になります。

今年も1年間お付き合いいただきありがとうございました。

3月からコロナショックに直面し、業界全体がなかなか先の見えない情勢のまま新年を迎えます。

そんな中でも、むしろ未来に向けて加速した、「新しい生活様式」のビジョンを描き、それに向けた業務の再構築に邁進致しましょう。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 アパレルビジネスのボトルネックをあぶりだし、10年後の顧客のビジョンから改革を進める、勝ち残り戦略についての問題提起本です。

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December 21, 2020

H&Mとインディテックス(ZARA)の決算進捗に見る パンデミックの欧州グローバルチェーンの業績への影響

Hm2017先週、12月15日にH&Mの2020年11月期の年間売上高が発表されました。
前年比80.4%の187,025百万SEKとなり、日本円換算(SEK=12.44円)で2兆3265億円となります。

粗利高以下の利益の発表は1月29日のFull year reportを待つ必要がありますが、第3四半期までの9か月は、営業赤字。

これに対し、仮に第4四半期が第3四半期並みの黒字が出たとしたら(例年3Qと4Qの売上は同じくらい、利益率は4Qの方が若干よい)、年間ベースでは辛くも1%-2%程度の黒字で着地をしそうな感じです。

一方、ZARAのインディテックスは

2021年1月期の第3四半期9か月(20年2月-10月)が終了していますが、業績は前年比71%の売上高14,085百万ユーロ、営業利益率は6.7%の黒字です。

20年10月は一旦、前年比94%まで戻りましたが・・・
最終四半期の第2波の11月は81%、12月は10日までで87%ですが、これからの第3波がどうなるか・・・

というところですね。

仮に第4四半期が、売上高前年比80%、第3四半期並みの収益率だとすると・・・

通年ですと、前年比74%の20,858百万円ユーロ、日本円換算(€=126.1円)で2兆6303億円の予想、3Qを参考にすると、営業利益率は通年で10%前後出るかも知れません、という感じです。

欧州で約6割を売り上げる両社へのパンデミックの影響は

第2四半期から第4四半期まで影響を受けたH&Mは売上高20%減
通年、影響を受けているインディテックス(ZARA)は同26%減というところでしょうか。

上記の予測に基づき、

ユニクロのファーストリテイリングを含むグローバルチェーントップ3の2020年度売上高ランキング予想をしてみると

                    売上高
インディテックス   (21.1予測) 2兆6303億円(前比74%)
H&M         (20.11実績) 2兆3265億円(同80%)
ファーストリテイリング(20.8実績) 2兆0088億円(同87%)

というところでしょうか。

アジア中心のビジネスで、パンデミックの影響が期間、地域共に比較的少なく、
前年比87%で収まったファーストリテイリングとツートップの売上規模の差は少し縮まりそうな感じです。

関連エントリーー世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題ですね。実はZARAも以前からベーシックが稼ぎ頭。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

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