November 13, 2023

中国発越境EC企業に学ぶ、新しいビジネス(商売)の作り方

20231113_16522411月13日の日経新聞に

中国発EC、米で急伸 という見出しで

中国を拠点にする越境EC 企業である
SHEIN(シーイン)と TEMU(ティーム―)のアメリカでのシェア拡大に関する記事が掲載されていました。

記事によれば、
アメリカでの今年10月の両社のアプリ月間利用者数は1億1000万人と前年比4倍
(これはあくまでもアプリ利用の数です)

その数はアメリカにおいて、Eコマース最大手アマゾンの利用者の9割に迫り、日本でのデータにおいてもアマゾンの6割に迫るとのこと。

SHEIN はアメリカでのビジネススタートから約10年が経過していますが、
直近の1年間でも倍になるという伸び、

TEMUは昨年22年9月のサービス開始から急増し、アメリカでの
アプリのダウンロード数はSHEINを上回り、トップを争っているようです。

SHEINのインフルエンサーを活用したオンラインマーケティングと国内の小ロット短サイクル生産を組み合わせたビジネスモデルは

中国国内においては、あたりまえで、新規性はなく、

そのため、同社はレッドオーシャンな中国国内市場を捨て、海外にその活路を求めて、見事に成功しました。

それゆえ、SHEINの中国国内での知名度はなかったため、競合企業がその急成長に気づくのが遅く、

SHEINの独走を許してしまったという背景があります。

それを、中国大手企業傘下のTEMUらが猛追するという構造です。
 
そもそも、SHEINとTEMUは同じように語られますが、ビジネスモデルは違います。

アパレル、雑貨中心で、自ら商品企画を行っているSHEINに対し(ODMや国内外のブランド仕入もありますが・・・)

TEMUはアパレルもありますが、雑貨全般でメーカー在庫を消費者とダイレクトにつないで販売するプラットフォーマー的(アマゾンのような)な調達の違いがあります。

価格が激安な理由は

ローカルの中間業者やバイヤーを介さない
「産地直送」だから。

そして、免税措置という

各国の「政府が決めたルール」を上手く利用しています。

いわゆる「中抜き」、であって
既存の、流通経路を崩しているのは確かですが

果たして、これをダンピング(不当廉売)と言ってよいのだろうか?

と報道記事を読んで違和感を覚えることがよくあります。

実際、日本から広州に買い付けに行っている方が

「彼らは我々の市場での買い付け価格で日本の消費者に売っているから、

価格では到底敵わない」

と嘆いていらっしゃったのが印象的でした。

業界の中には

最近報道されないから、ブームも去って下火だろ

とか

原宿のショールーム店もガラガラだし、

と言う方もいるようですが

とんでもない、

報道されないのは、メディアにとってメリットがないからであって、

周りに利用者や話題は着実に増えているし

シーインは女性中心
ティームーは男女共に(男性も少なくありません)

低価格やティーンズ・ヤング向けのアパレルチェーンに行って耳をすませば

「これ(同じような商品)、シーインだったらいくらだった」

という会話が聞こえて来ます。

オンラインという目に見えない拡大だからこそ
危機感を持たないのがおかしい

そんな話を先週も

カジュアルアパレルチェーンの経営者さんや
eコマースのプラットフォームを提供する企業の社長さんとも

世間話をさせて頂いたところでした。

彼らが「個人輸入」を販路にしていることについて、

中間業者の方は
政府が輸入規制するのを期待するのではなく、

むしろ、なぜ彼らが成長しているかを
是非考えたいところです。

ある意味

産地からの逆襲であり

リードタイムを短くして
在庫リスクを回避する
サプライチェーンのショートカット

という 

しがらみに囚われない

イノベーターというか、パイオニアというか
ゲームチェンジャー的な
商売人のアプローチを採っているのであって

「ずるい」と言うのではなく

「もし、あなたが今から新規ビジネスを始めるとしたら?」

どうするかを自問してみたいところです。

マーケティングは世界中のどこにいても
オンラインでリアルタイムにできる時代なら・・・

サプライチェーンは
材料がすべてが揃う、需要にあわせて
すぐにつくって配送できる

そんなところに拠点を置くことを
考えるべき時代であって

SHEINは

それに気づいて
地の利のある
広州を拠点にしたわけで

すでに広州だけでなく、
更なるグローバル化を標ぼうして

ブラジルやトルコにおいて
グローバルサプライチェーンの構築を着々と進めているのです。

同じことを考えて

韓国の調達ルートを見直したり

問屋街を背景にしたり

生地問屋街に拠点を置くことを考えている方々もいらっしゃいます。

アパレルに限定しなければ
もっと幅広い発想ができるのではないでしょうか?

流通は目に見えないところで
大きく変わっています。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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October 16, 2023

ユニクロのファーストリテイリング2023年8月期も過去最高益。連結年商5兆円、10兆円達成への道筋は?

Uq-singapoleユニクロを展開するファーストリテイリングの2023年8月期決算発表がありました。
売上高は 2兆7665億円  
営業利益は 3810億円 と過去最高益
営業利益率は 13.8%
 
今期24年8月期は3兆円を超える計画です。

23年8月期はまだ世界3位の年商規模ですが、
順当に行けば、2年後にはH&Mの売上を抜き世界2位になりそうです。

柳井社長(会長)は
ユニクロ海外事業の旗艦店の出店で年商5兆円までの道筋見えた
そこまで行けば、2倍の10兆円にすることは難しくないともおっしゃいます。

ファストリとしては期限を設定していませんが、

例えば

国内ユニクロ事業は横ばい
海外ユニクロ事業は年率15%成長
GU含むユニクロ以外の事業も同様の年率で

連結で年率12-13%の成長するとすると

6年後の2029年には   年商5兆円 (ZARAのインディテックスは今期中に5兆円に到達見込みです)
12年後の2035年には 年商10兆円

になる見込みです(筆者試算)。

関連エントリー 世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

GUはどの国でも競合が多いので、やはり海外ユニクロ事業の成長がカギ

今回のファストリ決算発表の目玉は、

ユニクロの地域別の売上高と営業利益をはっきりと開示したことでしょうか。

              売上高(前比)/営業利益(前比)/営業利益率/売構成比
日本             8904億円(9.9%)  /1178億円(9.2%)/13.2%/ 38.5%
グレーターチャイナ     6202億円(15.2%)/1043億円(25.0%)/16.8%/26.9% 
韓国・東南ア・インド・豪州 4498億円(46.1%)/782億円(36.4%)/17.4%/19.4%
欧州             1913億円(49.1%)/ 273億円(82.5%)/14.3%/8.3%
北米             1639億円(43.7%)/ 211億円(91.9%)/12.9%/7.1%

連結調整合計        2兆3275億円(27%)/ 3447億円(46%)/14.8%

※前比の%は全て+で伸び率を表す

市場の大きい欧米が期待されますが・・・競合も激しいので・・・

やはりカギは中国市場と東南アジアの伸びしろでしょう。

中国と東南アジアは利益率が高いですね。

日本よりも単価を高く設定して売っていることもあるでしょう。

いよいよ1000店舗を超える中国本土では、

店舗の純増数をキープしながら、スクラップ&ビルドに取り組むようです。

そして、中国市場でのシェア拡大のために、より大衆価格へ価格調整をする(こなれた値段にする)というカードも残っています。

日本においては、数字を見る限り、成熟期も後期に入っている感がありますが・・・

グローバル企業は、ある市場は成熟期に入っても、他の市場で成長すればいいわけで

特に人口の多い、人口が増えるアジア(インド含む)市場での成長に期待をしたいところです。 

アパレルビジネスにおいて、真逆のアプローチを採る2社を比較することで

SPA(アパレル製造小売業)というビジネスモデルを理解する入門書

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最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 25, 2023

すべてがつながっていることがSPA(製造小売業)の最大の強み

Zara_tokio-2本日の日経MJにスーパーマーケット成城石井の原社長のインタビュー記事が掲載されていました。

営業利益率が2-3%というスーパーマーケット業界で
2023年2月期 年商1102億円、営業利益122億円と 

11%もの営業利益率を叩き出す業界ゲームチェンジャー企業の1社です。

それを可能にするのは・・・

卸問屋だけに頼るのではなく、
自ら、産地に買付に行ったり、原料から商品開発をする
型破りな食品スーパーであるからこそです。

この「SPA(エス・ピー・エー)」という言葉、

一般にビジネス紙誌やメディアでは「製造小売業」と訳されますが

もともとアメリカのGAP(ギャップ)の創業者が命名し
日本のみで普及したビジネス用語(広めたのは繊研新聞さん)ですが

Speciality store of Private label Apparel

の略。 直訳と実態は

自社ブランド、つまりプライベートレーベル(PB)のアパレルを販売する専門店

ですんで、アパレル業界用語のはずが、

ホームファッションでも、メガネでも、食品スーパーでも

経済界はユニクロみたいなモデルのことをSPA(製造)と呼んでしまっているようです。

僕の大学の講義では、一応、丁寧に説明していますが、

今となっては、一般の会話の中で、
僕も含めて、それを指摘し直す人はあまりいないでしょう(笑)

 

さて、このSPA(製造小売業)のメリットって何でしょう。

従来は メーカーが作った商品を小売業(百貨店や量販店や専門店)が仕入れ

シーズン中に仕入れた在庫を「売り消し」て行くのがアパレルビジネスだったところに

自社ブランドの商品開発を行い

顧客との接点である「店頭」や「オンラインサイト」があるからこそわかる
実需要を起点に、品揃えと在庫を調整し

シーズン販売最盛期にむけて、在庫の中味を
最良に整え直して行くのがSPA最大のメリットと言えます。

しかし

今、SPAを名乗っている、あるいはPBに力を入れている
多くのブランドや小売業は

どちらかというと

高い粗利率を得ることが
「目的」になってしまっているのが現実のようです。

本来は、
メーカーに任せていたら、自らコントロールできない

・適品(お客様が望む商品を)
・適時(お客様の需要のある時に)
・適価(納得の行く価格で)
・適量(必要な量)を

自らコントロールすることで顧客の需要に応えながら
利益を最大化するのがメリットです。

このSPAの本質や運用について

日本最大手であるユニクロと
世界最大手ZARAの事例を用いて紹介したのが

「ユニクロ対ZARA」(日本経済新聞出版社)
(初版2014年、文庫化2018年)でした。

日本では、もう日経さんに在庫が無くなり・・・
電子書籍か中古でしか読むことができなくなってしまったわけですが

実は、簡体字に翻訳された中国本土では

おかげさまで、今でも読まれていて、重版が続き、今年も新装版が出版されました。

そんなこともあって、コロナ禍が明けに日本に視察に来られる
いくつかの中国大手アパレルに限らず、異業種消費材企業の経営者の方々から

ユニクロとZARAの講演をして欲しい

と頼まれるもので、アップデートしながら、お話ししている次第です。

両社はなぜ、

自国市場シェアNo1になることが出来て

そして

1国にとどまることなく、今でもグローバルに成長を続けているのか

多くの経営者の方々が関心を持つことです。

先に述べた

本来のSPAの強みを十二分に生かしているのが

まさしく、ユニクロとZARAです。

講演では

両社のベーシックとトレンドファッション

という

多くの専門店に共存するにもかかわらず

顧客の期待が違うゆえ、
企業の管理手法も違う商品の

マーケティングとオペレーションの違いと強み

特に

シーズン中の需要に対する変化対応力
(需要連動生産と売り切り術)

を中心にお話しし、

店頭起点の在庫コントロールやサプライチェーンマネジメントが

損益にどれだけ影響を及ぼすかその大切さを伝えております。

講演を聞いて頂いた企業の幹部の方のコメントに

 「すべてがつながっていることが最大の強み。
 一貫していて、淀みなく流れているのがわかる

 それに比べて私たちは各部署が自分たちひとりひとりの仕事には
 誇りを持っているけれど・・・

 同じ社内なのに 全くつながっているとは言えない

 これは彼らが大きくなったから 出来る話ではない

 規模の問題ではない」

というのがありました。

このご意見は本当にその通りだと思います。

中国のアパレル企業はZARAのような製造業出身SPAが多く、
国内生産ができるのに・・・

直営店ばかりではなかったり、
サプライチェーンは分断されていたり・・・

利害関係が複雑、つながっているように見えて
つながっていないところが多いようです。

 

さて、日本に戻って、

多くのアパレル企業がプライベートブランド(PB)を開発し

SPA(製造小売業)を名乗っていますが・・・

顧客とのタッチポイント、そしてアンテナでもある

店舗やECサイトを持つメリットとつながりを

果たして、どれだけ最大限に活かしているでしょうか?

今日の日経MJの成城石井の原社長のコメントの中に

「最大の強みは売り場を持っていることです。今、何が売れているのか、細かいデータを持っていて値段や売り方の展開も状況によって自由に変えられます。」

という、つながっていることのメリットを誇るコメントがありましたね。

SNSによる販促やマーケティングも、もちろん大事ですが・・・

店頭から素材まで、つながっていることのメリットをあらためて考えたい時

「片手は工場に、もう一方の手は顧客に触れていなければならない」
(自分たちがつくった商品をお客様が購入するまで目を離すな)

というZARA(ザラ)の創業者の名言を思い出します。

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最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】2023年9月29日(金)13:30~15:00

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September 19, 2023

【このセミナーは終了しました】「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナーby WWDJAPAN

Wwd929コロナ禍を経て
世界のファッション流通マーケットの強豪たちは
いったいどんな風に変わり、どこへ向かっているのか?

毎年このブログでもリリースしている
世界アパレル専門店企業売上高ランキングをベースに

各社の動向やこれから10年の勝ち残りのカギを探ります。

2022年版ランキング公開から半年が経過してますので、その後の動向も付け加えてご説明させて頂きます。

グローバル時代、世界の動向は少なからずローカルマーケットに影響を及ぼします。

世界の流れを読み、国内ビジネスにどう取り入れるか、そんな視点を得て頂ければ幸いです。

9月29日(金) 13:30~15:00 オンライン

WWDJAPAN主催 有料セミナー

「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー

講師:「ユニクロ対ZARA」著者 ディマンドワークス 齊藤孝浩

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最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 18, 2023

在庫をたくさん作らなくても、小ロットでブランドを立ちあげる方法もあるという話

Imag22789月14日の繊研新聞にTシャツなどアパレル製品へのシルクスクリーンプリント加工を手掛ける企業、シルクマスター社がスケートボードへのプリント技術を開発し、発売を始めたという記事が掲載されていました。

この記事を読んで思い出すのが、90年代、アメリカのトレードショーでよく出会った、スタートアップブランドたちです。

当時、西海岸では、独自のグラフィック(CG)を活かして、ブランドを立ち上げ、Tシャツ、キャップ、ショーツ、スケートボードなどにプリントや刺繍を施して、トレードショー向けにサンプルをつくって出展するチャレンジャーたちがたくさんいました。

主に、スケーターブランドの連中ですが、実際にショーで受注をとってから、いわゆるブランクボディと呼ばれる、プリント用の無地のTシャツ、キャップ、ショーツ、スケートボードの板を、在庫を持つサプライヤーから、ケース単位で仕入れ、加工をしてからデリバリーするという手法を取っていました。

そんなスタートアップブランドたちは、小売チェーンのバイヤー向けのBtoB卸ビジネスが主だったのですが、
Tシャツとキャップとショーツとスケボーとステッカーが揃えばれっきとしたストリートブランドの始まりだったんですよね。

当時、世界からアメリカ西海岸に新興ブランドを「買い付け」に来るバイヤーの手伝いをするために、各地のトレードショー周りをしていた私は、

「数量をたくさん発注するなら、ブランクボディを買う金がないから、代金を先払いしてくれないか?」

と申し出てくるスタートアップもあって、アメリカって夢を持って、起業もしやすい環境にあるんだな、って思った記憶が蘇ります(笑) 

もちろん、その後、成功したのは一握りの起業家だけでしたが・・・。

今も昔も、アパレルブランドを起業しようとする方々がいらっしゃると思いますが、

もちろん、どんなブランドにしたいか、にもよりますが、

今どきは、日本でも、わざわざ生地を買って、一からつくる在庫リスクを負う本格的なモノづくりをしなくても、

加工用の製品在庫を持つ専門メーカーさんがいくつも存在しますから、

無地(ブランク)ボディを仕入れて、グラフィック勝負で、プリントをする、刺繍をする、リメイクする。

そのアイテムのバリエーションも、Tシャツだけでなく、いろんなアイテムがケース単位で仕入れられる時代になったので、小資本で、Eコマース発信のBtoCで立ち上げるところから始める起業家も出てきやすい環境にあるんじゃないか、と思います。

手軽になり、参入障壁が下がる分、競争も激しく、創意工夫の勝負であることは間違いありませんが、小資本でもスタートアップできる環境が整い、選択肢が広がり、業界にチャレンジャーが増えて行くことは、楽しみでもあります。

今や有名になったブランドも、最初からお金があったわけじゃなく、

そんな資金の苦労をしながらスタートアップしたんですよね。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 14, 2023

急成長ルルレモン躍進の秘密

Imag2243毎年公開している

世界アパレル専門店売上ランキングトップ10

コロナ禍を経て、最も注目すべきランクイン企業は
ルルレモンです。

ルルレモンは1998年、カナダで創業

アメリカ合衆国を中心に
過去10年で年平均約20%の成長を続ける

ヨガやランニングなどアスレジャーを中心に
健康な体づくりのためのスポーツアパレルをメインに販売するチェーン

ナイキやアディダスが靴を中心にウエアも展開するのに対して、

ルルレモンは、もっぱらアパレル中心

そして、

アスリートというより、アスレジャーに関心のある一般大衆向け

また、

直営店とオンラインでエンドユーザーに直接販売するのが著名グローバルスポーツブランドとのアプローチの違いです。

そんなルルレモンは

2022年度世界アパレル専門店売上高ランキングで、第6位

北米ではGAP社に次ぐ2位ですが、営業利益はGAP社を遥かに上回って、1位

lululemon ルルレモンという単一屋号では

すでにGAP社のオールドネイビーやヴィクトリアズシークレットを抜いて1位の売上規模です。

商品は4wayストレッチや速乾など機能素材を使った、アスレチックにも普段着にも使える着心地が良く、動きやすいウエア

単に、服だけを販売するのではなく、

店舗で開催されるヨガ教室やランニング教室で

コミュニティーづくりを通じてコアなファンを増やして行くマーケティングが秀逸です。

そんな店舗体験提供に裏打ちされているため

けっして安くはない商品が、オンラインでも良く売れて、

23年1月期決算では、いよいよ、オンライン売上が店舗売上を上回りました。

オンラインの本社費差し引き後営業利益率は25~30%と

同10%前後の直営店より高いため、

全社営業利益率は20%近い高い収益率を上げています。

 

そんな 店舗体験型による顧客のつながり

オンライン事業の収益性

の二本柱に、とどまらず、

 

未来に向けて面白い取り組みがいくつかあります。

ひとつは

自社商品の買い取り、再販プログラム
lululemon Like New

です。

ユーザーが不要になったルルレモン商品を

ルルレモンが引き取って、顧客には新品購入の際に割引になるクレジット(ポイント)を付与します。

ヘビーユーザーたちは店舗で開催されるイベントに参加するだけでなく、
購買頻度も高いユーザーでしょう。

店舗で開催される教室には新しい商品を着て行きたいでしょうし、

毎シーズンアップデートされる商品を知れば、新しい商品が欲しくなるわけで、

そこでまだ十分着ることができる不要になった旧商品
(といってもそんなに古くないからLike New)

を、手放す受け皿をルルレモンが自らつくり、

一方、これからルルレモンを着てヨガやランニングを始めようとする
エントリー顧客さんには

半額以下の手頃なお試し品として提供できるというわけです。

2つめは
オンラインコンテンツの提供です。

ヨガやランニングをする人は当然
自宅またはその近辺でも日頃から自らのエクササイズを行うわけで

その手助けに沢山のエクササイズの秘訣を提供する
オンライン動画を配信します。(無料と有料コンテンツあり)

そして、3つめは

有料会員制の普及です。

同社は22年に会員制プログラムを始めました。

無料コースと有料コースがあり、7カ月で無料会員はすでに9百万人に達したそうです。

月間または年間有料会員になると

商品の割引が得られたり配信コンテンツが無料になったり

ルルレモンが提携する提携エクササイズ教室が割引で
受講できるというわけです。

・オンラインと店舗を行き来するオムニチャネル

・店舗での体験提供

・リセールによる循環プログラム

・コンテンツ配信、有料会員制・・・

顧客とつながり続ける取り組みを地に足をつけて次々に取り組んでいるのがわかります。

同社はこれらの取り組みにより

2022年1月期の売上約8000億円を5年間で倍の1兆6000億円にする

POWER OF 3 X 2というプロジェクトを推進中。

その原動力は

・オンライン売上を倍増させ
・後発のメンズの売上を2倍に増やし
・北米外の海外売上を4倍にする

ことによって実現するとのことです。

海外展開について、すでに、100店舗を超えた中国に対して

日本にはまだ、六本木、原宿、表参道、銀座、新宿(丸井)、梅田、そして御殿場のアウトレットを含む
7店舗しかありません。

店舗が少ないと認知度が低く、日本市場には今のところインパクトも少ないかも知れませんが

ルルレモンは今時の、ファッション関連のグローバルマーケティングの最前線にいる学ぶべきブランドのひとつと感じます。

ルルレモンは既存スポーツブランドとは違うアパレルチェーンとも違う

ゲームチェンジャーの1社です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 第5章では、年会費に支えられた小売業 コストコのビジネスモデルを取り上げました。

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June 12, 2023

SHEIN(シーイン)を支える生産背景、中国広州アパレル産地レポートがWWDJAPANに掲載されました。

Shein-hqWWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

6月12日発売の連載 第50話目に、ウルトラファストファッションSHEIN(シーイン)の本拠地である中国広東省広州のアパレルサプライチェーンの現地視察レポートをまとめさせて頂きました。(筆者が5月下旬に実際に視察したもの)

世界の工場である中国の、アパレル一大産地である広州は生地、付属品の現物在庫を抱える巨大な市場があり、製品を5日でつくる背景を支えています。

そんな産地で取材をした中で、最も印象的だったのは、

SHEIN(シーイン)のようなIT業界から来たゲームチェンジャーたちが中心になって、
速く納めてくれるサプライヤーには、すぐに払う、

一方、バイヤー側は速く払うために、速く売ってキャッシュに換える、
既存の業界とは対極にあるキャッシュフロー経営が進んでいました。

安く作るために、大量受注、大量生産をしてしまっては、リードタイムも長くなり
サプライチェーン上の各所に溜まる在庫にキャッシュを寝かすことになりますが、

小ロットなら、多少コストが高くでも、
むしろ、速く換金でき、

サプライチェーン全体のキャッシュフローが豊かになるというメリットを
あらためて産地で考えさせられた次第でした。

世界のメディアでは、SHEIN(シーイン)のネガティブな面が大きく報道されますが、

実際、産地に行ってみると、メディアでは報道されない、

日銭商売である小売業として、我々も見習うべき

目から鱗の「商売の原点」をたくさん耳にすることも出来ます。

SHEIN(シーイン)は、

他にも業界のどんな常識を覆すことで、急成長したのか?

今後もアンテナを立てて、リサーチを続けたいと思います。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトでもお読み頂けます。

シーインのウルトラファストサプライチェーンの秘密を中国・広州で探る

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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 第2章では、産地から、店舗を持たずに、世界の消費者に直接売り込む

 SHEIN(シーイン)のビジネスモデルの優位性について取り上げました。

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May 29, 2023

新刊「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)が発売されました。

Finalおかげさまで、来週5月25日(木)に齊藤孝浩の4冊目となる
新刊「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP日本経済新聞出版社)が発売になりました。

4年間、WWDJAPANに連載を続けてきた「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)で紹介した企業を中心に、

主に決算書情報などから読み取れる、コロナ禍を経て勝ち続けている企業のビジネスモデルが、従来の業界の常識と何が違うのか、その優位性、将来性をわかりやすく図解してみました。

勝ち続ける企業は・・・業界の常識とは真逆のことをやっていた。

というのがこれらのビジネスモデルとゲームチェンジャーたちのビジネスモデルを分析しての気づきです。

そして、損益計算書(PL)の強さが お金の使い方にあるということ。

ZARA(ザラ)から始まり、SHEIN(シーイン)、ZOZO、ワークマン、コストコ、LVMH(モエヘネシールイヴィトン)、丸井グループ、メルカリ、DOORDASH(ドアダッシュ)などなど

が登場しますが、彼らは

・在庫の運用のしかたが上手く

・商品を仕入て売る以外にも収益源を持ち

・自前でしくみを構築したからこそ、そのインフラが他社にも売れるプラットフォーマー的な役割を果たし

・小売流通業がエンドユーザーから代金(日銭)を預かることの大切さを知っています。

上記の企業の他にも、ユニクロ、ニトリ、H&M、クラシコム、モンベル、ヤマト運輸などのビジネスモデルも登場します。

一応、専門書ではありますが・・・

グラフやイラストを多様し、誰もが知っている身近な企業の財務体質とビジネスモデルを、

「ですます調」で綴ることで、

多くの方に読みやすい体裁にしております。

一番読んで頂きたいのは、これからビジネスモデルを見直したい経営者さん、

新しいビジネスモデルを一から始めるスタートアップ企業や起業家の卵の方々、

そして、流通企業の幹部になって、PL管理に責任を持っている方々にも、

競合他社ベンチマークのアプローチも学んでいただけると思いますので、

是非読んで頂きたい内容です。

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May 22, 2023

世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

Lulu-santa-monica

世界的なパンデミックを経て、躍進し、最高益を更新する企業と苦戦が続く企業の明暗が分かれた2022年度。世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃いましたので、毎年恒例の売上高ランキングTOP10を共有させていただきますね。

今回、売上高の増減はコロナ前からの回復度合いを見るために、19年度比とさせていただいております。

 円建て比較にあたり、為替レートは2023年1月末の €=141.3円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=130.5円、英国£=161.3円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 19年比増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2023.1期) 4兆6,019億円 +15.1% 7,799億円 16.9% 5,815 ZARA
2位 H&M (瑞;2022.11期) 2兆8,033億円 -4.0% 898億円 3.2% 4,465 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2022.8期) 2兆3,011億円 -0.5% 2,973億円 12.9% 3,562 UNIQLO
4位 GAP (米;2023.1期) 2兆0,374億円 -4.7% -90億円 -0.4% 3,352 OLD NAVY
5位 プライマーク (愛;2022.9期) 1兆2,412億円 -1.2% 1,219億円 9.8% 408 Primark
6位 ルルレモン (加;2023.1期) 1兆0,581億円 +103.8% 1,732億円 16.4% 655 Lulu Lemon
7位 NEXT (英;2023.1期) 8,731億円 +24.2% 1,519億円 17.4% 466 NEXT
8位 ヴィクトリアズシークレット (米;2023.1期) 8,277億円 -15.5% 738億円 8.9% 837 Victoria’s Secret
9位 アメリカンイーグル (米;2023.1期) 6,510億円 +15.5% 322億円 4.9% 1,175 AEO、Aerie
10位 しまむら (米;2023.2期) 6,161億円 +18.0% 533億円 8.7% 2,213 しまむら

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアはブランド企業の余剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンのC&Aおよび、中国産地からの越境ECのみでアメリカ、中東など世界中に売り込み、急速に拡大を続けるファストファッション企業、SHEIN(シーイン)あたりもTOP10の2-3位前後にランクインする規模と思われますが、それぞれ、正確な売上高がつかめなかったため、除外しております。 

【解説】

13年連続 トップを走る、ZARAのインディテックスは売上、利益とも過去最高益を更新。ロシア500店舗以上を閉店、中国苦戦するも、欧州とアメリカの躍進での達成。店舗とオンラインの融合は完成し、スクラップアンドビルドは完了に近づき、過去最大の設備投資をして、次のステージに進みます。

第2位のH&Mはパンデミックからの回復で増収も減益。原価高騰を価格に転嫁しなかったこと、ロシア休業の処理、また、構造改革に費用をかけたことが要因です。アメリカの伸びは大きく、ドイツを抜いて、売上シェア最大国になりました。

第3位のファーストリテイリングは日本が回復、中国がロックダウンで苦戦するも、欧米が黒字化、増収増益で中国のマイナス分をカバー。これで中国が復活すれば、更なる躍進は楽しみです。

第4位のGAPは減収減益、営業赤字。同期中にCEOが交代するほどの混乱ぶり。店舗のスクラップアンドビルド、欧州、メキシコ、中国事業をパートナー企業に移管など、リストラが進んでいます。原価高騰による粗利率低下、Yeezyコレクションの53百万ドルの処分も営業赤字を拡大した要因です。

第5位のプライマークは各国でコロナから回復中、オンラインでは、店舗在庫確認に加え、クリックアンドコレクトの対応の実験を始めました。コロナ禍にインナーウエアや子供服が伸び、今後も期待ができそうです。ドイツの再構築、アメリカの拡大が今後の成長のカギ。

6位以下の一番のトピックは なんと言っても、第6位のルルレモンです。

店舗、EC合計で、昨年比3割増収で1兆円規模に到達。一方、微減益。これは原価高騰で粗利率が2%低下したのと、ミラーののれんの減損が大きく響いています。但し、ミラーを活用した、ルルレモンスタジオで有料サブスクを開始するのに注目です。26年までに売上を1兆6000億円規模と2021年の倍にするプランPower of Three x2 growth planをを進行中。

そして、第7位のNEXTは二桁増収、一桁増益。店舗好調で、ECは落ち着きましたが、ランキング内でトップクラスのEC化率と収益率。原価高騰を価格転嫁とプロパー消化向上でカバーするも、テクノロジーと物流に投資をすることで、利益率は若干低下した模様です。プラットフォームビジネス(内製化インフラを外販)の開示が始まりました。現状、全売上高の2.6%になりました。

そして、第10位の日本のしまむら。ファッションセンターしまむらの高収益にバースデイ、アベイルが利益貢献して、過去最高益を2年連続で更新。バースデイ業態としまむらでは、婦人服以外の伸びが今後は成長のカギとなります。

業績の明暗は、オンラインと店舗を行き来するニューノーマルへの完成度と需要にあわせたサプライチェーンマネジメント力の差です。

原価を安くするために、人件費の安い国に生産地を移転し、ファッションビジネスにとって致命的とも言える、リードタイムを販売期間よりも長くしてしまったところは今後も苦戦が強いられることでしょう。

昨年のランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上ランキング2021 トップ10

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】2023年9月29日(金)13:30~15:00

WWDJAPAN主催 「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
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April 10, 2023

過去最高益、独走ZARAのインディテックスはコロナ前後でどう変わったのか?

Wwd-vol48-inditexWWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

4月10 日発売の連載第48話目は、23年1月期大幅増収増益で年商4兆6000億円規模になり、過去最高売上&利益を更新したZARAのインディテックスグループの最新決算を取り上げました。テーマはコロナ前後で同社はどう変わったのか?です。

500店舗以上の店舗を閉め、ロシアから撤退した同社は、それにもかかわらず、その他の地域、特にアメリカの伸びしろに支えられ、17%の増収、29%の営業増益。

スクラップアンドビルドによる店舗の大型化と面積あたりの売上高を増やし、過去からの脱皮は完了しつつあります。

今回の決算発表でよく使われていた言葉は 

"to the next level" 。

過去最高の設備投資も敢行しています。次のステージにはどんな手を打って来るのか?引き続き、先行く世界トップの動向からは目が離せませんね。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトでもお読み頂けます。

ファッション業界のミカタ Vol48~過去最高益、独走ZARAのインディテックスはコロナ前後でどう変わったのか?

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考】ショッピングのデジタルシフトの真っただ中、その先にあるのはどんな未来なのか?10年後のファッション流通の未来を考察しました。

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