October 16, 2023

ユニクロのファーストリテイリング2023年8月期も過去最高益。連結年商5兆円、10兆円達成への道筋は?

Uq-singapoleユニクロを展開するファーストリテイリングの2023年8月期決算発表がありました。
売上高は 2兆7665億円  
営業利益は 3810億円 と過去最高益
営業利益率は 13.8%
 
今期24年8月期は3兆円を超える計画です。

23年8月期はまだ世界3位の年商規模ですが、
順当に行けば、2年後にはH&Mの売上を抜き世界2位になりそうです。

柳井社長(会長)は
ユニクロ海外事業の旗艦店の出店で年商5兆円までの道筋見えた
そこまで行けば、2倍の10兆円にすることは難しくないともおっしゃいます。

ファストリとしては期限を設定していませんが、

例えば

国内ユニクロ事業は横ばい
海外ユニクロ事業は年率15%成長
GU含むユニクロ以外の事業も同様の年率で

連結で年率12-13%の成長するとすると

6年後の2029年には   年商5兆円 (ZARAのインディテックスは今期中に5兆円に到達見込みです)
12年後の2035年には 年商10兆円

になる見込みです(筆者試算)。

関連エントリー 世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

GUはどの国でも競合が多いので、やはり海外ユニクロ事業の成長がカギ

今回のファストリ決算発表の目玉は、

ユニクロの地域別の売上高と営業利益をはっきりと開示したことでしょうか。

              売上高(前比)/営業利益(前比)/営業利益率/売構成比
日本             8904億円(9.9%)  /1178億円(9.2%)/13.2%/ 38.5%
グレーターチャイナ     6202億円(15.2%)/1043億円(25.0%)/16.8%/26.9% 
韓国・東南ア・インド・豪州 4498億円(46.1%)/782億円(36.4%)/17.4%/19.4%
欧州             1913億円(49.1%)/ 273億円(82.5%)/14.3%/8.3%
北米             1639億円(43.7%)/ 211億円(91.9%)/12.9%/7.1%

連結調整合計        2兆3275億円(27%)/ 3447億円(46%)/14.8%

※前比の%は全て+で伸び率を表す

市場の大きい欧米が期待されますが・・・競合も激しいので・・・

やはりカギは中国市場と東南アジアの伸びしろでしょう。

中国と東南アジアは利益率が高いですね。

日本よりも単価を高く設定して売っていることもあるでしょう。

いよいよ1000店舗を超える中国本土では、

店舗の純増数をキープしながら、スクラップ&ビルドに取り組むようです。

そして、中国市場でのシェア拡大のために、より大衆価格へ価格調整をする(こなれた値段にする)というカードも残っています。

日本においては、数字を見る限り、成熟期も後期に入っている感がありますが・・・

グローバル企業は、ある市場は成熟期に入っても、他の市場で成長すればいいわけで

特に人口の多い、人口が増えるアジア(インド含む)市場での成長に期待をしたいところです。 

アパレルビジネスにおいて、真逆のアプローチを採る2社を比較することで

SPA(アパレル製造小売業)というビジネスモデルを理解する入門書

「ユニクロ対ZARA」 文庫版

Kindleでお読み頂けます。
https://amzn.to/3Pdsaq3

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

関連エントリー 世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

| |

July 05, 2021

ユニクロの製造業へのチャレンジ~東雲イノベーションファクトリーの全貌が明らかに

20210705_075525ユニクロを展開するファーストリテイリングが先週の始めにメディア関係者に公開した、

「有明プロジェクト」のひとつ、東雲(しののめ)のイノベーションファクトリーに関する記事が
6月30日の日経MJと7月1日の繊研新聞のそれぞれ本紙と6月30日のWWDJAPANオンラインに掲載されていました。

WWDJAPANの記事が結構、詳細で現場の様子がよくわかります。

ユニクロが東京に自社工場 製造業進出で「すぐに作って売る」
(注:こちらは有料記事になります。)

このイノベーションファクトリーはもともと島精機(和歌山)が開発した無縫製ニット編み機=ホールガーメント機を活用して、
地産地消のニット製品の生産販売を行うべく島精機とファーストリテイリング(以下FR社)が和歌山に合弁で設立した製造子会社で

FR社が主導権を取って本腰入れるために、
出資比率を当初のFR:島精機 49%:51%から 51%:49%として、
3カ月前に和歌山から、お膝元の東京有明近くの東雲(しののめ)に移転したものです。

場所は有明本部から10分ほどの3階建て4700㎡(1424坪)の印刷工場跡地
そこに40台のホールガーメント機を置き、65人の従業員がいるそうで
1日1000枚(単純計算1台あたり25枚)の生産が可能だそうです。
将来的には100台にまで持って行く計画もあるそうです。

それぞれの記事を読んだところ

これまで、工場を持たずに協力工場に生産委託するスタイル(ファブレス)を強みとしていた
ユニクロが、初の自前工場で製造業へ進出、というのは少々大げさな話で・・・

実際のところは、本社の身近なところに、

量産工場と連動したサンプル工場あるいはテスト生産工場が出来たと見るべきだろうと思いました。
(FR社は「3Dニット生産の世界のマザー工場」と言っています)

まず、FR社の有明本部の5階にホールガーメント機4台を置いたサンプル作成用のアトリエがあるそうで、
そちらで試作用にプログラミングしたデータを東雲工場に転送し、
実際に販売できる商品化を行いながら、量産に対応できるように調整しているようです。

WWDJAPANや繊研新聞の記事に寄れば、

東雲で、行っているのは、

・糸の巻替え(糸の中にあるゴミなどのまぎれ込みを取り除くための行為)
・編み立て
・糸切れ直し
・稼働点検
・製品補修
・洗濯と乾燥
・アイロンがけ
・タグ付け

要は、糸から製品の形になる、編み立て自体(パーツを組み立てるリンキング工程は不要)は
ホールガーメント機が24時間自動で行ってくれますが、

準備工程である

●編み立てのプログラミング(ここが時間がかかるといわれています)
●ホールガーメント機にかけるまでの糸の品質確認とセッティング や

編み立中の

●稼働中の点検、
●糸の切り替え、

編み立て後の

●製品補修、
●洗濯、乾燥、
●アイロンがけ、
●タグ付け

などは、やはり、人がやらないといけないようなので・・・

東京の人件費を考えた場合、

ユニクロ価格のニットのプライスレンジの上限で販売したとしても、
試験販売用の商品原価では儲けはあまり出ないのではないかと思われます。

ここからは、記事を読んだ上での、筆者の解釈ですが、

この東雲イノベーションファクトリーの目的と役割は

まず、第一には

◆サンプルづくりから量産までの工程研究および時間短縮

ホールガーメント機の海外での大量生産前に
海外量産工場で起こりうるトラブル解消や作業の効率化の研究を行い
生産のボトルネックや起こりうるトラブルを事前につぶしておくことで
生産のスピードを上げ、不良品率を下げることができるのではないか。

次に、

◆的中率を高めるための試験販売用の商品づくり

商品企画者のアイデアの元、東雲でつくった少量製品を
銀座のUNIQLO TOKYO 店などで試験販売し、
売れ行きを見て、海外での量産の発注数の参考にするそうです。

また、

◆追加生産入荷までの国内QR生産による繋ぎ商品供給

量産での販売が計画に対して上振れして、
海外に追加生産をして、海外からの商品供給が間に合わない時の
一時的な売場の穴うめ、繋ぎ用商品在庫の供給を担うことができるようです。

従来であれば、

量産をする海外工場に仕様書を元にサンプル作成をして送ってもらい、
チェック、修正を繰り返していた流れから・・・

企画担当者やデザイナーが有明本社の5階のアトリエ(4台)でつくり、
東雲工場で量産向けにテスト生産を行って確かめた上で

海外の量産工場にサンプル、プログラミングデータ、工程上の注意と共に提供すれば、
生産の効率化が期待できる。

この流れの主導権を持った革新が、同社が 

「従来3ヶ月かかっていた仕事を1か月に短縮したい」

という話の背景にあるはずです。

各社の報道を読みながら、思ったのは、

アパレル生産のサプライチェーンのボトルネックのひとつである
「サンプル確認」工程をユニクロがコントロールできるようになったこと。

そして、

あくまでもホールガーメント機を使ったニット製造に限りますが
製造中に起こりうる問題点の解決策を
東京から世界の量産工場に具体的に提示できるようになったこと

この2つには大きな意義があります。

ZARA(ザラ)が本社デザインルームに布帛アイテムのためのアトリエを持ち、
自らサンプル作成を行って工程上の問題点を認識し、
量産素材の裁断を手掛け、
どこでも縫えるような形にして、
縫製工場に縫製(アッセンブル)委託をすることで
サプライチェーンのボトルネックを解消しながら、スピード生産を実現していますが、

ユニクロが、そのあくまでもホールガーメントニット版に限りますが、
踏み出したということを意味します。

次に、的中率を上げ、無駄な在庫をつくらないように・・・

店頭で顧客の反応を確かめてから量産数量を決定することができる、
試験販売用のサンプル工場を持ったこと。

これは、今はどうされているか不明ですが、

レディースカジュアルSPAのハニーズが2000年代の全盛期に
福島にサンプル作成と店頭試験販売用のサンプル工場を持っていて、
一部の店頭で試験販売をした上で中国に量産発注をしていた話を思いだしました。

また、古くは、米リミテッドストア(現Lブランズ)が
バイヤーたちが世界中で買い付けたサンプル商品にリミテッドのネームを付け替えて、
都市部の3店舗で試験販売をした上で、顧客の反応を見て
アジアに量産発注し、出来上がった商品は空輸でアメリカに持ち込み、
全店展開して的中率を上げていたという話を思い出しました。

ユニクロが自ら量産を手掛けるわけではありませんが、

大量につくって、徹底的に売り切る、というビジネスモデルから・・・

的中率を上げ、サプライチェーンのボトルネックの解消のために
製造工程に大きく足を踏み入れたという点においては、

とても意義のある、大きな前進であると感じました。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】ユニクロはZARAを超え、世界一になれるのか?両者の過去から未来への、経営者の経営信念、ビジネスモデルとその変遷を理解すれば、見えて来ます。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

| |

March 08, 2021

ユニクロが4月からの税込総額表示の義務化にあたり、実質値下げ。ユニクロらしい価格戦略で更なる市場シェアの奪取を狙う。

Uniqlo-tokyo

ユニクロが4月からの税込み価格総額表示義務化にあたり、これまでの税抜き価格を税込み価格とする、実質値下げ(9%程度)をすることを発表しました。

3月4日の日経新聞朝刊にも全面広告が掲載されていました。

この4月は消費税が上がるわけではありませんが、総額表示義務化で、多くの小売業が価格戦略の姿勢を示す転機になるだろうと思っておりましたが、

関連エントリー‐コロナショック、消費税総額表示であらためて低価格が進むのか?今一度、価格政策について考えよう。

日本のアパレル最大手であるユニクロが、最も「ユニクロらしい価格戦略」を取って来たことに納得すると共に、プライスリーダーであるユニクロの市場シェアはますます高まるだろう、と確信しました。

ユニクロの躍進の歴史は、「ユニクロプライス」と言っても過言ではないプライスポイント(最多価格帯)=1900円(イチキュー)への集中の価格戦略をなくしては語れません。

その昔、多くのジーンズカジュアルチェーンのトップスのプライスが2900円中心、特価で1900円だったころ(2000年代前半まででしょうか)、


1900円のフリースを筆頭に、カジュアルウエアが市場最低価格と言える1900円で買える店という「価格ポジショニング」がユニクロの集客と知名度を高めたことは間違いありません。

イチキューと言えば、アパレル市場では、ある意味、ユニクロの代名詞となり・・・

その後、カジュアルウエア市場でイチキューが多く見られるようになり、ユニクロは低価格ベーシック衣料の品質と価格の常識を変えることになります。

1900円(イチキュー)も、度重なる増税を経て、現在では、1990円(イチキュッキュウ)になりましたが・・・

ユニクロと同様のキュッキュウプライスポイント戦略を取る姉妹ブランドのGU(ジーユー)も、そのブレイクスルーに990円ジーンズなくしては、今のポジショニングはなかったことでしょう。

 

価格表示が変わる時の、店頭価格を見た時の顧客心理は敏感で・・・
わかりやすい価格をつけたところが支持され、売上を落とさず、業績を維持したというのは、

過去数回の増税時に共通することではないでしょうか?

独走が続くユニクロがあらためてアピールするキュッキュウ価格。

日本市場におけるシェアはますます高まりそうですね。

 

その一方で、懸念されるのは、同社の利益の確保のチャレンジです。

売上高については、売上数量を10%伸ばせば、値下げ分の売上高は取り戻せますが・・・粗利高はそう簡単な話ではありません。

売上高から粗利高を引いた売上原価は仕入原価と値下げ額の合算になりますが・・・

もし、売上原価がそのままで、実質9%程度の値下げをしたら、ストレートに同額の粗利高を直撃するので、
仕入原価を下げたり、在庫コントロールをして、値下げ抑制をしなければ、それまでの粗利高は確保できません。

消費税を飲み込んだ実質値下げによる、売上高維持のハードルが、売上数量10%増程度が必要なのに対して、

粗利高に関しては、ユニクロの従来の原価(50%程度)のままだとすると、そのハードルは25%増相当まで上がります。

仕入原価は商社など中間業者を介さない、いわゆる直貿(原産国企業との直接決済)比率を増やして原資にする模様。

そして、それだけではなく、緻密な値下げコントロールが要求されそうです。

あるいは、粗利高はさほど伸ばせなくても、販売管理費を圧縮して営業利益を残すという手もあるでしょう。 

ファストリの20年8月期決算では、

確かに、直貿により仕入原価を抑え(値入を高め)、なおかつ値下げコントロールにより粗利を高め、更に販管費(特に人件費)のコントロールが上手く行ったようなので、同社としては、自信を深めているようです。

今後、実質値下げをするユニクロが、企業としてどう利益をコントロールするのかに注目しておきましょう。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARA。共に価格政策にプライスポイント戦略を取りますが、その違いは?両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になります。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

| |

November 09, 2020

ファーストリテイリング20年8月期決算に見る、国内ユニクロ事業の凄さ

Uq-tokyo-2WWDジャパンに月イチで連載させて頂いている、ファッション流通系上場企業の決算書から学びを得る「ファッション業界のミカタ」。 
本日発売の11月9日号には、先日発表された、ファーストリテイリングの20年8月期決算資料に目を通して感じたことをまとめています。

今回の決算は、国内ユニクロ事業の第4四半期(4Q=20年6月~8月)の凄さに尽きますね。

コロナショックによって、売上高前年比64%、同営業利益前年比25%と  落ち込んだ、国内ユニクロ事業の第3四半期(3Q=20年3月~5月)で、危機感を覚えた同社は、

続く第4Q(6月~8月)では、「執念」と言ってもよい、売上高前年比121%を計上し、営業利益については、前年比447%という驚異的な数字を叩き出しました。

この数字が意味するのは、

・分母の大きい3Q(春、初夏プロパーの3-5月)の国内ユニクロ事業の売上高のマイナスはカバーできなかったものの、同3Qで発生した営業利益の前年比マイナス分の約9割を4Qで取り返した。

・国内ユニクロ事業単体はコロナ禍においても、通期で売上前年比92.4%と減収も、営業利益は前比102.1%と増益。

・4Q内だけで見ると、海外ユニクロ事業とGU事業の4Qの営業利益前年比のマイナス分を国内ユニクロ事業の営業利益前年比増益分でカバーしている状態。

このように、同事業の3Qのマイナスを挽回したり、4Qに他事業が落とした営業利益をカバーするくらい、国内ユニクロ事業が頑張った、という話だけでも凄いのですが・・もうひとつ、同社にとっては、意味がある数字を計上しています。

それは、夏シーズンの収益性の改善です。

このブログでも何回か指摘させていただきましたが、日本の多くのアパレルと同様に、ユニクロも、単価が高めの秋冬で売上・利益を稼いで、春はまだしも、夏に儲からない(低利益率)という構造があります。

国内ユニクロ事業の例年の4Qの営業利益率は、2-3%と一桁台前半。19年8月期は3.3%、18年8月期に至ってはマイナス(赤字)と儲かりませんでした。

ちなみにZARAのインディテックスやH&Mは秋冬に比べ、春夏シーズンの営業利益率は安定しています。

これはある意味、日本のアパレル流通の体質的な問題で、とは言え、地球温暖化が進む日本、グローバル企業として、これから東南アジアに拡大するにあたっても、大きな課題のひとつになる、と見ていました。

ところが、20年8月期、国内ユニクロ事業の第4四半期(6-8月)は実に見事な12.3%と立派な営業利益率を上げています。

これは、売上の前年比20%増を、それだけ売るだけの在庫があって、それらを叩き売ったから成し遂げることができた数字ではなく・・・売上だけでなく、利益もしっかり確保した、ということを意味しています。

また、値下げを控えたため、在庫を残してるわけではなく、4Qに全社で行った仕入調整も含め、
現在では、FR全社で在庫水準は前年並みに落ち着ているようです。
(3Q時点では前年比20%増まで膨らんだ在庫が、4Q末には前年並みに着地)

営業利益改善の要因は、商社を介在させずに、直貿による値入(当初粗利)のアップと値下げコントロールによって粗利改善し、また、RFID、セルフレジなどIT投資で人件費が減るなど、販管費を削減した結果とのことです。

この20年8月期の国内ユニクロ事業4Qを切り出してみると、
いよいよ、「夏に弱かったユニクロ」からの脱却か? と期待ができますね。

そうすると、今後の、更なる拡大の課題のひとつをクリアする糸口がつかめたわけで・・・今後も同様の粗利&経費コントロールができれば、他のシーズンはもっと儲かる可能性も出てくるわけです。

その後、9月以降も 国内ユニクロ事業は

9月既存店売上前年比(EC含む) 110% 
10月既存店前年比(同上)   116.2%

と2か月計で既存店前年比113.8%と絶好調

今年の秋冬の気温の低さは、間違いなくユニクロにとっては、アドバンテージ。
今期も国内ユニクロ事業を中心に、いい決算になる可能性が高くなりました。

そうすると、次なる国内ユニクロ事業の課題は、

EC拡大の壁となる、ECは単価が低いと儲けづらいという出荷単価問題。

こちらについても、同社はいろいろ手を打っていらっしゃるようなので、
また、機会があれば意見を述べさせて頂きたいと思います。

関連エントリー‐世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

いつもお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本


 

| |

October 22, 2018

ファストリ2018年8月期決算は年商2兆円突破で増収大幅増益。事業別に四半期業績を考察してみると。

 先ごろユニクロを展開するファーストリテイリングの2018年8月期決算が発表され、年商は2兆1300億円と
いよいよ2兆円を超えましたね。
 
 営業利益率も11.1%と10%台を回復した好決算。

 ユニクロ事業では海外ユニクロ事業が国内ユニクロ事業の売上高を上回り、営業利益についても国内海外とも大幅増益。

 特に海外事業の利益改善が顕著で・・・
 前年比は国内の124%に対し、海外は156%で

 営業利益額は国内外でほぼ同水準となりました。

 日本一のアパレルチェーンであるユニクロは海外売上構成比が50%を超えるまさにグローバル小売業ですね。

 ちなみに、世界のブランド価値ランキングを毎年評価しているインターブランドの定義では海外売上比率が30%を超えるブランドをグローバルブランドと定義づけています。

 このユニクロ事業の大幅増益の要因を四半期ごとに見てみることで、

 ユニクロの利益体質を筆者なりに深掘り、考察してみました。

 過去のエントリー ファーストリテイリングの2018年8月期中間決算は増収増益。 世界一への課題は秋冬依存体質と春夏シーズンの収益性?

でも指摘しましたが・・・

 ユニクロは上半期(秋冬)で利益の7~8割を稼ぎ、下半期(春夏)の特に夏が在庫処分が多いようで儲からず、通年利益を薄めてしまう体質。

 この秋冬依存体質が改善されることが、春夏に利益を稼ぐグローバルツートップ、ZARAやH&Mに並ぶ収益性がつくためのカギになると筆者は見ています。

 以下、ユニクロ(ファストリ)の決算が始まる9月から1Q~4Qのそれぞれの四半期を秋・冬・春・夏と見立てて季節別の稼ぎ方を考察してみます。

 過去3年 2015年~2017年のユニクロの国内海外事業の四半期業績を見ていると

 1Q秋の売上が最も高く、秋→冬→春→夏と売上構成比が下がって行く傾向があります。

 以下 2015年~2017年 四半期ごとの売上構成比

           1Q  2Q  3Q  4Q   
ユニクロ(国内) 29% 28% 24% 19%
ユニクロ(海外) 29% 29% 23% 19%

 同期間の3年累計営業利益率に関しては、
 
 秋で利益を稼いで、冬は処分もあって利益率が下がり、

 春は利益率を一旦持ち直しますが・・・夏は薄利多売で在庫処分という体質が見て取れます。

           1Q  2Q  3Q  4Q 通期
ユニクロ(国内) 20.1% 12.1% 13.8% 3.5% 13.2%
ユニクロ(海外) 13.5% 8.6%  8.4% -2.1% 7.8%

 これに対して前期の2018年8月期は売上の傾向は同じながら

           1Q  2Q  3Q  4Q   
ユニクロ(国内) 30% 27% 24% 19%
ユニクロ(海外) 29% 28% 23% 20%

 同期の営業利益率は
 
           1Q  2Q  3Q  4Q  通年
ユニクロ(国内) 21.1% 14.6% 14.9% -0.7% 13.8%
ユニクロ(海外) 18.0% 13.7% 15.2% 3.5% 13.3%

と2Q冬と3Q春の利益率が良くなっているのがわかります。

 おそらく、

○昨年の寒波のおかげで冬の2Qの利益が値下げを抑制出来、粗利を高水準に保てたこと。

○4月に夏日が多かったことで春の3Qに夏が例年より早く立ち上がり、利益貢献したことが要因ではないかと思われます。

 一方、1Q~3Qでしっかり稼げたので 4Q夏は思い切って在庫を一掃をしたのでしょうね。

 4Q夏は国内は赤字、海外も前年比減益ながら、通期では増収大幅増益の着地というわけです。

 このように見ると冬の寒波と夏の前倒しによって幸運だった決算?とも言えないではないですが・・・

 同社によれば、

 各国の幹部が東京有明に集まって国際在庫コントロール(過不足調整)を始めた成果が出始めた年でもあるようです。

 果たしてユニクロの収益性回復は本物なのか?

 暖冬で寒波が来ず、夏の始まりが遅くなるのであればまた元の収益率になってしまうのか?

 気候についてですが・・・

 筆者は、ここ何年かの気温の変化をクライアント企業さんたちとの在庫最適化の取り組みの視点からご一緒に見ていると、これは地球温暖化の傾向のためでしょうか?

 夏が長くなり、冬も長くなる、一方、春と秋が年々短期化する傾向を強く感じています。

 この傾向は ファッショントレンドよりも、寒くなった、暑くなったの実需に大きく左右されるユニクロにとっては有利に働くという気もしないではありません。

 いずれにしても、ユニクロの前期の稼ぐ力は本物なのか?今後の動向に注目ですね。


 ところで、参考までに微増収も減益だったジーユー事業の四半期(シーズン)別体質も考察してみました。

 四半期売上構成比
           1Q 2Q 3Q 4Q   
2017年8月期  29% 20% 30% 21% 
2018年8月期  29% 21% 29% 21%

とトレンド発信型というだけのことはあり、ユニクロに比べると

春夏、秋冬ともシーズン立ち上がりの秋と春にしかけて売るべく、1Qと3Qに売上の比重をかけるものの・・・

 冬が弱いのがわかります。

 次に四半期ごとの営業利益率推移です。

          1Q  2Q  3Q  4Q  通年
2017年8月期  11.8% 1.5% 12.6% -3.1%  6.8%
2018年8月期  14.8% 0.2% 9.7%  -7.3%  5.5%

なるほど、 ジーユーは秋で稼いで冬は処分でトントン、

春は秋なみに稼いで夏は処分で赤字という体質なんですね。 

 前期2018年8月期の 秋はまずまずだったようですが、

 春がヒット商品不在?だったのでしょうか?

 大きくコケて、夏の処分も過激に行う必要があった、と見てもよいかと思います。

 追記ですが、10月29日の日経MJのジーユー関連の記事によれば、

 ジーユーは業績改善のために、今後ベーシック構成比を大幅に増やすとの方針を持っているようです。

 これは兄貴であるユニクロのように2Q冬を強化し、春でトレンドリスクを追いすぎないようにするための施策なのでしょうか?

 ジーユーのここ数年の伸び悩みは、そのひとつがユニクロの価格の見直し(プライスラインの下方修正)だと
思っていますが、

 ジーユーが自らベーシック化してゆけば・・・

 ユニクロと競合する路線に入って行き、差別化が難しくなるのではないかとの懸念も否めません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 ※業界の発展と流通イノベーションのために・・・ファッション流通企業の経営者の方や事業スタートアップ準備中の方の応援をしています。
 時代の節目にあたり、「経営お困りごとのヒアリングとビジョナリーコーチング」のキャンペーンを実施中です。 ブログ筆者の質問に答えて行くだけで・・・頭の中がスッキリ整理されるコーチング手法で事業のお困りごとを整理して今後の方向性を見出すためのお手伝いをさせていただきます。 詳しくは>>>こちらから
 
 【おススメ本】

 ユニクロとZARAはそれぞれの領域でのファッション専門店のベストプラクティス(お手本)
 2014年11月に発売になったベストセラーの2018年データアップデート文庫版です。

 「ユニクロ対ZARA」 文庫本


 

| |

April 16, 2018

ファーストリテイリングの2018年8月期中間決算は増収増益。 世界一への課題は秋冬依存体質と春夏シーズンの収益性?

 クリックして人気blogランキングへ

 4月12日にリリースされたファーストリテイリング(FR)の2018年8月期上期決算(2017年9月~2018年2月)は

 売上高   1兆1867億円 前年比16.6%増
 
 営業利益   1704億円    同   30.5%増

 営業利益率  14.4%(+1.6%)

の 二桁の増収増益。 

 この上期の好業績を受けて 通期見通しを

 売上高   2兆1100億円 前年比 +13.3%

 営業利益   2250億円   同 +27.5%

 営業利益率  10.7%(+1.2%)

 に 上方修正されました。

 また、同時に、2022年度にグループ年商3兆円の目標を掲げましたね。

 世界最大のアパレル専門店企業である、ZARA(ザラ)を展開するインディテックスグループ(ITX) は
 2018年1月期決算で3兆円を突破したので、

 FR社は 4年半遅れでITX社の背中を追うことになります。

 この上半期(秋冬)のユニクロ国内事業、海外事業の合計の

 ユニクログローバル事業の売上高、営業利益は過去最高。

 売上高に関しては海外事業がいよいよ国内事業を抜きましたね。

ユニクロ(国内)
 売上高    4936億円
 営業利益    887億円
 営業利益率 18.0%

ユニクロ(海外)
 売上高    5074億円 
 営業利益    807億円
 営業利益率   15.9%

ユニクロ計
 売上高    10、010億円
 営業利益   1694億円
 営業利益率   16.9%

 ユニクロ事業の営業利益がここまで良かったのは海外事業の躍進、利益改善が大きいですが・・・

 筆者はこの秋冬の世界的な寒波にだいぶ助けられたところもあるかとも思っています。


 さて、上半期(秋冬シーズン)は良かったユニクロ(FR社)ですが・・・

 FR社の場合、これからの春夏シーズンが弱く、利益率が低いのが長年の課題です。

 四半期で業績を見ている投資家さんたちはよくご存じだと思いますが・・・

 FR社は上半期(秋冬)で稼いだ利益、その収益性を下半期(春夏)で薄めてしまうという体質を持っています。

 いい機会だったので、四半期(≒季節)ごとのユニクロとZARA(ザラ)とH&Mの

 売上と収益性を比較してみましたのでご紹介させていただきますね。

 以下は
 
 ユニクロ国内事業、海外事業、ZARA(ITX)、H&Mの四半期ごとの

 売上構成比と営業利益率の過去3年平均を並べたものです。

 平均と言っても3年時系列で数字を見たところ、実態を表していると言っても間違いありませんので
 こちらに基づいて話しを進めてみます。

 お断りですが、
 
 決算期はユニクロは8月期
 ZARAは1月期
 H&Mは11月期と違うので

 各社の四半期を春夏秋冬のそれぞれのシーズンに当てはめて

 ユニクロの決算期がはじまる秋を先頭にして比較できるように並べてみました。

 (注:ユニクロが今回発表した2018年8月期上期は含まず2017年8月期までのデータです)

UQとH&Mの四半期 9-11月 12-2月 3-5月 6-8月
ZARAの四半期 8-10月 11-1月 2-4月 5-7月
【売上構成比】 年間
ユニクロ(国内) 29% 28% 24% 19% 100%
ユニクロ(海外) 29% 29% 23% 19% 100%
ITX 25% 30% 21% 24% 100%
H&M 26% 23% 25% 26% 100%
【営業利益率】 年間
ユニクロ(国内) 20.1% 12.1% 13.8% 3.5% 13.2%
ユニクロ(海外) 13.5% 8.6% 8.4% ‐2.1% 7.8%
ZARA(ITX) 20.3% 17.7% 14.9% 15.8% 17.3%
H&M 12.7% 8.4% 15.9% 12.4% 12.5%

 特に ユニクロとZARAの違いに注目して頂きたいですが、

 共に春夏に比べて秋冬の売上構成比が高いのは同じです。

 ユニクロ(国内、海外とも) 58%:42%
 ZARA             55%:45%

 これは両者とも秋冬と春夏の単価の差が大きいからであると考えます。

 次に季節別売上構成比とそれぞれの営業利益率を見てみると

 ユニクロの売上構成比は 

 秋の構成比が最も高く、冬から春、夏にかけて売上高が下がる特徴があります。

 また、営業利益に関しては

 ユニクロは秋(1Q)次に冬(2Q)でガッツリ儲け

 春夏はシーズンを追うごとに収益性が下がって行きます。

 特に立ち上がりの秋と冬の利益率の差

     同様に   春と夏の利益率の差

 が大きいですね。

 これらの数字からそれぞれのシーズン立ち上がりに仕込んだ商品を価格を下げながら・・・

 「売り減らし販売」をしていることがわかります。

 一方のZARA(ITX)は

 売上構成比に関しては

 秋よりも冬に売上が上がり

 春よりも夏に売上が上がる

 傾向があります。

 またユニクロと比べて

 営業利益率に関しては

 秋冬の立ち上がりの秋の利益率に比べ

 冬はセール期(1月)を含むはずなのに利益率がそれほど落ちない

 春夏の立ち上がりの春の利益率に比べ

 夏はセール期(7月)を含む割に、逆に利益率が上がっている

ことがわかります。

 つまり、シーズン立ち上がりに用意した商品に対し

 シーズン中に反省を行って、改良することによって

 店頭商品の内容が尻上がりに良くなっている=お客様に支持され利益を稼げる

 品揃えになっていると言えそうです。


 これはまさしく拙著「ユニクロ対ZARA」の中でも明らかにした

 両社の

 「つくったものを売り切る」のか

 「売れるものをつくる」のか

 の体質を数字が如実に表していますよね。


 ユニクロが世界一を目指すのであれば・・・

 規模だけでなく、

 秋冬だけに頼る、春夏に儲けられない体質から抜け出す

 ことが大きな鍵になることでしょう。

 これは今後、東南アジアで、更には南半球での拡大も視野にいれたユニクロには・・・

 避けて通れない課題でしょうね。


 ちなみにH&Mは

 秋冬よりも春夏が強い傾向があります。

 秋(同社にとっては4Q)で決算期末の追い込みを行い

 そのの反動か? 冬(翌第1四半期)は売上利益ともに下がる構図を持っていますから、

 残暑や暖冬になると弱く、寒波のご利益も少ないかも知れません。

 タイムリーに暑い夏が来て、夏物が売れ、

 残暑がなく、運よく秋が到来すれば、強いのでしょうが・・・

 それらが崩れると弱い体質?なのではないでしょうか?


 グローバルトップ3と言っても、

 それらの体質の違いから・・・

 シーズンごとの勝負のしかたが違う、稼ぎ方が違うことはとても興味深いですね。

 グローバルトップの競合は単なる規模の拡大だけでなく

 地政学や気温帯をも考慮した・・・

 各地での顧客購買心理とそれに対する柔軟な対応こそが

 勝負の分かれ目になる、ハイレベルな競争の様相を呈しています。

 関連エントリー‐世界アパレル専門店売上ランキング2016 トップ10

 関連エントリー‐ZARAのインディテックスグループ、サステイナブル経営からインフラ投資への好循環

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
 ※業界の発展と流通イノベーションのために・・・ファッション流通企業の経営者の方や事業スタートアップ準備中の方の応援をしています。
 時代の節目にあたり、「経営お困りごとのヒアリングとビジョナリーコーチング」のキャンペーンを実施中です。 ブログ筆者の質問に答えて行くだけで・・・頭の中がスッキリ整理されるコーチング手法で事業のお困りごとを整理して今後の方向性を見出すためのお手伝いをさせていただきます。 詳しくは>>>こちらから

 【関連書籍】
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  
 
いつもお読み頂きありがとうございます。
こちらのアイコンをクリックして応援よろしくお願いします!

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
blogrankings2  ビジネス・業界ブログランキング 【第20位】↓down(18.4.16現在)


 

| |

August 14, 2017

ユニクロ中国大量出店の課題

 クリックして人気blogランキングへ

 8月13日の日経新聞の一面によれば、ユニクロが好調な中国市場で出店を加速し、

 現在 約540店舗、年100店舗のペースで出店しているところを、今後、1.5倍の年150店舗ペースとし、2020年には日本の約840店舗を上回る1000店舗体制にするとのことです。

 ユニクロ、中国店舗数が日本超す 20年にも1000店に 店長候補を短期育成

 2020年グループ年商3兆円達成に向けて(2017年8月期は1.85兆円の見通し)、

 国内ユニクロ事業が伸び悩む中、FR社の中で最も期待できる成長エンジンは海外ユニクロ事業、特に営業利益率を国内ユニクロ並みの二桁をたたき出せるようになった中国事業です。

 記事によれば、中国において

 1. 地方都市への出店加速と 
 2. 店長の高速育成 

 後者は具体的には 大卒採用者の条件を学生時代のユニクロでのアルバイト経験による入社前からの業務習得を必須にすることによって入社間もない社員をこれまでよりも速いペースで店長に抜擢することで、年100人以上の店長づくりができる制度をとし、今後の大量出店に臨むようです。

 拙著、「ユニクロ対ZARA」の後半部分でも指摘しましたが・・・

 ユニクロの海外、特に中国市場の深耕にあたっては2つの課題があると思っています。

 1つめは店舗網を都心部から地方へ広げるにあたっての課題です。

 日本国内では地方展開から都心部に攻め込む形で拡大・成功したユニクロは・・・

 地方出店時のローコストオペレーションが徹底する中で、都心に攻め込む過程で販売効率を高め、利益(額)を増やす形でご利益を得たと言ってもよいと思います。

 「しまむら」しかり、「ニトリ」しかり、地方出身のナショナルチェーンが地方でさほど売れなくてもしっかり利益を残せる体質をもってして、都心部で売れる立地に出店して成功する事例はいくつもありますね。

 ところが、ユニクロの海外の場合、中国もそうですが、都心部から地方に拡大するという、逆に販売効率が下がる方向での拡大を模索するという、日本国内での成功とは逆のパターンを行わなければならないという課題があります。 

 ローコストで始まり、その後、高い販売効率や利益額を得るときには「都心はこんなに売れるのか、儲かるのか」とうまみを享受できると思いますが・・・

 ハイコストで始まった企業体質を、拡大とともに、全体的に下がって行く販売効率にどうコストコントロールを行って対応するのか、損益構造見直し、ある意味、体質改善は結構チャレンジングなことだと思います。

 2つめは出店に店長の育成が追いつくかの課題です。

 出店ペースに店長育成が追い付かず、前者の要因と相まって崩壊したチェーンは数知れず・・・

 これに対して、これまでの国内ユニクロ事業が見事だったのは、

 店舗数を劇的に増やさず、1店舗あたりスクラップ&ビルドで大型化させ・・・売場面積は広げながらも、店長数を激増させずに・・・出店と店長育成のペースを合わせて成長の壁を上手に乗り越えて来た歴史があります。 

 中国では逆に相当のスピードで大量出店をしようとしているわけですよね。

 正直、過去のチェーンストアの失敗の法則から考えると危うさも感じますが・・・

 これまでも多くの常識を覆して成長を続けて来た同社が・・・

 これからの海外での成長局面をどう乗り越えて行くのか?引き続き注目をしていたいと思います。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 ユニクロは大国深掘り出店、ZARAはグローバル分散出店。同じSPAでも出店に限らず、真逆の戦略がいろいろあって面白い。両社を比べれば世界のファッション市場が見えてくる。
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

いつもお読み頂きありがとうございます。
こちらのアイコンをクリックして応援よろしくお願いします!

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
blogrankings2  ビジネス・業界ブログランキング 【第21位】↓down(17.8.14現在)


 

| |

July 24, 2017

TOKYO BASEが都心で働く女性に向けた服の新業態「シティ」をSPA方式で本格展開

 クリックして人気blogランキングへ

 7月19日の繊研新聞に「ステュディオス」「ユナイテッドトウキョウ」を展開し、絶好調が続く新興東証一部上場企業TOKYO BASE(トウキョウベース)が、この春に「ステュディオス」の派生業態として大人の女性のための服として立ち上げていたセレクトショップ「ステュディオス・シティ」を「シティ」というブランドでSPA業態に転換するという記事が掲載されており、大変興味深く読ませていただきました。

 記事によれば、「シティ」のコンセプトは

・(都心で)働く女性向けの上質な服を

・海外ラグジュアリーブランドと同水準の生地を用い

・旬のモードトレンドを盛り込んで

・原価率50%のものづくりを行う

・素材は小売価格の20%を基準にする

 というものです。

 私も常日頃から

 都心で働く女性のための上質でコストパフォーマンスのよい服は
 
 ほとんどのアパレル企業がまだまだ攻めきれていない。 日本のみならず、

 新興国において女性の社会進出が進むにつれて、グローバルレベルでも通用するカテゴリーのひとつだと思っていました。

 要はマーケット的に百貨店キャリアブランドとZARAの間に位置づくと思いますが、

 百貨店で販売されているキャリア服(原価率20-25%)は・・・モノは良くても高くて買いづらい。

 これに対する価格とクオリティのバランスのアンチテーゼであり、また

 国内100店舗になってすでに大人の女性のワードローブの選択肢のひとつとして認知度が確立されたZARAに関しても・・・

 価格はこなれているけれども、もう少しきちっとしたい、物足りない、

 と考える働く女性のための服は

 飽和状態になったアパレルマーケットにおいて残された・・・

 数少ない?あるいは最後の巨大マーケットのひとつではないかと。

 そこに若くて、今、業界で最も勢いのある同社が取り組むのは大変興味深いなと思いました。


 ところで、1975年にアマンシオ・オルテガさんがZARAを立ち上げた時のコンセプトは・・・

 当時女性の社会進出が急速に進むスペインにおいて・・・

 オフィスで働く女性をいかにこなれた価格でおしゃれになってもらうか?でした。

 そこで独自のSPA手法を用いて百貨店クオリティのリーズナブルプライスを追求したのがZARAの始まりです。

 ZARAの創業当時の思いはグローバル展開する今でも全く変わっていません。

 そして、そんな働く女性に対する愛があるからこそZARAは世界で支持をされ続けている訳です。

 お客様に対する想いを、自らの流通革新の信念で実現する。

 TOKYO BASEの谷社長もそんな信念をお持ちであることを想像しながら、

 これからのチャレンジにも注目して行きたいと思います。

 ちょっと前の記事ですが・・・

 関連エントリー-絶好調TOKYO BASEの決算発表資料を読んで

 関連エントリー-次世代セレクトショップ、STUDIOUS(ステュディオス)の勢いが止まらない

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 【おススメ本】

 世界中の女性をおしゃれにしたい。そんな思いでスペインの西の端の街で創業したオルテガさんは信念を貫き、ZARA(インディテックス)を世界一にした。

 本書を通じて、ZARAのビジネスモデルだけでなく、オルテガさんのファッションビジネスに対する想いを感じ取って頂きたいです。

 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

いつもお読み頂きありがとうございます。
こちらのアイコンをクリックして応援よろしくお願いします!

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
blogrankings2  ビジネス・業界ブログランキング 【第20位】↓down(17.7.24現在)


 

| |

January 07, 2016

ユニクロは中国の売上高が母国日本のそれを上回るという快挙を実現できるだろうか?

 クリックして人気blogランキングへ

 あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。 

 日経新聞に連載されている「アジアひと未来」楽しく読ませて頂いています。

 1月7日の「国境越え輝く異才の見出し」の記事に登場した3人のうちのひとりはユニクロを中国で拡大する立役者であるファーストリテイリングの潘寧氏。

 同氏の記事はこれまでに目に付く度に必ず読んでいましたが、今回の記事は同氏の学生時代からの原体験や店舗時代の苦労、中国人として日本から学んだこと、中国の消費の常識を変えたいという将来の夢について、ジャパニーズドリームを掴んだ同氏の生き様と信念についてわかりやすく書かれた記事で、とても納得しながら読ませていただきした。

 このような出来上がったものに乗るサラリーマン的ではない、創業に近い体験や苦労、限界のない未来へのヴィジョン、信念を持った方が中国、アジアを統括されているのであれば柳井会長もしばらく信頼して任せることができるでしょうね。

 世界を見渡しても、地元に密着するところからビジネスをスタートし、その後ドメスティックに特化して成長するか?海外展開に求めるか?の成長戦略を考えるのが小売りチェーンのビジネススタンス。

 海外展開の選択肢を選んだ小売業でも ホームマーケット(ある企業がその国を基盤に大きくなったという場所)の売上を他国が一国で上回るという快挙を成し遂げた企業は・・・私が知りうる限りこれまでありません。

 市場規模は大きくても 実は「ガラパゴス」なアメリカのチェーンストアは問題外ですし、

 グローバルチェーンと言われるZARAのインディテックスもスペインの売上構成比は約20%、H&Mも実質ホームマーケットであるドイツが約20%、グローバルに展開して、海外売上比率が高く、ホームマーケットの構成比は少しずつ下がることはあっても・・・彼らの中国やアメリカの売上がそれらホームマーケットの売上を抜くというのは現実的に難しいと思います。

 しかし、ユニクロの場合は中国の売上がホームマーケットである日本の売上を抜くということに関して、かなり高い確率で可能ではないかと思えます。

 なんせ世界最大の人口を擁し、アパレル市場もアメリカに次いで日本よりはるかに大きい単独2位の規模である中国で、すでにユニクロは売上規模でNO1のアパレルチェーンになっていますし、潘氏のような第二創業者的な発想のできる人材がいらっしゃれば更に現実味を帯びてくるというわけです。

 ただ、中国が最大マーケットになって企業としてそちらをメインにビジネスを考えてしまったとしたら・・・

 現在利益の7割を支える日本の消費者がその時の商品にどんな反応を示すか?という懸念は残されますが・・・あるいはその時ユニクロは中国企業になっているかも知れませんね。

 昨年12月にユニクロの海外店舗数がいよいよ国内店舗数を上回りました。 

 規模の逆転は売上高ベースではまだ少し先ですし、利益も更にその先だと思いますが・・・

 海外である中国一国の売上が母国日本のそれを上回るという世界的な快挙を・・・

 柳井会長がご健在の間に実現できるのかどうか?そんな視点からもユニクロの動向を見守りたいと思います。

 【おススメ本】

 低価格アパレルの品質の常識を変えて日本一になったユニクロとトレンドファッションの価格の常識を変えて世界一になったスペインインディテックスグループのZARA。

 世界のファッション流通マーケット、ビジネスモデルもこの2ブランドを比較すれば よりわかりやすくなる!
 
 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

  

いつもお読み頂きありがとうございます。
こちらのアイコンをクリックして応援よろしくお願いします!

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
blogrankings2  ビジネス・業界ブログランキング 【第1位 down (16.1.7現在)


 

| |

February 13, 2015

日本に学び、その良さを生かして世界に羽ばたいた国際企業

 クリックして人気blogランキングへ

 2月12日の日経新聞一面コラム春秋に、おそらく先ごろ深川で日本一号店をオープンしたブルーボトルコーヒーとおぼしき外資コーヒー店に関するコメントが掲載されていました。

 コラムによれば、コーヒー豆を厳選して、一杯ずつ時間をかけて丁寧に入れる同店の発想について

 「創業した米国人は店づくりのヒントを日本の喫茶店から学んだ」

 とのことです。

 日本から消えつつある喫茶店文化が海の向こうで、しかも時間が貴重品であるはずのITベンチャー企業を育てて来たシリコンバレーの投資家たちに支援され人気を博し、更に海外進出(文化の逆輸入?)も果たしたことに触れ、

「日本の喫茶店にも、自分たちが培ったコーヒー文化を押し立て、世界に羽ばたく道があったのかもしれない。」

 という一文に、先日ブログで書いた

 日本からもZARA(ザラ)のように母国と近隣国でつくり世界に売るグローバルSPAが生まれないだろうか?

という記事で書いたことにも通じる何かを感じました。

 ご存じのように、ナイキもオニツカタイガーを、アップルだってソニーをリスペクトして世界に羽ばたいたブランドなのは有名な話です。

 実は、既出のブログでご紹介したZARAの創業者オルテガさんだって、日本に学び、その良さに磨きをかけて世界一になった企業のひとつなのです。

 お金がない創業時、生地屋さんに掛けで売ってもらった原反(生地)を自らが運転するトラックで縫製工場に運び、完成品を店舗に届け、店頭で商品が売れて回収したキャッシュを持って生地屋に支払いに行って、また新しい生地を仕入れるという人海戦術、一人SPA時代がありました。

 自分がつくるファッションを世界中の女性に届け、おしゃれになってもらいたい、という思いから・・・

 この人海戦術スピードオペレーションをもっとシステマチックに世界に届けるにはどうしたらよいのか?と考え、

 IBMのコンピューターに精通した当時地元の大学教授だった方をブレーンとしてNO.2に据え(のちのZARAのインフラの基礎を築き、オルテガ氏と二人三脚で世界一に登り詰めたホセ・マリア・カステリャーノ氏)、

 また、ZARAがまだスペイン、ポルトガルで百店舗になるかならないかという80年ごろに日本のトヨタのジャストインタイム(JIT)システムを高く評価し、JITのコンサルを入れて工場の製造効率に取り組んだという話があります。

 つまり日本のトヨタ自動車の製造ノウハウを世界のファッション流通業界の中で最も評価、理解し、それを活かして世界一になったのがZARAであって、日本のファッション好きな女性たちの多くも回りまわって、その恩恵を受けているという話です。

 日本の技術や文化をリスペクトし、海外で自己流に取り入れて成功して、その恩恵をまた新鮮な形で日本人が享受しているという話は他にもあるのではないか?と思います。

 クールジャパンの世界への売り込みにはいろいろなアプローチがあるかと思いますが・・・

 そんな海外の賢者が脱帽した日本のいいところという視点で日本の技術や文化を再評価して再生したり、むしろ次世代が継承したくなるような新しい切り口にして生まれ変わることを支援したりするものも面白いかも知れないと思った次第です。

 【業界を学ぶ書籍のご紹介】

 「ユニクロ対ZARA(ザラ)」単行本 ソフトカバー(日本経済新聞出版社)

 おかげさまで5刷、今年は中国、台湾、韓国で訳本が出版されます。

 ベーシックカジュアルの価格と品質の常識を変え日本一のアパレルチェーンとなり、世界一を目指して突き進むユニクロとトレンドファッションの価格の常識を変え、世界一となったスペイン インディテックスグループの基幹ブランドZARA (ザラ)。

 既存のファッション流通の常識に挑んだ2つのブランドの真逆のアプローチ、ビジネスモデル、2人の起業家が考える顧客満足、経営信念、人材育成、今後の成長の可能性まで・・・

 10数年両ブランドをウォッチし続けた専門家の立場から両者の成長の舞台裏をわかりやすく解説しました。

 

 「人気店はバーゲンセールに頼らない」 中央公論新社

  

 電子書籍 Kindle版もあります。

 いつもお読み頂きありがとうございます。
こちらのアイコンをクリックして応援よろしくお願いします!

↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
blogrankings2  ビジネス・業界ブログランキング 【第1
位】→stay (15.2.13現在)


 

| |

より以前の記事一覧