September 19, 2023

【このセミナーは終了しました】「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナーby WWDJAPAN

Wwd929コロナ禍を経て
世界のファッション流通マーケットの強豪たちは
いったいどんな風に変わり、どこへ向かっているのか?

毎年このブログでもリリースしている
世界アパレル専門店企業売上高ランキングをベースに

各社の動向やこれから10年の勝ち残りのカギを探ります。

2022年版ランキング公開から半年が経過してますので、その後の動向も付け加えてご説明させて頂きます。

グローバル時代、世界の動向は少なからずローカルマーケットに影響を及ぼします。

世界の流れを読み、国内ビジネスにどう取り入れるか、そんな視点を得て頂ければ幸いです。

9月29日(金) 13:30~15:00 オンライン

WWDJAPAN主催 有料セミナー

「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー

講師:「ユニクロ対ZARA」著者 ディマンドワークス 齊藤孝浩

お申込みはこちらから 
https://wwdjapan-businessseminar20230929.peatix.com/

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)

 高収益企業の決算書を図解すると見えて来る、従来の業界の常識とは真逆のアプローチとは?

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July 10, 2023

中国産地で思い出される日銭商売である小売業の原点

20230523_1058195月にSHEIN(シーイン)の生産背景である中国広州のアパレル産地視察で考えさせられたことが
いまだに頭から離れないでおります。

シーズン単位で事前に見込み生産をすることが
あたりまえになってしまっているアパレル業界において

広州で盛んに行われている
5日間で100枚をつくって納める小ロット生産は

生産者は素材の用意さえがあれば、すぐに作ることができ

商品を納品されたEコマースの販売者はすぐに売り始めることができます。

従って、Eコマース事業者は
消費者からの現金回収も速くできるわけで

速く、回収できた現金を
サプライチェーンに回すことができれば

関係各社は資金繰りの心配も少なくなり

従業員にも、仕入先にも
早く支払うことができるようになるわけです。

SHEIN(シーイン)ら、IT業界から来た産直越境EC企業らは

最速で週ごとに納品商品の代金をサプライヤーに支払うことを知りました。

そんな誰もがわかる

サプライチェーンが潤う単純なロジックに対して

一方、近年、主流になっている大量生産はというと・・・

確かにロットを大きくすることで、原価は安くなるかも知れませんが・・・

素材の用意から

  ↓

製品をつくり始め

  ↓

完成品を売り始めて

  ↓

代金が回収できるまで

販売期間と比べて、
果てしない時間がかかるわけで

生産中はサプライチェーン各所に

原材料や仕掛在庫を含む
在庫=キャッシュを寝かせてしまうことになる

そんなことが 実際、生産現場各所で起こっているわけです。

そうすると、現金化に時間がかかるため

仕入先には支払い期日を先延ばししてみたり

資金が足りなくなる場合は銀行借り入れによって資金を繋いだりしているのが現実。

関係者みんなが頑張っても・・・

販売現場では過剰に抱えた在庫を値下げ販売する悪循環。

これって、いったい、何のために、
誰のために仕事をしてるんでしょうね。

以前、バングラデシュで生産する
商社の方に伺った話を思い出します。

バングラデシュの大手の工場主は売上高をたくさん得たいために

何十万枚、時には何百万枚の受注を要望すると言います。

ところが、そんな大ロットだと

素材の調達にも時間がかかり、納品するまで時間がかかるため

納品が完了するまで

従業員に給料が払えない
原料代金も払えない

という状況に陥りがちとのことでした。

コストは安くなるけど

サプライチェーン各所にキャッシュを寝かし

販売にあたっては値下げ在庫処分のリスクをはらむ大量生産

一方、

コストは多少高く、当初値入は少なくても

関係者がキャッシュで潤い値下げリスクも小さい、小ロット多頻度生産

はたして、一体どちらがいいのでしょうかね?

安く仕入れても
多くの売れ残り在庫を抱えた
現場をたくさん見て来ました。

一方、あぁ、もう少しつくればよかったね

と言いながら

次のコレクションを
前倒し販売していた時もありました。

双方を思い出せば

どちらが上手く行っていたかは明らかです。

これって
実際、冷静に原価計算をしてみれば
原価が安いことよりも
値下げが少ない方が儲かることがわかるはずなのに、

組織が大きくなればなるほど
仕入れ担当者のひとりの判断で出来ることではなく

会社のルールを変える必要があることなので
トップやリーダーの覚悟がいることだとしみじみ感じます。

かつて、アパレル専門店の経営者さんたちは
起業して間もないころ

1カ月分の在庫を仕入れて店頭に並べ、

売った代金で来月売る商品を仕入れに行く
そんなことを繰り返していたころがあったと思います。

そのころは、
在庫日数、30日!在庫回転率は10回転以上!

でまわっていたのではなかったでしょうか?

そんな経営者さんも、最近は見込み仕入や見込み生産が増え
在庫回転率が落ち、支払いをいかに先延ばしするかを考えている
なんて話もよく耳にします。

まさか中国の広州で、忘れかけていた

小売業の日銭稼ぎ商売の原点を思い出される
ことになるとは思いませんでした。

今一度、キャッシュフローを重視した小売ビジネスの原点を
思い直す時、と感じる今日この頃です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)
 第2章では、産地から、店舗を持たずに、世界の消費者に直接売り込む

SHEIN(シーイン)のビジネスモデルの優位性について取り上げました。

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June 12, 2023

SHEIN(シーイン)を支える生産背景、中国広州アパレル産地レポートがWWDJAPANに掲載されました。

Shein-hqWWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

6月12日発売の連載 第50話目に、ウルトラファストファッションSHEIN(シーイン)の本拠地である中国広東省広州のアパレルサプライチェーンの現地視察レポートをまとめさせて頂きました。(筆者が5月下旬に実際に視察したもの)

世界の工場である中国の、アパレル一大産地である広州は生地、付属品の現物在庫を抱える巨大な市場があり、製品を5日でつくる背景を支えています。

そんな産地で取材をした中で、最も印象的だったのは、

SHEIN(シーイン)のようなIT業界から来たゲームチェンジャーたちが中心になって、
速く納めてくれるサプライヤーには、すぐに払う、

一方、バイヤー側は速く払うために、速く売ってキャッシュに換える、
既存の業界とは対極にあるキャッシュフロー経営が進んでいました。

安く作るために、大量受注、大量生産をしてしまっては、リードタイムも長くなり
サプライチェーン上の各所に溜まる在庫にキャッシュを寝かすことになりますが、

小ロットなら、多少コストが高くでも、
むしろ、速く換金でき、

サプライチェーン全体のキャッシュフローが豊かになるというメリットを
あらためて産地で考えさせられた次第でした。

世界のメディアでは、SHEIN(シーイン)のネガティブな面が大きく報道されますが、

実際、産地に行ってみると、メディアでは報道されない、

日銭商売である小売業として、我々も見習うべき

目から鱗の「商売の原点」をたくさん耳にすることも出来ます。

SHEIN(シーイン)は、

他にも業界のどんな常識を覆すことで、急成長したのか?

今後もアンテナを立てて、リサーチを続けたいと思います。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトでもお読み頂けます。

シーインのウルトラファストサプライチェーンの秘密を中国・広州で探る

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

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May 22, 2023

世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

Lulu-santa-monica

世界的なパンデミックを経て、躍進し、最高益を更新する企業と苦戦が続く企業の明暗が分かれた2022年度。世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃いましたので、毎年恒例の売上高ランキングTOP10を共有させていただきますね。

今回、売上高の増減はコロナ前からの回復度合いを見るために、19年度比とさせていただいております。

 円建て比較にあたり、為替レートは2023年1月末の €=141.3円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=130.5円、英国£=161.3円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 19年比増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2023.1期) 4兆6,019億円 +15.1% 7,799億円 16.9% 5,815 ZARA
2位 H&M (瑞;2022.11期) 2兆8,033億円 -4.0% 898億円 3.2% 4,465 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2022.8期) 2兆3,011億円 -0.5% 2,973億円 12.9% 3,562 UNIQLO
4位 GAP (米;2023.1期) 2兆0,374億円 -4.7% -90億円 -0.4% 3,352 OLD NAVY
5位 プライマーク (愛;2022.9期) 1兆2,412億円 -1.2% 1,219億円 9.8% 408 Primark
6位 ルルレモン (加;2023.1期) 1兆0,581億円 +103.8% 1,732億円 16.4% 655 Lulu Lemon
7位 NEXT (英;2023.1期) 8,731億円 +24.2% 1,519億円 17.4% 466 NEXT
8位 ヴィクトリアズシークレット (米;2023.1期) 8,277億円 -15.5% 738億円 8.9% 837 Victoria’s Secret
9位 アメリカンイーグル (米;2023.1期) 6,510億円 +15.5% 322億円 4.9% 1,175 AEO、Aerie
10位 しまむら (米;2023.2期) 6,161億円 +18.0% 533億円 8.7% 2,213 しまむら

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアはブランド企業の余剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンのC&Aおよび、中国産地からの越境ECのみでアメリカ、中東など世界中に売り込み、急速に拡大を続けるファストファッション企業、SHEIN(シーイン)あたりもTOP10の2-3位前後にランクインする規模と思われますが、それぞれ、正確な売上高がつかめなかったため、除外しております。 

【解説】

13年連続 トップを走る、ZARAのインディテックスは売上、利益とも過去最高益を更新。ロシア500店舗以上を閉店、中国苦戦するも、欧州とアメリカの躍進での達成。店舗とオンラインの融合は完成し、スクラップアンドビルドは完了に近づき、過去最大の設備投資をして、次のステージに進みます。

第2位のH&Mはパンデミックからの回復で増収も減益。原価高騰を価格に転嫁しなかったこと、ロシア休業の処理、また、構造改革に費用をかけたことが要因です。アメリカの伸びは大きく、ドイツを抜いて、売上シェア最大国になりました。

第3位のファーストリテイリングは日本が回復、中国がロックダウンで苦戦するも、欧米が黒字化、増収増益で中国のマイナス分をカバー。これで中国が復活すれば、更なる躍進は楽しみです。

第4位のGAPは減収減益、営業赤字。同期中にCEOが交代するほどの混乱ぶり。店舗のスクラップアンドビルド、欧州、メキシコ、中国事業をパートナー企業に移管など、リストラが進んでいます。原価高騰による粗利率低下、Yeezyコレクションの53百万ドルの処分も営業赤字を拡大した要因です。

第5位のプライマークは各国でコロナから回復中、オンラインでは、店舗在庫確認に加え、クリックアンドコレクトの対応の実験を始めました。コロナ禍にインナーウエアや子供服が伸び、今後も期待ができそうです。ドイツの再構築、アメリカの拡大が今後の成長のカギ。

6位以下の一番のトピックは なんと言っても、第6位のルルレモンです。

店舗、EC合計で、昨年比3割増収で1兆円規模に到達。一方、微減益。これは原価高騰で粗利率が2%低下したのと、ミラーののれんの減損が大きく響いています。但し、ミラーを活用した、ルルレモンスタジオで有料サブスクを開始するのに注目です。26年までに売上を1兆6000億円規模と2021年の倍にするプランPower of Three x2 growth planをを進行中。

そして、第7位のNEXTは二桁増収、一桁増益。店舗好調で、ECは落ち着きましたが、ランキング内でトップクラスのEC化率と収益率。原価高騰を価格転嫁とプロパー消化向上でカバーするも、テクノロジーと物流に投資をすることで、利益率は若干低下した模様です。プラットフォームビジネス(内製化インフラを外販)の開示が始まりました。現状、全売上高の2.6%になりました。

そして、第10位の日本のしまむら。ファッションセンターしまむらの高収益にバースデイ、アベイルが利益貢献して、過去最高益を2年連続で更新。バースデイ業態としまむらでは、婦人服以外の伸びが今後は成長のカギとなります。

業績の明暗は、オンラインと店舗を行き来するニューノーマルへの完成度と需要にあわせたサプライチェーンマネジメント力の差です。

原価を安くするために、人件費の安い国に生産地を移転し、ファッションビジネスにとって致命的とも言える、リードタイムを販売期間よりも長くしてしまったところは今後も苦戦が強いられることでしょう。

昨年のランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上ランキング2021 トップ10

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】2023年9月29日(金)13:30~15:00

WWDJAPAN主催 「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー 今回の記事の内容をライブで深堀り解説します。

お申込みはこちらから https://wwdjapan-businessseminar20230929.peatix.com/
 

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April 10, 2023

過去最高益、独走ZARAのインディテックスはコロナ前後でどう変わったのか?

Wwd-vol48-inditexWWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

4月10 日発売の連載第48話目は、23年1月期大幅増収増益で年商4兆6000億円規模になり、過去最高売上&利益を更新したZARAのインディテックスグループの最新決算を取り上げました。テーマはコロナ前後で同社はどう変わったのか?です。

500店舗以上の店舗を閉め、ロシアから撤退した同社は、それにもかかわらず、その他の地域、特にアメリカの伸びしろに支えられ、17%の増収、29%の営業増益。

スクラップアンドビルドによる店舗の大型化と面積あたりの売上高を増やし、過去からの脱皮は完了しつつあります。

今回の決算発表でよく使われていた言葉は 

"to the next level" 。

過去最高の設備投資も敢行しています。次のステージにはどんな手を打って来るのか?引き続き、先行く世界トップの動向からは目が離せませんね。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトでもお読み頂けます。

ファッション業界のミカタ Vol48~過去最高益、独走ZARAのインディテックスはコロナ前後でどう変わったのか?

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考】ショッピングのデジタルシフトの真っただ中、その先にあるのはどんな未来なのか?10年後のファッション流通の未来を考察しました。

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May 16, 2022

世界アパレル専門店売上高ランキング2021トップ10 

Zara-london_20220516125801世界がパンデミックからの回復が進む2021年度。世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃いましたので、毎年恒例になりました売上高ランキングTOP10を共有させていただきますね。

今回、売上高の増減はコロナ前からの回復度合いを見るために、19年度比とさせていただいております。

 円建て比較にあたり、為替レートは2022年1月末の €=128.66円、スウェーデンクローナ=12.24円、US$=115.14円、英国£=154.72円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 19年比増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2022.1期) 3兆5,659億円 -2.0% 5,509億円 15.4% 6,477 ZARA
2位 H&M (瑞;2021.11期) 2兆4,341億円 -14.6% 1,867億円 7.7% 4,801 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2021.8期) 2兆1,329億円 -6.9% 2,490億円 11.7% 3,527 UNIQLO
4位 GAP (米;2022.1期) 1兆9,278億円 +1.9% 935億円 4.9% 3,399 OLD NAVY
5位 プライマーク (愛;2021.9期) 8,653億円 -28.2% 642億円 7.4% 398 Primark
6位 ビクトリアズシークレット (米;2022.1期) 7,831億円 -9.7% 1,003億円 12.8% 899 Victoria’s Secret
7位 NEXT (英;2022.1期) 7,522億円 11.5% 1,393億円 18.5% 477 NEXT
8位 ルルレモン (加;2022.1期) 7,221億円 57.2% 1,538億円 21.3% 574 Lulu Lemon
9位 しまむら (日;2022.2期) 5,836億円 11.8% 494億円 8.5% 2,204 しまむら
10位 アメリカンイーグル (米;2022.1期) 5,783億円 16.3% 682億円 11.8% 1,133 AEO

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアはブランド企業の余剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンのC&Aおよび、中国産地からの越境ECのみでアメリカ、中東など世界中に売り込み、急速に拡大を続けるファストファッション企業、SHEIN(シーイン)あたりもTOP10の5位前後にランクインする規模と思われますが、それぞれ、正確な売上高がつかめなかったため、除外しております。 

【解説】

まず、回復が最も著しいのはアメリカ勢ですね。政府から消費者に手厚い給付金が何回も支給されたアメリカの小売業は総じて活況とのこと。

ギャップ、バナリパはリストラ中もオールドネイビーが絶好調のGAP、
前年にLブランズ社から分社化されたヴィクトリアズ・シークレットのカムバック、
エアリの評価が高いアメリカンイーグルの業績回復、黒字化が顕著です。

欧州市場がメインマーケットのため、まだ回復途上ではありますが、ZARAを展開するインディテックスも、中国で不買運動が起きて大きく売上を落としたH&Mも、アメリカ市場の業績がそれ以上に好調で、その好景気の波に乗ったと言っても過言ではありません。

関連エントリーー分社化が完了し、ヘルス&ビューティー企業となったLブランズ(エル・ブランズ)

次に、外出自粛、営業制限で加速したEコマース対応について。
店舗の売上回復と共に、EC売上比率が下がった企業が多いですが、引き続き各社のEC売上そのものは伸び続けています。

特に各国のEC倉庫在庫と店舗のバックヤード在庫の一元化が完了したインディテックス(EC化率は前期32.4%→当期25.5%)、

EC注文の翌日店舗無料受取りを可能にしているネクスト(EC化率は65.3%→63.8%)の伸びは大きいです。

コロナ禍が加速させた、オンラインとオフラインを行き来してお買い物をする消費者購買行動へのシフトに対応することは小売業にとって待ったなしであることは間違いありません。

関連エントリーーZARA(ザラ)のインディテックスの2022年1月期(FY2021)決算。最高益間近の回復力の源泉はオムニチャネル施策と・・・

関連エントリーーロンドンで進化するクリック&コレクトと通販受け取り拠点の多様化

その一方で、トップ10企業の中でも最低価格帯のプライマーク(第5位)は、引き続き、一切、Eコマースを行っていません。

但し、オンラインサイトの掲載商品比率を全体の70%まで上げ、サイトで見た商品の近隣店舗の在庫を表示することで、店舗でのお買い物前にオンラインでスタイリングや商品の下調べを楽しめる環境は整えています。

しまむらも引き続き売上は全社売上比1%にも満たない状況です。しかも、EC売上の9割は店舗で、送料無料で受け取られているという現実。

2社の動向から読み取れるのは、低価格品を扱う企業にとっては、送料のかかる宅配ECは適しづらいということでしょう。

このように、EC購買が進む時代においては、在庫と物流がカギを握ることになりますね。

この点に早くから投資をし続けているのは、ネクスト。

同社は自社商品以外のブランドも自社ECで販売したり、自社物流網に乗せて配送したりしています。更に、自社が構築したインフラを活用し、顧客向け宅配物流(フルフィルメント)や他社のECサイト運営代行まで手掛け、いわゆるプラットフォーマーとしての収入も高まって来ています。

また、物流の重要性に目をつけた、アメリカンイーグルは3PL(サードパーティロジスティックス)の物流企業を買収し、他社のEC販売商品も運び始めました。

各社の取り組みから、これからの流通はいかに物流に投資するかの時代であることも読み取れます。

最後になりましたが、

今回、ヨガやランニング用のアスレチックアパレルを販売する、いわゆるライフスタイル提案型のルルレモン社(カナダ)が世界トップ10規模になり、営業利益率21.3%!という10社中、最も高い営業利益率で成長を続けていることを指摘しておきたいです。(EC化率は前期52.0%→当期44.0%)

これまでバリューやコスパの競争であった世界の大手アパレルチェーンの一角に・・・

いよいよライフスタイル、高付加価値商品、コミュニティストアをテーマとしたチェーンが食い込んで来たのは

新しい時代の幕開けではないでしょうか?

ルルレモンのランクインを歓迎し、今後もそんな付加価値提供型の企業が成長企業として台頭してくることを期待したいと思います。

22年の最新ランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 「ユニクロ対ZARA」(2014年発売) を2018年のデータでアップデートした文庫本です。

 

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September 27, 2021

インディテックス(ZARA)の2021年度上半期決算 第2四半期は過去最高益更新で回復中

Zara-londonインディテックス2021年度上半期決算(2021年2月~7月)が発表されていたので
資料に目を通しました。

あえて、前年2020年度対比ではなく、好調だったパンデミック前の2019年度対比でまとめてみます。

第1四半期(2月~4月)こそ、

売上高 パンデミック前の2019年度比 83%、
営業利益   同         58%でしたが、
営業利益率 11.5% (-5%)

99%のお店が営業状態に戻った 

第2四半期(5月~7月)は
売上高が 2019年比で 101.5%、
営業利益  同    105.3% 
営業利益率 16.0%(+0.6%)

と2Qとしては過去最高益となりました。

上半期を通じては

売上高が 2019年比で 93.1%、
営業利益  同    82.6% 
営業利益率 14.1%(-1.8%)

としてはまだまだですが、2Qの過去最高益の回復ぶりは特筆すべきことでしょう。

在庫状況についても

2Q末の在庫高は2019年とほぼ同じ水準で
在庫回転率 年換算ベース 4.5回転、
在庫日数80日前後 
と、優秀だった2019年の2Qの効率と同等に戻っています。

在庫の中味も健全である、つまり3Qの販売に必要な在庫のみ

であることをアピールしています。

コロナ禍、ニューノーマル化によって、グローバルトレンドを強味とするZARAは厳しくなるのでは?
という意見もありましたが、

当初計画通り店舗を大幅にスクラップ&ビルドしながら、
パンデミックの最中に店舗とECの統合プラットフォームを前倒しで完成させ、

EC在庫と店舗ストックルーム在庫の一元化(SINT)により
EC売上を2019年対比 137%増 (2020年対比 36%増)
と顧客の購買行動の変化に対応しています。

今年は店舗の回復を見込み、
EC売上比率は通年で25%相当になる見込みとのこと
(昨年は店舗売上が大きく減ったので32.4%)

こちらも、数年前からの計画通りの数値です。

ということで、業界の見方を覆し、
四半期ベースではありますが、コロナ前の好調な水準以上に戻したことになります。

あらためて、需要にあわせて、市場が求めるものをつくり続ける
という同社の柔軟性に驚かされます。

ここのところ、店頭やサイトを見ても、
モードというよりも、カジュアルトレンドを追求した
商品訴求が目立ちますね。

以前から、ZARAは、各サブセクションに
モードトレンドのオン・オフ 
カジュアルトレンドなオン・オフの
4軸のコレクションフレームを持ち

毎シーズンの需要に応じてその4つの構成比を変化させならが
売場を構成して来ました。

今回もパンデミック下における顧客の購買志向あわせたまでで、
結果、ニューノーマルの需要に対応できた、というわけです。

ここまで来たら、何でも来いですね(笑)

更に、これまで掲げて来た


店舗やショッピングのDX化の指標や
サステナブル系の指標においても

計画目標を何年か前倒しで達成中というから驚きです。

厳しかった8番目のブランド、服飾雑貨中心のUTERQUEをMassimo Duttiに統合したり、
ZARAの店舗の大型化にあたり、ZARA HOMEを展開する店も増やして行くというように
ブランドごとの対応も推進中。

パンデミックが落ち着けば、あらためて世界最強の強みを見せつけてくれそうです。

今後も、同社からは目が離せません。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】ZARAの強みをおなじみのユニクロと比較することであぶり出したビジネス読本。両者から学べることはまだまだたくさんあります。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

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April 06, 2021

世界アパレル専門店売上ランキング2020 トップ10

4cimg0441 世界中がパンデミックの影響を受けた2020年度。 世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃い、売上高や営業利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高ランキングTOP10を共有させていただきます。

 円建て比較にあたり、為替レートは2021年1月末の €=127.04円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=104.21円、英国£=142.95円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 前年増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2021.1期) 2兆5,918億円 -28% 1,914億円 7.4% 6,829 ZARA
2位 H&M (瑞;2020.11期) 2兆3,453億円 -20%  388億円 1.7% 5,018 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2020.8期) 2兆0088億円 -12% 1,493億円 7.4% 3,630 UNIQLO
4位 GAP (米;2021.1期) 1兆4,380億円 -16% -898億円 赤字 3,715 OLD NAVY
5位 Lブランズ (米;2021.1期) 1兆2,344億円 -8% 1,645億円 13.3% 2,669 Bath&Body Works
6位 プライマーク (愛;2020.9期) 8,436億円 -24%  517億円 6.1% 384 Primark
7位 しまむら (日;2021.2期) 5,426億円 +4%  380億円 7.0% 2,199 しまむら
8位 NEXT (英;2021.1期) 5,183億円 -17%  548億円 10.6% 491 NEXT
9位 アメリカンイーグル (米;2021.1期) 3,917億円 -13% -282億円 赤字 1,078 AEO
10位 アーバンアウトフィッターズ (米;2021.1期) 3,594億円 -13%      4億円 0.1% 645 Anthropologie

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアは過剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンC&Aおよび中国で急成長中の越境ECファストファッションSHEIN(シーイン)あたりもTOP10にランクインする規模と思われますが、それぞれ、売上高がつかめなかったため、除外しております。                              

【解説】

全体を見渡すと、経営破綻した米アセナリテール(前年7位)が消え、10位以下に控えていたアメリカ企業がランクインした格好ですが、上位6位までのランキングは2019年と変わりはありません。

以下、1位から5位について、そして、気になるところにコメントさせて頂きますね。

1位のインディテックスは

通期コロナの影響を受けて大幅減収、減益も、7.4%の営業利益率を上げたのはお見事でした。

全世界の店舗でRFIDの導入と各国EC在庫と店舗ストックルーム在庫の一元管理が完了し、世界のどのアパレル専門店よりも、いち早くオムニチャネル化が完成した、と言ってもよいでしょう。

EC売上比率は店舗の売上減もあって33%に。これからは同社のDXは顧客のスマホを使った店舗での拡張体験へ、そして、次のテーマである、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に力が入ります。

関連エントリーーZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。

2位のH&Mは

第1四半期に売上、利益の改善が見れたものの、その後、3つの四半期がコロナの影響を受けて、大幅減収、減益も、何とか黒字着地させた経費コントロールと仕入コントロール力はさすがです。

店舗閉鎖の影響もあり、EC売上比率は28%に。

これからは、遅れていたデジタル化へのアクセルが回復のカギとなるか?それとも、やはり、低価格品はECでは損益が取りづらく、苦戦するのか?注目の1年になります。

関連エントリーーH&Mとインディテックス(ZARA)の決算進捗に見る パンデミックの欧州グローバルチェーンの業績への影響

3位のファーストリテイリングは

年間のうち、半期分、コロナの影響を受けながら、市場は日本、中国が中心。欧米に比べ、市況回復が進んでいるため、欧州勢よりは、有利な環境と言えるでしょう。

特に国内ユニクロ事業の第4四半期の体質改善と踏ん張りは、柳井会長の執念を感じ、目を見張るものがありました。

今期は、3月から消費税分値下げした分を、同社がどう利益を確保するのかに注目です。

関連エントリーーファーストリテイリング20年8月期決算に見る、国内ユニクロ事業の凄さ

4位のGAPは

大幅減収赤字、GAP、バナリパで228店舗閉店とリストラが続きます(GAP事業売上前比73.0%、バナリパ事業は同57.5%)。

店舗売上減で、オンライン売上は54%伸びて、EC売上比率は45%に(前年は25%)。

5位のLブランズは

ヴィクトリアズシークレット(VS)のリストラ後の見事なV字(利益)回復と言ってよいでしょう。営業利益額だけを見ると、インディテックスに次ぐ、世界第2位の位置づけです。

ヘルス&ビューティのバス&ボディワークス(B&BW)は、パンデミックに関わらず、店舗が前年並みをキープし、既存店+ECが45%増と大躍進。ECは倍増で、いよいよVSとB&BWの売上が逆転しました。

ヴィクトリアズシークレットの店舗の整理はついたようなので、今期は大幅増収増益が期待できそうです。

関連エントリーーファッション&ビューティー市場の変化を見極め、事業ドメイン転換で勝ち残る、米 L Brands(エル・ブランズ)

以下、6位以下で、めぼしいところを付け加えますと、

しまむらがトップ10企業の中で唯一の増収増益。なんと、7位に浮上です。

これは、品揃え改革(同社らしい多品種小ロット高速回転の原点回帰)によって、かつての販売効率を回復しつつあるのが大きな要因です。

一旦、かつての販売効率まで戻った後、出店余地の限られる日本国内で、どのように、収益を伸ばすのかが、焦点になります。

8位のネクストは、得意の店舗網、物流網を活かし、クリック&コレクト(オンライン注文の店舗受取り)を上手く併用しながら、オンライン売上比率が昨年の50%から65%まで高まりました。

今後、力を入れるのは、そのインフラをフル活用した、他社ブランドのEC事業(オンライン受注から配送まで)を、まるっと代行するという、NEXT TOTAL Platform戦略への取り組みとのこと。これは、興味深いです。

この取り組みは、確立されたチェーンストアとして、違った意味で、世界一のインディテックスよりも先を行っている発想かも知れません。

今後、デジタルシフト後のチェーンストアのありかたの一例として、今後、深堀りしたいと思います。

さて、まだまだ、パンデミックの影響が残る、2021年度のランキングはどうなるでしょうか。

筆者としては、ZARAのインディテックス、ヘルス&ビューティへのドメインチェンジが進むLブランズ、チェーンストアの強みを活かしつつ、プラットフォーマーとしての付加価値を追求するNEXTの3社に注目したいです。

2021年度版はこちらです。 関連エントリーー世界アパレル専門店売上高ランキング2021トップ10

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になることでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」(2014年発売) を2018年のデータでアップデートした文庫本です。

いつもお読み頂きありがとうございます。

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March 29, 2021

ZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。

Zara-onlineZARAを展開するインディテックスグループの2020年1月期決算報告 FY2020 RESULTS

に目を通しました。

同社の決算期は2月~翌1月期なので、通期(全四半期)すべてがパンデミックの直撃を受けた1年でした。

但し、営業赤字だったのは、1Q(2-4月期)のみで

通年では、

売上高 20,402百万ユーロ(日本円換算2兆5918億円)と前年比72.9%(27.1%減)

粗利率 は前年55.9%→55.8%とほぼ変わらず

販売管理費 は 前年比83.2%(16.8%減)に抑え、

営業利益 1,504百万ユーロ(日本円換算1,914億円)前年比31.5%(68.5%減)

営業利益率は前年16.9%→7.4%と下がりましたが

営業黒字で着地しました。

インディテックス社の決算発表により、大手3社が出揃い、

2020年度の世界アパレルチェーン売上高ランキングのトップ3は

1位 インディテックス(ZARA)  1月期  2兆5,918億円(1,914億円 営業利益率7.4%)
2位 H&M           11月期  2兆3,752億円(227億円 同1%)
3位 ファーストテイリング    8月期  2兆0,088億円(1493億円 同7.4%)

に確定しました。

2019年度のランキング

世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

とトップ3の順位の入れ替わりはありません。

同社の期末店舗数は

7469店舗から→6829店 と640店舗の純減です。

内訳は閉店 751店 新店 111店 96店改装(うち45店が大型化)です。

これは慌てて閉めた、というより、中長期計画の計画通り。

在庫に関しては、期末在庫は前年よりも9%少なく、

4半期ごとに見ても前年よりも10%少ない在庫水準で回していたようです。

 

今回の同社の決算の最大のトピックはECの大幅売上拡大と世界全店舗のオムニチャネル体制の完成でしょうか。

EC売上高は77%増の6,600百万ユーロ(日本円換算 8,384億円)

EC売上比率は32.3%と前年の13.2%から急増です。

このEC売上の拡大に寄与したのが、

同社のオムニチャネル施策(Fully integrated store and online platform)のコアにある

SINT(Single Inventory Integration)というコンセプトです。

要は、各国のEC向け在庫と店舗のストックルーム(バックヤード)の在庫を一元化し・・・店舗のストックルーム在庫をEC需要の引き当て対象にできるようにした、という話です。

これをリアルタイムに可能にしたのが、RFIDの全店導入完了です。

このRFIDも、自社開発。

ほとんどの企業が使っているRFIDは、主に、値札や洗濯絵表示に埋め込まれている、安価で使い捨てのチップですが、インディテックス社の場合は、全商品に、スペインの倉庫で取り付けられたセキュリティタグの中に埋め込まれています。

丈夫で高性能、更に、回収することで、何回も再利用ができるという優れものです。(高性能、1回あたりのコスト減、リサイクルで環境にも優しい)

使えるものは、再利用をするという同社のポリシーはこんな最先端のテクノロジーにも活かされているわけですね。

話をSINT(在庫一元化)に戻しますが、

同社によれば、これが、売上高比率32.3%になったEC売上高全体の中の12%分に寄与したとのことです。

通年COVID19の影響を受けても、まだ、世界一の売上規模と利益を確保したインディテックス社。

今後、同じような、ロックダウンで店舗を閉めなければならない事態になっても、商売を継続できる体制が整いました。

さまざまな変化に対して、柔軟な対応ができる、

という世界最強クラスのオペレーション・エクセレンスを見せつけた決算と言ってもよいのではないでしょうか?

近日中に世界アパレル専門店売上高ランキング2020年版も更新したいと思います。

お楽しみに。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARA。これから進む道も、経営者の経営信念、ビジネスモデルとその変遷を理解すれば、見えて来ます。両社の比較分析が、未来のアパレルビジネスを考える上で、とても参考になると確信しています。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

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February 01, 2021

英ファッションEC企業による、破綻した百貨店や専門チェーンの買収目的

Topshop2017先週、イギリスのファストファッションECサイト、Boohooブーフーが、昨年12月に破綻した老舗百貨店、デベナムズを買収するニュースが流れました。

Fashionsnap.com 英ファストファッションEC「ブーフー」が経営破綻の大手百貨店デベナムズを買収

Boohooはデベナムズのブランドとウェブサイトを5500万ポンド(約78億円)で買収し、その他の資産である124の実店舗と12,000人の従業員は買収対象から外しています。

また、同様に昨年11月に経営破綻したアルカディアグループのTOPSHOPなどのブランドを、やはり英ファッションECモール大手のASOSエイソスが買収を検討しているというニュースも入っています。

WWDジャパン 英ECエイソスが「トップショップ」買収に意欲 ブーフーは百貨店デベナムズを獲得

こちらもASOSがアルカディアから買いたいのは、ブランドとウェブサイトが持つ顧客だけで、店舗は要らないとしています。

ちなみに、世界最大級のファッションストアと言われる、かのTOPSHOPのオックスフォードサーカスの旗艦店(右上画像)は現在、別途、売りに出されているとのこと。

更に、速報ベースですが、こちらのイギリスのyahoo!financeのニュースに寄れば、ASOSが狙っているのはアルカディアグループのTOPSHOPとMissSelfridgeの2ブランドで、その他のブランド、Dorothy Perkins, Burton および Wallisについてはデベナムズを買収したBoohooが現在交渉中とのことです。

Asos edges closer to sealing Topshop and Miss Selfridge acquisition

これらのニュースを聞いて、恐ろしく感じたのは、アメリカのアマゾンやアリババは、オンラインのみのビジネスに限界を感じて、リアル店舗が欲しくてスーパーや百貨店を買収していますが(店舗と従業員付で)、

BoohooやASOSは、欲しいのはブランドと顧客だけとし、固定費である店舗や従業員はいらない、と割り切っていることです。

イギリスでは、アマゾンが世界で牽引するオンラインショッピングや顧客のショッピングのデジタルシフトに対して・・・

ここ10年間で、多くの百貨店や専門店が、自社ECサイトを立ち上げ、EC販売を強化しながら、オンライン注文を店舗で受け取ることができる、クリック&コレクトに力を入れて、顧客をオンラインに寄せ、新しい小売業として生まれ変わる努力をして来ました。

ところが、そんな新しいプラットフォームが完成するかどうか、という矢先にコロナショックによって数回に渡るロックダウン、店舗閉鎖に追い込まれたイギリスで、力尽きたデベナムズやTOPSHOP(アルカディア)やこれからも出てくるであろう破綻企業は、

これまで構築の努力をして来たブランドとオムニチャネルプラットフォーム上の顧客たちを、そっくり、そのままEC企業たちに掻っ攫われる、という話です。

これらのニュースを聞いた時、これは決して、対岸の火事ではない、と思いました。

今、日本においても、一生懸命、EC化率を高めて、顧客の購買行動の変化に合わせて生まれ変わろうとしているアパレル企業や専門店がたくさんあると思いますが・・・

利益体質を取り戻せないまま、なまじっか、EC化率だけを高めても、・・・それこそ、勢いのあるEC企業にブランドとECプラットフォームと登録会員だけを持っていかれてしまう標的になりかねない、ということです。

本来であれば、オムニチャネル(あるいはOMO)型の新しいビジネスモデルとして生まれ変わるつもりでも、その脱皮に時間がかかれば、キャッシュが持たず、力尽き、その結果、せっかく構築したECプラットフォームだけをみすみすEC企業に持って行かれ、店舗および店舗で働く従業員を守り切れない、という話にもなりかねません。

イギリスで起こっているEC企業が破綻小売業にしかける買収劇は、実店舗や従業員の雇用が守られない、という厳しい話ではありますが・・・

日本においても、それらを教訓に、あらためて、しっかり儲かる利益体質をつくり、必要十分なキャッシュフロー経営を行いながら、新しい購買行動に合った企業にモデルチェンジをして行きたいものです。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 10年後のアパレル業界でのサバイバルのカギ、顧客とのこれからの関係構築がテーマです。本書中でウルトラファストファッションとして、ASOSやBoohooも紹介しています。

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