November 27, 2023

粗利率100%の広告収入をEC事業の収益源に

Wwdec11月24日の繊研新聞にZOZOのZOZOTOWNでの広告事業収入が急成長していることに関する記事が掲載されていました。

2018年度(2019年3月期)年間14億円から始まった同社の広告収入は
前期(23年3月期)4年目で77億円となり、今期上期も22%増のペースで増加中。

記事の見出しには100億円に迫る勢いと記載されています。

小売業にとって

店舗中心で販売する専門店場合
2大販管費は言わずと知れた人件費と地代家賃ですが

一方、ECなど通販のそれは

広告宣伝費と物流費が大半を占めます。

そのため、ECにおいては
広告宣伝費をどれだけかけて

事業をグロースさせるかを考えるのが初期の「常識」ですが

一方、サイトに集客力が付くと、

出品メーカーから広告宣伝費をもらったり、
他社の集客や販促を手伝う広告収入を得られるようになるものです。

つまり、広告宣伝費ってのは
外部の広告代理店などに払うのが当たり前な費用ではなく、
自社がメディア化すれば、収入が得られるようになるもの。

ですから、せっかく本格的にeコマースに取り組むなら

そのあたりを目指したいところですね。

そんな話をすると

規模が違うとおっしゃる方が多いですが

例えば「北欧、暮らしの道具店」を運営するクラシコムさんは

年商60億円規模ですが、2億円ものブランドソリューション売上という
粗利100%の、ある意味、広告収入源をお持ちです。

この数字は、同社の販管費の中の

広告宣伝費の半分近くを
自らのメディア化で回収していることを意味しています。

さて、ゾゾの決算データに戻って

同社の受託販売は

商品取扱い高の平均29%が手数料収入となり、同社の売上高になります。

買取販売やUSED販売のような

自社が在庫リスクをとって行っている商売の粗利率は約40%

これ対して

広告収入は

売上高=粗利高
つまり粗利率100%のビジネスです。

ZOZOは今後、商品取扱高の拡大と共に

下がる出荷単価と受託販売の収益性の低下に向き合わなければならない時

同社は広告事業では


出荷する荷物を入れるダンボールをブランドオリジナルにしたり
顧客に届けたいものを同封するような販促支援費も稼ぎに行くそうです。

これまで積み上げた顧客とのつながりが収益性の高い広告収入を生む時

EC担当の方には公式サイトで
是非、そんな風景を見ることを目指して頂きたいと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【アパレル企業のビジネスモデルが丸わかり】

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第3章ではEコマースのビジネスモデルを可視化すると共に

ZOZOやクラシコムのビジネスモデルの強みを分析しています。

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September 18, 2023

在庫をたくさん作らなくても、小ロットでブランドを立ちあげる方法もあるという話

Imag22789月14日の繊研新聞にTシャツなどアパレル製品へのシルクスクリーンプリント加工を手掛ける企業、シルクマスター社がスケートボードへのプリント技術を開発し、発売を始めたという記事が掲載されていました。

この記事を読んで思い出すのが、90年代、アメリカのトレードショーでよく出会った、スタートアップブランドたちです。

当時、西海岸では、独自のグラフィック(CG)を活かして、ブランドを立ち上げ、Tシャツ、キャップ、ショーツ、スケートボードなどにプリントや刺繍を施して、トレードショー向けにサンプルをつくって出展するチャレンジャーたちがたくさんいました。

主に、スケーターブランドの連中ですが、実際にショーで受注をとってから、いわゆるブランクボディと呼ばれる、プリント用の無地のTシャツ、キャップ、ショーツ、スケートボードの板を、在庫を持つサプライヤーから、ケース単位で仕入れ、加工をしてからデリバリーするという手法を取っていました。

そんなスタートアップブランドたちは、小売チェーンのバイヤー向けのBtoB卸ビジネスが主だったのですが、
Tシャツとキャップとショーツとスケボーとステッカーが揃えばれっきとしたストリートブランドの始まりだったんですよね。

当時、世界からアメリカ西海岸に新興ブランドを「買い付け」に来るバイヤーの手伝いをするために、各地のトレードショー周りをしていた私は、

「数量をたくさん発注するなら、ブランクボディを買う金がないから、代金を先払いしてくれないか?」

と申し出てくるスタートアップもあって、アメリカって夢を持って、起業もしやすい環境にあるんだな、って思った記憶が蘇ります(笑) 

もちろん、その後、成功したのは一握りの起業家だけでしたが・・・。

今も昔も、アパレルブランドを起業しようとする方々がいらっしゃると思いますが、

もちろん、どんなブランドにしたいか、にもよりますが、

今どきは、日本でも、わざわざ生地を買って、一からつくる在庫リスクを負う本格的なモノづくりをしなくても、

加工用の製品在庫を持つ専門メーカーさんがいくつも存在しますから、

無地(ブランク)ボディを仕入れて、グラフィック勝負で、プリントをする、刺繍をする、リメイクする。

そのアイテムのバリエーションも、Tシャツだけでなく、いろんなアイテムがケース単位で仕入れられる時代になったので、小資本で、Eコマース発信のBtoCで立ち上げるところから始める起業家も出てきやすい環境にあるんじゃないか、と思います。

手軽になり、参入障壁が下がる分、競争も激しく、創意工夫の勝負であることは間違いありませんが、小資本でもスタートアップできる環境が整い、選択肢が広がり、業界にチャレンジャーが増えて行くことは、楽しみでもあります。

今や有名になったブランドも、最初からお金があったわけじゃなく、

そんな資金の苦労をしながらスタートアップしたんですよね。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 14, 2023

急成長ルルレモン躍進の秘密

Imag2243毎年公開している

世界アパレル専門店売上ランキングトップ10

コロナ禍を経て、最も注目すべきランクイン企業は
ルルレモンです。

ルルレモンは1998年、カナダで創業

アメリカ合衆国を中心に
過去10年で年平均約20%の成長を続ける

ヨガやランニングなどアスレジャーを中心に
健康な体づくりのためのスポーツアパレルをメインに販売するチェーン

ナイキやアディダスが靴を中心にウエアも展開するのに対して、

ルルレモンは、もっぱらアパレル中心

そして、

アスリートというより、アスレジャーに関心のある一般大衆向け

また、

直営店とオンラインでエンドユーザーに直接販売するのが著名グローバルスポーツブランドとのアプローチの違いです。

そんなルルレモンは

2022年度世界アパレル専門店売上高ランキングで、第6位

北米ではGAP社に次ぐ2位ですが、営業利益はGAP社を遥かに上回って、1位

lululemon ルルレモンという単一屋号では

すでにGAP社のオールドネイビーやヴィクトリアズシークレットを抜いて1位の売上規模です。

商品は4wayストレッチや速乾など機能素材を使った、アスレチックにも普段着にも使える着心地が良く、動きやすいウエア

単に、服だけを販売するのではなく、

店舗で開催されるヨガ教室やランニング教室で

コミュニティーづくりを通じてコアなファンを増やして行くマーケティングが秀逸です。

そんな店舗体験提供に裏打ちされているため

けっして安くはない商品が、オンラインでも良く売れて、

23年1月期決算では、いよいよ、オンライン売上が店舗売上を上回りました。

オンラインの本社費差し引き後営業利益率は25~30%と

同10%前後の直営店より高いため、

全社営業利益率は20%近い高い収益率を上げています。

 

そんな 店舗体験型による顧客のつながり

オンライン事業の収益性

の二本柱に、とどまらず、

 

未来に向けて面白い取り組みがいくつかあります。

ひとつは

自社商品の買い取り、再販プログラム
lululemon Like New

です。

ユーザーが不要になったルルレモン商品を

ルルレモンが引き取って、顧客には新品購入の際に割引になるクレジット(ポイント)を付与します。

ヘビーユーザーたちは店舗で開催されるイベントに参加するだけでなく、
購買頻度も高いユーザーでしょう。

店舗で開催される教室には新しい商品を着て行きたいでしょうし、

毎シーズンアップデートされる商品を知れば、新しい商品が欲しくなるわけで、

そこでまだ十分着ることができる不要になった旧商品
(といってもそんなに古くないからLike New)

を、手放す受け皿をルルレモンが自らつくり、

一方、これからルルレモンを着てヨガやランニングを始めようとする
エントリー顧客さんには

半額以下の手頃なお試し品として提供できるというわけです。

2つめは
オンラインコンテンツの提供です。

ヨガやランニングをする人は当然
自宅またはその近辺でも日頃から自らのエクササイズを行うわけで

その手助けに沢山のエクササイズの秘訣を提供する
オンライン動画を配信します。(無料と有料コンテンツあり)

そして、3つめは

有料会員制の普及です。

同社は22年に会員制プログラムを始めました。

無料コースと有料コースがあり、7カ月で無料会員はすでに9百万人に達したそうです。

月間または年間有料会員になると

商品の割引が得られたり配信コンテンツが無料になったり

ルルレモンが提携する提携エクササイズ教室が割引で
受講できるというわけです。

・オンラインと店舗を行き来するオムニチャネル

・店舗での体験提供

・リセールによる循環プログラム

・コンテンツ配信、有料会員制・・・

顧客とつながり続ける取り組みを地に足をつけて次々に取り組んでいるのがわかります。

同社はこれらの取り組みにより

2022年1月期の売上約8000億円を5年間で倍の1兆6000億円にする

POWER OF 3 X 2というプロジェクトを推進中。

その原動力は

・オンライン売上を倍増させ
・後発のメンズの売上を2倍に増やし
・北米外の海外売上を4倍にする

ことによって実現するとのことです。

海外展開について、すでに、100店舗を超えた中国に対して

日本にはまだ、六本木、原宿、表参道、銀座、新宿(丸井)、梅田、そして御殿場のアウトレットを含む
7店舗しかありません。

店舗が少ないと認知度が低く、日本市場には今のところインパクトも少ないかも知れませんが

ルルレモンは今時の、ファッション関連のグローバルマーケティングの最前線にいる学ぶべきブランドのひとつと感じます。

ルルレモンは既存スポーツブランドとは違うアパレルチェーンとも違う

ゲームチェンジャーの1社です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 第5章では、年会費に支えられた小売業 コストコのビジネスモデルを取り上げました。

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May 29, 2023

新刊「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)が発売されました。

Finalおかげさまで、来週5月25日(木)に齊藤孝浩の4冊目となる
新刊「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP日本経済新聞出版社)が発売になりました。

4年間、WWDJAPANに連載を続けてきた「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)で紹介した企業を中心に、

主に決算書情報などから読み取れる、コロナ禍を経て勝ち続けている企業のビジネスモデルが、従来の業界の常識と何が違うのか、その優位性、将来性をわかりやすく図解してみました。

勝ち続ける企業は・・・業界の常識とは真逆のことをやっていた。

というのがこれらのビジネスモデルとゲームチェンジャーたちのビジネスモデルを分析しての気づきです。

そして、損益計算書(PL)の強さが お金の使い方にあるということ。

ZARA(ザラ)から始まり、SHEIN(シーイン)、ZOZO、ワークマン、コストコ、LVMH(モエヘネシールイヴィトン)、丸井グループ、メルカリ、DOORDASH(ドアダッシュ)などなど

が登場しますが、彼らは

・在庫の運用のしかたが上手く

・商品を仕入て売る以外にも収益源を持ち

・自前でしくみを構築したからこそ、そのインフラが他社にも売れるプラットフォーマー的な役割を果たし

・小売流通業がエンドユーザーから代金(日銭)を預かることの大切さを知っています。

上記の企業の他にも、ユニクロ、ニトリ、H&M、クラシコム、モンベル、ヤマト運輸などのビジネスモデルも登場します。

一応、専門書ではありますが・・・

グラフやイラストを多様し、誰もが知っている身近な企業の財務体質とビジネスモデルを、

「ですます調」で綴ることで、

多くの方に読みやすい体裁にしております。

一番読んで頂きたいのは、これからビジネスモデルを見直したい経営者さん、

新しいビジネスモデルを一から始めるスタートアップ企業や起業家の卵の方々、

そして、流通企業の幹部になって、PL管理に責任を持っている方々にも、

競合他社ベンチマークのアプローチも学んでいただけると思いますので、

是非読んで頂きたい内容です。

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May 22, 2023

世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

Lulu-santa-monica

世界的なパンデミックを経て、躍進し、最高益を更新する企業と苦戦が続く企業の明暗が分かれた2022年度。世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃いましたので、毎年恒例の売上高ランキングTOP10を共有させていただきますね。

今回、売上高の増減はコロナ前からの回復度合いを見るために、19年度比とさせていただいております。

 円建て比較にあたり、為替レートは2023年1月末の €=141.3円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=130.5円、英国£=161.3円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 19年比増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2023.1期) 4兆6,019億円 +15.1% 7,799億円 16.9% 5,815 ZARA
2位 H&M (瑞;2022.11期) 2兆8,033億円 -4.0% 898億円 3.2% 4,465 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2022.8期) 2兆3,011億円 -0.5% 2,973億円 12.9% 3,562 UNIQLO
4位 GAP (米;2023.1期) 2兆0,374億円 -4.7% -90億円 -0.4% 3,352 OLD NAVY
5位 プライマーク (愛;2022.9期) 1兆2,412億円 -1.2% 1,219億円 9.8% 408 Primark
6位 ルルレモン (加;2023.1期) 1兆0,581億円 +103.8% 1,732億円 16.4% 655 Lulu Lemon
7位 NEXT (英;2023.1期) 8,731億円 +24.2% 1,519億円 17.4% 466 NEXT
8位 ヴィクトリアズシークレット (米;2023.1期) 8,277億円 -15.5% 738億円 8.9% 837 Victoria’s Secret
9位 アメリカンイーグル (米;2023.1期) 6,510億円 +15.5% 322億円 4.9% 1,175 AEO、Aerie
10位 しまむら (米;2023.2期) 6,161億円 +18.0% 533億円 8.7% 2,213 しまむら

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアはブランド企業の余剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンのC&Aおよび、中国産地からの越境ECのみでアメリカ、中東など世界中に売り込み、急速に拡大を続けるファストファッション企業、SHEIN(シーイン)あたりもTOP10の2-3位前後にランクインする規模と思われますが、それぞれ、正確な売上高がつかめなかったため、除外しております。 

【解説】

13年連続 トップを走る、ZARAのインディテックスは売上、利益とも過去最高益を更新。ロシア500店舗以上を閉店、中国苦戦するも、欧州とアメリカの躍進での達成。店舗とオンラインの融合は完成し、スクラップアンドビルドは完了に近づき、過去最大の設備投資をして、次のステージに進みます。

第2位のH&Mはパンデミックからの回復で増収も減益。原価高騰を価格に転嫁しなかったこと、ロシア休業の処理、また、構造改革に費用をかけたことが要因です。アメリカの伸びは大きく、ドイツを抜いて、売上シェア最大国になりました。

第3位のファーストリテイリングは日本が回復、中国がロックダウンで苦戦するも、欧米が黒字化、増収増益で中国のマイナス分をカバー。これで中国が復活すれば、更なる躍進は楽しみです。

第4位のGAPは減収減益、営業赤字。同期中にCEOが交代するほどの混乱ぶり。店舗のスクラップアンドビルド、欧州、メキシコ、中国事業をパートナー企業に移管など、リストラが進んでいます。原価高騰による粗利率低下、Yeezyコレクションの53百万ドルの処分も営業赤字を拡大した要因です。

第5位のプライマークは各国でコロナから回復中、オンラインでは、店舗在庫確認に加え、クリックアンドコレクトの対応の実験を始めました。コロナ禍にインナーウエアや子供服が伸び、今後も期待ができそうです。ドイツの再構築、アメリカの拡大が今後の成長のカギ。

6位以下の一番のトピックは なんと言っても、第6位のルルレモンです。

店舗、EC合計で、昨年比3割増収で1兆円規模に到達。一方、微減益。これは原価高騰で粗利率が2%低下したのと、ミラーののれんの減損が大きく響いています。但し、ミラーを活用した、ルルレモンスタジオで有料サブスクを開始するのに注目です。26年までに売上を1兆6000億円規模と2021年の倍にするプランPower of Three x2 growth planをを進行中。

そして、第7位のNEXTは二桁増収、一桁増益。店舗好調で、ECは落ち着きましたが、ランキング内でトップクラスのEC化率と収益率。原価高騰を価格転嫁とプロパー消化向上でカバーするも、テクノロジーと物流に投資をすることで、利益率は若干低下した模様です。プラットフォームビジネス(内製化インフラを外販)の開示が始まりました。現状、全売上高の2.6%になりました。

そして、第10位の日本のしまむら。ファッションセンターしまむらの高収益にバースデイ、アベイルが利益貢献して、過去最高益を2年連続で更新。バースデイ業態としまむらでは、婦人服以外の伸びが今後は成長のカギとなります。

業績の明暗は、オンラインと店舗を行き来するニューノーマルへの完成度と需要にあわせたサプライチェーンマネジメント力の差です。

原価を安くするために、人件費の安い国に生産地を移転し、ファッションビジネスにとって致命的とも言える、リードタイムを販売期間よりも長くしてしまったところは今後も苦戦が強いられることでしょう。

昨年のランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上ランキング2021 トップ10

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】2023年9月29日(金)13:30~15:00

WWDJAPAN主催 「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー 今回の記事の内容をライブで深堀り解説します。

お申込みはこちらから https://wwdjapan-businessseminar20230929.peatix.com/
 

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March 13, 2023

3年で売上高を1.5倍、利益を1.8倍に増やしたLVMHの無双ぶり

Wwd-vol47-lvmhWWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

3月13日発売の連載第47話目は、22年12月度決算で23%の大幅増収、22%の大幅増益(なんと額で3兆円に)となったLVMHの決算を取り上げました。

コロナ前との比較でいうと、3年間で売上は1.5倍、利益は1.8倍ともう手がつけられません。

中国は伸び悩むも、引き続きのアメリカ市場の好調、ヨーロッパ及び日本の復活、ファッション&レザーセグメントが絶好調、セフォラのリテールも復活です。

これで中国が戻って来たらどうなるのでしょうかね。どこかの地域が厳しければ、どこかでカバーするグローバル企業の強みを見せつけてくれています。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトでもお読み頂けます。

ファッション業界のミカタ Vol47~3年で売上高を1.5倍、利益を1.8倍に増やしたLVMHの無双ぶり

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考】ショッピングのデジタルシフトの真っただ中、その先にあるのはどんな未来なのか?10年後のファッション流通の未来を考察しました。

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June 14, 2022

ユニクロが秋冬から値上げする商品、価格を据え置く商品とその意図は?

Uq-harajyuku_202206141302016月7日のユニクロのメディア向け秋冬展示会で一部の商品の値下げを発表しことを、メディア各社が大きく報道していました。

各社の報道によれば、値上げする秋冬商品の税込価格は、

フリースが従来の1990円から2990円へ、

ウルトラライトダウンが同5990円から6990円へ、

ヒートテック肌着(極暖)は1500円から1990円へ、

同(超極暖)は1990円から2990円へ、

カシミヤクールネックセーター(ウィメンズ)は8990円から9990円

という感じです。

一方、なぜか値上げする品目だけを取り上げ
ヒートテックの通常モデルの990円、ジーンズの3990円など定番品の価格の据え置きについては報道しないメディアもあったのが、値上げだけに注目しているようで、逆に不思議に感じました。

いわゆる「ユニクロプライス=1990円」の象徴であるフリースが1000円値上げになったことはキャッチーなニュースですが、

エントリー商品と言える、多くのお客さんが数をたくさん買ったり、目的購入をされる商品の価格を据え置いたのはとても賢明で、

むしろそういった入口にあたる商品との差別化が明確に図れたり、

上層マーケットではもっと高く売られているアイテムを値上げすることによって、
商品開発者がどんな付加価値をつけるか、にチャレンジをすることは

柳井会長が言われた通り、考え抜かれた結果なのだと合点が行きました。

フリースあたりはもうプロダクトライフサイクル的も衰退期に入っている可能性があるので、むしろ値段を上げて革新的に生まれ変わるリニューアル(脱皮)の良いチャンスかも知れませんし・・・

今回のユニクロの秋冬からの価格設定のニュースを聞いて
あのユニクロですら値上げをしたのだから、うちも全般的な値上げをしてもよい!などと手放しに考えるのか

ユニクロが据え置いたアイテムとそれらの価格の意図に注目して、
自社に照らし合わせた場合、どこで原価アップ分を吸収し、どこで付加価値を表現するかを考え抜いた上で価格設定をするのかで

秋冬の買い上げ客数と利益額は大きく変わって来るでしょう。

今回の決断はシーズン仕入れを担う商品部MD職任せのマターではなく、

事業を大きく左右する、まさに経営者マターの話です。

まずは小売業が方針を明らかにし、リーダーシップを持って、会社ぐるみでサプライチェーンのお取引先と相互協力体制をとり、この難局を乗り越えましょう。

なお、原油や食品など原材料相場が製品価格に直結する、原価構成比に占める割合が高い生活必需品の消費財と、同じ消費財でも、アパレルのような原材料に対して、つける付加価値の方が圧倒的に大きい、そして、代替え可能な選択肢が多い商品を同じ理屈で考え、食品は値上げしているのだから、衣料も値上げすべき、という理屈には無理があると思っています。

食品は食べなければ生きて行けませんが、衣料品の場合、明らかに高くなったと感じたら購入を見送ったり、本当に必要であれば、比較的安価な他社で購入することになるでしょう。

小売業にとっては購入頂ける客数が生命線のひとつです。

今回、思い切ってリブランディングするなら話は別ですが・・・

客数を左右する価格設定は古い原価率に基づく公式ではなく、考え抜いて再定義する、いい機会にしたいものです。

6月17日に開催されるWWD JAPAN主催の アパレル値上げ対策セミナー(オンライン)に登壇します。
原価高騰下の価格見直しや業務再構築の気づきを得ていただければ幸いです。(6月16日正午締切です)

https://wwdjapan-businessseminar20220617.peatix.com/

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考書籍】

顧客購買行動に対して品揃え計画(MD)およびシーズン中の在庫運用(DB)を考えるビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

こちらは電子書籍 Kindle版 です。経営者様、経営企画の方、MD、DB職の方に読んで頂きたいです。

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June 06, 2022

晴雨兼用アイテムの市場潜在性

Photo_20220613130001梅雨の季節になると

百貨店の傘売り場やレイングッズ販売の
ニュースを見かけるようになりますが、

6月2日の日経MJの「ヒットのクスリ」などに
富山県のレイングッズメーカー、カジメイク社が

おしゃれなレインウエアやグッズを販売する直営店
「アメトハレ」を新宿の丸井に開いたという記事が掲載されていました。

以前もブログでご紹介させて頂きましたが

関連エントリーー気温に合わせて品ぞろえ計画、在庫運用を考え直す

気温や天候に大きく左右されるビジネスであるファッション販売に携わっていると
最高気温、最低気温、天気を気にしながら
クライアントさんたちと在庫コントロールを考えるわけですが、

上記エントリーで過去の天気をご紹介した以降も

気象庁の例えば東京都心部のデータでは

春は約2カ月
夏は約5カ月
秋は約1カ月
冬は約4カ月

※注:春は最高気温15度越え、夏は同25度越え、秋は最低気温が15度以下、冬は同10度未満の日にちが継続的に続き始めるところでカウントしています。

であるのと共に、

年間降水日(日中の天気に雨が含まれる日)は毎年100日を超えているのが現実です。

ちなみにカジメイクさんのアメトハレのサイトを見ると、
富山県は1年の半分の日に雨が降る全国でも雨が多い地域のようですね。

アメトハレサイト 

北陸が合繊生地の産地というのもあるかと思いますが、
そんな環境が同社のビジネスの原点にあることが頷けます。

ここまで気温や天気の傾向が、従来の業界の常識と変わって来ていることが
データではっきり認識できるのなら・・・

もう、天候を「売れなかった言い訳」にするのはやめて(笑)

むしろここまで長くなった夏、そして雨の日が多いことをいかにビジネスチャンスに換えるか?

を考えたい、という話は既述のエントリーでもお伝えしたことです。

生活者のお困りごとのひとつに

雨の日に着用して出かけてもストレスを感じない服や靴があり、

一方、昔ながらの雨具専業メーカーさんが提供する
機能第一の雨の日専用グッズでは満たされない需要があるとします。

私も雨の日対応グッズをいくつかもっていますが、購入の際、選択肢が限られ、使用頻度が低い上に
昔ながらのデザインのものが多く、結局、妥協しているのが現実です。

そんなレイングッズを使用シーンが限られる「特殊な商品」ではなく
年間の3分の1以上の日に使える大きな潜在市場ととらえると

どんなことが考えられるでしょうか?

雨の日はもちろん、晴れの日でも普通に着る、履く、使うことができる

デザイン性や使い勝手を持つことがマーケット拡大のひとつのきっかけになるかも知れません。

ここ数年、家でも洗濯できる服が多くの生活者に支持され、「選ばれる基準」になったように

雨の日にも着ることができる晴雨兼用という概念はこれから「選ばれる理由」になるかも知れませんし、

また、サステナブルの観点から購入した服のメンテナンス情報を発信するアパレル企業が増えているように

雨で濡れた服や靴の手軽なメンテナンスの提案は

生活者に潜在的なお困りごとを認識してもらうことで開拓余地のある大きいマーケットの開発につながるかも知れませんね。

作業服として開発した商品をアウトドアウエアやタウンウエアとして、提案し一気に購買客層を増やしてブレイクしたのは
ワークマンですが

同社がワークマンプラスやワークマン女子などアウトドア用品店に続いて、最近スタートしたシューズ専門業態の次は
レイン対応グッズの専用業態を出店することを考えているようです。

多くのメディアが注目すると、これからレイン対応グッズにあらためて目が向けられることになるかも知れません。

憂鬱な雨の日の選択肢を楽しく広げてくれる
着用シーンが限られると思われた雨の日の生活者のお困りごとに着目し、

晴れの日にも兼用出来るアイテム これからそんな潜在市場が顕在化して行くような気がして楽しみです。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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May 16, 2022

世界アパレル専門店売上高ランキング2021トップ10 

Zara-london_20220516125801世界がパンデミックからの回復が進む2021年度。世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃いましたので、毎年恒例になりました売上高ランキングTOP10を共有させていただきますね。

22年の最新ランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

今回(2021年)、売上高の増減はコロナ前からの回復度合いを見るために、19年度比とさせていただいております。

 円建て比較にあたり、為替レートは2022年1月末の €=128.66円、スウェーデンクローナ=12.24円、US$=115.14円、英国£=154.72円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 19年比増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2022.1期) 3兆5,659億円 -2.0% 5,509億円 15.4% 6,477 ZARA
2位 H&M (瑞;2021.11期) 2兆4,341億円 -14.6% 1,867億円 7.7% 4,801 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2021.8期) 2兆1,329億円 -6.9% 2,490億円 11.7% 3,527 UNIQLO
4位 GAP (米;2022.1期) 1兆9,278億円 +1.9% 935億円 4.9% 3,399 OLD NAVY
5位 プライマーク (愛;2021.9期) 8,653億円 -28.2% 642億円 7.4% 398 Primark
6位 ビクトリアズシークレット (米;2022.1期) 7,831億円 -9.7% 1,003億円 12.8% 899 Victoria’s Secret
7位 NEXT (英;2022.1期) 7,522億円 11.5% 1,393億円 18.5% 477 NEXT
8位 ルルレモン (加;2022.1期) 7,221億円 57.2% 1,538億円 21.3% 574 Lulu Lemon
9位 しまむら (日;2022.2期) 5,836億円 11.8% 494億円 8.5% 2,204 しまむら
10位 アメリカンイーグル (米;2022.1期) 5,783億円 16.3% 682億円 11.8% 1,133 AEO

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアはブランド企業の余剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンのC&Aおよび、中国産地からの越境ECのみでアメリカ、中東など世界中に売り込み、急速に拡大を続けるファストファッション企業、SHEIN(シーイン)あたりもTOP10の5位前後にランクインする規模と思われますが、それぞれ、正確な売上高がつかめなかったため、除外しております。 

【解説】

まず、回復が最も著しいのはアメリカ勢ですね。政府から消費者に手厚い給付金が何回も支給されたアメリカの小売業は総じて活況とのこと。

ギャップ、バナリパはリストラ中もオールドネイビーが絶好調のGAP、
前年にLブランズ社から分社化されたヴィクトリアズ・シークレットのカムバック、
エアリの評価が高いアメリカンイーグルの業績回復、黒字化が顕著です。

欧州市場がメインマーケットのため、まだ回復途上ではありますが、ZARAを展開するインディテックスも、中国で不買運動が起きて大きく売上を落としたH&Mも、アメリカ市場の業績がそれ以上に好調で、その好景気の波に乗ったと言っても過言ではありません。

関連エントリーー分社化が完了し、ヘルス&ビューティー企業となったLブランズ(エル・ブランズ)

次に、外出自粛、営業制限で加速したEコマース対応について。
店舗の売上回復と共に、EC売上比率が下がった企業が多いですが、引き続き各社のEC売上そのものは伸び続けています。

特に各国のEC倉庫在庫と店舗のバックヤード在庫の一元化が完了したインディテックス(EC化率は前期32.4%→当期25.5%)、

EC注文の翌日店舗無料受取りを可能にしているネクスト(EC化率は65.3%→63.8%)の伸びは大きいです。

コロナ禍が加速させた、オンラインとオフラインを行き来してお買い物をする消費者購買行動へのシフトに対応することは小売業にとって待ったなしであることは間違いありません。

関連エントリーーZARA(ザラ)のインディテックスの2022年1月期(FY2021)決算。最高益間近の回復力の源泉はオムニチャネル施策と・・・

関連エントリーーロンドンで進化するクリック&コレクトと通販受け取り拠点の多様化

その一方で、トップ10企業の中でも最低価格帯のプライマーク(第5位)は、引き続き、一切、Eコマースを行っていません。

但し、オンラインサイトの掲載商品比率を全体の70%まで上げ、サイトで見た商品の近隣店舗の在庫を表示することで、店舗でのお買い物前にオンラインでスタイリングや商品の下調べを楽しめる環境は整えています。

しまむらも引き続き売上は全社売上比1%にも満たない状況です。しかも、EC売上の9割は店舗で、送料無料で受け取られているという現実。

2社の動向から読み取れるのは、低価格品を扱う企業にとっては、送料のかかる宅配ECは適しづらいということでしょう。

このように、EC購買が進む時代においては、在庫と物流がカギを握ることになりますね。

この点に早くから投資をし続けているのは、ネクスト。

同社は自社商品以外のブランドも自社ECで販売したり、自社物流網に乗せて配送したりしています。更に、自社が構築したインフラを活用し、顧客向け宅配物流(フルフィルメント)や他社のECサイト運営代行まで手掛け、いわゆるプラットフォーマーとしての収入も高まって来ています。

また、物流の重要性に目をつけた、アメリカンイーグルは3PL(サードパーティロジスティックス)の物流企業を買収し、他社のEC販売商品も運び始めました。

各社の取り組みから、これからの流通はいかに物流に投資するかの時代であることも読み取れます。

最後になりましたが、

今回、ヨガやランニング用のアスレチックアパレルを販売する、いわゆるライフスタイル提案型のルルレモン社(カナダ)が世界トップ10規模になり、営業利益率21.3%!という10社中、最も高い営業利益率で成長を続けていることを指摘しておきたいです。(EC化率は前期52.0%→当期44.0%)

これまでバリューやコスパの競争であった世界の大手アパレルチェーンの一角に・・・

いよいよライフスタイル、高付加価値商品、コミュニティストアをテーマとしたチェーンが食い込んで来たのは

新しい時代の幕開けではないでしょうか?

ルルレモンのランクインを歓迎し、今後もそんな付加価値提供型の企業が成長企業として台頭してくることを期待したいと思います。

22年の最新ランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】2023年9月29日(金)WWDJAPANオンラインセミナー「「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー 

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【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、在庫管理、拡大戦略の参考にしていただける内容に仕上げました。SHEINやルルレモンなど新しい勢力を理解するにも、常勝企業の原理原則を知ることで見方が変わってくるはずです。

 「ユニクロ対ZARA」(2014年発売) を2018年のデータでアップデートした文庫本です。

 

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March 22, 2022

ZARA(ザラ)のインディテックスの2022年1月期(FY2021)決算。最高益間近の回復力の源泉はオムニチャネル施策と・・・

Zara-london_20220322193601先週、ZARAを展開するインディテックスグループの2022年1月期決算発表がありましたので目を通しました。

売上高 3兆5835億円 前年比135.8%、前々年比98%
粗利率  57.1% (+1.7%)
営業利益 5,536億円 前年比284.1%、前々年比89.7%
営業利益率 15.4%(+8%)

ユーロ=129.3円換算

世界がパンデミックに見舞われている状況の中
世界アパレル専門チェーンの中で売上・利益とも世界一の座を引き続きキープしました。

四半期ごとに見ると 
1Q (2月~4月) はパンデミックで苦戦しましたが、
2Q(5月~7月)と3Q(8月~10月)の2四半期は過去最高売上と最高利益を更新
4Q(11月~1月)はオミクロン株による主要国のロックダウンがあり苦戦

4Q の失速で通期では過去最高業績だった2019年には届かず。

売上高と営業利益は届きませんが、

粗利額だけ見ると過去最高額を更新したことに目が止りました。

粗利額は過去最高なのに、なぜ、営業利益が届かなかったかの要因として

4Qのオミクロン株による店舗閉鎖の影響により、

急遽 在庫消化のためにかけた販売管理費が大きかったため、

結果、2019年に勝る営業利益が残せなかったことを挙げています。

決算明けの2月以降は過去最高水準を更新しているとのことです。

決算を見る限り、すでにコロナ前の水準を上回る販売パワーを回復したのは間違いなさそうで、

それに大きく貢献したのが、全世界の全店舗で店舗とオンラインの完全統合、

つまりオムニチャネルプラットフォームの構築の完了です。(これは当初計画より1年早い完了です)

要は、店舗売上は2019年比で8掛けまで落ちたままですが、

ECが売上比25.5%まで伸び(前年比で114% 2019年比では2倍)、

店舗単体の売上減少分をECでしっかりカバーしている状態です。

もっとも、もう、店舗売上がどうだ、EC売上がどうだ、と言っている時代ではありませんね。

お客様の需要にあわせて、在庫がある商品をどこからでも提供すればいい話であって、

同社ではそれを可能とするプラットフォームが完了したという話です。

今回のレポートを読んでいて、一番印象に残ったのは・・・

アメリカ合衆国(USA)の売上の伸びが大きく、同社が展開する世界98カ国の中で、

USAの売上がスペイン国内に続く、第二の売上を稼ぐようになったという一文でした。

USAの具体的な金額は公表されていません。

インディテックスのスペイン国内の売上比率は14.4% (8業態で1267店舗)あり、圧倒的だと思いますが、

アメリカ合衆国にはZARAが99店舗あるのみ。100店舗以上展開する国はほかに10カ国はあります。 

H&Mにしても、アメリカの業績は絶好調と言いますが、EC売上比率が高いにしても

いったい、アメリカのZARAの店はどれだけ売るんだい!と思ったものでした。

ちなみに、セグメント別情報を見ると 

ZARA(ザラ)業態は売上高、最終利益共に、過去最高を更新した模様です。

やはり、世界中のアパレルチェーンにとって、

インディテックスはこの業界最高のベンチマーク先のひとつだな、と感じたものでした。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】店舗とオンラインの完全統合を果たしたZARA。ZARAはどうして、いち早く市場に対応できるようになったのか?その背中を見ていれば、まだまだ、追随するファッション企業がやるべきことはたくさんありそうです。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

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