いつも楽しく読ませて頂いている日経MJ連載の鈴木敏仁さんの「米国流通現場を追う」
先週はアメリカで存在感が高まる中古ファッション商品のオンラインリセール販売企業についてのコラムでした。
アメリカの中古ファッション品のオンライン販売の大手は
一般ユーザーが手放そうとする所有アイテムの販売代行をメインとする
レディース、キッズの低価格帯から高価格帯まで有名ブランドを扱う
thredUP スレッドアップ
ラグジュアリーに特化した
The real real ザ・リアルリアル
日本のメルカリのように一般ユーザーにファッション商品に特化してCtoC売買のプラットフォームを提供する
ポッシュマーク
などがあり、これら3社はいずれも上場企業です。
このうち、スレッドアップのビジネスモデルを紹介すると、
着なくなったファッションアイテムを手放したいユーザーから送ってもらい、
スレッドアップの倉庫で販売可能かどうか、商品を検品した上、
一定期間 預かってオンライン販売開始、
その間に売れたら販売手数料をとって代金を出品者に支払う
販売できないと判断されたもの、あるいは一定期間売れなかったものは、
ユーザーに返却するか、寄付するか、リサイクルに回すという選択肢があるようです。
この間の買い手とのやりとりはスレッドアップが代行する、というものです。
同社の決算書のPLやBSを見ると
売上の内訳は販売代行分が75%、自社在庫販売分が25%の割合のようです。
BSを見ると、在庫日数105日分の自社在庫が計上されていますね。
上場企業ですが、規模の拡大と共に、まだまだ赤字も膨らんでいる状況です。(これは同業のザ・リアルリアルも同様)
将来性を期待して投資された、投資家からの調達資金は、
ユーザーから送られた商品の検品、在庫管理、オンライン販売の自動化のシステムなど、
主に事業拡大のための自動化に投資されているようです。
やはり、面白いなと思ったのは、鈴木さんがコラムで取り上げていらっしゃる、
自らが構築した中古販売のプラットフォームをブランド企業に提供する動き
=RaaS(リセール・アズ・ア・サービス)という取り組みです。
※ Resale as a Service (RaaS) はスレッドアップ社の登録商標のようです。
ブランド側はサイトにスレッドアップの中から自社ブランドに特化したサイトを埋め込み、
中古品も取り扱っているように見せることができます。
ユーザーが着なくなった同ブランドの服を回収し、
将来、ブランドでの購入に使えるクレジット(クーポン)を付与
ユーザーから送料スレッドアップ持ちで送られて来た商品は、
査定から販売およびその後の処理までスレッドアップがすべて請負うようです。
サイトを見ると、アディダス、バナナリパブリック、アバクロ、メイドウェル、アンソロポロジーなど著名ブランドが参加、
また、鈴木さんが驚かれていたように、
なんと、ウォルマートのECサイト内にも、
ブランドに関係なく、ラグジュアリーブランドから低価格ブランドまで、たくさんのブランドの中古品が販売されている格好になっています(実際には裏でスレッドアップが販売代行)。
スレッドアップのサイトにも、ラグジュアリーブランドに特化するザ・リアルリアルのサイトにも
共通して掲載されているアメリカでの服の廃棄問題についての情報をご紹介しておきましょう。
アメリカ人の2人に1人は着なくなった服をゴミとして捨てる。
そのうち73%は焼却されるか、埋められることになる。
実は、その93%はリサイクル可能なのにも関わらず。
捨てるのではなく、(私たちリセール企業に)再販のために手放してくれれば、
あなたが使わなくなったファッションアイテムは第2のユーザーに引き継がれ、
商品としての寿命を2年以上伸ばすことができる。
としています。
このサービスを利用するスレッドアップと提携するブランド企業側のメリットとしては、
これまで通り、新品だけを販売し続けるだけではなく、
大量消費、大量廃棄時代に、ユーザーが着なくなったものに対しても
配慮をしているという姿勢を示すことができること。
ユーザー側も、新品だけでなく、
状態がよい古着も、ブランドを購入する際の選択肢に加えることができること。
更に、ブランド企業側にとって、
中古品がブランドに相応しくない、手放され方、売られ方をするよりは、
どんな商品がどのような状態でユーザーから手放されるのか、販売されるのか、
目が届く範囲で購買行動と共にモニターができる、
というメリットもあるでしょう。
このような、「つくる責任、つかう責任」に関与しようとする企業活動に対して
自社で取り組むブランドもあるようですが、
自社で取り組むにはコストがかかるため、スレッドアップのような企業と組むという選択肢もありなのでしょう。
かつては中古品は新品販売と競合するため、関知しない、ことがファッション企業の常識でした。
これに対して、筆者は、拙著「アパレル・サバイバル」(2019年2月出版)で
ユーザーが使った中古品と言えども、外車流通がそうであるように、
ブランド企業自身が流通に関与する時代がやって来てもおかしくない、
中古品は状態をメンテして、ブランドのエントリー商品に位置付けることができるかも知れない、
むしろ、ブランド側は今後、積極的に関与することを考える時代が来る
そんな主旨を問題提起させて頂いたものでした。
現在、日本では、
ZOZOTOWNが新品と同じサイト内で、
ZOZO社が下取りして買い取ったブランドのUSED商品を、
同じブランドの新品販売のすぐ隣にあるタブ違い(新品/中古)で販売しているのはご存じの方も多いと思います。
中古品(USED)が購入の選択肢に入り、服の寿命が長くなることは・・・
マクロ的に見ると確かに新品マーケットの規模縮小に繋がることは否めませんが、
それは過去の企業視点の発想であって、
捨てることを前提とした消費から脱却したい、という若い世代が増えて来るにつれて、
その循環を企業がみずから管理するのか、パートナー組んで行うのか、引き続き関与しない、と決め込むのか・・・
この選択は今後、避けては通れない論点であることは間違いないと思います。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
【オススメ本】 企業はつくって売るだけではなく、これからは企業も顧客のクローゼットのワードローブの循環を手伝う時代。著書の後半部分ではそんな循環型社会の幕開けについても述べています。