October 11, 2021

ユニクロがEC注文後、2時間で店舗受取りできるサービスを開始

Uq-tokyo-2_2021101111470110月9日の日経新聞や10月10日の日経MJによれば、ユニクロはEC注文に店舗在庫を引きあてることができれば、顧客の注文後、最速2時間で注文商品を店舗で受け取れることができるサービスを始めたことに関する記事が掲載されていました。


以前はEC注文はEC向け倉庫からの宅配または、店舗受取りだったため、注文後、受け取りまで数日かかっていたものを受取りスピードを大幅に短縮するサービスになります。


同時に、ユニクロ側にとってはECビジネス拡大時代の最大のコスト増となる、「倉庫での個品配送作業費」および「個別配送運賃負担」の軽減になります。


同社では、すでに中国で同様のサービスを提供しており、日本では中国での検証を踏まえた上での実装となるようです。


2019年2月に出版した「アパレル・サバイバル」でも述べましたが、


EC倉庫から宅配または翌日店舗受取りを提供する英国、


国土が広大なため、店舗在庫をオンライン注文してもらい、顧客に引き渡すアメリカ、


諸国の物流事情によって、EC物流は発達して来ました。


そして、近年、欧米さらに中国で主流になりつつあるのは・・・


店舗のMFC(マイクロフルフィルメントセンター)化です。


EC注文を店舗在庫を引き当て、店舗から発送あるいは、顧客に取りに来てもらう、というサービスで、


顧客がオンラインとオフラインを行き来するオムニチャネル(OMO)時代において、


ローカル店舗をローカル需要の身近な物流拠点にしようという発想です。


そして、顧客は、宅配が前提だったEC から、より持続可能な、


顧客が自身の都合で、店舗に商品を取りに来る、というオプションが広がります。


但し、これらは、店舗が大型なのが前提になるでしょうから、


それをそもそも想定していない、商業施設内の小型店舗にそれを強いるのは大きな負担となるかも知れません。


ZARAやユニクロや無印良品の店舗の大型化も、そんな流れを視野に入れた動きですので、是非、注目しておいて、下さい。


先週登壇させて頂いた、


オムニチャネル時代の販売管理&EC向けクラウドシステムを提供するアイルさんのセミナーでは、


ECのボトルネックとして、店舗販売との①商品登録、②販売管理費負担、③集客の違いについて、


ここ数年、関与先とご一緒に考えて来たECとの向き合い方をベースにお話しをさせていただきました。


EC販路の売上を、ただただ、増やせばいい、では儲からない、


やはり、顧客購買行動と在庫と損益のバランスこそが、小売ビジネスにおいて大事であることは言うまでもありません。


最後までお読み頂きありがとうございます。


 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩


【おススメ本】進化するユニクロとZARAを通じて、ファッション流通の未来を考えるビジネス読本。


 「ユニクロ対ZARA」 2018年までのデータをアップデートした文庫本








 

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September 13, 2021

EC拡大時代のダンボールゴミを減らす配送サービスの取り組み

32cimg0465_202109141309019月8日の繊研新聞に、アメリカで複数のブランド、ストアにオーダーしたEC注文に対し、顧客ごとにまとめて、1つの梱包することによって、家庭で出るダンボールゴミを削減する配送サービスについて書かれた記事が掲載されており、興味深く読ませていただきました。

日本でも多くの方がこの1年半、ECショッピングを増したことと思いますので、宅配業者さんが荷物を届けてくれた後のダンボールゴミの処理が面倒だったり、

リサイクルできるとは言え、毎回出るダンボールゴミの山を見て、これっていずれは問題にならないのだろうか?と感じていた方も少なくないでしょう。

筆者も正しくその一人です。

記事によれば、そのサービス「オリーブ」を立ち上げたのは、かつてWalmartに買収されて、今や同社の中で、全米小売業において最も積極的なEC関連の投資、取り組みを先導している、ジェットドットコム社の創業メンバーのおひとり。この方は、買収された後もしばらくウォルマートでも勤務されていたようです。

要はアメリカの物販ECビジネスを最も熟知した方のお一人と言ってもよい方が立ち上げたソリューション型のサービスというところも興味深いです。

このサービスの流れは以下の通りです。

顧客から「オリーブ」のサイトまたはアプリ経由で同サイトの登録ブランドに注文された商品は、

 ↓

各ブランドまたはストアの倉庫から「オリーブ」の
配送センター(コンソリデーション+リサイクリングハブ)に届けられ、
(現在ニュージャージー1か所、カリフォルニア州1か所)

 ↓

そこで顧客ごとに「オリーブ」専用折り畳み式再利用ボックスに詰められ、

 ↓

エリアにより、週1回または2回の決まった曜日に着くルート配送便で自宅に届けられる。

そして、要を終えたボックスは同じ翌配送曜日に家の前に出しておけば、「オリーブ」が回収して行くというものです。

ブランドから「オリーブ」のハブに届く時に使われたダンボールはオリーブ側からリサイクル業者にまとめて引き渡されて処理され

この一連のサービスに対して、オリーブ側は売り手から売上の10%を手数料として徴収するそうです。

 

「オリーブ」の創業はコロナ禍の20年4月、

半年で、百貨店のサクス・フィフスアベニュー、専門店のアーバンアウトフィッターズ、アディダスやアシックスのようなスポーツブランド、ヒューゴボス マイケルコース アグ などなど 100以上の百貨店、専門店、ブランドが参加するようになったとのこと。

EC拡大時代の顧客のお困りごと、環境保護意識に対するサービスですが、どこまで広がるか、興味深いですね。

利用者、利用企業が増えれば、企業負担、手数料も下がって行くかも知れません。

日本では、宅配便業者さんが進んでいるので、そんなサービスを考えてくれるかも知れません。

家庭で出るダンボールの量は遅かれ早かれ問題視されると思いますので気にとめておきましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 09, 2021

ファッションストアはどう生まれ変わるのか?

20210716_184300-18月8日の日経新聞に、外食産業のコロナ後に向けての対策に関する記事が掲載されていました。

店舗の売上が32%減少し、持ち帰り需要が下支えしたため、持ち帰りの比率は34%に上昇。
(20年は店内飲食61%、持ち帰り34%、宅配5%だった模様。)

産業全体が今後も全体の30%程度は持ち帰りになることを予測して、外食産業各社がどんな投資をしているかについて紹介されていました。

・大手各社はモバイルオーダーアプリ(事前注文、事前決済、店舗受取り持ち帰り)を導入し、

・店に入らなくても専用窓口から受け取れるように厨房の配置を変え、店舗内の座席は減るが、持ち帰りの利便性向上を優先させる店舗もあれば・・・

・ドライブスルーを持つ店舗では、調理能力を2倍にした厨房設備の導入を進める

・持ち帰り専用お得メニューを用意して売上を伸ばした

などなど、顧客の購買行動の変化に対応した設備投資の事例が紹介されていました。

余談ですが、メディアで注目されたUBER EATSなどの宅配は、あれだけ騒がれてもシェア5%程度の構成比。

記事でも触れていますが、顧客は便利でも、飲食店側の手数料負担が大きく、配車サービス側もシェア争いのために儲かっていないため、少なくとも日本の現在の手数料構造のままでは、ビジネスモデルをデリバリー専用に設計し直さなければ持続可能なビジネスモデルになるとは思えません。

従って、店内飲食が前提だったビジネスにおいては、飲食店側に負担が少ない、持ち帰り対策が業界のこれからの焦点になるようです。

さて、これに対して、

ファッションストアは、コロナ後に顧客購買行動がどう変わると予測して、どんな投資を行うのでしょうか?

また、

「ファッションは外食産業(異業種)とは、違う」 

で議論を終わらせて、思考や行動を先送りしさせてしまっていいのでしょうか?

ファッションストア以上に苦戦を強いられた外食産業も上記のようにアフターコロナに向けて動き始めているのです。

 

ファッションストアの今後を考える上で、

まずは、顧客の購買行動の変化を予測することから始めるべきでしょう。

そして、そんな購買行動のために、どんなデジタル投資をしたり、店舗をどう設計し直すのか?を考えたいところです。

・来店前に顧客が事前情報を取れるようにし、来店後はスムーズに商品確認が出来たり、接客を始めることができる

・店舗での顧客の拡張体験を提供したり、店舗の品揃えや情報を補完するために、タブレットや顧客のスマホアプリを活用する

・タブレット接客や決済を前提とし、店内でスペースを取り過ぎているレジスペースをできるだけ小さくする

・その分、フィッティングルームを拡充し、顧客が落ち着いて試着ができるスペースを確保する

 (在庫が増えるので、ストックを大きくし過ぎてはいけません(笑))

・店舗スタッフも顧客自身も手軽にオンライン配信できるスペース、環境を整える

・顧客が着なくなった服を回収し、リユース、リメイクの循環を回す ・・・

これらは、いずれも、国内外で取り組みが始まっている事例です。

まずは、顧客購買行動の変化に対応した事例を自ら体験し、顧客の立場になって

どうしたら、ストレスが無くなるか?快適になるか?を考えてみることでしょう。

異業種からも学ぶことはたくさんあります。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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July 05, 2021

ユニクロの製造業へのチャレンジ~東雲イノベーションファクトリーの全貌が明らかに

20210705_075525ユニクロを展開するファーストリテイリングが先週の始めにメディア関係者に公開した、

「有明プロジェクト」のひとつ、東雲(しののめ)のイノベーションファクトリーに関する記事が
6月30日の日経MJと7月1日の繊研新聞のそれぞれ本紙と6月30日のWWDJAPANオンラインに掲載されていました。

WWDJAPANの記事が結構、詳細で現場の様子がよくわかります。

ユニクロが東京に自社工場 製造業進出で「すぐに作って売る」
(注:こちらは有料記事になります。)

このイノベーションファクトリーはもともと島精機(和歌山)が開発した無縫製ニット編み機=ホールガーメント機を活用して、
地産地消のニット製品の生産販売を行うべく島精機とファーストリテイリング(以下FR社)が和歌山に合弁で設立した製造子会社で

FR社が主導権を取って本腰入れるために、
出資比率を当初のFR:島精機 49%:51%から 51%:49%として、
3カ月前に和歌山から、お膝元の東京有明近くの東雲(しののめ)に移転したものです。

場所は有明本部から10分ほどの3階建て4700㎡(1424坪)の印刷工場跡地
そこに40台のホールガーメント機を置き、65人の従業員がいるそうで
1日1000枚(単純計算1台あたり25枚)の生産が可能だそうです。
将来的には100台にまで持って行く計画もあるそうです。

それぞれの記事を読んだところ

これまで、工場を持たずに協力工場に生産委託するスタイル(ファブレス)を強みとしていた
ユニクロが、初の自前工場で製造業へ進出、というのは少々大げさな話で・・・

実際のところは、本社の身近なところに、

量産工場と連動したサンプル工場あるいはテスト生産工場が出来たと見るべきだろうと思いました。
(FR社は「3Dニット生産の世界のマザー工場」と言っています)

まず、FR社の有明本部の5階にホールガーメント機4台を置いたサンプル作成用のアトリエがあるそうで、
そちらで試作用にプログラミングしたデータを東雲工場に転送し、
実際に販売できる商品化を行いながら、量産に対応できるように調整しているようです。

WWDJAPANや繊研新聞の記事に寄れば、

東雲で、行っているのは、

・糸の巻替え(糸の中にあるゴミなどのまぎれ込みを取り除くための行為)
・編み立て
・糸切れ直し
・稼働点検
・製品補修
・洗濯と乾燥
・アイロンがけ
・タグ付け

要は、糸から製品の形になる、編み立て自体(パーツを組み立てるリンキング工程は不要)は
ホールガーメント機が24時間自動で行ってくれますが、

準備工程である

●編み立てのプログラミング(ここが時間がかかるといわれています)
●ホールガーメント機にかけるまでの糸の品質確認とセッティング や

編み立中の

●稼働中の点検、
●糸の切り替え、

編み立て後の

●製品補修、
●洗濯、乾燥、
●アイロンがけ、
●タグ付け

などは、やはり、人がやらないといけないようなので・・・

東京の人件費を考えた場合、

ユニクロ価格のニットのプライスレンジの上限で販売したとしても、
試験販売用の商品原価では儲けはあまり出ないのではないかと思われます。

ここからは、記事を読んだ上での、筆者の解釈ですが、

この東雲イノベーションファクトリーの目的と役割は

まず、第一には

◆サンプルづくりから量産までの工程研究および時間短縮

ホールガーメント機の海外での大量生産前に
海外量産工場で起こりうるトラブル解消や作業の効率化の研究を行い
生産のボトルネックや起こりうるトラブルを事前につぶしておくことで
生産のスピードを上げ、不良品率を下げることができるのではないか。

次に、

◆的中率を高めるための試験販売用の商品づくり

商品企画者のアイデアの元、東雲でつくった少量製品を
銀座のUNIQLO TOKYO 店などで試験販売し、
売れ行きを見て、海外での量産の発注数の参考にするそうです。

また、

◆追加生産入荷までの国内QR生産による繋ぎ商品供給

量産での販売が計画に対して上振れして、
海外に追加生産をして、海外からの商品供給が間に合わない時の
一時的な売場の穴うめ、繋ぎ用商品在庫の供給を担うことができるようです。

従来であれば、

量産をする海外工場に仕様書を元にサンプル作成をして送ってもらい、
チェック、修正を繰り返していた流れから・・・

企画担当者やデザイナーが有明本社の5階のアトリエ(4台)でつくり、
東雲工場で量産向けにテスト生産を行って確かめた上で

海外の量産工場にサンプル、プログラミングデータ、工程上の注意と共に提供すれば、
生産の効率化が期待できる。

この流れの主導権を持った革新が、同社が 

「従来3ヶ月かかっていた仕事を1か月に短縮したい」

という話の背景にあるはずです。

各社の報道を読みながら、思ったのは、

アパレル生産のサプライチェーンのボトルネックのひとつである
「サンプル確認」工程をユニクロがコントロールできるようになったこと。

そして、

あくまでもホールガーメント機を使ったニット製造に限りますが
製造中に起こりうる問題点の解決策を
東京から世界の量産工場に具体的に提示できるようになったこと

この2つには大きな意義があります。

ZARA(ザラ)が本社デザインルームに布帛アイテムのためのアトリエを持ち、
自らサンプル作成を行って工程上の問題点を認識し、
量産素材の裁断を手掛け、
どこでも縫えるような形にして、
縫製工場に縫製(アッセンブル)委託をすることで
サプライチェーンのボトルネックを解消しながら、スピード生産を実現していますが、

ユニクロが、そのあくまでもホールガーメントニット版に限りますが、
踏み出したということを意味します。

次に、的中率を上げ、無駄な在庫をつくらないように・・・

店頭で顧客の反応を確かめてから量産数量を決定することができる、
試験販売用のサンプル工場を持ったこと。

これは、今はどうされているか不明ですが、

レディースカジュアルSPAのハニーズが2000年代の全盛期に
福島にサンプル作成と店頭試験販売用のサンプル工場を持っていて、
一部の店頭で試験販売をした上で中国に量産発注をしていた話を思いだしました。

また、古くは、米リミテッドストア(現Lブランズ)が
バイヤーたちが世界中で買い付けたサンプル商品にリミテッドのネームを付け替えて、
都市部の3店舗で試験販売をした上で、顧客の反応を見て
アジアに量産発注し、出来上がった商品は空輸でアメリカに持ち込み、
全店展開して的中率を上げていたという話を思い出しました。

ユニクロが自ら量産を手掛けるわけではありませんが、

大量につくって、徹底的に売り切る、というビジネスモデルから・・・

的中率を上げ、サプライチェーンのボトルネックの解消のために
製造工程に大きく足を踏み入れたという点においては、

とても意義のある、大きな前進であると感じました。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】ユニクロはZARAを超え、世界一になれるのか?両者の過去から未来への、経営者の経営信念、ビジネスモデルとその変遷を理解すれば、見えて来ます。

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June 28, 2021

大量生産、過剰在庫、大幅値下げからの脱却~どうしたら値下げを抑えることができるのか?

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ファッション小売業の皆さんはどのように商品の販売価格を決めているでしょうか?

そんな質問をすると、

・仕入れ先から提示された仕入原価に対する倍率(3~5倍)を小売販売価格の目安にする
 =原価積み上げ方式

・競合他社の販売価格を参考に、その価格を少し下回るように設定する
 =他社対比方式

という答えが出てくるかも知れません。

しかし、これまで、業界の勝ち組と呼ばれて来たブランドは、そういった企業の都合ではなく、お客様が納得する、わかりやすい価格をつけて勝ち残って来たことは、

拙著

「人気店はバーゲンセールに頼らない」

「ユニクロ対ZARA」

などの価格戦略の章で解説した通りです。

 

お客様が、この価格なら、今すぐ買いたい、と納得する価格設定=適正価格とは?

これは商売の永遠のテーマのひとつですが、

業界の中でチェーンストアが採る価格設定の主流は次の2つのパターンと言えるでしょう。

ひとつは、市場最低価格戦略

最低価格と言ってしまうと、下には下がありますが・・・
多くの人が納得する品質が保たれることを前提とした最低価格をつけ、
その価格帯でコスパを競う戦略です。

この戦略の最たる例はユニクロです。

しかし、ここで勝負するのは、レッドオーシャンに飛び込むようなもので、明確な差別化ができない限り

大資本が圧倒的有利であることは間違いありません。

もうひとつは、相対的低価格戦略です。

よく知られたブランドや、百貨店のポピュラー価格のような、

市場や業界の中に、「そこそこ良いもの」と顧客が認知している「スタンダード」のような品質と価格バランスがあって、

それと近しい満足感をそれらの価格の7~8がけ(≒バーゲンスタート価格)や半額など、

顧客が思わず、お得感を感じて購入してしまう価格で提供する戦略です。

前者ほどは価格も安すぎるわけではないので、

そこそこよい素材も使えますし、ちょっとした付加価値で差別化できます。

この戦略を採る典型例は、ZARAでしょうか。 

セレクトショップのオリジナル(PB)や著名ブランドのディフュージョンブランド、セカンドブランドもそれにあたるかも知れません。

いずれにせよ、顧客にある程度、認知されたスタンダード(基準)が存在し、

それに対して割安感が感じられれば、顧客も納得しやすい、というものです。

このように品種別に顧客が期待する、販売価格を探り、

その価格を最多価格帯(プライスポイント)として設定し、

設定された価格(プライスポイント)の制約の中で、最大限のコスパを発揮するものづくりを行う。

それが、いわゆるプライスポイント戦略の本質です。

なぜ、値下げが増えるのか?

を議論する時、

まずは、プロパー価格(定価)設定がお客様にとって、適正価格だったのか?を問う必要があるでしょう。

冒頭に述べた、原価積み上げ方式の場合や最初から値下げを前提とした、割増価格設定を行っているなど、

顧客不在の、企業都合の価格設定が行われていると、多くの顧客に支持されず、そのプロパー価格が通らない事態になるでしょう。

また、売れなければすぐに値下げをすればよいと考えるブランドは、

自身が迷走しているだけでなく、顧客もいくらがそのブランドの適価なんだか、わからなくなっている可能性が高く、

すぐに下がるであろうと、価格が下がることを待つことでしょう。

割引キャンペーン頼みになっていたり、失策による早期売価変更が多いブランドは、そこに陥っているのではないでしょうか?

販売期間の短いシーズン商品を扱うファッション専門店は、

予測がすべて当たるわけではないので、外れた時のためにある程度、値下げ余力を確保しておくことは、

企業のリスクマネジメントとしてあたりまえのことです。

しかし、それも、適度にしておかないと、顧客からの価格の信頼性は保てません。

値下げをよくするブランドというブランドポジショニングもありかも知れませんが、それも、いかがなものかと(笑)

そして、確保した値下げ余力(予算)の範囲内で、値下げをどうコントロールするか、も企業の利益管理の技術のひとつです。

そもそも、どれだけ値下げをしても大丈夫なのかを具体的に金額でつかんでいるのか?
値下げ予算というものがあるのなら、その根拠や運用ルールは?

そんなマネジメントなくして、無防備に、売上促進や消化のために値下げに突入するのでは、残せる利益も残せませんね。

適正価格をつけて売り切る、それでも外れるものは、想定範囲で値下げをして処分してリセットするのが王道でしょう。

大幅値下げをしても儲かる、残在庫を評価損しても、まだ儲かる・・・

そのために、大量に安くつくる、という行為が時代に合わなくなってきた昨今。

あらためて、顧客に喜んでプロパーで買ってもらえる適正プライスは?の問いに向き合い、
リスクマネジメントの範囲の値下げ枠内で値下げが管理ができる技術を身に着けておきたいところです。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】
7月13日(火)売上・粗利・キャッシュフローを最大化する在庫分析クラウドサービスの開発・提供をするフルカイテン社主催オンラインセミナーで、これからの価格戦略、値下げ抑制戦術をテーマにしたセミナー・対談に登壇します。参加費無料。お申込みはこちらから。https://full-kaiten.com/seminar210713Furukaiten-713

 

 

 

 

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April 12, 2021

しまむら2021年2月期決算、ローカル地域密着対応とインフラを活かしたデジタルシフトが今後の成長のカギ

Photo_20210413183801前回の世界アパレル専門店売上ランキングトップ10の10社の中で、唯一増収増益で、7位に食い込んだ、しまむらの2021年2月期の決算関係書類に目を通しました。

連結で
売上高 5,436億円(前比4%増)
営業利益 380億円(同65%増)
営業利益率 6.7%

国内事業(個別)で
売上高 5,366億円(同4%増)
営業利益 382億円(同62.7%増)
営業利益率 7.1%

連結と国内事業の差が主に台湾事業で、中国からは昨年10月末に全店撤退しています。

同社もコロナ禍で第1四半期は散々でしたが・・・

第2四半期の6月以降は郊外立地中心の低価格チェーンということもあり、大きく回復し、コロナに見舞われた1年だったにもかかわらず、3年連続の減収減益に終止符を打った決算でした。

販売効率を下げながら、出店を続けていた、過去3年の失策と比べると、
店舗のスクラップ&ビルドを進め、もともと得意だった小ロット短納期生産による商品回転により、値下げをコントロールできたことが、増益要因としています。

やっぱり、多品種、小ロット、短サイクルの方が、「しまむら」らしいですよね。

しかし、過去5年間の業績を並べて、4年前の2017年2月期の売上高および営業利益のピーク時と比べると・・・

売上高は4年前(ピーク)対比95.9%、営業利益 同77.6%の水準なので、まだまだ復活というより、回復途上といったところでしょうか。

しかも、店舗および売場面積が2017年2月期対比、4年間で5%増えているにもかかわらず・・・1店舗あたり売上高、あるいは月坪売上高と言った販売効率が14%下がっているのを見ると、

メインの「ファッションセンターしまむら」は、そろそろ出店余地も限られていると思うので、成熟期にふさわしい、店舗数よりも、1店舗あたりの販売効率を回復させる経営が求められますね。

但し、ファッションセンターしまむらを筆頭に、各業態、店舗あたりの売場面積の標準化が徹底されているので、増床戦略というよりは、1店舗あたりの売場面積を広げ過ぎないように

〇販売効率が上がる好立地への移転

〇EC店舗受取りの拡大による来店促進

あたりが改善のカギになりそうです。

 

今回決算書を見ていて、一番注目したのは、まず、

1)「ファッションセンターしまむら」業態の中でどんな部門の売上が伸びているか?

また、

2)その他の業態の伸びしろを知ることでした。

同社が決算ごとにリリースしている「決算概要」は、同社のデータブックにあたりますが・・・

その中の部門別売上高・粗利益率のデータを過去5年時系列で並べて、各部門の推移を見ながら、なるほどと思ったのは、

「しまむら」業態の中で、婦人衣料や紳士衣料といったアパレル部門はここ数年売り上げの減少が続いており、伸びているのは、ベビー子供服やインテリアだということ。(直近1年もそうです)

つまり、しまむらは低価格だから、婦人・紳士アパレルがよく売れているか、と言えば、決してそうではなく、それらの減少をカバーしながら、売り上げを伸ばしているのは、大人衣料以外の部門だということです。

次に業態別でいうと、伸びしろを感じるのは、ファッションセンターしまむらやアベイルではなく、第3の業態、バースデイ(雑貨マタニティ、キッズ、ベビー衣料)業態です。

新規出店もありますが、それ以上に総売上、販売効率が伸びているのがわかります。
(4年前240店舗→21年2月末298店舗、4年前比24%増、に対し、売上高は33%増)

つまり、同社には、地域に密着した、更に、「家(おうち)」寄りの、実用的な商品に強みがある、とあらためて感じたものでした。

中国全面撤退に見られるように、海外進出は期待できない、同社ですが、

地に足をつけ、ローカル対応に更に磨きをかけながら、

また、急成長は望めませんが、

国内No1と言ってもよい、店舗網、物流網、独自開発のITのインフラを活かしたチェーンストアとしての安定感と利益体質づくりに磨きをかけて行くことを、

今後とも注目して行きたいと思います。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫最適化を考えるビジネス読本、しまむらの強みも何話かで解説しています。

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

こちらは電子書籍 Kindle版 です。紙の本の在庫が少なくなりました。ご希望の方は弊社までご連絡頂ければご対応いたします。

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April 06, 2021

世界アパレル専門店売上ランキング2020 トップ10

4cimg0441 世界中がパンデミックの影響を受けた2020年度。 世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃い、売上高や営業利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高ランキングTOP10を共有させていただきます。

 円建て比較にあたり、為替レートは2021年1月末の €=127.04円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=104.21円、英国£=142.95円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 前年増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2021.1期) 2兆5,918億円 -28% 1,914億円 7.4% 6,829 ZARA
2位 H&M (瑞;2020.11期) 2兆3,453億円 -20%  388億円 1.7% 5,018 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2020.8期) 2兆0088億円 -12% 1,493億円 7.4% 3,630 UNIQLO
4位 GAP (米;2021.1期) 1兆4,380億円 -16% -898億円 赤字 3,715 OLD NAVY
5位 Lブランズ (米;2021.1期) 1兆2,344億円 -8% 1,645億円 13.3% 2,669 Bath&Body Works
6位 プライマーク (愛;2020.9期) 8,436億円 -24%  517億円 6.1% 384 Primark
7位 しまむら (日;2021.2期) 5,426億円 +4%  380億円 7.0% 2,199 しまむら
8位 NEXT (英;2021.1期) 5,183億円 -17%  548億円 10.6% 491 NEXT
9位 アメリカンイーグル (米;2021.1期) 3,917億円 -13% -282億円 赤字 1,078 AEO
10位 アーバンアウトフィッターズ (米;2021.1期) 3,594億円 -13%      4億円 0.1% 645 Anthropologie

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアは過剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンC&Aおよび中国で急成長中の越境ECファストファッションSHEIN(シーイン)あたりもTOP10にランクインする規模と思われますが、それぞれ、売上高がつかめなかったため、除外しております。                              

【解説】

全体を見渡すと、経営破綻した米アセナリテール(前年7位)が消え、10位以下に控えていたアメリカ企業がランクインした格好ですが、上位6位までのランキングは2019年と変わりはありません。

以下、1位から5位について、そして、気になるところにコメントさせて頂きますね。

1位のインディテックスは

通期コロナの影響を受けて大幅減収、減益も、7.4%の営業利益率を上げたのはお見事でした。

全世界の店舗でRFIDの導入と各国EC在庫と店舗ストックルーム在庫の一元管理が完了し、世界のどのアパレル専門店よりも、いち早くオムニチャネル化が完成した、と言ってもよいでしょう。

EC売上比率は店舗の売上減もあって33%に。これからは同社のDXは顧客のスマホを使った店舗での拡張体験へ、そして、次のテーマである、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に力が入ります。

関連エントリーーZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。

2位のH&Mは

第1四半期に売上、利益の改善が見れたものの、その後、3つの四半期がコロナの影響を受けて、大幅減収、減益も、何とか黒字着地させた経費コントロールと仕入コントロール力はさすがです。

店舗閉鎖の影響もあり、EC売上比率は28%に。

これからは、遅れていたデジタル化へのアクセルが回復のカギとなるか?それとも、やはり、低価格品はECでは損益が取りづらく、苦戦するのか?注目の1年になります。

関連エントリーーH&Mとインディテックス(ZARA)の決算進捗に見る パンデミックの欧州グローバルチェーンの業績への影響

3位のファーストリテイリングは

年間のうち、半期分、コロナの影響を受けながら、市場は日本、中国が中心。欧米に比べ、市況回復が進んでいるため、欧州勢よりは、有利な環境と言えるでしょう。

特に国内ユニクロ事業の第4四半期の体質改善と踏ん張りは、柳井会長の執念を感じ、目を見張るものがありました。

今期は、3月から消費税分値下げした分を、同社がどう利益を確保するのかに注目です。

関連エントリーーファーストリテイリング20年8月期決算に見る、国内ユニクロ事業の凄さ

4位のGAPは

大幅減収赤字、GAP、バナリパで228店舗閉店とリストラが続きます(GAP事業売上前比73.0%、バナリパ事業は同57.5%)。

店舗売上減で、オンライン売上は54%伸びて、EC売上比率は45%に(前年は25%)。

5位のLブランズは

ヴィクトリアズシークレット(VS)のリストラ後の見事なV字(利益)回復と言ってよいでしょう。営業利益額だけを見ると、インディテックスに次ぐ、世界第2位の位置づけです。

ヘルス&ビューティのバス&ボディワークス(B&BW)は、パンデミックに関わらず、店舗が前年並みをキープし、既存店+ECが45%増と大躍進。ECは倍増で、いよいよVSとB&BWの売上が逆転しました。

ヴィクトリアズシークレットの店舗の整理はついたようなので、今期は大幅増収増益が期待できそうです。

関連エントリーーファッション&ビューティー市場の変化を見極め、事業ドメイン転換で勝ち残る、米 L Brands(エル・ブランズ)

以下、6位以下で、めぼしいところを付け加えますと、

しまむらがトップ10企業の中で唯一の増収増益。なんと、7位に浮上です。

これは、品揃え改革(同社らしい多品種小ロット高速回転の原点回帰)によって、かつての販売効率を回復しつつあるのが大きな要因です。

一旦、かつての販売効率まで戻った後、出店余地の限られる日本国内で、どのように、収益を伸ばすのかが、焦点になります。

8位のネクストは、得意の店舗網、物流網を活かし、クリック&コレクト(オンライン注文の店舗受取り)を上手く併用しながら、オンライン売上比率が昨年の50%から65%まで高まりました。

今後、力を入れるのは、そのインフラをフル活用した、他社ブランドのEC事業(オンライン受注から配送まで)を、まるっと代行するという、NEXT TOTAL Platform戦略への取り組みとのこと。これは、興味深いです。

この取り組みは、確立されたチェーンストアとして、違った意味で、世界一のインディテックスよりも先を行っている発想かも知れません。

今後、デジタルシフト後のチェーンストアのありかたの一例として、今後、深堀りしたいと思います。

さて、まだまだ、パンデミックの影響が残る、2021年度のランキングはどうなるでしょうか。

筆者としては、ZARAのインディテックス、ヘルス&ビューティへのドメインチェンジが進むLブランズ、チェーンストアの強みを活かしつつ、プラットフォーマーとしての付加価値を追求するNEXTの3社に注目したいです。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になることでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」(2014年発売) を2018年のデータでアップデートした文庫本です。

いつもお読み頂きありがとうございます。

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March 29, 2021

ZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。

Zara-onlineZARAを展開するインディテックスグループの2020年1月期決算報告 FY2020 RESULTS

に目を通しました。

同社の決算期は2月~翌1月期なので、通期(全四半期)すべてがパンデミックの直撃を受けた1年でした。

但し、営業赤字だったのは、1Q(2-4月期)のみで

通年では、

売上高 20,402百万ユーロ(日本円換算2兆5918億円)と前年比72.9%(27.1%減)

粗利率 は前年55.9%→55.8%とほぼ変わらず

販売管理費 は 前年比83.2%(16.8%減)に抑え、

営業利益 1,504百万ユーロ(日本円換算1,914億円)前年比31.5%(68.5%減)

営業利益率は前年16.9%→7.4%と下がりましたが

営業黒字で着地しました。

インディテックス社の決算発表により、大手3社が出揃い、

2020年度の世界アパレルチェーン売上高ランキングのトップ3は

1位 インディテックス(ZARA)  1月期  2兆5,918億円(1,914億円 営業利益率7.4%)
2位 H&M           11月期  2兆3,752億円(227億円 同1%)
3位 ファーストテイリング    8月期  2兆0,088億円(1493億円 同7.4%)

に確定しました。

2019年度のランキング

世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

とトップ3の順位の入れ替わりはありません。

同社の期末店舗数は

7469店舗から→6829店 と640店舗の純減です。

内訳は閉店 751店 新店 111店 96店改装(うち45店が大型化)です。

これは慌てて閉めた、というより、中長期計画の計画通り。

在庫に関しては、期末在庫は前年よりも9%少なく、

4半期ごとに見ても前年よりも10%少ない在庫水準で回していたようです。

 

今回の同社の決算の最大のトピックはECの大幅売上拡大と世界全店舗のオムニチャネル体制の完成でしょうか。

EC売上高は77%増の6,600百万ユーロ(日本円換算 8,384億円)

EC売上比率は32.3%と前年の13.2%から急増です。

このEC売上の拡大に寄与したのが、

同社のオムニチャネル施策(Fully integrated store and online platform)のコアにある

SINT(Single Inventory Integration)というコンセプトです。

要は、各国のEC向け在庫と店舗のストックルーム(バックヤード)の在庫を一元化し・・・店舗のストックルーム在庫をEC需要の引き当て対象にできるようにした、という話です。

これをリアルタイムに可能にしたのが、RFIDの全店導入完了です。

このRFIDも、自社開発。

ほとんどの企業が使っているRFIDは、主に、値札や洗濯絵表示に埋め込まれている、安価で使い捨てのチップですが、インディテックス社の場合は、全商品に、スペインの倉庫で取り付けられたセキュリティタグの中に埋め込まれています。

丈夫で高性能、更に、回収することで、何回も再利用ができるという優れものです。(高性能、1回あたりのコスト減、リサイクルで環境にも優しい)

使えるものは、再利用をするという同社のポリシーはこんな最先端のテクノロジーにも活かされているわけですね。

話をSINT(在庫一元化)に戻しますが、

同社によれば、これが、売上高比率32.3%になったEC売上高全体の中の12%分に寄与したとのことです。

通年COVID19の影響を受けても、まだ、世界一の売上規模と利益を確保したインディテックス社。

今後、同じような、ロックダウンで店舗を閉めなければならない事態になっても、商売を継続できる体制が整いました。

さまざまな変化に対して、柔軟な対応ができる、

という世界最強クラスのオペレーション・エクセレンスを見せつけた決算と言ってもよいのではないでしょうか?

近日中に世界アパレル専門店売上高ランキング2020年版も更新したいと思います。

お楽しみに。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARA。これから進む道も、経営者の経営信念、ビジネスモデルとその変遷を理解すれば、見えて来ます。両社の比較分析が、未来のアパレルビジネスを考える上で、とても参考になると確信しています。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

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March 22, 2021

在庫情報を可視化すれば、商品チーム、販売チームが自走組織に変わる

Ministry-of-supply-pos何度かオンラインセミナーに登壇させていただいている、在庫問題を解決するクラウドサービスを提供する「フルカイテン」さんのシステム導入事例セミナーを視聴させていただく機会がありました。

3月11日のその回は通販大手フェリシモグループでhaco!を運営する株式会社cd.社の葛西社長が
同社のシステムを導入して半年で会社の在庫への取り組み姿勢がどう何か変わったのかを語る内容でした。

システム導入前までは、担当者が商品の売上・在庫判定データをExcelで加工するのに
朝から夕方まで、ほぼ丸1日かけていた作業が・・・

導入後は、データ出力が1時間程度でできるようになり、営業時間の多くが、資料の作成業務ではなく、判断とアクションを中心に時間が割けるようになった、という話から始まりました。

帳票づくりに半日以上かけている企業さんって結構あると思います。

同社によれば、
以前は当シーズンに仕入れた商品在庫こそ見ていたものの、

前シーズン以前に仕入れて売れ残った在庫は、わざわざ出力努力をしなければ、見ることができず、いわゆる塩漬けになっていたそうです。

これに対して、全在庫データが稼働状況に応じて分類された上で、販売と在庫に関わっている担当者たちに見えるようになって、
何が変わったか?というと・・・

「奥にしまってあったものが手前に出て来た」イメージで

そうすると、担当者たちに、何とかこれも販売できないか、在庫を減らせないか、という気持ちが芽生え始め、

今シーズンでも十分に着ることができる旧在庫商品を積極的にコーディネート提案に使うようになったり、

また、そんな思いと活動が、お客様への商品出荷を担っている倉庫で働く方々にも伝わり、

倉庫スタッフの発案で、倉庫発信で売れ残り在庫を売り切るためのユーザー向けライブコマース(オンラインの即売会)が開催されるようになったとのことです。

その結果、会社としては、仕入れを減らした年であったにもかかわらず・・・売上は減らず、在庫がみるみる減って行ったそうです。

今では、仕入担当者の在庫に対する意識が高まり・・・

毎年、売り逃しをしないように、ただ、たくさん仕入れるという考えたではなく、
必要な仕入れのありかたを考えるようになった。

とのことです。

haco!の葛西社長はシステムを導入すれば問題が解決する、という話ではなく、

●システムには面倒な計算をしておいてもらって、
●人がそのデータを活用してどんな判断をするか?

の役割分担だ、と話を結びます。

そして、在庫を売り切って、増えた現預金を今後、何に投じるか?に触れ、

経営陣の頭は損益計算書(P/L)から貸借対照表(B/S)に移り・・・

お客様のための場をつくり、場を改善するためのシステム投資(無形固定資産)に使いたい、と意気込んでおられるようです。

これからの時代、在庫をしっかりキャッシュに換え、システム投資を行う企業が増えることを期待しています。

実際、多くの世界の大手ファッション流通企業のB/Sを分析していると、そういうビジネストレンドが起きていることに気づきます。

見えないものは、行動に移せない。

状況が手に取るように可視化すれば、現場は工夫を始め、現状の改善が進み始めるもの。

というのは、筆者も多くの現場でビフォア/アフターを体感してきたことです。

少し、筆者の昔話をさせて頂くと・・・

筆者のアパレル小売業でのキャリアの始まりは、服飾雑貨や靴を扱う雑貨バイヤーでしたが、

着任当初は、いきなり、前任者が残した靴の過剰在庫に苦しめられ、新規仕入を全くすることができない「買えないバイヤー」の苦労から始まりました。

そんな状況の中で、週末には全店を巡回して、実際に自ら販売をしながら各店の在庫状況を確認し、

時間をかけて、各店から全店の全商品のサイズ別在庫状況が確認できるようにデータの整備を行ったところ・・・

その後は、各店のスタッフたちがお取り寄せ(客注)を活発化させ、在庫が売上に変わり、過剰在庫がみるみる減り始めたものでした。

要は、各店は在庫を減らすことに協力してくれなかったのではなく、

お客様は欲しがっていても、在庫がどこにどれだけあるかが、わからないため、やみくもに在庫照会の電話をかける訳にもいかず、取り寄せ販売ができなかっただけだったのです。

そんな過去の経験も思い出しながら、haco!さんの事例を聴いていました。

会社の在庫のことを心配しない従業員はいないでしょう。

そして、在庫量やその在処(ありか)が手軽にわかるような環境に置かれれば・・・

社員の中から、考え始め、行動に移すスタッフが出て来るものです。

これは、筆者のその後の事業会社勤務時代でも、また、

独立後に、お手伝いさせていただいた多くのコンサル現場でも・・・

在庫状況の実態の現場担当者への可視化が、変革のきっかけになることを感じて来たものでした。

これから、更に、オムニチャネル時代になって・・・

ECだけでなく、店舗、倉庫を含め、全在庫のデータが可視化され、
在庫のステイタスが、販売チーム全員に手に取るようにわかるようになると・・・

まずは、チーム全員がお客様のお買い物を手伝う情報として在庫情報を活用し始め、続いて過剰在庫の消化方法も考え始める。

オムニチャネル化(販売と在庫のデジタルシフト)の本当のメリットは、

ECという新しい販路ではなく、そんな環境が構築されることではないでしょうか?

業界全体がそんな方法に向かってゆくビジョンを持ち、そんな環境づくりが行われることを、引き続き応援して行きたいと思います。

参考:今回触れさせて頂いた、フルカイテンさんとhaco!さんのオンラインセミナーの内容は、レポートとして、こちらからダウンロードしてお読みいただけます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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March 15, 2021

ファッション&ビューティー市場の変化を見極め、事業ドメイン転換で勝ち残る、米 L Brands(エル・ブランズ)

Bbwアメリカでヴィクトリアズ・シークレットを展開する米Lブランズ社の2021年1月期決算速報が発表されたので、目を通しました。

売上高  1兆2403億円  (前年比92%)
営業利益 1,653億円  (前年比611%)
営業利益率 13.3%
($=104円換算)

コロナ禍のアメリカ市場中心の同社が減収ながら、増益という恐るべき数字をたたき出しました。

実は、前年の2020年1月期、パンデミック前にヴィクトリアズ・シークレットのダイナミックなリストラを敢行して、大幅減益としていたので、リストラを経てのV字回復なわけですが、それにしても、この規模でのこの利益は素晴らしいです。

その理由を探ってみましょう。

まず、主力業態のヴィクトリアズ・シークレットは全体の2割にあたる248店舗の大量閉店および店舗のFC移管で同事業自体の売上高は前年比72%と大幅減。

店舗とオンラインの内訳は、店舗売上高が前年比55%、残った既存店は前年比増収、そして、オンライン売上高は131%と伸びました。

一方、もう一つの主力業態である、ヘルス&ビューティー部門のバス&ボディワークスの店舗売上高は前年並み(100%)、オンライン売上が209%増と倍増し、事業全体としては前比120%の大躍進です。

この結果、ヴィクトリアズシークレットとバス&ボディワークスの2つの事業売上規模が入れ替わり、同時に、見事な復活を果たしたというわけです。
              2019年度 → 2020年度
バス&ボディーワークス      42%  → 54%
ヴィクトリアズ・シークレット   58%  → 46 %

また、この1年で、会社全体のオンライン売上比率は21%から35%となりました。

 

同社は、THE LIMITED STORE(リミテッド)やEXPRESS(エクスプレス)といったレディースウエア業態で、GAP社よりも先にSPA(アパレル製造小売業)ビジネスモデルで全米一位に登りつめたアパレル企業です。

店頭でのテスト販売や生産地からの空輸を駆使した、独自の高速サプライチェーンやQR対応も十八番です。

ヘンリ・ベンデル(今回のリストラで廃業)やアバクロンビー&フィッチ(分社化、別会社)も同社が買収後に規模を拡大したことで知られています。

同社は、2000年にH&Mがアメリカに上陸し、フォーエバー21と競合しながら、全米がファストファッションの渦に飲み込まれると、

2007年に、レッドオーシャン市場になったアパレル事業に見切りをつけて売却し、

一方、ランジェリー&ホームファッションのヴィクトリアズシークレットやピンクに事業の軸足を移し、ファストファッションと競合をせずに営業利益率の高い高収益企業として、

売上規模もGAPに続く全米2位、グローバルでも4ー5位クラスのファッションチェーンとしての企業規模もキープします。

2016年頃から、メイン業態であるヴィクトリアズ・シークレットが時代に合わなくなって業績失速するや、

その事業に執着することなく、ヘルス&ビューティー部門のバス&ボディワークスに軸足を移し、この度、何と、コロナ禍の最中にも関わらず、事業転換を完了させてしまうという、実に見事な変身を成し遂げました。

アパレルからランジェリー&ホームウエアへ、そしてヘルス&ビューティーへ

女性を取り巻く、ファッション&ビューティーマーケットで既存ビジネスに執着せず、顧客にとって、付加価値のあるところに機を見て乗り換え・・・得意のサプライチェーンマネジメントを活かしながら、応用して行く、創業者のレスリー・ウェクスナー氏のビジネスマンとしての商才には脱帽せざるを得ません。

市場の変化に対して、ここまで先を見て事業転換をできる経営者さんは、世界を見渡しても、そうはいらっしゃらないでしょう。

日本を見渡すと、マッシュホールディングスの近藤社長の着眼点がそれに近いかも知れません。

同グループは、常に、顧客のライフスタイルを中心に考え、上手にアパレル→ホームウエア→ヘルス&ビューティと多角的な事業拡大を果たしていらっしゃいますね。

Lブランズ社は日本ではあまり知られていないファッション&ビューティ系チェーンですが、その変遷をたどると、世界のファッション系チェーン企業が見習うべきことはたくさんありそうです。

是非、過去から今後の動向をお見逃しなく。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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