購買頻度と小売業の在庫回転率
日頃、小売業向けのご支援をさせて頂いておりますが、
これから小売を始めたいという方からアドバイスを求められることがあります。
そんな時に必ずお話しをすることのひとつに
「購買頻度」
があります。
購買頻度とは、お客さんは、一般的にそのカテゴリー(品種)の商品を年に何回くらい買うものか?という話です。
アパレルであれば、一般的に
レディース服は6~8回くらいでしょうか?
メンズであれば4回くらいでしょうか?
靴はもっと頻度が低くて、2-3回くらい?
スーツのような紳士服はもっと少ないかも知れません。
小売業に従事されている方はお気づきかと思いますが、
この購買頻度って、そのカテゴリー(品種)の年間在庫回転率に近いということ。
お客さんあっての商売なので、無理に頻度を上げることはできません。
もっと売りたいなら、同じ人ではなく、購入客数を増やすことが必要になります。
つまり、購買頻度と在庫回転率は
事業の設計と損益とキャッシュフローに大きく影響を与える要素なのです。
そのため、こんなことがよくあります。
メンズ事業中心の企業がレディースに広げると
メンズよりもレディースの方がよく売れるので、儲かった実感が得られ
その後も上手く行くことが多いですが、
レディース事業がメンズカテゴリーに手を出すと
レディースほど高回転しないので、
いまひとつ上手く行かない。
スーツや重衣料専門だったお店が
より購買頻度の高いカジュアルを始めると売れる実感が得られますが、
カジュアル事業が
在庫の重い(金額の話ではなく、在庫回転の話)スーツを始めても、上手く行かない
などの事例です。
もちろん、全てが全てではありませんが、
小売ビジネスにおいては、「購買頻度」というキーワードを無視すると
上手くいかないことが多いのです。
これに則ったアパレル業界の成功事例の筆頭は
ユニクロかも知れません。
当初、紳士服事業を引き継いだ柳井さんは
カジュアルという紳士服より売れる金の鉱脈を掘り当てました。
その後、ユニセックスからレディースを強化し、
また、外に着るものから、インナーへ手を広げることで、
購買頻度と購買客層の裾野を広げ、大きな成長を果たしました。
ホームファッション業界ではニトリが好例でしょう。
引っ越しの時くらいしか買い換えない家具に
シーズン性やコーディネートの要素を取り入れ、
カバーをシーズンごと、気分にあわせて着替えてもらう提案をし、
更に購買頻度の高い、消耗品である、電球や乾電池なども取り扱うことで、
来店頻度・購買頻度を戦略的に高めています。
単価は高くても、購買頻度の低い、家具だけにこだわっていたら・・・
今のニトリはなかったことでしょう。
このようにユニクロとニトリは購買頻度を理解し、
上手く事業に取り入れたことが事業の基礎にあると言っても
過言ではありません。
製造業の方は、ものづくりに自信があるので、
どうしても良い商品をつくれば売れると思いがちですが・・・
小売業に携わるなら、
まず、購買頻度とい顧客行動を想像し、
顧客最適で考えるところから始めたいものです。
それが「顧客の立場になって考えること」の第一歩です。
最後までお読み頂き、ありがとうございます。
執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩
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