May 25, 2021

これからの店舗の役割は、フィッティングルーム(試着室)がカギを握る

20180817_1257325月21日の日経MJの1面に
DtoCブランド fou fou フーフーが代々木上原に開設した
完全無人試着室が紹介されていました。

オンラインで商品を見て、試着を希望するユーザーは、ネット予約を行い、
マンションの1室に設けられたショールームに、事前に伝えられた暗証番号で入室し
一組あたり約1時間内にユーザーは自由に試着をし、
気に入った商品があれば、オンライン注文を行うというもの。

試着した写真を撮って、後で、家に帰ってゆっくり検討し、
オンライン注文することも可能です。

デザイナーのコウサカさんの noteによれば、
週3回、1日あたり3つの時間帯(45分)が予約できるようなので
月に約36組が試着可能ということ。

記事によれば、もともと、この試みは、店舗を持たずにオンライン販売にこだわる同ブランドが行っていた、全国を回る「試着イベント」での気づきから始まったそうです。

・お子さんがいらっしゃる方が、落ち着いて試着ができない、とか

・店舗スタッフのお声がけや周りで試着している人が気になって、自分のペースで試着ができないとか

・店舗スタッフがいると、試着したのに、買わないと申し訳ないとか、

そんなユーザーさんの「心の声」に気づいて、
では、誰もいないところで思う存分、試着をしてもらおう、という発想から生まれたようです。

実際利用された方は、

「試着したら買わなきゃというプレッシャーがなく、納得が行くまでアイテムやサイズを試せた」

「人目を気にせずたくさん写真をとって家でゆっくり検討できるのも嬉しい」

店舗スタッフが好意で行っている、背中を押す接客もプレッシャーに感じる人もいますから・・・

これまで、店舗でのショッピングで、試着がストレスに感じて来た人には受けるサービスではないか、と思いました。

その一方で、想定客単価と稼働率と家賃から、採算はどうなのか?と、つい計算してしまう筆者がおりますが(笑)

 

ショッピングのデジタルシフトが進み、

更に、この1年はコロナ禍で外出自粛、来店客数減で、店舗の役割を考え直す企業が増えています。

「店舗は体験の場」と言われて久しいですが、体験とは、一体、何でしょうか?

きめ細かい接客による、おもてなしでしょうか?

それもひとつだとは思いますが・・・

サイズがあり、コーディネートをして着用することが前提のファッションアイテムにおいては、

商品の現物を手に取って確認する場、そして、

自分に合うかを確かめるフィッティング(試着)の場であることは揺るぎありません。

 

先日、外出自粛で、来客が少なくなったいくつかの商業施設を視察している最中、

いくつかの店舗で、気になった服を試着していて感じたことがあります。

相変わらず、フィッティングルームって狭くて窮屈なところが多いな

そんな狭い中で着替えて、着替えが終わったか、どうかというタイミングで

店舗スタッフから「いかがですか」と声がけされて、自分のペースで試着が出来ていないことを、あらためて痛感しました。

その際、思い出したのが、

2018年に拙著「アパレル・サバイバル」(日本経済新聞出版社)の取材でアメリカに行った時に訪れた、オンライン通販出身のメンズウエア「BONOBOS(ボノボス)」のショールーム店舗での店舗体験でした。

同社は、オンライン販売が出自で、試着をしてから買いたいという顧客のために、ガイドショップというショールーム店舗を全米に展開しています。(当時全米約50店舗)

顧客は店頭にならぶ商品の中から、気にいた商品を試着をし、

購入を決めた商品は、店舗スタッフに手伝ってもらって、タブレットからオンライン注文をし、

購入商品は倉庫から自宅に宅配されるというしくみです。

このお店が、通常のファッション専門店と違うのは、

◆タブレット決済なので、レジスペースがない
◆バックストック在庫がないので、店内が広い

その分

◆フィッティングルームが通常の専門店より広い
◆一緒に来た人がくつろげる、大きなソファーがある

というものでした。

これは、これから、オンライン販売比率30%台が常態化する、と予測される

リアル店舗を中心に展開するファッション専門店の未来の店舗の姿のひとつを示唆しているように思いました。

筆者は、店舗のすべてがショールームになるべきとは思っていません。

なぜなら、買ったものを持って帰りたい、あるいは、そのまま着て帰りたい、という需要は確実にあるからです。

しかし、坪効率を上げるために、店舗に、ストック在庫含めてぎゅうぎゅうに店舗に商品を詰め込むために、

契約面積に対して、商品の陳列スペースを最大限に取る、という考え方は時代遅れになって行くと思っています。

では、その時、何を起点に考え直すべきか?

常に、顧客購買行動起点で考えたいです。

店舗は、商品を確認する場、フィッティングを体験する場

そう考えると、これまで、狭く設計せざるを得なかったフィッティングルームのありかたから見直すべきではないだろうか、と

オンラインで情報を取り、店舗で商品を確かめ、試着し、自分のペースで店舗で買うか、オンラインで買うかの選択をする時代に

顧客体験としてのショッピングをデザインし直す際、

顧客が最も大切にする、フィッティングの場である「試着室」の見直しに
まずは取り組んで行くべきではないか、と痛切に感ます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 10年後のアパレル業界でのサバイバルのカギは、服のライフサイクルを意識し、顧客の持続可能なクローゼットのワードローブの循環をお手伝いすること。大量生産、過剰供給時代を超えて、新しい時代のお客様との関係構築がテーマです。

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March 29, 2021

ZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。

Zara-onlineZARAを展開するインディテックスグループの2020年1月期決算報告 FY2020 RESULTS

に目を通しました。

同社の決算期は2月~翌1月期なので、通期(全四半期)すべてがパンデミックの直撃を受けた1年でした。

但し、営業赤字だったのは、1Q(2-4月期)のみで

通年では、

売上高 20,402百万ユーロ(日本円換算2兆5918億円)と前年比72.9%(27.1%減)

粗利率 は前年55.9%→55.8%とほぼ変わらず

販売管理費 は 前年比83.2%(16.8%減)に抑え、

営業利益 1,504百万ユーロ(日本円換算1,914億円)前年比31.5%(68.5%減)

営業利益率は前年16.9%→7.4%と下がりましたが

営業黒字で着地しました。

インディテックス社の決算発表により、大手3社が出揃い、

2020年度の世界アパレルチェーン売上高ランキングのトップ3は

1位 インディテックス(ZARA)  1月期  2兆5,918億円(1,914億円 営業利益率7.4%)
2位 H&M           11月期  2兆3,752億円(227億円 同1%)
3位 ファーストテイリング    8月期  2兆0,088億円(1493億円 同7.4%)

に確定しました。

2019年度のランキング

世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

とトップ3の順位の入れ替わりはありません。

同社の期末店舗数は

7469店舗から→6829店 と640店舗の純減です。

内訳は閉店 751店 新店 111店 96店改装(うち45店が大型化)です。

これは慌てて閉めた、というより、中長期計画の計画通り。

在庫に関しては、期末在庫は前年よりも9%少なく、

4半期ごとに見ても前年よりも10%少ない在庫水準で回していたようです。

 

今回の同社の決算の最大のトピックはECの大幅売上拡大と世界全店舗のオムニチャネル体制の完成でしょうか。

EC売上高は77%増の6,600百万ユーロ(日本円換算 8,384億円)

EC売上比率は32.3%と前年の13.2%から急増です。

このEC売上の拡大に寄与したのが、

同社のオムニチャネル施策(Fully integrated store and online platform)のコアにある

SINT(Single Inventory Integration)というコンセプトです。

要は、各国のEC向け在庫と店舗のストックルーム(バックヤード)の在庫を一元化し・・・店舗のストックルーム在庫をEC需要の引き当て対象にできるようにした、という話です。

これをリアルタイムに可能にしたのが、RFIDの全店導入完了です。

このRFIDも、自社開発。

ほとんどの企業が使っているRFIDは、主に、値札や洗濯絵表示に埋め込まれている、安価で使い捨てのチップですが、インディテックス社の場合は、全商品に、スペインの倉庫で取り付けられたセキュリティタグの中に埋め込まれています。

丈夫で高性能、更に、回収することで、何回も再利用ができるという優れものです。(高性能、1回あたりのコスト減、リサイクルで環境にも優しい)

使えるものは、再利用をするという同社のポリシーはこんな最先端のテクノロジーにも活かされているわけですね。

話をSINT(在庫一元化)に戻しますが、

同社によれば、これが、売上高比率32.3%になったEC売上高全体の中の12%分に寄与したとのことです。

通年COVID19の影響を受けても、まだ、世界一の売上規模と利益を確保したインディテックス社。

今後、同じような、ロックダウンで店舗を閉めなければならない事態になっても、商売を継続できる体制が整いました。

さまざまな変化に対して、柔軟な対応ができる、

という世界最強クラスのオペレーション・エクセレンスを見せつけた決算と言ってもよいのではないでしょうか?

近日中に世界アパレル専門店売上高ランキング2020年版も更新したいと思います。

お楽しみに。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARA。これから進む道も、経営者の経営信念、ビジネスモデルとその変遷を理解すれば、見えて来ます。両社の比較分析が、未来のアパレルビジネスを考える上で、とても参考になると確信しています。

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March 22, 2021

在庫情報を可視化すれば、商品チーム、販売チームが自走組織に変わる

Ministry-of-supply-pos何度かオンラインセミナーに登壇させていただいている、在庫問題を解決するクラウドサービスを提供する「フルカイテン」さんのシステム導入事例セミナーを視聴させていただく機会がありました。

3月11日のその回は通販大手フェリシモグループでhaco!を運営する株式会社cd.社の葛西社長が
同社のシステムを導入して半年で会社の在庫への取り組み姿勢がどう何か変わったのかを語る内容でした。

システム導入前までは、担当者が商品の売上・在庫判定データをExcelで加工するのに
朝から夕方まで、ほぼ丸1日かけていた作業が・・・

導入後は、データ出力が1時間程度でできるようになり、営業時間の多くが、資料の作成業務ではなく、判断とアクションを中心に時間が割けるようになった、という話から始まりました。

帳票づくりに半日以上かけている企業さんって結構あると思います。

同社によれば、
以前は当シーズンに仕入れた商品在庫こそ見ていたものの、

前シーズン以前に仕入れて売れ残った在庫は、わざわざ出力努力をしなければ、見ることができず、いわゆる塩漬けになっていたそうです。

これに対して、全在庫データが稼働状況に応じて分類された上で、販売と在庫に関わっている担当者たちに見えるようになって、
何が変わったか?というと・・・

「奥にしまってあったものが手前に出て来た」イメージで

そうすると、担当者たちに、何とかこれも販売できないか、在庫を減らせないか、という気持ちが芽生え始め、

今シーズンでも十分に着ることができる旧在庫商品を積極的にコーディネート提案に使うようになったり、

また、そんな思いと活動が、お客様への商品出荷を担っている倉庫で働く方々にも伝わり、

倉庫スタッフの発案で、倉庫発信で売れ残り在庫を売り切るためのユーザー向けライブコマース(オンラインの即売会)が開催されるようになったとのことです。

その結果、会社としては、仕入れを減らした年であったにもかかわらず・・・売上は減らず、在庫がみるみる減って行ったそうです。

今では、仕入担当者の在庫に対する意識が高まり・・・

毎年、売り逃しをしないように、ただ、たくさん仕入れるという考えたではなく、
必要な仕入れのありかたを考えるようになった。

とのことです。

haco!の葛西社長はシステムを導入すれば問題が解決する、という話ではなく、

●システムには面倒な計算をしておいてもらって、
●人がそのデータを活用してどんな判断をするか?

の役割分担だ、と話を結びます。

そして、在庫を売り切って、増えた現預金を今後、何に投じるか?に触れ、

経営陣の頭は損益計算書(P/L)から貸借対照表(B/S)に移り・・・

お客様のための場をつくり、場を改善するためのシステム投資(無形固定資産)に使いたい、と意気込んでおられるようです。

これからの時代、在庫をしっかりキャッシュに換え、システム投資を行う企業が増えることを期待しています。

実際、多くの世界の大手ファッション流通企業のB/Sを分析していると、そういうビジネストレンドが起きていることに気づきます。

見えないものは、行動に移せない。

状況が手に取るように可視化すれば、現場は工夫を始め、現状の改善が進み始めるもの。

というのは、筆者も多くの現場でビフォア/アフターを体感してきたことです。

少し、筆者の昔話をさせて頂くと・・・

筆者のアパレル小売業でのキャリアの始まりは、服飾雑貨や靴を扱う雑貨バイヤーでしたが、

着任当初は、いきなり、前任者が残した靴の過剰在庫に苦しめられ、新規仕入を全くすることができない「買えないバイヤー」の苦労から始まりました。

そんな状況の中で、週末には全店を巡回して、実際に自ら販売をしながら各店の在庫状況を確認し、

時間をかけて、各店から全店の全商品のサイズ別在庫状況が確認できるようにデータの整備を行ったところ・・・

その後は、各店のスタッフたちがお取り寄せ(客注)を活発化させ、在庫が売上に変わり、過剰在庫がみるみる減り始めたものでした。

要は、各店は在庫を減らすことに協力してくれなかったのではなく、

お客様は欲しがっていても、在庫がどこにどれだけあるかが、わからないため、やみくもに在庫照会の電話をかける訳にもいかず、取り寄せ販売ができなかっただけだったのです。

そんな過去の経験も思い出しながら、haco!さんの事例を聴いていました。

会社の在庫のことを心配しない従業員はいないでしょう。

そして、在庫量やその在処(ありか)が手軽にわかるような環境に置かれれば・・・

社員の中から、考え始め、行動に移すスタッフが出て来るものです。

これは、筆者のその後の事業会社勤務時代でも、また、

独立後に、お手伝いさせていただいた多くのコンサル現場でも・・・

在庫状況の実態の現場担当者への可視化が、変革のきっかけになることを感じて来たものでした。

これから、更に、オムニチャネル時代になって・・・

ECだけでなく、店舗、倉庫を含め、全在庫のデータが可視化され、
在庫のステイタスが、販売チーム全員に手に取るようにわかるようになると・・・

まずは、チーム全員がお客様のお買い物を手伝う情報として在庫情報を活用し始め、続いて過剰在庫の消化方法も考え始める。

オムニチャネル化(販売と在庫のデジタルシフト)の本当のメリットは、

ECという新しい販路ではなく、そんな環境が構築されることではないでしょうか?

業界全体がそんな方法に向かってゆくビジョンを持ち、そんな環境づくりが行われることを、引き続き応援して行きたいと思います。

参考:今回触れさせて頂いた、フルカイテンさんとhaco!さんのオンラインセミナーの内容は、レポートとして、こちらからダウンロードしてお読みいただけます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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March 15, 2021

ファッション&ビューティー市場の変化を見極め、事業ドメイン転換で勝ち残る、米 L Brands(エル・ブランズ)

Bbwアメリカでヴィクトリアズ・シークレットを展開する米Lブランズ社の2021年1月期決算速報が発表されたので、目を通しました。

売上高  1兆2403億円  (前年比92%)
営業利益 1,653億円  (前年比611%)
営業利益率 13.3%
($=104円換算)

コロナ禍のアメリカ市場中心の同社が減収ながら、増益という恐るべき数字をたたき出しました。

実は、前年の2020年1月期、パンデミック前にヴィクトリアズ・シークレットのダイナミックなリストラを敢行して、大幅減益としていたので、リストラを経てのV字回復なわけですが、それにしても、この規模でのこの利益は素晴らしいです。

その理由を探ってみましょう。

まず、主力業態のヴィクトリアズ・シークレットは全体の2割にあたる248店舗の大量閉店および店舗のFC移管で同事業自体の売上高は前年比72%と大幅減。

店舗とオンラインの内訳は、店舗売上高が前年比55%、残った既存店は前年比増収、そして、オンライン売上高は131%と伸びました。

一方、もう一つの主力業態である、ヘルス&ビューティー部門のバス&ボディワークスの店舗売上高は前年並み(100%)、オンライン売上が209%増と倍増し、事業全体としては前比120%の大躍進です。

この結果、ヴィクトリアズシークレットとバス&ボディワークスの2つの事業売上規模が入れ替わり、同時に、見事な復活を果たしたというわけです。
              2019年度 → 2020年度
バス&ボディーワークス      42%  → 54%
ヴィクトリアズ・シークレット   58%  → 46 %

また、この1年で、会社全体のオンライン売上比率は21%から35%となりました。

 

同社は、THE LIMITED STORE(リミテッド)やEXPRESS(エクスプレス)といったレディースウエア業態で、GAP社よりも先にSPA(アパレル製造小売業)ビジネスモデルで全米一位に登りつめたアパレル企業です。

店頭でのテスト販売や生産地からの空輸を駆使した、独自の高速サプライチェーンやQR対応も十八番です。

ヘンリ・ベンデル(今回のリストラで廃業)やアバクロンビー&フィッチ(分社化、別会社)も同社が買収後に規模を拡大したことで知られています。

同社は、2000年にH&Mがアメリカに上陸し、フォーエバー21と競合しながら、全米がファストファッションの渦に飲み込まれると、

2007年に、レッドオーシャン市場になったアパレル事業に見切りをつけて売却し、

一方、ランジェリー&ホームファッションのヴィクトリアズシークレットやピンクに事業の軸足を移し、ファストファッションと競合をせずに営業利益率の高い高収益企業として、

売上規模もGAPに続く全米2位、グローバルでも4ー5位クラスのファッションチェーンとしての企業規模もキープします。

2016年頃から、メイン業態であるヴィクトリアズ・シークレットが時代に合わなくなって業績失速するや、

その事業に執着することなく、ヘルス&ビューティー部門のバス&ボディワークスに軸足を移し、この度、何と、コロナ禍の最中にも関わらず、事業転換を完了させてしまうという、実に見事な変身を成し遂げました。

アパレルからランジェリー&ホームウエアへ、そしてヘルス&ビューティーへ

女性を取り巻く、ファッション&ビューティーマーケットで既存ビジネスに執着せず、顧客にとって、付加価値のあるところに機を見て乗り換え・・・得意のサプライチェーンマネジメントを活かしながら、応用して行く、創業者のレスリー・ウェクスナー氏のビジネスマンとしての商才には脱帽せざるを得ません。

市場の変化に対して、ここまで先を見て事業転換をできる経営者さんは、世界を見渡しても、そうはいらっしゃらないでしょう。

日本を見渡すと、マッシュホールディングスの近藤社長の着眼点がそれに近いかも知れません。

同グループは、常に、顧客のライフスタイルを中心に考え、上手にアパレル→ホームウエア→ヘルス&ビューティと多角的な事業拡大を果たしていらっしゃいますね。

Lブランズ社は日本ではあまり知られていないファッション&ビューティ系チェーンですが、その変遷をたどると、世界のファッション系チェーン企業が見習うべきことはたくさんありそうです。

是非、過去から今後の動向をお見逃しなく。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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March 08, 2021

ユニクロが4月からの税込総額表示の義務化にあたり、実質値下げ。ユニクロらしい価格戦略で更なる市場シェアの奪取を狙う。

Uniqlo-tokyo

ユニクロが4月からの税込み価格総額表示義務化にあたり、これまでの税抜き価格を税込み価格とする、実質値下げ(9%程度)をすることを発表しました。

3月4日の日経新聞朝刊にも全面広告が掲載されていました。

この4月は消費税が上がるわけではありませんが、総額表示義務化で、多くの小売業が価格戦略の姿勢を示す転機になるだろうと思っておりましたが、

関連エントリー‐コロナショック、消費税総額表示であらためて低価格が進むのか?今一度、価格政策について考えよう。

日本のアパレル最大手であるユニクロが、最も「ユニクロらしい価格戦略」を取って来たことに納得すると共に、プライスリーダーであるユニクロの市場シェアはますます高まるだろう、と確信しました。

ユニクロの躍進の歴史は、「ユニクロプライス」と言っても過言ではないプライスポイント(最多価格帯)=1900円(イチキュー)への集中の価格戦略をなくしては語れません。

その昔、多くのジーンズカジュアルチェーンのトップスのプライスが2900円中心、特価で1900円だったころ(2000年代前半まででしょうか)、


1900円のフリースを筆頭に、カジュアルウエアが市場最低価格と言える1900円で買える店という「価格ポジショニング」がユニクロの集客と知名度を高めたことは間違いありません。

イチキューと言えば、アパレル市場では、ある意味、ユニクロの代名詞となり・・・

その後、カジュアルウエア市場でイチキューが多く見られるようになり、ユニクロは低価格ベーシック衣料の品質と価格の常識を変えることになります。

1900円(イチキュー)も、度重なる増税を経て、現在では、1990円(イチキュッキュウ)になりましたが・・・

ユニクロと同様のキュッキュウプライスポイント戦略を取る姉妹ブランドのGU(ジーユー)も、そのブレイクスルーに990円ジーンズなくしては、今のポジショニングはなかったことでしょう。

 

価格表示が変わる時の、店頭価格を見た時の顧客心理は敏感で・・・
わかりやすい価格をつけたところが支持され、売上を落とさず、業績を維持したというのは、

過去数回の増税時に共通することではないでしょうか?

独走が続くユニクロがあらためてアピールするキュッキュウ価格。

日本市場におけるシェアはますます高まりそうですね。

 

その一方で、懸念されるのは、同社の利益の確保のチャレンジです。

売上高については、売上数量を10%伸ばせば、値下げ分の売上高は取り戻せますが・・・粗利高はそう簡単な話ではありません。

売上高から粗利高を引いた売上原価は仕入原価と値下げ額の合算になりますが・・・

もし、売上原価がそのままで、実質9%程度の値下げをしたら、ストレートに同額の粗利高を直撃するので、
仕入原価を下げたり、在庫コントロールをして、値下げ抑制をしなければ、それまでの粗利高は確保できません。

消費税を飲み込んだ実質値下げによる、売上高維持のハードルが、売上数量10%増程度が必要なのに対して、

粗利高に関しては、ユニクロの従来の原価(50%程度)のままだとすると、そのハードルは25%増相当まで上がります。

仕入原価は商社など中間業者を介さない、いわゆる直貿(原産国企業との直接決済)比率を増やして原資にする模様。

そして、それだけではなく、緻密な値下げコントロールが要求されそうです。

あるいは、粗利高はさほど伸ばせなくても、販売管理費を圧縮して営業利益を残すという手もあるでしょう。 

ファストリの20年8月期決算では、

確かに、直貿により仕入原価を抑え(値入を高め)、なおかつ値下げコントロールにより粗利を高め、更に販管費(特に人件費)のコントロールが上手く行ったようなので、同社としては、自信を深めているようです。

今後、実質値下げをするユニクロが、企業としてどう利益をコントロールするのかに注目しておきましょう。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARA。共に価格政策にプライスポイント戦略を取りますが、その違いは?両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になります。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

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February 22, 2021

メルカリ、ペイペイフリマ、フリマアプリの1次流通通販(EC)とのデータ連携

Closet

2月17日の日経MJにフリマアプリ大手のメルカリが、アパレル専門店大手アダストリア社他、8つのECサイトと連携し、ユーザーがECサイトで購入した新品商品が着用後に不要になった場合、手軽にメルカリに出品できるサービスを拡げて行くことに関する記事が掲載されていました。

記事によれば、20年春から始まったメルカリの提携先は・・・

アパレルECの「ショップリスト」、家電の「プレモア」、雑貨の「イデアオンライン」、今回発表したアパレル大手アダストリアの総合 ECサイト「.st(ドットエスティ)」など8社。

提携先は、今のところ、すべて、メルペイでの決済を行っているサイトのようで、

購入ユーザーがそれぞれのECサイトでメルペイで決済した商品が、メルカリのユーザーのアプリ内のマイページの中にある、「持ち物一覧」に自動で取り込まれ・・・

ユーザーが将来、その商品が不要になり、メルカリで売却したい、と思った場合、

その商品がメルカリで取引されている相場価格を元に推奨価格が表示されたり、出品の際に必要な、商品カテゴリーや商品紹介が自動表示されてユーザーの出品の手間が簡素化されるというものです。

今後、提携先とは、メルペイで決済していない場合(クレジットカードなど)も同様のサービスを提供する方向で話を進めているとのこと。

そうなると、いずれは、メルペイ決済を前提としない、多くのEC購入商品がメルカリに出品しやすくなるかも知れません。

同記事では、メルカリのライバルとなるペイペイフリマでも、ヤフーショッピング、ペイペイモール、ZOZOTOWNと同様の連携を進めていることも紹介されており、

フリマアプリ大手が

売ること(出口)を考えて、新しい商品を購入する(入口)購買行動

という、リユースショップやフリマアプリを賢く活用する、ユーザーから始まった新しい購買行動の促進を後押ししていることがわかります。

ファストファッションの市場浸透後、コロナショックによる巣ごもりの後押しもあり、
溢れ始めた自分のクローゼットの服を見直す機会が増えたエンドユーザー

流通企業が、エンドユーザーの「クローゼットのワードローブの循環」をどう手伝うか

が新品を販売する企業も避けて通れない、生き残りのカギになるであろうことを

拙著「アパレル・サバイバル」の後半部分で結構なページを割いて問題提起をさせていただきました。

一次流通企業にとっては、

大手であれば、これから、不要品回収から始まるサーキュラーエコノミー(循環型経済)への取り組みが、進むことでしょう。

一方、大手ほど資金力、組織力がない中小企業にとっては、

自身の体力内で回収、リサイクル、リメイク、アップサイクル(染め直しも含む)をすることもできるでしょうし・・・

フリマアプリなど、第三者的なデジタル企業と組んで、ユーザーが不要になった商品を、それを求める他の人に届けるための手伝いをすることもできるでしょう。 

ある意味、それも、サーキュラーエコノミーへの取り組みの一環かと思います。

過剰生産、過剰供給を見直しするだけでなく、

お客様のクローゼットを健全にメンテ、循環させることをお手伝いしながら、

顧客の既存のワードローブと相性のよい、今シーズン風の新しい服をご提案する。

それが、これから求められるファッション流通企業の姿のひとつだと思っています。

それを牽引するのは、従来のファッション企業自身なのか、
それとも、未来から逆算するテクノロジー企業なのか?

今回のメルカリやペイペイフリマの取り組みは、そんな未来図に向かうはじめの一歩のように感じられます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 10年後のアパレル業界でのサバイバルのカギは、服のライフサイクルを意識し、顧客の持続可能なクローゼットのワードローブの循環をお手伝いすること。大量生産、過剰供給時代を超えて、新しい時代の関係構築がテーマです。

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February 15, 2021

売上は仕入(MD)、粗利は在庫運用(DB)で決まる

Last-chance-to-buy先週の2月9日 小売・卸売・製造小売業の在庫問題を解決するクラウドサービス「FULL KAITEN」を提供する
フルカイテン さんのオンラインセミナーに登壇させて頂きました。

前半は筆者からのミニ講義、続いて、後半は、フルカイテンの瀬川社長とアパレル小売業の在庫と粗利についての対談をさせ頂きました。

前半のプレゼンでは、

規模の拡大と共に過剰在庫を抱えてしまう要因のひとつに、

仕入担当であるバイヤー(MD)とお客様の間に

関与する職務と人員が増えると、

複雑になった組織の中で商品計画の意図が上手く伝わらない!

コミュニケーションギャップが原因となって、

売り逃しが頻発する、拠点ごとの在庫の過不足が常態化する、

という話から始めました。

そんな事業規模を迎え、過剰在庫の壁にぶつかったら・・・

どうしたら、仕入担当と販売担当が上手く連携しながら、

仕入れた在庫を、機会損失を起こさないように、粗利に換えながら、売り切ることができるか?

その、コミュニケーションの切り口として、

筆者がコンサル現場で、再現性が高く、成果が上がる

シーズン計画を日々の販売計画に落とし込む

いくつかの着眼点についてお伝えしました。

この問題、

筆者は、長年、数多くの年商2~30億円から100億円くらいのステージのファッション販売事業やストアブランドさんたちとお付き合いをしていて思うのですが・・・

多くの事業が、年商10億円過ぎくらいの規模まではイケイケで売上も伸ばし、

在庫消化もそれなりに出来て来たとしても…

年商がその倍の20億円規模を越えて、

約3倍に相当する、30億円の声が聞こえる規模になると、

結構、残在庫問題が経営課題のひとつとして、浮上し、

キャッシュフロー悪化という点で深刻化し始めます。

要は、バイヤーやMDによる商品仕入こそが売上にとって大事なのは間違いないのですが・・・

あるステージを過ぎると、それがすべてではなく、

シーズン中の在庫運用、すなわち、

販売現場の購買行動を見極めた在庫調整とタイムリーな売り切り行動こそが、

営業利益の原資となる粗利額を増やし、在庫をキャッシュに換えるカギになって行く。

つまり、「仕入」と「売り切り」の両輪を上手く回せないと

利益もキャッシュも不安定なステージに入るもの

と多くの事業を見ていて、痛感しています。


仕入れた在庫を活かすも殺すも在庫運用次第 

それは、販売する側だけを責める問題ではありません。

その前提として、

●「仕入の意思」が現場に伝わっているか

● どのように伝わっているか

に寄るところが大きいです。

では、そんな壁に直面した時、どうすべきか?

ミニ講義の最後に

全員参加型の経営に舵を切る第一歩となる・・・

販売担当たち(DB、SV 、EC)が、MDやバイヤーの商品展開計画を理解しながら、
自ら考え、タイムリーな在庫コントロールをする「自走組織」に変えていゆく上でのカギ

についてお話しして、まとめとさせて頂きました。

後半の瀬川社長との対談では、

瀬川さんの気づきと聴講された方々の質疑応答を通じて、

実際、クライアント企業の経営者さん、幹部さん、現場の方々とも、普段、交わしている生々しい話がいくつも飛び出したと思います。

 

ファッションビジネスに携わっていると、どうしても、何を仕入れるかに頭が集中しがちです。

その一方で、粗利はシーズン中の行動次第で残すこともできるし、簡単に失ってしまうこともあります。

そんな状況に対して、「気合」や「どんぶり」ではなく、

いかに、諦めずに執念をもって在庫を粗利額に換えられるか・・・

同じ目標管理をする組織の中でも、

次のステージを迎えるために、

特に、仕入と店舗やEC販売のハブ的存在となる
ディストリビューターや在庫コントローラー(以後DB)の役割の見直しと戦力化は避けては通れません。

DBはある意味、販売サイドに対する、バイヤーやMDの二人三脚の分身であり、
忙しくて足元の課題に気づけないMDを客観視して、気づきを与える女房役

DBという職務の戦力化、組織の中での販売情報のHUB(ハブ)として機能するかどうかが、
次のステージを乗り切るための第一歩となります。

今回の記事のタイトルの

売上はMD、粗利はDB

とは

正しく、クライアント企業の経営者さんが、在庫コントロールに取り組んだ結果、

危機を乗り越え、最高益を続けた後におっしゃった言葉ですが・・・

同時に、筆者の長年の信念と活動をシンプルに言語化して頂いたフレーズでもあります。

コロナショックで仕入を絞って、少ない在庫で利益を稼がなければならない、今こそ、

仕入れた在庫をチームワークで活かしながら運用して、最大限の粗利とキャッシュに換えるための・・・
全員参加型経営にむけての業務再構築に力を入れたい時、だと思います。

関連エントリー一律値下げでは過剰在庫問題は解決しない

関連エントリー気温に合わせて品ぞろえ計画、在庫運用を考え直す

関連エントリー過剰在庫を持ち越さないために

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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January 25, 2021

ユニクロアプリのウォレット機能UNIQLO Pay実装と同社が目指すゴール

Uq1月19日からユニクロアプリ内に決済機能であるUNIQLO Payを実装しました。

プレスリリース ユニクロアプリにウォレット機能「UNIQLO Pay」が登場

メディアでは、PayPayやメルぺイなどと比較する記事もありましたが、
あくまでも、同社内での決済が目的のようです。

3,000万ダウンロードという日本の小売りでも最大級のダウンロード数を誇るアプリのひとつ。

顧客は、クレジットカードまたは銀行口座(現段階では一部の銀行に限られます)を紐つければ、店舗での決済の際に、アプリを開けば、QRコードを提示するだけでキャッシュレス決済ができるというもの。

これまでは、ポイントをつけるために、アプリを提示し、決済や現金やクレジットカードやその他の決済手段が使われていましたが、

顧客はUNIQLO Payを提示すれば、財布を出さずに済む。というわけです。

ユニクロとGUはここ数年で、レジのセルフレジ化を進め、混雑時以外の人件費を大幅に軽減して、販管費を下げ、営業利益率を高めて来ました。

その間、顧客にお会計の作業ストレスを強いて来たわけですが、これからUNIQLO Payを推奨することで、財布を出す作業がひとつ軽減されることになるわけです。

また、企業側のメリットを想像すると、短期的に言えば、銀行口座紐付けが増えれば、クレジットカード手数料やその他決済手段の決済手数料が軽減され、

利用者が増えれば、顧客データを取得しやすくなり、中期的には、その分析から、品揃えやサービスやオンライン経由の顧客セグメント提案の改善につながるでしょう。

実は、この小売業のアプリの決済機能の実装ですが、日本では、まだ対応していませんが、ZARAのインディテックス社が自社開発したアプリの中にIn Walletという機能を実装し、先行しています。ヨーロッパの一部の国では、数年前から利用できるようになっています(紐つけはクレジットカードのみ)。

ZARAの目的は、レジでの決済の効率化(顧客、スタッフ双方の会計作業軽減)、店舗で買っても、オンラインで買っても、同じアプリの中に電子レシートが生成され、レシート発行不要にできる(ペーパレス)と共に、双方の購買履歴が残ることから、オン・オフどちらで買っても、どちらでも返品できる顧客の利便性です。ちなみにZARAのアプリにはポイント付与はありません。

ユニクロはそんなZARAの先行事例を参考にしたのか、業務提携しているGoogle Payを展開するGoogleのアドバイスなのかはわかりませんが、いずれにせよ、日本のファッション小売業の中ではユニクロは先行組と言えますね。

現在は、ファーストリテイリンググループ内での決済しか想定していないようですが、ゆくゆくは、もちろん、Amazon Pay Google Pay のように、社外でも使えるようにすれば、プラットフォーマーとして、決済手数料を稼せぐ、金融事業が成り立つかも知れません。

これからのライバルは小売業ではなく、GAFAだとおっしゃった柳井会長の言葉が思い出されます。

関連エントリーー世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題ですね。実はZARAも以前からベーシックが稼ぎ頭。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

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January 19, 2021

ウォルマートが描くDX(デジタルトランスフォーメーション)の未来

20180818_1035181月14日の繊研新聞に、現在、開催中の全米小売業大会(NRF)、初のオンライン開催に関する記事が掲載されており、関心を持って読ませて頂きました。

この全米小売業大会は世界の小売業の未来を示唆するテーマが話題になることが多く、毎年、発信されるトピックに注目しています。

今回の記事で印象に残ったのは、アマゾンエフェクトが吹き荒れ、収まらないパンデミックの渦中にあるアメリカの小売業界で、オンラインを活用して業績を伸ばし続ける、ディスカウントストア、ウォルマートの最高顧客責任者であるジェイニー・ホワイトサイド氏のコメントの数々でした。

その中から、3つほど取り上げてみたいと思います。

ひとつめは、

「5年かけて起きると思われていたデジタルトランスフォーメーションが5週間で起きた。」

コロナ以前から、全米でアマゾンとの小売業頂上対決をしながら、デジタルトランスフォーメーションの準備を着実に進めていたウォルマート。

顧客の購買行動の変化を見越して、準備をしていたからこそ、コロナ禍の外出自粛下においても、同社は宅配対応、ストアピックアップ(オンライン注文の店舗受取り)、カーブサイドピックアップ(オンライン注文の駐車場受取り)に対応し、業績を伸ばし続けているわけですが・・・

そんな彼らにとっても、そう言わしめる程の急激な購買行動の変化が起こっていることを感じ取れるフレーズです。

準備をしていなかった企業、準備中にコロナショックに見舞われた企業がどんな目に合っているかは、言うまでもないでしょう。

2つめは

「(ストア)ピックアップと宅配が急増(中略)特に65歳以上のお客からの要望が顕著」

ショッピングのデジタルシフトの完全定着は、ジェネレーションX(1960年代後半生まれ~)以降のデジタルを不自由なく活用する世代がシニア世代になった時、つまり、あと10年はかかる、と思っていた方は少なくないと思います。正直、僕も心の底ではそう思っていたかも知れません。

しかし、コロナショックは、それまで、ほとんどオンラインやデジタルを活用していなかった、現シニア世代にも強制的にデジタルシフトを迫りました。
これは、今後の流通の変化のスピードに大きな影響を及ぼすのではないか、と見ています。

日本の話になりますが、昨年、6月、緊急事態宣言が解除された直後に、カフェで老人たちがアマゾンでの購入体験を話していた時のことを思い出します。

まさか、このおばあちゃんたちの口から「アマゾンで・・・」という言葉が出てくるとは想像もつかなかったからです。どうやら、ご家族に手伝ってもらって、アマゾンでの購入を始めたようです。その後、同じようなシニアの会話のシーンに何回か、出くわしたものでした。

シニア層が当たり前のようにオンラインを活用するようになると、ショッピングのデジタルシフトの市場定着は一気に進むことでしょう。

3つめは

「ウォルマートが顧客の冷蔵庫の中身を補充する時代が来るとみている」

という話。

1月15日の日経新聞の記事で補足すると、

ウォルマート本社のあるアーカンソー州ベントンビルで、スマホアプリで3種類の温度調節が可能な宅配BOXを顧客に提供する準備をしている、とのこと。

つまり、ウォルマートからの生鮮の宅配を、不在時でも、あるいはコンタクトレスでも顧客に届けることを実現する試みです。

おそらく、ジェイニー・ホワイトサイド氏のNRFでの発言の背景には、この試みがあったのでしょう。

話は変わりますが、2019年2月に上梓した拙著「アパレル・サバイバル」では、

これから10年スパンで考えると、顧客のクローゼットの中のワードローブ情報を顧客に共有していただける信頼関係の構築ができるかどうかが、今後のサバイバルのカギになる、と述べました。

それを読んだ、読者の方が、

服だけではなく、食品でも、自宅の冷蔵庫の中身と食材の賞味期限が管理され、

外出先からでも、帰宅したら、それらでどんな夕食の献立が出来るか、

あるいは、あと、どんな食材を買い足したら、どんな献立のバリエーションが広がるか、

のレシピ提案をしてくれるIOT冷蔵庫とスマホアプリがあったらいいね、

とコメントされていたのを思い出します。

確かに、あったらいいねのデジタルトランスフォーメーションですね。

ウォルマートは、アマゾンと競いながら、そんな顧客の未来の購買体験を考えているのか、と思いました。

この間、ジェネレーションXの上の世代、シニア世代以上に関してはコロナ後の購買行動は元に戻るだろう、

という調査結果も目にしました。

確かにその傾向もあると思いますが、DXの準備をしていた企業と遅れた企業の差は確実につきそうな気がしています。

いずれにせよ、

消費者は一度手にした便利さは手放さない

この教訓だけは肝に銘じておくべきでしょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 10年後のアパレル業界でのサバイバルのカギ、顧客とのこれからの関係構築がテーマです。

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January 04, 2021

新しい生活様式にあわせて業務を再構築しよう

20180824_151428あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

コロナショックの渦中、先行きが見えぬまま新年を迎えましたが、
引き続き、健康に留意しながら、日々のミッションに取り組み、そして、未来に向けて進んで行きましょう。

コロナに後押しされたとは言え、一旦、前に進んだものは、元には戻らない、と考え、
まずは、加速した環境変化の先にある、「お客様の新しい生活様式」のビジョンを描いた上で、準備を進めて行きたいです。

 

これらのファッション流通業界のテーマはいくつかあると思いますが、
専門である在庫最適化の問題意識から申し上げると、大きくは

◆短期~中期的には

 ショッピングのデジタルシフトに対応した環境を整えること、

◆中期~長期的には

 ブランドらしいサーキュラーエコノミーへ取り組みに着手すること

かと思います。

 

前者は、オムニチャネルやOMO(Online merges with Offline)などと言われることですが、明確な顧客購買シーンをチーム共有した上で進めて行きたいところです。

店舗を持つ専門店にとっては、

顧客が

・店舗で見た商品はオンラインですぐに見つけることが出来、買うことができる

・オンラインで見た商品は、どこにその在庫があるのかがわかり、店舗に行けばすぐに見つけることができる

・オンラインで注文や予約した商品を都合のよい店舗で受け取ったり、試着の上、購入できる

・店舗で購入した商品は店舗からあるいはEC倉庫から自宅に届けてもらえる

そして、そんなお客様のシームレスな購買行動を店舗スタッフやカスタマーサポートがストレスなくヘルプできるデジタル環境を整えることでしょうか。

これらを実現するには、システム投資が伴うため、一気に進めることは難しいかと思いますが・・・

在庫データの信頼性を高めながら、もてるデバイスを駆使してステップ・バイ・ステップで進めて行きたいです。

後者については、よりプロダクトにフォーカスし、顧客を巻き込んだカタチのサステナビリティの話です。

人々が巣ごもりの間に、あらためて自分のワードローブと向き合ったことによって・・・

いよいよ、供給側であるブランドは、商品をつくって、売りっぱなしにするだけでなく・・・買って頂いた後の商品のライフサイクル、循環についても配慮、関与する時代に突入したと思っています。

例えば、長く愛着してもらうための素材選び、購入後の洗濯・クリーニング・保管などメンテナンスのためのアドバイス、次シーズン以降も着回して頂くための、翌シーズンのコーディネート提案などなど。

また、買って頂いた商品は、できるだけ長く着続けてもらいたいものですが、着なくなった場合は、顧客が手放し、リユース、リメイク、リサイクルされるところにも何らかのカタチで関与できないか、と。

近年、着なくなった服を回収する企業は増えて来ましたが・・・どちらかというと、来店促進目的で回収後は処分業者に渡して終わりのところが多いようです。

これからは、せっかく回収するのであれば、しかるべきパートナーと組んで、何ができるか?ブランドらしい活かし方を自ら考える時代に向かっていると感じています。

このあたりは、すぐには広がらないかも知れませんが、ブランドごとに議論を始めてもよい時期ではないかと思っています。

後者のワードローブのライフサイクルや循環の話にご興味を持たれた方は、是非、拙著「アパレル・サバイバル」のCHAPTER5をお読みください。筆者なりの問題提起をさせていただいております。

以上のような問題意識を持ちつつ・・・

今年も顧客目線で在庫最適化に取り組む業務再構築と商売人人材育成の応援をミッションとし、

独自の視点で業界関連トピックをブログで取り上げてご紹介して行きたいと思います。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

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 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 ファストファッションの浸透によって、溢れ始めた顧客のクローゼット。これからは、クローゼット内の服の循環を考えながら、新しい商品の提案を考える時代。今回の投稿で話題にしたショッピングのデジタルシフトと顧客のワードローブの循環がまさにテーマになっています。

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