June 14, 2021

無印良品が男女兼用服のアイテムを拡大中

Muji-hk6月7日の日経新聞に無印良品が今春夏シーズンに全体の1割、25品目だったアパレルの男女兼用アイテムを秋には全体の3割、22年の来春夏には5割(250品目)に増やして行くことに関する記事が掲載されていました。

記事によれば、売場は既存のメンズやレディースコーナーに分散して置くのではなく、男女兼用アイテム専用コーナーを拡充して販売して行くようです。

同社のサイトを見ると

性別、年齢、体系ではなく、「人」という括りでサイズを展開

とあり、最近、注目されている、「ジェンダーレス」の流れに沿ったもののようです。

該当品目のサイズを見ると・・・

メンズのサイズに当てはめると

① XXS-XS  ② S-M  ③ L-XL

の3サイズ展開が中心のようで、

この3つのサイズで、女性と男性の大半の顧客の体型をカバーしようとしているようです。

ゆったり着るアイテムであれば、

大は小を兼ねる

少し大きめサイズをつくることで、対応出来そうな感じがします。

 

以前から、メンズアイテムのユニセックス対応購入という概念は当たり前のようにありましたが、

無印良品含め、最近増えてきているな、と感じる、ジェンダーレス対応アイテムが、従来のユニセックスと違うところは・・・

「ユニセックス」が、サイズ、フィット感などメンズアイテムを着たい女性の需要を取り込むという発想だったのに対し、

昨今の「男女兼用」の取り組みは、従来のユニセックス的なものをカバーしながら、どちらかというとレディース用としてデザインされた、メンズにはない、ベーシック寄りながら、ちょっと気の利いたデザインや素材感の服が着たい男性の需要を取り込むところではないか、と見ています。

ずいぶん前からですが、服のカジュアル志向が進むようになってから、メンズTシャツやスウェットなどのアメカジアイテムはユニセックス対応として、支持はありましたし(メンズで企画しても3~4割は女性に売れる)

その後、女性のボーイズスタイル、平成ブランドと言われたレディースブランドが細身の男性に着用されるブームなどを経て、男女のアイテムのクロスユースは既に十分市民権を得ていると思います。

筆者も、あるレディース売場で販売されていた、柔らかい素材感のセーターや、薄手のスウェットパーカー、はたまた、リブや附属使いなどディテールが、ちょっと気の利いたカーディガンが、これ、メンズでもありだよね、メンズは原型に従った、ありきたりなつくりが多いからね、とつぶやきながら、レディースのXLサイズの商品を購入した経験が何度かあります。

そんなアイテムはちょっと丈が短かったりという難点はありましたが、重ね着対応でローテーションに入れていたものです。

マーケティング的には、時代に合わせて多様性に応えたものかも知れませんが、
実は、新しいマーケットをつくる、潜在需要を掘り起こす動きになりそうで、関心を持って見ています。

また、販売管理面で言うと、

◎着ることが出来る人が多くなれば、数は売れますし、

かと言って、サイズを増やすと、在庫リスクを抱えることになるので、
リラックスフィットが主流になりつつあるマーケットで

◎サイズ数を絞ることができれば、在庫リスクも小さくなる

というメリットはあります。

この男女兼用アイテム的な発想は、今、業界の中でも多くのブランドに広がりつつある流れなので、今後、どのようにマーケットにフィットして行くのか・・・

業界注目トピックのひとつとして、ウォッチして行きたいと思います。

関連エントリー-色展開よりサイズ展開を増やした方が顧客層は広がる

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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June 08, 2021

「経費」を、粗利を稼ぐための「投資」に置き換えて考える、「分配率」という指標のススメ

32cimg0465WWDJAPAN本紙に毎月1回連載させて頂いている
ファッション流通企業の決算書の読み解き方をテーマにした「ファッション業界のミカタ」

おかげさまで、連載スタートから3年目に入り、昨年、今年と関連オンラインセミナーにも登壇させて頂いております。

この度、筆者が業界企業の決算関連書類を読むようになったきっかけや、実際に決算書を読む上で、大切にしているポイントをWWDJAPANの記者の方に以下のインタビュー記事にして頂きました。

決算書を読むべき理由とその魅力とは?

実は、これは、「店舗視察の着眼点」にも共通していることなのですが、

まずは、自社やクライアント企業などで「解決したい課題」が特定されていること

次に、その課題解決にあたって、うまくやっていると思われる企業はいったい、どんなアプローチをしているのか、関心と好奇心を持つこと

そして、そんな問題意識をもって、実際にその部分を集中的に見に行くかどうか

で収穫は全く違ったものになって来るものです。

つまり、「自分ごと」にして、アンテナを立てて見るとことで、情報収集力、吸収力は格段に増すという話です。

さもなければ、

決算書であれば、
増収増益、すごいね!とか

店舗視察であれば、
入店客数がどうだったとか、どんな商品を打ち出しているのか?とか、スタッフの接客アプローチがよかったとか、悪かったとか、・・・

せっかく時間をかけても、表面的なことしか見えて来ず、もったいない話です。

一方、自社の課題に基づく、何かを解決したいという「問題意識」さえあれば、

小難しい数字の羅列のような公開企業の決算書の中からも、課題解決のヒントにつながる糸口が見つかるもの。

ズバリは掲載されていない数値も、掲載されている数値から独自に計算した数字に置き換えれば、見えて来る情報がたくさんあることにも気づきます。

 

さて、前置きが長くなりましたが、今回のテーマは、「経費」を「投資」に置き換えて考えるための数字の見方、発想転換の話です。

このインタビュー記事の中でも触れていますが・・・

筆者は、小売業勤務時代、

自分にかかる人件費の3倍以上の粗利額を稼ぐように

と教えられました。

これは、労働分配率という発想から来るもので、

当時の勤務先の
人件費÷粗利額=労働分配率が33%くらいだったので、

固定費である人件費の3倍の粗利を稼いで、会社の粗利額予算トントン、

それ以上稼げば、会社の営業利益は増えるし、
その33%の分配率の範囲であれば、増益分をボーナスの原資にしても、会社の営業利益も目標以上に残すことができるため・・・会社と従業員の利害が一致するという発想からでした。

実は、同じことが販売管理費の他の費用にも当てはまると思っています。

一般的に、販売管理費、つまり、人件費、家賃、物流費、広告宣伝費、外注委託費などは、「経費」として見なされ、必要経費ながら、経費は少ない方がよい、その方が利益が増えると、抑えられがちなものでした。

管理部門が、ムダな経費を見つけて、削減する分には歓迎ですが、とにかく削れるものに目を光らせて、経費を減らすことが自分たちの仕事、目的になってしまっていたら、始末が悪いです。

企業によっては、売上に対して経費率をいかに下げるか?がその部署の評価基準の場合もありますからね(汗)。

怖いのは、利益低迷が、値下げによる薄利多売が原因なのに、
利益を増やすために良かれと、ある経費を無理に押さえたり、下げようとして・・・

ますます、粗利が取れなくなる悪循環です。(特に人件費はモチベーションに影響します)

これに対して、

販売管理費の各項目を粗利高を分母にして考える、

労働分配率(人件費÷粗利高)
販促分配率(広告宣伝費÷粗利高)
家賃分配率(地代家賃÷粗利高) など

分配率(費用の粗利高対比)という数字があります。

分配率で考えると、より粗利額にフォーカスした発想ができるようになります。

予算設定に基づく、分配率をキープすることを前提に、
粗利の増減に対して、費用を調整できるとしたら、

もっと粗利額を稼げるチャンスがあるなら、費用を使って、それ以上の粗利額を取りに行こう、という前向きな発想も出て来ます。

その時点から、費用は予算額内で使うもの、減した方がよいもの、という「経費」的な発想から、

粗利を増やすのに使う「投資」、およびどれだけ回収できるか?という「投資回収」的な発想に変わって来ます。

近年であれば、ECの売り上げが増えている折、

物流費に対する考え方がこれに当たると思っています。

以前は、物流関連費はコストセンターとして考えられ、減らせるものは減らそうと、物流担当者は、コストカッター的に動くケースが多かったようですが・・・

今や、EC事業の販売管理費の最も大きなウエイトを占める項目のひとつである物流費は、今後、戦略的に考えるために、分配率という観点から見るべきではないか、と考えます。

つまり、チャンスを逃さずにモノを備蓄したり、タイムリーに動かすことによって、多くの粗利額が稼げるなら、物流費は抑えるべき経費ではなく、戦略的、積極的に使う、投資すべき費用に換わると。

そもそも、社員全員が、それぞれが受け持つ費用を認識して、有効に使うことで、予算通り、あるいはそれ以上の粗利を稼ぎ、営業利益を増やす=投資回収することが、各人の明確なミッションとなれば、
「経費」が「投資」という発想に換わり、全員参加の経営に向かえるはず。

それを可能にするのが、粗利を分母にした「分配率」という視点であり、その前向きな運用です。

分配率は、古くから存在する経営効率指標ではありますが、

売上至上主義から、生産性向上がテーマの昨今、あらためて見直されるべき、販売管理費の管理指標であると信じています。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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June 07, 2021

【期間限定 早割受付中】7月22日(木)開催 オンラインセミナー~3つの視点を共有すれば、過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!利益倍増!!『ファッションストアの在庫コントロールのための組織づくりと業務連携』

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毎回、好評の経営者様、事業責任者様向けの
オンライン経営セミナー

3つの視点を共有すれば、過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!利益倍増!!
「ファッションストアの在庫コントロールのための組織づくりと業務連携」

次回は7月22日(木)に開催します。

アパレル・靴・服飾雑貨などシーズン商品を販売するファッションストアやEC販売事業において、事業規模拡大と共に、欠品を恐れて、「良かれ」と思っての過剰仕入や、仕入担当と販売担当のコミュニケーション不足が要因で過剰在庫を抱えてしまうステージが訪れます。

一旦、そのステージに突入すると、毎シーズン、同じことを繰り返しても、事業の売上規模は拡大できても、年々利益率が低下し、在庫回転率とキャッシュフローが悪化し、今までのやり方が通用しない!と痛感する大きな壁にぶつかります。

そんな壁を乗り越えられる組織と、乗り越えられない組織の違いは、一体どこにあるのか、ご存じでしょうか?

このセミナーでは、これまで、20年近くに渡って、「過剰在庫の壁」にぶつかると言われる、年商30億円から100億円規模のファッション販売事業に特化して、30以上のストアブランドと、在庫コントロールのための組織づくりと人財育成の支援に取り組んで来た講師が、多くの組織に共通する問題点を明らかにし、再現性と効果のあるアプローチに絞り込み、実際に取り組んで成果を上げた企業事例と共に解説します。

右肩上がりの成長・拡大期における過剰在庫対応はもちろん、先行きが見通しづらく、仕入を絞って在庫運用している今こそ・・・

実店舗にも、EC販売にも共通する、シーズン商品の在庫コントロールの組織づくりに取り組みましょう!

-セミナー詳細-

【開催日時】 2021年7月22日(木)15:00~18:00

【場  所】 オンライン(ZOOM)開催。日本全国、どこからでも参加いただけます。

【講  師】 齊藤孝浩(タカ サイトウ)ディマンドワークス代表 プロフィール

【主な内容】 

〇 規模の拡大と共に過剰在庫を抱えてしまう理由
〇 ファッション小売業の在庫最適化とは?
〇 顧客購買行動にあわせた仕入管理と販売管理の原則
〇 商品MD計画を店舗やECの販売担当者と共有するための秘訣
〇 シーズン商品を売り切る組織に生まれ変わるために必要なこと

【参 加 費】  通常価格:25,000円(税込) 
            ↓ ↓ ↓ ↓ 
           ※6月30日までの早割価格
            20,000円(税込) 

【定  員】 先着10名様(定員になり次第締め切りとさせていただきます)

【参加対象の方】ファッション専門チェーン、EC販売事業者の経営者様、経営幹部様、事業部長様など事業の組織づくりの意思決定や改革を指揮する立場にいらっしゃる方

セミナー詳細&お申込みは ⇒ こちらから

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May 31, 2021

理想的な営業利益率は何%?

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先週金曜日からスタートしたWWDJAPAN連載中「ファッション業界のミカタ」のオンライン連続セミナー。
1回目は、世界アパレル専門店売上ランキングの概要とファッション流通企業の代表的な3つのビジネスモデル(P/Lとそれを支えるB/S構造)について解説しました。
質問タイムに、
損益計算書P/Lの営業利益率は何%が理想でしょうか?
というご質問がありました。とても、いい質問です。
一般的には、小売業は営業利益率10%あれば、優秀と言われます。
損益分岐点も低くなり、不測の売上減のような危機にも比較的耐えやすい体質、周りからの評価も申し分ないでしょう。
しかし、筆者はそのご質問に対し、
まず、その企業が目指すビジョンがあって、それを実現するのに毎年、営業利益額(厳密には繰越利益)がいくら必要か?
が正解であって、率を目指すべきではないのでは?
とお答えさせて頂きました。
つまり、ビジョンの実現に必要な額がはじき出ことが出来れば、20%でも、5%でも、極論それ以下でも、その企業にとっては正解でしょう。
例えば、何年後かに、
無借金経営にしたい、
新しいマーケットに進出したい、
これからの顧客購買行動の変化にあわせて物流やシステムの設備投資をしたい、
などなど。
ビジョンに必要な金額が明確になれば、
毎年の販売管理費、粗利高、売上高も根拠のある予算を設定することができる、という訳です。
ある会社の経営者さんは、わずかな営業黒字でいい、その分、従業員の成長にお金(販売管理費)を使いたいとおっしゃいます。
これも立派なビジョンのひとつかと思います。
ビジョンを決め、それにあわせて稼ぐ金額を決める
これは筆者も学んだキャッシュフローコーチの和仁達也先生に教えて頂いたことのひとつでした。
まずは、どんぶり経営から抜け出すために・・・
ビジョンを決め、P/Lを設計し直すことから始めたい、
そう感じている方には、こちらの書籍がオススメです。
超★ドンブリ経営のすすめ

財務諸表はあくまでも結果を表したもので、税理士や会計士がつくるもの?
いやいや、経営者さん自身が、3年後、5年後にどんな形にしたいか?から逆算して考えるのもありですよね。
もしそんな機会があったら、経営者の皆さんはどんな財務諸表の形を描かれるでしょうか?
身動き取れない訳じゃない、新興企業さんには、是非そんなアプローチで経営を行って頂きたいものです。

【お知らせ】

WWDJAPAN連載中「ファッション業界のミタカ」オンライン連続セミナーは
2回目以降も、ご興味のある回のみでも、お申込みいただけます。

申し込みは >>>こちら

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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May 25, 2021

これからの店舗の役割は、フィッティングルーム(試着室)がカギを握る

20180817_1257325月21日の日経MJの1面に
DtoCブランド fou fou フーフーが代々木上原に開設した
完全無人試着室が紹介されていました。

オンラインで商品を見て、試着を希望するユーザーは、ネット予約を行い、
マンションの1室に設けられたショールームに、事前に伝えられた暗証番号で入室し
一組あたり約1時間内にユーザーは自由に試着をし、
気に入った商品があれば、オンライン注文を行うというもの。

試着した写真を撮って、後で、家に帰ってゆっくり検討し、
オンライン注文することも可能です。

デザイナーのコウサカさんの noteによれば、
週3回、1日あたり3つの時間帯(45分)が予約できるようなので
月に約36組が試着可能ということ。

記事によれば、もともと、この試みは、店舗を持たずにオンライン販売にこだわる同ブランドが行っていた、全国を回る「試着イベント」での気づきから始まったそうです。

・お子さんがいらっしゃる方が、落ち着いて試着ができない、とか

・店舗スタッフのお声がけや周りで試着している人が気になって、自分のペースで試着ができないとか

・店舗スタッフがいると、試着したのに、買わないと申し訳ないとか、

そんなユーザーさんの「心の声」に気づいて、
では、誰もいないところで思う存分、試着をしてもらおう、という発想から生まれたようです。

実際利用された方は、

「試着したら買わなきゃというプレッシャーがなく、納得が行くまでアイテムやサイズを試せた」

「人目を気にせずたくさん写真をとって家でゆっくり検討できるのも嬉しい」

店舗スタッフが好意で行っている、背中を押す接客もプレッシャーに感じる人もいますから・・・

これまで、店舗でのショッピングで、試着がストレスに感じて来た人には受けるサービスではないか、と思いました。

その一方で、想定客単価と稼働率と家賃から、採算はどうなのか?と、つい計算してしまう筆者がおりますが(笑)

 

ショッピングのデジタルシフトが進み、

更に、この1年はコロナ禍で外出自粛、来店客数減で、店舗の役割を考え直す企業が増えています。

「店舗は体験の場」と言われて久しいですが、体験とは、一体、何でしょうか?

きめ細かい接客による、おもてなしでしょうか?

それもひとつだとは思いますが・・・

サイズがあり、コーディネートをして着用することが前提のファッションアイテムにおいては、

商品の現物を手に取って確認する場、そして、

自分に合うかを確かめるフィッティング(試着)の場であることは揺るぎありません。

 

先日、外出自粛で、来客が少なくなったいくつかの商業施設を視察している最中、

いくつかの店舗で、気になった服を試着していて感じたことがあります。

相変わらず、フィッティングルームって狭くて窮屈なところが多いな

そんな狭い中で着替えて、着替えが終わったか、どうかというタイミングで

店舗スタッフから「いかがですか」と声がけされて、自分のペースで試着が出来ていないことを、あらためて痛感しました。

その際、思い出したのが、

2018年に拙著「アパレル・サバイバル」(日本経済新聞出版社)の取材でアメリカに行った時に訪れた、オンライン通販出身のメンズウエア「BONOBOS(ボノボス)」のショールーム店舗での店舗体験でした。

同社は、オンライン販売が出自で、試着をしてから買いたいという顧客のために、ガイドショップというショールーム店舗を全米に展開しています。(当時全米約50店舗)

顧客は店頭にならぶ商品の中から、気にいた商品を試着をし、

購入を決めた商品は、店舗スタッフに手伝ってもらって、タブレットからオンライン注文をし、

購入商品は倉庫から自宅に宅配されるというしくみです。

このお店が、通常のファッション専門店と違うのは、

◆タブレット決済なので、レジスペースがない
◆バックストック在庫がないので、店内が広い

その分

◆フィッティングルームが通常の専門店より広い
◆一緒に来た人がくつろげる、大きなソファーがある

というものでした。

これは、これから、オンライン販売比率30%台が常態化する、と予測される

リアル店舗を中心に展開するファッション専門店の未来の店舗の姿のひとつを示唆しているように思いました。

筆者は、店舗のすべてがショールームになるべきとは思っていません。

なぜなら、買ったものを持って帰りたい、あるいは、そのまま着て帰りたい、という需要は確実にあるからです。

しかし、坪効率を上げるために、店舗に、ストック在庫含めてぎゅうぎゅうに店舗に商品を詰め込むために、

契約面積に対して、商品の陳列スペースを最大限に取る、という考え方は時代遅れになって行くと思っています。

では、その時、何を起点に考え直すべきか?

常に、顧客購買行動起点で考えたいです。

店舗は、商品を確認する場、フィッティングを体験する場

そう考えると、これまで、狭く設計せざるを得なかったフィッティングルームのありかたから見直すべきではないだろうか、と

オンラインで情報を取り、店舗で商品を確かめ、試着し、自分のペースで店舗で買うか、オンラインで買うかの選択をする時代に

顧客体験としてのショッピングをデザインし直す際、

顧客が最も大切にする、フィッティングの場である「試着室」の見直しに
まずは取り組んで行くべきではないか、と痛切に感ます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 10年後のアパレル業界でのサバイバルのカギは、服のライフサイクルを意識し、顧客の持続可能なクローゼットのワードローブの循環をお手伝いすること。大量生産、過剰供給時代を超えて、新しい時代のお客様との関係構築がテーマです。

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May 17, 2021

デザイナーズコラボの取り組み精度が高まった、ユニクロ+J(プラスジェー)成功の舞台裏

20210524_1558115月17日の日経MJ紙面にファーストリテイリングのユニクロの外部デザイナーとのコラボの立役者 勝田R&D統括責任者インタビュー記事が掲載されており、大変興味深く読ませていただきました。

ジル・サンダーさんとの+J(プラスジェー)を筆頭に、クリストファー・ルメールとのUNIQLO U(ユー)など、ここ数年は、こういったプロジェクトが、実にうまくユニクロのイメージアップ、ステージアップに貢献しているなと思っています。

記事の中から、気になった箇所を少し、引用、紹介させていただきますね。

まず、勝田氏は、今回の+Jの取り組みを

09年から11年の1回目の取り組みと比べ

「より良いものを分かりやすく」
「チョイスが増えるとお客様が迷ってしまうので」
「(ジルさんの抵抗と闘いながら?かなり)商品を絞り込んだ」

とのこと。

「今回は絞ってメッセージ性を明確にしたことが
ビジネス的に成功した結構大きな要因だと思います。」

と全体を振り返っておられます。

これは、筆者の印象ですが、

09年~11年のころは・・・
+J(プラスジェー)に限らず、他の東京コレクションのデザイナーさんたちとの取り組みもそうでしたが、

それまでデザイナーコラボの連発で世界的に成果を上げていたH&Mに負けじ、と
後追いみたいに焦ってやっている感じがして・・・

デザイナーとの付き合い方が、
定まっていなかった、活かせていなかった、もったいない、
と思うことも少なくありませんでした。

当時の+Jは、
当然、オリジナルのジルサンダーのラインよりは価格は安かったのですが、

(セレクトショップのセカンドライン並み)

ユニクロよりも高い価格帯であり、
「わかる人には、わかる」域を超えておらず、

なおかつ、その割に、作り過ぎていたため、
計画通りに売れずに、過剰在庫を抱えてしまい、
販売間もなく、値下げとなり・・・

実にもったいないな、と値下げされた店頭在庫の山を眺めていたものでした。

今回は、その時のその反省も活かし、

商品を絞って、
オンライン販売と一部店舗限定販売にして、
無理に作り過ぎなかったのが

よかったのでしょうね。

また、10年前とも環境が全く違います。

ユニクロのブランドステージは高まり、

SNS時代にもなったことで、

発売までのストーリーづくりも伝え方も上手く、功を奏し、
また、期待するファンがSNSで盛り上げてくれたのも大きいでしょう。

発売と同時に、ほとんどの商品が値下げをせずに即完売だったようです。

やはり、ファッションビジネスは、何ごとも、適量、腹八分目以下の方が
お後がよろしいようで、ということですね (笑)

記事では、マーケティングや販売の側面だけでなく、

「一流のデザイナーたちとの協業の中で当社の人材も彼らと直接ガチで仕事をしてきました。これは財産です。知識としても能力としても、個人としても組織としても力が蓄えられました。」

と、ものづくりをする現場でも、デザイナーたちから、多くを得たとおっしゃっています。

確かに、プロジェクトにかかわった方々の、それぞれのデザイナーからの学び体験は、

今後のユニクロのレギュラーラインのプロダクトの質の向上にもつながって行く、貴重な未来への投資の役割も果たしていたに違いありません。

最後に、
勝田氏が一流デザイナーと交渉する時の口説き文句が紹介されていたので
引用させていただきます。

「あなたがやっているものの安物バージョンは死んでもやらんよ」

「あなたの才能をユニクロというインフラで発揮して欲しい」

と創造意欲に訴えかけるようにしている。

とのこと。

それだけ、ユニクロという「インフラ」が、グローバルでも説得力をもつようになった、自信あふれる言葉ですね。

今回の+Jの成功もきっと、これから取り組みを行おうとするデザイナーたちに対して、説得力を高めることにつながるでしょう。

今後も、ユニクロには、双方のステージアップにつながるデザイナーコラボを楽しみにしています。

 

ちょっと蛇足的な話ですが・・・

ファッションビジネスの「適量」在庫の話をすると、

筆者の在庫コントロールセミナーに参加された方に

「売れ筋商品と死に筋商品の違いは何ですか?」

という質問をさせて頂くことがあるのですが・・・

答えは、多くの方々がお答になる、

たくさん売れている商品が売れ筋で、あまり売れない商品が死に筋

ではありません。

期末に残った在庫を見て、反省すればよくわかりますが、

答えは、

どんなに数がよく売れる商品、売上ランキング上位の商品でも・・・

販売力を超えて、つくり過ぎて、大量値下げをせざるを得なくなり、損をもたらす過剰在庫分は

死に筋商品です、とお答えすることにしています。

さまざまな制約のあるアパレルビジネスでは、適量管理を肝に銘じたいところです。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ユニクロはZARAを超え、世界一になれるのか?両者の過去から未来への、経営者の経営信念、ビジネスモデルとその変遷を理解すれば、見えて来ます。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

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May 10, 2021

足し算だけでなく、引き算をする勇気

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5月9日の日経新聞のサイエンス面に「現代人は『引き算』が苦手」という見出しで、米バージニア大学のチームが英科学誌ネイチャーに発表した「人間は引き算の決断が苦手で、足し算にこだわる」とする説を紹介する記事が掲載されており、興味深く読ませて頂きました。

要は、
チームがいくつかの実験で、調査対象者に、問題解決のためのいろいろな問いかけをしたところ、
多くの人が、「引く(減らす)」ことよりも「追加(増やす)」するで物事を解決する傾向があることに気づいた、という話です。

本文で紹介されていた例をいくつか抜粋して紹介させていただくと、

〇エッセーを改善するように頼まれると、多くの人は文章を長くした

〇レシピを改善するように言われると、人々は多くの材料を投入した

〇旅程を整えれるように頼まれると、多くの人は立ち寄る場所を追加した

など、足し算をする(増やす)行動をとる人が多かったとのこと。

一方、別の質問で、

改善にあたり、追加することも取り除くこともOKであることを伝えると
引き算のアイデアが増えたそうです。

記事の後半では、専門家の方々が

「引き算の発想があっても、引く決断は葛藤を生む」
「引き算は過去の労力が無駄になる負い目もある。」

ことを指摘しながら、

ウォークマンやiPhoneの例を挙げて
「勇気をもって引き算を」と推奨する一方、

「注意すべきは大切なものを引き去らないことだ。重要な何かを見極められたら引き算もしやすいが、それができないから苦労する。」

と結んでいます。

社長さんや上司に「改善しろ」、と言われると、
多くの人が、今のままでは物足りないのでは?と忖度し、

どうしても、選択肢や仕事を増やすこと=足し算中心に考えてしまうのは、
企業現場でもよくある話ではないでしょうか?

この話を、日頃、業務改善に当たる仕事の現場で感じていることに照らし合わせて
考えてみたいと思います。

1)在庫の中身の改善

在庫は金額や数量ではなく、中身(鮮度)が大事な時代。
多くの現場では、
過去から現在の売れ筋商品の仕入を増やそうと考えがちですが(足し算)、
同時に、期限までに売り切れない死に筋商品を換金して(引き算)、
未来に売れる、鮮度のよい在庫の中身に入れ替えるアクションが大事。 

2)利益体質づくり

販促費の手を尽くして、伸びしろがあり、純増となる、新販路であるECの売上増に躍起ですが(足し算)、 
その一方で、既存店の利益額が増える方策や不採算店舗を整理するなど、
引き算による利益体質づくりが求められています。

3)未来への投資のための現預金増

先行き不透明なご時勢に、借入を増やして、しばらくの運転資金は確保されたと思いますが(足し算)
在庫や資産などお金に換わるもの(埋蔵金)を換金(引き算)、回転させて、現預金を増やしたい時です。
増えた現預金は、未来に利益を稼ぐ新鮮な商品仕入や生産性向上のためのソフトウエア投資に使いたいです。

4)無駄な仕事をなくして生産性向上

人員減らして(リストラ)1人あたりの仕事を増やす(足し算)ようなことが行われていますが、
人件費は下がっても、生産性は上がらず、モチベーションが下がるばかり。
業務棚卸で無駄な仕事を見つけて、勇気をもって止めて(引き算)、利益向上のために優先度の高い仕事に集中させる環境をつくり、1人あたりの生産性(利益)を増やしたいところです。  

などなど、アイデア出ししていると、いろいろ出て来そうです。

是非、皆さんも、足し算だけでなく、引き算も選択肢に入れて、
身の回りの仕事を見直してみてはいかがでしょうか?

右肩上がりでない市況においては、引き算が利益確保の決め手になることも少なくないと思っています。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 2021.5.20 15:00~18:00 @オンライン開催 

これから事業で本格的に店舗およびECの在庫コントロールに取り組みたい、
再構築をしたい、組織と役割を見直したいという企業経営者様、事業責任者様向けの内容です。

定員10名様限定、参加2大特典あり

セミナー詳細はこちら
https://dwks.jp/2021/04/22/seminar-20210520/

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April 19, 2021

前年比だけにとらわれない経営を

2昨年(2020年)3月から業界がコロナショックの影響を受け始め、
多くの企業で前年同月の実績と今年の同月の業績の対比(前年比)が困難になりました。

そのため今年は前々年(2019年)の実績を参考に計画を立てたり、
今年の実績を前々年対比でどうなのかを評価する機会が増えました。

販売検証をする実務の現場では、以前から前年に異常値があると、2年前対比や3年前対比はよくやる切り口なのですが、

ここのところ、各メディアのニュースでも「前々年対比」に触れる記事が多くなったように感じます。

これは2011年の東日本大震災時が比較にならなかった2012年の時以来でしょうか。

もちろん、災害については、心から、二度と起こらないことを祈りますが、
世の中が前年比だけにとらわれず、今後も、もう少し長い視野(スパン)で業績評価をするようになる傾向については歓迎したいと思います。

そもそも、「前年対比」は、平時においては、

上場企業であれば、既存店売上高の前年比が目先の株価に影響したり、

営業現場では、売上が予算に届かない時に、
予算には届かなかったが、前年よりは売れている、など、前年比を言い訳に引っ張り出すなど・・・

ある意味、最も身近な尺度のひとつかも知れません。

一方、「前年比」は比較しやすい(出しやすい)ものの、前年の状況次第では参考にならない尺度であることも少なくありません。

前年が天候やトラブルで売れなかった、逆に特需があったなど
前年のハードルが低ければ前年比が大きく伸びるのは当たり前、その逆もそうです。

特に、小売業はどうしても「前年比」という短期視点に一喜一憂しがちですが・・・

もう少し中期から長期視点で事業の推移を見るべき(3年平均成長率など)である、ということは、

筆者が「ユニクロ対ZARA」の取材時にスペイン、インディテックス社のインタビューに伺った際に、同社広報部の方とのディスカッションの中で気づかされた視点でもありました。

そんな経験もあり、同著執筆以降は、面倒でありますが3年から5年分を時系列に並べて業績を観察することを習慣というか、肝に銘じています。

特に、特定の事業のこれまでの軌跡や健康状態やライフサイクルを知る上で、取っ掛かりとしての長期(5年から10年)時系列推移分析は有効です。

グラフにして、売上や営業利益のアップダウンに着目して・・・

売上や営業利益のピークを発見し、そこで何が起こったのかを深堀りし、その時と比べて、今、何が良くて何が悪化しているのかを見て・・・

今後の伸び代や、改善余地や次の目標を考える。

これ、ここ5ー6年、筆者がコンサル現場でも、よく行っているアプローチです。

最近の例で言えば、前回のしまむらのエントリーであれば、

まず、同社の2000年以降の業績を時系列で並べてみると(以前WWDジャパンの連載で行いました)、

2017年2月期がここ20年間の売上高、営業利益のピークがあることがわかるので、

その時と比べて、足元は何が良くて、何がいまいちなのかを要素ごとに分析したりするわけです。

ところで、WWDジャパンに月イチで連載させて頂いている、
上場企業の決算書の見方を解説しながら、業務改善の切り口を浮き彫りにする連載記事

「ファッション業界のミカタ」

はおかげさまで連載スタートから2年が経過し、3年目に入りましたが、

ここでも、決算書を前年比だけではなく、3年以上時系列で見ることを心がけています。

ご存じのように、通常、決算書は前年比で構成されているので、
3年以上を比較するには、最低2期分以上の決算書を見て並べないといけないことを意味しています。

ひとつの企業にフォーカスして分析する時は

●10年以上の時系列で見て、気になるところを深掘りする

●売上高ではなく、営業利益で考える

●利益を生み出すビジネスモデル(経費構造、BS構造)から考える

また、

●公表されている数値どうしを割り算をして、
単価や単位あたりと言った、購買行動や経営の最小単位にして、その効率の推移を見て考える

●年間ではなく、四半期に分解して、複数年度比較して、アパレル特有の季節ごとのその企業の特徴やクセを掴む

などが、筆者がよく行うアプローチです。

企業の業績は、当然「顧客購買行動」なしには語れませんし、

企業の戦略、戦術には必ず経営者さんや企業のイズムやポリシーが表れますから、

決算書の数字を通して、頭の中で勝手に経営者さんや経営幹部さんと対話をすることを楽しむことにしています。

話を元に戻すと、

大変な時も、平時も、業界企業が健全な中長期ビジョンに基づいて経営するために、

前年比にとらわれず、中長期で業績を考えることを推奨したいと思っています。

【WWDジャパン主催 オンラインセミナーのお知らせ】

5月後半からスタートする、WWDジャパン主催のオンライン連続セミナーに登壇いたします。
昨年は「ユニクロ対ZARA 2020」に登壇させて頂き、好評を頂きましたが、
今年は、世界アパレル専門店企業トップテン、ZARA、ユニクロ、ZOZOの決算書から読み取るべきことが各回のテーマです。
まずは、peatixで申し込みが始まりました。
今回は、ウェビナーではなく、対話型で進めますので、人数限定です。
お早目にお申込み下さい。
WWDジャパン主催オンライン連続セミナー「ファッション業界のミカタ」

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARA。これから進む道も、経営者の経営信念、ビジネスモデルとその変遷を理解すれば、見えて来ます。両社の比較分析が、未来のアパレルビジネスを考える上で、とても参考になると確信しています。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

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April 12, 2021

しまむら2021年2月期決算、ローカル地域密着対応とインフラを活かしたデジタルシフトが今後の成長のカギ

Photo_20210413183801前回の世界アパレル専門店売上ランキングトップ10の10社の中で、唯一増収増益で、7位に食い込んだ、しまむらの2021年2月期の決算関係書類に目を通しました。

連結で
売上高 5,436億円(前比4%増)
営業利益 380億円(同65%増)
営業利益率 6.7%

国内事業(個別)で
売上高 5,366億円(同4%増)
営業利益 382億円(同62.7%増)
営業利益率 7.1%

連結と国内事業の差が主に台湾事業で、中国からは昨年10月末に全店撤退しています。

同社もコロナ禍で第1四半期は散々でしたが・・・

第2四半期の6月以降は郊外立地中心の低価格チェーンということもあり、大きく回復し、コロナに見舞われた1年だったにもかかわらず、3年連続の減収減益に終止符を打った決算でした。

販売効率を下げながら、出店を続けていた、過去3年の失策と比べると、
店舗のスクラップ&ビルドを進め、もともと得意だった小ロット短納期生産による商品回転により、値下げをコントロールできたことが、増益要因としています。

やっぱり、多品種、小ロット、短サイクルの方が、「しまむら」らしいですよね。

しかし、過去5年間の業績を並べて、4年前の2017年2月期の売上高および営業利益のピーク時と比べると・・・

売上高は4年前(ピーク)対比95.9%、営業利益 同77.6%の水準なので、まだまだ復活というより、回復途上といったところでしょうか。

しかも、店舗および売場面積が2017年2月期対比、4年間で5%増えているにもかかわらず・・・1店舗あたり売上高、あるいは月坪売上高と言った販売効率が14%下がっているのを見ると、

メインの「ファッションセンターしまむら」は、そろそろ出店余地も限られていると思うので、成熟期にふさわしい、店舗数よりも、1店舗あたりの販売効率を回復させる経営が求められますね。

但し、ファッションセンターしまむらを筆頭に、各業態、店舗あたりの売場面積の標準化が徹底されているので、増床戦略というよりは、1店舗あたりの売場面積を広げ過ぎないように

〇販売効率が上がる好立地への移転

〇EC店舗受取りの拡大による来店促進

あたりが改善のカギになりそうです。

 

今回決算書を見ていて、一番注目したのは、まず、

1)「ファッションセンターしまむら」業態の中でどんな部門の売上が伸びているか?

また、

2)その他の業態の伸びしろを知ることでした。

同社が決算ごとにリリースしている「決算概要」は、同社のデータブックにあたりますが・・・

その中の部門別売上高・粗利益率のデータを過去5年時系列で並べて、各部門の推移を見ながら、なるほどと思ったのは、

「しまむら」業態の中で、婦人衣料や紳士衣料といったアパレル部門はここ数年売り上げの減少が続いており、伸びているのは、ベビー子供服やインテリアだということ。(直近1年もそうです)

つまり、しまむらは低価格だから、婦人・紳士アパレルがよく売れているか、と言えば、決してそうではなく、それらの減少をカバーしながら、売り上げを伸ばしているのは、大人衣料以外の部門だということです。

次に業態別でいうと、伸びしろを感じるのは、ファッションセンターしまむらやアベイルではなく、第3の業態、バースデイ(雑貨マタニティ、キッズ、ベビー衣料)業態です。

新規出店もありますが、それ以上に総売上、販売効率が伸びているのがわかります。
(4年前240店舗→21年2月末298店舗、4年前比24%増、に対し、売上高は33%増)

つまり、同社には、地域に密着した、更に、「家(おうち)」寄りの、実用的な商品に強みがある、とあらためて感じたものでした。

中国全面撤退に見られるように、海外進出は期待できない、同社ですが、

地に足をつけ、ローカル対応に更に磨きをかけながら、

また、急成長は望めませんが、

国内No1と言ってもよい、店舗網、物流網、独自開発のITのインフラを活かしたチェーンストアとしての安定感と利益体質づくりに磨きをかけて行くことを、

今後とも注目して行きたいと思います。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫最適化を考えるビジネス読本、しまむらの強みも何話かで解説しています。

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

こちらは電子書籍 Kindle版 です。紙の本の在庫が少なくなりました。ご希望の方は弊社までご連絡頂ければご対応いたします。

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April 06, 2021

世界アパレル専門店売上ランキング2020 トップ10

4cimg0441 世界中がパンデミックの影響を受けた2020年度。 世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃い、売上高や営業利益などをまとめる機会ができましたので、毎年恒例になりました売上高ランキングTOP10を共有させていただきます。

 円建て比較にあたり、為替レートは2021年1月末の €=127.04円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=104.21円、英国£=142.95円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 前年増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2021.1期) 2兆5,918億円 -28% 1,914億円 7.4% 6,829 ZARA
2位 H&M (瑞;2020.11期) 2兆3,453億円 -20%  388億円 1.7% 5,018 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2020.8期) 2兆0088億円 -12% 1,493億円 7.4% 3,630 UNIQLO
4位 GAP (米;2021.1期) 1兆4,380億円 -16% -898億円 赤字 3,715 OLD NAVY
5位 Lブランズ (米;2021.1期) 1兆2,344億円 -8% 1,645億円 13.3% 2,669 Bath&Body Works
6位 プライマーク (愛;2020.9期) 8,436億円 -24%  517億円 6.1% 384 Primark
7位 しまむら (日;2021.2期) 5,426億円 +4%  380億円 7.0% 2,199 しまむら
8位 NEXT (英;2021.1期) 5,183億円 -17%  548億円 10.6% 491 NEXT
9位 アメリカンイーグル (米;2021.1期) 3,917億円 -13% -282億円 赤字 1,078 AEO
10位 アーバンアウトフィッターズ (米;2021.1期) 3,594億円 -13%      4億円 0.1% 645 Anthropologie

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアは過剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンC&Aおよび中国で急成長中の越境ECファストファッションSHEIN(シーイン)あたりもTOP10にランクインする規模と思われますが、それぞれ、売上高がつかめなかったため、除外しております。                              

【解説】

全体を見渡すと、経営破綻した米アセナリテール(前年7位)が消え、10位以下に控えていたアメリカ企業がランクインした格好ですが、上位6位までのランキングは2019年と変わりはありません。

以下、1位から5位について、そして、気になるところにコメントさせて頂きますね。

1位のインディテックスは

通期コロナの影響を受けて大幅減収、減益も、7.4%の営業利益率を上げたのはお見事でした。

全世界の店舗でRFIDの導入と各国EC在庫と店舗ストックルーム在庫の一元管理が完了し、世界のどのアパレル専門店よりも、いち早くオムニチャネル化が完成した、と言ってもよいでしょう。

EC売上比率は店舗の売上減もあって33%に。これからは同社のDXは顧客のスマホを使った店舗での拡張体験へ、そして、次のテーマである、サーキュラーエコノミー(循環型経済)に力が入ります。

関連エントリーーZARA(ザラ)のインディテックス2020年度決算。大幅減収減益も、全世界でECと店舗の在庫一元化が完了し、盤石体制に。

2位のH&Mは

第1四半期に売上、利益の改善が見れたものの、その後、3つの四半期がコロナの影響を受けて、大幅減収、減益も、何とか黒字着地させた経費コントロールと仕入コントロール力はさすがです。

店舗閉鎖の影響もあり、EC売上比率は28%に。

これからは、遅れていたデジタル化へのアクセルが回復のカギとなるか?それとも、やはり、低価格品はECでは損益が取りづらく、苦戦するのか?注目の1年になります。

関連エントリーーH&Mとインディテックス(ZARA)の決算進捗に見る パンデミックの欧州グローバルチェーンの業績への影響

3位のファーストリテイリングは

年間のうち、半期分、コロナの影響を受けながら、市場は日本、中国が中心。欧米に比べ、市況回復が進んでいるため、欧州勢よりは、有利な環境と言えるでしょう。

特に国内ユニクロ事業の第4四半期の体質改善と踏ん張りは、柳井会長の執念を感じ、目を見張るものがありました。

今期は、3月から消費税分値下げした分を、同社がどう利益を確保するのかに注目です。

関連エントリーーファーストリテイリング20年8月期決算に見る、国内ユニクロ事業の凄さ

4位のGAPは

大幅減収赤字、GAP、バナリパで228店舗閉店とリストラが続きます(GAP事業売上前比73.0%、バナリパ事業は同57.5%)。

店舗売上減で、オンライン売上は54%伸びて、EC売上比率は45%に(前年は25%)。

5位のLブランズは

ヴィクトリアズシークレット(VS)のリストラ後の見事なV字(利益)回復と言ってよいでしょう。営業利益額だけを見ると、インディテックスに次ぐ、世界第2位の位置づけです。

ヘルス&ビューティのバス&ボディワークス(B&BW)は、パンデミックに関わらず、店舗が前年並みをキープし、既存店+ECが45%増と大躍進。ECは倍増で、いよいよVSとB&BWの売上が逆転しました。

ヴィクトリアズシークレットの店舗の整理はついたようなので、今期は大幅増収増益が期待できそうです。

関連エントリーーファッション&ビューティー市場の変化を見極め、事業ドメイン転換で勝ち残る、米 L Brands(エル・ブランズ)

以下、6位以下で、めぼしいところを付け加えますと、

しまむらがトップ10企業の中で唯一の増収増益。なんと、7位に浮上です。

これは、品揃え改革(同社らしい多品種小ロット高速回転の原点回帰)によって、かつての販売効率を回復しつつあるのが大きな要因です。

一旦、かつての販売効率まで戻った後、出店余地の限られる日本国内で、どのように、収益を伸ばすのかが、焦点になります。

8位のネクストは、得意の店舗網、物流網を活かし、クリック&コレクト(オンライン注文の店舗受取り)を上手く併用しながら、オンライン売上比率が昨年の50%から65%まで高まりました。

今後、力を入れるのは、そのインフラをフル活用した、他社ブランドのEC事業(オンライン受注から配送まで)を、まるっと代行するという、NEXT TOTAL Platform戦略への取り組みとのこと。これは、興味深いです。

この取り組みは、確立されたチェーンストアとして、違った意味で、世界一のインディテックスよりも先を行っている発想かも知れません。

今後、デジタルシフト後のチェーンストアのありかたの一例として、今後、深堀りしたいと思います。

さて、まだまだ、パンデミックの影響が残る、2021年度のランキングはどうなるでしょうか。

筆者としては、ZARAのインディテックス、ヘルス&ビューティへのドメインチェンジが進むLブランズ、チェーンストアの強みを活かしつつ、プラットフォーマーとしての付加価値を追求するNEXTの3社に注目したいです。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になることでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」(2014年発売) を2018年のデータでアップデートした文庫本です。

いつもお読み頂きありがとうございます。

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