September 13, 2021

EC拡大時代のダンボールゴミを減らす配送サービスの取り組み

32cimg0465_202109141309019月8日の繊研新聞に、アメリカで複数のブランド、ストアにオーダーしたEC注文に対し、顧客ごとにまとめて、1つの梱包することによって、家庭で出るダンボールゴミを削減する配送サービスについて書かれた記事が掲載されており、興味深く読ませていただきました。

日本でも多くの方がこの1年半、ECショッピングを増したことと思いますので、宅配業者さんが荷物を届けてくれた後のダンボールゴミの処理が面倒だったり、

リサイクルできるとは言え、毎回出るダンボールゴミの山を見て、これっていずれは問題にならないのだろうか?と感じていた方も少なくないでしょう。

筆者も正しくその一人です。

記事によれば、そのサービス「オリーブ」を立ち上げたのは、かつてWalmartに買収されて、今や同社の中で、全米小売業において最も積極的なEC関連の投資、取り組みを先導している、ジェットドットコム社の創業メンバーのおひとり。この方は、買収された後もしばらくウォルマートでも勤務されていたようです。

要はアメリカの物販ECビジネスを最も熟知した方のお一人と言ってもよい方が立ち上げたソリューション型のサービスというところも興味深いです。

このサービスの流れは以下の通りです。

顧客から「オリーブ」のサイトまたはアプリ経由で同サイトの登録ブランドに注文された商品は、

 ↓

各ブランドまたはストアの倉庫から「オリーブ」の
配送センター(コンソリデーション+リサイクリングハブ)に届けられ、
(現在ニュージャージー1か所、カリフォルニア州1か所)

 ↓

そこで顧客ごとに「オリーブ」専用折り畳み式再利用ボックスに詰められ、

 ↓

エリアにより、週1回または2回の決まった曜日に着くルート配送便で自宅に届けられる。

そして、要を終えたボックスは同じ翌配送曜日に家の前に出しておけば、「オリーブ」が回収して行くというものです。

ブランドから「オリーブ」のハブに届く時に使われたダンボールはオリーブ側からリサイクル業者にまとめて引き渡されて処理され

この一連のサービスに対して、オリーブ側は売り手から売上の10%を手数料として徴収するそうです。

 

「オリーブ」の創業はコロナ禍の20年4月、

半年で、百貨店のサクス・フィフスアベニュー、専門店のアーバンアウトフィッターズ、アディダスやアシックスのようなスポーツブランド、ヒューゴボス マイケルコース アグ などなど 100以上の百貨店、専門店、ブランドが参加するようになったとのこと。

EC拡大時代の顧客のお困りごと、環境保護意識に対するサービスですが、どこまで広がるか、興味深いですね。

利用者、利用企業が増えれば、企業負担、手数料も下がって行くかも知れません。

日本では、宅配便業者さんが進んでいるので、そんなサービスを考えてくれるかも知れません。

家庭で出るダンボールの量は遅かれ早かれ問題視されると思いますので気にとめておきましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 06, 2021

担当者一人(ひとり)あたり管理可能な品番数、そして売場面積は?

Ministry-of-supply_20210906163901日経MJの連載の中でも、流通業界の裏方である「物流」を考える上でいろいろな示唆を頂けることから、毎週楽しみに読ませて頂いている月刊ロジビズの大矢昌浩編集長が連載されている「物流インサイドリポート」

9月3日(金)付のコラムは食品スーパーで進む自動発注システムに関する話題でしたが、

その中に従業員1人が管理可能な品番数やSKU数に触れられており、興味深く読ませていただきました。

まずは、以下「  」内の引用から。

「約1万アイテムを取り扱う平均的な食品スーパーでは通常、発注業務を10人程度で分担している。1人当たり1千アイテムを受け持つ。しかし、優秀な発注担当者でも一人でまともに管理出来るのは100アイテムがせいぜいとされる」

「残り900アイテムは売れ行きの変化や天候などを考慮せず、売れた分だけ機械的に発注するくらいしかできない。当然ながら精度は落ちる。」

(以上引用)

ということで、最近では、優秀な方の考え方をアルゴリズム化して、AI(機械学習)による自動発注システムの導入が進み、そこで作業時間を効率化させた担当者たちは、各自、重要な売り込み品番の在庫管理に注力することが進んでいるという内容でした。

このコラムを読んでいて、面白いなと感じたのは、アパレルや靴など、ファッション流通の世界でも、ひとりあたりが管理可能なアイテム数、品番数の限界みたいなものに、同じことが言えるよな、ということでした。

セントラルバイイングであるアパレルチェーンでは、本部側にMDやバイヤー、あるいはその各店やECサイトへの在庫配分と在庫コントロールを任されるDB(ディストリビューターあるいは在庫コントローラー)という職務がありますが・・・

それらの職務の方々やその事業の幹部の方々と話をしていると、必ず、一人が一度に何品番が管理できるか?ということが話題になります。

その裏には、現状、品番が多すぎて管理がし切れておらず、各種ロスが多い、労働時間が長くなっている、店舗の在庫管理作業が増えている、などから、

ひとりあたりが担当する売場面積やその中で展開品番数を管理可能なものにして、限られた予算の範囲内で、いかに効率のよい在庫運用ができるか、という意図があります。

これ、筆者の長年、多くの事業の仕入管理や在庫コントロール現場に携わっている立場から言わせて頂くと・・・

一度に管理し切れるのはおおよそ120品番前後まで、という仮説に行きついています。

実際、帳票上に出て来る品番数はもっと多く、それ以上管理している(つもりの)人もいますが・・・
実際には、上位120品番までしかアクションがとれていないのが現実だったものです。

日経MJコラムの食品スーパーでも100アイテムという数字に近いものがあって、面白いな、と思った次第です。
もしかしたら人の目診判断能力の限界なんでしょうかね。

もし、管理可能範囲を超える商品数を扱うと、どんなことが起こるか・・・

当然、範囲を超えたものは見れませんので、それらの管理は雑になりますし・・・

コラムのように1点売れたら1点(売れた分だけ)補充に終始?

そういったものに時間を取られていたら、重点販売商品の在庫戦略を考えるにも、十分な時間がかけれなければ、得られるはずの売上や粗利も失ってしまうことでしょう。

その結果、各店、各EC拠点に必要以上のSKU在庫が配分されたまま、放置されていたり・・・

必要ないのに補充されて寝かされたり・・・

気づいた時に、店舗が店間移動を行う業務が増えたり、運送費が増えたり・・・

それが後手に回ると、機会損失が増え・・・

プロパーで売れたであろうものも、値下げで消化、場合によっては売れ残って倉庫に返ってくる、

なんてこともあるわけです。

以前、ある方が、シーズン中に、そんな拠点ごと、SKU ごとに積まれている必要以上の過剰在庫って・・・

各店に眠っている埋蔵金(キャッシュ)だよね、っておっしゃっていたのが、言い得て妙だなと思いました。

ここからわかるのは、

機会ロスという言葉は、多くの場合、売れ筋の欠品と解釈され、追加発注を促されますが、

その一方で、実は、管理し切れなかった結果、各店に適正配分、配置されずに溜まっている、

つまり、放置されているSKU別過剰在庫の中にも機会ロスというものは多分に含まれているということです。

在庫があるのに販売機会ロス?

そうならないように、管理可能な品番数を知り、その中で、商売を、業務を回したいところです。

そうすれば、限られた在庫、リソースで、まだまだ、粗利も稼げるし・・・

プロパー、最終 共に消化率を高められるのではないでしょうか?

関連エントリー過剰在庫を持ち越さないために

関連エントリー売上は仕入(MD)、粗利は在庫運用(DB)で決まる

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】9月30日(木)15:00~ 次々回は10月21日(木)
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September 02, 2021

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次回は 9月30日(木)に開催します。その次は10月21日(木)。各回募集人数が限られていますので、

お早めにお申し込み下さい。

アパレル・靴・服飾雑貨などシーズン商品を販売するファッションストアやEC販売事業において、事業規模拡大と共に、欠品を恐れて、「良かれ」と思っての過剰仕入や、仕入担当と販売担当のコミュニケーション不足が要因で過剰在庫を抱えてしまうステージが訪れます。

一旦、そのステージに突入すると、毎シーズン、同じことを繰り返しても、事業の売上規模は拡大できても、年々利益率が低下し、在庫回転率とキャッシュフローが悪化し、今までのやり方が通用しない!と痛感する大きな壁にぶつかります。

そんな壁を乗り越えられる組織と、乗り越えられない組織の違いは、一体どこにあるのか、ご存じでしょうか?

このセミナーでは、これまで、20年近くに渡って、「過剰在庫の壁」にぶつかると言われる、年商30億円から100億円規模のファッション販売事業に特化して、30以上のストアブランドさんと、過剰在庫を粗利とキャッシュに換えるための組織づくりと人財育成の支援に取り組んで来た講師が、多くの組織に共通する問題点を明らかにし、再現性と効果のあるアプローチに絞り込み、実際に取り組んで成果を上げた企業事例と共に解説します。

右肩上がりの成長・拡大期における過剰在庫対応だけでなく、先行きが見通しづらく、仕入を絞って在庫運用している今こそ・・・

実店舗にも、EC販売にも共通する、シーズン商品の在庫コントロールの組織づくりに取り組みましょう!

-セミナー詳細-

【開催日時】 ①2021年9月30日(木)15:00~18:00 ②10月21日(木)15:00~18:00

【場  所】 オンライン(ZOOM)開催。日本全国、どこからでも参加いただけます。

【講  師】 齊藤孝浩(タカ サイトウ)ディマンドワークス代表 プロフィール

【主な内容】 

〇 規模の拡大と共に過剰在庫を抱えてしまう本当の理由
〇 ファッション小売業にとっての在庫最適化とは?
〇 顧客購買行動にあわせた仕入管理と販売管理の原則
〇 商品MD計画を店舗やECの販売担当者と共有するための秘訣
〇 シーズン商品を売り切る組織に生まれ変わるために必要なこと

【参 加 費】  特別価格:25,000円(税込) 
       

【定  員】 各回 5名様(定員になり次第締め切りとさせていただきます)

【参加対象の方】ファッション専門チェーン、EC販売事業者の経営者様、経営幹部様、事業部長様など事業の組織づくりの意思決定や改革を指揮する立場にいらっしゃる方

セミナー詳細&お申込みは ⇒ こちらから

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August 16, 2021

経済産業省2020年度 EC市場調査報告書とこれからのファッション専門店の構造改革

Bbw_20210817170301経済産業省が7月31日にリリースした電子商取引に関する市場調査報告書に目を通しました。

毎年の業界の市場規模やEC化率を知る上で参考にしています。

これによると、物販系分野BtoC-EC市場全体は

12兆2333億円 前年比 121.7% で市場のEC化率は8.08%(前年が6.76%)になったようです。

気になる衣類・服飾雑貨カテゴリーは

2兆2203億円 前年比 116.2% で市場のEC化率は19.44%(前年が13.87%)

伸び率は全物販市場に比べて下回りますが、

物販EC市場の中の金額規模では家電に次ぐ2番目に大きな規模になります。

EC化率も

書籍・ソフト(42.97%)
家電(37.45%)
生活雑貨インテリア(26.03%)に次ぐ

4番目(19.44%)にEC化率が高いマーケットです。

資料の金額、EC化率、前年比から実店舗、ECを合算した業界市場規模や
実店舗だけの前年比が計算できるので、実際に算出してみると・・・

物販BtoC市場全体は

151兆4022億円 前年比101.8%と伸びており、
実店舗物販だけとっても100.4%とコロナ禍でも物販消費は横ばいだったことがわかります。

カテゴリー別に見ると

食品、家電、化粧品・医薬品、生活雑貨・インテリア、自動車関連
は実店舗、EC共に市場規模(消費)が増えており、

衣類・服飾雑貨、書籍・ソフトのふたつのカテゴリーが
実店舗の落ち込みをECでカバーできなかったカテゴリーになります。

前年比(2020vs2019)
            実店舗  EC   合計     
衣類・服飾雑貨    77.6% 116.2%  82.9%

書籍・ソフト     86.0% 124.8%  99.2% 

ということで、衣類、服飾雑貨が最もコロナ禍の影響を受けた物販カテゴリーのひとつであることが、
表されています。

さて、こんな数字を見て業界各社はどう考えるのか?

〇 売上が2019年度の8掛けでも儲かるしくみをつくるのか?

それとも

〇 こんな環境でも伸びている上記カテゴリーの品揃えを行ってカバーするのか?

実際、コロナ禍で堅調だったと言われるユニクロやしまむらですら
アパレルの落ち込みをグッズ・その他やインテリアなどでカバーしているのが実態です。

ちなみに衣類・服飾雑貨の市場規模の年間のマイナス分は

食品、飲料、酒類以外の

・生活家電、AV 機器、PC・周辺機器等
・書籍、映像・音楽ソフト
・化粧品、医薬品
・生活雑貨、家具、インテリア
・自動車、自動二輪車、パーツ等

すべての年間増額分を合算してもカバーできません。

唯一、衣料・服飾雑貨の減額分をカバーできるのは・・・

食品、飲料、酒類の年額増額分だけです。

緊急事態宣言が延長される日本において、
ファッション専門店の抜本的な損益構造改革が求められています。

ちなみに右上の画像は、事業ドメインシフトを果たしたLブランズのバス&ボディワークスです。

アパレル祖業でSPAの元祖と呼ばれる彼らは・・・

2000年代にはアパレル事業を売却し、ランジェリー・インナーウエアのヴィクトリアズ・シークレットに軸足を移し、

2020年の今はもう、ヘルス&ビューティ専門店で企業の大半の利益を稼ぐ企業となりました。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 09, 2021

ファッションストアはどう生まれ変わるのか?

20210716_184300-18月8日の日経新聞に、外食産業のコロナ後に向けての対策に関する記事が掲載されていました。

店舗の売上が32%減少し、持ち帰り需要が下支えしたため、持ち帰りの比率は34%に上昇。
(20年は店内飲食61%、持ち帰り34%、宅配5%だった模様。)

産業全体が今後も全体の30%程度は持ち帰りになることを予測して、外食産業各社がどんな投資をしているかについて紹介されていました。

・大手各社はモバイルオーダーアプリ(事前注文、事前決済、店舗受取り持ち帰り)を導入し、

・店に入らなくても専用窓口から受け取れるように厨房の配置を変え、店舗内の座席は減るが、持ち帰りの利便性向上を優先させる店舗もあれば・・・

・ドライブスルーを持つ店舗では、調理能力を2倍にした厨房設備の導入を進める

・持ち帰り専用お得メニューを用意して売上を伸ばした

などなど、顧客の購買行動の変化に対応した設備投資の事例が紹介されていました。

余談ですが、メディアで注目されたUBER EATSなどの宅配は、あれだけ騒がれてもシェア5%程度の構成比。

記事でも触れていますが、顧客は便利でも、飲食店側の手数料負担が大きく、配車サービス側もシェア争いのために儲かっていないため、少なくとも日本の現在の手数料構造のままでは、ビジネスモデルをデリバリー専用に設計し直さなければ持続可能なビジネスモデルになるとは思えません。

従って、店内飲食が前提だったビジネスにおいては、飲食店側に負担が少ない、持ち帰り対策が業界のこれからの焦点になるようです。

さて、これに対して、

ファッションストアは、コロナ後に顧客購買行動がどう変わると予測して、どんな投資を行うのでしょうか?

また、

「ファッションは外食産業(異業種)とは、違う」 

で議論を終わらせて、思考や行動を先送りしさせてしまっていいのでしょうか?

ファッションストア以上に苦戦を強いられた外食産業も上記のようにアフターコロナに向けて動き始めているのです。

 

ファッションストアの今後を考える上で、

まずは、顧客の購買行動の変化を予測することから始めるべきでしょう。

そして、そんな購買行動のために、どんなデジタル投資をしたり、店舗をどう設計し直すのか?を考えたいところです。

・来店前に顧客が事前情報を取れるようにし、来店後はスムーズに商品確認が出来たり、接客を始めることができる

・店舗での顧客の拡張体験を提供したり、店舗の品揃えや情報を補完するために、タブレットや顧客のスマホアプリを活用する

・タブレット接客や決済を前提とし、店内でスペースを取り過ぎているレジスペースをできるだけ小さくする

・その分、フィッティングルームを拡充し、顧客が落ち着いて試着ができるスペースを確保する

 (在庫が増えるので、ストックを大きくし過ぎてはいけません(笑))

・店舗スタッフも顧客自身も手軽にオンライン配信できるスペース、環境を整える

・顧客が着なくなった服を回収し、リユース、リメイクの循環を回す ・・・

これらは、いずれも、国内外で取り組みが始まっている事例です。

まずは、顧客購買行動の変化に対応した事例を自ら体験し、顧客の立場になって

どうしたら、ストレスが無くなるか?快適になるか?を考えてみることでしょう。

異業種からも学ぶことはたくさんあります。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 02, 2021

無印良品(良品計画)は2030年、年商3兆円目標の中長期計画にどう挑むのか?

Muji-shang-hai2030年度に年商3兆円を目標に掲げた、無印良品を展開する良品計画の中長期経営計画が話題になっていますね。

最初にこのニュースを聞いた時は、ずいぶん大きな目標を掲げたな、ユニクロのファーストリテイリングっぽいな、と感じたものでした。

それもそのはず、

これまで良品計画は西友ご出身の、経営者さんが歴代社長を務めて来られたためか・・・

創業経営者が立てるようなダイナミックな計画や成長ではなかった、

ある意味、無理をせず、年率10%前後の自然増的(オーガニック)な成長を続けて来た会社。

そのためか、ユニクロと比較されることが多いですが、ファストリのPERが45倍と期待値が高いのに対して、
良品計画は16-17倍と一般小売業の平均並みに甘んじて来ました。

それに対して、9月から社長になる堂前氏は、
柳井会長と共にフリースブーム含め、長年ファーストリテイリングの急成長を支えたキーパーソンのおひとり。

この2030年年商3兆円という目標設定は、ファストリ流というか、柳井流というか、

長期の高い目標を掲げ、それを実現するために、そこから逆算して足元の計画を立てて行く
というアプローチに近いものだったので、そう感じたのだと思います。

堂前氏が中心になって作成したと言われる、
同社がこの度発表した中期経営計画(書)全55ページによれば

◆2021年8月期末見通し(現在)
売上高 4900億円 (日本3000億円、海外1900億円)

◆2024年8月期 中期計画(3年後)
売上高 7000億円 (日本4500億円、海外2500億円)

<前提>
既存店は年2%成長で、
店舗を980店舗から1300店舗に増やし
1店舗あたり売場面積は250坪から300坪に大型化し
EC売上は10%から15%に引き上げる

この間は、年平均12.6%の成長。
過去3年(2017年~2020年)が年平均9.6%の成長ですから、
これは決して、無理な話ではないでしょう。

しかし、その後の6年間の長期計画は

 

◆2030年8月期 長期計画(9年後)
売上高
 3兆円 (日本 計画から推定すると1兆5000億円、海外 同)

 

中期計画後の6年間は年平均27.4%の成長(国内22.2%、海外34.8%)と高いハードルが待っています。

この間、国内では、店舗の大型化と出店とEC売上の拡大が根拠

・1店舗あたりの平均売場面積は300坪から600坪に大型化し、
・年平均100店舗を出店し(純増数)
・EC売上を30%にする

としています。

海外は 中国を年平均50店舗、その他アジアを平均80店舗出店
欧米は既存店を再構築とのことです。

この中期計画はともかく、長期計画の中で、
筆者が最も、ハードルの高さを感じたのは・・・

国内の年平均100店舗の出店(純増)でしょうか?

ユニクロですら、そこまで1年で店舗数を増やした年はありません。

2030年には国内店舗は平均売場面積600坪(現300坪)、
1店舗あたり売上高10億円(現6億円)になっているとのことです。(たぶん、EC売上高30%分込み)

この出店計画に対して、

新規出店候補地が年商20億円クラスのスーパーマーケットの隣、というはその一方で、

これまでとは違って、面白いと思いました。

正直、今の無印良品では、価格が高めなので
国内1500店舗は想像しづらいのですし、(しまむらが国内1430店舗)

ショッピングセンター内ならまだしも、
フリースタンディングのスーパーマーケットの隣も無理があるように思いますが・・・

中期計画では、粗利を下げ、ローコストオペレーションを徹底し、
販売価格設定を下げる、と宣言をしていますので、

それが実現し、食品スーパーと親和性のある、買いまわることのできる購買頻度が近い品揃えと価格帯になれば、
業態としては、年100店舗の出店も不可能ではないかも、と思えます。

同社の中期計画書を読んで、そうなった時の「無印良品」を想像した時に
思い浮かんだお店がありました。

それは、ずばり、アメリカでウォルマートに次ぐ大手小売業、
会員制ホールセールクラブ、コストコです。

コストコはナショナルブランドにプライベートブランドを織り交ぜているお店なので

その点は違いますが、

地域に根差し、
循環型経済を標ぼうして、
プライベートブランド(PB)で衣食住に必要な商品を
ウエアハウス型のローコストオペレーションで
それに共感する顧客だけに良質安価で提案する。

PBで粗利は最低限でよい、顧客は安く買うことができる。

そのかわり、顧客から頂く年会費が営業利益の原資になる、

というホールセールクラブ型のビジネスモデル。

それなら、そういった立地にも出店余地はありそうだ。
そして、無印良品らしい、地域との顧客コミュニケーションが取れそうだ。

今、無印良品は、ファッションであったり、ライフスタイルショップとして
位置付けられていて、ユニクロやニトリなどと比較されることが多い業態ですが・・・

10年後は、全く違った業態、

地域に根差した、もしかしたら、
地域の大衆のための会員制クラブになっているかも知れない。

中期経営計画書を読んで、そんな風に妄想したものでした。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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July 26, 2021

顧客を理想のショッピングの世界へと連れて行こう

20210713_185918-1先週、クラウドで在庫管理システムを提供するロジザードさんが主催する
ショッピングのデジタルシフト、オムニチャネルをテーマにしたオンライン対談にパネラーの一人として出席させて頂きました。

コロナ禍のこの1年を振り返って、というお題に対して、

筆者からは、
この間、日本で体験した小売業のデジタルシフトの事例として、
マクドナルドのモバイルオーダーとユニクロのショッピングアプリを紹介させていただきました。

前者は事前に、あるいは店頭でアプリを使ってオンライン注文すれば、レジに並ばずに注文、受け取りができるもので、
既に多くの方が利用されていることでしょう。

後者は、同アプリがポイント加算、オンラインショッピングサイトへの入口という多くの専門店が実装している機能だけでなく、

・購入したい商品の店舗在庫の確認
・店頭で値札のバーコードをスキャンすることで
 -店内在庫確認
 -オンライン在庫確認
 -購入者のレビュー
 -スタイルサイトからのコーディネート案
 が閲覧でき
・更にアプリにクレジットカードを紐付けておけば、
 レジで財布を出さず、会員証を提示した後にそのままお会計ができる
 という機能を持っているものです。

実際、筆者は、これらの機能を使って、

〇試着した服のサイズが自分に合わなかったので、
その場でアプリで値札をスキャンして店内在庫がないことを確認した上で
オンライン通販サイトに注文したり、

〇レジで財布を出さずにUNIQLO PAYでQRコード決済をしたりしたものでした。

 

これまで、ショッピングのデジタルシフトというと、

・EC売上を増やすことであったり、
・ポイントカードとプッシュ通知をして通販サイトに誘導する機能が中心のアプリのダウンロードを促したり・・・

どちらかというと、売りたい企業側の都合のものが中心だったと思います。

これに対して、マックやユニクロの事例は
スマホアプリを活用した、顧客の店頭でのお困りごとの解決や店頭に居ながらにしての、オンラインを活用した拡張体験の提供であって、次のステージに進んでいる取り組みと言えましょう。

そんな話をしていたら、ロジザードの金澤社長が、いろいろな業種で、店頭でアプリを上手く使ったら、既存顧客さんに対して、リピート購入、買い増しや消耗品購入など、わざわざ来店せずとも、いろいろな便利なサービスが提供できるのでないか、
という話が出て、

こんなことも、あんなことも・・・

アプリはただのポイントカードや割引のためのプッシュ通知の道具じゃないよね、
と、その後、想像力が掻き立てられる話が展開し、とても有意義な時間になりました。

みなさんも自社の店舗に照らし合わせて、関係者でいろいろなアイデア出しが出来れば、
顧客の問題解決になる、いいアイデアが沢山出てくるのではないでしょうか?

そう、アプリをポイントカードや通販サイトの入口として使っているだけではもったいない。

これからは、店頭での顧客体験拡張のためのステージにもっと活かしたいものです。

そして、アプリなら中小企業にとっても、手の届く投資で実現できることもいろいろあるのでは?

そのアイデアは、システムに明るい人ではなく、想像力の豊かな商売人こそが持っていると確信しています。

まずは、先行している小売業のアプリを使ってみて、何を感じるか、からスタートしてみてもよいのではないでしょうか?

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 DXに欠かせないのは、顧客の理想の体験を描く創造力。ファッション流通の歴史、欧米の視察体験から学んだ、日本のファッション流通の未来を本書を通じて垣間見てください。

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July 19, 2021

「デジタルとリアルの融合」は手段を目的にせず、まずは、顧客のストレスを特定し、それを解消することから考えよ

20200714_1508107月16日日経MJに、「私のマーケティング論」という見出しで、ナイキ、アウディ、グーグルなどのデジタル戦略やクリエイティブを手掛け、ユニクロのスタイルヒント原宿店の指揮を執った I&CO共同創業者でクリエイティブディレクターである、レイ・イナモト氏のインタビュー記事が掲載されており、大変興味深く読ませていただきました。

「スタイルヒント」の開発背景について聞かれ、同氏は、

(以下引用)

「出発点はアプリの開発。買いたい服の情報を調べようとしてもグーグルなど特定のサイトはなく、(顧客が)自分でキュレーションする必要がありました。ならば服の検索エンジンをつくろうと思ったのです。皆が写真を投稿すると服が情報になり、さらに共有するとプラットフォームになる。」 

(以上「  」内記事の同氏の発言からの引用)

ファッション企業各社が「単品」を売ろうと発信している通販サイトはあっても、用途、着こなしかた(コーディネート)のアイデアを企業目線ではなく、顧客目線で集大成するには、ワンブランドではなく、ブランドミックスで消費する顧客投稿型のSNSのデータベース発想には敵いません。

服のコーディネートに関する、その発想の先駆者は、日本においてはZOZOが提供する「WEAR」だと思いますが、1000万件以上のコーディネートがアップされているWEAR上でもコーディネートに使われる、登場件数が断トツ1位で、一方、ZOZOTOWNで販売されていない「ユニクロ」が自らユーザー投稿型データベース型アプリの開発に行きついたのは至極自然な流れだったと思います。ユニクロのミッションは、どんなトレンドファッションに合うベーシックですからね。

続いて、今、が躍起になっている、「DX(デジタルトランスフォーメーション)」や「デジタルとリアルの融合」というキーワードについて、

(以下引用)

「よくデジタルとリアルの融合に取り組むと聞きますが、僕には融合との発想が全くありません。
消費者がどこにストレスを感じ、その摩擦をどう減らすのかを常に考えています。
たとえば米国のウーバーはタクシーを呼んでも来ないというストレスをなくそうという発想から生まれました。
リアルとデジタルの融合はその結果に過ぎません。形式に取らわれず、常に本質を見る必要があります」

(以上「  」内 記事からの同氏の発言を引用)

この部分は強く共感しました。

その理由は、筆者が、日本のファッション流通が本格的にオムニチャネル時代に入ることを視野に入れて、2018年に「アパレル・サバイバル」の取材も兼ねて訪れたアメリカ西海岸、LA、シアトル、ポートランドでのこと。

当地で、流通各社の先進的なDX事例を実体験しながら、
筆者が共通点として感じたことは、まさしく同氏が語っていることだったからです。

amazon goではコンビニにおける顧客のストレスを

amazon booksでは書店における顧客のストレスを、

ナイキは シューズ購入の際に誰もがかかえる顧客のストレスを、

ウォルマートは・・・

ZARAは・・・

それぞれの企業が先進的に行っていたことは、

〇ショッピングのプロセスにおいて、顧客のストレスがどんなところにあるかがわかっていて、

〇それをどう解決すれば顧客が喜ぶかの「理想的なビジョン(シーン)」を描いた上で・・・

〇そのストレス解消にあたり、顧客が持つスマホ内の自社アプリを活用することが最適と考え、

〇リアルにおける新しい顧客体験をデジタルを活用して実現した

わけです。

それは、まさしく、イナモト氏が言うように、顧客のストレスの解消が目的であり、
「デジタルとリアルの融合」という言葉はその手段や結果でしかなかったのです。

(上記 アメリカでの事例の詳細は是非、拙著「アパレル・サバイバル」をお読みください)

日本では、デジタル化という手段が先にあって最新技術に飛びついたり、
企業の業務効率の都合でデジタル化が図られ、そのしわ寄せとして、顧客に面倒を強いることが多いようですが・・・

欧米では、逆に、顧客のショッピングのストレスを特定し、それをデジタルで解消すると同時に
企業の業務効率も考える、という流れが多いように感じるのは、筆者だけでしょうか?

デジタル化が進まずに焦る前に・・・

まずは、目の前のお客様のストレスを特定し、それをどうしたら、デジタルで解決できるかを考えたいものです。

よく、資金がないから、デジタル化が図れない、と言われますが・・・

本当に必要なのは、お金ではなく・・・
顧客のストレスを解消し、理想のお買い物を体験してもらいたい、というビジョンを描けるかどうか、の顧客への愛と創造力に他なりません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 DXに欠かせないのは、顧客の理想の体験を描く創造力。ファッション流通の歴史、欧米の視察体験から学んだ、日本のファッション流通の未来を本書を通じて垣間見てください。

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July 12, 2021

企業決算書からヒントを得るためのコツ~まずは自社の課題の特定から始めよう

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先週の金曜日、WWDJAPANに月イチ連載中の上場ファッション流通企業の決算書から業界の動向や業務のヒントを読み解く「ファッション業界のミカタ」のオンライン連続セミナー(全4回)が終了しました。

第1回 世界アパレルチェーン売上トップ10企業の最新動向から学ぶこと

第2回 ZARAのインディテックスの最新決算から学ぶ、アパレルチェーンが向かうべきビジョン

第3回 ユニクロ(ファーストリテイリング)世界一への道と課題克服へのチャレンジ

第4回 ZOZO の決算データに見る、ファッションEC ビジネスの損益と未来

おかげ様で、各回定員いっぱいの方々に視聴頂き、感謝を申し上げます。

時折、公開企業の決算書のどんなところを見ればよいのですか?とご質問を頂きますが、

もちろん、読む方が投資家なのか、実務にかかわっている方なのか、によって見るポイントは当然、変わって来ます。

筆者の場合、小売経営に携わっていたことから始まり、その後、コンサルとして、企業向けに業務改善のアドバイスをする立場なので、読む対象となる企業の決算の良し悪しを評価するというより、

その企業さんがどのようなビジネスモデルを確立し、継続的に儲けている秘訣は何なのか?

特に、強みとする経営効率のヒントを読み取ることにしています。

その際、大事なのは・・・

まずは、自社あるいは、クライアント企業の課題の中から、

今回、改善のヒントを得たい項目を具体的に絞り込んで、特定することです。

・営業利益を高めるためには?

・当社の販売効率や生産性は改善余地があるのか?

・在庫日数はどれくらいで回すべきなのか?

などなど

つまり、

・他人事ではなく、自分事にすること

そして、あれもこれもではなく

・今回、好奇心をもって、知りたい、解決のヒントを得たい特定の項目にアンテナを立てること

です。

最初にそれを行った上で始めるか、どうかで、得られるものは全く違うものになって来ます。

そして、

その課題について、上手くやっていると言われる上場企業を特定して、その企業のIRページを訪れます。

一般的に決算関連資料は有価証券報告書、決算短信、決算説明会資料などがありますが、

その他にあるDataBookやFactBookや決算概要などにその企業が長年大切にしている経営効率が載っているケースが多いので要チェックです。

小売業であれば、

●販売効率 1店舗あたりの売上高、売場面積、面積あたりの売上高

●生産性 従業員一人当たりの売上高、人時売上高

●在庫効率(在庫日数、在庫回転率) など

経営の最小単位で比べると、

同業他社との比較もしやすくなるものです。

また、ズバリの数字は載っていなくても、
それぞれ別の場所に掲載されている数字どうしを割り算をすることによってわかる時もあります。

そして、それらを時系列で並べることで、その会社の企業努力も見て取れます。

 

実は、このアプローチって、店舗視察を行う場合も同様だと思っています。

店頭VMDはいつ変更しているのか?

混雑時のレジ対応は?

アイドルタイムをどう使っているのか?などなど

自社のオペレーション上の課題を具体的に特定した上で、

あの企業は、その課題にいったい、どう対処しているのか?と関心を持つことから始まります。

自身の頭の中に、そんなアンテナが立っているのかいないのか?で

ヒントの吸収力は数倍も変わってくることは皆さんも経験したことがあるはずです。

公開企業の決算書も店舗もビジネスの活きた教科書です。

情報の宝庫から、学び、未来を切り開きましょう。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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July 05, 2021

ユニクロの製造業へのチャレンジ~東雲イノベーションファクトリーの全貌が明らかに

20210705_075525ユニクロを展開するファーストリテイリングが先週の始めにメディア関係者に公開した、

「有明プロジェクト」のひとつ、東雲(しののめ)のイノベーションファクトリーに関する記事が
6月30日の日経MJと7月1日の繊研新聞のそれぞれ本紙と6月30日のWWDJAPANオンラインに掲載されていました。

WWDJAPANの記事が結構、詳細で現場の様子がよくわかります。

ユニクロが東京に自社工場 製造業進出で「すぐに作って売る」
(注:こちらは有料記事になります。)

このイノベーションファクトリーはもともと島精機(和歌山)が開発した無縫製ニット編み機=ホールガーメント機を活用して、
地産地消のニット製品の生産販売を行うべく島精機とファーストリテイリング(以下FR社)が和歌山に合弁で設立した製造子会社で

FR社が主導権を取って本腰入れるために、
出資比率を当初のFR:島精機 49%:51%から 51%:49%として、
3カ月前に和歌山から、お膝元の東京有明近くの東雲(しののめ)に移転したものです。

場所は有明本部から10分ほどの3階建て4700㎡(1424坪)の印刷工場跡地
そこに40台のホールガーメント機を置き、65人の従業員がいるそうで
1日1000枚(単純計算1台あたり25枚)の生産が可能だそうです。
将来的には100台にまで持って行く計画もあるそうです。

それぞれの記事を読んだところ

これまで、工場を持たずに協力工場に生産委託するスタイル(ファブレス)を強みとしていた
ユニクロが、初の自前工場で製造業へ進出、というのは少々大げさな話で・・・

実際のところは、本社の身近なところに、

量産工場と連動したサンプル工場あるいはテスト生産工場が出来たと見るべきだろうと思いました。
(FR社は「3Dニット生産の世界のマザー工場」と言っています)

まず、FR社の有明本部の5階にホールガーメント機4台を置いたサンプル作成用のアトリエがあるそうで、
そちらで試作用にプログラミングしたデータを東雲工場に転送し、
実際に販売できる商品化を行いながら、量産に対応できるように調整しているようです。

WWDJAPANや繊研新聞の記事に寄れば、

東雲で、行っているのは、

・糸の巻替え(糸の中にあるゴミなどのまぎれ込みを取り除くための行為)
・編み立て
・糸切れ直し
・稼働点検
・製品補修
・洗濯と乾燥
・アイロンがけ
・タグ付け

要は、糸から製品の形になる、編み立て自体(パーツを組み立てるリンキング工程は不要)は
ホールガーメント機が24時間自動で行ってくれますが、

準備工程である

●編み立てのプログラミング(ここが時間がかかるといわれています)
●ホールガーメント機にかけるまでの糸の品質確認とセッティング や

編み立中の

●稼働中の点検、
●糸の切り替え、

編み立て後の

●製品補修、
●洗濯、乾燥、
●アイロンがけ、
●タグ付け

などは、やはり、人がやらないといけないようなので・・・

東京の人件費を考えた場合、

ユニクロ価格のニットのプライスレンジの上限で販売したとしても、
試験販売用の商品原価では儲けはあまり出ないのではないかと思われます。

ここからは、記事を読んだ上での、筆者の解釈ですが、

この東雲イノベーションファクトリーの目的と役割は

まず、第一には

◆サンプルづくりから量産までの工程研究および時間短縮

ホールガーメント機の海外での大量生産前に
海外量産工場で起こりうるトラブル解消や作業の効率化の研究を行い
生産のボトルネックや起こりうるトラブルを事前につぶしておくことで
生産のスピードを上げ、不良品率を下げることができるのではないか。

次に、

◆的中率を高めるための試験販売用の商品づくり

商品企画者のアイデアの元、東雲でつくった少量製品を
銀座のUNIQLO TOKYO 店などで試験販売し、
売れ行きを見て、海外での量産の発注数の参考にするそうです。

また、

◆追加生産入荷までの国内QR生産による繋ぎ商品供給

量産での販売が計画に対して上振れして、
海外に追加生産をして、海外からの商品供給が間に合わない時の
一時的な売場の穴うめ、繋ぎ用商品在庫の供給を担うことができるようです。

従来であれば、

量産をする海外工場に仕様書を元にサンプル作成をして送ってもらい、
チェック、修正を繰り返していた流れから・・・

企画担当者やデザイナーが有明本社の5階のアトリエ(4台)でつくり、
東雲工場で量産向けにテスト生産を行って確かめた上で

海外の量産工場にサンプル、プログラミングデータ、工程上の注意と共に提供すれば、
生産の効率化が期待できる。

この流れの主導権を持った革新が、同社が 

「従来3ヶ月かかっていた仕事を1か月に短縮したい」

という話の背景にあるはずです。

各社の報道を読みながら、思ったのは、

アパレル生産のサプライチェーンのボトルネックのひとつである
「サンプル確認」工程をユニクロがコントロールできるようになったこと。

そして、

あくまでもホールガーメント機を使ったニット製造に限りますが
製造中に起こりうる問題点の解決策を
東京から世界の量産工場に具体的に提示できるようになったこと

この2つには大きな意義があります。

ZARA(ザラ)が本社デザインルームに布帛アイテムのためのアトリエを持ち、
自らサンプル作成を行って工程上の問題点を認識し、
量産素材の裁断を手掛け、
どこでも縫えるような形にして、
縫製工場に縫製(アッセンブル)委託をすることで
サプライチェーンのボトルネックを解消しながら、スピード生産を実現していますが、

ユニクロが、そのあくまでもホールガーメントニット版に限りますが、
踏み出したということを意味します。

次に、的中率を上げ、無駄な在庫をつくらないように・・・

店頭で顧客の反応を確かめてから量産数量を決定することができる、
試験販売用のサンプル工場を持ったこと。

これは、今はどうされているか不明ですが、

レディースカジュアルSPAのハニーズが2000年代の全盛期に
福島にサンプル作成と店頭試験販売用のサンプル工場を持っていて、
一部の店頭で試験販売をした上で中国に量産発注をしていた話を思いだしました。

また、古くは、米リミテッドストア(現Lブランズ)が
バイヤーたちが世界中で買い付けたサンプル商品にリミテッドのネームを付け替えて、
都市部の3店舗で試験販売をした上で、顧客の反応を見て
アジアに量産発注し、出来上がった商品は空輸でアメリカに持ち込み、
全店展開して的中率を上げていたという話を思い出しました。

ユニクロが自ら量産を手掛けるわけではありませんが、

大量につくって、徹底的に売り切る、というビジネスモデルから・・・

的中率を上げ、サプライチェーンのボトルネックの解消のために
製造工程に大きく足を踏み入れたという点においては、

とても意義のある、大きな前進であると感じました。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

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