December 11, 2023

ラグジュアリーのリレーユースを促進するコメ兵のビジネスモデル

20231219_225337

WWDJAPANに月1イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」
本日(12月12日)発売号ではラグジュアリーのリユースを促進するコメ兵を取り上げました。

同社の決算書を読むのは初めてだったのですが、面白いなと思ったことがいくつもありました。

ひとつは
一般消費者向け小売(toC)よりも、オークションを含めた卸売り(toB)の売上構成比の方が高いこと。

次に
中古ビジネスなので粗利率は高いのかと思いきや、26%と低粗利率であること。
しかし、単価が高いので粗利率は低くても粗利額は大きくなります。

そして
在庫日数90日台、つまり、約4回転も回しているという、意外な在庫回転率の高さです。

中古だからこそ、買取も大事だけれど、
一定のスピードで在庫を回さなければ、鮮度とキャッシュフローを維持できない。
そのため、卸で低粗利率でも在庫を強制回転させているということ。

同社の最大の強みであり、ボトルネック(希少リソース)は
買い取り商品の真贋判定や流通を左右する
商品センターです。

コロナ禍で人々が持ち物を見直したあたりから急激にGMVや売上高が増えています。

クオリティのよい中古品が流通する日本に目をつける、海外のユーザーが増えているのも
それを手伝っていると思います。

この希少リソースのノウハウをAIを活用しながら拡張することで、海外市場を開拓することも楽しみな会社です。

こちらの記事はオンラインでもお読み頂けますので、
ご興味を持たれたら、どうぞお読みください。

https://www.wwdjapan.com/articles/1703187

WWDJAPANの定期購読者は無料で
そうでない方でも、記事単位でご購入いただいて
お読みいただくことが可能です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【アパレル企業のビジネスモデルが丸わかり】

「図解 アパレルゲームチェンジャー

 ~流通業界の常識を変革する10のビジネスモデル」(日経BP社)

急成長、高収益の企業のビジネスモデルを

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October 30, 2023

購買頻度と小売業の在庫回転率

Dsc02059_20231030194001日頃、小売業向けのご支援をさせて頂いておりますが、
これから小売を始めたいという方からアドバイスを求められることがあります。

そんな時に必ずお話しをすることのひとつに

「購買頻度」

があります。

購買頻度とは、お客さんは、一般的にそのカテゴリー(品種)の商品を年に何回くらい買うものか?という話です。

 

アパレルであれば、一般的に

レディース服は6~8回くらいでしょうか?

メンズであれば4回くらいでしょうか?

靴はもっと頻度が低くて、2-3回くらい?

スーツのような紳士服はもっと少ないかも知れません。

 

小売業に従事されている方はお気づきかと思いますが、

この購買頻度って、そのカテゴリー(品種)の年間在庫回転率に近いということ。

 

お客さんあっての商売なので、無理に頻度を上げることはできません。

もっと売りたいなら、同じ人ではなく、購入客数を増やすことが必要になります。

 

つまり、購買頻度と在庫回転率は
事業の設計と損益とキャッシュフローに大きく影響を与える要素なのです。

 

そのため、こんなことがよくあります。

 

メンズ事業中心の企業がレディースに広げると
メンズよりもレディースの方がよく売れるので、儲かった実感が得られ
その後も上手く行くことが多いですが、

 

レディース事業がメンズカテゴリーに手を出すと
レディースほど高回転しないので、

いまひとつ上手く行かない。

 

スーツや重衣料専門だったお店が

より購買頻度の高いカジュアルを始めると売れる実感が得られますが、

カジュアル事業が

在庫の重い(金額の話ではなく、在庫回転の話)スーツを始めても、上手く行かない

などの事例です。

もちろん、全てが全てではありませんが、

小売ビジネスにおいては、「購買頻度」というキーワードを無視すると

上手くいかないことが多いのです。

これに則ったアパレル業界の成功事例の筆頭は

ユニクロかも知れません。

当初、紳士服事業を引き継いだ柳井さんは
カジュアルという紳士服より売れる金の鉱脈を掘り当てました。

その後、ユニセックスからレディースを強化し、

また、外に着るものから、インナーへ手を広げることで、

購買頻度と購買客層の裾野を広げ、大きな成長を果たしました。

 

ホームファッション業界ではニトリが好例でしょう。

引っ越しの時くらいしか買い換えない家具に


シーズン性やコーディネートの要素を取り入れ、

カバーをシーズンごと、気分にあわせて着替えてもらう提案をし、

更に購買頻度の高い、消耗品である、電球や乾電池なども取り扱うことで、

来店頻度・購買頻度を戦略的に高めています。

 

単価は高くても、購買頻度の低い、家具だけにこだわっていたら・・・

今のニトリはなかったことでしょう。

 

このようにユニクロとニトリは購買頻度を理解し、

上手く事業に取り入れたことが事業の基礎にあると言っても

過言ではありません。

製造業の方は、ものづくりに自信があるので、

どうしても良い商品をつくれば売れると思いがちですが・・・

小売業に携わるなら、

まず、購買頻度とい顧客行動を想像し、

顧客最適で考えるところから始めたいものです。

それが「顧客の立場になって考えること」の第一歩です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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June 12, 2023

SHEIN(シーイン)を支える生産背景、中国広州アパレル産地レポートがWWDJAPANに掲載されました。

Shein-hqWWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

6月12日発売の連載 第50話目に、ウルトラファストファッションSHEIN(シーイン)の本拠地である中国広東省広州のアパレルサプライチェーンの現地視察レポートをまとめさせて頂きました。(筆者が5月下旬に実際に視察したもの)

世界の工場である中国の、アパレル一大産地である広州は生地、付属品の現物在庫を抱える巨大な市場があり、製品を5日でつくる背景を支えています。

そんな産地で取材をした中で、最も印象的だったのは、

SHEIN(シーイン)のようなIT業界から来たゲームチェンジャーたちが中心になって、
速く納めてくれるサプライヤーには、すぐに払う、

一方、バイヤー側は速く払うために、速く売ってキャッシュに換える、
既存の業界とは対極にあるキャッシュフロー経営が進んでいました。

安く作るために、大量受注、大量生産をしてしまっては、リードタイムも長くなり
サプライチェーン上の各所に溜まる在庫にキャッシュを寝かすことになりますが、

小ロットなら、多少コストが高くでも、
むしろ、速く換金でき、

サプライチェーン全体のキャッシュフローが豊かになるというメリットを
あらためて産地で考えさせられた次第でした。

世界のメディアでは、SHEIN(シーイン)のネガティブな面が大きく報道されますが、

実際、産地に行ってみると、メディアでは報道されない、

日銭商売である小売業として、我々も見習うべき

目から鱗の「商売の原点」をたくさん耳にすることも出来ます。

SHEIN(シーイン)は、

他にも業界のどんな常識を覆すことで、急成長したのか?

今後もアンテナを立てて、リサーチを続けたいと思います。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトでもお読み頂けます。

シーインのウルトラファストサプライチェーンの秘密を中国・広州で探る

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

【おススメ本】「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)
 第2章では、産地から、店舗を持たずに、世界の消費者に直接売り込む

 SHEIN(シーイン)のビジネスモデルの優位性について取り上げました。

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May 29, 2023

新刊「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)が発売されました。

Finalおかげさまで、来週5月25日(木)に齊藤孝浩の4冊目となる
新刊「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP日本経済新聞出版社)が発売になりました。

4年間、WWDJAPANに連載を続けてきた「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)で紹介した企業を中心に、

主に決算書情報などから読み取れる、コロナ禍を経て勝ち続けている企業のビジネスモデルが、従来の業界の常識と何が違うのか、その優位性、将来性をわかりやすく図解してみました。

勝ち続ける企業は・・・業界の常識とは真逆のことをやっていた。

というのがこれらのビジネスモデルとゲームチェンジャーたちのビジネスモデルを分析しての気づきです。

そして、損益計算書(PL)の強さが お金の使い方にあるということ。

ZARA(ザラ)から始まり、SHEIN(シーイン)、ZOZO、ワークマン、コストコ、LVMH(モエヘネシールイヴィトン)、丸井グループ、メルカリ、DOORDASH(ドアダッシュ)などなど

が登場しますが、彼らは

・在庫の運用のしかたが上手く

・商品を仕入て売る以外にも収益源を持ち

・自前でしくみを構築したからこそ、そのインフラが他社にも売れるプラットフォーマー的な役割を果たし

・小売流通業がエンドユーザーから代金(日銭)を預かることの大切さを知っています。

上記の企業の他にも、ユニクロ、ニトリ、H&M、クラシコム、モンベル、ヤマト運輸などのビジネスモデルも登場します。

一応、専門書ではありますが・・・

グラフやイラストを多様し、誰もが知っている身近な企業の財務体質とビジネスモデルを、

「ですます調」で綴ることで、

多くの方に読みやすい体裁にしております。

一番読んで頂きたいのは、これからビジネスモデルを見直したい経営者さん、

新しいビジネスモデルを一から始めるスタートアップ企業や起業家の卵の方々、

そして、流通企業の幹部になって、PL管理に責任を持っている方々にも、

競合他社ベンチマークのアプローチも学んでいただけると思いますので、

是非読んで頂きたい内容です。

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November 29, 2022

参加型クイズ形式のオンラインセミナー「決算書から企業戦略や課題を読み解くスキルを学ぼう!」開催します。

221207-wwdjapan2022年12月7日(水)
13:30~15:00 
@オンライン開催

WWD JAPAN主催の参加型クイズ形式のオンラインセミナー
「決算書から企業戦略や課題を読み解くスキルを学ぼう!」
に登壇させて頂きます。

累計30万部を突破したベストセラー『世界一楽しい決算書の読み方』の著者であり、TwitterやInstagram に数十万人のフォロワーがいらっしゃる#会計クイズでおなじみの大手町ランダムウォーカーさんとのコラボセミナーです。

第1回目はユニクロのファーストリテイリングの決算書を題材にして、損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)に関する三択クイズを3問出題。参加者の方には、その場で投票形式で回答して頂きながら、講師二人が対談形式で解説して行きます。

決算書初心者の方でも、ファッション企業のビジネスモデルや同業他社との違いが理解できるようになって頂くことを目的としたセミナーです。

決算書って、いったい、どこを見たらいいか?どう理解したら、スっと腹に落ちるのか?

有名企業を題材にして、自分の会社の財務諸表(P/L B/S)の内容や業界他社との比較などに関心を持つきっかけになれば幸いです。
#会計クイズ #wwdjapan

お申込みはこちらから https://www.wwdjapan.com/articles/1452512

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July 18, 2022

年会費収入に支えられ、会員にバリューを還元し続けるCOSTCO(コストコ)のビジネスモデル

20220811_155305月イチ連載中のWWDJAPAN「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

今週発売のvol.39(7月11日号)は、「コストコに見る年会費に支えられる会員制小売ビジネスモデル」というタイトルで、リピート率の高い年会費収入を原資にして、仕入・販売活動については、徹底的なローコストオペレーションを貫き、バリュー(売上原価に近い販売価格)をお客様に還元するビジネスモデルのひとつ会員制ホールセールクラブ、コストコの決算書を考察してみました。

ウォルマート、アマゾンに次ぐ、世界3位の小売業コストコの年商は約25兆円、売上原価率はなんと88.9%。

商品売買差11.1%に年会費収入を足して、12.9%の粗利率に対し、販売管理費率9.5%に抑え、約3%前後の営業利益率を毎年コンスタントに残しています。

更に驚くのは長年時系列で見ても、四半期ごとの売上のバラツキ、つまり季節指数がほとんどなく、

(普通だったら11月から12月を含む四半期が断トツになりそうですが・・・)

年間、安定的な標準化されたオペレーションを回すことが出来ていることもローコストで運営できる秘訣なのでしょう。

そんなコストコのビジネスの強みが決算書の随所から感じられます。

継続的に支持して下さるファンであるお客様が出資する?安定的な年会費収入に支えているからこそ、

実現できることってあると思います。

そんな「会員制ビジネス」の世界のお手本のひとつがコストコというわけです。

これからLTV(ライフタイムバリュー)という言葉を語ったり、サブスクモデルを考えるのなら、

ブランドにとっての「メンバーシップとは何か?」を考えるのもありではないでしょうか?

アウトドアの「モンベル」や急成長中の人気ブランドである「アメリ」も独自のメンバーシップ制に取り組んでおり、注目しております。

関連エントリーーモンベルに学ぶ、ライフタイムバリュー創造マーケティング

関連エントリーーEC発人気レディースブランドのキーパーソンたちが語るSNS時代の顧客目線

WWDJAPANのこちらの連載記事がウェブ版でお読み頂けます。

https://www.wwdjapan.com/articles/1396845

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考】ただ新しい商品つくって売るだけでなく、顧客のクローゼットを思いやり、継続的な関係性を構築できるかが生き残りのカギ。10年後のファッション流通の未来を考察しました。

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June 06, 2022

晴雨兼用アイテムの市場潜在性

Photo_20220613130001梅雨の季節になると

百貨店の傘売り場やレイングッズ販売の
ニュースを見かけるようになりますが、

6月2日の日経MJの「ヒットのクスリ」などに
富山県のレイングッズメーカー、カジメイク社が

おしゃれなレインウエアやグッズを販売する直営店
「アメトハレ」を新宿の丸井に開いたという記事が掲載されていました。

以前もブログでご紹介させて頂きましたが

関連エントリーー気温に合わせて品ぞろえ計画、在庫運用を考え直す

気温や天候に大きく左右されるビジネスであるファッション販売に携わっていると
最高気温、最低気温、天気を気にしながら
クライアントさんたちと在庫コントロールを考えるわけですが、

上記エントリーで過去の天気をご紹介した以降も

気象庁の例えば東京都心部のデータでは

春は約2カ月
夏は約5カ月
秋は約1カ月
冬は約4カ月

※注:春は最高気温15度越え、夏は同25度越え、秋は最低気温が15度以下、冬は同10度未満の日にちが継続的に続き始めるところでカウントしています。

であるのと共に、

年間降水日(日中の天気に雨が含まれる日)は毎年100日を超えているのが現実です。

ちなみにカジメイクさんのアメトハレのサイトを見ると、
富山県は1年の半分の日に雨が降る全国でも雨が多い地域のようですね。

アメトハレサイト 

北陸が合繊生地の産地というのもあるかと思いますが、
そんな環境が同社のビジネスの原点にあることが頷けます。

ここまで気温や天気の傾向が、従来の業界の常識と変わって来ていることが
データではっきり認識できるのなら・・・

もう、天候を「売れなかった言い訳」にするのはやめて(笑)

むしろここまで長くなった夏、そして雨の日が多いことをいかにビジネスチャンスに換えるか?

を考えたい、という話は既述のエントリーでもお伝えしたことです。

生活者のお困りごとのひとつに

雨の日に着用して出かけてもストレスを感じない服や靴があり、

一方、昔ながらの雨具専業メーカーさんが提供する
機能第一の雨の日専用グッズでは満たされない需要があるとします。

私も雨の日対応グッズをいくつかもっていますが、購入の際、選択肢が限られ、使用頻度が低い上に
昔ながらのデザインのものが多く、結局、妥協しているのが現実です。

そんなレイングッズを使用シーンが限られる「特殊な商品」ではなく
年間の3分の1以上の日に使える大きな潜在市場ととらえると

どんなことが考えられるでしょうか?

雨の日はもちろん、晴れの日でも普通に着る、履く、使うことができる

デザイン性や使い勝手を持つことがマーケット拡大のひとつのきっかけになるかも知れません。

ここ数年、家でも洗濯できる服が多くの生活者に支持され、「選ばれる基準」になったように

雨の日にも着ることができる晴雨兼用という概念はこれから「選ばれる理由」になるかも知れませんし、

また、サステナブルの観点から購入した服のメンテナンス情報を発信するアパレル企業が増えているように

雨で濡れた服や靴の手軽なメンテナンスの提案は

生活者に潜在的なお困りごとを認識してもらうことで開拓余地のある大きいマーケットの開発につながるかも知れませんね。

作業服として開発した商品をアウトドアウエアやタウンウエアとして、提案し一気に購買客層を増やしてブレイクしたのは
ワークマンですが

同社がワークマンプラスやワークマン女子などアウトドア用品店に続いて、最近スタートしたシューズ専門業態の次は
レイン対応グッズの専用業態を出店することを考えているようです。

多くのメディアが注目すると、これからレイン対応グッズにあらためて目が向けられることになるかも知れません。

憂鬱な雨の日の選択肢を楽しく広げてくれる
着用シーンが限られると思われた雨の日の生活者のお困りごとに着目し、

晴れの日にも兼用出来るアイテム これからそんな潜在市場が顕在化して行くような気がして楽しみです。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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April 11, 2022

メルカリが物流子会社「メルロジ」で取り組む、持続可能な宅配物流量平準化へのチャレンジ

Photo_20220418000101 4月8日の日経新聞にメルカリが物流子会社「メルロジ」で、
「ゆっくり宅配」の選択肢を顧客に提供し、近年パンク状態の宅配物流の物量平準化に取り組むことに関する記事が掲載されていました。
記事によれば
日本の宅配件数は現在、年間50億個もあるそうですが、
そのうち、アマゾンが約7億個で全体の14%を占め、
メルカリもそれに迫る全体の約1割の約5億個にまで増えているそうです。
そして、コンビニから発送される宅配荷物のなんと、8割はメルカリ関連のものとのこと。
そこまで宅配に占めるシェアが高くなれば、メルカリ自身も、他人事ではなく、社会的な役割が問われて来るというわけです。
こちらも記事内で紹介されている宅配物流業界の情報ですが、
日本の営業用トラック便の積送効率は20年度に4割を切った模様で・・・
これは、つまり、スペースの6割以上は空の状態でトラックが走っていることを意味しています。
以前、小口のオンデマンドで運ぶゆえ、宅配物流の往復積載効率は4割程度が実状と運送業界の方が嘆いているのを聞いていましたが、
企業間物流(BtoB)はもっと積載効率は高いと思うので、平均が4割を切るとなると、
宅配(BtoC)だけでみるともっとひどい状態になっているということでしょう。
加えて宅配には再配達もありますし・・・
つまり、そんな非効率な状態では、荷主は一個あたりの宅配運賃は満載状態時と比べて
2.5倍相当の料金を払わされてもおかしくない、という話です。
そんな状況の中で、
これまで「安く、速く」が競争の常識だったEC宅配の世界で、
ゆっくりでいい人は送料が割引、あるいはポイント付与のようなサービスを増やして行こう
という試みが「ゆっくり宅配」の目的です。
需要の都度、荷物が動くBtoC宅配だったとしても、
上手く、定期ルート便の物量を平準化することにより、出来るだけ顧客の近くまでBtoBで運ぶことによって実現するチャレンジ。
元アマゾンの物流責任者だった方がメルカリに転身し、
「速さ」とは180度違う観点で取り組む物流プロジェクトというから面白いことになりそうですね。
上手く軌道に乗り、将来は、メルロジがメルカリ以外の他社の荷物も運ぶサービスを提供するようになることを楽しみにしています。

 

記事を読んでいて思ったのですが・・・

日本の企業って新しい施策に取り組む際
競合他社を見て競合対策で取り組んだり、
社内の業務の都合で導入が決まることが多く・・・
顧客の立場で考えるって視点が欠けている
顧客不在の議論をしている企業が結構多いなって、いつも感じるのは私だけでしょうか?
送料の安さや速さを競うスピード配送しかり。
特定の部署だけが導入する部分最適なDXと呼ばれているソリューションなんかにも多いなって感じます。
そして、その結果、どこかに皺寄せが来たり、無理強いが起こるわけです。
そのツケを顧客が払わされるとなると最悪です。
配送のスピードについては、
確かにお客さんの中には、「速く」を希望する方もたくさんいらっしゃるとは思いますが・・・
選択肢を提示すれば、自分の都合で店舗へ取りに行く方もいらっしゃれば、
急いでないから、あるいはいつでもいいからできるだけ安い選択肢を好む方もいらっしゃいます。
そんな顧客の要望の多様性を理解して、上手くミックスして、知恵を絞ってサービスを提供することこそが、
これからの持続可能な経営のカギになると思っています。

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

 

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March 28, 2022

「アマゾンvsウォルマート」を読んで~アメリカでしのぎを削る2大流通企業の狙いを通じて小売業の未来が想像できる書籍

20220401_165503アメリカの流通業界の情報取得で、いつもお世話になっている鈴木敏仁さんが書かれた

新刊「アマゾンvsウォルマート(ダイヤモンド社)」を読みました。

新聞やメディアの記者ではなかなか書けない、

長年、現地で両社をウォッチ(定点観測&IRリリース)し続けて来た流通企業での業務経験のある鈴木さんならではの切り口でウォルマートとアマゾンの歴史とチャレンジを表から裏から解説して下さっており、

小売業の実務を支援する立場の私にとっても、とても共感でき、刺激が多く、大変勉強になる一冊です。

特に印象に残ったところを、ネタバレにならない程度(笑)にいくつかご紹介させていただきますね。

前半でウォルマートのEDLP(エブリデイロープライス)の話が出て来ますが、
その「本質」は私自身、「何度も」聞いてきたはずの話なのに、

それを愚直に実践しているウォルマートの話がとても新鮮に感じてしまうのはなぜなのかを考えさせられました。

同社が常に安い価格を実現できるのは、そのバイイングパワーだけでなく、「安定した」ローコストオペレーションゆえ。

しかし多くの小売業が、ただ大量に買うからと仕入先を叩いたり、自転車操業的なディスカウントを繰り返して、安い価格を実現しようとする現実があります。

そんな行為が、現場やサプライチェーンに無理強いをして、酷使するだけでローコストオペレーションにならない・・・

結果、コスト高になってしまっていることに気づかない、というのが現実のような気がしてなりません。

そんなウォルマートの小売業としての経営信念と中長期ヴィジョンに基づいて構築した盤石の基盤に関わらず、

生活者がオンラインとオフラインを行き来する時代に、システムインフラを部分最適ではなく、未来の小売のヴィジョンを描いて、抜本的な入れ替えをやってのけた「パンゲア・プロジェクト」のリーダーシップには脱帽というか、小売業の「キング」としてのプライドと覚悟を感じたものでした。

大きくなって大企業病になり、身動きが取れなくなった企業経営者さんたちは、ウォルマートのVMIやセルフレジやBOPISやカーブサイドピックアップのような、メディアで話題になる視察対象になる表層的な施策レベルを真似るのではなく・・・

同社の流通業界そして社内に対するリーダーシップを学ぶべきだと痛感しました。

続いて、計算上では何年後かにはウォルマートの年商規模を抜く可能性もあるAmazonは、
小売業の姿をしたIT企業であり、金融企業。

常にAWSが稼ぐ利益が注目されますが、「マーケットプレイス」コンセプトのビジネスモデルがすごいと思いました。

同社が現代から未来にかけてのかつての「石油」にあたる、「データ」を欲しいままにしていることはよく知られていますが・・・

マーケットプレイスは豊富な「品揃え」を実現するだけでなく、「購買行動データ」と共に、「代金回収代行」によるキャッシュフロー創出の側面があることに「してやられた」感を受けました。

また、エンドユーザーとつながっている、オンからオフへ広がり続ける小売業であり、IT企業だからこそ、

未完成なまま顧客視点のサービスを次々にリリースし、
実際の顧客行動から得られた気づきにあわせて、システム修正を加えてゆくアジャイルさに、これはもう太刀打ちできないな、と思いました。

従来の小売業の多くはITがわからない、IT 人材がいないため、ITベンダーに発注するものですが・・・

発注した小売業はお金を払っているからと、ITベンダーに完璧なシステムを求め、

現場に明るくないIT企業側もクライアントに完璧な(?)システムの納品を目指す。

小売業とIT企業がそんな関係を続けている以上は、トラブルが続くだけで、
何年、いや何十年たってもAmazonには追いつかないだろうなと感じたものでした。

そして、実は、読後に一番印象に残ったのが、

ウォルマートとアマゾンの影で 規模を拡大し続ける
ドアダッシュ、インスタカートなどの「オンデマンド型短時間宅配サービス」の話でした。

日本では出前館やウーバーイーツを想像していただくとよいでしょう。

これは、BtoCのデリバリーサービスの顔をしていますが、
その本質は既述のマーケットプレイスに近い、代金の回収代行によるキャッシュフロー創出ビジネスであると。

これまで営業利益が多い会社、無借金経営が美徳とされた小売業界。

購買行動が大きく変わり、小売業とエンドユーザーとの間に登場する新しい切り口の企業たち。

これから伸びたり、登場したりする、そんな企業の動向からも目が離せないと思います。

アメリカでは、失敗もそれだけ多いけれども・・・

頭のいい人たちが考える新しい切り口のビジネスが登場する宝庫であることを

あらためて思い知らされたものでした。

Amazonでのご購入はこちらから アマゾンvsウォルマート

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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February 21, 2022

ZOZO(ゾゾ)とアパレル専門店の財務諸表(PL、BS)を比べることで見えてくるEC拡大時代の経営課題

Zozo-pl-bs2月14日発売のWWDJAPAN、月イチ連載させて頂いている「ファッション業界のミカタ(ファッション流通業界の決算書の読み方)」では

日本最大級のファッションECモール ZOZOTOWNを運営するZOZOの損益計算書(P/L)と貸借対照表(B/S)の構造を、よくあるアパレル専門店のP/LとB/Sとの違いを比較することで解説をさせて頂きました。

 

エンドユーザーから見ればECモールも専門店も同じ小売業に見えますが、両者の財務構造が違うのは言うまでもありません。

ZOZOの場合、受託販売をメインにしているため商品在庫が極めて少なく、有形固定資産(店舗や倉庫資産投資)や敷金や差入保証金のような寝かせる投資資金が少ないのがBSの資産側の特徴です。

自社在庫を販売しているわけではないので、P/Lは売上原価が少なく(同社売上比5%程度)、ハンドリングする商品取扱高の30%程度の販売手数料収入を中心とした粗利がとても大きく見えます。

販売管理費の主要項目は、一般アパレル小売業が店舗と人件費が2/3占めるのに対し・・・

ZOZOは荷造運賃と物流関連人件費(業務委託含む)と本社人件費で2/3を占めます。

店舗型小売業よりも家賃・設備などの固定費が少なく、

人の生産性も高く、

近年、広告宣伝費販促費が圧縮出来ているので

高い営業利益率が獲得出来、積み上がるキャッシュや純資産の原資となっています。

リアル店舗とEC専売のECモールの大きな違いを見ることで・・・

これからEC化率が高まり、リアル店舗中心の財務構造にECビジネスの構造が被さって行く小売業が

向かって行く方向性や予想される変化と共に経営課題も予見出来ます。

それにしても、プラットフォーマーは在庫を持たずにビジネスを回しているので、現預金が多いのが非常に羨ましいですね。

店舗に家賃をたくさん払い、在庫を山のように持って商売をすることを何とか見直せないものかと、
そして、これからはP/L脳だけでは勝てない、B/S脳で勝負しないと勝ち残れない

と、あらためて考えさせられたものでした。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】これから10年先のファッション消費の未来、そしてアパレル企業生き残りのカギになることは何?国内外で進む、顧客の購買行動の変化に合わせたオン・オフ問わないオンラインの活用、そして顧客のクローゼットを起点としたサステナブルな取り組みとは?いずれにせよ、カギとなるのはお客様のストレスの解消しようとする情熱とそれを実現するイノベーションです。

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