January 04, 2021

新しい生活様式にあわせて業務を再構築しよう

20180824_151428あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

コロナショックの渦中、先行きが見えぬまま新年を迎えましたが、
引き続き、健康に留意しながら、日々のミッションに取り組み、そして、未来に向けて進んで行きましょう。

コロナに後押しされたとは言え、一旦、前に進んだものは、元には戻らない、と考え、
まずは、加速した環境変化の先にある、「お客様の新しい生活様式」のビジョンを描いた上で、準備を進めて行きたいです。

 

これらのファッション流通業界のテーマはいくつかあると思いますが、
専門である在庫最適化の問題意識から申し上げると、大きくは

◆短期~中期的には

 ショッピングのデジタルシフトに対応した環境を整えること、

◆中期~長期的には

 ブランドらしいサーキュラーエコノミーへ取り組みに着手すること

かと思います。

 

前者は、オムニチャネルやOMO(Online merges with Offline)などと言われることですが、明確な顧客購買シーンをチーム共有した上で進めて行きたいところです。

店舗を持つ専門店にとっては、

顧客が

・店舗で見た商品はオンラインですぐに見つけることが出来、買うことができる

・オンラインで見た商品は、どこにその在庫があるのかがわかり、店舗に行けばすぐに見つけることができる

・オンラインで注文や予約した商品を都合のよい店舗で受け取ったり、試着の上、購入できる

・店舗で購入した商品は店舗からあるいはEC倉庫から自宅に届けてもらえる

そして、そんなお客様のシームレスな購買行動を店舗スタッフやカスタマーサポートがストレスなくヘルプできるデジタル環境を整えることでしょうか。

これらを実現するには、システム投資が伴うため、一気に進めることは難しいかと思いますが・・・

在庫データの信頼性を高めながら、もてるデバイスを駆使してステップ・バイ・ステップで進めて行きたいです。

後者については、よりプロダクトにフォーカスし、顧客を巻き込んだカタチのサステナビリティの話です。

人々が巣ごもりの間に、あらためて自分のワードローブと向き合ったことによって・・・

いよいよ、供給側であるブランドは、商品をつくって、売りっぱなしにするだけでなく・・・買って頂いた後の商品のライフサイクル、循環についても配慮、関与する時代に突入したと思っています。

例えば、長く愛着してもらうための素材選び、購入後の洗濯・クリーニング・保管などメンテナンスのためのアドバイス、次シーズン以降も着回して頂くための、翌シーズンのコーディネート提案などなど。

また、買って頂いた商品は、できるだけ長く着続けてもらいたいものですが、着なくなった場合は、顧客が手放し、リユース、リメイク、リサイクルされるところにも何らかのカタチで関与できないか、と。

近年、着なくなった服を回収する企業は増えて来ましたが・・・どちらかというと、来店促進目的で回収後は処分業者に渡して終わりのところが多いようです。

これからは、せっかく回収するのであれば、しかるべきパートナーと組んで、何ができるか?ブランドらしい活かし方を自ら考える時代に向かっていると感じています。

このあたりは、すぐには広がらないかも知れませんが、ブランドごとに議論を始めてもよい時期ではないかと思っています。

後者のワードローブのライフサイクルや循環の話にご興味を持たれた方は、是非、拙著「アパレル・サバイバル」のCHAPTER5をお読みください。筆者なりの問題提起をさせていただいております。

以上のような問題意識を持ちつつ・・・

今年も顧客目線で在庫最適化に取り組む業務再構築と商売人人材育成の応援をミッションとし、

独自の視点で業界関連トピックをブログで取り上げてご紹介して行きたいと思います。

どうぞ、よろしくお願いいたします。

関連エントリーナラティブ(顧客を主人公にした物語)から考える

関連エントリーオムニチャネル化を進める前に必要な、店舗側のステップとは何か?

関連エントリーCircular Economy サーキュラーエコノミー(循環型経済):ZARAのインディテックス社のこれから10年の経営テーマ

関連エントリー着回しの利く、究極の定番を磨け

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 ファストファッションの浸透によって、溢れ始めた顧客のクローゼット。これからは、クローゼット内の服の循環を考えながら、新しい商品の提案を考える時代。今回の投稿で話題にしたショッピングのデジタルシフトと顧客のワードローブの循環がまさにテーマになっています。

| |

December 14, 2020

メルカリの国内流通総額中のファッション関連カテゴリーはユニクロ、しまむらに続く、第3勢力規模に

Reloveメルカリの2021年6月期 第1四半期(7-9月)の決算発表資料に目を通しました。

米国事業やメルペイへの投資先行で赤字がしばらく続いていましたが、
前四半期と今四半期は2四半期連続での黒字になりましたね。

同社には、引き続きグローバルでの成長にも期待をしていますが、
やはり、顧客行動の変化に対応して、国内ファッション市場に影響を与えるであろう
メルカリ国内事業の数字からも目が離せません。

同国内事業について、企業としての売上高ではなく、
メルカリを使って顧客が売買した流通総額にあたるGMVベースでは
当第1四半期(7-9月)は1706億円(前年同期比34.6%増)
月間平均利用者数(MAU)は1750万人だったそうです。

この四半期の数字を移動平均方式で、年回り(前期2Qから当期1Q)にしてみると
過去1年で流通総額は6,695億円となります。

このうち、ファッション流通市場への影響という点では・・・

開示されているカテゴリー構成比
レディース19%、メンズ14%、ベビーキッズ3%までを含めると約36%となり、

カテゴリーごとに単価は違うと思いますが、
年間総額にこの構成比を掛け合わせて単純計算すると
年間流通総額ベースで2410億円相当になります。

ファーストリテイリングのジーユーが20年8月期で年商2460億円とのことでしたので、
メルカリは、現在、それと同規模、

国内アパレル市場においてはユニクロ、しまむらに次ぎ、ジーユーと並ぶ第3勢力ということになりますね。

参考までに同事業の四半期ごとの流通総額の構成比を5年平均でとってみると、
以下のような感じになりました。

1Q  2Q  3Q  4Q
7-9 10-12 1-3 4-6
20% 25% 27% 28%

やはり、冬から春に変わる時期、そして、3-4月の新生活が始まるところが、
持ち物を手放したり、購入したり、という機会が増え・・・
それに連動して流通総額も増えるのだな、と感じます。

この構成比を使って、今年度の流通総額予測をしてた上で、
上記のメルカリのファッション関連の構成比から流通総額を推計すると

今期1年間の累計は3000億円規模になりそうです。

コロナ禍の巣ごもり中に持ちものを見つめ直し、手放す機会も増えたことでしょう。
また、捨てるより、循環させることを考えねば、と多くの人々が考えている昨今。

メルカリの循環型社会に向けてのインフラとしての役割はますます高まりそうです。

先日、出品や梱包が面倒で始められないユーザー向けに、
オープンロジと組んだ「あとよろメルカリ便」や、カジタクやブックオフグループと組んだ「捨てない大掃除プラン」など
次々に未経験ユーザーのメルカリ出品デビューを手助けするサービス開始のリリースをされましたね。

どうしたら、ユーザーが不用品を手放しやすくなるのか?
未経験者のお困りごとを掘り下げて、いろいろなパートナー企業と組むことで
そんなアイデアは次々に広がって行きそうです。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 ファストファッションが手ごろな価格の服を提供することによって、顧客の購買機会を高める一方で、ユーザーのクローゼットをあふれさせてしまった今日。毎シーズン、新しいもの作って、売るだけでなく、顧客のクローゼットのワードローブの循環を一緒に考えることこそが、業界企業のこれからのミッションのひとつになるでしょう。本書の後半では、これから10年の服を通じた顧客とのかかわり方を提言しています。

| |

December 07, 2020

コロナショック、消費税総額表示であらためて低価格が進むのか?今一度、価格政策について考えよう。

Uq-hm先週、ファーストリテイリングのジーユーが来春から最大30%の値下げ宣言をしたニュースが話題になりました。

都心で販売している比較的高額品の需要の戻りが遅く、
一方、郊外が堅調なことから、消費者の先行き不安から、一層の低価格指向が進むと見て、
市場では、あらためてデフレが進むことが懸念されています。

また、4月からの消費税の総額表示の義務化により、価格設定、店頭での見え方次第では、
売れ行きにも影響があるでしょうね。

過去の増税の時にも、高くなったように見えるのはご法度で、わかりやすさも大切であることは、各社さん、それぞれの反省から学ぶべきかと思います。

筆者が一番恐れるのは、市場全体が更に低価格指向になることで、より安く作ることを考える、つまり、原価低減合戦が進むことです。

それは、コロナ以前に、懲りたはずではなかったでしょうか?

安く作るためには、人件費の安いところでつくる、ロットが大きくなる、リードタイムが長くなる。

その結果、ファッション商品にとっては在庫リスクが大きくなり、たくさんの値下げをし、たくさんの売れ残り在庫を抱えたということを忘れてはいけません。

来春以降、販売価格は下がる可能性は高いでしょう。

しかし、期中値下げで対応ではなく、当初から顧客が求める適正価格を考え抜き、コスパを感じてもらえるように、適正原価でつくる。

そして、出来るだけ値下げをしなくていいように、計画段階から在庫最適化と期中のオペレーションを改善して頂きたいです。

せっかく高まり始めた過剰在庫を残さないための意識。これからは量を売る売上至上主義から在庫をコントロールして粗利を最大化される時代です。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫最適化を考えるビジネス読本 価格政策の基本、王道についても1章分割いて語っています。

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

| |

November 30, 2020

ヤマト運輸がイギリスのクリック&コレクトシステムを導入して、オンライン通販の店舗受取サービスをスタート

Amazon-hub-counter-next11月26日の日経新聞、27日の日経MJなどによれば宅配大手のヤマト運輸はイギリスでオンライン通販注文商品の店舗受取サービス=クリック&コレクトのプラットフォームシステムを提供する英Doddle Parcel 社(以下ドドル)と業務提携を行い、

顧客がZOZOTOWNやYahoo!ショッピングなどで注文した商品を、顧客が指定する近隣の商業施設や店舗に届け、顧客の都合で受け取ることができる、いわゆる「クリック&コレクト」サービスをスタートしたとのこと。

25日から始まった当サービスで受け取り可能な拠点は現段階では丸井、スーツのはるやま、天満屋(百貨店)など全国 約600店舗で、ヤマト運輸は年内に2,000店舗、将来は10,000店舗まで増やす、としています。

通販で注文した後に、ヤマトから届くメールに対して、顧客は選択肢の中から受け取り場所を指定することができるというしくみのようで、その際、生成されるQRコードを指定店舗で提示すれば顧客は商品を受け取れるというものです。(専用端末を貸し出すそうで、零細小売店でも導入可能の模様)

受け取り拠点側の店舗にとってのメリットは
・手数料収入と
・来店によるついで買いの促進
です。

受け取り拠点によっては、来店時にその日から使えるクーポンを付与するところもあるようです。

同様の通販サイトの「クリック&コレクト」サービスはドドルの本拠地であるイギリスですでに普及済みですが・・・

筆者が2017年と2019年にロンドン視察をした時には・・・

アマゾンがチェーンストアと提携した「アマゾン・ハブ・カウンター」(アパレルチェーン大手のNextなどと提携)を独自に展開していたり(右上画像)、宅配ベンチャーが手掛ける「collect plus(コレクトプラス)」(全英の零細から中小小売店を中心に7000拠点と提携)などのサービスが先行し、ドドルは出遅れていた印象を受けましたが・・・

日本においては宅配最大手のヤマト運輸と組んで、システムだけを提供する側に回れば一気にシェア獲得が出来そうですね。

ECの急増にあたり、宅配キャパシティは今後も深刻な状態、再配達問題もアマゾンの置き配やヤマトが手掛ける「EAZY」などで緩和されているようですが、取扱い量はどんどん増えるでしょう。

その際、顧客の受け取り手段の多様化と利便性向上を考えた対策は待ったなしです。

コンビニ受取りは便利ですが、キャパシティはすでにいっぱいだと思いますので、比較的、閑散時間もある、クリーニング店など、駅前の第三者店舗がその役割を果たすことは悪くないことだと思いますね。

今後の広がりに注目したいと思います。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

関連エントリーーロンドンで進化するクリックアンドコレクトと通販受け取り拠点の多様化

関連エントリーーロンドン視察から 日本でのクリック&コレクトの普及を考える

【オススメ本】 欧米の最新デジタルショッピング事情、日本の10年後を未来から逆算して考える視点、それらを示唆する事例を取り上げて日本のファッションショッピングの未来を考えました。

| |

November 16, 2020

着回しの利く、究極の定番を磨け

Hermes-margielaa

先週、11月11日の日経MJ の1面、「仕事着はもう買わない」という見出しに目が止まりました。

20ー30代の80人を対象にコロナショック前後で働く女性の服の消費がどう変わったかを調査した特集記事でした。

アパレル市場の中で、働く女性の服の市場は最も大きな市場のひとつ

購入単価と購買頻度がその他の客層よりも圧倒的に高めなマーケットであることは言うまでもありません。

記事の内容は、80人という限られた対象者の調査かも知れませんが、コロナビフォア・アフターの購買行動の変化の傾向はある程度浮き彫りになっているのではないかと思いました。

・商談がなければ上着はジャケットからカーディガンへ
・通勤が減れば、オフィス服の必要枚数は減る
・駅ビル中心にお買い物していた人がネットに移行して、その安さにびっくり
・巣籠もり間の断捨離でZARAのようなファストファッション系の着なくなった服を捨てて、ユニクロを買うようになった

・定番を買うようになった

一方で、

・1着あたりの価格はむしろ高くなった、という傾向もあるようです。

そして、興味深いのは、

オフィス着への支出を減らした人も、
頻度は減っても1着あたりの支出を増やした人も

1万円弱ぐらいの価格は避けるようになったのが共通点とのこと。

1万円と言えば、駅ビルのセレクトショップ系のプライスポイント。

オフィスでそつなく、小奇麗に着ることができる服の価格帯の商品群が弱くなっているのは、市況にも通じるところがあります。

そこから

ユニクロのような割安な定番や
長く着ることができる上質の逸品

といった2つの需要へ向かっている、と読み取れます。

さて、そんな傾向があぶり出されて
提供する側のファッション企業さんは、今後、どんな対応をされますか?

まず、過去に固執するより
顧客の今、それから今後の体験や生活シーンを想像する想像力が大切でしょう。

定番ベーシック志向となれば、
もちろん、ユニクロが益々強くなることが想像できますが・・・

ユニクロが全体の主役になることはない、でしょう。

ユニクロ自身もそうなろうとはしていないでしょう。
むしろ、以前から、存在感のある、「究極の脇役」になることを目指している、と思います。

(ひとりごと:今回11年ぶりに発売した+Jは、その中でも主役級かも知れませんが・・・)
 

そんな中で、これからのファッションブランド、ストアブランドの役割とは?

例えば、長く、愛着してもらえる、ブランドらしい、究極の着まわし服の開発に力を入れてみたらどうか?

おそらく、そのアイテム候補は、既にブランドの中で強みとしているアイテム群の中にあるのではないか?と思います。

そんな核となるアイテムにフォーカスして、毎年クオリティを磨きながら、・・・

それらを活かしながら、そのシーズンらしい、新しい買い足し、買い替えを提案を行う。

それが、今回の記事を読んでの筆者の感想です。

いつもお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題ですね。実はZARAも以前からベーシックが稼ぎ頭。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本


 

| |

October 19, 2020

Circular Economy サーキュラーエコノミー(循環型経済):ZARAのインディテックス社のこれから10年の経営テーマ

Photo_20201019195601サステナビリティ(持続可能性)やサステイナブル経営という言葉が全産業のテーマになり、メディアでそのキーワードを見かけない日はないくらいですが・・・

何をもってサステナブルなのかが今一つしっくりこない方も少なくないと思います。環境のために、社会のために、企業統治をしっかり、と言っても、企業の本業と直接結びつかない、ピンとこない取り組みが多いように筆者も感じています。

そんな中、ZARAを展開するインディテックス社のアニュアルレポートを読んでいて、腹落ちしたことがあったので、ご紹介したいと思います。

同社は2005年、パブロ・イスラ現CEOがナンバー2になったくらいからSustainabilityという言葉を使っていますが・・・

近年、そのサステイナブル経営の中核に置いているテーマのひとつに、Circular Economy(サーキュラーエコノミー)という言葉があります。和訳すると「循環型経済」となりますでしょうか?

このサーキュラーエコノミーについて理解する上で、

従来のリニア・エコノミー、一部の企業で取り組みが始まったリユース・エコノミー、そして、その先にある理想の状態であるサーキュラー・エコノミーの順に説明しましょう。(右上の図参照;出典はオランダ政府の資料です。) 

リニア・エコノミーとは、従来型の経済。新しい原材料を使って、製品化し、使用後に、廃棄をするという流通経済です。

リユース・エコノミーとは、新しい原材料を使って、製品化し、使用後に、リサイクルできるものは、再び原材料に使って製品化を行い、出来ないものは廃棄するという流通経済です。

これに対して、

サーキュラー・エコノミーとは、
製品化にあたって、そもそもリサイクルできない原材料は使わない。使用後は、そのリサイクル可能な原材料、素材を原料にして新製品をつくる。出来るかぎり使用後のリサイクル素材を使うが、必要に応じて、足りない分だけ、やはりリサイクル可能な新しい原料を足してつくる。
ということで、使用後の廃棄を行わない流通経済のことを意味します。

図にすると、リニア・エコノミーが一方通行の直線なのに対し、サーキュラー・エコノミーでは出口が入り口に合流する、サークル状の形になるというわけです。

ZARAのインディテックス社という企業は、これまでおおよそ10年ごとに経営のビジョンを掲げて来ました。

2000年代はflexibility(柔軟性)のスローガンのもと、ファッション業界の中でも最もその言葉の意味するところに近い本格派SPA(アパレル製造小売業)モデルのグローバル展開に磨きを掛けました。

2010年代は2013年にfully integrated store and online platform(店舗とオンラインの完全統合)をテーマに、いわゆるオムニチャネルリテイリング、あるいはOMO(online merges offline)の実現に投資を行い、あと2年後の2022年には世界的、全ブランドで完成するとのことです。

そして、2015年以降、その次のビジョンとして、並行して取り組み始め、これから力を入れるのが、Sustainability(サステナビリティ)の中のCircular Economy(循環型経済)というわけです。

同社の最新のアニュアルレポートによれば、

〇同社の700人を超える全ブランドのデザイナーおよび、本社、主要国のヘッドクオーターの社員、計10,000人がサーキュラーエコノミー(循環型経済)のための教育プログラムを済ませた。

〇デザイナーたちは、サーキュラーエコノミーの発想に基づいて、素材選定を始めた。

〇リサイクルのために、同社が出資する企業と組んで、店頭はもちろん、スペイン国内の街角に数千もの不要ファッション商品回収ボックスを設置し、EC宅配の帰り便(届けた後に手ぶらで帰らず、顧客の不用品を回収する)も利用し、製品リユース、リサイクル素材開発のための不要品回収を強化している。

〇サーキュラーエコノミーの発想に基づく、リサイクル、環境に優しい素材を用いたJoin Lifeのタグのついた商品群は既に全商品の25%を占めている。

〇回収した素材をリサイクルする先端技術を研究するスペインの大学や研究機関に投資をするために、米MITと共同ファンドを立ち上げた。

などの取り組みが紹介されています。

そんな同社のレポートを読んでいて、10年以上先にあるファッション業界のモノづくりの未来を想像していました。

□ デザイン(コンテンツ)はもちろん、その時々の最新ファッショントレンド

□ 原材料として使う素材はすべてリサイクル素材(ボタン、裏地も含む)

□ リサイクル以外の新しい天然素材、合繊素材の新規素材調達には、国際的な年間利用枠が設定されていて、利用規制がかかっている。
企業はその範囲で素材調達をして、モノづくりをしなければならない。

もし、将来、そんな社会が到来するとしたら?・・・・

インディテックス社は業界の中で、いち早く、DX(デジタルトランスフォーメーション)のビジョンをまもなく完成させ・・・すでに10~20年後の未来の「ありかた」に向けて動き出しているのだな、と。

このサーキュラー・エコノミーの実現は、既出のオランダ政府の資料によれば、25年がかりになるだろうと言われています。

しかし、そんな先の未来も見越して、ビジョンを描いて、信念をもって早くから準備を進めた企業が、その時になれば、業界の中で優位に進めることになるでしょう。

そして、これからの時代のキーワードになるであろう「サーキュラー・エコノミー」についても、いち早く取り組み、業界の先進企業となっているインディテックス社の動向、ビジョンからはますます目が離せなくなりそうです。

いつもお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

 

| |

October 12, 2020

ニトリのアパレル事業成功の可能性

20200922_194530先日発表された、ホームファッションチェーン最大手=ニトリの2021年2月期の上半期決算は売上高前年比113.7%、営業利益同139.7%の大幅増収増益、過去最高益を更新し、同社は2020年通期決算を上方修正しました。

コロナ禍の消費が家の中に向く、いわゆる「巣ごもり需要」をしっかり取り込んだ格好で、休業に追い込まれなかった郊外フリースタンディング立地の強みを活かして、上半期の既存店買い上げ客数が114%増、加えて、これまで磨き上げて来たEコマースをフルに活かし、前年比156.3%となったのが大きな要因です。

同決算発表時に同社が、今後アパレル事業にも力を入れる、と宣言していたので、今回はニトリのアパレルビジネスの可能性について考えてみました。

ニトリ社は、筆者もかつて、小売事業会社勤務時代に学ばせて頂いた、故 渥美俊一先生のペガサスクラブの最優等生企業の1社で・・・アメリカや海外のチェーンストアに刺激を受けてビジネスのロマンを抱き、チェーンストア理論の原理原則を正しく理解され、試行錯誤を繰り返しながら、仕様書発注が基本で、自前工場まで持つ製造小売業を貫いて来られ、

出自は家具店ながら、季節にあわせてコーディネート提案をするという発想もしっかり持ち合わせていらっしゃる企業ということで、筆者はその取り組みや姿勢をリスペクトしている異業種企業のひとつでした。

今回、初めて、決算財務諸表を見て驚いたのは、その収益性と在庫効率の高さでした。

ニトリ
       2020年2月期(通期)  2020年8月期(半期)     
粗利率      55.2%         56.7%
販売管理費率   38.5%         34.3%   
営業利益率    16.7%         22.4%

在庫日数     74日          60日

※ お断り: 在庫日数は 期末在庫原価を翌四半期の1日あたりの売上原価で割っています。

一般的に、家具やインテリアショップチェーンは、取り扱いアイテムの顧客購買頻度がアパレルなどに比べて低いので、年間の在庫回転が低い代わりに・・・高い粗利率で稼ぐビジネスモデルと認識していたのですが・・・

同社の場合は、自社商品開発による高粗利率や営業利益率の高さだけでなく、
何より、際立った在庫日数の短さ(在庫回転数にする時は365÷在庫日数で判断下さい)

に目が留まりました。

おそらく、取り扱いアイテムの中で、顧客の家具の購買頻度は高くはないと思いますが・・・

季節にあわせて、コーディネートして着替えることを提案するファブリック(各種カバー類)、
防寒、冷感アイテムなどのシーズナル商品や、
低単価の消耗品(電球・乾電池、オフィスサプライなど)などが商品回転の高さに寄与しているのでしょう。

また、直貿(直輸入)が圧倒的に多いのですが、本来であれば、在庫過多になりがちなところを、在庫日数が長くならないように、サプライチェーン管理を徹底されているのでしょうね。

ちなみにアパレル大手のファーストリテイリング社とZARAのインディテックス社の直近の開示数字と比べてみると、

ファーストリテイリング
        2019年8月期(通期)     
粗利率         48.9%
販売管理費率      37.3%
営業利益率       11.0%
在庫日数        119日

インディテックス は 2020年1月期末はコロナ対策決算をしているイレギュラーなので、2019年8月の半期決算の数字で、平時で見てみます。

       2019年1月期(通期) 2019年8月期(半期)     
粗利率        56.7%     56.8%
販売管理費率     40.0%      40.9%    
営業利益率        16.7%     15.9%
在庫日数       102日      87日

これらの数字を見る限り、ニトリは国内中心事業ではありますが、財務構造や収益性や販売効率の良さは、世界トップクラスのアパレル企業に似ている、いや、それら以上に良い、と言えるかも知れません。

なぜ、同社の収益性や在庫日数(在庫回転)に着目したかというと、

小売業は粗利率x回転率ミックスのビジネスであり、構造が全く違うカテゴリーに手を出すと、既存のビジネスと折り合いが上手く行かなくなり、バランスを崩し(売れない、儲からない、在庫過多に苦しむなど)、早々に失敗、撤退になる事例が少なからずあるからです。

一方、既存ビジネスと客層が近い、あるいはすそ野を広げる効果があり、既存ビジネスと比べ、適度に利益率が高めで、適度に回転率が良ければ、儲かる、良いビジネスと認識され、次のビジネスの柱や成長エンジンになることもあり得ます。

例えば、ユニクロがかつて取り組んだ野菜などは、企業力はあり、志は評価できたとは思いますが、全く違うビジネス構造、本当に畑違いのへの取り組みが上手く行かなかった要因だったと見ています。

そういう意味で、ニトリの既存の損益構造や在庫効率は、製造小売業であること、数字を見る限り、アパレルのそれに近いことと、古くから、ホームファッションというカテゴリーの商品開発において、コーディネート思考を持っているという点で・・・

少なくとも、季節性のある、継続販売も視野に入れたベーシックアパレル群であれば、決して、全くの畑違いとは言えず、全く別のビジネスに取り組むわけではなく、社内理解度も早く、やりよう次第で上手く行く、規模の大きくなる可能性があるのではないかと期待ができます。

先日、ららぽーと立飛のニトリのアパレル業態 N+(エヌ・プラス)を拝見して、ミセス向けの2490円-2990円あたりがプライスポイントのベーシックアパレル店という印象を受けました。

かつての米リミテッド・ストアやタルボットを見る思いでしたが・・・日本では、ドゥクラッセやベルーナの間くらいの位置づけになるのかも知れません。

N+のオンラインサイトでは、ZARAの店頭提案のようにカラー別のコーディネート提案をアピールしていたので、コーディネートにこだわるニトリがどんな売場をつくっているのか?と思って見てみましたが・・・

あいにく売場が狭い(40坪程度)こともあり、カラーコーディネート提案ではなく、品番でくくった、あまり特徴のない、価格訴求の普通の品種別売場にしか見えませんでした。

アパレル経験者を雇い、まだ規模が小さいので、自前ではなく、アウトソーシングを活用して商品開発をしているとのこと。

しかしながら、ホームファッションの隣にあるマーケットとしての、婦人ベーシックアパレル市場は、同社にとって、決して悪くはない、大きく、新しい開拓市場のひとつではないか、と思ったものでした。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】11月19日(木)開催オンラインセミナー「ファッション専門店の在庫最適化の実践2020年版」

在庫管理の手法を見直し、業務の再構築をお考えの企業の皆様に・・・ご案内はこちらから https://dwks.jp/2020/09/25/seminar-20201119/


次のステージに向けての在庫最適化と人財育成を切り口にした業務再構築支援~ZOOMを使ったオンラインアドバイザーサービスも実施中。詳しくはこちら

【参考書籍】

ニトリの強さ、人財育成がよくわかる本です。

「ニトリの働き方」(大和書房)

| |

October 05, 2020

顧客の新しい行動様式と用途にあわせて商品提案する

9月のファッション専門店の月次売上速報が一通り発表されました。20201005_143941

これらの結果を見て、やはり、需要は

気温x顧客用途(必要性)x価格x店頭在庫鮮度 

の掛け合わせなのだなと感じました。

気温は20日前までは確かに残暑、しかし、4連休以降は9月にしては久しぶりの秋の気温だったと思います。
過去3年が、10月10日を過ぎなければ秋らしい気温にならなかったのに対し、
今年の9月の後半は秋ものにとって悪くはない、コロナウィルスに対する自粛ムードがなければ
アパレルにとっては、悪くない商売条件だったと思います。

次に、近郊、郊外の需要はかなり回復したように思いますが、都心部の回復が遅いですね。

これは、近郊、郊外で行動範囲が広くない生活をしている方々にとっては、感染対策をしながら普通の生活に戻り・・・

一方、都心に通う方々にとっては、着飾る必要性のある環境になかなか戻らないということだと思います。

そんな新しい生活様式に必要なものは売れ、必要でないものは需要が弱いということです。

百貨店やセレクトショップなど前年消費税増税前に、駆け込み需要を狙って、
冬のアウターを前倒し販売をした企業の前年のハードルの高さの指摘もありますが、

それよりは前年と比べて生活様式が変化したことによる、変化対応の遅れ、単価の高いアウターへの需要減が大きいのではないでしょうか。

そして、気温的にはチャンスはあったと思いますが、仕入抑制や持ち越し在庫消化を図ったために、店頭の鮮度を落さざるをえなかったところは売り逃しをし・・・

商売チャンスを活かすべく、しっかり新商品を揃えていたところが業績を伸ばしたという印象です。

これから冬に向けても同じことが続きそうな気がします。

コロナ自粛をものともせず、新しいベーシック商品の在庫を積み込むユニクロ

45日サイクルで新しい商品を次々に店頭に並べるという、もともとの強みに回帰して業績回復中のしまむら

この日本のアパレル専門店ツートップの秋冬業績には期待ができます。

郊外だから、都心だから、という立地だけではなく、また、EC売上構成比の高さだけではなく、

小売の商売というものは

気温x顧客の用途(必要性)x価格x店頭在庫鮮度

のかけあわせであるとあらためて感じます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】11月19日(木)開催オンラインセミナー「ファッション専門店の在庫最適化の実践2020年版」

在庫管理の手法を見直し、再構築をお考えの企業の皆様に・・・ご案内はこちらから https://dwks.jp/2020/09/25/seminar-20201119/


次のステージに向けての在庫最適化と人財育成を切り口にした業務再構築支援~ZOOMを使ったオンラインアドバイザーサービスも実施中。詳しくはこちら

【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫最適化を考えるビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

| |

September 29, 2020

11月19日(木)開催 ZOOMオンラインセミナー「ファッション専門店の在庫最適化の実践2020」のお知らせ

【11月3日時点 まだ残席ございます。】

今回はセミナーのお知らせです。191122

毎回好評を頂いております、ファッション業界専門セミナー「ファッション専門店の在庫最適化の実践 2020年版」を今年は初のオンライン開催致します。

今回のセミナーでは、アフターコロナ時代を見据えた業務再構築のヒントになる

・商品計画と販売計画の基本
・社内計画共有の流れ
・販売計画と店舗への在庫配分
・帳票の着眼点とアクション
・シーズン商品を売り切るための鉄則 など

ファッション商品を店舗およびECで販売する事業者様向けに、
シーズン中に利益を高め、過剰在庫を持ち越さないために知っておきたい10の原則を解説します。

ショッピングのオンライン活用が増え、販売のデジタルトランスフォーメーション(DX)が加速する転換期
これまでの業務を一旦整理して見直し、新しい着眼点を見つけて頂けるように・・・今回のセミナーが参加者の皆さんにとってそんな機会になれば幸いです。

-セミナー詳細-

【タイトル】 

「ファッション専門店の在庫最適化の実践 2020」
シーズン中に利益を高め、過剰在庫を持ち越さないために知っておきたい10の原則

【開催日時】 

2020年11月19日(木)15:00~18:00(14:45受付開始)

【場  所】 

オンライン(ZOOM)での開催となります

【講  師】 

齊藤孝浩(タカ サイトウ) ファッション専門店の在庫最適化コンサルタント ディマンドワークス代表
「アパレル・サバイバル」(日本経済新聞出版社)
「ユニクロ対ZARA」(日本経済新聞出版社)
「人気店はバーゲンセールに頼らない」(中央公論新社)の著者

【主な内容】
〇ファッション小売業の在庫最適化とは?
〇シーズン商品の商品管理・販売管理の原則
〇販売計画を直営店やEC担当と共有するためのポイント
〇販売計画に基づく店舗への在庫配分
〇理想的な在庫の持ち方の見極めとアクション
〇直営店と自社ECの在庫の活かし方
〇シーズン商品を売り切るための鉄則 など

【参 加 費】 

お一人 22,000円(消費税込)
事前 銀行振り込み あるいは クレジットカード支払い
※参加された方限定で、後日、1社様1回1時間程度の無料オンラインフォローアップサービスをご提供いたします。フォローアップとは、セミナーでの気づき、学びを、持ち帰って現場で運用してみた後に経過状況をご一緒に整理し、次のステップの方向性を明らかにするお手伝いをさせて頂くスポットサービスです。是非この機会も有効にご活用下さい。

【延 長 戦】 

セミナー終了後、30分のオンライン延長戦(質疑応答、・意見交換会)あり

【定  員】 

先着25名様(定員になり次第締め切りとさせていただきます)
参加費振込またはクレジットカード決済をもって正式なお申込みとなります。

【参加対象の方】 

ファッション専門チェーン、EC事業者の経営者様、経営幹部様、事業または商品仕入・管理部門の責任者の方など、業務の再構築をご検討の方にメリットのある内容です。

また、事業会社様の在庫最適化業務を外部から支援されているシステム会社さんや業務委託契約の方も参加いただけます。

【セミナー形式】

講義の合間にブレイクアウトセッションを使いグループワークを交え他の参加者の方々とも意見交換ができる環境を設けて進めます。同じお悩みを持つ他社の参加者の方々と交流することでセミナーの価値を 倍以上に吸収いただけます。

※更に、セミナーでの学びを、しばらく現場で実践された後に、あらためて講師と対話ができるオンラインフォローアップサービスの機会を活かすことによって、業務改善をスピードアップいただければと思います。

■申し込みはこちらのフォームから
お申込みページへ

 

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

次のステージに向けての在庫最適化と人財育成を切り口にした業務再構築支援~ZOOMを使ったオンラインアドバイザーサービスも実施中。詳しくはこちら

【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫最適化を考えるビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

| |

September 28, 2020

ZARAのインディテックスグループがコロナ禍で行った決算対応

先ごろ発表された、ZARAのインディテックスグループの2020年上半期決算(2-7月)に目を通しました。41cimg0394_20200928173001

コロナショックの影響により売上高前年比44.3%の減収、同社上場以来初の赤字となった第1四半期に続き、
第2四半期は売上高前年比は31.4%減ながら、営業黒字化(営業利益率6.6%)を果たしました。

まずは、売上が31%減でも損益分岐点を上回っている、営業黒字を出せるなんて、すごい会社だな、と素直に感心します。

結果、上半期の累計売上高は前年比37.3%の減収、半期では依然として営業赤字のままです。

一方、足元の8月以降は売上高前年比11%減まで回復して来ているようなので、このまま回復に向かえば、第3四半期累計で黒字化は果たせることでしょう。

この間の4連休に新宿店を覗きましたが・・・来店客でムチャ混みで、フィッティングルーム前は長蛇の列でビックリするくらいでした。

半期決算の結果だけ見ると、「世界一のインディテックスもコロナショックには勝てず、赤字に陥った」となりますが、
この間、同社は表面的な売上大幅減と営業赤字の裏で、いくつかの「先手」を打っていることが、決算書を見るとわかります。

ひとつは、以前もブログで紹介しましたが、前期末(20年1月末)にコロナショックの影響を見越して、春夏在庫を評価減したことです。

コロナショックの影響を受けなかった2019年度(2020年1月期末)は

売上高  3兆4,028億円(前年比8%増)、
営業利益高 5,749億円 (同9.5%増)

の過去最高益となる増収増益でしたが、

この期は

1)コロナ前から長年進めて来た店舗のスクラップ&ビルドを加速し、前年の2.5倍、売上高対比で言うと10%にも上る減価償却費を計上して今後の大量閉店に備え、なおかつ、

2)1月末から世界各国で表れ始めた新型コロナウィルス影響に備えて、1月末時点の春夏在庫に対して、約355億円の在庫評価減のための引当金を計上しています。

もし、この在庫評価減がなければ、同期の営業利益は前年比16%増の大幅増益となっていたところでした。

ふたつめは、21年第1四半期がコロナショックの直撃で赤字になると見るや、引き続き前年の1.4倍の減価償却費を経費計上し、あえて大赤字を出したことがわかります。

償却前の利益(EBITDA)はしっかり黒字だったところを見ると、上半期の業績を犠牲にしてでも、下半期以降の負担を軽くするために、ある意味「膿出し」をしたように思えます。

インディテックスという会社は、

消費者の購買行動の変化を見据え、2010年にオンラインビジネスを始め、2013年に「店舗とオンラインの完全統合プラットフォーム(=OMO)」宣言をして以来、店舗のスクラップ&ビルドを進め、オンラインで買って店舗で受け取る、店舗で見てオンラインで買うことができるデジタルトランスフォーメーションインフラを整え続けて来た会社。

現在、出店国は世界96店舗になり、オンライン販売実施国は66か国ながら、世界の202の国と地域にオンライン販売できる体制を整え、宣言から10年後となる2022年にグループ全体でその体制が整うとのことです。

これは、RFIDを含め、10年がかりのIT投資によって店舗、EC倉庫、本社倉庫の在庫情報がリアルタイムに一元化されたことで・・・

オンラインで注文した顧客に店舗在庫からも出荷ができるようになったことの「たまもの」です。

この体制が整えば・・・

今後、コロナショックのような外出自粛があっても、オンライン活用で全店の店舗在庫を近隣の顧客に届けたり、密を避けて店頭で手渡したりできるようになり、被害もこれまでとは違い、最小限に抑えられるようになるでしょうね。

そんな10年単位の長期的ビジョンを持ち、危機があるごとに、企業体質を見直し、単年度ではなく3年平均の売上と利益の成長率を考えて来た同社だからこそ成せる業であって・・・上記で述べたような、同社の決算期ごとの調整は、決して短期的な財務テクニックの話ではなく、中長期ビジョンに基づく余裕から来るものであることもわかります。

同社の直近のプレスリリースによれば、

2000年代は製造小売業と業務の内製化に磨きをかけ、ファッションビジネスのリスクに対する「柔軟性」(=flexibility)を構築した10年。

2010年代は店舗とオンラインの完全統合(=integrated store and online platform)に磨きをかけた10年。この体制はあと2年で完成するようです。

そして、ここからの10年、彼らの視線はこれからのサステナブル経営(=sustainability)、特に※サーキュラー・エコノミー(=circular economy; 循環型経済)に向かっているとのことです。

世界のトップランナーである同社からは、引き続き目が離せませんね。

※「サーキュラー・エコノミー」については、今年から来年以降の、サステナブル経営関連の重要キーワードになりそうなので、また、あたらためて、ブログでご紹介したいと思います。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

いつもお読み頂きありがとうございます。

 

| |

より以前の記事一覧