November 06, 2023

古着ブームと価格の高騰、変貌する?古着マーケット

Closet_2023110618380111月2日の日経新聞に「古着高値」「輸入価格3割上昇」というタイトルの記事が掲載されていました。

ここで言う古着はいわゆる「欧米古着」と言われるもので、
国内リユース古着のことではありません。

記事によれば、
ファストファッションブームで古着として耐えうるものの供給が先細りし、
一方、世界的な古着ブームで原価は上がるも
2022年の日本の欧米からの古着輸入量は1万トンを越え、
過去最高の輸入量だったそうです。

枚数にすると3,000万枚くらいでしょうか?
アパレルの国内供給量は37億点くらいということなので
1%弱くらいになるでしょうか?

コロナ以前くらいから
下北沢に古着店が増えている、という話があったので
しばらく気になっていました。

今年になって、久しぶりに当地を見て歩きましたが、
東も西も古着店と飲食店しかないのでは?
と思うほどたくさんの古着店がありました。

記事によれば
コロナ禍前から4-50店増え、
現在下北の街には200店舗ほど古着店があるそうです。

店を覗いて、気が付くのは販売価格が高いこと

ですので、宝物探しをしているお客さんはいるものの
レジで買っているシーンを見ることは少なかった印象です。

以前は、1900円、2900円・・・5000円も出せば、
コーディネートのアクセントに使える品がいろいろ買えた印象でしたが、

そういった低価格帯の店は少なく、
セレクトショップのセカンドラインくらいからそれ以上の価格のお店が沢山増え、

若い世代は、そうやすやすと手が出せないのでは?

と思ったものでした。

このような状況では

輸入古着は輸入量が増えても、
必ずしもマーケットにインパクトをもたらすほど販売数量がそこまで増えるものではないと感じます。

以前、古着やリユースを扱う方々から伺った話ですと、

古着の販売価格に対する仕入原価率は10%以下、
ところが、販売着地のPL上の粗利率は70%程度、

つまり、輸入しても販売できない商品のロスや換金のための値下げなどで
元販売価格に対して2/3くらいはロスがある計算になります。

しかも、古着は新品に比べて明らかに在庫回転が悪いので、
販売チャンスに粗利額をたっぷり稼がなければならないビジネス。

記事のように輸入原価が3割上がっても

そもそも原価率が低いので
販売価格に対するインパクトはそれほど大きくなく

むしろ、競争が激しくなり、
価値のある商品の供給が減ったこともあり

各店が単価を稼ぐために
価格を高めに振った結果ではないかと

古着ビジネスは参入障壁は低いですが

より目利きが求められ、
家賃は下がっているとは思えないので、
ますます生き残りも厳しくなっているという印象です。

今の下北のお店の顔ぶれが
3年後にどう変わっているか?というところです。

ところで、古着の客層には

・ビンテージマニア、
・個性のある1点ものを探すファッション好き、

そして、

・価格が安いから買うという客層

があったと思います。

しかし、今や
最後の価格が安いから買うという世代は
ファストファッションチェーンやオンライン
あるいは国内流通のセカンドストリートのような店
に買いに行っているのでしょうね。

実際、下北沢でも、
欧米古着の古着店の客層とセカンドストリートの客層は
求めるものも違い、明らかに違っていました。

店は増えても、価格が上がれば、
買上客数は減るのは小売りの需要供給の原則

特にティーンズや20歳前後の学生には
古着はハードルが高くなった印象です。

原価や物価の高騰はどうであれ、
学生の小遣いが増えているとは思えないので・・・

低価格のアパレルチェーンでも
以前よりも、親同伴が増えているような印象を受けます。

原価が上がったので企業が値上げする理屈はわかるのですが、
収入の限られた層には払えなくなる

その一方で、海外から、円安に目をつけて
古着の買い付けに日本にやって来るバイヤーも少なくないとか。

オークションサイトやフリマアプリもそうですが、

昨今の古着マーケットは

ファッションに関心を持ち始める世代のためのお店ではなく
そこそこお金を持っている方々や
仕入れて売る、プロ向けのマーケットにもなっているのかも知れません。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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第8章ではリユースマーケットのビジネスモデルを分析しています。

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October 30, 2023

購買頻度と小売業の在庫回転率

Dsc02059_20231030194001日頃、小売業向けのご支援をさせて頂いておりますが、
これから小売を始めたいという方からアドバイスを求められることがあります。

そんな時に必ずお話しをすることのひとつに

「購買頻度」

があります。

購買頻度とは、お客さんは、一般的にそのカテゴリー(品種)の商品を年に何回くらい買うものか?という話です。

 

アパレルであれば、一般的に

レディース服は6~8回くらいでしょうか?

メンズであれば4回くらいでしょうか?

靴はもっと頻度が低くて、2-3回くらい?

スーツのような紳士服はもっと少ないかも知れません。

 

小売業に従事されている方はお気づきかと思いますが、

この購買頻度って、そのカテゴリー(品種)の年間在庫回転率に近いということ。

 

お客さんあっての商売なので、無理に頻度を上げることはできません。

もっと売りたいなら、同じ人ではなく、購入客数を増やすことが必要になります。

 

つまり、購買頻度と在庫回転率は
事業の設計と損益とキャッシュフローに大きく影響を与える要素なのです。

 

そのため、こんなことがよくあります。

 

メンズ事業中心の企業がレディースに広げると
メンズよりもレディースの方がよく売れるので、儲かった実感が得られ
その後も上手く行くことが多いですが、

 

レディース事業がメンズカテゴリーに手を出すと
レディースほど高回転しないので、

いまひとつ上手く行かない。

 

スーツや重衣料専門だったお店が

より購買頻度の高いカジュアルを始めると売れる実感が得られますが、

カジュアル事業が

在庫の重い(金額の話ではなく、在庫回転の話)スーツを始めても、上手く行かない

などの事例です。

もちろん、全てが全てではありませんが、

小売ビジネスにおいては、「購買頻度」というキーワードを無視すると

上手くいかないことが多いのです。

これに則ったアパレル業界の成功事例の筆頭は

ユニクロかも知れません。

当初、紳士服事業を引き継いだ柳井さんは
カジュアルという紳士服より売れる金の鉱脈を掘り当てました。

その後、ユニセックスからレディースを強化し、

また、外に着るものから、インナーへ手を広げることで、

購買頻度と購買客層の裾野を広げ、大きな成長を果たしました。

 

ホームファッション業界ではニトリが好例でしょう。

引っ越しの時くらいしか買い換えない家具に


シーズン性やコーディネートの要素を取り入れ、

カバーをシーズンごと、気分にあわせて着替えてもらう提案をし、

更に購買頻度の高い、消耗品である、電球や乾電池なども取り扱うことで、

来店頻度・購買頻度を戦略的に高めています。

 

単価は高くても、購買頻度の低い、家具だけにこだわっていたら・・・

今のニトリはなかったことでしょう。

 

このようにユニクロとニトリは購買頻度を理解し、

上手く事業に取り入れたことが事業の基礎にあると言っても

過言ではありません。

製造業の方は、ものづくりに自信があるので、

どうしても良い商品をつくれば売れると思いがちですが・・・

小売業に携わるなら、

まず、購買頻度とい顧客行動を想像し、

顧客最適で考えるところから始めたいものです。

それが「顧客の立場になって考えること」の第一歩です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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October 09, 2023

平均単価が上がることと値上げが支持されていることとは全く別の話

Photo_2023100917200110月4日の繊研新聞に

しまむらが

客単価を上げへ もう一格上のPB発売

という見出しで

鈴木社長のインタビュー記事が掲載されていました。

従来のプライスポイント(最多価格帯)よりも1000円高いPBクロッシープレミアムが良く売れているという話。

同社は上半期、客数ほぼ変わらず、平均単価が上がり、セット率は下がったものの、客単価アップ で既存店の売上伸ばすことに成功し

更に単価の高いPB 商品開発の実験に意欲的 という話です。

原価高騰の折

各社、上がる仕入れ原価に対し、いかに販売単価を上げるかに頭を悩ませるとことですが、

売上が増えているからと言って

「値上げが支持されてる」

というような報道を最近、目にすることが多く、その都度、違和感を覚えています。

ユニクロについても「値上げ」が上手くいっているというような報道がありますが

それは一部の商品、値上げをしないと許さない?株主対策であって

確かに定価を上げている商品もあるようですが

店頭に行けば


秋までは1990円

冬は2990円

というのプライスポイント(同社最多価格帯)を

期間限定価格含めてその価格を作って
しっかりアピールして

来店客には値上げした、高くなったようには
感じられないように工夫しているのが実情です。

しまむらも同様で

店頭では圧倒的に1900円未満

つまり1790、1490の商品が目立ち

そして990、790など1000円未満の商品も多数あり

高くなった感を感じさせない売場です。

つまり

買い上げ客数をある程度維持するための
従来のプライスポイントの商品はしっかり揃え

来店客には高くなった感を覚えさせず

一方、

プライスポイントに対して相対的に品質を高めたものを
高いプライスラインを設けて提案することで

あっここにもいい商品はあるんだなと思ってもらい

「高いものも売れる」という

将来に向けての次のチャレンジをしていたり

あるいは

原価が上がっても
定価は据え置いた商品を前面に見せ

むしろ値下げを押さえることで
最終利益を確保しているわけで

決して

クオリティが同じものを
原価が上がった分
そのまま販売価格転嫁しているわけではないので

誤解をしないで欲しいと思います。

平均単価が高くなったところを見て

「値上げが支持されている」

と思ってしまってはとても危険な話です。

今に限らず、過去にも同じようなことが
何度かありましたからね。

ちなみに
天候、気温関係なく

単価を意図的に上げたことで

それ以上の客数減

例えば10%以上減ったなら・・・

それは明らかに客離れだと
深刻に思った方がいいと思います。

覚悟して

ビジネスモデルを変えたり
リブランディングするなら
話は別ですが、

同じビジネス構造での二桁以上の客数減は
確実にボディブローのように効いてきて
半年もすれば経営にインパクトをもたらすでしょう。

報道されていることを表面だけでとらえず
各社の工夫を読み取って実践に活かしたいものです。

 

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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October 02, 2023

越境ECの拡大、国内産業保護と消費者利益

20230520_100956日経新聞に経産省が発表した越境EC急拡大のデータと今後の問題点に関する記事が掲載されていました。

EC輸入急増、3年で小口宅配2.4倍 免税で競争ゆがみも

記事によれば、越境ECによる小口宅配(個人輸入)が3年で2.4倍

米国と中国からだけでも22年度 3954億円相当で前年比6%増

内訳は衣料品34%、美容品21% 娯楽・教育16%

日本では 輸入額1万6666円以下であれば消費税も関税も無税
アメリカでは 800ドルまで無税と聞いています。

ですから、トランプ氏が大統領だった時に中国からの輸入品にかけた
アパレルであれば25%の制裁的な関税が、

オバマ氏の時に採択された個人が輸入してしまえば800ドル
(今の為替なら10万円以上、一人でそんな買う人は稀では?)
まで無税で輸入できてしまうというわけで・・・。

SHEIN(シーイン)やTemu(ティーム―)の越境ECの売上がアメリカで急増している背景には、

そんな政府間の駆け引きや複数の業者が介在することで膨らむコストに対し、消費者視点で、生産者と消費者を直接つなぐチャレンジもあるわけです。

そこに気づいてビジネスを急拡大させるところは、ある意味、商売人として、商魂たくましいですよね。

記事によれば、欧州のいくつかの国では、国内市場の競争をゆがめるとして、
21年に免税枠を廃止されたとのこと。

アメリカや日本でも議論が始まっているようですが、どうなんでしょうか。

国内産業保護か、消費者保護か、という議論になるのでしょうか?

もともとの主旨はなんだったんでしょうかね。

まあ、各国で摩擦が起こるということは越境ECが一定規模を超えて社会問題というか国際問題のひとつになったことは間違い無さそうです。

しかし、こういった、政府が作ったルールに対して、それを不正ではなく、上手く活用したからと言って、

「アンフェア」だと言う論調は、ちょいと違和感を感じます。

筆者も時折、アメリカやイギリスから個人輸入してますんで、まずは「消費者のミカタ」です。

いずれにせよ、実態をつかんで、どれだけ影響があるのか、消費者にも納得のできる結論を出して欲しいところですが・・・

特に日本においては、ルールを変えるのには、しばらく時間はかかるでしょうね。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【アパレル企業のビジネスモデルが丸わかり】「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)
 第2章では、産直越境ECによるサプライチェーンとリードタイムの究極ショートカットを行ったSHEINのチャレンジについて解説しています。

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September 19, 2023

【このセミナーは終了しました】「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナーby WWDJAPAN

Wwd929コロナ禍を経て
世界のファッション流通マーケットの強豪たちは
いったいどんな風に変わり、どこへ向かっているのか?

毎年このブログでもリリースしている
世界アパレル専門店企業売上高ランキングをベースに

各社の動向やこれから10年の勝ち残りのカギを探ります。

2022年版ランキング公開から半年が経過してますので、その後の動向も付け加えてご説明させて頂きます。

グローバル時代、世界の動向は少なからずローカルマーケットに影響を及ぼします。

世界の流れを読み、国内ビジネスにどう取り入れるか、そんな視点を得て頂ければ幸いです。

9月29日(金) 13:30~15:00 オンライン

WWDJAPAN主催 有料セミナー

「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー

講師:「ユニクロ対ZARA」著者 ディマンドワークス 齊藤孝浩

お申込みはこちらから 
https://wwdjapan-businessseminar20230929.peatix.com/

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)

 高収益企業の決算書を図解すると見えて来る、従来の業界の常識とは真逆のアプローチとは?

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September 09, 2023

【このセミナーは終了しました】23年9月21日(木)開催 オンラインセミナー 「3つの視点を共有するだけで、過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!ファッションストアの在庫コントロールの組織づくりの秘訣」

2022_20230909124201【このセミナーは終了しました】9月21日(木)開催の経営者・経営幹部向けオンラインセミナー

「3つの視点を共有するだけで、過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!ファッションストアの在庫コントロールの組織づくりの秘訣」

ワンブランド「年商30億円の壁」を突破し、次のステージに向かう在庫コントロールとは?
業界で在庫を切り口とした実践指導実績が豊富な講師が、多くのクライアント企業と実践して成果を上げた
当シーズンからでも実践できる再現性の高いメソッドを3つにまとめて公開します。

業界大手のベストプラクティスも中小企業でも実践できる形に咀嚼してご紹介。

参加者の方には

◆業務の参考になるビジュアルなテキスト(60ページ超)!

◆自社の在庫運用の問題点と改革の優先順位がセルフチェックできるチェックシート(全50問)!!

◆復習用セミナー動画!!!

などの特典がある、お得なセミナーです。

過剰在庫が大きな経営課題となる年商30億円の壁。

これからそのステージを迎える経営者さん、そのステージに突入してしまって規模は大きくなったけど、利益率の低下や在庫回転率の悪化にお困りの経営者さん、経営幹部さんにタイムリーな話題満載です。

【日時】2023年9月21日(木)15:00~18:00 @オンライン 日本全国から参加頂けます。
【タイトル】3つの視点を共有するだけで過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!利益倍増!!「ファッションストアの在庫コントロールの組織づくりの秘訣」
【講師】 齊藤孝浩(在庫最適化コンサルタント、「ユニクロ対ZARA」、「アパレル・サバイバル」「図解アパレルゲームチェンジャー」著者)
【参加費】 お一人様 25,000円(税込)
【定員】 8名様の少人数制(9月9日時点;残席あり 定員になり次第締め切りとなります。)

※このセミナーは締切ました。次回開催のお知らせをご希望の方はこちらから

https://dwks.jp/seminar2022/

 

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August 14, 2023

急成長ルルレモン躍進の秘密

Imag2243毎年公開している

世界アパレル専門店売上ランキングトップ10

コロナ禍を経て、最も注目すべきランクイン企業は
ルルレモンです。

ルルレモンは1998年、カナダで創業

アメリカ合衆国を中心に
過去10年で年平均約20%の成長を続ける

ヨガやランニングなどアスレジャーを中心に
健康な体づくりのためのスポーツアパレルをメインに販売するチェーン

ナイキやアディダスが靴を中心にウエアも展開するのに対して、

ルルレモンは、もっぱらアパレル中心

そして、

アスリートというより、アスレジャーに関心のある一般大衆向け

また、

直営店とオンラインでエンドユーザーに直接販売するのが著名グローバルスポーツブランドとのアプローチの違いです。

そんなルルレモンは

2022年度世界アパレル専門店売上高ランキングで、第6位

北米ではGAP社に次ぐ2位ですが、営業利益はGAP社を遥かに上回って、1位

lululemon ルルレモンという単一屋号では

すでにGAP社のオールドネイビーやヴィクトリアズシークレットを抜いて1位の売上規模です。

商品は4wayストレッチや速乾など機能素材を使った、アスレチックにも普段着にも使える着心地が良く、動きやすいウエア

単に、服だけを販売するのではなく、

店舗で開催されるヨガ教室やランニング教室で

コミュニティーづくりを通じてコアなファンを増やして行くマーケティングが秀逸です。

そんな店舗体験提供に裏打ちされているため

けっして安くはない商品が、オンラインでも良く売れて、

23年1月期決算では、いよいよ、オンライン売上が店舗売上を上回りました。

オンラインの本社費差し引き後営業利益率は25~30%と

同10%前後の直営店より高いため、

全社営業利益率は20%近い高い収益率を上げています。

 

そんな 店舗体験型による顧客のつながり

オンライン事業の収益性

の二本柱に、とどまらず、

 

未来に向けて面白い取り組みがいくつかあります。

ひとつは

自社商品の買い取り、再販プログラム
lululemon Like New

です。

ユーザーが不要になったルルレモン商品を

ルルレモンが引き取って、顧客には新品購入の際に割引になるクレジット(ポイント)を付与します。

ヘビーユーザーたちは店舗で開催されるイベントに参加するだけでなく、
購買頻度も高いユーザーでしょう。

店舗で開催される教室には新しい商品を着て行きたいでしょうし、

毎シーズンアップデートされる商品を知れば、新しい商品が欲しくなるわけで、

そこでまだ十分着ることができる不要になった旧商品
(といってもそんなに古くないからLike New)

を、手放す受け皿をルルレモンが自らつくり、

一方、これからルルレモンを着てヨガやランニングを始めようとする
エントリー顧客さんには

半額以下の手頃なお試し品として提供できるというわけです。

2つめは
オンラインコンテンツの提供です。

ヨガやランニングをする人は当然
自宅またはその近辺でも日頃から自らのエクササイズを行うわけで

その手助けに沢山のエクササイズの秘訣を提供する
オンライン動画を配信します。(無料と有料コンテンツあり)

そして、3つめは

有料会員制の普及です。

同社は22年に会員制プログラムを始めました。

無料コースと有料コースがあり、7カ月で無料会員はすでに9百万人に達したそうです。

月間または年間有料会員になると

商品の割引が得られたり配信コンテンツが無料になったり

ルルレモンが提携する提携エクササイズ教室が割引で
受講できるというわけです。

・オンラインと店舗を行き来するオムニチャネル

・店舗での体験提供

・リセールによる循環プログラム

・コンテンツ配信、有料会員制・・・

顧客とつながり続ける取り組みを地に足をつけて次々に取り組んでいるのがわかります。

同社はこれらの取り組みにより

2022年1月期の売上約8000億円を5年間で倍の1兆6000億円にする

POWER OF 3 X 2というプロジェクトを推進中。

その原動力は

・オンライン売上を倍増させ
・後発のメンズの売上を2倍に増やし
・北米外の海外売上を4倍にする

ことによって実現するとのことです。

海外展開について、すでに、100店舗を超えた中国に対して

日本にはまだ、六本木、原宿、表参道、銀座、新宿(丸井)、梅田、そして御殿場のアウトレットを含む
7店舗しかありません。

店舗が少ないと認知度が低く、日本市場には今のところインパクトも少ないかも知れませんが

ルルレモンは今時の、ファッション関連のグローバルマーケティングの最前線にいる学ぶべきブランドのひとつと感じます。

ルルレモンは既存スポーツブランドとは違うアパレルチェーンとも違う

ゲームチェンジャーの1社です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 第5章では、年会費に支えられた小売業 コストコのビジネスモデルを取り上げました。

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July 10, 2023

中国産地で思い出される日銭商売である小売業の原点

20230523_1058195月にSHEIN(シーイン)の生産背景である中国広州のアパレル産地視察で考えさせられたことが
いまだに頭から離れないでおります。

シーズン単位で事前に見込み生産をすることが
あたりまえになってしまっているアパレル業界において

広州で盛んに行われている
5日間で100枚をつくって納める小ロット生産は

生産者は素材の用意さえがあれば、すぐに作ることができ

商品を納品されたEコマースの販売者はすぐに売り始めることができます。

従って、Eコマース事業者は
消費者からの現金回収も速くできるわけで

速く、回収できた現金を
サプライチェーンに回すことができれば

関係各社は資金繰りの心配も少なくなり

従業員にも、仕入先にも
早く支払うことができるようになるわけです。

SHEIN(シーイン)ら、IT業界から来た産直越境EC企業らは

最速で週ごとに納品商品の代金をサプライヤーに支払うことを知りました。

そんな誰もがわかる

サプライチェーンが潤う単純なロジックに対して

一方、近年、主流になっている大量生産はというと・・・

確かにロットを大きくすることで、原価は安くなるかも知れませんが・・・

素材の用意から

  ↓

製品をつくり始め

  ↓

完成品を売り始めて

  ↓

代金が回収できるまで

販売期間と比べて、
果てしない時間がかかるわけで

生産中はサプライチェーン各所に

原材料や仕掛在庫を含む
在庫=キャッシュを寝かせてしまうことになる

そんなことが 実際、生産現場各所で起こっているわけです。

そうすると、現金化に時間がかかるため

仕入先には支払い期日を先延ばししてみたり

資金が足りなくなる場合は銀行借り入れによって資金を繋いだりしているのが現実。

関係者みんなが頑張っても・・・

販売現場では過剰に抱えた在庫を値下げ販売する悪循環。

これって、いったい、何のために、
誰のために仕事をしてるんでしょうね。

以前、バングラデシュで生産する
商社の方に伺った話を思い出します。

バングラデシュの大手の工場主は売上高をたくさん得たいために

何十万枚、時には何百万枚の受注を要望すると言います。

ところが、そんな大ロットだと

素材の調達にも時間がかかり、納品するまで時間がかかるため

納品が完了するまで

従業員に給料が払えない
原料代金も払えない

という状況に陥りがちとのことでした。

コストは安くなるけど

サプライチェーン各所にキャッシュを寝かし

販売にあたっては値下げ在庫処分のリスクをはらむ大量生産

一方、

コストは多少高く、当初値入は少なくても

関係者がキャッシュで潤い値下げリスクも小さい、小ロット多頻度生産

はたして、一体どちらがいいのでしょうかね?

安く仕入れても
多くの売れ残り在庫を抱えた
現場をたくさん見て来ました。

一方、あぁ、もう少しつくればよかったね

と言いながら

次のコレクションを
前倒し販売していた時もありました。

双方を思い出せば

どちらが上手く行っていたかは明らかです。

これって
実際、冷静に原価計算をしてみれば
原価が安いことよりも
値下げが少ない方が儲かることがわかるはずなのに、

組織が大きくなればなるほど
仕入れ担当者のひとりの判断で出来ることではなく

会社のルールを変える必要があることなので
トップやリーダーの覚悟がいることだとしみじみ感じます。

かつて、アパレル専門店の経営者さんたちは
起業して間もないころ

1カ月分の在庫を仕入れて店頭に並べ、

売った代金で来月売る商品を仕入れに行く
そんなことを繰り返していたころがあったと思います。

そのころは、
在庫日数、30日!在庫回転率は10回転以上!

でまわっていたのではなかったでしょうか?

そんな経営者さんも、最近は見込み仕入や見込み生産が増え
在庫回転率が落ち、支払いをいかに先延ばしするかを考えている
なんて話もよく耳にします。

まさか中国の広州で、忘れかけていた

小売業の日銭稼ぎ商売の原点を思い出される
ことになるとは思いませんでした。

今一度、キャッシュフローを重視した小売ビジネスの原点を
思い直す時、と感じる今日この頃です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 第2章では、産地から、店舗を持たずに、世界の消費者に直接売り込む

SHEIN(シーイン)のビジネスモデルの優位性について取り上げました。

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May 29, 2023

新刊「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)が発売されました。

Finalおかげさまで、来週5月25日(木)に齊藤孝浩の4冊目となる
新刊「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP日本経済新聞出版社)が発売になりました。

4年間、WWDJAPANに連載を続けてきた「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)で紹介した企業を中心に、

主に決算書情報などから読み取れる、コロナ禍を経て勝ち続けている企業のビジネスモデルが、従来の業界の常識と何が違うのか、その優位性、将来性をわかりやすく図解してみました。

勝ち続ける企業は・・・業界の常識とは真逆のことをやっていた。

というのがこれらのビジネスモデルとゲームチェンジャーたちのビジネスモデルを分析しての気づきです。

そして、損益計算書(PL)の強さが お金の使い方にあるということ。

ZARA(ザラ)から始まり、SHEIN(シーイン)、ZOZO、ワークマン、コストコ、LVMH(モエヘネシールイヴィトン)、丸井グループ、メルカリ、DOORDASH(ドアダッシュ)などなど

が登場しますが、彼らは

・在庫の運用のしかたが上手く

・商品を仕入て売る以外にも収益源を持ち

・自前でしくみを構築したからこそ、そのインフラが他社にも売れるプラットフォーマー的な役割を果たし

・小売流通業がエンドユーザーから代金(日銭)を預かることの大切さを知っています。

上記の企業の他にも、ユニクロ、ニトリ、H&M、クラシコム、モンベル、ヤマト運輸などのビジネスモデルも登場します。

一応、専門書ではありますが・・・

グラフやイラストを多様し、誰もが知っている身近な企業の財務体質とビジネスモデルを、

「ですます調」で綴ることで、

多くの方に読みやすい体裁にしております。

一番読んで頂きたいのは、これからビジネスモデルを見直したい経営者さん、

新しいビジネスモデルを一から始めるスタートアップ企業や起業家の卵の方々、

そして、流通企業の幹部になって、PL管理に責任を持っている方々にも、

競合他社ベンチマークのアプローチも学んでいただけると思いますので、

是非読んで頂きたい内容です。

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January 16, 2023

フリマアプリ、メルカリが築く新しい金融経済圏

Wwd-vol45WWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

1月16日発売の連載45話目はフリマアプリ、メルカリの決算書を取り上げました。

アプリの月間利用者が日本で2,000万人を超え、日本とアメリカを合わせれば年間流通総額(GMV)は1兆円を上回りました。10周年となる今年の年末には日本だけでも1兆円に届きそうな勢い。

流通総額もさることながら、メルペイには売上金引き出し前の「預り金」も相当溜まり、売り手はメルペイとして使ったり、これからクレカ(メルカード)を使うようになれば、これはもうれっきとした金融企業です。

タンス在庫が第二の持ち主の手に渡り、売り手が手にした売上金が電子マネー、メルペイで新しい消費に変わる新しい循環型金融経済圏の誕生です。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトにも掲載されています。
ファッション業界のミカタ Vol45~フリマアプリ、メルカリが築く新しい金融経済圏

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考】ショッピングのデジタルシフトの真っただ中、その先にあるのはどんな未来なのか?10年後のファッション流通の未来を考察しました。

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