April 12, 2021

しまむら2021年2月期決算、ローカル地域密着対応とインフラを活かしたデジタルシフトが今後の成長のカギ

Photo_20210413183801前回の世界アパレル専門店売上ランキングトップ10の10社の中で、唯一増収増益で、7位に食い込んだ、しまむらの2021年2月期の決算関係書類に目を通しました。

連結で
売上高 5,436億円(前比4%増)
営業利益 380億円(同65%増)
営業利益率 6.7%

国内事業(個別)で
売上高 5,366億円(同4%増)
営業利益 382億円(同62.7%増)
営業利益率 7.1%

連結と国内事業の差が主に台湾事業で、中国からは昨年10月末に全店撤退しています。

同社もコロナ禍で第1四半期は散々でしたが・・・

第2四半期の6月以降は郊外立地中心の低価格チェーンということもあり、大きく回復し、コロナに見舞われた1年だったにもかかわらず、3年連続の減収減益に終止符を打った決算でした。

販売効率を下げながら、出店を続けていた、過去3年の失策と比べると、
店舗のスクラップ&ビルドを進め、もともと得意だった小ロット短納期生産による商品回転により、値下げをコントロールできたことが、増益要因としています。

やっぱり、多品種、小ロット、短サイクルの方が、「しまむら」らしいですよね。

しかし、過去5年間の業績を並べて、4年前の2017年2月期の売上高および営業利益のピーク時と比べると・・・

売上高は4年前(ピーク)対比95.9%、営業利益 同77.6%の水準なので、まだまだ復活というより、回復途上といったところでしょうか。

しかも、店舗および売場面積が2017年2月期対比、4年間で5%増えているにもかかわらず・・・1店舗あたり売上高、あるいは月坪売上高と言った販売効率が14%下がっているのを見ると、

メインの「ファッションセンターしまむら」は、そろそろ出店余地も限られていると思うので、成熟期にふさわしい、店舗数よりも、1店舗あたりの販売効率を回復させる経営が求められますね。

但し、ファッションセンターしまむらを筆頭に、各業態、店舗あたりの売場面積の標準化が徹底されているので、増床戦略というよりは、1店舗あたりの売場面積を広げ過ぎないように

〇販売効率が上がる好立地への移転

〇EC店舗受取りの拡大による来店促進

あたりが改善のカギになりそうです。

 

今回決算書を見ていて、一番注目したのは、まず、

1)「ファッションセンターしまむら」業態の中でどんな部門の売上が伸びているか?

また、

2)その他の業態の伸びしろを知ることでした。

同社が決算ごとにリリースしている「決算概要」は、同社のデータブックにあたりますが・・・

その中の部門別売上高・粗利益率のデータを過去5年時系列で並べて、各部門の推移を見ながら、なるほどと思ったのは、

「しまむら」業態の中で、婦人衣料や紳士衣料といったアパレル部門はここ数年売り上げの減少が続いており、伸びているのは、ベビー子供服やインテリアだということ。(直近1年もそうです)

つまり、しまむらは低価格だから、婦人・紳士アパレルがよく売れているか、と言えば、決してそうではなく、それらの減少をカバーしながら、売り上げを伸ばしているのは、大人衣料以外の部門だということです。

次に業態別でいうと、伸びしろを感じるのは、ファッションセンターしまむらやアベイルではなく、第3の業態、バースデイ(雑貨マタニティ、キッズ、ベビー衣料)業態です。

新規出店もありますが、それ以上に総売上、販売効率が伸びているのがわかります。
(4年前240店舗→21年2月末298店舗、4年前比24%増、に対し、売上高は33%増)

つまり、同社には、地域に密着した、更に、「家(おうち)」寄りの、実用的な商品に強みがある、とあらためて感じたものでした。

中国全面撤退に見られるように、海外進出は期待できない、同社ですが、

地に足をつけ、ローカル対応に更に磨きをかけながら、

また、急成長は望めませんが、

国内No1と言ってもよい、店舗網、物流網、独自開発のITのインフラを活かしたチェーンストアとしての安定感と利益体質づくりに磨きをかけて行くことを、

今後とも注目して行きたいと思います。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫最適化を考えるビジネス読本、しまむらの強みも何話かで解説しています。

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

こちらは電子書籍 Kindle版 です。紙の本の在庫が少なくなりました。ご希望の方は弊社までご連絡頂ければご対応いたします。

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February 08, 2021

【3.25開催 オンラインセミナー】3つの視点を共有すれば、過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!~『ファッションストアの在庫コントロールのための組織と業務』

B2【このセミナーは終了しました。】

来る3月25日(木)、アパレル・靴・服飾雑貨のファッションストアやEC事業を運営されている経営者様や事業責任者様向けのオンラインセミナーを開催いたします。

外出自粛による、来店客の減少によって、過剰在庫を抱えたり・・・その後の仕入制限によって、今までよりも少ない在庫で運営することになったファッション専門店

お客様のオンラインへの購買シフトの波に乗り、規模の拡大の一方で、過剰在庫を抱え始めたファッションEC事業

今は、販路拡大や商品調達だけでなく、販売管理や売り切り体制を見直す、大きな転換期に他なりません。

今回のセミナーでは、

転換期である現在だけの一過性の話ではなく、今後の成長・拡大あるいは安定成長局面においても大切な

仕入れた在庫を最大限の粗利とキャッシュに換える

在庫コントロールのための組織づくりと業務構築の着眼点、そして、実践に向けてのポイントをお伝えします。

お客様の新しい生活様式、新しい購買行動が始まる転換期に今回のセミナーが経営者様、経営幹部様にとって

これまでの業務を俯瞰(ふかん)して、在庫最適化の視点で見直しながら、

社内一丸となって、顧客満足と企業利益最大化に邁進して行く・・・そんな、きっかけになれば幸いです。

今回のセミナーコンテンツは、事業規模でいえば、事業あたり、あるいはワンブランドで年商が10億円を超え、30億円に近づく局面において、

『在庫管理の壁』に直面し、組織や業務を見直したいと考えていらっしゃるチェーンストア型専門店や成長中EC事業の経営者様・経営幹部様にタイムリーなコンテンツです。

既にそれ以上の規模になった企業、事業の方にも現状の業務を振り返って点検したり、やりかたを見直す着眼点を得ていただけます。

-セミナー詳細-

【タイトル】
3つの視点を共有すれば、過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる!「ファッションストアの在庫コントロールのための組織と業務」

【開催日時】 
2021年03月25日(木)15:00~18:00 (14:45受付開始)

【場  所】 
オンライン(ZOOM)での開催となります

【講  師】 
齊藤孝浩(タカ サイトウ)ファッション専門店の在庫最適化コンサルタント 
ディマンドワークス代表  このブログの筆者 プロフィール

【主な内容】
 

〇 規模の拡大と共に過剰在庫を抱えてしまう理由
〇 ファッション小売業の在庫最適化とは?
〇 シーズン商品の商品管理・販売管理の原則
〇 販売部門が同じ目標に向かって自走する情報共有
〇 シーズン商品を売り切るための鉄則 など

【参 加 費】 
お一人 22,000円(消費税込)事前 銀行振り込み あるいは クレジット支払い

【参加特典】
1)実務にも活用できる図表が豊富なセミナースライド
2)在庫コントロールのための組織と業務の進捗度チェックリスト50
3)無料オンライン個別相談:セミナーで気になった課題について、後日、自社に照らし合わせた時の問題点を明らかにするための「オンライン個別相談」(1社様、1回、1時間程度)通常、講師が有料で行うサービスを無料でお受け頂けます。
  
【延 長 戦】 
セミナー終了後、30分の延長戦(質疑応答、・意見交換会)あり

【定  員】 
先着15名様(定員になり次第締め切りとさせていただきます)

【参加対象の方】
組織づくりと業務の見直しをご検討中のファッション専門店チェーン、EC事業者の経営者様、経営幹部様、事業部長様。

当セミナーはウェビナー形式ではなく、講義とワークと意見交換ができる環境を設けて双方向型で進めます。

■このセミナーは終了しました。次回セミナーは5月20日開催予定です。
ご案内メールをご希望の方はこちらからご登録ください。
→ https://17auto.biz/dwks/registp.php?pid=15

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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December 14, 2020

メルカリの国内流通総額中のファッション関連カテゴリーはユニクロ、しまむらに続く、第3勢力規模に

Reloveメルカリの2021年6月期 第1四半期(7-9月)の決算発表資料に目を通しました。

米国事業やメルペイへの投資先行で赤字がしばらく続いていましたが、
前四半期と今四半期は2四半期連続での黒字になりましたね。

同社には、引き続きグローバルでの成長にも期待をしていますが、
やはり、顧客行動の変化に対応して、国内ファッション市場に影響を与えるであろう
メルカリ国内事業の数字からも目が離せません。

同国内事業について、企業としての売上高ではなく、
メルカリを使って顧客が売買した流通総額にあたるGMVベースでは
当第1四半期(7-9月)は1706億円(前年同期比34.6%増)
月間平均利用者数(MAU)は1750万人だったそうです。

この四半期の数字を移動平均方式で、年回り(前期2Qから当期1Q)にしてみると
過去1年で流通総額は6,695億円となります。

このうち、ファッション流通市場への影響という点では・・・

開示されているカテゴリー構成比
レディース19%、メンズ14%、ベビーキッズ3%までを含めると約36%となり、

カテゴリーごとに単価は違うと思いますが、
年間総額にこの構成比を掛け合わせて単純計算すると
年間流通総額ベースで2410億円相当になります。

ファーストリテイリングのジーユーが20年8月期で年商2460億円とのことでしたので、
メルカリは、現在、それと同規模、

国内アパレル市場においてはユニクロ、しまむらに次ぎ、ジーユーと並ぶ第3勢力ということになりますね。

参考までに同事業の四半期ごとの流通総額の構成比を5年平均でとってみると、
以下のような感じになりました。

1Q  2Q  3Q  4Q
7-9 10-12 1-3 4-6
20% 25% 27% 28%

やはり、冬から春に変わる時期、そして、3-4月の新生活が始まるところが、
持ち物を手放したり、購入したり、という機会が増え・・・
それに連動して流通総額も増えるのだな、と感じます。

この構成比を使って、今年度の流通総額予測をしてた上で、
上記のメルカリのファッション関連の構成比から流通総額を推計すると

今期1年間の累計は3000億円規模になりそうです。

コロナ禍の巣ごもり中に持ちものを見つめ直し、手放す機会も増えたことでしょう。
また、捨てるより、循環させることを考えねば、と多くの人々が考えている昨今。

メルカリの循環型社会に向けてのインフラとしての役割はますます高まりそうです。

先日、出品や梱包が面倒で始められないユーザー向けに、
オープンロジと組んだ「あとよろメルカリ便」や、カジタクやブックオフグループと組んだ「捨てない大掃除プラン」など
次々に未経験ユーザーのメルカリ出品デビューを手助けするサービス開始のリリースをされましたね。

どうしたら、ユーザーが不用品を手放しやすくなるのか?
未経験者のお困りごとを掘り下げて、いろいろなパートナー企業と組むことで
そんなアイデアは次々に広がって行きそうです。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 ファストファッションが手ごろな価格の服を提供することによって、顧客の購買機会を高める一方で、ユーザーのクローゼットをあふれさせてしまった今日。毎シーズン、新しいもの作って、売るだけでなく、顧客のクローゼットのワードローブの循環を一緒に考えることこそが、業界企業のこれからのミッションのひとつになるでしょう。本書の後半では、これから10年の服を通じた顧客とのかかわり方を提言しています。

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November 16, 2020

着回しの利く、究極の定番を磨け

Hermes-margielaa

先週、11月11日の日経MJ の1面、「仕事着はもう買わない」という見出しに目が止まりました。

20ー30代の80人を対象にコロナショック前後で働く女性の服の消費がどう変わったかを調査した特集記事でした。

アパレル市場の中で、働く女性の服の市場は最も大きな市場のひとつ

購入単価と購買頻度がその他の客層よりも圧倒的に高めなマーケットであることは言うまでもありません。

記事の内容は、80人という限られた対象者の調査かも知れませんが、コロナビフォア・アフターの購買行動の変化の傾向はある程度浮き彫りになっているのではないかと思いました。

・商談がなければ上着はジャケットからカーディガンへ
・通勤が減れば、オフィス服の必要枚数は減る
・駅ビル中心にお買い物していた人がネットに移行して、その安さにびっくり
・巣籠もり間の断捨離でZARAのようなファストファッション系の着なくなった服を捨てて、ユニクロを買うようになった

・定番を買うようになった

一方で、

・1着あたりの価格はむしろ高くなった、という傾向もあるようです。

そして、興味深いのは、

オフィス着への支出を減らした人も、
頻度は減っても1着あたりの支出を増やした人も

1万円弱ぐらいの価格は避けるようになったのが共通点とのこと。

1万円と言えば、駅ビルのセレクトショップ系のプライスポイント。

オフィスでそつなく、小奇麗に着ることができる服の価格帯の商品群が弱くなっているのは、市況にも通じるところがあります。

そこから

ユニクロのような割安な定番や
長く着ることができる上質の逸品

といった2つの需要へ向かっている、と読み取れます。

さて、そんな傾向があぶり出されて
提供する側のファッション企業さんは、今後、どんな対応をされますか?

まず、過去に固執するより
顧客の今、それから今後の体験や生活シーンを想像する想像力が大切でしょう。

定番ベーシック志向となれば、
もちろん、ユニクロが益々強くなることが想像できますが・・・

ユニクロが全体の主役になることはない、でしょう。

ユニクロ自身もそうなろうとはしていないでしょう。
むしろ、以前から、存在感のある、「究極の脇役」になることを目指している、と思います。

(ひとりごと:今回11年ぶりに発売した+Jは、その中でも主役級かも知れませんが・・・)
 

そんな中で、これからのファッションブランド、ストアブランドの役割とは?

例えば、長く、愛着してもらえる、ブランドらしい、究極の着まわし服の開発に力を入れてみたらどうか?

おそらく、そのアイテム候補は、既にブランドの中で強みとしているアイテム群の中にあるのではないか?と思います。

そんな核となるアイテムにフォーカスして、毎年クオリティを磨きながら、・・・

それらを活かしながら、そのシーズンらしい、新しい買い足し、買い替えを提案を行う。

それが、今回の記事を読んでの筆者の感想です。

いつもお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題ですね。実はZARAも以前からベーシックが稼ぎ頭。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本


 

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October 05, 2020

顧客の新しい行動様式と用途にあわせて商品提案する

9月のファッション専門店の月次売上速報が一通り発表されました。20201005_143941

これらの結果を見て、やはり、需要は

気温x顧客用途(必要性)x価格x店頭在庫鮮度 

の掛け合わせなのだなと感じました。

気温は20日前までは確かに残暑、しかし、4連休以降は9月にしては久しぶりの秋の気温だったと思います。
過去3年が、10月10日を過ぎなければ秋らしい気温にならなかったのに対し、
今年の9月の後半は秋ものにとって悪くはない、コロナウィルスに対する自粛ムードがなければ
アパレルにとっては、悪くない商売条件だったと思います。

次に、近郊、郊外の需要はかなり回復したように思いますが、都心部の回復が遅いですね。

これは、近郊、郊外で行動範囲が広くない生活をしている方々にとっては、感染対策をしながら普通の生活に戻り・・・

一方、都心に通う方々にとっては、着飾る必要性のある環境になかなか戻らないということだと思います。

そんな新しい生活様式に必要なものは売れ、必要でないものは需要が弱いということです。

百貨店やセレクトショップなど前年消費税増税前に、駆け込み需要を狙って、
冬のアウターを前倒し販売をした企業の前年のハードルの高さの指摘もありますが、

それよりは前年と比べて生活様式が変化したことによる、変化対応の遅れ、単価の高いアウターへの需要減が大きいのではないでしょうか。

そして、気温的にはチャンスはあったと思いますが、仕入抑制や持ち越し在庫消化を図ったために、店頭の鮮度を落さざるをえなかったところは売り逃しをし・・・

商売チャンスを活かすべく、しっかり新商品を揃えていたところが業績を伸ばしたという印象です。

これから冬に向けても同じことが続きそうな気がします。

コロナ自粛をものともせず、新しいベーシック商品の在庫を積み込むユニクロ

45日サイクルで新しい商品を次々に店頭に並べるという、もともとの強みに回帰して業績回復中のしまむら

この日本のアパレル専門店ツートップの秋冬業績には期待ができます。

郊外だから、都心だから、という立地だけではなく、また、EC売上構成比の高さだけではなく、

小売の商売というものは

気温x顧客の用途(必要性)x価格x店頭在庫鮮度

のかけあわせであるとあらためて感じます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】11月19日(木)開催オンラインセミナー「ファッション専門店の在庫最適化の実践2020年版」

在庫管理の手法を見直し、再構築をお考えの企業の皆様に・・・ご案内はこちらから https://dwks.jp/2020/09/25/seminar-20201119/


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【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫最適化を考えるビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

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September 21, 2020

ZOZOの決算書から学ぶECビジネスの損益

20200921_163102

WWDジャパンさん向けの連載記事のためにZOZOTOWNを運営するZOZO社の決算書20年3月期および21年第1四半期に目を通しました。

Paypayモール出店によって40代、50代の新しい客層が順調に獲得され、
ZOZOTOWNもコロナ禍で商品取扱高が増え、同社のECの売上は好調、社としては増収増益のまずまずの決算だったようです。

気になったことを3つほど挙げると

ひとつは単価の下落です。
 
20年3月期通期の
平均単価は 3,946円 (前年度は4,201円)
出荷単価は 8,292円 セット率 2.10 (前年度は8,774円;同 2.09)
と下落しています。

コロナ禍の出店ブランドの在庫処分もあり、21年3月期第1四半期に至っては
3,443円まで下落(前年同期は3,903円)しています。

ファッション性が売りのZOZOTOWNですら、
平均単価がファッション市場マスマーケットの価格帯である3900円にまで低下していることに驚きました。

次に、出荷1件あたりの収益性です。

ZOZOの損益計算書や開示データを時系列で見ていると、
ECビジネスの販売管理費の構造やマクロトレンドがよくわかります。

ECビジネスの販売管理費の上位を占める荷造運賃、物流関連費、広告宣伝費について、

グロス金額(費用総額)ではなく、出荷1件あたりで割り出してみると

・荷造運賃は高止まり、
・物流関連費は人件費の見直しで増加傾向
・以前より広告宣伝費やポイントの出費を抑えて・・・

「利益率」こそ底を打って、回復中ではありますが、

そもそも、出荷単価が下落しているため、
出荷1件あたりの利益額(単価)は下落傾向というのが実態です。

要は、単価は下がるので、1件あたりの粗利額(同社にとっては販売受託手数料)は下がる、

一方、1件あたりにかかる荷造運賃やその他物流関連費(人件費がメイン)は高止まり、

歩留まり利益は店舗運営型小売業よりも多額にかかる広告宣伝費を調整弁として、どれだけ使うか次第という構造に見えます。

「ECは家賃がかからないので、店舗販売の小売業より儲かる」と豪語される方は少なくありませんが
ECは店舗販売と根本的に経費構造が違う、と言うのが正しい言い方ですよね。

むしろ、販売単価、粗利率によって、物流経費や広告宣伝費の使い方では薄利になってしまう可能性もはらんでいると見るべきでしょう。

みっつめは、今後の収益バランスのとり方です。

通販受託事業のこの傾向に対して、
ZOZO社はトップラインである売上高に関しては全体の商品取扱高を増やしながら、受託手数料収入額を増やす。
その一方で、通販事業の利益率の低下傾向を、モノを動かさない広告事業や新しいサービス事業を増やして利益貢献するように、目下、強化中というわけです。

アマゾンの通販事業は薄利で、AWSで利益を稼ぐという構造に近づいていきますね。
これはプラットフォーマーの必然なのかも知れません。

ZOZO社自体はそれでいいかも知れませんが・・・出店ブランド(事業者)はその傾向を理解してECビジネスに取り組まなければなりません。

ファッションECマーケットは、
単価は下落傾向、競争が激しくなると、以前よりも広告宣伝費が余計にかかる、
販売管理費の主要費目である送料や物流関連費用は下がらない。

この構造やビジネストレンドを理解した上で、
販売単価、粗利の確保、送料無料のハードルをどこに設けるか、値下げやクーポンやポイント付与などの販促施策の加減も考えるべきでしょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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【オススメ本】顧客の新しい購買行動、オンライン・オフラインが融合する時代の顧客心理と在庫コントロールがテーマです。

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August 31, 2020

「アフターデジタル2 UXと自由」を読んで

藤井保文さんが書かれた「アフターデジタル2 UXと自由」を読みました。20200831_145410

昨年出版され、大ベストセラーとなった前著の「アフターデジタル オフラインのない時代に生き残る」に刺激を受け・・・

当時、頻繁に企業研修講師の仕事で訪れていた中国の杭州、広州では、同著に登場するアリババのスーパーマーケットHema FreshやLuckin Coffeeを中国人パートナーの手を借りて実体験して・・・

その背景にあることも含めて理解し、目から鱗が落ち、これから世界で進んで行くであろう小売業のDX(デジタルトランスフォーメーション)による明るい未来に思いをはせたものでした。

今回の続編は、前著に感銘を受けて、著者が相談を受けたり、ツアーをお手伝いされた多くの日本企業とのやり取りも踏まえて、日本企業の組織や仕事の進め方の実情にも触れながら、アフターデジタル時代の企業戦略としてのOMO(Online merges with Offline)の考え方について、誤解を解くように、新たな事例紹介とともに、再定義しているところに意味があります。

一番のポイントは、DX(デジタルトランスフォーメーション)という言葉だけが独り歩きしている昨今ですが、顧客目線で顧客行動にポジティブな影響を与えるものでなければ、
たとえ、オンラインやAIを使ったところで、それは、企業都合の(あるいは、システムベンダー都合の)単なる業務効率のためのシステム化であって、同著が主張するところのOMOの本質でもなければ、アフターデジタル時代に勝ち残れる顧客体験価値(UX)創造型の取り組みでもない、という点でしょう。

最新のデジタル投資ばかりに目を向けている方々は、是非お読み頂きたいと思います。

スタートラインに立つためには、

まずは顧客行動(カスタマージャーニー)が理解、言語化出来て、

顧客にとっての「成功」は何か?

その実現のために、その過程に立ちはだかる顧客の「お困りごと(ペインポイント)」が特定できること。

そして、それに対して、情熱と執念をもって、オンライン技術を駆使しながら、とことん解決のお手伝いをし、その結果、ご利益として、顧客との長いお付き合いができる、という発想が大事なわけです。

実は、同著の主張と同じことを、拙著「アパレル・サバイバル」執筆の際の取材時の2018年に、アメリカ西海岸で体験したamazon go(コンビニ)、amazon books(本屋)、Nike(シューズショップ)、日本で体験したZARA六本木ポップアップストア(アパレル専門店)でも感じたものでした。

彼らがそれぞれの店舗において、DXで解決したのは、まさしくそれぞれの専門店ならではの購買行動(UX)の中のお困りごとに他ならなかったからです。

それらの体験をした時、顧客としては、何か呪縛から解き放たれて、スッとしたような感じ、そして、そのDXを実現した経営者、技術者に対するリスペクトを覚えたものでした。

また、DX担当者にとっては単にUXを研究するだけでなく、実際に体験してみて、その感覚(原体験)を体に覚えさせることも、執念を持って取り組む上では大事なことだと思います。

話を戻しますが・・・

今回の続編の中で、最も参考になったのは、P61から始まる「売らないメーカーの脅威」のところで、メーカー、サプライヤーではなく、「サービサー」として紹介されていた、中国企業群の事例です。

電気自動車メーカーのNIOは、車を売ることが目的ではなく、車を売ったところからが、顧客との付き合いの始まり。

年間23万円もするクルマのオーナーに対する、「会員サービス」がキモです。

維持費やメンテナンスサービスどころか、顧客のカスタマージャーニー上にある、クルマにまつわる痒い所に手が届くサービスの数々が憎いです。そのため、NIOのオーナーではない、別のメーカーのクルマのユーザーもそのサービスを受けるために会員になるとか。

それに続く、不動産仲介業のズールーの事例も、住まいの賃貸仲介したら終わりのスポットビジネスではなく、家探しを手伝いにとどまらず、そのコミュニティに住む、生活する、時には、旅先のシーンにまで関与し、顧客と一生つきあう覚悟すら感じます。

ファッション業界の方々は、是非、そんな事例を知って、日本のファッション販売に置き換えたら、顧客の成功のために何ができるか?を考えてみて頂きたいものです。

つくって、売ることに徹していたファッション業界も、顧客がコーディネートして着回す、メンテナンスする、保管する、手放す・・・・

などなど、幅広くカスタマージャーニー中の「お困りごと」に着目すれば、まだまだ顧客とつながってゆけるチャンスはあるし、広がると思っています。

このあたりは、ちょうど「アパレル・サバイバル」の中でも P205 CHAPTER5「テクノロジーの進化を享受するのは誰か?」という章以降で詳しく述べていますので、参考までに併せてお読みいただければと思います。

コロナショックを受けて、一気に「アフターデジタル」の時代に放り込まれた私たち。
この著書の顧客目線のDXの心構えを理解せずに生き残ることはできないでしょう。

 

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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【オススメ本】業界は溢れ始めた顧客のクローゼットのワードローブに寄り添う取り組みを、そんな姿勢から未来に向けて新しい信頼関係が生まれる時代であること提言しています。


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August 24, 2020

オンライン接客の可能性

コロナショックの外出自粛、休業の間にMinistry-of-supply 多くのストアやブランドがEC売上を伸ばし、
いわゆる「オンライン接客」が話題となり、
力を入れるところが増えました。

筆者の解釈では、「オンライン接客」の定義は広く、

ライブ動画で商品紹介を配信してチャット質問に答えたり、
ZOOMなどで1対1(複数もあり)のビデオ接客をしたりする
双方向性のある接客だけでなく、

そもそも、ブランドや商品に興味を持った顧客が
ネット検索してホームページやオンラインショップを閲覧するところからオンライン接客というものは始まっていますし、

ブログ更新やSNS発信
メルマガやプッシュ通知
メール、チャットでの問い合わせ

などの従来のマーケティングツールはもちろん、

店舗に来店した後、サイトで購入した後のフォローアップまで

スマホを駆使して情報を取得する「顧客の新しい購買行動」に、オンラインを活用して対応することはすべて「オンライン接客」の一部である
と捉えています。

この数か月の間で、オンライン接客について非常に可能性を感じたことが2つありました。

ひとつは、ZOOMなどのツールを使ったビデオ接客時、
顧客は自宅、ショップ側は店舗またはショールームにいるわけですが、

接客スタッフが顧客との対話の中で要望を引き出しながら、商品紹介をするだけでなく、
顧客側は自分の手持ち服を見せながら、これに合う服はありますか?というような聞き方ができる環境にいるという利点です。

つまり、顧客はわざわざ店舗にも行かなくてもよい、
ショップ側は店舗に来店できない顧客をお相手にできるという
時空的というか、物理的なメリットだけでなく、

どこまで開示するかは顧客次第ですが、顧客側も自宅にいるメリットとして、
クローゼットの中の服との相性について相談ができるわけです。

これは明らかに、店舗における接客にはない、
特に、顧客側のアドバンテージでしょう。

拙著「アパレルサバイバル」でも力説しましたが、

店舗やオンラインで品定めをする顧客の最大関心事は、
今、手に取っている、見ている服が、自分の手持ち服とコーディネートできるか?その上で着回しがどれだけ利くか?
ということでしょう。

店舗では、今シーズンのブランド側の重点販売商品や今シーズンの売れ筋商品を力説してショップ側が売りたい単品を提案して来ますが、
そんな接客の中で、顧客の本当の不安は、手持ち服と合わず、コーディネートがしづらい、着る機会が少ないなどで、結局は着なくなって、無駄になることによる「失敗」です。

顧客は手持ち服を具体的に見せることができれば、伝えられない歯がゆさや、「失敗」の不安から解放されますし、

店舗スタッフも決して、押し売りしているわけではないと思うのですが、
顧客のクローゼットの中身が具体的にわからないが故にできなかった、顧客のワードローブを思いやる接客が実現するわけです。

そんなビデオ接客での気づきが、今後、顧客との信頼関係を深め、顧客の手持ち服と相性のよい服を提案することが当たりまえの世界が実現
することを期待しています。

ふたつめは、リモート接客への人財活用の利点です。

つまり、ショップ側の接客スタッフは、ツールによっては、
どこにいても、都合にあわせて、短時間でも接客対応可能になる、という可能性です。

例えば、顧客からの問い合わせやちょっとした接客に対し、
これまでは、本社や店舗にいるスタッフが対応するのが常識でしたが、
事情によって、家庭に入られた、あるいは引っ越しにより遠方にいる経験者の方が、可能な曜日、時間帯だけ、在宅のまま対応することも可能になるということです。

メール対応やチャット対応、はそうでしょう。

この業務は、誰でも出来る業務ではなく、そのショップ、ブランドを熟知した接客対応のプロだった方だからこそ、の話です。

そんな人財=宝のような方々が、いろいろな制約で働けなくなってしまうのを
長年、いろいろ目にして来て、本当に残念だと思っていました。

しかし、オンライン接客アリ、リモート接客アリの時代に、これまで活用しきれなかった人財を、あらためて活かせる環境が整って来た予感がします。

もちろん、コールセンターのように、どこかに集めなければ、というセキュリティの問題が課題になるようですが、
これからはそういった問題を技術的に解決し、新しい働き方、新しい顧客対応の未来が広がることを期待しています。

当然のことながら、これから、すべてがオンラインになるとは思っていません。

しかし、多くの選択肢が生まれ、明るい可能性が広がっているのは事実ではないでしょうか?

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 17, 2020

トレンドファッションに合わせるベーシック、ベーシックに取り入れるトレンドファッション

コロナウィルスによる外出自粛で顧客の購買行動が変わることに対応しなければならないと思っています。20817-helsinki-closet

近隣以外への外出を控え、在宅時間が増え、自分のクローゼットのワードローブの見直しや、断捨離も行われたことでしょう。

業界は一旦、そこを起点に考える必要があると思っています。

オンラインセミナーへの登壇の準備をしていて、
ユニクロとZARAの強みをあらためて整理する機会がありました。

一般に、ユニクロはベーシック、ZARAはトレンドファッションに強みがある、と語られますが、

両者を長年ウォッチしてきた筆者なりの解釈で書き換えると

ユニクロはトレンドファッションに合わやすいベーシックを、

ZARAは多くの顧客が持っていそうなベーシック服に今シーズン取り入れるべきトレンドファッションを、

それぞれわかりやすく提案している。その取り入れやすさ提案が多くの顧客に支持をされる理由なんじゃないかな、と思います。

つまり、両者とも切り口は真逆ですが、自分の持ちものに取り入れやすい、ということが共通点です。

書いていて、気がついたのですが、と同時に、ユニクロとZARAの両者の服も相性がいい、ということになりますね(笑)

これまで、業界企業の多くは

・業界のシーズントレンドと言われるものを自社なりに解釈して売り込む
・前年売れた実績のあるものを焼き直してつくる

を繰り返して来ました。

しかし、しばらくは、「業界トレンド押し」よりも、顧客の「新しい生活様式」のシーンを想定して、

・リモートワーク対応
・マスク着用を想定したファッション
・カジュアル、リラックス

などが売れ筋のキーワードになるかも知れません。

業界では、正直、これまで、「顧客のクローゼットの中にあるワードローブ」という視点は不在の商品企画が圧倒的に多かったのではなかったかと。

今後も、もちろん、持っていないものを買う、新しいものを買う、という需要はなくなりませんが、

これを機会に顧客が今、持っていそうなものとの相性のよい(=着回しが利く)(=長く付き合える)
取り入れたら今シーズンらしく着こなせる服の提案をしたいところです。

「タンス在庫に無いもの」が売れる、とは、長年の業界の経験則

そう言うのであれば・・・まずは顧客のタンス在庫に何があるかをラックにかけて可視化して、
そこから新しい提案を考えるという発想が、今、大切なのではないかと思えてなりません。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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August 10, 2020

過剰在庫を持ち越さないために

昨年の暖冬で秋冬在庫を残し、コロナウィルスによる外出自粛と数か月の休業によって春夏の過剰在庫を抱え、Dsc_6637 マスコミや投資家にも煽られ、業界ではようやく、本格的に在庫を減らそうというムードになって来たようです。

この在庫問題も、そもそも、もっと早く手をつけなければならなかったことに対して、
コロナショックによるキャッシュフローの悪化が企業改革のスピードアップを迫っているに過ぎないと思っています。

会社方針として、仕入を3割減らす、2割減らす、という話が聞こえてきますが、
アプロ―チや、オペレーションを根本的に見直さずに、
ただ、仕入担当者に金額ベースでの仕入や在庫を減らすことを命じるだけでは、

単に売上が下げるだけで 
最終消化率はあまり変わらない、また、一定量の在庫が残るという結果となりそうです。

そして、過去に、何度も号令をかけては、結局は売上を回復するために在庫を積み増すという、撚り戻しになる話が、また繰り返されるのではないか?と懸念しています。

筆者は、これまで、
シーズン在庫をどう利益を生むようにコントロールし、
シーズン末に向けては、組織全体でどう売り切るかをテーマにし、

商売を顧客目線に再定義して、しくみ化のお手伝いをし、
業務に定着するように、社内人財の育成も見守りながら、
多くのファッション専門店さんの在庫最適化に取り組んで来ました。

そんな在庫最適化の現場で常々感じている、
過剰な在庫を抱えない、そして、余計な在庫を翌年に持ち越さないためのカギがいくつかありますが、
今回はその中から3つほど在庫問題の視点転換につながるであろうアプローチをご紹介させていただきたいと思います。

1)売場スペースに合わせて、品番数を絞る

2)商品計画をわかりやすく売場に共有する

3)販売期限を明確にして全社で売り切る

1)ひとつめは、売場に目を向け、店頭に並ぶ、物理的に展開可能な品番数を知った上で、品番数設計をしましょう、という話です。

金額ベースで仕入を減らせと言うと、品番数を減らさずに、一律に発注量を減らしてしまったり、
また、正しかったかどうかわからない前年実績をもとにして品番数や発注量を何割か減らす、
というアプローチが採られることがあります。

そうすると、売れる商品はすぐに売り切れ、
売れ筋商品がなくなった途端、売場は魅力がなくなり次第、売りづらくなるという現象に陥るものです。

あるべき品番数の答えは、お客様が訪れる店頭の物理的陳列スペースにあるものです。

売場スペースを大幅に上回る品番数を投入しても、店頭に出し切れない商品はバックヤードに眠るだけ、
すべての商品に十分な販売機会が得られないと、その分、売れ残り在庫となるものです。

仕入担当者が、与えられた予算金額だけで仕事をし、
自分の担当売場スペースにどれだけの商品が並ぶのかを知らない、という恐るべき話は業界の中でも意外と少なくありません。

まずは、自分の担当売場に何品番並べるのか?
そして、それを何回転させることが自分たちのブランドらしさなのか?

という、問い、設計から始め、過剰品番数を削る、そして、その分、売れると見込む商品の仕入れ数を増やす(奥行をつける)というのが、あるべき仕入削減・在庫削減の第一歩でしょう。

これは無限大に商品が並べられると思われているECサイトについても同様と考えます。

お客様は、目的の最初のページからせいぜい2ページ、多くて3ページ目くらいまでしか見てくれませんので。

2)ふたつめは、仕入担当者は立てたシーズン商品計画を販促担当、店舗、EC担当が具体的な行動に移せるくらい、わかりやすく伝えましょうという話です。

仕入担当者がせっかく立てたシーズン商品・仕入計画の意図が、
実際に販売にあたる店舗スタッフやEC担当者に明確に伝わっていないため、
各店、各サイトでは、それぞれの思いで商品を並べて販売せざるを得ないと実態は少なくないようです。

そのため、商品計画者の思い通りに商品が売れず、結果として、想定以上の値下げや売れ残り在庫が発生するという話です。

仕入担当者が新商品の紹介や入荷情報の社内連絡を行うのは、当然のルーティン業務ですが、
商談など、仕入業務が忙しいあまり、社内に対しては、事務連絡に終始してしまうことが多いようです。

それぞれの商品を何点販売して、会社全体の売上・粗利の目標達成を目指しているのか?

という仕入担当者としての「意思」を、売場が行動に移せる、販売目標にできるくらいの具体的な数字や売場のイメージで伝えることができているケースは少ないようです。

実は、この仕入担当と販売担当のコミュニケーション(情報共有)ギャップこそが
商品計画の失敗、つまり、多くの売り逃しの一方で、過剰仕入、売れ残り在庫を生んでいる最大要因のひとつであると思っています。

シーズン単位でざっくり立てた商品計画は、例えば、月単位に細分化して、
毎月、見直して、微修正をかけた上で売場と事前情報共有しながら議論を繰り返したいものです。

さもなければ、店舗もEC担当も、販売行動の指針となる、「販売計画」を立てることができない、場当たり的な対応になってしまうことは言うまでもありません。

3)みっつめは、シーズン商品には、必ず、いつまでに売り切るという明確な目標(着地)設定をして販売にあたりましょうという話です。

シーズンで言えば、夏物と冬物の販売終了時期は、それぞれ8月末と2月末と比較的明確ですが・・・
それ以外のシーズンについては、いつまでに売り切るべきかが、具体的に定義されていないケースが少なくありません。

販売期限が決まっていない、あるいは、あいまいだと、必然的に消化管理は甘くなり、結果、在庫はたくさん残ります。

春物や秋物の消化率が夏物や冬物に比べて良くない要因のひとつは販売期間の短さだけではなく、販売期限定義のあいまいさ、とそれゆえの行動の希薄さゆえだと思っています。

〇 全ての商品の販売期限が決まっていること、その情報が販売現場まで伝わっていること、そして、

〇 販売期限までに最終消化率何%を目標に着地させるつもりなのかも伝わっていること、

それが、会社全体で売り切り体制がとれる最低条件です。

これは、いわゆる仕事の「目標管理」の話です。

つまり、いつまでに、どんな結果(数字)にするか、
期限とその時の状態を表す数字がなければ、仕事の目標管理とは言えません。

以上に加えて

・気温と需要にあわせて販売期間を再定義すること 
・セールを前提としない、価格設定(プライスポイント)の見直し

も必要なことは言うまでもありません。

このあたりは、2013年に上梓した
「人気店はバーゲンセールに頼らない」でも解説していますので、ご関心があればご一読頂ければと思います。

ファッション小売業に大きな転換期を迫るコロナショックの今回こそは、
より多くの企業さんが利益とキャッシュフローを重視する
在庫コントロール業務の再構築に取り組むことを切望しています。

関連エントリー一律値下げでは過剰在庫問題は解決しない
関連エントリー気温に合わせて品ぞろえ計画、在庫運用を考え直す

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】以下のセミナーは終了しました。次回は5月20日開催予定です。
筆者が講師を務める、経営者様、事業責任者様向けビジネスセミナー

3つの視点を共有すれば、過剰在庫が粗利とキャッシュに換わる
「ファッションストアの在庫コントロールのための組織と業務」
 2021.3.25 15:00~18:00 @オンライン開催 

これから事業で本格的に店舗およびECの在庫コントロールに取り組みたい、
再構築をしたい、組織と役割を見直したいという企業経営者様、事業責任者様向けの内容です。 

次回開催のご案内を参加をご希望の方は、こちらにご登録ください。 

https://17auto.biz/dwks/touroku/entryform11.htm

【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫最適化を考えるビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

こちらは電子書籍 Kindle版 です。紙の本の在庫が少なくなりました。ご希望の方は弊社までご連絡頂ければご対応いたします。

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