January 11, 2021

越境ECに特化して急成長を続ける中国新興アパレル企業、SHEIN(シーイン)の勢いと中国アパレルEC市場の事情

20210111_1533201月8日の日経新聞に中国から越境ECで世界に販売する新興ファストファッション企業SHEIN(シーイン)に関する記事が掲載されていました。

中国発の新興アパレル 最大手「ZARA」に挑む

同社はトップスで日本円で1000円前後から2000円くらいまでの低価格ファストファッションに特化し、中国企業ながら、中国市場ではなく、むしろ世界に越境ECで拡販する急拡大中の企業。

記事によれば、19年の年商は日本円換算で約2500億円、中国メディアによれば、20年には1兆円を超したのでは?とのことです。

この前年比4倍の1兆円!?はちょっと眉唾ですが・・・

昨年、世界でSHEINのショッピングアプリが1億1200万ダウンロードされたと聞くと相当の急成長は見込まれます。(右の画像はSHEINサイトから)

彼らの勢いは、すでに数年前から中国で耳にしていましたので、今回、日経の記者の方からこの記事のためにインタビューの依頼を頂いた時に、いよいよグローバルプレゼンスが高まって来たのだな、と思いました。

拙著「ユニクロ対ZARA」が2017年に中国語翻訳され、2017年~2019年に中国に研修講師として頻繁に招かれていた時に、多くのナショナルチェーンの幹部の方々に参加頂きました。

当時(2018年頃)、「中国で元気のよいローカルのアパレルチェーンはどこですか?」と聞くと、多くの方が口を揃えて、SHEIN(ヤングレディース中心)やPATPAT(子供服)などの越境ECをやっている新興企業の名が返って来たものでした。
実際、当事者であるそれらの企業の幹部の方々も熱心に研修をお聴きになっていらっしゃいました。

その背景には、中国のアパレル業界では、すでに大手チェーン間の競合も激しく、かと言って、ECに手をつけても、すでに広告宣伝費や販促費が高くなり過ぎて儲からない。

そんな、中国アパレルEC市場に見切りをつけて、産地としての中国のアドバンテージを活かし、海外で、しかも、出店ではなく、越境ECで売上を伸ばそうと考えた新興ブランドに最も勢いがある、という話です。

彼らは、素材と縫製の基地がある広州などに生産拠点を置き、すでにレッドオーシャンとなった中国アパレル市場ではなく、アメリカ向けや中東向けなど、ターゲットとするマーケット専用のサイトをつくり、中国で次々に小ロット、短サイクルで商品をつくり、低価格で販売して売り切ることで成長して来ました。

日経の記事が世界最大手のZARAと比較をしていますが・・・、比較には及ばない、と思われるかも知れませんが

実は、共通点があって、それは、目の行き届く本国、本社の近くで作って、世界に売り込むというビジネススタイルなのです。

とかく、トレンドファッションはトレンドの変化によって在庫リスクを抱え込むもの。
遠くで、時間をかけて安く作って商売をすることは大きなリスクになります。

ZARAが他のファストファッションチェーンにアドバンテージがある理由は、
母国スペインや近隣のポルトガル、モロッコなど、目の行き届くところでトレンド変化と過剰在庫リスクに注意しながら、小ロット短サイクルでつくり足して行くところです。

これに対して、イギリスでASOS、BooHoo、ミス・ガイデッドなどのオンライン系のファストファッション企業(ウルトラファストファッション)が台頭したのも、その多くがイギリス国内での移民労働力を活用したモノづくり(MADE IN UKの地産地消)とオンラインによるローコスト及びスピードオペレーションが背景にあります。(詳しくは「アパレル・サバイバル」をご参照下さい)

そして、今、世界の工場である中国から、同じ発想で世界に売り込む越境EC企業が台頭しているという話です。

ZARAにどれだけ迫るか?というのは面白い議論だと思います。

もちろん、ZARAが長年き築き上げて来た店頭起点のディマンドチェーンのPDCAの回し方と国際高速物流のインフラの安定性にはそう簡単にはかなわないでしょう。

しかし、

目の行き届くところで作って、世界に売るという発想を、
より人件費の安い産地から行う

しかも

オンラインで多店舗出店よりローコストと柔軟性を持って、高速で行う

というプレーヤーが出て来たことは、新しい時代の幕開けと言えるかも知れません。

目の行き届く産地でつくってリスク回避 x オンラインで世界にリーチする 
+オンラインで顧客の反応を解析しながら、つくり足す

市場低価格政策ゆえ、競合に価格で下をくぐられるリスクを抱えていることを指摘しながら、彼らが今後どんな発展をするのかに注目しておきましょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 ファストファッションの次の流通革新に挙げられるイギリス発ウルトラファストファッションとは?これまでの流通革新を振り返り、これから10年の流通革新を模索しています。

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December 28, 2020

アパレル生産で取り組みが進む3D技術によるサンプル作成工程の効率化

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12月21日と12月24日の繊研新聞のそれぞれ一面に、OEM型やODM型でアパレルの受託生産を担う繊維専門商社の3D CADなどデジタル技術を活用したアパレル設計、製造の効率化への取り組みに関する記事が掲載されていました。

ひとつは繊維専門商社のヤギと東京ファッションテクノロジーラボ(TFL)が共同出資で設立した、
ファッションに特化した3D、CG製作の新会社、メタデータバンク社の記事。

この新会社には3Dモデリスト、CGデザイナーがそれぞれ20~30人在籍し、
バーチャルで、サンプル製作プロセスを簡素化し、本生産前の仕様確認を促進したり、サンプルを作成せずに、バーチャルサンプルでEC先行受注を行ったりすることで・・・
テクノロジーによる業務改革を推進し、合意形成の迅速化、生産リードタイムの短縮などを通じ、過剰在庫の解消が期待できる、「バーチャルファクトリー」を目指すようです。

もうひとつは専門商社の豊島が進める、「バーチャルクロージング」の記事。

目指すところは前者に近いと思いますが、同社では最近、業界で普及が始まったアパレル3D設計のクラウドソフトウエア、設計の実務寄りのブラウズウエア(イスラエル)やモデルに着せて動かすプレゼンテーションに優れたCLO(クロ;韓国)やニット製品に特化してカラー、製品シミュレーションが出来るエイペックス(日本の島精機)などのツールを社内企画室に次々に導入し、専属トレーナーを採用して、各部署に所属するデザイナー、パタンナーが本格活用に向けて社内研修を受けているそうです。

 

しばらく、生産業務に携わっていなかった筆者も、ここのところ、過剰生産防止や在庫リスク回避の観点から、アパレル設計段階から工場での生産を経て、商品が倉庫あるいは店頭に届くまでのサプライチェーンにおいて、タイムロスやトラブルが起こりやすい、いわゆるボトルネックがどこにあるかをサプライチェーンに携わる方々と洗い出したり、ディスカッションする機会が増えました。

サンプル作成から本生産発注に至る、仕様確認作業もそのボトルネックのひとつ。

本生産発注に至るまでに、デザイン画ベース、ファーストサンプル、セカンドサンプル、各色サンプル、本番前修正サンプルなどサンプルが複数回作成されるわけですが・・・

アトリエや工場のサンプル室のサンプル作成だけでも、相当な時間と労力がかかるものですが、
間に入って、それに携わる方々が、サンプル作成にあたって、デザイナーやパタンナーやMDなど、指図を出した担当者が意図するデザイン仕様や修正指示の確認に時間が取られ・・・

仕様書が不完全、伝言が上手く伝わらないと、仕事が進まない、やり直しが増える、などなど、タイムロスによって、発注が遅れるのも実態です。

最近の話を聞いていても、このあたりは筆者が生産に携わっていた90年代とさほど変わらないようです。

むしろ海外生産が多くなる、産地が遠くなる、介在する言語が増える、出張経費削減で商社任せとなると、ご苦労もいろいろ多いようですし、現場に入って鍛えられながら育つ商品企画や生産担当の人材育成も進まない傾向にあるようです。

サンプル作成も回数が増えれば、当然、作成コストや無駄になる資材もばかになりませんし、その経費は当然、本生産の原価に上乗せされるわけですし、発注が遅れて、販売期間が短くなれば、想定以上の値下げや売れ残り在庫を抱える結果になるわけで、誰にとっても良いことはありません。

そういったプロセスの中で、3Dのシュミレーションや CADによるテクノロジーは・・・

サンプルを作らずに選択バリエーションを増やすことができる、一方、簡単な確認で済むことは、わざわざサンプルを作らず、バーチャルでの確認で代替えすることで、必要最小限の実物サンプル作成に絞ることができそうです。

すると、単純なコストだけでなく、資材のムダや、働き方改革が叫ばれるなか、残業の削減にもつながることが期待されると共に、プロセスが短縮されれば・・・

意思決定のタイミングを販売時期に引き付けることができたり、シーズン中の追加生産、新企画など柔軟性にもつながることも期待できるとというわけですね。

3D CADを実際に使っている方によれば、現段階では、2Dと3Dのソフト間の互換性に問題があったり(双方への変換のたびに調整が必要で時間がかかる)、まだまだ、手間がかかるようです。

新しいものは、どうしても、産みの苦しみがありますし、保守的な方々からの拒絶反応は少なくないでしょう。

しかし、何ごとも、黎明期は辛抱のしどころで、徐々に過去データが蓄積されて行き・・・

ある臨界点(データベース内のデータ量や精度、オペレーターの熟練など)を超えたところで、業界で加速度的に実用に乗って行くのではないか、と思われます。 

データを蓄積して、反復作業、柔軟対応に活かせること、それはあらゆる業務のデジタル化の大きなメリットでしょう。

某グローバルSPAも、結構前からデザインのデジタル化とアーカイブの蓄積によるデータベース化が本生産前の商品企画生産のスピードと柔軟性に繋がっていると聞きます。

そして、3D のオペレーションが広がるにあたり・・・

例えば、デジタルネイティブ、ゲーム世代の活躍、また、エンタメ業界など3Dに慣れた異業種からの人材の流入を促し、いい意味で業界内でイノベーションが起こって活性化することも期待しています。

アパレル生産とサプライチェーンのボトルネックのひとつの解消策として、企画生産現場における3Dテクノロジーへの取り組みに注目しています。

いつもお読み頂き、ありがとうございます。

今回の投稿が2020年最後の投稿になります。

今年も1年間お付き合いいただきありがとうございました。

3月からコロナショックに直面し、業界全体がなかなか先の見えない情勢のまま新年を迎えます。

そんな中でも、むしろ未来に向けて加速した、「新しい生活様式」のビジョンを描き、それに向けた業務の再構築に邁進致しましょう。

来年もどうぞよろしくお願いいたします。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 アパレルビジネスのボトルネックをあぶりだし、10年後の顧客のビジョンから改革を進める、勝ち残り戦略についての問題提起本です。

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December 21, 2020

H&Mとインディテックス(ZARA)の決算進捗に見る パンデミックの欧州グローバルチェーンの業績への影響

Hm2017先週、12月15日にH&Mの2020年11月期の年間売上高が発表されました。
前年比80.4%の187,025百万SEKとなり、日本円換算(SEK=12.44円)で2兆3265億円となります。

粗利高以下の利益の発表は1月29日のFull year reportを待つ必要がありますが、第3四半期までの9か月は、営業赤字。

これに対し、仮に第4四半期が第3四半期並みの黒字が出たとしたら(例年3Qと4Qの売上は同じくらい、利益率は4Qの方が若干よい)、年間ベースでは辛くも1%-2%程度の黒字で着地をしそうな感じです。

一方、ZARAのインディテックスは

2021年1月期の第3四半期9か月(20年2月-10月)が終了していますが、業績は前年比71%の売上高14,085百万ユーロ、営業利益率は6.7%の黒字です。

20年10月は一旦、前年比94%まで戻りましたが・・・
最終四半期の第2波の11月は81%、12月は10日までで87%ですが、これからの第3波がどうなるか・・・

というところですね。

仮に第4四半期が、売上高前年比80%、第3四半期並みの収益率だとすると・・・

通年ですと、前年比74%の20,858百万円ユーロ、日本円換算(€=126.1円)で2兆6303億円の予想、3Qを参考にすると、営業利益率は通年で10%前後出るかも知れません、という感じです。

欧州で約6割を売り上げる両社へのパンデミックの影響は

第2四半期から第4四半期まで影響を受けたH&Mは売上高20%減
通年、影響を受けているインディテックス(ZARA)は同26%減というところでしょうか。

上記の予測に基づき、

ユニクロのファーストリテイリングを含むグローバルチェーントップ3の2020年度売上高ランキング予想をしてみると

                    売上高
インディテックス   (21.1予測) 2兆6303億円(前比74%)
H&M         (20.11実績) 2兆3265億円(同80%)
ファーストリテイリング(20.8実績) 2兆0088億円(同87%)

というところでしょうか。

アジア中心のビジネスで、パンデミックの影響が期間、地域共に比較的少なく、
前年比87%で収まったファーストリテイリングとツートップの売上規模の差は少し縮まりそうな感じです。

関連エントリーー世界アパレル専門店売上ランキング2019 トップ10

最後までお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題ですね。実はZARAも以前からベーシックが稼ぎ頭。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

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December 14, 2020

メルカリの国内流通総額中のファッション関連カテゴリーはユニクロ、しまむらに続く、第3勢力規模に

Reloveメルカリの2021年6月期 第1四半期(7-9月)の決算発表資料に目を通しました。

米国事業やメルペイへの投資先行で赤字がしばらく続いていましたが、
前四半期と今四半期は2四半期連続での黒字になりましたね。

同社には、引き続きグローバルでの成長にも期待をしていますが、
やはり、顧客行動の変化に対応して、国内ファッション市場に影響を与えるであろう
メルカリ国内事業の数字からも目が離せません。

同国内事業について、企業としての売上高ではなく、
メルカリを使って顧客が売買した流通総額にあたるGMVベースでは
当第1四半期(7-9月)は1706億円(前年同期比34.6%増)
月間平均利用者数(MAU)は1750万人だったそうです。

この四半期の数字を移動平均方式で、年回り(前期2Qから当期1Q)にしてみると
過去1年で流通総額は6,695億円となります。

このうち、ファッション流通市場への影響という点では・・・

開示されているカテゴリー構成比
レディース19%、メンズ14%、ベビーキッズ3%までを含めると約36%となり、

カテゴリーごとに単価は違うと思いますが、
年間総額にこの構成比を掛け合わせて単純計算すると
年間流通総額ベースで2410億円相当になります。

ファーストリテイリングのジーユーが20年8月期で年商2460億円とのことでしたので、
メルカリは、現在、それと同規模、

国内アパレル市場においてはユニクロ、しまむらに次ぎ、ジーユーと並ぶ第3勢力ということになりますね。

参考までに同事業の四半期ごとの流通総額の構成比を5年平均でとってみると、
以下のような感じになりました。

1Q  2Q  3Q  4Q
7-9 10-12 1-3 4-6
20% 25% 27% 28%

やはり、冬から春に変わる時期、そして、3-4月の新生活が始まるところが、
持ち物を手放したり、購入したり、という機会が増え・・・
それに連動して流通総額も増えるのだな、と感じます。

この構成比を使って、今年度の流通総額予測をしてた上で、
上記のメルカリのファッション関連の構成比から流通総額を推計すると

今期1年間の累計は3000億円規模になりそうです。

コロナ禍の巣ごもり中に持ちものを見つめ直し、手放す機会も増えたことでしょう。
また、捨てるより、循環させることを考えねば、と多くの人々が考えている昨今。

メルカリの循環型社会に向けてのインフラとしての役割はますます高まりそうです。

先日、出品や梱包が面倒で始められないユーザー向けに、
オープンロジと組んだ「あとよろメルカリ便」や、カジタクやブックオフグループと組んだ「捨てない大掃除プラン」など
次々に未経験ユーザーのメルカリ出品デビューを手助けするサービス開始のリリースをされましたね。

どうしたら、ユーザーが不用品を手放しやすくなるのか?
未経験者のお困りごとを掘り下げて、いろいろなパートナー企業と組むことで
そんなアイデアは次々に広がって行きそうです。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【オススメ本】 ファストファッションが手ごろな価格の服を提供することによって、顧客の購買機会を高める一方で、ユーザーのクローゼットをあふれさせてしまった今日。毎シーズン、新しいもの作って、売るだけでなく、顧客のクローゼットのワードローブの循環を一緒に考えることこそが、業界企業のこれからのミッションのひとつになるでしょう。本書の後半では、これから10年の服を通じた顧客とのかかわり方を提言しています。

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November 23, 2020

島精機が進める商品企画のデジタルトランスフォーメーション、ヤーンバンク

Shima-seiki-211月23日の日経MJにニット編み機大手の島精機が9月に始めた「ヤーンバンク」に関する記事が掲載されていました。

記事によれば、このサイトに糸メーカーが販売するセーターおよびニットアイテム用の糸の情報を登録しておき、ユーザーであるアパレルメーカーのニットアイテムの企画者は、オンライン上で探している糸を検索、絞り込みの上、登録情報が閲覧出来、パソコン上でバーチャルでデザイン中の商品企画に置換えたり、サンプル作成シミュレーションをしたり、気に入った糸があれば、メーカーに糸見本の取り寄せの連絡ができるというマッチングサイトのしくみです。

糸メーカーは無駄になるかも知れないことをわかっていながら、営業用に現物サンプル台帳を大量につくらなくてもよいですし、ユーザー側はわざわざ複数メーカーの大量のサンプル台帳にひと通り目を通さなくても、探している糸に効率よくたどり着けるメリットがあるようです。

10月中旬段階で日本、中国など31社の糸メーカーが参加した、とのことです

(参考:国際展示会に出展する糸メーカーは150~200社あるとのこと)

この「ヤーンバンク」の取り組みは、商品企画の効率化、営業の効率化が図れ、時間や資材の無駄が減る、今後のサービスの広がりへの期待を込めて、ファッション商品生産のデジタル化の良い取り組みだな、と思いました。

その昔、筆者がアパレル生産にたずわわっていたころは、布帛(織物)からニットまで、たくさんの生地や糸のサンプル台帳に囲まれていたのを思い出します。素材メーカーの営業の方々がスーツケース2つくらい持って営業に回っていた姿も思い出されます。

シーズンが終わって、何年か経って、倉庫整理の時に、上司から処分しろ、と言われて・・・頂いた台帳も、とても綺麗な台帳もあるので、もったいないな、と思ったものでした。

話を元に戻して・・・

将来的には、アパレルメーカーのデザイナーさんやマーチャンダイザーさんたちが、バーチャルでサンプルを確認した上で、クラウドでプログラミングが行われ、産地でそのままサンプル作成までしていただけると、いろいろと話が早いことも多いのではないかと思いました。そこまでできれば、量産しなくても、オンライン注文のオーダー生産も出来てしまうかも知れませんね。(以上、勝手な妄想)

記事には、「糸の世界初のプラットフォームになる」、とあります。

布帛(織物)の生地の世界では、すでに台湾を拠点にした、世界の生地メーカーと世界の商品企画者をオンラインで結びつける、こんなクラウドサービスを提供している会社もあるようです。

https://frontier.cool/

商品企画開発の現場にも、3D CAD含め、IT企業のソリューションが入り込んで来ているのをよく耳にします。

ものづくりには、人が確認しなければいけない、アナログの部分も欠かせませんが・・・

確かにデジタルに置き換えれば省ける部分もたくさんあるので、効率がよく、無駄のない、そして、無駄な在庫をつくらない取り組みが業界の中で進むことを楽しみにしています。

いつもお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題ですね。実はZARAも以前からベーシックが稼ぎ頭。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本


 

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November 16, 2020

着回しの利く、究極の定番を磨け

Hermes-margielaa

先週、11月11日の日経MJ の1面、「仕事着はもう買わない」という見出しに目が止まりました。

20ー30代の80人を対象にコロナショック前後で働く女性の服の消費がどう変わったかを調査した特集記事でした。

アパレル市場の中で、働く女性の服の市場は最も大きな市場のひとつ

購入単価と購買頻度がその他の客層よりも圧倒的に高めなマーケットであることは言うまでもありません。

記事の内容は、80人という限られた対象者の調査かも知れませんが、コロナビフォア・アフターの購買行動の変化の傾向はある程度浮き彫りになっているのではないかと思いました。

・商談がなければ上着はジャケットからカーディガンへ
・通勤が減れば、オフィス服の必要枚数は減る
・駅ビル中心にお買い物していた人がネットに移行して、その安さにびっくり
・巣籠もり間の断捨離でZARAのようなファストファッション系の着なくなった服を捨てて、ユニクロを買うようになった

・定番を買うようになった

一方で、

・1着あたりの価格はむしろ高くなった、という傾向もあるようです。

そして、興味深いのは、

オフィス着への支出を減らした人も、
頻度は減っても1着あたりの支出を増やした人も

1万円弱ぐらいの価格は避けるようになったのが共通点とのこと。

1万円と言えば、駅ビルのセレクトショップ系のプライスポイント。

オフィスでそつなく、小奇麗に着ることができる服の価格帯の商品群が弱くなっているのは、市況にも通じるところがあります。

そこから

ユニクロのような割安な定番や
長く着ることができる上質の逸品

といった2つの需要へ向かっている、と読み取れます。

さて、そんな傾向があぶり出されて
提供する側のファッション企業さんは、今後、どんな対応をされますか?

まず、過去に固執するより
顧客の今、それから今後の体験や生活シーンを想像する想像力が大切でしょう。

定番ベーシック志向となれば、
もちろん、ユニクロが益々強くなることが想像できますが・・・

ユニクロが全体の主役になることはない、でしょう。

ユニクロ自身もそうなろうとはしていないでしょう。
むしろ、以前から、存在感のある、「究極の脇役」になることを目指している、と思います。

(ひとりごと:今回11年ぶりに発売した+Jは、その中でも主役級かも知れませんが・・・)
 

そんな中で、これからのファッションブランド、ストアブランドの役割とは?

例えば、長く、愛着してもらえる、ブランドらしい、究極の着まわし服の開発に力を入れてみたらどうか?

おそらく、そのアイテム候補は、既にブランドの中で強みとしているアイテム群の中にあるのではないか?と思います。

そんな核となるアイテムにフォーカスして、毎年クオリティを磨きながら、・・・

それらを活かしながら、そのシーズンらしい、新しい買い足し、買い替えを提案を行う。

それが、今回の記事を読んでの筆者の感想です。

いつもお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題ですね。実はZARAも以前からベーシックが稼ぎ頭。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

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October 26, 2020

米投資ファンドのABG、ブランド再建・再生のエコシステム

Forever2110月24日の日経新聞にブルックスブラザーズ、バーニーズニューヨーク、フォーエバー21など、経営破綻をした著名アパレルを次々に買収して、再建することで成長しているオーセンティックブランズグループ(ABG)の創業者のインタビュー記事が掲載されており、興味深く読ませていただきました。

記事に掲載されていた、同社がこれまで買収したブランドを挙げると

プリンス(2012)、ジューシークチュール(2013)、ジョーンズニューヨーク(2015)エアロポステール(2016)ノーティカ、ナインウエスト(2018)バーニーズニューヨーク(2019)、フォーエバー21、ラッキーブランド、ブルックスブラザーズ(2020)など

サイトを見ると、同社が現在抱えるブランドは計50ブランドあるようで、上記以外に日本でもおなじみなのは、AIR WALK、VISON、VOLCOMあたりでしょうか。(右上の画像はシアトルダウンタウンのフォーエバー21)

傘下企業の年商は1兆円を超える、米国最大級の投資ファンド、ブラックロックらの資金に支えられたファッションビジネス専門の投資ファンドです。

https://www.authenticbrandsgroup.com/

創業者でCEOのジェイミー・ソルター氏はカナダ出身で、マーケティング畑に強く、スノーボードブランドのRIDEの創業者の一人、その後、スポーツ系ブランドのベンチャー向け投資会社に携わり、2010年ABG社の創業に至った人物(Wikipediaより)

同社は、国際的な知名度を持ったブランドながら、ブランド力のなさ、商品力の弱さでもない、負債などの財務上の問題で破綻したブランドを買収し、再建することを生業として、

主に、不採算店を閉め、リブランディング(若返りなど)を行い、更に、知名度を利用したライセンススキーム(ブランド使用権のライセンス収入)を行う、など、これまでそれぞれが構築して来た「ブランドの価値」を最大限に活かすことを得意としているようです。

アメリカはとかくチャンスとあれば、ビジネスを急拡大し、更に、経営者が代われば、気がつけば企業肥大、オーバーストア、なんて話がたくさんありますからね。

特に小売業は日本も含め、古今東西で、採算や人材育成のスピードを度返しした、ダボハゼ的な過剰出店が自滅的経営破綻にいたるのが破綻の最大の要因です。

昨今も、アマゾンエフェクトによるショッピングのオンラインシフトやコロナショックはあくまでも、きっかけであって、多くの米国小売チェーンの経営破綻の本当の理由は・・・販売効率の悪い店の過剰出店投資と積みあがった不採算店舗の山による資金ショートだと思っています。

そうなってしまったら、仕方ないので、まずは資金繰りに切りをつけて、リストラして、身軽にし、リブランディングできれば良し、できない場合はライセンスブランドとして生き残る。

もっとも、ライセンスしか選択肢がなくなったブランドは、最もお金になるであろう量販系にライセンスされることが多いと思いますが・・・

これから世界的に拡大の余地があるアパレル市場は、世界の人口動態からしても、低価格マーケットですから・・・破綻した、かの著名ブランドの知名度も、最終的には量販系マーケットでの需要に活かされることになる、というわけですね。

経済が右肩上がりの成長期はブランドの立ち上げラッシュ、

一方、マーケットも成熟期に入れば、ブランド破綻のままでは、もったいない、各ブランドのライフサイクルの最後にライセンスという出口を用意する必要が増えてくるでしょうね。

ブランドライフサイクルの中で、一旦役目を終えたブランドも知名度さえあれば、ライセンスブランドとして再利用というエコシステムがファッションマーケットにあってもよい。

ABG社の記事を読んでいて、これからの時代、そんなブランド再建、再生のありかたをビジネスにする企業の必要性を感じたものでした。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】

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再構築したい、組織と役割を見直したいという企業さん向けの内容です。

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【参考書籍】

顧客購買行動と品揃え計画および在庫運用を通じた在庫最適化を考える小売ビジネス読本

人気店はバーゲンセールに頼らない 勝ち組ファッション企業の新常識 (中公新書ラクレ)

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October 19, 2020

Circular Economy サーキュラーエコノミー(循環型経済):ZARAのインディテックス社のこれから10年の経営テーマ

Photo_20201019195601サステナビリティ(持続可能性)やサステイナブル経営という言葉が全産業のテーマになり、メディアでそのキーワードを見かけない日はないくらいですが・・・

何をもってサステナブルなのかが今一つしっくりこない方も少なくないと思います。環境のために、社会のために、企業統治をしっかり、と言っても、企業の本業と直接結びつかない、ピンとこない取り組みが多いように筆者も感じています。

そんな中、ZARAを展開するインディテックス社のアニュアルレポートを読んでいて、腹落ちしたことがあったので、ご紹介したいと思います。

同社は2005年、パブロ・イスラ現CEOがナンバー2になったくらいからSustainabilityという言葉を使っていますが・・・

近年、そのサステイナブル経営の中核に置いているテーマのひとつに、Circular Economy(サーキュラーエコノミー)という言葉があります。和訳すると「循環型経済」となりますでしょうか?

このサーキュラーエコノミーについて理解する上で、

従来のリニア・エコノミー、一部の企業で取り組みが始まったリユース・エコノミー、そして、その先にある理想の状態であるサーキュラー・エコノミーの順に説明しましょう。(右上の図参照;出典はオランダ政府の資料です。) 

リニア・エコノミーとは、従来型の経済。新しい原材料を使って、製品化し、使用後に、廃棄をするという流通経済です。

リユース・エコノミーとは、新しい原材料を使って、製品化し、使用後に、リサイクルできるものは、再び原材料に使って製品化を行い、出来ないものは廃棄するという流通経済です。

これに対して、

サーキュラー・エコノミーとは、
製品化にあたって、そもそもリサイクルできない原材料は使わない。使用後は、そのリサイクル可能な原材料、素材を原料にして新製品をつくる。出来るかぎり使用後のリサイクル素材を使うが、必要に応じて、足りない分だけ、やはりリサイクル可能な新しい原料を足してつくる。
ということで、使用後の廃棄を行わない流通経済のことを意味します。

図にすると、リニア・エコノミーが一方通行の直線なのに対し、サーキュラー・エコノミーでは出口が入り口に合流する、サークル状の形になるというわけです。

ZARAのインディテックス社という企業は、これまでおおよそ10年ごとに経営のビジョンを掲げて来ました。

2000年代はflexibility(柔軟性)のスローガンのもと、ファッション業界の中でも最もその言葉の意味するところに近い本格派SPA(アパレル製造小売業)モデルのグローバル展開に磨きを掛けました。

2010年代は2013年にfully integrated store and online platform(店舗とオンラインの完全統合)をテーマに、いわゆるオムニチャネルリテイリング、あるいはOMO(online merges offline)の実現に投資を行い、あと2年後の2022年には世界的、全ブランドで完成するとのことです。

そして、2015年以降、その次のビジョンとして、並行して取り組み始め、これから力を入れるのが、Sustainability(サステナビリティ)の中のCircular Economy(循環型経済)というわけです。

同社の最新のアニュアルレポートによれば、

〇同社の700人を超える全ブランドのデザイナーおよび、本社、主要国のヘッドクオーターの社員、計10,000人がサーキュラーエコノミー(循環型経済)のための教育プログラムを済ませた。

〇デザイナーたちは、サーキュラーエコノミーの発想に基づいて、素材選定を始めた。

〇リサイクルのために、同社が出資する企業と組んで、店頭はもちろん、スペイン国内の街角に数千もの不要ファッション商品回収ボックスを設置し、EC宅配の帰り便(届けた後に手ぶらで帰らず、顧客の不用品を回収する)も利用し、製品リユース、リサイクル素材開発のための不要品回収を強化している。

〇サーキュラーエコノミーの発想に基づく、リサイクル、環境に優しい素材を用いたJoin Lifeのタグのついた商品群は既に全商品の25%を占めている。

〇回収した素材をリサイクルする先端技術を研究するスペインの大学や研究機関に投資をするために、米MITと共同ファンドを立ち上げた。

などの取り組みが紹介されています。

そんな同社のレポートを読んでいて、10年以上先にあるファッション業界のモノづくりの未来を想像していました。

□ デザイン(コンテンツ)はもちろん、その時々の最新ファッショントレンド

□ 原材料として使う素材はすべてリサイクル素材(ボタン、裏地も含む)

□ リサイクル以外の新しい天然素材、合繊素材の新規素材調達には、国際的な年間利用枠が設定されていて、利用規制がかかっている。
企業はその範囲で素材調達をして、モノづくりをしなければならない。

もし、将来、そんな社会が到来するとしたら?・・・・

インディテックス社は業界の中で、いち早く、DX(デジタルトランスフォーメーション)のビジョンをまもなく完成させ・・・すでに10~20年後の未来の「ありかた」に向けて動き出しているのだな、と。

このサーキュラー・エコノミーの実現は、既出のオランダ政府の資料によれば、25年がかりになるだろうと言われています。

しかし、そんな先の未来も見越して、ビジョンを描いて、信念をもって早くから準備を進めた企業が、その時になれば、業界の中で優位に進めることになるでしょう。

そして、これからの時代のキーワードになるであろう「サーキュラー・エコノミー」についても、いち早く取り組み、業界の先進企業となっているインディテックス社の動向、ビジョンからはますます目が離せなくなりそうです。

いつもお読み頂きありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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September 28, 2020

ZARAのインディテックスグループがコロナ禍で行った決算対応

先ごろ発表された、ZARAのインディテックスグループの2020年上半期決算(2-7月)に目を通しました。41cimg0394_20200928173001

コロナショックの影響により売上高前年比44.3%の減収、同社上場以来初の赤字となった第1四半期に続き、
第2四半期は売上高前年比は31.4%減ながら、営業黒字化(営業利益率6.6%)を果たしました。

まずは、売上が31%減でも損益分岐点を上回っている、営業黒字を出せるなんて、すごい会社だな、と素直に感心します。

結果、上半期の累計売上高は前年比37.3%の減収、半期では依然として営業赤字のままです。

一方、足元の8月以降は売上高前年比11%減まで回復して来ているようなので、このまま回復に向かえば、第3四半期累計で黒字化は果たせることでしょう。

この間の4連休に新宿店を覗きましたが・・・来店客でムチャ混みで、フィッティングルーム前は長蛇の列でビックリするくらいでした。

半期決算の結果だけ見ると、「世界一のインディテックスもコロナショックには勝てず、赤字に陥った」となりますが、
この間、同社は表面的な売上大幅減と営業赤字の裏で、いくつかの「先手」を打っていることが、決算書を見るとわかります。

ひとつは、以前もブログで紹介しましたが、前期末(20年1月末)にコロナショックの影響を見越して、春夏在庫を評価減したことです。

コロナショックの影響を受けなかった2019年度(2020年1月期末)は

売上高  3兆4,028億円(前年比8%増)、
営業利益高 5,749億円 (同9.5%増)

の過去最高益となる増収増益でしたが、

この期は

1)コロナ前から長年進めて来た店舗のスクラップ&ビルドを加速し、前年の2.5倍、売上高対比で言うと10%にも上る減価償却費を計上して今後の大量閉店に備え、なおかつ、

2)1月末から世界各国で表れ始めた新型コロナウィルス影響に備えて、1月末時点の春夏在庫に対して、約355億円の在庫評価減のための引当金を計上しています。

もし、この在庫評価減がなければ、同期の営業利益は前年比16%増の大幅増益となっていたところでした。

ふたつめは、21年第1四半期がコロナショックの直撃で赤字になると見るや、引き続き前年の1.4倍の減価償却費を経費計上し、あえて大赤字を出したことがわかります。

償却前の利益(EBITDA)はしっかり黒字だったところを見ると、上半期の業績を犠牲にしてでも、下半期以降の負担を軽くするために、ある意味「膿出し」をしたように思えます。

インディテックスという会社は、

消費者の購買行動の変化を見据え、2010年にオンラインビジネスを始め、2013年に「店舗とオンラインの完全統合プラットフォーム(=OMO)」宣言をして以来、店舗のスクラップ&ビルドを進め、オンラインで買って店舗で受け取る、店舗で見てオンラインで買うことができるデジタルトランスフォーメーションインフラを整え続けて来た会社。

現在、出店国は世界96店舗になり、オンライン販売実施国は66か国ながら、世界の202の国と地域にオンライン販売できる体制を整え、宣言から10年後となる2022年にグループ全体でその体制が整うとのことです。

これは、RFIDを含め、10年がかりのIT投資によって店舗、EC倉庫、本社倉庫の在庫情報がリアルタイムに一元化されたことで・・・

オンラインで注文した顧客に店舗在庫からも出荷ができるようになったことの「たまもの」です。

この体制が整えば・・・

今後、コロナショックのような外出自粛があっても、オンライン活用で全店の店舗在庫を近隣の顧客に届けたり、密を避けて店頭で手渡したりできるようになり、被害もこれまでとは違い、最小限に抑えられるようになるでしょうね。

そんな10年単位の長期的ビジョンを持ち、危機があるごとに、企業体質を見直し、単年度ではなく3年平均の売上と利益の成長率を考えて来た同社だからこそ成せる業であって・・・上記で述べたような、同社の決算期ごとの調整は、決して短期的な財務テクニックの話ではなく、中長期ビジョンに基づく余裕から来るものであることもわかります。

同社の直近のプレスリリースによれば、

2000年代は製造小売業と業務の内製化に磨きをかけ、ファッションビジネスのリスクに対する「柔軟性」(=flexibility)を構築した10年。

2010年代は店舗とオンラインの完全統合(=integrated store and online platform)に磨きをかけた10年。この体制はあと2年で完成するようです。

そして、ここからの10年、彼らの視線はこれからのサステナブル経営(=sustainability)、特に※サーキュラー・エコノミー(=circular economy; 循環型経済)に向かっているとのことです。

世界のトップランナーである同社からは、引き続き目が離せませんね。

※「サーキュラー・エコノミー」については、今年から来年以降の、サステナブル経営関連の重要キーワードになりそうなので、また、あたらためて、ブログでご紹介したいと思います。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】 ベーシックのユニクロとトレンドファッションのZARAの共通点とアプローチの違いを体系的にまとめ、多くのファッション専門店のブランディング、マーケティング、商品開発、販売戦略、ひいては経営理念の参考にしていただける内容に仕上げました。ユニクロが売上規模も世界2位になるのは時間の問題。ますます、両社の比較分析は世界のアパレルビジネスにとって参考になるでしょう。

 「ユニクロ対ZARA」 2018年アップデート文庫本

いつもお読み頂きありがとうございます。

 

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September 21, 2020

ZOZOの決算書から学ぶECビジネスの損益

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WWDジャパンさん向けの連載記事のためにZOZOTOWNを運営するZOZO社の決算書20年3月期および21年第1四半期に目を通しました。

Paypayモール出店によって40代、50代の新しい客層が順調に獲得され、
ZOZOTOWNもコロナ禍で商品取扱高が増え、同社のECの売上は好調、社としては増収増益のまずまずの決算だったようです。

気になったことを3つほど挙げると

ひとつは単価の下落です。
 
20年3月期通期の
平均単価は 3,946円 (前年度は4,201円)
出荷単価は 8,292円 セット率 2.10 (前年度は8,774円;同 2.09)
と下落しています。

コロナ禍の出店ブランドの在庫処分もあり、21年3月期第1四半期に至っては
3,443円まで下落(前年同期は3,903円)しています。

ファッション性が売りのZOZOTOWNですら、
平均単価がファッション市場マスマーケットの価格帯である3900円にまで低下していることに驚きました。

次に、出荷1件あたりの収益性です。

ZOZOの損益計算書や開示データを時系列で見ていると、
ECビジネスの販売管理費の構造やマクロトレンドがよくわかります。

ECビジネスの販売管理費の上位を占める荷造運賃、物流関連費、広告宣伝費について、

グロス金額(費用総額)ではなく、出荷1件あたりで割り出してみると

・荷造運賃は高止まり、
・物流関連費は人件費の見直しで増加傾向
・以前より広告宣伝費やポイントの出費を抑えて・・・

「利益率」こそ底を打って、回復中ではありますが、

そもそも、出荷単価が下落しているため、
出荷1件あたりの利益額(単価)は下落傾向というのが実態です。

要は、単価は下がるので、1件あたりの粗利額(同社にとっては販売受託手数料)は下がる、

一方、1件あたりにかかる荷造運賃やその他物流関連費(人件費がメイン)は高止まり、

歩留まり利益は店舗運営型小売業よりも多額にかかる広告宣伝費を調整弁として、どれだけ使うか次第という構造に見えます。

「ECは家賃がかからないので、店舗販売の小売業より儲かる」と豪語される方は少なくありませんが
ECは店舗販売と根本的に経費構造が違う、と言うのが正しい言い方ですよね。

むしろ、販売単価、粗利率によって、物流経費や広告宣伝費の使い方では薄利になってしまう可能性もはらんでいると見るべきでしょう。

みっつめは、今後の収益バランスのとり方です。

通販受託事業のこの傾向に対して、
ZOZO社はトップラインである売上高に関しては全体の商品取扱高を増やしながら、受託手数料収入額を増やす。
その一方で、通販事業の利益率の低下傾向を、モノを動かさない広告事業や新しいサービス事業を増やして利益貢献するように、目下、強化中というわけです。

アマゾンの通販事業は薄利で、AWSで利益を稼ぐという構造に近づいていきますね。
これはプラットフォーマーの必然なのかも知れません。

ZOZO社自体はそれでいいかも知れませんが・・・出店ブランド(事業者)はその傾向を理解してECビジネスに取り組まなければなりません。

ファッションECマーケットは、
単価は下落傾向、競争が激しくなると、以前よりも広告宣伝費が余計にかかる、
販売管理費の主要費目である送料や物流関連費用は下がらない。

この構造やビジネストレンドを理解した上で、
販売単価、粗利の確保、送料無料のハードルをどこに設けるか、値下げやクーポンやポイント付与などの販促施策の加減も考えるべきでしょう。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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