September 19, 2023

「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナーby WWDJAPAN

Wwd929コロナ禍を経て
世界のファッション流通マーケットの強豪たちは
いったいどんな風に変わり、どこへ向かっているのか?

毎年このブログでもリリースしている
世界アパレル専門店企業売上高ランキングをベースに

各社の動向やこれから10年の勝ち残りのカギを探ります。

2022年版ランキング公開から半年が経過してますので、その後の動向も付け加えてご説明させて頂きます。

グローバル時代、世界の動向は少なからずローカルマーケットに影響を及ぼします。

世界の流れを読み、国内ビジネスにどう取り入れるか、そんな視点を得て頂ければ幸いです。

9月29日(金) 13:30~15:00 オンライン

WWDJAPAN主催 有料セミナー

「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー

講師:「ユニクロ対ZARA」著者 ディマンドワークス 齊藤孝浩

お申込みはこちらから 
https://wwdjapan-businessseminar20230929.peatix.com/

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【おススメ本】「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)

 高収益企業の決算書を図解すると見えて来る、従来の業界の常識とは真逆のアプローチとは?

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August 14, 2023

急成長ルルレモン躍進の秘密

Imag2243毎年公開している

世界アパレル専門店売上ランキングトップ10

コロナ禍を経て、最も注目すべきランクイン企業は
ルルレモンです。

ルルレモンは1998年、カナダで創業

アメリカ合衆国を中心に
過去10年で年平均約20%の成長を続ける

ヨガやランニングなどアスレジャーを中心に
健康な体づくりのためのスポーツアパレルをメインに販売するチェーン

ナイキやアディダスが靴を中心にウエアも展開するのに対して、

ルルレモンは、もっぱらアパレル中心

そして、

アスリートというより、アスレジャーに関心のある一般大衆向け

また、

直営店とオンラインでエンドユーザーに直接販売するのが著名グローバルスポーツブランドとのアプローチの違いです。

そんなルルレモンは

2022年度世界アパレル専門店売上高ランキングで、第6位

北米ではGAP社に次ぐ2位ですが、営業利益はGAP社を遥かに上回って、1位

lululemon ルルレモンという単一屋号では

すでにGAP社のオールドネイビーやヴィクトリアズシークレットを抜いて1位の売上規模です。

商品は4wayストレッチや速乾など機能素材を使った、アスレチックにも普段着にも使える着心地が良く、動きやすいウエア

単に、服だけを販売するのではなく、

店舗で開催されるヨガ教室やランニング教室で

コミュニティーづくりを通じてコアなファンを増やして行くマーケティングが秀逸です。

そんな店舗体験提供に裏打ちされているため

けっして安くはない商品が、オンラインでも良く売れて、

23年1月期決算では、いよいよ、オンライン売上が店舗売上を上回りました。

オンラインの本社費差し引き後営業利益率は25~30%と

同10%前後の直営店より高いため、

全社営業利益率は20%近い高い収益率を上げています。

 

そんな 店舗体験型による顧客のつながり

オンライン事業の収益性

の二本柱に、とどまらず、

 

未来に向けて面白い取り組みがいくつかあります。

ひとつは

自社商品の買い取り、再販プログラム
lululemon Like New

です。

ユーザーが不要になったルルレモン商品を

ルルレモンが引き取って、顧客には新品購入の際に割引になるクレジット(ポイント)を付与します。

ヘビーユーザーたちは店舗で開催されるイベントに参加するだけでなく、
購買頻度も高いユーザーでしょう。

店舗で開催される教室には新しい商品を着て行きたいでしょうし、

毎シーズンアップデートされる商品を知れば、新しい商品が欲しくなるわけで、

そこでまだ十分着ることができる不要になった旧商品
(といってもそんなに古くないからLike New)

を、手放す受け皿をルルレモンが自らつくり、

一方、これからルルレモンを着てヨガやランニングを始めようとする
エントリー顧客さんには

半額以下の手頃なお試し品として提供できるというわけです。

2つめは
オンラインコンテンツの提供です。

ヨガやランニングをする人は当然
自宅またはその近辺でも日頃から自らのエクササイズを行うわけで

その手助けに沢山のエクササイズの秘訣を提供する
オンライン動画を配信します。(無料と有料コンテンツあり)

そして、3つめは

有料会員制の普及です。

同社は22年に会員制プログラムを始めました。

無料コースと有料コースがあり、7カ月で無料会員はすでに9百万人に達したそうです。

月間または年間有料会員になると

商品の割引が得られたり配信コンテンツが無料になったり

ルルレモンが提携する提携エクササイズ教室が割引で
受講できるというわけです。

・オンラインと店舗を行き来するオムニチャネル

・店舗での体験提供

・リセールによる循環プログラム

・コンテンツ配信、有料会員制・・・

顧客とつながり続ける取り組みを地に足をつけて次々に取り組んでいるのがわかります。

同社はこれらの取り組みにより

2022年1月期の売上約8000億円を5年間で倍の1兆6000億円にする

POWER OF 3 X 2というプロジェクトを推進中。

その原動力は

・オンライン売上を倍増させ
・後発のメンズの売上を2倍に増やし
・北米外の海外売上を4倍にする

ことによって実現するとのことです。

海外展開について、すでに、100店舗を超えた中国に対して

日本にはまだ、六本木、原宿、表参道、銀座、新宿(丸井)、梅田、そして御殿場のアウトレットを含む
7店舗しかありません。

店舗が少ないと認知度が低く、日本市場には今のところインパクトも少ないかも知れませんが

ルルレモンは今時の、ファッション関連のグローバルマーケティングの最前線にいる学ぶべきブランドのひとつと感じます。

ルルレモンは既存スポーツブランドとは違うアパレルチェーンとも違う

ゲームチェンジャーの1社です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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July 10, 2023

中国産地で思い出される日銭商売である小売業の原点

20230523_1058195月にSHEIN(シーイン)の生産背景である中国広州のアパレル産地視察で考えさせられたことが
いまだに頭から離れないでおります。

シーズン単位で事前に見込み生産をすることが
あたりまえになってしまっているアパレル業界において

広州で盛んに行われている
5日間で100枚をつくって納める小ロット生産は

生産者は素材の用意さえがあれば、すぐに作ることができ

商品を納品されたEコマースの販売者はすぐに売り始めることができます。

従って、Eコマース事業者は
消費者からの現金回収も速くできるわけで

速く、回収できた現金を
サプライチェーンに回すことができれば

関係各社は資金繰りの心配も少なくなり

従業員にも、仕入先にも
早く支払うことができるようになるわけです。

SHEIN(シーイン)ら、IT業界から来た産直越境EC企業らは

最速で週ごとに納品商品の代金をサプライヤーに支払うことを知りました。

そんな誰もがわかる

サプライチェーンが潤う単純なロジックに対して

一方、近年、主流になっている大量生産はというと・・・

確かにロットを大きくすることで、原価は安くなるかも知れませんが・・・

素材の用意から

  ↓

製品をつくり始め

  ↓

完成品を売り始めて

  ↓

代金が回収できるまで

販売期間と比べて、
果てしない時間がかかるわけで

生産中はサプライチェーン各所に

原材料や仕掛在庫を含む
在庫=キャッシュを寝かせてしまうことになる

そんなことが 実際、生産現場各所で起こっているわけです。

そうすると、現金化に時間がかかるため

仕入先には支払い期日を先延ばししてみたり

資金が足りなくなる場合は銀行借り入れによって資金を繋いだりしているのが現実。

関係者みんなが頑張っても・・・

販売現場では過剰に抱えた在庫を値下げ販売する悪循環。

これって、いったい、何のために、
誰のために仕事をしてるんでしょうね。

以前、バングラデシュで生産する
商社の方に伺った話を思い出します。

バングラデシュの大手の工場主は売上高をたくさん得たいために

何十万枚、時には何百万枚の受注を要望すると言います。

ところが、そんな大ロットだと

素材の調達にも時間がかかり、納品するまで時間がかかるため

納品が完了するまで

従業員に給料が払えない
原料代金も払えない

という状況に陥りがちとのことでした。

コストは安くなるけど

サプライチェーン各所にキャッシュを寝かし

販売にあたっては値下げ在庫処分のリスクをはらむ大量生産

一方、

コストは多少高く、当初値入は少なくても

関係者がキャッシュで潤い値下げリスクも小さい、小ロット多頻度生産

はたして、一体どちらがいいのでしょうかね?

安く仕入れても
多くの売れ残り在庫を抱えた
現場をたくさん見て来ました。

一方、あぁ、もう少しつくればよかったね

と言いながら

次のコレクションを
前倒し販売していた時もありました。

双方を思い出せば

どちらが上手く行っていたかは明らかです。

これって
実際、冷静に原価計算をしてみれば
原価が安いことよりも
値下げが少ない方が儲かることがわかるはずなのに、

組織が大きくなればなるほど
仕入れ担当者のひとりの判断で出来ることではなく

会社のルールを変える必要があることなので
トップやリーダーの覚悟がいることだとしみじみ感じます。

かつて、アパレル専門店の経営者さんたちは
起業して間もないころ

1カ月分の在庫を仕入れて店頭に並べ、

売った代金で来月売る商品を仕入れに行く
そんなことを繰り返していたころがあったと思います。

そのころは、
在庫日数、30日!在庫回転率は10回転以上!

でまわっていたのではなかったでしょうか?

そんな経営者さんも、最近は見込み仕入や見込み生産が増え
在庫回転率が落ち、支払いをいかに先延ばしするかを考えている
なんて話もよく耳にします。

まさか中国の広州で、忘れかけていた

小売業の日銭稼ぎ商売の原点を思い出される
ことになるとは思いませんでした。

今一度、キャッシュフローを重視した小売ビジネスの原点を
思い直す時、と感じる今日この頃です。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

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 第2章では、産地から、店舗を持たずに、世界の消費者に直接売り込む

SHEIN(シーイン)のビジネスモデルの優位性について取り上げました。

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June 12, 2023

SHEIN(シーイン)を支える生産背景、中国広州アパレル産地レポートがWWDJAPANに掲載されました。

Shein-hqWWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

6月12日発売の連載 第50話目に、ウルトラファストファッションSHEIN(シーイン)の本拠地である中国広東省広州のアパレルサプライチェーンの現地視察レポートをまとめさせて頂きました。(筆者が5月下旬に実際に視察したもの)

世界の工場である中国の、アパレル一大産地である広州は生地、付属品の現物在庫を抱える巨大な市場があり、製品を5日でつくる背景を支えています。

そんな産地で取材をした中で、最も印象的だったのは、

SHEIN(シーイン)のようなIT業界から来たゲームチェンジャーたちが中心になって、
速く納めてくれるサプライヤーには、すぐに払う、

一方、バイヤー側は速く払うために、速く売ってキャッシュに換える、
既存の業界とは対極にあるキャッシュフロー経営が進んでいました。

安く作るために、大量受注、大量生産をしてしまっては、リードタイムも長くなり
サプライチェーン上の各所に溜まる在庫にキャッシュを寝かすことになりますが、

小ロットなら、多少コストが高くでも、
むしろ、速く換金でき、

サプライチェーン全体のキャッシュフローが豊かになるというメリットを
あらためて産地で考えさせられた次第でした。

世界のメディアでは、SHEIN(シーイン)のネガティブな面が大きく報道されますが、

実際、産地に行ってみると、メディアでは報道されない、

日銭商売である小売業として、我々も見習うべき

目から鱗の「商売の原点」をたくさん耳にすることも出来ます。

SHEIN(シーイン)は、

他にも業界のどんな常識を覆すことで、急成長したのか?

今後もアンテナを立てて、リサーチを続けたいと思います。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトでもお読み頂けます。

シーインのウルトラファストサプライチェーンの秘密を中国・広州で探る

最後までお読み頂き、ありがとうございました。

【おススメ本】「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)
 第2章では、産地から、店舗を持たずに、世界の消費者に直接売り込む

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May 29, 2023

新刊「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP)が発売されました。

Finalおかげさまで、来週5月25日(木)に齊藤孝浩の4冊目となる
新刊「図解 アパレルゲームチェンジャー」(日経BP日本経済新聞出版社)が発売になりました。

4年間、WWDJAPANに連載を続けてきた「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)で紹介した企業を中心に、

主に決算書情報などから読み取れる、コロナ禍を経て勝ち続けている企業のビジネスモデルが、従来の業界の常識と何が違うのか、その優位性、将来性をわかりやすく図解してみました。

勝ち続ける企業は・・・業界の常識とは真逆のことをやっていた。

というのがこれらのビジネスモデルとゲームチェンジャーたちのビジネスモデルを分析しての気づきです。

そして、損益計算書(PL)の強さが お金の使い方にあるということ。

ZARA(ザラ)から始まり、SHEIN(シーイン)、ZOZO、ワークマン、コストコ、LVMH(モエヘネシールイヴィトン)、丸井グループ、メルカリ、DOORDASH(ドアダッシュ)などなど

が登場しますが、彼らは

・在庫の運用のしかたが上手く

・商品を仕入て売る以外にも収益源を持ち

・自前でしくみを構築したからこそ、そのインフラが他社にも売れるプラットフォーマー的な役割を果たし

・小売流通業がエンドユーザーから代金(日銭)を預かることの大切さを知っています。

上記の企業の他にも、ユニクロ、ニトリ、H&M、クラシコム、モンベル、ヤマト運輸などのビジネスモデルも登場します。

一応、専門書ではありますが・・・

グラフやイラストを多様し、誰もが知っている身近な企業の財務体質とビジネスモデルを、

「ですます調」で綴ることで、

多くの方に読みやすい体裁にしております。

一番読んで頂きたいのは、これからビジネスモデルを見直したい経営者さん、

新しいビジネスモデルを一から始めるスタートアップ企業や起業家の卵の方々、

そして、流通企業の幹部になって、PL管理に責任を持っている方々にも、

競合他社ベンチマークのアプローチも学んでいただけると思いますので、

是非読んで頂きたい内容です。

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May 22, 2023

世界アパレル専門店売上高ランキング2022 トップ10

Lulu-santa-monica

世界的なパンデミックを経て、躍進し、最高益を更新する企業と苦戦が続く企業の明暗が分かれた2022年度。世界の大手アパレル専門店各社の決算が出揃いましたので、毎年恒例の売上高ランキングTOP10を共有させていただきますね。

今回、売上高の増減はコロナ前からの回復度合いを見るために、19年度比とさせていただいております。

 円建て比較にあたり、為替レートは2023年1月末の €=141.3円、スウェーデンクローナ=12.54円、US$=130.5円、英国£=161.3円で換算しています。 

順位 社名 本社;決算期 売上高 19年比増減 営業利益 営業利益率 期末店舗数 基幹業態
1位 インディテックス (西;2023.1期) 4兆6,019億円 +15.1% 7,799億円 16.9% 5,815 ZARA
2位 H&M (瑞;2022.11期) 2兆8,033億円 -4.0% 898億円 3.2% 4,465 H&M
3位 ファーストリテイリング (日;2022.8期) 2兆3,011億円 -0.5% 2,973億円 12.9% 3,562 UNIQLO
4位 GAP (米;2023.1期) 2兆0,374億円 -4.7% -90億円 -0.4% 3,352 OLD NAVY
5位 プライマーク (愛;2022.9期) 1兆2,412億円 -1.2% 1,219億円 9.8% 408 Primark
6位 ルルレモン (加;2023.1期) 1兆0,581億円 +103.8% 1,732億円 16.4% 655 Lulu Lemon
7位 NEXT (英;2023.1期) 8,731億円 +24.2% 1,519億円 17.4% 466 NEXT
8位 ヴィクトリアズシークレット (米;2023.1期) 8,277億円 -15.5% 738億円 8.9% 837 Victoria’s Secret
9位 アメリカンイーグル (米;2023.1期) 6,510億円 +15.5% 322億円 4.9% 1,175 AEO、Aerie
10位 しまむら (米;2023.2期) 6,161億円 +18.0% 533億円 8.7% 2,213 しまむら

※お断りですが、大手企業の中で、アメリカのTJXやROSSのようなオフプライス・ストアはブランド企業の余剰在庫の買取販売が中心ということで、除外させて頂きました。
また、非公開企業で欧州大手アパレルチェーンのC&Aおよび、中国産地からの越境ECのみでアメリカ、中東など世界中に売り込み、急速に拡大を続けるファストファッション企業、SHEIN(シーイン)あたりもTOP10の2-3位前後にランクインする規模と思われますが、それぞれ、正確な売上高がつかめなかったため、除外しております。 

【解説】

13年連続 トップを走る、ZARAのインディテックスは売上、利益とも過去最高益を更新。ロシア500店舗以上を閉店、中国苦戦するも、欧州とアメリカの躍進での達成。店舗とオンラインの融合は完成し、スクラップアンドビルドは完了に近づき、過去最大の設備投資をして、次のステージに進みます。

第2位のH&Mはパンデミックからの回復で増収も減益。原価高騰を価格に転嫁しなかったこと、ロシア休業の処理、また、構造改革に費用をかけたことが要因です。アメリカの伸びは大きく、ドイツを抜いて、売上シェア最大国になりました。

第3位のファーストリテイリングは日本が回復、中国がロックダウンで苦戦するも、欧米が黒字化、増収増益で中国のマイナス分をカバー。これで中国が復活すれば、更なる躍進は楽しみです。

第4位のGAPは減収減益、営業赤字。同期中にCEOが交代するほどの混乱ぶり。店舗のスクラップアンドビルド、欧州、メキシコ、中国事業をパートナー企業に移管など、リストラが進んでいます。原価高騰による粗利率低下、Yeezyコレクションの53百万ドルの処分も営業赤字を拡大した要因です。

第5位のプライマークは各国でコロナから回復中、オンラインでは、店舗在庫確認に加え、クリックアンドコレクトの対応の実験を始めました。コロナ禍にインナーウエアや子供服が伸び、今後も期待ができそうです。ドイツの再構築、アメリカの拡大が今後の成長のカギ。

6位以下の一番のトピックは なんと言っても、第6位のルルレモンです。

店舗、EC合計で、昨年比3割増収で1兆円規模に到達。一方、微減益。これは原価高騰で粗利率が2%低下したのと、ミラーののれんの減損が大きく響いています。但し、ミラーを活用した、ルルレモンスタジオで有料サブスクを開始するのに注目です。26年までに売上を1兆6000億円規模と2021年の倍にするプランPower of Three x2 growth planをを進行中。

そして、第7位のNEXTは二桁増収、一桁増益。店舗好調で、ECは落ち着きましたが、ランキング内でトップクラスのEC化率と収益率。原価高騰を価格転嫁とプロパー消化向上でカバーするも、テクノロジーと物流に投資をすることで、利益率は若干低下した模様です。プラットフォームビジネス(内製化インフラを外販)の開示が始まりました。現状、全売上高の2.6%になりました。

そして、第10位の日本のしまむら。ファッションセンターしまむらの高収益にバースデイ、アベイルが利益貢献して、過去最高益を2年連続で更新。バースデイ業態としまむらでは、婦人服以外の伸びが今後は成長のカギとなります。

業績の明暗は、オンラインと店舗を行き来するニューノーマルへの完成度と需要にあわせたサプライチェーンマネジメント力の差です。

原価を安くするために、人件費の安い国に生産地を移転し、ファッションビジネスにとって致命的とも言える、リードタイムを販売期間よりも長くしてしまったところは今後も苦戦が強いられることでしょう。

昨年のランキングはこちら- 世界アパレル専門店売上ランキング2021 トップ10

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【お知らせ】2023年9月29日(金)13:30~15:00

WWDJAPAN主催 「ザラ」「H&M」「ユニクロ」に続くのは?
世界アパレル専門店売上高ランキング解説セミナー 今回の記事の内容をライブで深堀り解説します。

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January 16, 2023

フリマアプリ、メルカリが築く新しい金融経済圏

Wwd-vol45WWDJAPANに月イチ連載中の「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

1月16日発売の連載45話目はフリマアプリ、メルカリの決算書を取り上げました。

アプリの月間利用者が日本で2,000万人を超え、日本とアメリカを合わせれば年間流通総額(GMV)は1兆円を上回りました。10周年となる今年の年末には日本だけでも1兆円に届きそうな勢い。

流通総額もさることながら、メルペイには売上金引き出し前の「預り金」も相当溜まり、売り手はメルペイとして使ったり、これからクレカ(メルカード)を使うようになれば、これはもうれっきとした金融企業です。

タンス在庫が第二の持ち主の手に渡り、売り手が手にした売上金が電子マネー、メルペイで新しい消費に変わる新しい循環型金融経済圏の誕生です。

こちらの記事はWWDJAPANのウェブサイトにも掲載されています。
ファッション業界のミカタ Vol45~フリマアプリ、メルカリが築く新しい金融経済圏

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考】ショッピングのデジタルシフトの真っただ中、その先にあるのはどんな未来なのか?10年後のファッション流通の未来を考察しました。

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July 25, 2022

自社の物流機能を他社に提供し、物流倉庫をプロフィットセンターに換えたスクロール360

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運営のお手伝いをさせて頂いている日本オムニチャネル協会
https://www.omniassociation.com/

先日開催されたサプライチェーンマネジメント部会の月に1度のセミナーに参加して
とても感銘を受けたお話があったので共有させて頂きます。

お話しをして下さったのは、

大手ネット・カタログ通販会社スクロールさん(旧ムトウ)の傘下で
他社のEC物流を受託する子会社スクロール360の役員を務める高山さん。

お話の内容は、

親会社であるカタログ通販会社の時流に合わせた思い切った事業転換や、

品切れゼロ、残在庫ゼロを目指すサプライチェーンマネジメント

自社の通販事業のインフラのひとつであった物流部門が事業会社として独立し、
他社EC企業のフルフィルメント業務を受託するようになった経緯、

そして、現在進行形の通販物流業務全般の生産性を高めるための工夫の数々でした。

ひとつひとつが目から鱗だったのですが、

今回ご紹介したいのは
時代の変化に合わせた事業転換の話です。

2000年以降にEコマースが急速に普及する以前から
ご存じのように同社を含めて、カタログ通販に取り組む会社はたくさんがありましたが、

同氏によれば、カタログ通販業界にとっての転機は1999年にあったそうです。

楽天、Yahoo!、アマゾンなどのECが台頭し、
カタログ通販の販売量が下降に向かい始めた時、

多くの同業カタログ通販会社が収益確保のために力を入れたのは、

通販会社としての「攻め」の強みのひとつであった
ダイレクトメール(DM)による顧客へのリーチ力を活かした広告営業

つまり、
カタログを会員顧客に発送する際に同封するDMの印刷物から広告収入を得ようとしたそうです。

そんな競合他社らを横目で見ながらスクロール社が通販売上の収入減をカバーするために営業を強化したのは・・・

むしろ「守り」の部門であった物流機能でした。

物流部門を縮小して行く他社に対して、同社は同部門をリストラすることなく、

むしろ急速に需要が伸びたことで、出荷作業に悩む楽天などに出店するEC業者から

物流業務の代行を受託することに奔走したのでした。

その後、時代はご存じの通り、Eコマースの加速度的な伸び、

大手カタログ通販各社もデジタルシフトをしてEコマースに転換するもEC専業には敵わず、売上規模は縮小。

この間、親会社であるスクロールは、直販に固執せず、販路を自ら開拓する顧客ダイレクトのBtoC型から撤退し

全国に顧客基盤を持つ「生協」と組んで、生協を経由したB to B to C型のビジネスモデルに大転換。

一方、物流子会社スクロール360はこれまで親会社の通販出荷を手掛けて来たノウハウに磨きをかけ、

いまや100社以上の他社のEC事業の受発注や出荷代行を担うフルフィルメント会社として成長し
受託拠点である物流倉庫の拡大投資を続けて現在に至ります。

顧客の購買行動が変わる業界の大きな転機に、

過去の「攻め」の強みにこだわった多くの同業他社と、

一方、それまでコストセンターだった物流という「守り」の強みを、Eコマースが伸びて行くこれからの時代の強みと見極めて
プロフィットセンター化した同社の間には、

明らかに明暗があったと思いました。

これは奇跡ではなく・・・

経営者さんが時代の流れを読んだ経営判断に他なりません。

そして、その経営判断ができるだけ、
「守り」の物流部門が単なるコストセンターではなく、
将来的にも事業の強みのひとつになると認識されていた経営陣の勝利だったと思います。

長年ビジネスをしていると10年に1度は大きな転機を迎えるものです。

これからどう勝ち残るかを考える時・・・

「強みを活かす」ことは基本中の基本ですが、

ビジネスには何事も
「攻め」の強みと「守り」の強みがあるはずです。

必ずしも「攻め」に固執することが
変わりゆく時代の強みになるとは限らない、

しっかりした機能であれば、「守り」の強みにも十分活路がある、

ということを、
お話を伺っていて思い知らされたものでした。

事業にとって

トップライン(売上)を上げるための「攻め」の商品開発や販売促進やマーケティングが第一ですが、

そこからボトムライン(利益)が確保できるかどうかは、在庫コントロールやロジスティックスなど守りの機能がしっかりしてこそだということを忘れてはいけません。

その表と裏の両輪が上手く回ってこそ、右肩上がりではない、
安定成長時代に持続可能な経営ができるものと確信しています。

【9.15 オンラインセミナー】

「売上はMD、粗利はDB」と、ある経営者さんはおっしゃいました。
MD とDBの両輪を上手く回して、顧客最前線の販売力を最大限に活かす。
過剰在庫を粗利とキャッシュに換える組織づくりと業務連携の秘訣をお伝えします。
8月16日までのお申込みで早割適用 

詳しくはこちら https://dwks.jp/seminar2022/

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考】ショッピングのデジタルシフトの真っただ中、その先にあるのはどんな未来なのか?10年後のファッション流通の未来を考察しました。

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July 18, 2022

年会費収入に支えられ、会員にバリューを還元し続けるCOSTCO(コストコ)のビジネスモデル

20220811_155305月イチ連載中のWWDJAPAN「ファッション業界のミカタ」(ファッション流通企業の決算書の読み方)。

今週発売のvol.39(7月11日号)は、「コストコに見る年会費に支えられる会員制小売ビジネスモデル」というタイトルで、リピート率の高い年会費収入を原資にして、仕入・販売活動については、徹底的なローコストオペレーションを貫き、バリュー(売上原価に近い販売価格)をお客様に還元するビジネスモデルのひとつ会員制ホールセールクラブ、コストコの決算書を考察してみました。

ウォルマート、アマゾンに次ぐ、世界3位の小売業コストコの年商は約25兆円、売上原価率はなんと88.9%。

商品売買差11.1%に年会費収入を足して、12.9%の粗利率に対し、販売管理費率9.5%に抑え、約3%前後の営業利益率を毎年コンスタントに残しています。

更に驚くのは長年時系列で見ても、四半期ごとの売上のバラツキ、つまり季節指数がほとんどなく、

(普通だったら11月から12月を含む四半期が断トツになりそうですが・・・)

年間、安定的な標準化されたオペレーションを回すことが出来ていることもローコストで運営できる秘訣なのでしょう。

そんなコストコのビジネスの強みが決算書の随所から感じられます。

継続的に支持して下さるファンであるお客様が出資する?安定的な年会費収入に支えているからこそ、

実現できることってあると思います。

そんな「会員制ビジネス」の世界のお手本のひとつがコストコというわけです。

これからLTV(ライフタイムバリュー)という言葉を語ったり、サブスクモデルを考えるのなら、

ブランドにとっての「メンバーシップとは何か?」を考えるのもありではないでしょうか?

アウトドアの「モンベル」や急成長中の人気ブランドである「アメリ」も独自のメンバーシップ制に取り組んでおり、注目しております。

関連エントリーーモンベルに学ぶ、ライフタイムバリュー創造マーケティング

関連エントリーーEC発人気レディースブランドのキーパーソンたちが語るSNS時代の顧客目線

WWDJAPANのこちらの連載記事がウェブ版でお読み頂けます。

https://www.wwdjapan.com/articles/1396845

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考】ただ新しい商品つくって売るだけでなく、顧客のクローゼットを思いやり、継続的な関係性を構築できるかが生き残りのカギ。10年後のファッション流通の未来を考察しました。

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July 11, 2022

自社ECを拡大し、次のステージでは他社製品も販売する

Dsc02764-27月8日日経MJにカジュアルSPA大手で自社ECドットエスティの販売にも力を入れるアダストリア社が、

自社ECで自社が展開するブランドだけではなく、家電やキッチン商品など他社製品の販売にも力を入れてることに関する記事が掲載されていました。

海外では一定の規模になった自社ECサイトで、その自ら構築した、リーチできる顧客層、ECサイト運営やマーケティング、フルフィルメント、物流からラストワンマイルまで

インフラを活用して競合他社商品まで販売する事例は増えています。

英NEXTはその先駆けのような存在ですし、

最近ではアメリカでもヴィクトリアズシークレットなども顧客向けに第3者ブランドを販売するなど、

せっかく自ら構築したインフラを自社のためだけではなく、第二、第三の収益源にするという話は、今どきの流れだと思います。

今やロジスティクスは「守り」のコストセンターではなく、「攻め」のプロフィットセンターとして磨き、他社もお金を払いたくなるくらいまで極めるのが勝ち組プラットフォーマー的発想です。

さて、アダストリアの話戻しますが、

取り扱う商品は

「何でもありではなく、同社のブランドと親和性があり、販売スタッフがお薦めできる商品を選んでいる」、

とはマーケティング本部長の方のコメント

実際に使った感覚や印象やおススメポイントをスタッフがウェブで発信。

延べ1400万人の会員を持つドットエスティ
全国1,200店舗を展開するアダストリア社のEC化率は30.1%
EC売上は574億円(2022年2月期)

ECも一定の規模を越えたら、

会員にメリットのある他社製品をプロモーションして、一緒に運ぶ

という動きは今後増えてくかも知れませんね。

この取り組みに関する、日本のアパレルECの中の先行者の一社であるアダストリアが

これからどう商品ラインを広げて行くのかその動向に注目しておきましょう。

最後までお読み頂き、ありがとうございます。

 執筆: ディマンドワークス代表 齊藤孝浩

【参考】ショッピングのデジタルシフトの真っただ中、その先にあるのはどんな未来なのか?10年後のファッション流通の未来を考察しました。

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