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March 31, 2005

ファッション製造小売業(SPA)の先輩から学ぶもの

 やはり触れておかなければならないのは、QRの生まれたアメリカの先輩SPA企業、レス・ウエックスナー氏創業のリミテッドグループでしょう。リミテッドブランズ社は最近では日本でも有名になったアバクロンビー&フィッチやビクトリアズシークレットを生み出した企業グループです。今はGAPグループの方が大きいですが、かつては世界一のファッションリテーラーグループでした。

 彼らのQR活用手法を簡単にご紹介すると、
1.コレクション情報、マーケットリサーチから、これは売れる、と思うものをバイヤーたちがヨーロッパのブティックの店頭で5店舗分買い付けをする。この際、1枚や2枚のサンプル購入ではなく、5店舗の売り場が作れるくらい大量に買う。
2.「リミテッド」のラベルに付け替えて、自分の店で売れるであろう価格をつけてあらかじめ決めているパイロット店舗5店舗で実験販売する。
3.販売結果、反応のよかったものの要素を分析し、即座に海外に仕様書発注。
4.発注した商品は、チャータージェット機まで使い、最長6週間でセンターに入る。
入荷した商品の販売、消化はすこぶるいい、とのことです。

 これらの彼らのSPA手法は、15年前に書かれた 「リミテッド社はなぜ世界最大になれたか」 に詳しく書かれています。

 マーケット分析、顧客分析を通して実験を繰り返す、科学的ファッション手法を体系化した世界のSPA企業のお手本です。日本のSPA企業にも応用できる要素がいっぱいあります。同様の手法は日本に進出しているZARA(ザラ)も使っていますね。ZARAの場合は、実験商品を自分たちで生産できる工場をスペインの本社の敷地内に持っているとのこと。これも強みですね。

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March 30, 2005

ファッションライフサイクル論

 商品の寿命、陳腐化は、経営学的に言うと、プロダクトライフサイクル曲線というもので表現できます。わかりやすく言うと、富士山の形のイメージ。まず、徐々に売れ始め、なだらかな右上がりの線を描きます。頂上(ピーク)に差しかかると、しばらく横ばい、その後、なだらかに右下がりの線になるので「富士山型」と言います。
 ところが、トレンドのスピードが速くなると、セブンイレブンジャパンの鈴木会長の言葉を借りると、茶筒型になります。茶筒というのは、古い言葉なので、「ビル型」と言った方がいいかもしれません。すなわち、売れ筋は一瞬にして売れ、売上はすぐにピークに達します。その後しばらく横ばいになりますが、突然ストーンと急直下、売れなくなる、というわけです。
 そのため、今、売れているものは、飽きの早い生活者にとって、早々に、陳腐なもの、流行遅れのものとなるというもの。そうならないようにするために、お客さんの動向を粒さに観察し、世の中のトレンドとすり併せて次なる商品のチャレンジ(仮説)をし続けなければならない、と言いますが、この考え方はまったく、ファッションにも言えることです。

 明日からは、業界のQR(クイックレスポンス)チャレンジの実践事例に触れて見ます。

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March 29, 2005

ファッション、クイックレスポンスの功罪

 昨日は百貨店アパレルの事例に触れましたが、そもそもクイックレスポンスって何でしょう。
 MJの用語解説の言葉を借りれば、1980年代にアメリカアパレル業界を中心に進んだサプライチェーンマネージメントのひとつ。初期生産量を抑え、シーズン売れ筋商品の機動的な追加投入が可能。在庫リスクを最小限にし、欠品を減らし、生産調達の合理化につながる、とのことです。
 また、ファッションアパレルでクイックとはどれくらいクイックなのでしょうか?
経験的な話になりますが、国内で染色が終わった生地または糸があれば、発注から1-2週間で店頭。 中国でも4週間、韓国だとソウルやプサンで1週間以内も可能です。シブヤ109の著名ブランドの多くがこの韓国のクイックレスポンスを使ったのは有名な話です。
 古い話ですが、アムロがバーバーリーチェックのスカートを履いてTVのインタビューに応えた、とか、アユが・・・を着た、と見るや、2週間くらいでコピー商品が多くの店頭に並ぶのも、普通な話となりました。それがまた実際売れてしまうんですね。同じような商品が多くの店頭に並び、同じ服装をした人々が街にあふれたらどうなるでしょうか・・・

<続きはまた明日>

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March 28, 2005

QR(クイックレスポンス)、アパレル効率生産の罠

 今日の日経流通新聞(MJ)の一面の記事見出しです。興味深い記事なので、今週はこのあたり、を中心にブログを綴っていこうかな、と思います。

 この記事は百貨店アパレルを中心に取材した記事です。アパレルがシーズン中に、売れ筋を見極め、新規発注、追加生産するQR。

このQRがそこそこ定着してきましたが、このQRにとらわれると、売り場で商品の同質化を引き起こし、顧客離れを起こしてしまう。よって、計画生産の比率を高め、独自性を出してゆく百貨店アパレルが増えてきた、という事例の話です。

 残念ながら、百貨店やショッピングセンターで、近隣店舗の売れ筋をそのまま追いかけ生産したら店頭が同質化するのは、あたりまえだと思いました。
 

 情報化が進み、今やファッションアパレル商品の寿命は8週間といわれるスピード。一方、作る側も、日本国内、韓国、上海と生産を使い分け、4-6週間で納品される体制が整ってきました。いつ、何を作ってお店に並べるか?が問われている時代です。

 作り手の計画や勘ではなく、試行錯誤して、顧客心理を読み取った上でこの生産システムを活かしている企業が勝ち組となっていると思います。
 どのように企画して生産するかは企業の個性ですが、その前に、ファンにはどんなお客さんがいて、そのお客さんのどんな気持ちに訴えかけるか?ここらへんをはっきり確信して行えば、QRも絶大な力が発揮できると思うんです。

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March 27, 2005

個人情報保護法施行、企業戦略と顧客満足のギャップ

 この一週間、個人情報保護法について考えてきました。
 
 企業が顧客情報を収集する第一の目的は、DM名簿やチラシ配布などの広告宣伝のようです。 セールや新商品の入荷を告知し、とにかく、お店に足を運んでもらうきっかけをつくるわけです。
 
 一方、顧客側は・・・自分が何かを買いたい時は、むしろ、自分から情報を探し選別する、というスタイルに変わりつつあります。イエローページやインターネットの普及によるところが大きいと思います。 
 例えば、インターネットの検索エンジンで探し、ホームページを見て比較してみる。それでもわからなくて、電話をかければオペレーターが的確に答えてくれる。そして、ネット上から注文したり、店に足を運んで商品を確かめて買う。 これで満足した買物ができたお店が、顧客の心に残り、また、次回買おうと思う。というわけです。
だから、何が重要かというと、
 1.欲しい情報が欲しい時に用意されていること、
 2.期待にそった「お約束」の品揃えがされていること、
 3.さらに、お客さんを一歩リードするトレンドにもとづく情報、品揃え、サービスがあること
だと思います。

 顧客情報の活用のしかたで、上記を実現に取り組むことは、可能ですし、事例も見られるようになりました。
マス広告宣伝発想から、少しきめ細かい顧客満足発想へ、個人情報保護法施行が時代の変化のいいきっかけになればいい、と思います。

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March 25, 2005

顧客満足のために顧客情報をとる

 どんな業界でも、顧客情報を収集することよりも、情報が顧客満足に活かせるか、が大事なことだと思います。そういった意味では、個人情報保護法が施行される今年が、顧客満足のための顧客情報活用元年だと思っています。

 お客さんは期待してお店に行くわけで、せっかく行っても買う商品がなかったり、品切れ、サイズ切れであると、がっかりします。度重なると、そのお店には期待しなくなりますね。もう、行かない、ということです。

 以前、マニュアル本風ではありますが、なかなかいいこと書いてるな、と関心した、営業と接客のケーススタディ本。本の結論は、 「お客さんは、商品やサービスを消費しているときの姿を想像しながら買い物をしている、その気持ちが理解できれば、よい販売員になれる」 ということでした。
 ファッションにあてはめると、確かに、私たちも、それを着用した時の「自分の姿を想像して商品を選んでいます。 その姿を想像できない、実現できない、あるいは、反対に失望させるお店は、言うまでもなく、お客さんの心のリストから外されるわけです。

 名前や住所やEメールアドレスなどの名簿を作ってDMを送るためではなくて、お客さんが望んでいることがわかり、それが品揃え商品、サービスに活かせるような情報の取り方を考えたいです。そして、お客さんの姿を想像して、こうしたら、よろこんでもらえるかな、と大好きな人にどんなプレゼントをあげる時のように仮説を立ててみるのです。

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March 24, 2005

ファッション流通におけるポイントカードって

購買頻度が高い、換金率が高いのが、ポイントカードのメリットとすると、
果たして、ファッションで、ポイントカードは有効なのであろうか?と考えたりします。
人にもよりますが、購買頻度って、1シーズンに1回、年4回くらいが平均ではないか、と思います。

自分にあったブランドを決めていて、毎シーズンそのブランドを買う、という人にはよいでしょう。また、OOO百貨店やパルコのような、商業集積で、いろいろな商品が選べて買えるというのもいいでしょう。
この2つの例の共通点は、お客さんがあてにしている商品が高確率である、ということです。また、ファッション商品は、気に入った商品、デザイン、カラー、サイズが揃って初めて購入が成立するものですよね。どんなに、いい雰囲気のお店でも、どんなにスタッフの接客が上手でも、どんなに割引セールをしていても、ポイント換金率が高くても、ブルーが欲しいのに、パープルを買うでしょうか?違うサイズを買うでしょうか?

昨日、あるシステム系の企業の人と話をしました。ポイントカードを導入して、顧客分析をして、的中率の高いDMやメールを、というご提案です。システムそのものはすばらしいものでした。しかし、せっかくお客さんを店舗に誘導できても、買うものがなかったら、がっかりしてお帰りになるかもしれない。
ですから、顧客管理(CRM)も販売促進の視点から考える前に、まずは、お客さんに喜ばれるだろう品揃えの視点から考えるのが先ではないか、と思ったものです。

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March 23, 2005

ポイントカードを考える

日経MJの調査によると、よく利用するポイントカードの枚数が、5枚以上ある人が全体の40.1 %を占め、2-4種類でも38.7 % と、2種類以上をよく使っている人が全体の約80%を占めるとのことです。 
業種別に見ると、上位は、スーパー、家電量販店でそれぞれ1/3づつ、残りの1/3がその他、というところだそうです。

 自分の財布をよくよく見てみました。仕事柄、CRMも関係しているということもあるのですが、銀行キャッシュカード、クレジットカード以外に17種類も入っており、そのうち、よく使うのは、7種類あります(スーパー、家電、レコード、アパレル、飲食、床屋などなど)いつも小遣いがない割には、どおりで財布が厚かったわけですね。

 利用するメリット上位としては、換金性が高いこと57%、ポイントがたまりやすいこと56%、有効期限が長い30%、制度のわかりやすさ28%・・・ 圧倒的に「たまりやすくて、買い物に使える」、ということがメリットとして認知されているようです。これは納得。 

 いつもポイントカードで思うのは、共通カードがあれば、持ち歩く枚数が少なくなるとともに、ためたポイントが他の店でキャッシュのように使えたらいいな、と思います。
 アメリカでは、スーパー、ドラッグストア、銀行、クレジットカード、航空会社、専門店などのアライアンス共通カードがありました。 日本でも、マイレイジポイントがエディに交換できたり、ポイント相互交換のサービスが始まりましたが、なかなか企業の利害関係で、顧客の使い勝手とはならないのが現実です。

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March 22, 2005

個人情報保護法とファッション流通顧客管理(CRM)

 いよいよ個人情報保護法施行まで10日を切りました。
新聞、インターネット、メディアでは、どうしたら、規則に沿うかの企業側の法律対策テクニック論が多く、本来の顧客対策の本質を論じている内容が少ないのが残念です。

 ファッション含め、多くの小売流通企業がポイントカードという形でCRMを行っていますから、もちろん、今回の法律施行は、業界企業にとって他人ごとではありません。

 ポイントカードについて、サービス内容は、企業によっていろいろですが、日本とポイントカードの先輩アメリカでは、その目的が違っています。
 アメリカでは、もともと、企業が顧客購買情報を分析するために、顧客が情報を提供するのと引き換えにポイント特典が提供される、というのが通例。そして、その情報を元に、企業側からお客さんの嗜好にあったサービスや情報が提供されるのです。法律に厳しいアメリカでは、目的、手段、対策が取られているのは、いうまでもありません。
 一方、日本では、もっぱら他社との割引合戦目的に使っています。ですから、分析や対策を行わないのに、不用意に顧客情報だけを入手したりしていることも多く見受けられます。
今回の法令はこのあたりに対する警鐘でもあるわけです。

 これをチャンスと見て、アメリカのように、積極的に取り組むか?危険とみなして逃げ出すか? どちらでもやりようはあります。小売業が年々ジリ貧となるなかで、小売業がよりお客さん寄りにかんがえるいい機会だと思います。 
今週は、元小売業のCRM責任者として、ポイントカードや顧客対策関係でブログを綴ってみたいと思います。

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March 20, 2005

ライブドアのメディア戦略とファッション流通

 やはり毎日目を話せないニュースが、ライブドアによるニッポン放送、フジテレビ買収劇ですね。
基本的には、新世代代表として、堀江氏を応援してはいます。 資本主義のしくみをつかって、巨額にモノを言わせて何かを動かすことは、場合によっては、悪いことだとも思いません。 しかし、買収することが目的に見えてしまい、なかなか買収後の具体的な戦略が見えてこないのが、ちょっと、というのが、多くの方の本音ではないでしょうか?

 しかし、ライブドアがなかなか具体的戦略を明示しない中で、ひとつ、堀江氏がファッション流通に関連した案を提示したことがあります。それは、テレビでタレントが着用したファッションをオンデマンドで、通販で買えるしくみを作りたい、と言っていたことです。
 人気の有名人が着用した服を欲しがるという顧客心理に訴える販売促進は、最も高い成功実績のあるファッション業界のしかけです。 以前はアムロ、息の長いキムタク、アユを筆頭に、ここんとこ、セレブのヒルトン姉妹であったり、彼ら彼女らが着用したブランド、商品は、すぐに品切れを起し、その後、二次マーケット(その商品のトレンド要素をもった廉価な商品開発)に波及するものです。
 
 今のところ、タレントのスタイリストとファッションアパレルメーカーが個々につながることによって、テレビや雑誌で行われているしかけです。アメリカでは、スタイリストたちが組織的にサイトで通販を行っている事例を知っています。しかし、これがフジテレビなどというマスメディアぐるみで行われると、ものすごいビジネスチャンスが産まれそうですね。
 

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March 18, 2005

ファッション小売でも活かされるトヨタのカンバン方式

 競合店が既存店前年割れに苦しむチェーンストアの中で、あるジーンズ専門店は、ジーンズのカンバン方式で業績を伸ばしています。

 一般的にジーンズやシューズは、品番あたりのサイズが多く、単価の高い商品です。顧客の期待に応えるためには、必然的に在庫が膨れ上がってしまい、効率が低いため、企業の資金繰りを圧迫する頭の痛い商品群でした。
 それに対し、このチェーン店では、店別のジーンズの商品回転を分析して、最低限の店別在庫計画を作成、一方、サイズ切れによる顧客離れ、売り逃しを防ぐために、1本売れたら、翌日に1本補充するメーカーの協力と物流を整備しました。
 結果として、全体の在庫が大幅に削減されたにもかかわらず、機会損失を減らし、顧客満足を上げ、売上を上げました。まさしく、ジャストインタイム、トヨタのカンバン方式です。

 その昔、私がシューズバイヤーだったころも、同様の手法(仕入れとセンター物流の活用と店間移動の併用)で店舗ごとのサイズ切れを減らし、お客さんや店舗スタッフに喜ばれ、見事業績に貢献することができました。

 ファッション流通業界では、売り逃しを避けるために、店舗在庫が過多になったり、一方、売れ筋は逆に欠品してしまって、売り場の魅力がなくなり、その割には店員の商品管理作業が忙しくなり、笑顔も消え、顧客離れを起こすことが多いです。どんぶり勘定の「つけ」ですね。
 上記のチェーン店のように、システムを使って上手に商品管理をすれば、資金繰りだけでなく、品切れなし、という顧客満足を実現することによって、業績も向上するものです。ここにも、異業種の英知を活かした、企業戦略がありました。

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March 17, 2005

ファッションストア運営最大の課題-店長育成

今日の日経新聞に06年の各企業新卒採用計画が出ていました。軒並み、特に流通系も含めて、採用枠を前年実績に対して増やしている企業が多いようです。背景としては、2007年から団塊の世代の大量退職が始まるとのことで、学生側の売り手市場へ対応する準備も始まったようです。
さて、ファッション流通では、アルバイトで優秀だったスタッフを社員登用することが一般的になっており、新卒採用というのは、近年控える企業が増えています。人件費管理と短期即戦力を重視しての合理的な判断ではあります。
ところが、今、もっとも勢いのある、あるレディース専門店チェーンでは、大卒採用を増やしています。これは、年間100店舗近い大量出店に対応し、短期間で店長を作らなければならないという事情があります。大卒採用者を入社早々店長候補として、各店舗に送り込み、研修と店長育成専属スタッフによるOJTで半年間一緒に働き、頭と体の両方で短期間のうちに覚えこませる「しくみ」をつくっているとのことです。
しくみができていて、中期的な視点にたったら、こっちの方が有効かもと、思いました。
ファッションストアでは、店長の力量が売上を左右するもっとも大きな要因のひとつです。しかしながら、販売員接客教育はやるものの、将来企業を背負って立ついわゆるコア人材の育成に手をつけている企業は少ないのが現実です。地に足が着いた企業も出てきたのだな、と関心したものです。

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March 16, 2005

最近、“プラス”業態増えてますが・・・ファッションの隙間

最近OOOO・プラスという名前の新業態開発が増えています。
ユニクロ、ワタミ、ダイソーなど、プラスの名の下に従来の低価格ではない商品を増やし、量販ではなく、質販にチャレンジをしていますね。

アメリカでは、プラスのつく業態、GAPグループのオールドネイビーがウーマンズ・プラスという、体格のよい(プラスサイズ)女性向けの品揃えが通販で評判がよく、大型店を中心に販売を拡大しているとのことです。もともと SPAの本家本元リミテッド社にも大きめサイズの業態はあるし、ヤングストリートカジュアルのホットトピックス社も同客層に特化した業態があり、拡大中です。

日本でも体格のいい人、小柄の人が自分たちのサイズを手に入れるのには、なかなか苦労をされているようです。M,L 2サイズがあたりまえ、ヤングレディースについては、Fサイズ 1サイズも少なくありません。

 以前、小売チェーンで、ネットサイトのカスタマーサービスの責任者を兼務していた時、お客様からの問い合わせでもっとも多かったのが、この大きいサイズと小さいサイズの品揃えについてでした。そういったお客様は自分の服を探すのに苦労して購入されているのです。一方、バイヤーに言わせると、期末に在庫が残って効率が悪い、というのです。
 そこで、商品を絞り込みはしましたが、小さいサイズと大きいサイズの品揃えを実験的に始めました。店頭ベースですが、POPなどで告知をしました。結果は良好でした。実際このサイズの売上構成は10-15%強にしかすぎませんでしたが、このご時勢に10%上がるとは、そして、より多くのお客様に喜んでいただけたのが、なによりでした。
要は、仮説検証して、適度にやればいい話なのですが、なかなか、一般的には効率が悪い、で済ましてしまうのが多いようです。
 ユニクロがXSサイズやXXLサイズの品揃えをアピールしているのは、非常に面白い販売促進だと思っています。
今、流行のジュニア服を買いまわっている女性も多いようです。日本でも、もちろんファッショナブルなのが前提ですが、特に、小さいサイズの女性向けブランドがもっとあってもいいのではないか、と思いますね。

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March 15, 2005

POSの可能性が流通再生を救う

 今日の日経新聞にダイエー再生のキーを果たすといわれているスーパー、マルエツのPOSレジに関する記事が出ていましたので興味深く読みました。
コンビニではかなり前から行っていますが、精算時に顧客の性別・年齢(客層)を入力して行う客層ごとの商品分析を、実験段階から全店規模で実施に移すとのことです。これは、営業時間延長の中で時間帯別の購買客層が違うため、これに対応するための品揃えの見直しを行う、というものです。同社によると、スーパーの昼間の中心客層はいわずと知れた主婦、ところが、夕方から夜にかけては働く女性、夜に至っては6割が男性だということです。
この政策は顧客満足に応えるPOSの使い方のひとつで、実は、ファッションを扱ってる私が関与した企業でも実績があります。実績というか、非常に有効でした。
 実は、商品売上だけにフォーカスしたPOSデータの分析、単品管理には落とし穴があります。今、売れているものだけを肯定し、売れているものの品揃えを増やすとします。しばらく売上は上がります。しかし、それにかまけている間に本来、その店が好きで、そこそこ高くて、よいもの(これは実は企業にとって粗利率も高いのですが)を買っていた常連さん(上客さん、と呼びます)向けの品揃えが薄くなり、客離れを起こしてしまいます。そうすると、いわゆる売れ筋が切れたとたんに売上は落ち込みます。蓋を開けてみると、以前と客層が変わっていたりします。
ですから、バランスをもった品揃えを維持するのに、商品x客層分析は大切なのです。 同じような事例で客離れを起こした話をホームセンター関係の方からも聞きました。
 百貨店で実験中のICタグももちろん大事です。ですが、それ以前に、高い投資をするまえに、既存システムを活用した、顧客満足を追求したの使い方は、まだまだあるんじゃないでしょうか。

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March 14, 2005

ICタグはファッション流通を変えられるか?

 先日、業界新聞でICタグの導入実験レポートの記事が出ていました(繊研新聞3月10日付)。
これは、経済産業省の依頼を受けて、上智大学の先生が委員長になっている委員会が百貨店でやっている実験です。
 結果、コスト削減効果はアパレルで売上高の0.32%分、靴で0.05%分。それぞれ金額に直すとアパレルで99億円、靴で9400万円だそうです。売上増効果は靴のみ11%増という結果が出たそうです(年間売り上げに直すと全百貨店ベースで203億円増)。これは金額だけみるとすごいですね。
 但し、業界事情からすると、ICタグを導入するか、どうか以前に、従来、百貨店は専門店、量販店に比べ、委託販売、派遣社員という取引形態をとっているため、情報システムの活用は非常に遅れています。
 百貨店という高級な雰囲気に期待膨らませ、買い物に行って、「これのこの色のこのサイズ」ありませんか?という質問を店員にして、どれだけ待たされ、終いには「申し訳ありません」と言われたことか。靴の専門店も同じような経験が多いですね。
 今回のICタグの実験では、お客さんが自分で在庫検索できる装置もあるということなので、聞くストレス、待つストレスもなくなるので、特に、サイズが多い靴で売上が上がるのは想像に難くないです。
 カラーサイズの多いファッション業界では、お客さんが欲しいカラーサイズがお店になくてがっかりすることが多いです。でも実は、在庫があるのに見つからなかったり、どこか他のお店にあったり、することが多いのです。売り手からすると「売り逃し」です。そんな、お客さんの期待(デマンド)と商品在庫(サプライ)を結びつけること。実は、これが「顧客満足」の第一歩だと思うんですよね。
 ICタグはあくまでも道具(ツール)だと思いますので、活用・運用の方がいかに大事か、を改めて感じます。

 

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March 13, 2005

そもそも顧客満足とは

今週、学生時代のお友達で、現在、生活や消費関連の本なども出筆してる方と会って、ランチをしながら、そもそも顧客満足とは、なんていう話をしました。

アメリカ流の顧客満足(CS)を見習って、日本の小売業界でも、「お客様のためには」、「顧客第一主義」が口にされます。果たして、CSは現場ではどのように解釈され、実践されているのでしょうか。また、お客さんの声を聞いてそのとおりにすることが本当によいことなのか?と考えてみました。

「顧客のために」、とは言うな、「顧客の立場で考える」と言わせている。先日読んだ「本当のようなウソを見抜く」の中のセブンイレブンの鈴木敏文さんの言葉。なぜなら、「顧客のために」、というと、社員が、過去の経験から、顧客とはこういうもの、と売り手の都合で勝手に考えてしまうから、とのことでした。

また、本場アメリカにしても、たとえばリターンポリシー(どんな事情でも顧客からの返品を受け付ける)やクレーム対応にしても、顧客の声を聞くチャンスとして、小売企業ではあたりまえのように対応してくれますが、実際、スタッフの態度は事務処理的にしか感じられないケースが多いです。苦情を素直に受け入れ、お詫びの印にこれを、というちょっとびっくりするサービスが提供されたりしますが、そうすれば顧客は喜ぶであろう、マニュアルにあるからそうするわけで、心がこもっているとは思えないのです。「そうじゃなくって・・・」と思ってしまいます。お客さんが本当はどういう気持ちでいるのか、と考えられているのでしょうか?と疑問です。

「顧客満足」は企業論理の都合のよい言葉として、一人歩きしてしまっている ようです。

普段は自分が顧客として、何かを感じているのに、逆の立場になると、それを忘れてしまっている。最高のサービスを提供するためには、まず、自分が妥協を許さない顧客であること。とはCSで尊敬するべッツィーサンダースさんの言葉。

ってことで、私たちは、どんなことをお店に期待しているか考えてみました。

1.都合のよい場所で、時間にお店がやっていること
2.売りきれがないこと
3.期待どおり、またはそれより安い価格
4.探しているものがすぐに見つかる
5.買うものが漠然としていても、そこに行けば何かが見つかる
6.聞きたいときに手助けしてくれる、教えてくれる店員がいる
7.待たされない(手際よい対応)
8.そこに行けば情報が得られる
9.その店に行くと楽しい(鮮度、活気)
10.そこで買ったことが恥じにならない、よかったと人に話せる

基本的なことのようですが、どれかひとつでも、しくみや制度として徹底できているお店はけっして多くないようです。このいくつかを実現して、お客さんの心の中に刻み込まれたら、口で言わなくても顧客満足(CS)店のひとつになるのでは、と思います。

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March 11, 2005

ダイエーのゆくえ

 業界最大の再生案件は今週、商社の丸紅グループにゆだねられることになりましたが、残念ながら、同グループが600億円を出資して、年間700億円の商権を守ったという風にしか感じられませんでした。キアコンの沢田さんがやってくれたら、なにかありそうだな、と思っていましたが、産業再生機構が主導ではなかなか難しいでしょうね。

 そもそもダイエー、イトーヨーカドー、イオン(ジャスコ)、西友などGMS(ジェネラルマーチャンダイジングストア)は、アメリカのマス流通を見習って作られた、供給側の論理、チェーンストア理論に基づくビジネスモデルの典型的な業態ですね。最近は機能しづらい業態であるのは言うまでもなく、各社脱却の道はそれぞれです。
 イオンはショッピングセンターのデベロッパーとしての家賃収入に活路を求めているようです。西友はウォールマートの傘下で低価格路線を打ち出していますが、EDLPのやり方、手順に問題を感じます。一方、イトーヨーカ堂は、価格に走らず、あえて自主的な商品の品揃えにチャレンジして、デザイナーブランドを立ち上げたり、元伊勢丹の藤巻さんを起用して商品MDを構築しようとしています。実は、イトーヨーカ堂のチャレンジは楽しみにしているのですが、でもどれも、「不動産」、「価格」、「商品」といった、昔からある「単一発想」「20世紀モード」の延長線上に見えて仕方がありません。
 イトーヨーカ堂が苦戦しているのに、同グループのセブンイレブンがうまく行っているのは、なぜか考えてみました。セブンイレブンが売っているのは、24時間営業という「時間」であったり一日5回のジャストインタイム「物流」であったり、「本物」を追求した商品開発へのチャレンジであったりします。だから鈴木さんもキーワードのないイトーヨーカ堂の再生に手を焼いているのでは、と思います。
 さて、ダイエーは?オーソドックスにただの食品スーパーになってしまうのか?だとしたら結果は目に見えています。 成熟した消費者=生活者が納得して、関心して、感動する「商品」「価格」以外の新しいキーワードをつくり売ることができるでしょうか? 
次回は新しいキーワードについて考えて見ます。

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ファッション系流通業界専門家ブログ始めます

はじめましてよろしくお願いします。
タイトルだけ作って準備していたところ早くも数件のアクセスが・・・
ブログってすごいですね。

ファッション業界の裏方として国内・海外飛び回って18年。
当ブログでは、ファッション業界、小売流通業界のニュースや話題を、業界舞台裏からの視点と一般生活者の視点の両方で感じたことを綴って行こうと思います。

GAP、ZARA、ウォールマートに続いて、これから多くのつわもの外資系リテーラーが次々と日本に参入して来ます。まさしく黒船来襲です。その時、迎え撃つ日本のファッションリテーラーは・・・

テーマは「21世紀型顧客満足のためにファッションリテーラーが取り組むべきこと」、とちょっと大上段に。

どうぞよろしくお願いいたします。

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