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May 11, 2005

ZARA(ザラ)の「すべてを自前で抱える強み」

 余剰な設備、材料は持たない、流通段階で各パートナーがリスクを分散して持つのが、SCM(サプライチェーンマネージメント)の定石。 ところが、ZARA(ザラ)の場合は、その逆を行っていると言えます。
 できるだけ自前で抱えて、コントロール下に置く。需要がブレても同じリズムで発注~生産~配送を行うしくみと整える。それが、同社がもっとも大事にする、顧客の需要に対する「スピード」と社内情報共有の「リアルタイム性」を実現する「答え」と考えています。

 サプライチェーンで顧客の需要(川下)から生産原料(川上)まで役割分担するパートナーが増えると、いわゆるブルウィップ効果が起き、過剰在庫の原因となります。このブルウィップ効果とは、極端な例ですが、実際の10の店頭需要情報に対し、発注担当者がもっと売れるだろうと、12を発注し、それを受けたメーカーの営業マンがさらに売れるだろうと、生産工場に15で伝える、生産工場も切らしたらいけないと、20生産できる材料を調達してしまい、流通段階には、10の余剰在庫が発生してしまう、という話です。それぞれが、余剰在庫ロスを負担しますが、当然、そのロスは、各企業の利益を圧迫するか、転嫁されて、最終的に消費者にしわ寄せが行きます。
 
 こういった流通段階の余剰在庫を排除するために、店頭での売り切れをむしろ奨励し、(顧客は売り切れる前に買わねば、と思うし、売り切れても他の商品を買ってくれる、と考える)、需要があるものだけを週2回の発注、多品種小ロット短サイクル生産(15日)を行い、物流センターをハンガー納品で出てから、ヨーロッパで24時間、アメリカで48時間、日本で72時間で店頭に並べる体制を整えているわけです。

 この体制を維持するために、実際、余剰人員、余剰設備、低い稼動率と思われる状況を容認します。 むしろ、その体制により、店頭の鮮度が保て、商品回転が高まり、キャッシュフローが向上し、不良在庫ロスが極めて少なくなるため、余剰と思われる経費を十分吸収してもあまりある利益が出るということです。 事実、自前の設備を一切もたないGAPやH&Mよりも高い利益率、商品消化率を上げているというデータも出ているそうです。

 これらの記事を読んでいて、これはある意味、ファッションSPA(製造小売業)として、世界の一等地に店舗を構え、ファッションという高回転の商品を扱う「小売業のキャッシュフロー」に裏打ちされたしくみであって、どんなにすばらしいメーカー、例えZARA(ザラ)の工場の生産システムを指導したトヨタ自動車自身でも実現できる話ではないな、と思いました。まさに究極のSPA、SCMと言えます。

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