ワールド株式非公開化と今後の展開
アパレル製造小売大手ワールドは2200億円規模のMBOによるTOBを実施し、株式非公開化を行うと発表しました。資金は銀行から調達し、オーナーが保有する会社が株式を買い取る形。
目的は
・買収リスクの回避
・目まぐるしいファッションの変化に対応するために大きな意識決定を迅速に行うため。
・短期利益よりも長期企業価値を追求するため。M&Aを含めた製造側に対する長期投資戦略を実施
などが記事、社長インタビューからのキーワードです。
ファッション業界に限らず、日本で優良企業が非公開化するのはまれなケースとのこと、以前、当ブログでアメリカの優良高級百貨店ニーマンマーカスがファンドに身売りをして非公開させた事例は紹介しましたが、理由は同じ、柔軟で変化対応できる自由な経営です。 >>>ニーマンマーカス関連記事
ワールドは専門店むけアパレル卸として拡大しましたが、90年代初めに小売事業に進出し、ブランド開発・買収、主導権をもって百貨店をコントロールし、SC出店ブームに乗り、常にアパレルビジネスの先端を行き、今や80%が小売による売り上げ。SPAとしてワンマン経営、アウトソーシングに頼らない自前主義で有名で、情報流出防止にも伝説があるくらい気を使い、社内にノウハウを蓄積して来ました。オペークやフラクサスなどの業態開発では業界の群を抜く実験の実行力とモノにするパワーを感じます。
今回のニュースを聞いて、ワールドらしいなと思いました。流通の川中から始まって川下を抑え、これから川上(生産サイド)を抑えにかかるわけですね。目指すはスペインのZARA(ザラ)のような完全自己完結型のSPA(製造小売業)なのでしょうか。ワールドが自前でZARAのラ・コルニャの本社工場のような生産、物流拠点を上海に作ったらおもしろい!ぜひ、2週間生産、24時間デリバリーをワールドに実現してもらいたいと思います。>>>ZARA関連記事
余談ですが、ワールドを追いかけてきたアパレル大手、サンエーインターナショナルの東証一部くらがえが発表された次の日のワールド非公開化発表をちょっと興味深く受取った業界関係者は私だけでしょうか?
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Comments
さすがにご専門分野らしく、ほんとうに興味深く読ませて頂きました。卸からSPAへの思い切った転換といい、今回の決断といい、大胆な経営を展開をされる寺井社長はほんとうに個性的ですね。
Posted by: 大西 宏 | July 27, 2005 05:42 PM
ファッション業界は自分の好きな服のブランドとユニクロのような量販店の形式の店しか知らないので、このような業界ネタは大変興味があります。
ワールドの記事も自分とは全く違う観点で書いているので、とても面白かったです。
ブックマークさせていただきました。たまによらせて頂きます。
よかったら自分のブログもたまにいらしてください。
Posted by: もぐすけ | July 27, 2005 09:47 PM
こんにちは!ご無沙汰致しております。
トラックバック有難うございました。
鋭いコメント、興味深く読ませて頂きました。
「ZARA」のラ・コルニャの事例を引合いに出されるとはさすが、です。
川上への投資は、恐らく繊維ファッションをあまりご存知ない方には理解されにくい部分だと思います。私もワールドさんが生産面で今後どのような手を打っていかれるのか注視しております。
Posted by: 両国さくら | July 28, 2005 12:03 AM
いろいろコメントありがとうございます。
ワールドさんはファッションセンス、開発力、営業力といった勝ち組アパレル皆さんがもっていらっしゃる攻めの力に加えて、ビジネスを科学する守りの部分も持ち合わせていらっしゃる会社だと思います。その原動力は、専門店に対するコンサルティング営業力を基盤に、オゾックをきっかけに92年に小売に進出し、ノウハウを蓄積してきた賜物、そして畑崎会長、寺井社長のリーダーシップなのでしょう。
企画製造・営業力から小売のテクノロジー、ビジネスロジックをものにしてきた同社なら、生産サイドのリスクマネージメントはさほど問題ではないかと・・・なんせ、日本は世界に冠たる製造業立国、ベンチマークするノウハウはたくさんありますからね。海外から次々と進出するSPAに負けないビジネスモデルを構築していただきたいと思います。
Posted by: taka | July 28, 2005 11:53 AM