ウォルマートを侮るなかれ
6日付け日経新聞の米ウォルマートCEOリー・スコット氏のインタビュー記事を読みました。
ご存知のように、同社は02年に西友に資本参加をし、現在42%の出資比率で実質主導権を握ります。その西友の05年12月期決算は4期連続の最終赤字となる見通しです。しかし、同氏に焦りは感じられず、ダイエーを含めた更なる日本へ投資への意欲満々です。
資本参加した後、ウォルマートの西友へのてこ入れの「一部」がマスコミからアメリカ流の「エブリディロープライス(EDLP)」と称され、業績が上がらない西友に対して、「日本ではEDLPは通用しない」と報道されました。
日本の消費者はEDLPよりチラシの特価を望んでいる、と結論づけられ、西友も日替わり目玉商品のチラシ掲載を再開した(昔に戻した)のです。
アメリカのウォルマートで何回か買い物をした人ならお気づきだと思いますが、今回西友で行われたEDLPと称される商法は、アメリカのそれのほんの一部に過ぎません。それも、もっとも特徴的な部分は実践されていないように見受けられます。
1年ほどアメリカ、カリフォルニア州に滞在し、実際、生活者の視点で見たウォルマートを整理するとこうです。
1.ウォルマートは、大手メーカーと組んで、メーカーブランド商品
(NB=ナショナルブランド)をいつも安く売っています。
2.ウォルマートは、有名ブランドをモノポリーして自社オリジナルブランド
(NPB=ナショナルプライベートブランド)として中国などで安く生産し、
安く販売しています。
3.ウォルマートは、日曜日に特売のチラシを出しています。アメリカでは、
スーパー、ディスカウンター、カテゴリーキラーがEDLPを行うと同時に、
日曜日の新聞にのみ冊子のような割引クーポンを中心とした日本で言う
特売チラシにあたるものを配布しています。クーポンとメンバーカードを併用すると
ものすごく安く買える時があります。
アメリカのディスカウンターのEDLPとは、おなじみのブランド品がいつも安く販売されていて、生活者は「最低限の品質」の保証と「他店で買うより高くはない」と安心してお買い物ができるシステムなのです。なおかつ、期間限定でさらなる目玉商品もあります。
アメリカ流EDLPの本質は「お客様との価格のお約束」です。メーカーを泣かせて一時的な集客のための目玉商品を作ったり、割引を演出するために最初は高く値段をつけておいて、数週間後から20%OFFや半額セールにする日本流セールのことではありません。
私の想像ですが、ウォルマートは、西友でのナショナルブランドについても本当のアメリカ流のEDLPを検討したと思います。ところが、アメリカには存在しないメーカーと小売の間に入っている問屋さんや、他のGMSの圧力に負けたメーカー・問屋をコントロールすることができず、また、アメリカ並みの経費率の低さが伴わなかったため、実現できず、できるところから断片的に実行に移してみたのではないか、と思っています。
ウォルマートが西友改革に時間がかかっている様は、むしろ自由競争を妨げ、生活者にしわ寄せを負わせている日本の商慣習に問題あり、と見るべきです。ところで、カルフールは失敗しましたが、トイザラズは業界慣習を変えました。
もっとも世界一の彼らのことですから、まだ世界戦略の実験の一部としか思っていないのではないでしょうか。
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