ユニクロはどこへ行く
もともと、ファッション流通でも、記事に事欠かない企業ではありますが、今週ほど毎日ユニクロの記事を目にした週は記憶にありません。日経新聞、日経MJ、繊研新聞、日経ビジネス・・・これからのユニクロの方向性、着手した改革についての特集でいっぱいでした。
柳井会長が社長を兼務し、早速着手した改革の中でもっとも注目すべきなのは、
ファッション性の追求とMD(マーチャンダイジング)サイクルの短縮です。
その背景には、ユニクロがライバル視する世界の大手ファッションSPA小売業に対する焦燥があります。
ユニクロよりも売上高をあげている世界のSPAは5社。ご存知GAP(米)、リミテッドブランズ(米)、へネス&モーリッツ=H&M(スウェーデン)、ZARA(ザラ)を展開するインディテックス(スペイン)、ゼビオが日本のパートナーであるネクスト=NEXT(英)です。
アメリカのGAP、リミテッドの上位2社は既に年商1兆円を越えており、柳井会長の2010年売上高1兆円構想の発端は、ここにあると見られます。ところが、3位、4位の両社も9千億円、8千億円級の企業であり、なおかつ、成長が失速してきた上位2社に対して、両社とも毎年20%前後の成長をしていまから、H&Mがリミテッドを抜くのは時間の問題ではないか、とも見られます。まさしく世界では、ファッションSPAの世代交代が起ころうとしているわけです。
このファッションSPA第1世代であるGAP、リミテッドと、第2世代と呼ばれるH&MとZARAの違いは、ひと言でいうと、前者がベーシック商品の計画生産、後者がファッション性商品の短サイクル生産です。後者は欧米コレクション並のトレンドデザインをシーズンに遅れることなく、低価格で販売することを武器にしています。
これで、ユニクロがやろうとしていることの世界的な背景をわかっていただけたかと思います。
ユニクロの具体策は、
1. ファッション性の高い商品の実験販売スタート
先にユニクロブラスとして出店した大型店(心斎橋、くずはモール、武蔵境)での短サイクルトレンドファッション商品の実験販売。通常ユニクロが1年かけていた企画生産店頭販売サイクルを3ヶ月で行い、売り切りごめんで追加はせずに次から次へと新商品を投入します。
今後、ファッション商品の拡販にあたってのデザイナー集団は今、伊勢丹、米国ポロラルフローレン社、バーグドルフグッドマンなどでご活躍された日本のファッション業界の逸材、勝田さんが国境を越えて組織中です。
2. 百貨店への出店
先月末、東武百貨店池袋店に出店しました。これは、東武百貨店のお客さんアンケートで、ベーシックでこなれた価格の品揃えを要望されていたのと、ユニクロがファッション性アイテムを開発するため、百貨店立地に出店を希望していたという利害が一致した結果とのこと。また、契約では、ユニクロを限定していないため、セオリーやコトニエ他、M&Aで傘下におさめた業態を組み合わせて「ファストリワールド」を作る可能性もあると東武側は期待しているようです。
世界の背景と、それに対する対策はとても理解できます。それを実行するに値する人材を集め放題の企業力にも羨ましいものがあります。しかし、「ユニクロ」が顧客マーケットの中で築き上げた「日本のGAP」のポジショニングは?「ユニクロ」の名前でファッションをやることの功罪は?きちっと仮説検証をしないと。GAPがアメリカで何度か踏んだ轍に気をつけていただきたいと思います。
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Posted by: ブログ・ヘッドライン | October 04, 2005 10:52 PM