ファストファッションの挑戦状
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すぐに出される食事をファストフード(ファーストフード)と言いますが、「ファストファッション」という言葉を聞いたことがありますか?
このブログでもよく話題にする、ZARA(ザラ)やH&M(エッチアンドエム)が「ファストファッション」にあたります。つまり、コレクションブランドのトレンドをシーズンに遅れることなく、リアルタイムに、なおかつ多品種少量高頻度生産と低価格でマーケットに送り出されるファッションです。彼らの登場で、生活者は、ファッションを使い捨て、と割り切ります。今や、彼らのマーケットでの存在と影響は、グッチなどの老舗ブランドの商品投入スピードを早めさせ、H&Mはカールラガーフェルドやステラマッカートニーにもその現実を認めさせ、別注をデザインさせるほどになっています。
先週発売のNEWSWEEK(10月19日号)に、ついにこの「ファストファッション」の担い手が欧州コレクションに登場して話題をよんでいるとの記事がありました。それは、イギリス最大のリテールチェーングループ、アルカディアグループのTOPSHOP(トップショップ)です。メンズ版がTOPMANになります。
遅ればせながら、えっ、と思って、ネット検索で詳細を調べたところ、TOPSHOPは、確かに、今年9月の06年春夏向けロンドンファッションウィークに、ウィメンズでTOPSHOP UNIQUEというブランド(デザインはNick Passmore)とメンズではTOPMAN DESIGNというブランドで登場しています。さらに、その前年には、その布石として、TOPSHOPがスポンサーになったデザイナーコンテストからロンドンファッションウィークに6人が登場していた模様です。
イギリスのTOPSHOPは、ヤングレディース&メンズストリートファッションのSPAで、スペインのZARA、スウェーデンのH&Mと並んで、欧州ファストファッションSPAの雄の一角にあります。まだ、イギリスドメスティックなため、イギリスに行ったことのある方しかご存知ないかもしれませんが、ロンドンのヤングファッションのトレンドセッター的位置づけにまでなっています。
実は、TOPSHOPは、私のロンドン定点観測の重要な場所でもあります。この店が仕掛けた商品がロンドンのストリートのトレンドを左右するといいます。
初めてTOPSHOPを訪れたのは、2001年春。ロンドンで一番のファッションの中心地、オックスフォードサーカス(=銀座4丁目、原宿表参道x明治通り、渋谷ハチ公前より大きく、人の密集する交差点)の一角にあり、ベネトンメガストア、ナイキメガストア、H&Mメガストアととともに火花を散らすように位置しています。
TOPSHOPメガストアに足を立ち入れた時、度肝を抜かれたのを今でも覚えています。地上2階、地下3階からなるメガストアーは、世界最大級の規模で(おそらく本当に世界最大のファッションストアだと思います)、大モニターにUK ヒットチャートのプロモ映像が流れ、胸に響く音量のBGM、エスカレーターで地下に降りていく、そして2階に上がって行くファッションフリークたちもファッションモデルさながらの演出の一部。KANGOL・LONSDALE・・・などのその時の旬なナショナルブランドも取り入れてはいますが、大方プライベートブランドで、テイスト別にくくられており、古着あり、シューズあり、雑貨あり、化粧品あり、カフェあり、サロンあり、イベント会場あり・・・TOPSHOP自身がこれぞロンドンストリートファッショントレンド発信基地とばかり、ファッションビルを構成しているようなストアであり、平日にも関わらず(春休みではありましたが)、ものすごい人が出入りしておりました。
「市場のどのレベルでも、消費者は小売業に対し、迅速な反応と目新しさを求めている」とは、アルカディアグループのオーナー、フィリップ・グリーン氏の同誌インタビューでの言葉。
3年くらい前、ロンドンで、イギリスのファッション業界の人と議論したことがあります。「ZARA、H&M、TOPSHOP・・・あんな物まねで安っぽいものを作ったって、本物でなければ長続きしないさ」という彼に、それらのSPAの店舗で買い物をするお客さんたちの熱気をしっかりと感じていた私は、「逆に、コレクションのデザイナーはマーケットのスピードに合わせざるを得ない時がくるのでは、生活者の要望、マーケットのスピードは止められないと思うよ」と反論したのを覚えています。
ファストファッションの担い手たちは、真似をしてスピード生産するだけでなく、コレクション並みの情報、企画力、組織、人材、そして何よりも、「生活者と相対している実感からくる確信」を蓄積してきているはず、それもシステマチックに。
いつの日か、ZARAもH&Mも、欧州コレクションに、そしてユニクロさえも東京コレクションに登場する日が来るかもしれない・・・
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