ワールド上場廃止が業界に贈ったメッセージ
11月15日、ワールドはMBOの成功を経て、いよいよ「上場廃止」となりました。
14日に行われた経常利益前年比31%増と大幅増収増益だった9月期中間連結決算発表での寺井社長の気になるコメントを日経新聞と繊研新聞から拾いました。
「日本のファッション産業は行き過ぎた部分最適化による水平分業になっており、全体最適モデルの構築が必要である。」
「リスク分散が進み過ぎ、何が売れるかもわかりにくい、変化対応モデルになっていない」
「今は、前(店頭)に近いほど利益を取っており、後ろ(川上)は利益を取るのが難しい」
「全体最適モデルの構造改革はチャンスであり、多大なリスクもある。」
ファッション業界の大問題をズバッと言い放っていると思います。
そして、顧客のために、全体最適を自己完結させなければ生き残れない、それには、時間とチャレンジが必要であり、株主のために、短期的な利益だけを追求していたら、成し遂げられない、というのが、ワールドの考え方であります。
他の業界にも当てはまるかもしれませんが、小売店頭の顧客のこと(需要)が上手に把握できないため(必死でしようとしていない企業がいかに多いことか!)、アパレルメーカー、生産工場、原料メーカーと顧客から離れてゆけばゆくほど、需要の実情がわからなくなってしまい、その分、手探りで仕事をせざるを得ない状況。また、介在する企業がそれぞれムダや不合理のために、リスクヘッジを行っているのがまさしく業界の姿であり、そのしわ寄せを生活者が負わされていたり、うまくマネージメントできなかった企業がつぶれてゆくわけです。
私も、この業界でなんやかんや商社、卸、小売と各流通段階を一通り経験させて頂きました。数々のムダ、不合理を見てきました。そのおかげかどうかはわかりませんが、結論として、いかに生活者に近いところで仕事をするか、いかに生活者と企画生産現場の距離を出来るだけシンプルに短くするか、が継続的な成功のための必須条件であると思っています。
ですから、このブログでは、生活者のためにそんな努力をしている企業の姿をニュースや記事で見つけては賞賛すると同時に、いいことはみんなでベンチマークしましょうよ、と訴えているわけですね。
業界最適≠顧客最適?なんて冗談じゃない!
ワールドの上場廃止は、業界に痛烈なメッセージを贈ってくれました。業界で働くすべての人たちがその本質をしっかりと受け止めるべきだと思います。これから日本に乗り込んでくる外資の猛者たちは、業界の慣習などお構いなしに、容赦なく、マーケットにストレートど真ん中、剛速球を投げてくるでしょう。
「まずは業界の取引慣行を改善しよう!」なんて言って、業界の内を向いてる場合じゃなく、ワールドのように全体最適=顧客最適のために早く、行動を起こし始めなければならないわけです。
報道によると、ワールドは、上場廃止、非公開化をしましたが、情報開示はいままでどおりに行い、コーポレートガバナンス・コンプライアンス体制を充実させ、「開かれた非公開企業」という新しい企業像を目指すとのことです。同社が業界の顧客最適のロールモデルになることを期待しています。
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Comments
takaさんのご意見は「総論」として大賛成です。
ですが下記の「各論」の矛盾と問題を含んでいると思います。
1.ワールドの寺井社長の発想は素晴らしいと思うのですが
私がお付き合いのある国内工場の社長さんの話ですと
同社と取引をしていて利益を出すのは至難の技らしいです。
原料背景を無視した異常なQRを要求されたりした挙句
ブランドごと海外生産に切り替えられて翌年の発注がゼロに
なったりして非常に苦労されたらしいです。
2.takaさん御提案の<いかに生活者と企画生産現場の距離を出来るだけ
シンプルに短くするか>は「絶対」条件と思います。
自前の営業マンを持てないような地方の零細工場はブローカーのような人からの仕事を請けて何とか工場が回っているようなところも見受けられます。
ブローカーがマーケットや生産に詳しい人ならまだしも、知識に乏しく「情報を遮断」する事によって常識外れの「中間マージン」を得る場合もあるらしいです。
3.以前日本は資源の乏しい国のため、製造業だけでは雇用が少ないため卸売業などの中間業者ができたと聞きました。
この考えからいくと中間業者の職で生計を立てていた人達(上記のブローカーは除く)の雇用喪失につながるのではないでしょうか。
マクロ経済的に言えば失業者が増え消費も減る事により企業利益も減る悪循環に陥る可能性があります。
長くなりましたが、takaさんと同じくファッション業界を「改革」しなければならないと日々思っている「同志」である事は間違いありません。
Posted by: 桑田 | November 19, 2005 02:33 PM
桑田様こんばんわ
いつも核心に迫るコメントありがとうございます。
メディアには報道されない、現実の姿を例に挙げていただき、ありがとうございます。
同社の対取引先の実態は私が昔働いていた会社も取引があったため、そのような話を聞いたこともあります。
コメントで賞賛しているのは、同社が店頭起点で行動を起こすという発想に転換し、実行してきたという点です。92年に売先依存型の卸のままではだめだ、と思い、OZOCを皮切りに、小売に進出して、今は、すっかり小売業になりました。その際も専門店向け卸で培ったノウハウを最大限に利用したと聞いています。
私がよくベンチマークしているZARAももともとは、下請け工場であり、大量キャンセルによる経営危機に直面して、下請けのままではいけないという危機感から今の姿があるわけです。
大事なことは、今、ドラスティックに商売を変えることはできない(卸をスパッとやめて小売を始めるとか)のはわかっていますが、仕入先の言いなりになるのではなく、小売と同じ視点をもって仕事をすること、そして、取組みや体制を変えていくことはできると思います。
企業提携やM&Aによる垂直統合という大きな手もあれば、インターネットも普及して、生活者と接点を持つという今から始められることまで、一般的になりましたし。
目先の問題としては、産業保護もあるかもしれませんが、それよりも、生活者が変わってきているスピードが速く、世界には、もっとそれを加速させる動きがあり、彼らがいよいよ日本の市場に照準を定めて来ているということに業界全体が目覚めなくてはならないと思います。そこが、顧客視点になっていない、自分たちのことしか考えていない、という話になってしまうゆえんです。
正直、小売業が一番しっかりしなければなりません。もっと危機感を持っていたら、今ほどサプライチェーンを惑わせるような仕事はしないでしょう。
だから、メーカーさんも生活者と接点を持って既存の小売業よりもうまくやるチャンスもあるのではないか、と思いますけれども。
では
Posted by: taka | November 20, 2005 12:18 AM