IKEA(イケア)を迎え撃つニトリの品質管理改革
「お値段以上ニトリ」のコマーシャルでおなじみの郊外型ホームファッション製造小売業の雄、ニトリの生産改革に関する東洋経済今週号の記事を読んで。
ニトリは、家具業界のユニクロ、と例えられますが、製造小売業として、ベトナムやインドネシアに直営工場を持ち、仕様書発注しているオペレーションは、ある意味ユニクロ以上と評判だったニトリ。
実際、ユニクロやその他、アパレルのSPA(製造小売業)チェーンのほとんどが、その生産管理は、商社などOEM業者に委託しているのが現実の中で、同社は、200社の海外サプライヤーに対して、自前で事務所、駐在員を置き、独自で管理をしているとのことです。
同社は、新世代の「チェーンストア理論」の絵に描いたような優等生として、30年間アメリカのチェーン店を徹底的に研究して、コーディネートの発想、トレードオフ(顧客にとって不要な機能は取り去ってしまうこと)によるディスカウントプライスの実現、仕様書発注を忠実に実践してきた会社のひとつとされています。
しかしながら、「お値段以上」や「他社と同品質で2分の1価格」を合言葉にしているものの、確かに、安くて必要十分な品質で急成長したかもしれないが、絶対的な家具の品質から言うと、まだまだ劣るというのが、日本の家具業界でのもっぱらの評判のようです。(記事では同社自身もお認めになっています。)
そこで、同社は、昨年より異業種の、自動車メーカー、ホンダで海外生産管理の総責任者をされていた方を役員に迎え入れ、徹底的に生産の仕組みづくりを急ピッチで、基礎から作り上げている模様です。
仕様書発注といいながらも、メーカーに仕様を任せきりにしていたり、工場との基本契約があいまいであったらり、品質管理駐在員といっても、生産工程から管理するのではなく、生産後、あくまで船積み前の水際で不良品を跳ねるだけの品質管理であったり、かつて、私も商社でOEM生産を担当していたこともあるので、アパレル業界にも耳の痛い話が多いですが、ニトリは、公開企業にもかかわらず、恥ずかしい部分を赤裸々に公表し、取り組んでいる姿に関心いたしました。なにしろ、異業種に頭を下げて、ノウハウを果敢に取り組もうという前向きな姿勢がいいなと思いますね。
来年、スウェーデンの世界最大のホームファッションチェーン、IKEA(イケア)が日本に上陸しますが、それを迎え撃つ最右翼は、間違いなくニトリだと思います。 IKEAと切磋琢磨して、まだ発展途上の日本ホームファッション業界に、ブームを起こして欲しいな、と思っております。
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Comments
takaさん、こんばんわ
アパレル産業に従事する者として昨今感じる事は『本当のプロ』が少なくなった事です。
極端な言い方をすると「モノ造りを知らない人間」が「知らない人間どうし」で企画して生産依頼を製造工場にしているような事例が少なからず見られます。
ある工場の社長さんとお話する中で「細かい仕様を理解してくれれば、もっと良いものが出来るし、コストダウンも可能なんだよ」と嘆いておられました。
担当の商社の若手は「アパレルから言われているので忠実にお願いします」の一点張りとの事らしいです。
『店頭基点』の観点から言えば、現在の売れ筋や売れそうなイメージを漠然ともって短納期で作って欲しいのは良く理解できます。店頭と生産を『つなぐ』役割(多くは商社のOEM部門やOEM企画会社など)の人間が勉強が足りないのかもしれません。
その過程の「交通整理」をする人に『プロ』が多くなると業界全体が、きっと活性化して良い方向へ向かうと思います。
最近はOEM商社の方でも新入社員から入った人よりも「製造工場出身」や「アパレルの生産担当」の経験者の方が見受けられようになりました。
逆説的になりますが、そうなると「人を育てる」事が疎かになると言う弊害もあります。
難しい問題ですが、takaさんはどう思われますか?ご教授願います。
Posted by: 桑田 | December 01, 2005 07:15 PM
桑田様
いつもコメントありがとうございます。
なかなか痛し痒しで、一概には言えない話だと思いますが。
基本的に会社としては、商社マンには、マネージメント能力を期待しており、生産の深い知識は入り込むとキリがなく、効率が悪いのであまり期待されていない、むしろ入り込むな、と思っている会社が多いと思います。そこで、桑田さんがおっしゃるように、工場やアパレル出身の嘱託社員さんとチームを組むわけですね。
一方、古きよき(?)時代の商社に勤務していた私は、リストラ前だったもので、その間、2年ほどアパレル会社の立ち上げに入っていた関係で、幸い(?)生産担当者として、布帛からニットまで全アイテム見ていまいた。その時、染色工場や縫製工場の工場長さんたちや、パターナーの方々にお世話になり、生産の基本をたたき込まれました経験があります。
その経験は、いうまでもなく、国内外OEM生産をするにあたって、営業面(客先のMDや生産担当者の理論的説得)でも、生産側に対しても(理解のあるやつだと)役立ちましたし、特に、問題が起こった時の対処は、同僚に負けない自信があったものです。
ですから、いずれ管理職にまわるにしても、本来、一定期間の現場修行期間は必要だと思います。
しかし、かつては、上代の35%の原価率で納品できていた商社のOEMビジネスも20%を要求されているようですので、利幅が取れなくなった商社にとって人材育成は難しい、悲しいかな、リスクヘッジが関の山になってしまっているのではないかなと思ってしまします。
Posted by: taka | December 02, 2005 07:23 PM
takaさんIFI講師デビュー予定おめでとうございます。
まあ確かに一概に言えない事も事実ですし、商社さんも色々な会社が存在する訳なので、上層部やチーム単位の考え方を写す鏡なのでしょう。
それによって若手が経験を積む事ができてノウハウの蓄積でtakaさんのように、その後、業界での活躍の場を広げる事ができると思います。
独立したのはいいが、「会社の看板力」と「自分の実力」を勘違いして惨めな末路を辿った人を少なからず見てきました。
現在の商社の繊維部門の中にあって住金物産さんの動きは素晴らしいですね。OEM機能を持つ仮想アパレル集団でしょう。
Posted by: 桑田 | December 03, 2005 12:05 PM
桑田さん
そうですね、住金物産さんはイトマン時代から、量販メーカーのOEMに徹するポリシーを貫徹してましたので、各商社、メーカー、一目置いていましたね。その延長線上に「現在」があると思います。
Posted by: taka | December 05, 2005 12:23 AM