トレンドセッターの流行先読み術
4月28日の日経MJにユナイテッドアローズ(UA)のウィメンズディレクター、小野瀬慶子さんのファッショントレンドの読み方の記事を読んで。
小野瀬さんは、UAというセレクトショップの中でクリエイティブディレクターというお仕事をしながら、業界の中でもファッショントレンドのご意見版として、各誌、各紙に多くのコメントをされているので有名な方ですが、昨年10月からご主人の仕事のご関係でロンドンに拠点を移してからも同職でご活躍です。
彼女から学ぶべきことは、ファッションの業界内だけの情報にとらわれることなく、世の中の時流からご自身なりの仮説を立てることだと思います。記事によると
コレクションを見ていては、「トレンド予測の参考にするのは遅すぎる」
として、
○政治や経済の動きを新聞でとらえる
○書店の平積み本
○ストリートで気になったことをデジカメに収めたり、メモを取ったり
○封切前や撮影中の映画の衣装やメーク
などなど・・・
もちろんフランスのプルミエール・ヴィジョンやイタリアのミラノウニカなどの素材見本市は押さえているようですが、世の中の情勢を幅広く捉えて、半年間自分の琴線に触れた情報をマトリクス分析され、1ヶ月掛けてキーワードに落とし込むとのことです。
オーソドックスではありますが、定点的、継続的に行うことによって間違いなく威力を発揮する作業ですし、更に、拠点を東京からロンドンに移され、「日本のマーケッターでありながらロンドンという違う文化のところから見る」という新たな視点も彼女の感覚をさらに研ぎ澄ましているのではないか、と想像ができます。
ファッショントレンドは、一般的に
1. シーズンの2年前に世の中の情勢を読んだ「インターカラー」で
流行色予測が発表され、
2. それを受けて1年前にプルミエールヴィジョンなどの素材見本市で
デザイナーたちがピックアップした素材を
3. 半年前に欧米コレクションで商品に落としこまれ、大勢が決まる
といわれていますが、上記2以降の情報は完全に「業界受け売り情報」になります。
その昔、ヨーロッパで発信されたトレンドが半年後にアメリカでマス化され、さらに半年遅れて日本の流行となる、と言われていました。しかし、今や、H&M(エッチアンドエム)、ZARA(ザラ)、TOPSHOP(トップショップ)などのファストファッションや、渋谷109ブランドたちは、2でキャッチした情報を欧米コレクションデザイナーと同時に低価格でマーケットに商品を送り出してしまいます。109ブランドに至っては、韓国や上海近辺のフットワークを利用して、それよりも早く店頭に並べてしまう現状もあります。
そんな時代に、「来シーズンは、白だってさ」と業界内情報だけ追いかけても限界があるわけで、小野瀬さんのような、政治経済、消費者心理も含め、幅広く情報を整理して流行を読む技術、感性が問われてくると思います。
話は変わりますが、ロンドン在住の小野瀬さんの記事を読んでいて、10年くらい前の新聞記事に、もっとダイナミックに日本のマーケットを捉えたあるマーケッターのことが書かれていたのを思い出しました。
その方は、1年の内の3ヶ月をパリ、3ヶ月をニューヨーク、3ヶ月をミラノ(だったと思います)、3ヶ月を東京で過ごし、生活者の視点で、各所から同社のターゲット客層が好みそうな異文化を次々に日本のMDに結び付けて提案していらっしゃいました。その仕事ぶりに、とても憧れたものです。その方とは・・・アニエスベー、アメリカンラグシー、スターバックスコーヒーなどの日本導入で活躍されたサザビー(現サザビーリーグ)の鈴木陸三CEOです。
ネットの発達による情報氾濫社会の中で、生活者を半歩リードし支持されるためには、そんな、複数の文化の視点を同次元に落とし込む、いわば、マルチカルチャーマーケッター発想によるフィールドワークこそが望まれる時代なのではないか、と思います。
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