オブザベーションで生活者に優しい商品、売場づくり
一橋ビジネスレビューという主にMBA向けのビジネスケーススタディ論文を収録した季刊誌がありますが、最新号2006夏号は「営業を科学する」という興味深いタイトルだったので、手にとってみました。
その中に西川英彦立命館大学助教授が書かれた「無印良品」を展開する良品計画の「オブザベーション」という消費者行動観察に基づく商品開発に関する論文があります。同氏は、この「オブザベーション」が2001年以降、無印良品のV字回復を支えた開発手法のひとつとして紹介しています。
「オブザベーション」とは、実際に生活者の自宅を訪問し、日常の生活を観察させてもらい、リアルな消費の現場から消費者のインサイト(潜在意識)を見つけ出そうという手法です。具体的にいうと、家族構成の違う200世帯の家庭の浴室、洗面所、押入れ・・・普段のありのままの状態を記録・撮影させてもらい、6万点のデータを取得。写真に写っている状況を推測を排除してありのままに文章化。共通する事実を分析して、商品開発へと活かすという手法です。
つまり、生活者が無意識に行っている行動、工夫の中から既存の商品で満たされていないものを発掘しようというものです。
この論文にも書いてありますが、アンケート、対面インタビュー、フォーカスグループなど従来のマーケティング手法では、消費者の本音(深層心理)は炙り出せないという話。
私も、かつて、ある専門店にいた時に営業の責任者として実施した2000人規模の顧客テレマーケティングインタビューでお客様から、さまざまなご意見を頂き、実際それに基づき、仮説戦略を実行したことがありました。筆頭に上がった企業側にとって耳障りのよいご意見よりも、3番手くらいにあったよりベタベタなご意見や客観販売データの中に本音があったりしたことを実践検証の中で思い知らされた記憶があります。
つまり、お客様が実際に書いたり、声に出したりしておっしゃることはもちろん真実であり、大切なのですが、無意識で実際行っている行為、使い方の中に、「本音中の本音」が隠されているということがよくあると思うのです。
以前ブログで紹介した消費者行動学に基づくリテールコンサルタントの第一人者、パコアンダーヒルさんも、書籍でこの点を指摘しています。
生活者がより快適にお買い物をしようと、店頭で行っている工夫、行為を、より気軽にできる環境を提供して差し上げれば、売上は伸びる、と。
そんな発想に頭が切り替わると、鏡の置き場所、フィッティングルームのあり方、レジ周りなどがいかにお客さんにとって不便であったかが思い知らされます。
無印良品のオブザベーションも、パコアンダーヒルさんの追跡観察も意味する本質は同じだと思います。口には出して言わないことに気づき、かゆいところに手が届く商品の開発、売場の改善。売り手の都合じゃなくて、そんな生活者に優しい、気遣いのある企業が支持を得る、そんなあたりまえの時代が来ているんじゃないかなと思います。
そう、あなたの売場でも今日から実践できることはいっぱいあるのではないですか?
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