ユニクロのポスト中国生産はいかに
5月26日の日経新聞や5月31日の日経MJにユニクロが中国に傾斜した生産体制を見直しすることに関する記事が掲載されています。
今後、ベトナムやカンボジアなど東南アジアに分散し、2009年までに東南アジア生産の比率を全体の3割以上に高め、現在9割以上を占める中国での生産比率を、6割台に落とすとの話です。
記事によると中国での人件費上昇、米欧と中国との貿易摩擦に巻き込まれるリスクなどを回避する狙いで、欧米市場拡大に備えたもの。すなわち、欧米向け売上構成比の拡大に伴う話であって、日本向けについても、とは解釈し難いと思われます。
今回の話を聞いて思い出すのは、10年ほど前、アパレル製品の海外生産(ソーシング)の仕事をしていたころに、取り組んでいた韓国、台湾、香港のメーカーが欧米のクオタ(原産国別輸入制限枠)対策でこぞってベトナム、ミャンマーに工場を新設するブームがあったのを思いだします。
当時、アパレルの海外ソーシングに携わる人は、そういったメーカーの誘いでいろいろ日本向けの可能性を探り、トライアルもしたと思いますが、結局、原料調達と運送時間の問題で生産期間が長くなってしまい、ドレスシャツ、スラックス、ユニフォームなどスピードを要求されない比較的ファッション性の低い商品しか定着しなかったのが現実だったと思います。
無論10年たった今、そういった地域にも改善は見られますが日本マーケットが要求するスピードの方がそれ以上であったと言わざるを得ないのではないでしょうか。
ユニクロは、あえて遠方を管理する労力と時間をかけるより、むしろ上海近辺にスピードを重視したオペレーションを構築する方に投資したほうが今後の成長戦略にも、国内外の業界への脅威にもなると思われますが・・・いかがでしょうかね。
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Comments
桑田です。こんにちわ!
いつもtakaさんのブログを楽しみに拝見させております。
老婆心ながら「人件費上昇」と「米欧と中国との貿易摩擦」のリスク回避する狙いよりも「中国国家自体」にまつわる「カントリーリスク」に対する「防衛策」ではないでしょうか?
お付き合いのある某商社の担当さんから「経済開放」と言えども「共産軍事国家」の中国に与信リスクを与える事自体をオフレコで疑問視されていました。
また昨今の「日中関係」を思慮している部分も大きいと私は思います。
takaさんはどう思われるでしょうか?
Posted by: 桑田 | June 04, 2006 06:45 PM
桑田様
おはようございます。
コメントありがとうございます。
おっしゃるとおりですね。
あまり大きい声では言えないので、記事には触れられていなかったのかもしれませんが、「カントリーリスク」が大なのは、中国とビジネスをする企業すべてが認めるところだと思いますね。
正論はリスク分散でしょうが、しかしながら、現状地政学的に日本が生産拠点として、更に、中国を活かさない手はないこと、一方、中国も交渉テクニックとして緊張はあおりながらも、世界と戦争するようなバカなことはしないであろうという仮説の元に進めるしかないのではないか、と思ったりもします。
Posted by: taka | June 05, 2006 10:07 AM
takaさん、大変ご無沙汰致しております。
いつもtakaさんのブログは、楽しみに読ませて頂いています。
ユニクロさんのことについて書きましたので、takaさんのブログからTBさせて頂きました。
この問題は、どうやら、ユニクロさんの主力工場さんなどでオペレーターさんの定着率が下がってきているのが一番の原因ではないか、という風に仄聞しております。
いよいよ、他産業の工場さんに、人が流れてしまう、という状態になってきているようですね。より奥地に行けば話は別なのでしょうが。今後の見通し、特に婦人服をどうするかは非常に深刻ですよ。
Posted by: 両国さくら | June 21, 2006 07:36 PM
さくらさん
コメントありがとうございました。エントリーにリンクも入れていただいたようで感謝です。
こちらこそご無沙汰です。ココログ仲間になりましたねえ。
やはり、さくらさんもそのように聞いていますか。
クオタがなくなると聞いて、当初は工場が欧米向けオーダーを入れ始めるのでは、と想定していましたが、そうではなく、工員が欧米向け工場やむしろ月給の高い異業種に取られているわけですね。私の親しい中国生産のスペシャリストの方もそのようにおっしゃっています。
また主旨は違いますが、日本のアパレル産業もコスト一辺倒ではなく、今後、フェアトレードを意識した取り組みも必要になってくるかもしれませんね。
これからもよろしくお願いいたします。
Posted by: taka | June 22, 2006 04:27 PM