見直し迫られる商社のOEM生産ビジネス
今回は業界の中でも、ちょっと泥臭い話です。
9月29日の繊研新聞の一面に「岐路に立つ商社OEM、コスト競争は限界」との見出しの記事が掲載されています。
アパレル業界において製品の海外生産を舞台裏で支える商社のOEM(相手先ブランドによる生産)ビジネス。つまり、アパレル卸や小売チェーンの企画担当者やデザイナーが次シーズンのマーチャンダイジングを考え、商社担当者が素材と生産地を求めて海外を走り回る、二人三脚の取り組みは、これまで、商社各社のアパレルビジネスの中核を占めておりました。
好調SPAのポイントのローリーズファームをはじめ、ユニクロしかり、業界の成功事例の裏には、商社の活躍あり、という話も少なくありません。
実は、私も、業界でのキャリアはこの商社アパレル部門のOEM生産担当者でありましたが、商社の客先への売値(出値)は、当時(90年代)、百貨店・専門店系アパレルで、小売価格の30%、量販系であれば35%くらいが相場だったと記憶していますが、記事の内容では、最近はSPAだとしても20%くらいでなければ通らないとの話。
アパレル、SPA企業の勝ち組も、SCへの大量出店と原価率低減による粗利率のアップで好業績を上げているが現状で、そのしわ寄せは当然生産側に来るものです。
素材を切り詰めるか、中国でも奥地に行くか、物流を簡略化(検品省略)させるか、小ロット生産でも短納期を要求され、いずれにせよ、供給側にリスクを抱え込む話・・・たまに情報交換をする昔の先輩や同僚との話とも符合します。
また、商社や生産現場にこのようなリスクを張らせることは、裏を返せば生活者に品質のリスクを押し付けることにもなりかねません。
正直、商社と言えども、他には真似の出来ないクリエイティブなことをしているわけではなく、勝ち組アパレルおよびSPA企業に対して、競合との価格競争に陥るとともに、さらに、言われた通りに生産をするだけではなく、デザイナーを抱えての企画提案や自社リスク型のビジネスへと展開し、ますますハイリスク、ローリターンビジネスと化して行きます。
このような状況下、不採算ビジネスを見直す商社各社の事情、また、そういったビジネスを打ち切られ、商社から独立して、ローコスト体制で同じビジネスでメシを食っている商社OBも数多く知っています。
しかし、商社から、小売に身を転じた一人として、いつも思うのですが、生産側の人間は、もっと顧客や店頭のことを知るべきだと思いますし、小売側ももっとその情報を的確にサプライチェーンに伝達して、生産側をプロジェクトに巻き込んで味方につけるべきだと思います。
餅屋は餅屋。コミュニケーション力と相互理解のあるプロのパートナー集団こそが勝ち組の条件の一つだと思っています。
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