ブランドビジネスの常識を覆す、コーチ
今週の週刊東洋経済の特集記事はブランドバッグ、「COACH(コーチ)の奇跡」です。
先日のCOACH(コーチ)に関するエントリーを行った後で、タイムリーな記事だなと思いながら読んでおりました。
実に、日本で5年で5倍(100億円→481億円)、年間5200億円と言われる日本のバッグ&革小物マーケットでルイ・ヴィトン(シェア25%)に次ぐ第二位のブランド(同9%)に登り詰めた、手の届くラグジュアリーブランド、COACH(コーチ)の成長を通して、日本の、いや、世界のファッション流通マーケットで今、何が起こっているかがとてもわかりやすく書かれているので、ご興味のある方にお勧めいたします。
10万円が中心価格帯のルイヴィトンに対し、高級ブランドバッグの満足感を、4-5万円で提供したアメリカ、COACH(コーチ)社。参考までに日本の店舗数はルイヴィトン51に対してコーチ118だそうです。
顧客に「ルイヴィトンを1つ買うならコーチを2つ買いますよ」と言わしめ、定番が主体のブランドバッグ業界で毎月新しい商品を投入して生活者を飽きさせないことによって、「ブランドバッグに対して女性が持つ意識を”一生モノ”から頻繁に買い換える”ファッションアイテム”へと変化させた」のがコーチの功績。
コーチの戦略は、「”すきま”である中間価格帯をねらった」と言えばマーケティング的に耳ざわりはよいですが、実際には、
ファッション業界の階層(ヒエラルキー)崩し
と言っても過言ではないでしょう。
記事にもありますが、従来のブランドビジネスの定石である、「高級」を”中価格帯”で壊し、「普遍性」を”製品の短命化”で壊し、「希少性」を”大量出店・大量販売”で壊す。
コーチの、アメリカのブランド(会社)だからこそ、データやリサーチなど「数値から導き出される”論理”とファッション性をはじめとする”感性”の両軸を重んじる」、「ロジック・アンド・マジック」という発想と経営手法が今日の成長をささえているのだ、と記事はつづります。
かつて、ファッションの感性やトレンドは、ヨーロッパコレクションブランドを頂点に「文化は高いところから低いところに流れる」という格言よろしく、独特な階層のもとに成り立っていたと思います。
高いところにあるものについて、身分的に、価格的に手の届かない一般客層は、時間を経て、より大きなマーケットに降りてこなければ買えなかったものです。あるいは、トレンドファッションとは、お金があって、身分相応、あるいは背伸びをしている人たちだけが謳歌していたものだったのかもしれません。
しかしながら、狙いすまいしたように、あるいは、あざ笑うかのように、こういった「階層(ヒエラルキー)」を崩し、『手の届くラグジュアリー(「ハイエンド」を「トレンドゾーン」へ)』や、『トレンド商品をシーズンに遅れることなく、リアルタイムに低価格で販売すること(「トレンドゾーン」を「ヴォリュームゾーン」へ)』を実現し、生活者の絶大な支持を得て成功を収めている企業が世界で続々と出現しているのは、とても喜ばしいことだと思います。
その革命の担い手は、COACH(コーチ)であり、ZARA(ザラ)であり、H&M(エッチアンドエム)であり、そして日本でも、サマンサタバサであり、また、ポイントのローリーズファームもその要素を持っているからこそ、今の成長があるのだと思っています。
おさえておくべき点は、彼らは、マーケットで「上」を見て「モノマネ」を行うのではなく、上位階層のブランドもしくは企業と同じプロセスで独自のマーチャンダイジング活動を行い、より多くの客層に向けて商品を提供しているということに他なりません。
その代表格、COACH(コーチ)の躍進を見ていると、ファッション流通に確実に押し寄せている大きな変革の波を実感します。
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