日経新聞に同紙本社コラムニストによる「核心」というコラムがありますが、10月30日のテーマ(見出し)は「『2.0』に乗り遅れるな-革新的な進化問う時代」というものでした。
最近、当ブログでも話題にする『2.0(ニーテンゼロ)』は、ご存知、Web2.0(ウェッブ2.0)の言い回しになぞらえて現代用語になりつつありますが、記事中でも、
「2.0を1.0からの革新的な体質の進化の表現ととらえると2.0現象は随所に出てきている」
と、デル、アップルコンピュータ、出光興産、ソニーから小泉内閣までを引き合いに出して、それぞれが従来のやり方=1.0に対して、ここ5年間で、「革新的な進化」=2.0に生まれ変われた事例、そうでない事例について論じています。
そして「視力検査のように2.0を上限」とせず、「2.0時代に乗り遅れず」「しかも連続的なバージョンアップを忘れない」ことの必要性を説いてコラムの結びとしています。
さて、本題の「ファッション2.0」ですが、私の先日のエントリー ”ファストファッション”から”ファッション2.0”が始まる に関して、ファッションブログ仲間の「新・両国さくらのファッション・イン・ファッション」のさくらさんがコメントをエントリーしてくださっています。 「ファッションの民主主義化」って何?
日経のコラム同様に、ファッション2.0は、Webを活用しているかどうかにかかわらず、いろんな解釈があってもいいのではないかと思っていますが、ファッション業界の「革新的な体質の進化」をファッション流通ブログde業界関心事的にいうと、
ファッション1.0・・・毎シーズン生産者側流通者側の論理、都合で
プロダクトアウトされるファッション
ファッション2.0・・・生活者のマインド(ディマンド)を起点に
スピードをもって提案されるファッション
この思いは、私自身の原体験に基づきます。
私のこの業界でのキャリアは商社アパレル部門でアパレル企業やアパレル小売チェーンのための企画生産業務代行から始まり、その後、アパレル卸会社(欧州アパレルジャパン社)、カジュアル系小売チェーンでの業務を経験しましたが、その過程において、供給側の怠慢による多くのリスク、ロス、無駄、習慣・・・が、生活者への小売価格にヘッジされるのを見てきました。
生活者は生産者・流通者側の都合で高く買わされているのではないか?
なぜこんな風になっているかというと、たぶんその理由のひとつは、生活者から遠いところで仕事をしているゆえの各流通段階の「生活者に対する無知・無関心・情報不足」ではないかと思っています。
ファッション流通を、「真実の瞬間」とは何か(ちょっと大げさですね)を問いながら、企画生産側から生活者に近づきながら業務経験を重ね、小売で働くようになって目から鱗が落ちたような気がしました。
お客さんって、店頭で、こんな風に感じて、財布からお金を出して、実際着用して、友達にもほめてもらって、喜んでくれたらまた戻ってくるんだなと。なあんだ自分自身だってそうじゃないか。
そう思ってからは、あの喜んでくれたお客さんたちの顔が頭に浮かび、今度はこうやって喜んでもらいたい、なんて考えながら業務にあたったものでした。
そうすると、とびっきり旬なものを、納得の行くクオリティで、そしてどこよりも安く、早くお届けしたい、って考えるようになるんですね。それをどうしたら実現できるか真剣に考えるわけです。
話は変わりますが、ファッション業界では、これまでハイファッション→トレンド→ヴォリュームといったファッションビジネスのヒエラルキーが存在し、トレンドは高いところから時間(シーズン)をかけて低いところに流れる、といった特権的な?状況や、ヨーロッパ→アメリカ→日本といったファッション文化の成熟度の差による情報伝達の差がビジネスチャンスを生み出していたと思います。
ところが、情報化社会、インターネット時代において、成熟した生活者の進化は止められず、ファッショントレンドの同期化、または逆転現象をも引き起こし、その象徴が、いまや、世界最速と言われるようになった東京のストリートファッションではないかと思います。
そんな動きとも呼応するかたちで、生活者に近いところで生活者の立ち場に立ってファッションビジネスを考え、生活者にとっての適時、適材、適所、適価、適量を追求し、かつスピードを持って提供するビジネスモデルが次々に生まれ、マーチャンダイザーあるいはバイヤーと店頭との密なPDCAサイクルを高回転でまわすことによって成功を収める企業が続々と出現しています。
キーワードは "from mind to market" そして "speed to market"でしょうか。
(傾倒している消費者購買行動学の大家RogerBlackwell教授の
リテールマーケティング書の言葉より)
当ブログでご紹介しているマルキュー系、ワールド、ポイントなどのSPA系ファッション企業やゼイヴェルのgirlswalker&TGCあたりが、今のところ日本の代表格にあたるのではないかと思いますし、海外を見渡せば、ZARA、H&M、TOPSHOPという欧米で”ファストファッション”あるいは”ハイストリートファッション”と呼ばれるSPA企業がその全世界的な動きをリードしていると思われます(ユニクロはこのあたりを強烈に意識して2.0に向けての改革を始めたばかりでしょうか)。
そして、その動きがヒエラルキーの頂点にいるハイファッションのブランド群や旧来型の企業に突きつけている現実、業界に生活者最適への「革新的な体質の進化」を迫っている図式であると思えてならないのです。
正直、ファストファッションを否定的にとらえる業界の方は少なくありません。しかし、私は、彼らの活躍が業界全体が一皮剥けるきっかけになれば・・・多くの生活者がそれに賛同し、その声、態度を業界が無視できない状態になりつつあることをむしろ歓迎しています。
その先にあるものこそ、生活者のディマンドを起点とした「ファッションの生活者主権化」であり、旧来型ヒエラルキーをも変革する解放された生活者が主役の「ファッションの民主主義化」ではないかと思うのです。
ファッションと一言で言っても、さまざまであり、わかる人にだけしかわからないものがあってもよいだろうし、もちろん、お金持ちしか手の出せないものがあってもよいと思います。
しかし、マクロトレンドは価格帯にかかわらず生産者都合ではなく、生活者起点のファッション2.0だと思いますし、この波に乗るかどうかが、未来を決するのだと思います。
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