創立40周年、ベネトンの復活はあるのか?
ご存知、イタリアのアパレルブランド、ベネトンが今年、創立40周年を迎えました。
というわけで、ここのところメディアからすっかりご無沙汰で、目だったトピックもなく、過去のブランドとして忘れてしまいそうだった同社の記事を、久しぶりに、先週の繊研新聞の連載や10月11日の日経MJで目にすることができました。
おさらいをするまでもありませんが、ベネトンは、80年代の後半から90年代の前半、その人種差別をテーマにした衝撃的でメッセージ性の高い広告活動やニット製品の染色手法で、また、イタリアンファッションブームにもあやかって、マーケティング的にも、商品企画的にもアパレル各社のお手本となり、国際的に知名度、好感度抜群のブランドの地位を獲得したと記憶しております。
そのころ海外出張に出かけても、イタリアはもちろん、ドイツ、香港、アメリカ、インド・・・世界の街角でベネトンのショップを見つけては、そのワールドワイドさに驚いたものでした。特に、香港のシスレー(ベネトンが買収したフランスのブランド)でよくMADE IN ITALYの商品を買い物させていただきましたっけ。
1965年創業以来、店舗数は、120カ国、5000店(8割以上がFC)とは脱帽ものです。
今回の日経MJの記事は、一時の勢いを失って、21世紀に入って後退し続ける売上も、ようやく底を打って、これから復活をかけるベネトンの改革を追っています。
何がベネトンを時代遅れにしてしまったのか?
そんな視点で、興味深く読ませていただきました。
記事によると、問題は
○「品質に一番目を向ける」
と最近までMADE IN ITALYにこだわりつづけ
○「物づくりと販売はそれぞれのプロが手掛けるべき」
とFC(フランチャイズ)販売にこだわった
カリスマ創業者ルチアーノ・ベネトン名誉会長が言うところの、この二つの「ベネトンの強み」にありそうです。
生活者から見たら、ベネトンがFC中心だなんて関係ありませんから、GAP、LIMITED、ZARA、H&M、NEXT、ユニクロ・・・らの世界のファッションSPA強豪企業の商品、サービスと比較され、購買が検討されるのは当然です。
この間、特に急成長を続けるライバルのスペインのZARA、スウェーデンのH&Mはベネトンを尻目に何をしてきたかというと、マーケットの顧客の心理(ディマンド)を起点とし、世界で作って世界に売るスピード感あふれるファッションビジネスの実践に他なりません。
記事中にいくつかの最近のベネトンの改革の内容が紹介されています。
□イタリア国外、アフリカ・東欧・アジアへの大幅(今期末で88%)生産シフト
によるコスト削減
□世界各地でメガストアを含む直営店出店の加速
□商品投入ペースを月1回のペースに早めたこと
ルチアーノベネトン名誉会長が言う「ベネトンの強み」に反した低価格化、直営、スピード重視で売上が浮上した事実は皮肉ですし、一方、記事にも指摘されていますが、ZARAやH&Mらの後追いで果たしてブランドポジショニングは確立できるのでしょうかね。顧客コミュニケーションとしてのPR活動の再構築を訴える意見もあるようです。
もちろん、品質はブランディングにとって絶対欠かせないことだと思います。しかし、ここんとこ、ファッションビジネスの事情は劇的に変わっているのに、多くの企業が取り残され、というか生活者の立場で考えることができずに、「変われずにいる」事実があると思います。
ベネトンの場合も、世界のFCパートナーから受けたオーダーを集計し、イタリア主導でデリバリーするという、このご時世にいまだに生活者から遠いところで、多くの人を介して企画・生産・物流・販売オペレーションをするという、今となっては時代遅れの発想を捨てきれずにいるところに問題があるのではないでしょうかね。
そんなことを考えていたら、だれかがWEB(ウェッブ)2.0になぞらえて、ファッション1.0とファッション2.0なんて言葉を使っていて面白いなと思ったことを思い出しました。
私のファッション1.0と2.0の違い、解釈はこうです。
「ファッション1.0」が企画生産者側のこだわり、都合で一方的に生み出される商品
なのに対して、
「ファッション2.0」は生活者のディマンドを起点にスピードをもって届けられる商品
どうでしょう?
追伸:実は、私個人は、こだわりのMADE IN ITALY、大好きなんですがねぇ・・・
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Comments
「ファッション1.0」、「ファッション2.0」というのは面白いですね。ヘルスケア(医療、介護、健康保健など)についても、同様に考えられそうです。「ヘルスケア1.0」、「ヘスルケア2.0」ってね。
Posted by: ほそD | October 12, 2006 06:28 AM
ほそD様
いつもありがとうございます。
そうそう、1.0と2.0はいろんな分野について考えても面白いですね。
やっぱりメーカー生活者どちら側の都合で考えられているかがポイントになりますでしょうか。
これからもどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by: taka | October 12, 2006 07:34 PM