客数がリテールビジネスを癒す
1月13日の日経新聞によると、11日にユニクロを展開するファーストリテイリングが発表した07年8月期の連結業績見通しの下方修正を受けて、12日のファストリの株価は東証の値下がり率ランキング1位となるほどの下落をしたとのことです。
要因として、
1.秋冬物の動きの鈍い商品の早期値下げによる売上高総利益率の低下
2.低価格の新業態、ジーユーの計画未達(計画対比55%程度?)
が挙げられています。
1については・・・UNIQLO MIXなどファッションにチャレンジした商品が立ち上がりはよかったけれども、作りすぎたのかな?と年末年始に同社のレディース売場の片隅で大量に値下げされている商品を眺めながら思っていました。
2について・・・g.u.(ジーユー)の出店立地は、ダイエーの不振店跡地やまちづくり三法改正後に開発が加速すると見られる食品スーパーを核とする近隣型ショッピングセンター(NSC)です。
実は、今週、ジーユーが出た立地に同時に出店された複数の企業の方々から同じコメントを頂きましたが、オープン当初は売上もよく、期待をしたものの、その後の減速が著しく、早くも損益がおぼつかない状況とのこと。その理由は、単価の低さは覚悟していたものの、買い上げ客数が少ないというものです。
以前からブログでもコメントして来ましたが、基本的に、NSCの生活者にとっての位置づけ、つまり期待と購買頻度は、ファッションリテーラーのそれと相反するものがあると思っています。
たとえば、ファッションリテーラーにとって、月坪売上が10万円にも満たない立地では、よっぽど粗利率が高いか、すでにローコストオペレーションが確立されているフォーマットでない限り、いくら家賃が安くても、その他の固定費で利益が残らない構造ではないかと思われるのです。
もともと、郊外立地で客数がそれほど多くなくても、低価格の高頻度実用衣料による高い関連販売率で運営できるように鍛えられたしまむら、西松屋、チヨダグループなどはまだしも、都心や大型SCで慣らされた企業はオペレーションの確立まで苦戦を強いられることになるでしょう。
それより1月11日の日経新聞にも掲載されていた、ユニクロによる津田沼の丸井跡地の開発の方が気になります。
丸井が昨年のなんば店OPENや今後有楽町など、次世代型百貨店を標榜し既存百貨店立地にフォーカスしてガチンコ勝負をしかけてくるにあたって、準都心型丸井は閉鎖、跡地を立地に合わせたファッションビルのModi(モディ)にしたり、今回の対ユニクロのように集客力のあるパワーテナントに丸ごと貸してゆく話を進めています。
たとえば52週チラシを撒き、抜群の集客力を誇るユニクロが高層階でシャワー効果を発揮し、ユニクロが下層に相乗効果のあるファッション業態や異業種にテナント貸ししようとするこのプロジェクト。こちらの方が、客数が見込めそうで新しい商業施設として期待ができそうで楽しみです。
やはり「客数が小売を癒(いや)す」だと思いますね。
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Comments
斉藤様
いつも大変興味深く拝読いたしております。
私はユニクロのロードサイド店舗に勤務している販売員です。
こちらの記事にはよく弊社に関するものが掲載されていますが、それらは実に的を射たもので、その鋭い視点にいつも感心させられます。
私が入社した当時のユニクロは、フリースやカシミヤ、ダウン、ポロシャツなどの単品訴求から「UNIQLO MIX」に代表されるようなコーディネート訴求への過渡期であり、商品もカッティングやシルエット、ディテールにこだわるなど、少しずつファッション性を重視したものが増えてきた頃です。
私はプライベートでは古着を中心にわりとシンプルな、それでいてエッジの利いたものを好んで着るのですが、最近の商品は仕事以外でも着たくなるものがいくつか出てくるようになりました。
しかしながら、ファッションブランドとしての地位を目指す位置まで引き上げるには時間がかかるようです。
その目的を果たすための障壁はやはりブランドイメージだと思っています。
現場で感じるのは、私たちの目指すものと、お客様がユニクロに求めるものとの乖離です。
スキニージーンズのブームで一定の成果を上げ、若手デザイナーとのコラボレーション企画などにより以前では考えられなかったメンズファッション誌での記事掲載など、少しは前進したと思いますが、この問題を解決しない限り「2010年 売上高1兆円」という目標は達成できないでしょう。
そういった意味では、昨年出店したNYや上海ではブランドイメージどころかそもそもユニクロ自体認知されていなかったのがプラスに働いたともいえます。
どちらの出店もある程度の成功を収めたようですが、事業として成功と言えるかどうかはまだまだこれからでしょう。
(私個人としては、NYの店舗は世界市場に向けた広告塔だと考えていますが。)
もちろん国内約800の店舗が最重要であることに変わりはなく、現場で直接お客様に接する私たち販売員が全員、ユニクロの代表として顧客満足を第一に考え、お客様のために日々の業務に励むことがもっとも大切であると思っています。
今日立ち寄ったコンビニで手に取った雑誌の記事で興味深いものがありました。
その内容が
「ただ商品の良さを説明してもだめ。いい気分にしてあげないと買ってくれない」
というものでした。これは接客、販売、どちらにも言える事だと思います。
販促物も接客も、商品のうんちくを並べたって売れない。お客様の要望に応えて初めて売れる。さらに期待以上のサービスを提供してやっと満足してもらえる。
毎日お客様と接する私にとって大変共感できるものでした。
早速明日、店舗のほかのスタッフに共有したいと思います。
今ユニクロは生まれ変わろうともがいています。商品、人、店、全てをレベルアップさせようと毎日試行錯誤しています。
この船はどこへ向かっていって、どこまで行けるのか。乗組員の一人として、またファッションが好きな一個人として、非常に楽しみです。
※ハンドルネームでのコメントですが、何卒ご容赦ください。
Posted by: takmi | January 15, 2007 01:43 AM
takmiさん
コメントありがとうございました。
内部からの話を勇気をもってしていただきとても感謝しております。
と同時に、takmiさんのような問題意識と愛社精神を持たれた方が働かれていることが、ユニクロさんの人材の厚さなのだなとも思いました。
ブログでは、少々辛口のことも書いてあるかと思いますが、ユニクロさんは、間違いなく、過去において、日本のファッションマーケットが生活者主権に向くための役割を果たしましたし、今後もその最右翼だとリスペクトした上での励ましのコメントですので、その点は今後もご容赦ください。
これからも、takmiさんが、ファッション業界の中でご活躍されることを期待してやみません。
今後ともどうぞよろしくお願いいたします。
Posted by: taka | January 15, 2007 08:30 PM