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March 11, 2007

イオンの主導で合意されたダイエー再建最終章

 3月10日、11日の各紙の流通面の一番のホットトピックは言うまでもなく、3月9日に資本業務提携で合意したイオンとダイエーの年商6兆円グループ誕生に関する記事だったでしょう。

 ダイエー、マルエツへの丸紅も含めたイオンの出資比率合意を見ると、昨年の10月の時と全く同じなので、一見スムーズに決まったかのように見えますが、11日の日経新聞の記事によると、やはり、OPAの売却延期やダイエーの店舗売却をめぐっては、イオンの意見がかなり優先された模様です。

 業務提携によるバイイングパワーの強化や流通の効率化などの営業面の相乗効果への期待は誰もが想像するところですが、一方で、次世代SC(売場面積)の覇権を睨んだイオンは、まちづくり三法改正以後の都心部好立地のOPAやダイエーの店舗資産は手放されては困る、資本提携の本命のひとつだったに違いありません。

 さて、この巨大GMS連合の誕生によって、どんな豊かさが生活者にもたらされるのでしょうね。

 9日のちょうどイオン・ダイエー・丸紅の会見が行われているころに、ある政府系流通研究機関に所属されている流通専門家の大先輩の方とお食事をする機会に恵まれました。

 話題は、当然、イオン・ダイエーの提携のゆくえに始まり、また、多くの外資流通企業が、日本に進出した際に、日本の業界の秩序を崩してもらっては困ると、日本企業からのかなりの妨害に合って、いいとこなしで、「日本は閉鎖的な国だ」と結論付けて撤退していった数々の歴史から、来年進出のH&Mもそうならなければよいが、といった話まで、意気投合した次第です。

 話は、日本の悪しき商慣習、返品制度へもおよびました。その方は、戦後始まった日本の返品制度の歴史をよくご存知で、とても興味深い話をしてくださり、明日の、生活者主権の流通を考える上で、いい刺激になった、と感謝しています。Sさん、ありがとうございました。

 そんなことを思い出しながら、イオンダイエーの提携の記事を読んでいましたが、結局、なぜ、GMSの衣料売場がしまむらやアパレルSPA(製造小売)系ファッション企業に食われていったかというところを反省し、対策を打たない限り、いくらGMSが連合になったって何も変わらないんだろうな、と思ったりします。

 バイイングパワーだけを増して、目先の値入が良くなったところで、また、売場面積ばかり拡大して、生活者を迷わせても、本質は全く変わらないんだろうな、と。

 今、「勝ち組」と呼ばれている企業の多くは、生活者からは、返品を受けるけれども、企業の都合で、仕入先に返品や値引きや未引取りはしない、あるいは、できない企業だと思います。そんなの当たり前のはず、と思うかも知れないけれど、実際、多くの企業のバイヤーには売れなかった時の逃げ道があって、やりくりをしているのが現実。だから真剣に発注しない、だから値段を叩いたつもりでも、実際には高く買わされている、だから新鮮な商品が店頭に並ばない、のでしょうね。(これは、言わずと知れた、ダイエーの末期状態の時の話ですが、他人事ではありません)

 完全買取、一切返品しない、そんな瀬戸際に追い込まれないと、真剣に考えないし、人も成長しないだろう、って言うのは、しまむらの藤原会長の有名な持論。それゆえ、同社は徹底した完全買取ポリシーを貫きます。

 いくら合併で規模が大きくなっても、各所で人が成長する舞台を作らなければ、年々落ちてゆく売場面積あたりの、あるいは従業員一人当たり販売効率は止められないのが今の世の中。これはイオンダイエーの提携に限らず、百貨店しかり、家電量販しかり、各業界の大型合併すべてにはらむ両刃の剣だと思います。

 陣取り合戦の末には、果たして、かつてチェーンストア各社の経営者たちが夢見た、アメリカのような「生活者の豊かさ」は待っているのでしょうか?
 
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