日本の「匠(たくみ)」の火を絶やさないために
5月3日付日経新聞の「アパレル大手が国内生産の見直しに動きだした」という記事を読みました。
記事の統計データのように、今に始まったことではありませんが、中国を中心に海外生産が急増し、この10年間で国内の繊維製造事業所は半減(10万ヶ所→5万ヶ所)。
これに対して、サンエーインターナショナルが、特定の国内産地との取り組みを強化し、製造メーカーへの店頭販売情報(売れ筋、発注データなど)の提供を行ったり、東京スタイルが短納期対策としての国内工場を活用している事例、ワールドが経営が行き詰まったメーカーへの支援を行い傘下に収め活用している事例などが紹介されています。
記事が言うとおり、確かに、(主に百貨店向けアパレルが)在庫リスクをかんがみ、初回生産を抑えて、シーズン中の追加生産など短納期対応する機能、役割として、国内生産は必要です。
しかしながら、取り組み強化として、発注量を維持したり、増やしたり、資金援助をしたりするだけでは、その火が絶えるのも「時間の問題」と言わざるを得ません。そこに「技術伝承」と「人材育成」というキーワードが欠けていたら・・・
そういう意味で、事例紹介の中でも、三陽商会の取り組みは注目に値します。製造技術者の高齢化に対して、縫製やプレスなど数十種類におよぶマニュアル作成を進めて、社内やグループ会社への技術伝承を進めているとのこと。これが「本質」ではないかなぁ、と思いながら記事を読んでおりました。
高齢化する技術者は、おそらく自らマニュアルは作らないでしょう。多くの方が、「オレの背中を見て盗め」でありましょうし、それについてくる若い人たちも激減しているはずです(昔通った国内工場のオヤジさんたちの背中を思い出します)。
それに対して、三陽商会は、危機感を感じ、金銭的な問題だけではなく、パートナー企業とて、技術が継承してゆけるような環境を作るという姿勢は非常に大切なこと、三陽さんらしいやり方だなと思いました。商社時代は、いろいろなアパレルさんとお付き合いさせていただいたり、同僚の話を見聞きする機会がありましたが、同社は最も地に足が着いたアパレルさんのひとつだという印象を持っていました。
当然、これは、三陽商会グループ内の貴重な財産となるでしょうし、一方では、人材がついてくるかもわかりません。もしかしたら、それを伝承するのは、日本に学びに来る中国の人たちかもしれませんが、それもまた、歴史の一ページ。(日本アパレル業界の技術者の地位向上を望みますが、なかなかイタリアのようにはならないでしょうからね)
個人的な話ですが、アパレル業界に身を置いて以来、スーツ、テーラードジャケット、靴(ドレスシューズ)は日本製かイタリア製に尽きると思っています。それらのアイテムだけは、他を試しても、やっぱりそこに落ち着くんですよね。
そういえば、最近、私が気になっている靴、「山長」も三陽商会が、日本製にこだわって製造しているシューズでしたね。
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