アパレル流通における「逆三角形の積み木」崩し
今週の繊研新聞の一面に「どうするものづくり 日本のアパレル生産のひずみ」というシリーズ記事が連載されています。現在のアパレル生産の典型的な問題点、課題が的確に整理されていて、とてもよい記事だと思いながら読ませていただいております。これからアパレル業界を理解しようという方は是非、お読みいただくとよいと思います。
特に、シリーズ6回目11月20日付けの「逆三角形の積み木」は、状況を的確に表し、とてもいいネーミングですね。
要は、
小売店→アパレル(卸)→商社→工場
と流通を川上に遡るほど利益率、額とも取り分が少なくなる構造は、日本の他の業界でもそうかも知れませんが、
・小売の販売効率の低下、家賃の高騰
・アパレルの人件費、物流費、小売からの返品・値引対策経費の高まり
から、中国などの生産サイドにも原材料、燃料、人件費、税金など原価アップの要因はめじろ押しなのにもかかわらず、従来より安い原価を要求しているという構図は、逆三角形状態の積み木を、上の方はそのままで、下からくずしている様子と同じだということを言っているわけです。
記事にある、店頭売価10,000円の商品に対するそれぞれ流通の出値の例を引用すると、次の通りになります。(百貨店業界の場合)
小売店 →アパレル(卸) → 商社 → 工場(日本サイドの商社輸入原価)
¥10,000 ¥5,500 ¥1,600 ¥1,300
これでいくと、ホントの工場出し、いわゆるFOBは¥1,000強でしょうか。小売価格の10%。
10年以上前、商社で海外生産をしていたころは、商社のアパレルまたは小売への出値が25%~30%、今、昔の同僚に話を聞くと、最近の商社出しは20%以下と言います。
また、当時、素材価格は店頭価格の10%くらいを目安に生産していたのですが、今や、工場側のコスト、利益込みで同じくらいの価格を要求されているようですね。専門店の場合、原則買取になりますので、アパレルの出値は変わりますが、このコストモデルは、だいたい今の実態を表していそうな感じです。
記事の中に、日本の業界の取り分のバランスを見直すべき、という業界の方の意見も掲載されていますが、上記のような理由もあり、それが、なかなか現実的でないのは、業界の誰もが認めるところではないでしょうかね。
そんなわけで、日本のファッション業界では、商社を介在させるかどうかは別にして、小売が直接工場に発注する、あるいは、アパレルが直営店を運営する、いわゆるSPA(製造小売)業態化が進むわけですが、そうすると、単純に上記の¥1,600くらいを小売の原価にできる可能性があるわけで、同じ品質の商品を、30%OFF=¥7,000くらいで売って、シーズン中でも値下などで上手く消化が図れるビジネスモデルが成立するというわけです。
海外SPAにいたっては、商社の介在もないので、リスクはありますが、世界の店頭を起点とし、生産サイドとも、柔軟な対応ができ、自社内コストコントロールも効きやすい、ということになります。
というわけで、記事によると、中国有力縫製工場の顧客優先リストの上位は欧米SPA企業に占められ、かつて上位だった日本の大手アパレルは下位という現実。
バランスというか、店頭と生産サイドをいかに直結させるか、といった構造そのものが問われている、という現状でしょうか。
いつもお読み頂きありがとうございます。
毎日1回、こちらをクリックお願いします。
↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓↓
>>>人気blogランキング に参加しています。
【第6位】↑up (07.11.21現在)
| Permalink | 0
Comments
その通りです。
服ではありませんが、バッグでは、、、;
レザーバッグの生産地は主に広東省ですが、日本向けの生産をあからさまに嫌う(断る)工場が増えています。
・小ロット(材料調達の面でも問題多い)
・細かいデザインディテール、及び要求
・その割りに、企画の時間がタイト過ぎる
・厳しすぎる品質基準(小さいキズ等・・・)
・しかも、値段が厳しい
日本側のサプライヤー(商社・OEMサプライヤー)が多すぎ、、、で、川上の工場は一緒だったり。
つまり、商社が入れ替わっても、使う(有力)工場は同じ、、、。
工場側もウンザリ気味のようです。
2年後くらいには、手の良い工場は、ロットの大きい欧米ブランドに占拠され、日本の消費者は、品質よくない商品を高く買わされる・・・ということになると思います。
中国生産のリスク(人民元高・人件費高・労働条件改善に伴うコスト高等・・・)も高く、(欧米ブランド向けであっても)工場側は儲かっていないようです。そのような背景もあり、うるさい日本向けは敬遠されつつあります。
企画側も、仕事が雑になって来ているような気がするし…混沌としていますね。
Posted by: Is. M | November 24, 2007 09:50 PM
Is.Mさん
こんにちは
現場に携わっている方ならではのリアルでわかりやすいコメントありがとうございました。
バッグ、アパレルとアイテムは違っても、同じような状況なのだなぁと実感します。
これからもまたコメントよろしくお願いいたします。
Posted by: taka | November 26, 2007 01:02 PM