しまむらの情報公開と「適正値」の考え方
5月9日の日本繊維新聞に、しまむらが推進している、いわゆる「直流」によるコスト削減に関する記事が掲載されていました。
「直流」とは、しまむらに納品するメーカーが、中国各地で生産した商品を中国内のしまむら指定物流拠点に集結させ、現地でしまむらの店舗ごとに振分けてしまい、箱詰め、まとめてコンテナに積み込み輸入し、そのまま日本国内のしまむらの物流センターに直接持ち込み、箱ごとしまむらの国内トラックルート便に載せることによって物流コストを削減しようという試みです。
同社は、この「直流」によって浮いた物流コストをメーカーと折半し、その「直流」比率を高めることによって、自社の商品仕入原価率を下げ続けています(「値入率」でいうと上げ続けている)。
いつも、このようなしまむら関連の記事を読んでいて感心することですが、同社は、何か改革に取り組む時に、実額や、売上高対比構成比といった金額ベースの数値だけでなく、荷物の個数(数量)や「1個あたり」のコスト(単価)をしっかり把握していて、それをどうコントロールするかを考えている、なおかつ、驚きなのは、その数値を一般に情報公開しているところです。
ところで、毎年4月にしまむらの2月期決算発表にあわせて公表されるIR情報のひとつに決算概要がありますが、これは、業務改善に取り組む業界の経営者、幹部、経営企画の方、必見の資料だと思います。
客数、客単価、セット率、値下率、棚卸ロス率・・・業界が関心を持っている経営数値が前年比とかではなく、実数で、数年間時系列で掲載されている、ここまで公開するか、と同社の自信のほども見て取れる資料です。
話は変わりますが、仕事上、よく業界の「適正値」や「基準値」を聞かれることがあります。
ロス率、値下げ率、プロパー消化率、シーズン末残在庫率・・・
実は、私は、多くの方が期待する「適正値」ってものは業界に存在しないと思っています。強いて挙げればゼロか100ですかね・・・不可能に近いですが(笑)
むしろ「適正値」を考える時、いつもお勧めすることがあります。
○まずは自社の現状を数値化する
○そして、その数値を来年に向けてどうしたら少しでも改善できるのかを考える
この行為こそが、「適正値」に向けての取り組みだと思っています。
しまむらの決算概要をご覧になったら、それらの項目の自社の数値はどうなっているか?一度算出してみるといろいろなことがわかると思います。お試しを。
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Comments
とおりがかりでコメントさせて頂きました。私はスタイリストで将来的にお店をやりたいのですが、経営には素人で数字の適正値は大変興味ぶかい話だと思いました。今後ともどうぞよろしくおねがいします。
Posted by: koichi | May 10, 2008 08:05 PM
koichiさん
コメントありがとうございます!
今後少しでもブログの内容がお役にたてたらと思います。
これからもよろしくお願いします。
Posted by: taka | May 11, 2008 11:24 PM
未上場の衣料チェーンに勤務しております。いつも有益な情報をありがとうございます。興味深く拝見させて頂いております。
しまむらの決算を見ましたが、棚卸精度を上げるために四苦八苦している私にとって、ロス率0.4%は驚きでした(弊社の1/10以下です)。
上場企業はどこもこんなに優秀なのでしょうか・・?
Posted by: kimura | May 14, 2008 01:06 AM
kimuraさん
コメントありがとうございました。
まず、kimuraさんの会社の棚卸ロスの計算式の確認ですが、
棚卸ロス在庫高(原価ベース)÷期間売上高
でよろしいでしょうか?
たまに、会社の習慣で、売上高ベースのロス金額を分子にしていたり、期末在庫を分母にされている事例に耳にしますが、そうしますと、数値は大きくなってしまいます。
その上で、1.0%未満には抑えたいところです。
0.4%は「優秀」の部類だと思います。
お答になりましたでしょうか?
よろしくお願いいたします。
Posted by: taka | May 15, 2008 09:05 PM
コメントありがとうございます。
弊社の場合は、
(システム上の理論在庫数-棚卸した実在庫数)÷棚卸した実在庫数
と、個数ベースで出しておりました。
代々、棚卸に関しての差異チェックは個数ベースだそうなのですが、むしろ少数派なのかもしれませんね。
ありがとうございました。
Posted by: kimura | May 18, 2008 02:17 AM
kimuraさん
ご事情ご説明ありがとうございます。
しまむらの数値は財務会計上の金額ベースのもので、現場レベル、特に毎月棚卸をするとなると点数棚卸の方がむしろ現実的だと思います。(実際には決算期に経理の方が数量を金額に置き換えてらっしゃるのではないかと思います)
一度棚卸時の在庫数量ではなく期間中の売上数量を分母にして計算して頂くとより近い数字が出るのではないかと思います。
Posted by: taka | May 19, 2008 11:07 PM