インスピレーション・トリップ
繊研新聞に「H&Mの強みと弱み」が連載中ですが、9月8日付けの第3回目に、H&M社の企画プロセスについて、デザイン統括責任者のアン・ソフィ・ヨハンソンさんへのインタビューを中心に構成された興味深い記事が掲載されていました。
同社は、1年前から来シーズンのトレンド予測、商品企画に向けての作業に入りますが、そのよりどころになるインスピレーションをどこから得ているかが挙げられています。
○ファッショントレンド会社から買う情報
○プルミエールヴィジョン(フランス生地見本市)
○モーダイン(イタリア生地見本市)
○ヴィンテージフェア
○フリーマーケット
○美術館の展覧会
○ロンドン、ニューヨーク、パリ、ミラノ、東京主要都市と他の面白い街への旅(年6~10回)
○クラブやバーでのピープルウォッチング
○本、雑誌、
○インターネットで見られるストリートファッションの写真
○その他、社内図書館、テレビ、映画、音楽
ショーは見に行かない、という彼女、彼らがもっともインスピレーションを感じるのはストリート、ピープルウォッチング、セレブファッションとのこと。
これらから感じたインスピレーションに、世界29カ国1600店舗の売上データを総合させて、仕掛けるトレンド(シーズンあたり4~6のストーリー)を決めるということです。
この川上情報(流行色・素材サイド)と川下情報(店頭販売)に、更にストリート情報を総合させることができるのが、SPA製造小売業が持つ一番の強みだと思います。どれかひとつだけだと、一方的であったり、新鮮味のない品揃えになってしまいますものね。
リストの一番上のファッショントレンド会社から買う情報では、H&Mはじめ世界のファストファッション企業が、これをフル活用しているのは有名です。
欧米コレクションの数日後には、ネット上に詳細情報(画像から素材、ディテイルまで)がアップされるインターネット時代に、血眼になってランウェイ脇、人の後ろからショーを眺める時間があったら、世界のストリートに行き、各地の生活者がファッションをリミックスしている様を肌で感じることの方が、等身大のマーチャンダイジングを行う上で有意義なのは同感です。
H&Mのように、来シーズンのトレンドの芽を肌で感じ取る、インスピレーションを得るためのリサーチ旅行、いわゆる「インスピレーショントリップ」は、ラグジュアリーブランドからチェーン店まで、ファッション企業の方であれば常識であると思います。
ラグジュアリー系のところは、アフリカ、アジア、ラテンアメリカなどエスニックな世界から意外なインスピレーションを得るために出かけ、それ以外の企業は、欧米の主要マーケットに出かけることが多いようです。
私も、特に、小売バイヤーのころは、トレードショーに絡めて毎年数回欧米都市へ行く定点観測、インスピレーショントリップをとても大切にしていたものです。来シーズンに向けて、メーカーさんと話込んで、他社と同じようなトレンド品の品揃えをするにしても、インスピレーション(これは見た目で感じた統計に基づく勘だと思っています)があるのとないのとでは、裏づけと思いいれが違いましたから。
残念ながら、まだまだ日本では、出張費をケチっているのか、デザイナーやバイヤークラスが「ご褒美」で行く海外出張はあっても、来シーズンのトレンドのインスピレーションを得るために行く「定型業務」としての海外出張は少ないのが現実だと思います。
インスピレーショントリップは、継続的に行って初めて効果が上がるもの。グローバルSPAとの競争の時代に、いっそうの人財への投資も考えたいところです。
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