グローバル企業の物流・出店戦略
10月3日の日経MJに世界最大のホームファッションSPA、日本で拡大中のIKEA(イケア)の日本国内向け物流センターが、このたび、愛知県弥富市、名古屋港近辺に開設、稼働したことに関連して、イケアジャパンのラース・ペーテルソン氏のインタビュー記事が掲載されていました。
同社では、これまで上海とクアラルンプールにアジアのハブ物流を有し、世界50カ国で生産された商品のうち、アジアの店舗向けの分はこの二か所に集め、店舗ごとにまとめ、日本の4店舗に向けて船便で出荷していました。
今後は、集中出店エリアである東京首都圏と関西圏のちょうど真ん中である名古屋港近辺に新設した物流に、日本向けの商品が一括輸送され、そこから共有在庫としたものを各店の売り上げに応じて、最適配分・補充することによって、これまで起こしていた欠品を削減しようというのが、国内物流センター設立の目的になるようです。
ちょうど、私も、買いたいと思っていたPOANG(ポエング)というイケアの定番リラックスチェアが、船橋でも港北でもしばらく欠品をしていて、定番なんだから早く補充されないかなぁと、どうなっているのかなぁ、と思った体験を持っています。
これに対して、同社の今後の出店計画は、当初、首都圏と関西圏に優先順位を定め、しばらくは、既存店含め、それぞれ4~6店舗づつ集中出店をする予定だったそうですが、記事によると、物流センターをオープンした愛知県にも引き合いは多いらしく、今後、前向きに同県にも出店検討をするとしています。
イケアの全世界での1店舗あたりの平均売上高は100億円程度はありますので、数年内には日本での売上も1000億円規模になり、業界およびエリアへのインパクトも小さくなさそうですね。
参考までにスウェーデンのグローバルファッションリテイル企業、イケアとH&Mの生産国と取引先数、出店国と店舗数をご紹介しましょう。
生産国 出店国
イケア 50カ国1350社 30カ国 1600店舗超
H&M 22カ国800社 24カ国 230店舗超
かようにスケールの大きいグローバル企業のビジネスでは、地域のハブ物流が要になっており、イケアがアジアに2つのハブ物流を持つように、H&Mも香港にハブのような拠点があるようです(その後、上海であることがわかりました)。
H&Mでは、世界からアジア向けとして香港(その後、上海であることがわかりました)に集まる商品を毎日、東京港と横浜港に近い川崎の国内物流に向けて海上輸送するようで、その後、そこから毎日複数回、店舗に配送されます。
日本のH&Mはまだ1店舗なので、この川崎の拠点の位置づけがどうなるかは、わかりませんが、同社は、世界の出店エリアにエリア店舗をカバーする「コールオフセンター」という、デイリーデリバリーならぬタイムリーデリバリーが可能な物流拠点を置くことで、店頭在庫の最適化、販売機会損失の極小化をすることを強みのひとつにしています。
すなわち、生産された商品(品番)のうち、まずは2割程度を店舗に最低限の在庫として陳列しておいて、残りの8割の在庫は共有在庫としてコールオフセンターに保有します。その後、各店の品番別、時間帯別売上に応じて、デイリーデリバリー(実際には、毎日複数回)を行える同物流拠点が、実際、売れた分だけタイムリーに、速いものでは、その日のうちに補充してゆくというしくみです。
いわゆるデイリーデリバリー、毎日配送は日本のファッション業界の勝ち組企業でも常識になりましたが、日に複数回という多頻度の配送は、一部の渋谷109ブランドやコンビニエンスストア並みであり、それが同社の売上の最大化につながる一つの要因であることは想像に難くありません。
さらに言えば、それだけの強みをもつ、物流拠点づくりは、出店政策に優先されるわけで、その威力が発揮できる範囲にしか出店をしないであろう、というのが、私のH&Mは、しばらくは首都圏にしか出店しないであろうという根拠にもなっています。
日本に攻め入るグローバル企業のロジスティック戦略は、われわれの店頭在庫最適化やスピードの概念も変えてゆくかもしれません。
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